説明

こんにゃく入り即席澱粉麺とその製造方法

【課題】シート式製法を利用し、熱湯を注いで3分以内で喫食することができるこんにゃく入り即席澱粉麺を提供する。
【解決手段】原料が、澱粉に対し、0.01重量%〜100重量%のこんにゃく粉、及び0.01重量%〜100重量%の増粘多糖類を使用して形成され、この原料を加水攪拌して得た混合乳液をシートに成形し、このシートを切り刃で麺線化する。麺線化したので澱粉の種類、こんにゃく粉及び増粘多糖類の比率と組合せにより、澱粉特有の食感、澱粉とこんにゃく両方の特徴を持つ食感、よりこんにゃくに近い食感の麺を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、澱粉、こんにゃく粉、増粘多糖類を原料とし、熱湯を注いで3分以内に喫食することができるこんにゃく入り即席澱粉麺とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、澱粉を主原料とした澱粉麺として、春雨や葛きりが知られており、これらの澱粉面の製造方法としては、シート式製法とダイスを用いた落下式製法が採用されている。
【0003】
前者のシート式製法は、澱粉を水分50〜60%に調整した乳液をベルトコンベア上にシート状に流し込み、スチーマーによって糊化させて澱粉シートを成形し、このシートを切り刃で麺線化することによって製造するものであり、工業的に生産されている乾燥状態の麺サイズは、一般的に幅が1mm以上、厚みが0.7mm以上ある。
【0004】
前記のような水分の乳液で出来た麺において、熱湯を注いで3分以内に湯戻しが可能とするには、厚みが0.3mm以下にしなければならないが、シートの厚みが薄いと、糊化したシートはその粘着性と伸展によってコンベアから容易に剥離することができず、厚みが0.3mm以下のシートを安定して製造することが困難であった。
【0005】
この製法による澱粉麺は、ほとんどが乾燥品であり、喫食するために早いものでも4分以上の茹で戻し時間が必要であった。
【0006】
また、後者の落下式製法は、同様の乳液をダイスの孔から押し出して麺線化することによって製造するものである。
【0007】
この落下式製法では、澱粉材料の選択、もしくは、ダイス径を小さくして麺線を細くすることにより、熱湯を注いで3分以内に喫食することができる麺の製造は可能であるが、落下式製法の実施に用いる設備は構造が複雑で高価なものとなり、多額の設備投資とメンテナンスコストが必要になるので経済的負担が大きくなる。
【0008】
これに対して、シート式製法は、ベルトコンベア上で材料乳液をコンベア上に流し込むことによってシートに成形し、コンベアから剥離したシートを切り刃で麺線化するため、設備の構造が簡単で経済的負担が少なく、麺の製造に適している。
【0009】
ところで、近年、日本の伝統食品であるこんにゃくが、低カロリー性、食物繊維の豊富さからダイエット食品の材料として注目されており、このこんにゃくを配合した麺類の研究開発が提案されている。
【0010】
こんにゃくを配合した麺類においても、場所を選ばず熱湯さえあればどこでも3分以内で喫食することができるインスタント食品としての製品化の要望が高まっている。
【0011】
こんにゃくを用いた麺の製造方法としては、穀粉100重量部に対して0.05から5重量部の少量のこんにゃくゲルの微粒子を混合して原料とし、これに必要に応じて増粘多糖類を加え、この原料を加水混練して作成した生地を圧延して麺帯とし、麺帯を切り刃で麺線化することによって麺が製造される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−217527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、このような製造方法による麺は、生地を圧延して麺帯とした後、麺帯を切り刃で麺線化するため、完成した麺の喫食には高温で時間をかけた茹で戻し時間が必要となり、熱湯を注いで短時間で喫食が可能となるインスタント食品としての対象にはなりにくいという問題がある。
【0013】
そこで、この発明の課題は、シート式製法を利用し、熱湯を注いで3分以内で喫食することができるこんにゃく入り即席澱粉麺とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、澱粉、こんにゃく粉、増粘多糖類を原料として用い、この原料を麺線化した構成を採用したものである。
【0015】
請求項2の発明は、上記原料が、澱粉に対し、0.01重量%〜100重量%のこんにゃく粉、及び0.01 重量%〜100重量%の増粘多糖類を使用して形成されている構成を採用したものである。
【0016】
請求項3の発明は、澱粉、こんにゃく粉、増粘多糖類を原料として用い、前記原料に加水して得た混合乳液をシートに成形し、このシートを切り刃で麺線化する構成を採用したものである。
