説明

こんにゃく成分含有パウダー、こんにゃく成分含有パウダーの製造方法、食品

【課題】高い食感、高い風味、様々な食品への簡単な応用ができる、こんにゃく成分含有パウダーを提供する。
【解決手段】こんにゃく成分含有パウダーは、50重量%〜80重量%のこんにゃく芋から精製されたこんにゃく粉と、19重量%〜49.9重量%の穀物粉と、0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤と、不可避混合物を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、こんにゃく粉から得られ、様々な食品、日用品、化粧品、飲用品に使用可能なこんにゃく成分含有パウダー、こんにゃく成分含有パウダーの製造方法、食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国を始め諸外国においても、消費者の健康志向やダイエット志向が高まっている。一方で、単身者や核家族化などの進展で、インスタント食品や簡単調理で済む食品への要望が高まっている。加えて、単身者などは、仕事や時間が不規則なため、深夜帯に食事を取らなければならない状態に置かれることも多い。
【0003】
このように、現代社会の食生活は、健康志向やダイエット志向を簡単調理で得られる食品によって解決することを求めている。
【0004】
こんにゃくは、日本でおよそ1500年の歴史を有する伝統食品であり、低カロリー性、豊富な食物繊維などに、健康志向やダイエット志向の食材として注目されている。このため、こんにゃくを用いたゼリー、麺類などの食材やこれに関する技術が、提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
特許文献1は、こんにゃくゲルの微粒子を含有する麺類を開示する。また、特許文献2は、食材に配合するためのこんにゃく粉砕物の技術を開示する。
【特許文献1】特開2000−217527号公報
【特許文献2】特開平7ー184568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、次のような問題を有している。
【0007】
特許文献1は、あらかじめゲル化したこんにゃく粉を麺類に含有させることで、食感の向上を図っているが、こんにゃく粉の粒度が小さくなりきらず、麺類に配合させたとしても食感には不十分さが残る。また、こんにゃく粉の有する臭い成分であるトルメチルアミンが残留し、風味も低い問題がある。また、食感の重要な要素である「もちもち感」も高いものではない。
【0008】
更に、特許文献1は、ゲル化したこんにゃく粉を麺類に配合して得られる麺類を提供するので、健康志向やダイエット志向に適した様々な食品への応用や展開ができない問題もある。
【0009】
特許文献2は、ざらつき感を低減させる技術を開示するが、特許文献1と同じく、こんにゃく粉の粒度が小さくなりきらず、食感には不十分さが残る。更に、特許文献1は、こんにゃく粉を冷凍粉砕して300メッシュ以下のこんにゃく粉を得ることを指摘するが、具体的な構成は不明である。また、こんにゃく粉だけを配合物としてみなしているので、食感の重要な要素である「もちもち感」を高めるものではない。特許文献1、2をはじめとする従来技術では、もちもち感を実現することは困難である。
【0010】
また、こんにゃく粉の粒度が大きいと、こんにゃく粉を、小麦粉や米粉などの他の食材に配合することが困難になる。粒度の大きなこんにゃく粉を、小麦粉や米粉などの他の食材に配合して、麺類や加工食品とした場合には、こんにゃく粉の粒度が食感を損なったり、こんにゃく臭を発したりする問題もある。
【0011】
