説明

ころがり軸受

【課題】円すいころ軸受より低トルクで、玉軸受より寿命の長いころがり軸受を提供する。
【解決手段】外周部に円すい形状の内輪軌道3a、前記内輪軌道3aの最大径部から半径方向外方に延在し、最大径位置に面取りが形成された鍔面3bとを有する内輪3と、内周部に円すい形状の外輪軌道2aを有する外輪2と、前記内輪軌道3aと前記外輪軌道2aの間を転動する複数の転動体と、前記転動体を円周方向に所定の間隔に保持する保持器を備え、かつ前記転動体を複数の円すいころ4Aと複数の玉4Bで構成した。さらに前記内輪軌道3aの前記玉4Bと接する位置に円周状の僅かの凹部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はころがり軸受に係わり、特に自動車の駆動系等低トルクが求められる軸受装置に使用される転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のディファレンシャル装置等の駆動系軸受装置には負荷容量の大きな円すいころ軸受が用いられている。
しかし、トルクが大きく、ディファレンシャル装置等の軸受装置の効率が低下するという問題があった。
そこで、トルク低減を目的として、図4に示す低トルク円すいころ軸受(特許文献1参照)や図5に示す玉軸受等が使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−69421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の低トルク円すいころ軸受は、潤滑油の攪拌抵抗を減らして、低トルクを達成するもので、円すいころ軸受の転がり軸受としての摩擦抵抗値は玉軸受より大きく、潤滑条件によってはトルク低減の効果はすくない。一方図5に示す玉軸受はトルク軽減の効果はあるが、円すいころ軸受にくらべ、負荷容量が小さく寿命が低下する。
【0005】
この発明の目的は、円すいころ軸受より低トルクで、玉軸受より寿命の長い軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、外周部に円すい形状の内輪軌道、前記内輪軌道の最大径部から半径方向外方に延在し、最大径位置に面取りが形成された鍔面とを有する内輪と、内周部に円すい形状の外輪軌道を有する外輪と、前記内輪軌道と前記外輪軌道の間を転動する複数の転動体と、前記転動体を円周方向に所定の間隔に保持する保持器を備え、かつ前記転動体が複数の円すいころと複数の玉で構成されていることである。
【0007】
上記構成によれば、転動体として、円すいころと玉を組合せることにより、負荷容量を大きく低下させることなくトルク軽減が達成でき、円すいころ軸受より低トルクで、玉軸受より寿命の長い軸受を提供することができる。
【0008】
前記の課題を解決するため、請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記内輪軌道の前記玉と接する位置に円周状の僅かの凹部を形成したことである。
本構成によれば、前記凹部に沿って前記玉が転動することにより、前記玉の転動軌跡が安定し、トルクが安定する。
【0009】
前記の課題を解決するため、請求項3に係る発明の構成上の特徴は、前記保持器は、前記ころがり軸受を構成する前記転動体の両端部に対峙する小径側円環部および大径側円環部と、前記両円環部を前記ころがり軸受の軸方向に複数箇所で連結し前記両円環部と共に前記転動体を転動可能に保持する複数の円すいころ用ポケットと複数の玉用ポケットを区画形成する複数の柱部とからなり、前記玉用ポケットの小径側円環部の端面から大径側円環部の方向に、半径方向内方に湾曲して延在する舌状の突起が形成され、前記突起の先端と大径側円環部の端面と両側柱部の側面に前記玉が保持されることである。
【0010】
前記構成によれば、前記ポケットの突起の先端で前記玉の軸方向の動きが制約されることにより、前記玉の転動軌跡が安定し、トルクが安定する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、円すいころ軸受より低トルクで、玉軸受より寿命の長いころがり軸受を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のころがり軸受の断面図であり、(A)は玉部断面図であり、(B)は円すいころ部の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のころがり軸受の玉と軌道部および鍔との関係を説明する説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のころがり軸受の保持器の説明図である。
【図4】従来例の円すいころ軸受の断面図である。
【図5】従来例の玉軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態のころがり軸受の断面図である。
図1においてころがり軸受1は外輪2、内輪3、複数の円すいころ4A、玉4Bおよび保持器5で構成される。
外輪2は、内周に円すい面の外輪軌道2aが形成されている。
【0015】
図2は本発明の第1の実施形態のころがり軸受の玉と軌道部および鍔との関係を説明する説明図である。