【0017】
請求項4の発明は、上記澱粉に対し、0.01重量%〜100重量%のこんにゃく粉、及び0.01重量%〜100重量%の増粘多糖類を使用した原料に、50重量%〜1000重量%で加水して混合乳液を形成し、この混合乳液をコンベア上に流し込むことによってシートに成形し、このシートを蒸煮処理した後、コンベアから剥離したシートを切り刃で麺線化する構成を採用したものである。
【0018】
請求項5の発明は、上記澱粉と増粘多糖類を混合して加水攪拌し、これとは別に、こんにゃく粉に加水してこれを攪拌することでこんにゃく粉を膨潤溶解させ、この膨潤溶解させたこんにゃく溶液を澱粉と増粘多糖類の溶液に混合して混合乳液とし、この混合乳液の総加水量を総原料の50重量%〜1000重量%になるよう加水調整し、コンベア上へシート状に流し込んだ混合乳液を80〜100℃の温度で蒸煮処理し、コンベアから剥離したシートを冷却工程と成熟工程後に切り刃で麺線化する構成を採用したものである。
【0019】
ここで、上記澱粉には、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、本くず粉、緑豆澱粉、えんどう澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
また、上記増粘多糖類としては、グアガム、キサンタンガム、カラギーナン、タマリンドガム、ローカストビーンガム、寒天、アルギン酸及びそのナトリウム塩、ジエラガム等の1種もしくは2種以上を混合して澱粉に添加することができる。
【0021】
上記した原料の澱粉に対し、こんにゃく粉と1種もしくは2種以上の増粘多糖類を上記した範囲において組み合わせ使用することにより、任意にそれぞれ独特の食感をつくりだすことができる。
【0022】
特に、こんにゃく粉及び増粘多糖類の添加量を調整することにより、澱粉特有の食感、澱粉とこんにゃく両方の特徴を持つ食感、よりこんにゃくに近い食感とを使い分けることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によると、澱粉、こんにゃく粉、増粘多糖類を原料として用い、この原料を麺線化したので、澱粉の種類、こんにゃく粉及び増粘多糖類の比率と組合せにより、澱粉特有の食感、澱粉とこんにゃく両方の特徴を持つ食感、よりこんにゃくに近い食感の麺を得ることができる。
【0024】
また、こんにゃく粉と増粘多糖類の配合により、従来の即席麺に比べて製造時の加水量を約2.5倍に増やすことができ、製造時の麺の粘性や剥離性等取り扱い性が向上する。
【0025】
更に、ベルトコンベアに対して剥離性のよいシートが形成できるので、シート式製法を利用し、麺線を切り出すための薄いシートの製造が可能になり、熱湯を注いで3分以内で喫食することができるインスタントのこんにゃく入り即席澱粉麺を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0027】
この発明の即席澱粉麺は、澱粉、こんにゃく粉、増粘多糖類を原料として用い、シート式製法を利用し、この原料をシートに形成した後、シートを切り刃で麺線化することによって形成され、麺としては春雨,葛きりに該当するが、これらに限定されるものではなく、また、麺の形状、長さは特に限定されるものではないが、厚みについては0.6mm以下、好ましくは0.3〜0.5mmとする。
【0028】
上記澱粉には、食感、調理方法に応じて、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、本くず粉、緑豆澱粉、えんどう澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の1種もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
また、上記増粘多糖類としては、グアガム、キサンタンガム、カラギーナン、タマリンドガム、ローカストビーンガム、寒天、アルギン酸及びそのナトリウム塩、ジエラガム等の1種もしくは2種以上を混合して澱粉に添加することができる。
【0030】
この発明において使用されるこんにゃく粉の添加量は、原料澱粉に対して、0.01重量%〜100重量%、増粘多糖類の1種もしくは2種以上の添加量は、原料澱粉に対して0.01重量%〜100重量%に設定することができ、こんにゃく粉及び増粘多糖類の添加量を調整することにより、澱粉特有の食感、澱粉とこんにゃく両方の特徴を持つ食感、よりこんにゃくに近い食感とを使い分けることができる。
【0031】
次に、こんにゃく入り即席澱粉麺の製造方法を説明する。
【0032】
先ず、原料澱粉と1種もしくは2種以上の増粘多糖類を添加し、これをAのミキサーで加水して攪拌する。
【0033】