以上のように、従来技術では、高い食感、高い風味、様々な食品への簡単な応用、といった点が不十分である問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決しつつ、高い食感、高い風味、様々な食品への簡単な応用ができる、こんにゃく成分含有パウダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に鑑み、本発明のこんにゃく成分含有パウダーは、50重量%〜80重量%のこんにゃく芋から精製されたこんにゃく粉と、19重量%〜49.9重量%の穀物粉と、0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤と、不可避混合物を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のこんにゃく成分含有パウダーは、穀物粉と混合されることで、こんにゃく粉の粒度がより小さくなり、非常に微小な粒度となる。結果として、ざらつき感が無くなって、高い食感を実現できる。
【0015】
また、こんにゃく成分含有パウダーを、水やお湯と混ぜることで、簡単に新鮮なこんにゃくを得ることができる。
【0016】
穀物粉の有するでんぷん質が、こんにゃくの食物繊維であるグルコマンナンと相乗効果を奏し、もちもち感の高い食感を実現できる。
【0017】
更に、本発明のこんにゃく成分含有パウダーは、パウダーであるので、これを用いて、様々な食品に容易に応用することができる。
【0018】
また、こんにゃく粉に穀物粉を配合してこんにゃく成分含有パウダーとすることで、穀物粉との攪拌によってこんにゃく粉そのもの(および出来上がるパウダーも)の粒度が小さくなり、小麦粉や米粉などの他の食材に容易に配合できるようになる。更に、配合された食材で作られる食品の、食感や風味を損なわない。このため、本発明のこんにゃく成分含有パウダーは、こんにゃくを得るだけでなく、種々の食品に配合でき、こんにゃくの有する食物繊維、低カロリーなどのメリットを、種々の食品に追加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の発明に係るこんにゃく成分含有パウダーは、50重量%〜80重量%のこんにゃく芋から精製されたこんにゃく粉と、19重量%〜49.9重量%の穀物粉と、0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤と、不可避混合物を有する。
【0020】
この構成により、粒度の小さく、こんにゃく臭の少ないこんにゃく成分含有パウダーが得られる。
【0021】
本発明の第2の発明に係るこんにゃく成分含有パウダーでは、第1の発明に加えて、こんにゃく粉は、40メッシュ〜100メッシュの粒度を有する。
【0022】
この構成により、出来上がるこんにゃく成分含有パウダーの粒度が小さくなる。
【0023】
本発明の第3の発明に係るこんにゃく成分含有パウダーでは、第1又は第2の発明に加えて、こんにゃく粉は、アルコール度50%〜80%のエタノール製剤で精製されて得られる。
【0024】
この構成により、こんにゃく粉のこんにゃく臭が低減する。
【0025】
本発明の第4の発明に係るこんにゃく成分含有パウダーでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、穀物粉は、米、大豆、とうもろこし、麦、小麦、大麦、そば、あわ、ひえ、雑穀、野菜粉末の少なくとも一つから得られる。
【0026】
この構成により、様々な特徴を有するこんにゃく成分含有パウダーが実現できる。
【0027】
本発明の第5の発明に係るこんにゃく成分含有パウダーでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、アルカリ剤は、水酸化カルシウムを含む。
【0028】
この構成により、こんにゃく成分含有パウダーがゲル化しやすくなる。
【0029】
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
【0030】
こんにゃく成分含有パウダーは、こんにゃく粉、穀物粉、アルカリ剤によって製造される。具体的には、50重量%〜80重量%のこんにゃく芋から精製されたこんにゃく粉と、19重量%〜49.9重量%の穀物粉と、0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤とからなる。なお、不可避混合物が、製造工程にて混入することを排除するものではない。
【0031】
