から焼きが不要で、錆びにくくて、熱変形に強い鉄鍋の製造方法
【課題】鉄は錆びやすい金属であるため、鉄鍋の使い方や手入れを誤ると、鍋を錆びつかせたり、焦げ付きが生じやすいという欠点をもっている。鉄鍋の多くは、使うまでの間に錆が発生するのを防ぐために、鍋の表面に錆止めの塗装を行ってあり、そのため使う前にはガスコンロで鍋を空焚きするなどして鍋表面の塗料をとり除き、その後に錆を防ぐ油を塗っておく必要がある。ところが、鉄鍋を十分に空焚きするには、正しい手順を把握した上で一定の時間と手間をかけて作業を行なう必要があり、不慣れな人が行うと、誤って鍋を錆びさせたり、作業が正しく行われなかったために調理中に焦げ付きが生じることがある。
【解決手段】鉄鍋本体に窒化処理を行い、その後に酸化被膜を形成することで、鍋が錆びにくい特性が得られ、塗装が不要となった。また、使用者が鍋を空焚きして酸化被膜を形成する手間も省くことができた。
【解決手段】鉄鍋本体に窒化処理を行い、その後に酸化被膜を形成することで、鍋が錆びにくい特性が得られ、塗装が不要となった。また、使用者が鍋を空焚きして酸化被膜を形成する手間も省くことができた。
【発明の詳細な説明】
【発明が解決しようとする課題】
表面処理を施していない軟鉄製の鍋は、調理に必要な油馴染みを得るために、始めにガスコンロ上でから焼きし、軟鉄表面に酸化鉄層(FeO)を作ります。この酸化鉄層はポーラス状(多孔質状)をなしており、大変油がよく馴染むので、この作業は必須であります。次に、この鍋に油をタップリ入れ、100度強に温め、約5分かけて油を鍋表面にしっかりと馴染ませます。これで料理がこびりつかない、使い易い鉄鍋となります。従来この準備作業は、使用者が事前に行っておりました。しかし、昨今このような準備作業を自分で行うのは面倒と考える使用者が激増しました。
従来の軟鉄製の鍋は、錆を防ぐため、ラッカーなどを主成分とした塗料を塗装してある場合、シリコン塗装をしてある場合、手で剥がせる塗装をしてある場合の3種類があります。ラッカー塗装の場合は、調理に使う前にガスコンロ上でから焼きして塗装膜を取り除く手間が必要となります。その後、カラ焼きし酸化鉄層を作り、油を馴染ませます。シリコン塗装の場合は、調理を重ねるうちに次第に剥がれ落ち、やがては軟鉄の生地表面が露出します。その時点から、ようやく鉄本来の油なじみの特性を発揮し始めますが、それまでにかなりの期間が必要であります。手で剥がせる錆び止め塗装の場合は、完全に被膜を剥がし、カラ焼きし、油を馴染ませます。
加えて軟鉄製の鍋は、IH(電磁調理器)ではから焼きができない上に、ガスコンロ上で使用するにはなんら問題がない板厚のものでも、IH(電磁調理器)上での初期加熱が強いと鍋底面が変形しやすいという欠点をもっています。
そこで、油馴染みが良く、高温(175℃〜180℃)料理にも向いていて、鉄分が摂取できるという鉄鍋の良さを完全に残し、なおかつ、錆びなくて、手入れが楽で、熱変形に強く、使用前のから焼きが不必要な鉄鍋を製造し提供する必要があると考えました。これを開発の課題といたします。
【発明の効果】
まず鍋本体は軟鉄で作り、これを加熱炉に入れ、そこに窒素成分を充てんし、加熱炉の温度を上げ、鍋を一定以上の高温で加熱します。その結果、軟鉄表面に3層の窒化鉄層が形成されます。
鉄の芯に近い第1層がFe4N、次が主たる層である第2層のFe3N、一番表面が第3層のFe2Nとなります。この加熱処理をガス軟窒化といいます。この熱処理を軟鉄に施すと、錆びやすくて柔らかい軟鉄が、錆びにくい、つまり耐腐食性に大変優れた、しかも耐摩耗性にも大変優れた硬い金属へと変わります。この熱処理技術は、摩耗したり、腐食してはいけない部品などに広く使われている鉄の汎用熱処理技術です。中でも自動車、航空機などの耐摩耗性、耐腐食性が求められる部品の多くに、この熱処理技術が使われています。
