説明

がんもどきの製造方法

【課題】脱水していない豆腐を原料として用いた、がんもどきの製造方法を提供する。
【解決手段】脱水していない豆腐に、粉末状大豆たん白及びα化澱粉を加えて混合する工程を含むがんもどきの製造方法を実施することにより、がんもどき生地の成形性とフライ時の保形性に優れ、ソフトな食感を有するがんもどきが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんもどきの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来がんもどきは、木綿豆腐に圧力をかけて脱水した後にすり潰し、みじん切りした人参、椎茸、昆布、ひじき等の具材を混ぜ込んで、成形、フライして製造されている。
【0003】
がんもどきの製造方法に関する技術としては、豆腐と大豆たん白ペーストを混合して得た生地を、表面が固化する程度に油中加熱、及び湿熱加熱する豆腐加工食品の製造法(特許文献1参照)、潰した豆腐及び/又は分離大豆蛋白を含む生地を油ちょうして得られるがんもどき食品において、加熱凝固性可食液の加熱固化体を内部に含むことを特徴とするがんもどき様加工食品(特許文献2参照)、大豆を主原料として成る豆腐の脱水生地に、澱粉誘導体を添加することを特徴とするがんもどき類の製造法(特許文献3参照)などが開示されている。
【0004】
しかし、食感がソフトながんもどきを製造する為に、例えば、絹ごし豆腐など脱水していない豆腐を原料とした場合、フライ時に生地が散るという問題点があり、解決が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−102358号公報
【特許文献2】特開2004−236636号公報
【特許文献3】特開2001−008656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、脱水していない豆腐を原料として用いた、がんもどきの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、脱水していない豆腐に粉末状大豆たん白とα化澱粉とを加えて混合し、得られた生地を常法により成形、フライすることにより、フライ時の生地の散りが著しく抑制されることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、脱水していない豆腐に、粉末状大豆たん白及びα化澱粉を加えて混合する工程を含むことを特徴とするがんもどきの製造方法、からなっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法を実施することにより、がんもどき生地の成形性とフライ時の保形性に優れ、ソフトな食感を有するがんもどきが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いられる豆腐としては、例えば、絹ごし豆腐、ソフト豆腐、木綿豆腐及び充填豆腐などが挙げられる。分離大豆たん白と油脂及び水を均質化した後に凝固し成形した豆腐は、本発明でいう豆腐には含まない。
【0010】
上記豆腐の製造方法の概略を以下に説明する。例えば、大豆を水に浸漬して膨潤させ、大豆に吸収されなかった水を除く。これに挽き水を加えながらグラインダーなどで物理的に破砕した呉(ご)を得て、加熱後、豆乳とおからに分離する。この煮絞り豆乳などに凝固剤を加えて凝固させることにより豆腐を得ることができる。凝固剤の加え方や凝固方法によって種類の異なる豆腐が得られ、絹ごし豆腐は、例えば、約60〜90℃の豆乳に凝固剤を入れ、直ちに型箱へ流し込み凝固することにより得られる。木綿豆腐は、例えば、約60〜90℃の豆乳に凝固剤を加え、凝固した後に凝固物を崩して濾布を敷いた木綿用型枠に入れて圧搾することにより得られる。ソフト豆腐は、例えば、木綿豆腐の製造工程中の凝固物を余り崩さずに濾布を敷いた木綿用型枠に入れて、かつ、木綿豆腐より圧搾を少なくすることにより得られる。充填豆腐は、例えば、約5〜30℃の豆乳に凝固剤を加え、容器に充填し密閉した後に加熱して凝固させることにより充填豆腐が得られる。これらの豆腐は、いずれも通常約85〜90質量%の水分を含有している。
【0011】
本発明で言う脱水していない豆腐とは、上記豆腐を適度な大きさにカット、または崩した後に、自重による水切りや、プレス式脱水機やスクリュー式脱水機などを用いて豆腐に圧力をかけることによる脱水などの工程を経ていないものである。
【0012】
本発明で用いられる粉末状大豆たん白としては、例えば、大豆、脱脂大豆から得られる大豆たん白質を乾物当り50質量%以上の高濃度含む大豆たん白が挙げられ、とりわけ粗たん白質が85質量%以上含有する粉末状大豆たん白が望ましく用いられる。粉末状大豆たん白は市販品を用いることができ、例えば、ソルピー4000(日清オイリオ社製)、フジプロ−CLE(不二製油社製)などが挙げられる。
【0013】
本発明のがんもどきの製造方法において用いられる粉末状大豆たん白の添加量に特に制限はないが、脱水していない豆腐に対して好ましくは約1〜30質量%、より好ましくは約5〜15質量%である。
【0014】