こんにゃく成分含有パウダーは、こんにゃく粉、穀物粉、アルカリ製剤の配合と攪拌によって製造される、乾燥した粉体である。また、このこんにゃく成分含有パウダーは、水やお湯と共に練り上げられることで、簡単にこんにゃく成分入りの食品を作ることができる。
【0032】
こんにゃく芋を用いたこんにゃく粉については、従来技術にも提案されていたが、食感、風味、食味、色味を十分に出すには、従来技術では不十分であった。特に、こんにゃく粉をそのままこんにゃくにした場合には、こんにゃく臭が多い問題がある。小麦粉や米粉などの食材にこんにゃく粉を配合して、麺類や加工食品とする場合には、こんにゃく臭が強い上、食感や風味も不十分であった。
【0033】
発明者は様々な実験や試行錯誤の末、19重量%〜49.9重量%の穀物粉を配合することで、こんにゃく粉およびこんにゃく成分含有パウダーの粒度を小さくし、もちもちとした高い食感や風味を高めつつ、こんにゃく臭を押さえて、食品の本来の風味などを損なうことなく、こんにゃくの有する低下カロリー、高食物繊維といった、特徴を活かす技術に到達した。
【0034】
こんにゃく成分含有パウダーは、乾燥した微細な粒度を有する粉体であり、水やお湯に混ぜることによって、こんにゃくにしたり、食材に混ぜ込んだりする。すなわち、こんにゃく成分含有パウダーがあれば、様々な場所においてこんにゃくを容易に得ることができる。近年の健康志向やダイエット志向によって、こんにゃくやこんにゃく成分を利用した食材が、家庭でもレストランでも好まれるようになっている。こんにゃくは、低カロリー、低脂肪、低脂質であって、食物繊維が豊富である健康食品だからである。
【0035】
実際に家庭やレストラン(近年では、海外においても、こんにゃくを利用した料理が好まれる傾向にある)では、こんにゃくを使用したくても、手に入りにくい場合があったり、消費期限の問題で、利用しにくい場合があったりする。こんにゃくそのものを入手したり使用したりしにくい状況下では、こんにゃくそのものを入手するよりも、こんにゃくを簡単に製造できる材料を入手する方が適している。こんにゃくそのものは、生鮮食品であって、傷んだり腐ったりするのが早いからである。これに対して、こんにゃく成分含有パウダーであれば、含む水分も少なく、長く日持ちする。加えて、レシピどおりに作業すれば、こんにゃく成分含有パウダーから、確実かつ容易にこんにゃくを得ることができる。
【0036】
このため、近年の健康志向やダイエット志向に適したこんにゃく食材の提供には、こんにゃくそのものを提供するよりも、こんにゃくを作る基となるこんにゃく成分含有パウダーを提供する方が好適である。
【0037】
まず、こんにゃく成分含有パウダーの原材料について説明する。
【0038】
(こんにゃく粉)
こんにゃく粉について説明する。
【0039】
こんにゃく芋を洗浄した後に、薄く切りそろえて、周囲の皮を取り除いて乾燥させる。
【0040】
周囲の皮は、丁寧に取り除かれるのが好ましい。皮が丁寧に取り除かれることで、こんにゃく粉の色味や風味が損なわれにくいからである。薄く切られたこんにゃく芋は、天日もしくは火力によって乾燥される。但し、天日での乾燥は、天候に左右されやすく、切られた芋の表面を黒ずませることがあるので、火力による乾燥が好ましい。
【0041】
乾燥された薄切り芋は、粉砕機により40メッシュ〜100メッシュ(300μm〜500μm)の粒度に均一化する。
【0042】
粉砕機による粉砕では、薄切り芋を一度に40メッシュ〜100メッシュの粒度に粉砕してもよいし、最初に粗めに粉砕してから、次に細かく粉砕するように、段階的でもよい。段階的な粉砕では、最初にカッターを用いた粗めの粉砕を行い、次にミルを用いた細かな粉砕を行うことでも良い。このように、40メッシュ〜100メッシュの粒度に均一化された粉であって粘度が40以上のものを、特等粉という。
【0043】
次に、この特等粉をアルコール度50%〜80%のエタノール製剤で精製する。
【0044】
具体的には、特等粉を水に溶解させて、攪拌し、遠心分離機にかけて、上澄み液を捨てる。上澄み液が捨てられると、沈殿物を濾過して回収する。ついで、アルコール度50%のエタノールで洗浄し、ついで、アルコール度80%のエタノールで洗浄する。
【0045】