この技術を軟鉄鍋に用いた結果、油馴染みが良く、高温(175℃〜180℃)料理にも向いていて、鉄分が摂取できるという軟鉄鍋の良さを完全に残し、その上、錆びにくく、手入れが楽で、熱変形に強く、使用前のから焼きが不要な鉄鍋となります。熱変形に強いことは、IH(電磁調理器)でも使いやすいということに結びつきます。この特性は、IHが徐々に広まっている現況を考えると、非常に大きな要素と言えます。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱処理前の、通常の軟鉄の断層写真である。
【図2】軟鉄に窒素成分を使った熱処理を行い、軟鉄表層に窒化鉄層が形成されている断層写真である。
【図3】熱処理前の軟鉄の表面荒さを示すグラフである。
【図4】熱処理後に、表層に形成された窒化鉄層の表面荒さを示すグラフである。なお、窒化鉄の荒さ測定はグラフの振幅が大きく、作図のさいに縦倍率を軟鉄の半分にしてある。
【図5】図3、図4のグラフ測定時の表面荒さを表す成績表である。
【図6】図3と図4の検体の硬度を表す成績書である。これによると、熱処理前の軟鉄の硬度が約100であるのに対し、熱処理後の軟鉄表層に形成された窒化鉄層の硬度は、およそ5倍の硬度であることが分かる。つまり、軟鉄の両面に非常に硬い層が形成されているため、加熱のストレスに強く変形しにくい構造となっている。
【図7】軟鉄を熱処理し、表層に窒化鉄層を有する鍋から鉄分が溶出したことを表す成績書である。
【図8】軟鉄製の鉄鍋と、軟鉄を熱処理して表層に窒化鉄層を有する鉄鍋とを水槽に入れた直後の写真である。
【図9】図8の24時間経過後の状態を撮影した写真である。
【図10】通常の軟鉄製鍋には赤錆びが生じたのに対し、軟鉄を熱処理して表層に窒化鉄層を有する鉄鍋には錆びが生じていないことを示す写真である。
【図11】図8〜図10に至る試験結果報告書である。
【図12】軟鉄製の鍋に窒素成分を使った熱処理を行ったのち、取っ手を取り付けた鉄鍋の写真である。
【図13】図12と同一の熱処理を行った、たまご焼き器の写真である。
【図14】図12と同一の熱処理を行った、天ぷら鍋の写真である。
【発明が解決しようとする課題】
表面処理を施していない軟鉄製の鍋は、調理に必要な油馴染みを得るために、始めにガスコンロ上でから焼きし、軟鉄表面に酸化鉄層(FeO)を作ります。この酸化鉄層はポーラス状(多孔質状)をなしており、大変油がよく馴染むので、この作業は必須であります。次に、この鍋に油をタップリ入れ、100度強に温め、約5分かけて油を鍋表面にしっかりと馴染ませます。これで料理がこびりつかない、使い易い鉄鍋となります。従来この準備作業は、使用者が事前に行っておりました。しかし、昨今このような準備作業を自分で行うのは面倒と考える使用者が激増しました。
従来の軟鉄製の鍋は、錆を防ぐため、ラッカーなどを主成分とした塗料を塗装してある場合、シリコン塗装をしてある場合、手で剥がせる塗装をしてある場合の3種類があります。ラッカー塗装の場合は、調理に使う前にガスコンロ上でから焼きして塗装膜を取り除く手間が必要となります。その後、カラ焼きし酸化鉄層を作り、油を馴染ませます。シリコン塗装の場合は、調理を重ねるうちに次第に剥がれ落ち、やがては軟鉄の生地表面が露出します。その時点から、ようやく鉄本来の油なじみの特性を発揮し始めますが、それまでにかなりの期間が必要であります。手で剥がせる錆び止め塗装の場合は、完全に被膜を剥がし、カラ焼きし、油を馴染ませます。
加えて軟鉄製の鍋は、IH(電磁調理器)ではから焼きができない上に、ガスコンロ上で使用するにはなんら問題がない板厚のものでも、IH(電磁調理器)上での初期加熱が強いと鍋底面が変形しやすいという欠点をもっています。
そこで、油馴染みが良く、高温(175℃〜180℃)料理にも向いていて、鉄分が摂取できるという鉄鍋の良さを完全に残し、なおかつ、錆びなくて、手入れが楽で、熱変形に強く、使用前のから焼きが不必要な鉄鍋を製造し提供する必要があると考えました。これを開発の課題といたします。