本発明に用いられるα化澱粉は、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、エンドウ豆澱粉及びこれらにエステル化処理、エーテル化処理、架橋処理、酸処理、酸化処理、湿熱処理等の物理的又は化学的処理を単独で又は組み合わせて施した加工澱粉を常法によりα化処理したものである。その中でもタピオカ澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉をα化したものが好ましい。α化澱粉は市販品を用いることができ、例えば、マツノリンM(松谷化学工業社製)、ふうりん100(王子コーンスターチ社製)、日食アルスターE(日本食品化工社製)、ミクロリスFH02(王子コーンスターチ社製)などが挙げられる。
【0015】
本発明のがんもどきの製造方法において用いられるα化澱粉の添加量に特に制限はないが、脱水していない豆腐に対して好ましくは約0.5〜30質量%であり、より好ましくは約0.5〜10質量%である。
【0016】
本発明のがんもどきの製造方法は、脱水していない豆腐に粉末状大豆たん白及びα化澱粉を加えて混合する工程を有し、所望によりさらに他の食用原材料と混合し、成形した後にフライすることからなっている。
【0017】
脱水していない豆腐に粉末状大豆たん白及びα化澱粉を加えて混合する方法は、特に制限はなく全体が均一に混合されればよい。例えば、脱水していない豆腐をすり潰した後に粉末状大豆たん白とα化澱粉とを加えて混合しても良く、脱水していない豆腐に粉末状大豆たん白とα化澱粉とを加えた後に全体をすり潰して混合しても良い。この際、粉末状大豆たん白とα化澱粉は、粉末状態のものを用いることが好ましい。すり潰しや混合の方法としては、公知の方法を用いればよく、例えばがん練機、擂潰機、サイレントッカッターなどを用いることができる。
【0018】
本発明では、所望によりがんもどきに適した他の食用原材料を加えることができ、例えばニンジン、ゴボウ、シイタケ、コンブ、キクラゲ、ヒジキ、銀杏、胡麻、麻の実などが挙げられ、適当な大きさにカットしたものも用いることができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内で、やまいも、鶏卵などのつなぎや、食塩、砂糖などの調味料を用いることができる。
【0019】
がんもどき生地の成形方法に特に制限はないが、例えばドラム成形、モールディング成形などの方法が挙げられ、その形は球形、円柱形、楕円形、三角形、四角形など任意の形に変えることが可能である。
【0020】
成形した生地のフライ方法に特に制限はなく常法により行うことができるが、好ましくは多段階加熱する方法である。多段階加熱は、低温部でのフライと高温部でのフライを組み合わせて行う。フライ温度と時間は、低温部は約100〜150℃の温度帯で約5分以上、好ましくは約110〜130℃の温度帯で約5〜20分間である。また高温部では約120〜200℃で約10秒〜10分間、好ましくは約135〜170℃の温度帯で約10秒〜5分間である。用いる油は食用油ならば特に限定されず、例えば、パーム油、大豆油、なたね油、米油などが挙げられる。
【0021】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0022】
[製造例1]絹ごし豆腐の作製
大豆8kgを流水中に10時間浸漬し水切りした。水切り後の浸漬大豆に全量が40kgとなるように水を加えながらグラインダーで浸漬大豆を磨砕した。磨砕後の呉を煮釜に入れ水蒸気吹き込みにて加熱し、102℃に達温後、30秒間煮沸した。煮沸後の「呉」を脱水機(型式:アトムMTS−SP1;丸井工業社製)を用いて濾過し、豆乳(固形分13%)を得た。尚、磨砕から煮沸までの一連の操作は小型豆乳プラント(ミニホープS;高井製作所製)を用いて実施した。次いで85℃の豆乳16kgに対し凝固剤(製品名:にがり伝説−501;理研ビタミン社製)96gを加え、システマグAT型(アースシステム21社製)で混合攪拌した後に型箱(ステンレス製:360×350×150mm)に流し込み20分間静置して絹ごし豆腐を得た。この豆腐の水分は88.1質量%であった。
ここで豆腐の水分は、豆腐5gを105℃で2時間乾燥した際の減量分であり、下記式によって求められる。
水分質量%={(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥前質量}×100
【0023】
[製造例2]木綿豆腐の作製
製造例1の絹ごし豆腐の作製と同様に豆乳を得た。次いで85℃の豆乳16kgに対し凝固剤(製品名:にがり伝説−501;理研ビタミン社製)96gを加え、システマグAT型(アースシステム21社製)で混合攪拌した後にステンレス製バケツにとり20分間静置して凝固させた。凝固物を崩して濾布を敷いた木綿型枠(アルミ製:490×440×100mm)に入れ、水切り(100kPaで5分間と300kPaで10分間)して木綿豆腐を得た。この豆腐の水分は86.5質量%であった。
【0024】
[製造例3]充填豆腐の作製
製造例1の絹ごし豆腐の作製と同様に豆乳を得た。次いで20℃に冷却した豆乳1000gに対して凝固剤(製品名:にがり伝説−501;理研ビタミン社製)6gを加え、クレアミックス(型式:CLM−0.8s;エム・テクニック社製)で混合攪拌し、プラスチックパック(直径100mm、高さ40mm)に入れ、フィルムシールし、湯浴にて85℃で40分間ボイルし、充填豆腐を得た。この豆腐の水分は87.8質量%であった。
【0025】
<がんもどきの作製1>