この作業を2〜4回繰り返して、最後は、無水エタノールおよびエーテルで洗浄し、沈殿物を乾燥させる。この乾燥された沈殿物は、粘度が調整されたこんにゃく粉となっており、こんにゃくに含まれる食物繊維である「グルコマンナン」の量が増える。このように粉砕された後、エタノール製剤で精製されたこんにゃく粉が、こんにゃく成分含有パウダーの原料として用いられる。
【0046】
なお、エタノール製剤による洗浄が不十分であると、不純物が残り、アルカリ剤である水酸化カルシウムとこんにゃく粉が配合される時に、こんにゃく臭であるトルメチルアミンを発生させる原因となる。このため、特等粉は、十分にエタノール製剤で洗浄されて、こんにゃく粉とされるべきである。
【0047】
また、こんにゃく成分含有パウダーを製造する際に用いられるこんにゃく粉は、乾燥した状態である。50重量%〜80重量%の乾燥したこんにゃく粉が、こんにゃく成分含有パウダーの製造に用いられる。
【0048】
(穀物粉)
こんにゃく成分含有パウダーは、こんにゃく粉以外に穀物粉が用いられる。穀物粉は、米、大豆、とうもろこし、麦、小麦、大麦、そば、あわ、ひえ、雑穀、野菜粉末の少なくとも一つから得られる粉体である。もちろん、ここで列挙した穀物以外の穀物より得られるふんたいでも良い。穀物粉は、でんぷん成分を有しており、このでんぷん成分が、こんにゃく粉の食物繊維「グルコマンナン」と相乗効果を奏して、従来のこんにゃく食材にはない、もちもちとした食感を生じさせる。
【0049】
穀物粉として、大豆や米が選ばれる場合には、腹持ちの良いこんにゃく成分含有パウダーが得られ、麦類や雑穀が得らればれる場合には、食感の高いこんにゃく成分含有パウダーが得られ、野菜粉末が選ばれる場合には、色味や風味のついたこんにゃく成分含有パウダーが得られる。様々な特徴を有するこんにゃく成分含有パウダーが得られることで、様々な食品への応用が広がる。
【0050】
穀物粉は、こんにゃく粉と同様に数10メッシュから数100メッシュ程度の粒度に粉砕されていることが好ましい。穀物粉は、こんにゃく粉とアルカリ製剤と一緒に混合されて、こんにゃく成分含有パウダーを製造するからである。穀物粉は、こんにゃく粉と同様の手順で粉砕されて粉体とされる。
【0051】
こんにゃく成分含有パウダーを得るために、穀物粉が配合・攪拌されることで、こんにゃく粉およびこんにゃく成分含有パウダーの粒度が小さくなる。穀物粉は硬度が高く、穀物粉と一緒に攪拌されることで、こんにゃく粉の粒度が小さくなりうるからである。
【0052】
こんにゃく成分含有パウダーの粒度が小さいことで、こんにゃく臭が少なくなり、風味、食味、食感が高まる。当然ながら、種々の食材や素材への、こんにゃく成分含有パウダーの配合が容易となる。
【0053】
また、穀物粉の種類によって、製造されるこんにゃく成分含有パウダーの食感、風味、色味に変化を与えることができる。
【0054】
(アルカリ剤)
こんにゃく成分含有パウダーは、こんにゃく粉、穀物粉にアルカリ剤を加えて製造される。アルカリ剤が混合されることで、こんにゃく粉がゲル化し、こんにゃく粉が穀物粉と混ざりやすくなり、両者が一体化しやすくなる。この結果、こんにゃく粉と穀物粉とが一体となったこんにゃく成分含有パウダーが製造される。
【0055】
アルカリ剤としては、水酸化カルシウムが好適に使用される。
【0056】
(こんにゃく成分含有パウダーの製造)
こんにゃく成分含有パウダーは、上述のこんにゃく粉、穀物粉、アルカリ剤を混合して製造される。図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるこんにゃく成分含有パウダーの製造工程を説明するフローチャートである。
【0057】
まず、こんにゃく芋を薄く切りそろえ、皮を取り除いて乾燥させたものを40メッシュ〜100メッシュ程度に粉砕した特等粉と、水と、アルコールとを容器に投入する。
【0058】
ついでステップST1にて、容器に投入された水とアルコールの濃度が調整されて、特等粉が攪拌洗浄される。
【0059】
次に、ステップST2にて、容器が静かな状態に置かれ、上澄みが取り除かれて、沈殿物が濾過される。濾過された沈殿物は、ステップST2の結果物である湿潤精製粉である。