【発明の効果】
まず鍋本体は軟鉄で作り、これを加熱炉に入れ、そこに窒素成分を充てんし、加熱炉の温度を上げ、鍋を一定以上の高温で加熱します。その結果、軟鉄表面に3層の窒化鉄層が形成されます。
鉄の芯に近い第1層がFe4N、次が主たる層である第2層のFe3N、一番表面が第3層のFe2Nとなります。この加熱処理をガス軟窒化といいます。この熱処理を軟鉄に施すと、錆びやすくて柔らかい軟鉄が、錆びにくい、つまり耐腐食性に大変優れた、しかも耐摩耗性にも大変優れた硬い金属へと変わります。この熱処理技術は、摩耗したり、腐食してはいけない部品などに広く使われている鉄の汎用熱処理技術です。中でも自動車、航空機などの耐摩耗性、耐腐食性が求められる部品の多くに、この熱処理技術が使われています。
この技術を軟鉄鍋に用いた結果、油馴染みが良く、高温(175℃〜180℃)料理にも向いていて、鉄分が摂取できるという軟鉄鍋の良さを完全に残し、その上、錆びにくく、手入れが楽で、熱変形に強く、使用前のから焼きが不要な鉄鍋となります。熱変形に強いことは、IH(電磁調理器)でも使いやすいということに結びつきます。この特性は、IHが徐々に広まっている現況を考えると、非常に大きな要素と言えます。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱処理前の、通常の軟鉄の断層写真である。
【図2】軟鉄に窒素成分を使った熱処理を行い、軟鉄表層に窒化鉄層が形成されている断層写真である。
【図3】熱処理前の軟鉄の表面荒さを示すグラフである。
【図4】熱処理後に、表層に形成された窒化鉄層の表面荒さを示すグラフである。なお、窒化鉄の荒さ測定はグラフの振幅が大きく、作図のさいに縦倍率を軟鉄の半分にしてある。
【図5】図3、図4のグラフ測定時の表面荒さを表す成績表である。
【図6】図3と図4の検体の硬度を表す成績書である。これによると、熱処理前の軟鉄の硬度が約100であるのに対し、熱処理後の軟鉄表層に形成された窒化鉄層の硬度は、およそ5倍の硬度であることが分かる。つまり、軟鉄の両面に非常に硬い層が形成されているため、加熱のストレスに強く変形しにくい構造となっている。
【図7】軟鉄を熱処理し、表層に窒化鉄層を有する鍋から鉄分が溶出したことを表す成績書である。
【図8】軟鉄製の鉄鍋と、軟鉄を熱処理して表層に窒化鉄層を有する鉄鍋とを水槽に入れた直後の写真である。
【図9】図8の24時間経過後の状態を撮影した写真である。
【図10】通常の軟鉄製鍋には赤錆びが生じたのに対し、軟鉄を熱処理して表層に窒化鉄層を有する鉄鍋には錆びが生じていないことを示す写真である。
【図11】図8〜図10に至る試験結果報告書である。
【図12】軟鉄製の鍋に窒素成分を使った熱処理を行ったのち、取っ手を取り付けた鉄鍋の写真である。
【図13】図12と同一の熱処理を行った、たまご焼き器の写真である。
【図14】図12と同一の熱処理を行った、天ぷら鍋の写真である。
【特許請求の範囲】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−11032(P2011−11032A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177017(P2009−177017)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(503230483)株式会社リバーライト (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(503230483)株式会社リバーライト (1)
【Fターム(参考)】
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