図2において、内輪3は、外周に円すいの面の内輪軌道3a、内輪軌道3aの最大径位置から半径方向外方に内輪軌道3a方向に傾いて延在する鍔面3bが円周状に形成されている。鍔面3bの半径方向外方に断面が円弧で円周状の面取り3dが延在する。
【0016】
内輪軌道3aの玉4Bと接触する位置には、軸方向の半径が玉4Bの半径より大きい円弧形状の僅かの凹部3cが円周上に形成されている。
【0017】
図3は本発明の第1の実施形態のころがり軸受の保持器の説明図である。
保持器5は両端部に対峙する小径側円環部5aおよび大径側円環部5bと、前記両円環部を前記ころがり軸受の軸方向に複数箇所で連結する複数の柱部5cとからなる。
複数の柱部5cは小径側円環部5a、大径側円環部5b共に前記転動体を転動可能に保持する複数の円すいころ用ポケット5Aと複数の玉用ポケット5Bを区画形成している。
【0018】
円すいころ用ポケット5Aは小径側円環部5aより大径側円環部5bの幅が広い台形である。玉用ポケット5Bは円すいころ用ポケット5Aの小径側円環部5aの円周方向中央から、大径側円環部5bの方向に半径方向内湾曲して延在する舌状の突起が形成されている。
【0019】
複数の円すいころ4Aは外輪軌道2aと内輪軌道3aと鍔面3bの間を保持器5のポケット5Aに保持され、転動自在に配置されている。
また、複数の玉4Bは外輪軌道2aと内輪軌道3aの凹部3cの間を面取り3dに接し、保持器5のポケット5Bに保持されて、転動自在に配置されている。
【0020】
一般に、転動体が玉のみである玉軸受は、軌道部との接触が点接触であり、転動体が円すいころのみで、軌道面との接触が線接触である円すいころ軸受にくらべ、ころがり摩擦抵抗が小さ。また円すいころ軸受においては、ころと鍔面の間の摩擦抵抗もあり、そのトルクは転動体が玉のみである玉軸受にくらべ大きいことが分かっている。
【0021】
しかし、転動体が玉のみである玉軸受は、軌道部との接触が点接触であり、転動体が円すいころのみで、軌道面との接触が線接触である円すいころ軸受にくらべ定格荷重が小さく寿命が短いことも分かっている。
【0022】
そこで、上述のごとく、転がり軸受1の転動体を複数の円すいころ4Aと複数の玉Bで構成する事により、転動体が円すいころのみの転がり軸受に比べトルクは小さくなり、転動体が玉のみの転がり軸受に比べ定格荷重は大きくなる。すなわち本発明によるころがり軸受1は、通常の円すいころ軸受より低トルクで、通常の玉軸受より寿命の長いころがり軸受である。
【0023】
また、玉4Bが内輪軌道3aと外輪軌道2aの間隔が狭い方向に転動し、くさび効果によってトルクが増大する等の不具合が生じることがある。内輪軌道3aの玉4Bとの接触位置に凹部3cを設けることにより、前記凹部3cに沿った安定した軌跡で前記玉4Bが転動し、安定したトルク軽減効果を得ることができる。
さらに、保持器5の玉用ポケット5Bに玉4Bを保持する舌状の突起5dを設けたことにより、前記ポケットの突起の先端で前記玉の軸方向の動きが制約され、前記凹部同様安定した軌跡で前記玉4Bが転動し、安定したトルク軽減効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1、10、20 ‥ころがり軸受
2 ‥外輪
2a ‥外輪軌道
3 ‥内輪
3a ‥内輪軌道
3b ‥鍔面
3c ‥内輪軌道の凹部
3d ‥鍔面
4A ‥玉(転動体)
4B ‥円すいころ(転動体)
5 ‥保持器
5a ‥小径側円環部
5b ‥大径側円環部
5c ‥柱部
5d ‥舌状の突起
5A ‥円すいころ用ポケット
5B ‥玉用ポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に円すい形状の内輪軌道、前記内輪軌道の最大径部から半径方向外方に延在し、最大径位置に面取りが形成された鍔面とを有する内輪と、内周部に円すい形状の外輪軌道を有する外輪と、前記内輪軌道と前記外輪軌道の間を転動する複数の転動体と、前記転動体を円周方向に所定の間隔に保持する保持器を備え、かつ前記転動体が複数の円すいころと複数の玉で構成されたことを特徴とするころがり軸受。
【請求項2】
前記内輪軌道の前記玉と接する位置に円周状の僅かの凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載ころがり軸受。
【請求項3】
前記保持器は、前記ころがり軸受を構成する前記転動体の両端部に対峙する小径側円環部および大径側円環部と、前記両円環部を前記ころがり軸受の軸方向に複数箇所で連結し前記両円環部と共に前記転動体を転動可能に保持する複数の円すいころ用ポケットと複数の玉用ポケットを区画形成する複数の柱部とからなり、前記玉用ポケットの小径側円環部の端面から大径側円環部の方向に、半径方向内方に湾曲して延在する舌状の突起が形成され、前記突起の先端と大径側円環部の端面と両側柱部の側面に前記玉が保持されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のころがり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219994(P2012−219994A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89678(P2011−89678)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】