【0060】
湿潤精製粉は、水とアルコールと共に再び容器に投入され、ステップST3にて、攪拌洗浄される。攪拌洗浄された後、ステップST4にて、容器が静かな状態に置かれ、上澄みが取り除かれて、沈殿物がろ過される。このステップST2〜ST4が3〜4回繰り返される。この繰り返しによって、粘度が調整されたこんにゃく粉が得られる。ステップST4の終了時点では、こんにゃく粉は、湿潤状態である。
【0061】
次に、ステップST5において、湿潤状態のこんにゃく粉が乾燥される。乾燥された結果、乾燥したこんにゃく粉が得られる。このこんにゃく粉は、40メッシュ〜100メッシュの粒度を有し、一定の粘度を有するように調整されている。また、このこんにゃく粉は、食物繊維「グルコマンナン」を含んでいる。
【0062】
次にステップST6にて、容器に、50重量%〜80重量%のこんにゃく粉(ステップST5によって得られた乾燥されたこんにゃく粉)、19重量%〜49.9重量%の穀物粉および0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤を投入する。このとき、不可避混合物が混入することは仕方が無い。容器中において、投入されたこんにゃく粉、穀物粉、アルカリ剤が配合されて攪拌される。
【0063】
ここで、穀物粉が19重量%未満であると、こんにゃく粉の粒度が小さくなりきれず、こんにゃく臭が残ったりもちもちとした食感が十分に得られない結果となる。一方、49重量%よりも多いと、こんにゃく成分含有パウダーを水やお湯に入れても、十分に固まりきれずに、こんにゃくを得ることができなくなる。十分に固めるためには、多くのアルカリ剤を必要とするが、この場合にはこんにゃく臭が高まるデメリットがある。
【0064】
以上のことから、こんにゃく成分含有パウダーに配合される穀物粉は、19重量%〜49.9重量%であることが好適である。
【0065】
このステップST6の結果、こんにゃく成分含有パウダーが製造される。このこんにゃく成分含有パウダーは、水やお湯に混ぜることで、こんにゃくとなって、料理に使用されたり、種々の原料に混合されて、種々の食材(例えば麺類)に応用されたりする。
【0066】
製造されたこんにゃく成分含有パウダーは、非常に低カロリーで脂質も少ないのに対して、食物繊維が多いという健康志向やダイエット志向に適した食材である。更には、こんにゃく成分含有パウダーは、非常に微細な粒度を有する粉体であるので、様々な用途に応用が可能である。特に、穀物粉を混合しているので、穀物粉のでんぷん質が、こんにゃく粉の食物繊維「グルコマンナン」と組み合わさって、従来にはないもちもちの食感を実現する。もちもちの食感が得られることで、実施の形態1のこんにゃく成分含有パウダーは、麺類などに好適に応用できる。
【0067】
また、穀物粉を混合することで、こんにゃく成分含有パウダーを用いて製造されるこんにゃくの色味が鮮やかになり、色落ちがしにくくなるメリットもある。一般的にこんにゃくはアルカリ食品であるために、色がつきにくい。実際には、図1の製造工程で製造されるこんにゃく成分含有パウダーに野菜の粉末やエキスで色付けする。穀物粉が含まれていないこんにゃく成分含有パウダー(こんにゃく粉とアルカリ剤だけで製造されるこんにゃく成分含有パウダー)に対して、実施の形態1におけるこんにゃく成分含有パウダーは、色付けが容易でかつ色落ちがしにくい。
【0068】
このように、実施の形態1におけるこんにゃく成分含有パウダーは、様々な用途に利用できると共に、日持ちの良い乾燥した粉体として提供されるので、新鮮なこんにゃくを入手しにくい地域(例えば外国)においても、容易にこんにゃくを提供できる。
【0069】
また、必要に応じて、ステップST7にて容器中に配合されたこんにゃく粉や穀物粉を粉砕してもよい。ステップST6での配合・攪拌において、こんにゃく粉や穀物粉は更に粒度が細かくなっているが(すなわち、こんにゃく成分含有パウダーの粒度が細かくなっている)、ステップST7の粉砕によって、更に人為的に粒度が下げられるからである。
【0070】