また、Bのミキサーでこんにゃく粉のみを加水して攪拌する。このとき、こんにゃく粉を攪拌するミキサーは、増粘多糖類をミキシングさせる専用ミキサーを使用するのが好ましく、こんにゃく粉を膨潤溶解させるとき、粒子が粗いと製品の品質に影響するため、粒子はできる限り細かくさせることが好ましい。
【0034】
Aのミキサーで澱粉と増粘多糖類を、またBミキサーでこんにゃく粉をそれぞれ十分に攪拌した後、AのミキサーにBのミキサーで膨潤溶解したこんにゃく溶液を混合し、この混合による混合乳液の総加水量が、総原料の50〜1000重量%になるよう加水調整する。
【0035】
このときの総加水量は、好ましくは、総原料の150〜300重量%に設定すると、より均一で安定した乳液をシート式製法のベルトコンベア上に任意の厚みで流し込むことが容易になる。
【0036】
ここで、加水量が300重量%より多くなると、乾燥時における乾燥コストが上がってしまい、また、150重量%より加水量が少なくなると、シートの厚みを均一にすることが難しくなる。
【0037】
Aのミキサーにて加水攪拌された乳液は、春雨や葛きりの製造に用いられているシート式製法のベルトコンベア上に所定の厚みになるよう流し込み、この乳液を80〜100℃で蒸煮処理することにより、乳液は糊化されて粘着性が強くなったシートに成形され、このシートはこんにゃく粉と増粘多糖類によってできたゲルによって、剥離性が改善され、ベルトコンベアから容易に剥離させることが可能になり、シートの薄膜化が可能になる。
【0038】
ベルトコンベアから剥離させたシートは、冷却工程、熟成工程、切り刃による麺線化、乾燥を経て製品であるこんにゃく入り即席澱粉麺となり、このときの製品形状はブロック状、棒状の何れでもよい。
【0039】
乾燥後の麺の厚みは、0.6mm以下であり、好ましくは、0.3〜0.5mmがよく、0.6mm以上だと熱湯を注いで3分以内での湯戻しが困難になり、又、0.3mm以下になると薄すぎて食感に物足りなさを感じる。
【実施例】
【0040】
こんにゃく粉0.2重量部に温湯(50℃)を25重量部加水し、カッターミキサーで攪拌調整する。
【0041】
もう一方のミキサーにて、とうもろこし澱粉100重量部とキサンタンガム0.5重量部を混合し、40℃となる175重量部の湯を加水混合し、上記こんにゃく粉が膨潤溶解したところで、澱粉原料を攪拌しているミキサーにこんにゃく粉溶液を混合して攪拌し、混合乳液を作成する。
【0042】
この混合乳液をベルトコンベアの上に均一に広げ、そして96〜98℃のスチーマーの中をベルトコンベアの走行によって3分半程度の時間だけ通過させ、糊化したシートを形成した。
【0043】
次に、このシートをベルトコンベアから剥離し、冷却させた後ローラに巻取り、常温の部屋にて1日放置し、シートを熟成させた。
【0044】
シートの熟成後、2.9mm幅の切り刃にてシートを裁断し、20cmの長さにした麺を丸型のトレイに充填し45〜50℃の熱風で乾燥させた。最終的に、厚み0.4から0.5もも、水分10%のブロック状の麺を得た。
【0045】
このようにして得た麺を容器に入れて熱湯を注ぎ、3分経過後に喫食したが、ほぐれがよくこんにゃくに似た食感を味わえた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉、こんにゃく粉、増粘多糖類を原料として用い、この原料を麺線化したことを特徴とするこんにゃく入り即席澱粉麺。
【請求項2】
上記原料が、澱粉に対し、0.01重量%〜100重量%のこんにゃく粉、及び0.01重量%〜100重量%の増粘多糖類を使用して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のこんにゃく入り即席澱粉麺。
【請求項3】
澱粉、こんにゃく粉、増粘多糖類を原料として用い、前記原料に加水して得た混合乳液をシートに成形し、このシートを切り刃で麺線化することを特徴とするこんにゃく入り即席澱粉麺の製造方法。
【請求項4】
上記澱粉に対し、0.01重量%〜100重量%のこんにゃく粉、及び0.01重量%〜100重量%の増粘多糖類を使用した原料に、50重量%〜1000重量%で加水して混合乳液を形成し、この混合乳液をコンベア上に流し込むことによってシートに成形し、このシートを蒸煮処理した後、コンベアから剥離したシートを切り刃で麺線化することを特徴とする請求項3に記載のこんにゃく入り即席澱粉麺の製造方法。
【請求項5】
上記澱粉と増粘多糖類を混合して加水攪拌し、これとは別に、こんにゃく粉に加水してこれを攪拌することでこんにゃく粉を膨潤溶解させ、この膨潤溶解させたこんにゃく溶液を澱粉と増粘多糖類の溶液に混合して混合乳液とし、この混合乳液の総加水量を総原料の50重量%〜1000重量%になるよう加水調整し、コンベア上へシート状に流し込んだ混合乳液を80〜100℃の温度で蒸煮処理し、コンベアから剥離したシートを冷却工程と成熟工程後に切り刃で麺線化することを特徴とする請求項4に記載のこんにゃく入り即席澱粉麺の製造方法。