本発明の必須成分である粉末状大豆たん白とα化澱粉の効果を確認するために、モデル系にて予備的に試験を行った。
【0026】
[原材料]
粉末状大豆たん白(商品名:ソルピー4000;日清オイリオ社製)
α化澱粉1(製品名:ふうりん100;王子コーンスターチ社製 α化タピオカ澱粉)
α化澱粉2(製品名:日食アルスターE;日本食品化工社製 α化コーンスターチ)
澱粉(製品名:コーンスターチCD−Y;王子コーンスターチ社製 コーンスターチ)
【0027】
[実施例1]
製造例1で得られた絹ごし豆腐(100g)に粉末状大豆たん白(10g)とα化澱粉1(5g)を加え、フードプロセッサー(型式:MK−K58;パナソニック社製)で30秒間撹拌混合し均一に混合してがんもどき生地を調製した。次に、がんもどき生地20gを手で球型に成形し、成形した生地をなたね油を用いて低温部120℃で8分、高温部165℃で2分の条件でフライし、がんもどき(実施例品1)を得た。
【0028】
[実施例2]
実施例1のがんもどきの作製において、絹ごし豆腐(100g)を用いるのに替えて、製造例2で得た木綿豆腐(100g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行って、がんもどき(実施例品2)を得た。
【0029】
[実施例3]
実施例1のがんもどきの作製において、絹ごし豆腐(100g)を用いるのに替えて、製造例3で得た充填豆腐(100g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行って、がんもどき(実施例品3)を得た。
【0030】
[実施例4]
実施例1のがんもどきの作製において、α化澱粉1(5g)を加えるのに替えて、α化澱粉2(5g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行って、がんもどき(実施例品4)を得た。
【0031】
[比較例1]
実施例1のがんもどきの製造において、粉末状大豆たん白(10g)とα化澱粉1(5g)を加えない以外は実施例1と同じ操作を行って、がんもどき(比較例品1)を得た。
【0032】
[比較例2]
実施例1のがんもどきの製造において、α化澱粉1(5g)を加えない以外は実施例1と同じ操作を行って、がんもどき(比較例品2)を得た。
【0033】
[比較例3]
実施例1のがんもどきの製造において、粉末状大豆たん白(10g)を加えない以外は実施例1と同じ操作を行ってがんもどき(比較例品3)を得た。
【0034】
[比較例4]
実施例1のがんもどきの製造において、α化澱粉1(5g)に替えて、澱粉(5g)を加えた以外は実施例1と同じ操作を行ってがんもどき(比較例品4)を得た。
がんもどきの配合をまとめたものを表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
<がんもどきの作製時の評価>
(1) がんもどき生地の成形性
各がんもどきの生地の成形性はについて10名のパネラーで表2の基準に従い評価した。結果は10名の評点の平均値として求め、下記の基準に従って記号化した。結果を表3に示す。

記号 平均点
◎ : 3.5以上
○ : 2.5以上3.5未満
△ : 1.5以上2.5未満
× : 1.5未満
【0037】
(2) 成形した生地のフライ時の保形性
各成形した生地のフライ時の保形性について10名のパネラーで表2の基準に従い評価した。結果は10名の評点の平均値として求め、(1)がんもどき生地の成形性で用いた基準に従って記号化した。結果を表3に示す。
ここで散りとは、成形した生地をフライする際、がんもどき表面の生地が剥がれて油中に散る現象を指す。
【0038】
<がんもどきの食感の評価>
フライして得られた各がんもどきの食感を、10名のパネラーで表2の基準に従い評価した。結果は10名の評点の平均値として求め、(1)がんもどき生地の成形性で用いた基準に従って記号化した。結果を表3に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

実施例品1〜4は、がんもどき生地の成形性、成形したがんもどき生地のフライ時の保形性、がんもどきの食感いずれの評価項目も良好な結果であった。
比較例品1〜4は、いずれの評価項目も悪い評価であった。
【0041】
<がんもどきの作製2>
予備的試験の結果を確実なものとするため、実際に具材を入れたがんもどきを作製し評価した。
【0042】
[実施例5]
製造例1で得られた絹ごし豆腐(100g)に粉末状大豆たん白(10g)とα化澱粉1(5g)を加え、フードプロセッサー(型式:MK−K58;パナソニック社製)で30秒間撹拌し均一に混合した後、人参(3×3×3mmカット、ボイル品)10g、炒り胡麻3gを加えて再度フードプロセッサーで5秒間混合してがんもどき生地を調製した。次に、がんもどき生地20gを手で球型に成形し、成形した生地をなたね油を用いて低温部120℃で8分、高温部165℃で2分の条件でフライしがんもどきを得た。
【0043】
がんもどき生地は適度な硬さを持ち成形性は良好で、成形した生地をフライした際には散りがなく形状を保ち、得られたがんもどきは柔らかい食感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水していない豆腐に、粉末状大豆たん白及びα化澱粉を加えて混合する工程を含むことを特徴とするがんもどきの製造方法。