容器中に、こんにゃく粉、穀物粉、アルカリ剤が配合されて、攪拌されるのに合わせて(あるいは後で)粉砕機やカッターによって製造されるこんにゃく成分含有パウダーが更に微細化されてもよい。こんにゃく粉のみで粉砕される場合に比べて、穀物粉が配合されている状態で粉砕されると、こんにゃく粉よりも硬度の高い穀物粉との摩擦によって、こんにゃく粉はさらに細かく粉砕されやすくなる。また、穀物粉自身も同様である。
【0071】
このため、ステップST6においてあるいはその後で、粉砕するステップが追加されると、更に微細な粒度を有するこんにゃく成分含有パウダーが製造される。この粉砕するステップが追加されると、粉砕機だけでは不可能であった20μmの粒度のこんにゃく成分含有パウダーを実現できた。この微細な粒度のこんにゃく成分含有パウダーによって、食物だけでなく、飲料水や美容や医薬への応用の可能性も広がる。
【0072】
こんにゃく成分含有パウダーは、こんにゃく粉以外に配合される穀物粉に使用される穀物の種類によって、様々な風味や食味を実現できる。また、穀物粉と合わせて/別に、野菜粉末を加えることで、色や味のついたこんにゃく成分含有パウダーを提供できる。野菜粉末による色や味(例えば、ケールの野菜粉末であれば、緑色のこんにゃく成分含有パウダーになる)を有するこんにゃく成分含有パウダーは、水やお湯でゲル化させるだけで、予め色や味のついたこんにゃくを製造できる。
【0073】
また、こんにゃく成分含有パウダーそのものに、種々の食材粉末を入れるだけでなく、こんにゃく成分含有パウダーを、小麦粉や米粉などの他の食材に配合できる。こんにゃく成分含有パウダーが配合された食材によって、麺類、加工食品などの食品が製造できる。これらの食品は、こんにゃく成分含有パウダーの有する低カロリー、高濃度の食物繊維といったメリットを有する。このため、こんにゃく成分含有パウダーを含む食品は、現代の健康志向、ダイエット志向に最適である。
【0074】
実施の形態1のこんにゃく成分含有パウダーは、パウダー自身の展開や、パウダーを配合させる食品の展開が広く、健康志向やダイエット志向に適した多種多様な用途に用いられる。
【0075】
また、微細化によってこんにゃく成分含有パウダーの食物繊維が腸の奥に届き、排便の手助けを行うメリットも高い。更には、ジュースやお茶にこんにゃく成分含有パウダーを混ぜることで、満腹感が出て、ミネラルやビタミンの摂取を高めるメリットも生じうる。
【0076】
このように製造されたこんにゃく成分含有パウダーは、低カロリー、低脂質であって、食物繊維の豊富な健康食品となる。また、穀物粉が混合されることで、こんにゃく臭の原因であるトルメチルアミンを、既存のこんにゃく粉の400ppmから17ppmと、20分の1以下に抑えることもできる。
【0077】
発明者は、更に、このようにして製造されたこんにゃく成分含有パウダーの生活習慣病に及ぼす影響を実験した。
【0078】
(実験説明)
こんにゃくに含まれるグルコマンナンには、血中グルコース量および血中コレステロール量を抑える効果があるといわれている。発明者は、マウスを用いた実験を通じて、実施の形態1で説明された製造工程に従って製造されたこんにゃく成分含有パウダーによって、抗肥満作用および抗糖尿病作用について検証を行った。加えて、抗脂質代謝異常症作用についても検証を行った。
【0079】
実施の形態1の製造工程で得られるこんにゃく成分含有パウダーを動脈硬化誘発飼料に混入させ、実験飼料を作成した。実験動物は、6週齢の雄性アルビノ(ICR)マウスおよび10週齢の雄性2型糖尿病モデル(db/db)マウスを用い、飼料および飲用水を自由摂取させた。なお、比較のために、比較用マウスには、こんにゃく成分含有パウダーを混入してない動脈硬化誘発飼料と飲用水を与えた。
【0080】
飼料摂取量および体重増加率を一日毎に測定し、摂取開始から28および56日目に、採決、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)ならびに開腹手術を行った。肝臓質量、内臓脂肪量、血中グルコース量、血中アディポネクチン量、血中インスリン量、血中トリグリセライド量、血中遊離脂肪酸量、血中総コレステロール量を測定した。
【0081】
結果として、ICRマウスでは、実験飼料を摂取したマウスは、こんにゃく成分含有パウダーを含まない飼料を摂取したマウスと比較して空腹時血糖値に影響することなく、OGTTによる食後血糖値の上昇を抑制した。一方、db/dbマウスでは、実験飼料を摂取したマウスは、血中のトリグリセライドおよび総コレステロールの抑制が認められた。またICRマウス同様、OGTTによる食後血糖値の上昇も抑制した。
【0082】
以上の結果から、実施の形態1で製造されるこんにゃく成分含有パウダーは、糖尿病を予防および治療する効果、脂質代謝異常症を治療する効果を有する可能性が示唆される。
【0083】
以上のように、実施の形態1のこんにゃく成分含有パウダーは、健康志向およびダイエット志向に適していると共に、様々な食材に容易に応用が可能であって、もちもちとした食感や高い風味や色味を有するこんにゃくを実現できる。
【0084】
また、実施の形態1におけるこんにゃく成分含有パウダーは、こんにゃく粉に穀物粉を配合して製造されることで、こんにゃく粉およびこんにゃく成分含有パウダーそのものの粒度が小さくなる。穀物粉を含まない従来のこんにゃく粉では実現できなかったものである。このように、粒度が小さくなることで、こんにゃく臭が減少する。こんにゃく成分含有パウダーを水やお湯に混ぜることで得られるこんにゃくは、こんにゃく臭を少なくできる。
【0085】
また、こんにゃく成分含有パウダーの粒度が小さいことで、小麦粉や米粉などの他の食材に配合しやすくなる。また、こんにゃく成分含有パウダーを配合された小麦粉や米粉で、麺類や加工食品を製造する場合には、こんにゃく臭が少ない上に食品の食感も損なわない(こんにゃく成分含有パウダーの粒度が小さいので)。更には、こんにゃく成分含有パウダーが穀物粉を含有することで、もちもちとした食感を生じさせるので、こんにゃく成分含有パウダーを含む食品の食感は更に向上する。
【0086】
こんにゃく粉の粒度が小さくなることで、こんにゃく臭が低減するので、こんにゃく成分含有パウダーが含む穀物粉や野菜粉末本来の味も出やすい。このため、様々な食材や素材を配合しやすくなる。
【0087】
このように、こんにゃく成分含有パウダーに含まれる他の食材の粉末の風味や食味を損なわずに、低カロリーおよび高い食物繊維といった、こんにゃく成分のメリットを享受できる。
【0088】
また、当然ながらこんにゃく成分含有パウダーを小麦粉や米粉などのように他の食材に含有させて食品を製造する場合にも、食品の風味、食味、食感を損なうことなく、低カロリーおよび高い食物繊維といった、こんにゃく成分のメリットを享受できる。
【0089】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
【0090】
実施の形態2は、実施の形態1で説明したこんにゃく成分含有パウダーの応用について説明する。
【0091】
実施の形態1の製造工程で得られたこんにゃく成分含有パウダーは、水やお湯につけられて攪拌されることで、次第にゲル化が進み、弾力のあるこんにゃくになる。こんにゃく成分含有パウダーと水との量を調整することで、一定の大きさを有するこんにゃくが製造される。型にはめれば、方形や円形のこんにゃくを製造できる。すなわち、こんにゃく成分含有パウダーによって、いかなる場所でも簡単に新鮮なこんにゃくを得ることができる。
【0092】
このようなこんにゃくは、包丁でスライスされたり、こまかくちぎられたりすることで、料理に幅広く応用できる。
【0093】
また、種々の料理に粉体であるこんにゃく成分含有パウダーを混ぜることで、料理の風味や味を変えることなく、食物繊維を増加させたりできる。
【0094】
例えば、餃子や春巻きの具(たね)にこんにゃく成分含有パウダーを混ぜることで、食物繊維を増加させた餃子や春巻きを実現できる。
【0095】
また、コロッケや、ハンバーグなどの具材に、こんにゃく成分含有パウダーを混ぜることで、これらの料理の食物繊維や栄養価を高めることができる。
【0096】
あるいは、ドレッシングやマヨネーズの材料に、こんにゃく成分含有パウダーを混ぜることで、ドレッシングやマヨネーズの食物繊維や栄養価を高めたり、脂質を下げたりできる。例えば、このような料理やドレッシングを食することによって、マウスによる実験で確認された糖尿病予防などの効果が得られる可能性もある。また、こんにゃく成分含有パウダーは、穀物粉を含むことで、もちもちとした食感を奏する。このため、上述の料理に利用されても、これらの料理の食感を高めることができ、損なうことはほとんど無い。加えて、非常に微細な粒度を有するので、各種料理に混合させやすく、ドレッシングやジュースなどの液体物に対しても、容易に混合させることができる。
【0097】
また、当然ながら麺類に混ぜることもできるので、低カロリーなこんにゃく成分を含有した麺類(うどん、ラーメン、スパゲッティなど)を提供することも可能である。
【0098】
あるいは、アイスクリームにこんにゃく成分含有パウダーを配合してもよい。
【0099】
こんにゃくそのものは冷凍することができないが、アイスクリームに配合されることで、冷凍できることになる。このように、パウダーであることで、保存や保管も容易となる。
【0100】
以上のように、多種多様な食材、素材、食品に配合されるのは、こんにゃくそのものではなく粉であるこんにゃく成分含有パウダーであるので、配合は容易である。当然ながら、食材、素材、食品の風味、食味、色味に悪影響も与えにくい。消費者は、こんにゃくの有する低カロリー、高食物繊維といったメリットを享受しつつ、食品そのものの食味や風味も楽しむことができる。
【0101】
このように、実施の形態1で製造されたこんにゃく成分含有パウダーは、様々な食品や料理に応用が可能であって、消費者の健康志向やダイエット志向に応えることができる。
【0102】
なお、本発明のこんにゃく成分含有パウダーは、パウダー状で提供されてもよいし、こんにゃくとなって提供されてもよいし、食材に応用された状態で提供されても良い。提供や流通の状態を特に限定するものではない。
【0103】
以上、実施の形態1〜2で説明されたこんにゃく成分含有パウダー、こんにゃく成分含有パウダーの製造方法、食品は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の形態1におけるこんにゃく成分含有パウダーの製造工程を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50重量%〜80重量%のこんにゃく芋から精製されたこんにゃく粉と、
19重量%〜49.9重量%の穀物粉と、
0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤と、不可避混合物を有するこんにゃく成分含有パウダー。
【請求項2】
前記こんにゃく粉は、40メッシュ〜100メッシュの粒度を有する請求項1記載のこんにゃく成分含有パウダー。
【請求項3】
前記こんにゃく粉は、アルコール度50%〜80%のエタノール製剤で精製されて得られる請求項1又は2記載のこんにゃく成分含有パウダー。
【請求項4】
前記穀物粉は、米、大豆、とうもろこし、麦、小麦、大麦、そば、あわ、ひえ、雑穀、野菜粉末の少なくとも一つから得られる請求項1から3のいずれか記載のこんにゃく成分含有パウダー。
【請求項5】
前記アルカリ剤は、水酸化カルシウムを含む請求項1から4のいずれか記載のこんにゃく成分含有パウダー。
【請求項6】
50重量%〜80重量%のこんにゃく芋から精製されたこんにゃく粉と、
19重量%〜49.9重量%の穀物粉と、
0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤と、
不可避混合物と、とに対して、
(1)配合するステップ、
(2)攪拌するステップ、
を与えることで得られるこんにゃく成分含有パウダー。
【請求項7】
更に粉砕するステップを与えることで得られる請求項6記載のこんにゃく成分含有パウダー。
【請求項8】
50重量%〜80重量%のこんにゃく芋から精製されたこんにゃく粉と、
19重量%〜49.9重量%の穀物粉と、
0.1重量%〜1重量%のアルカリ剤と、
不可避混合物と、を配合し、攪拌するこんにゃく成分含有パウダーの製造方法。
【請求項9】
請求項1から7に記載のいずれかのこんにゃく成分含有パウダーを含む食品。

【図1】
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