説明

さけ・ます用自然産卵床装置

【課題】 大規模な河川工事を必要とせずに、さけ・ますの自然産卵を可能とするさけ・ます用自然産卵床装置を提供することである。
【解決手段】 外槽(12)と、外槽の内部に配置され、外槽の底壁(12e)との間に所定間隔へだてて設けられた底壁(20)を有する産卵槽(28、30、32)とを備え、産卵槽の底壁には複数の貫通穴(34)が設けられ、産卵槽の底部には砂利を敷き詰めた砂利層が設けられており、外槽に水を供給すると、前記産卵槽に水が導入され、前記産卵槽に導入された水が流水状態で前記産卵槽から排出され、かつ、外槽と産卵槽との水頭差により、貫通穴を介して、砂利層から水が湧き上がるように構成されていることを特徴とする自然産卵床装置(10)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、さけ・ます用自然産卵床装置に関する。より詳細には、本発明は、自然に近い状態でさけ・ますの産卵を促進させるさけ・ます用自然産卵床装置に関する。
【背景技術】
【0002】
さけやますは、河床からの湧水がある場所で産卵をすることが知られている。この河床からの湧水は、地下水によるものでなくともよく、川の水位変化による河床からの湧水でも産卵することが分かっている。一方、現在、さけ・ますの産卵は、人工的なふ化事業に依存しているが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、現在のさけ・ますの産卵は、人工的なふ化事業に依存しているため、多大な手間とコストがかかるという課題がある。また、さけ・ますが遡上する河川を自然産卵が可能なように改修すると、大規模な河川工事が必要となるため、自然環境を破壊するという河川周辺の住民感情に悪影響を与えるおそれがあるという課題がある。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、大規模な河川工事を必要とせずに、さけ・ますの自然産卵を可能とするさけ・ます用自然産卵床装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載のさけ・ます用自然産卵床装置は、外槽と、前記外槽の内部に配置され、前記外槽の底壁との間に所定間隔へだてて設けられた底壁を有する産卵槽とを備え、前記産卵槽の前記底壁には複数の貫通穴が設けられ、前記産卵槽の底部には砂利を敷き詰めた砂利層が設けられており、前記外槽に水を供給すると、前記産卵槽に水が導入され、前記産卵槽に導入された水が流水状態で前記産卵槽から排出され、かつ、前記外槽と前記産卵槽との水頭差により、前記貫通穴を介して、前記砂利層から水が湧き上がるように構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載のさけ・ます用自然産卵床装置は、前記請求項1の装置において、前記産卵槽が区画壁により複数の槽に分割されており、所望の槽で産卵行動をさせることができるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自然産卵床装置によれば、さけ・ますの産卵に必須の湧水箇所を簡単な構造で提供することができるので、大規模な河川工事を必要とせずに、さけ・ますの自然産卵を比較的安価に可能とすることができる。また、産卵槽を複数設けることにより、所望の産卵槽を選択することができるので、さけ・ますの産卵習性に適合した自然産卵を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るさけ・ます用自然産卵床装置について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係るさけ・ます用自然産卵床装置を模式的に示した部分切り取り斜視図である。図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係るさけ・ます用自然産卵床装置は、長手方向側壁12a、12b、横断方向側壁12c、12d、及び底壁12eを有する外槽12を備えている。
【0009】
さけ・ます用自然産卵床装置10は又、外槽12内に水を供給する流入路14と、外槽12内から水を排出する流出路16とを備えている。流入路14は、横断方向側壁12cに接続された管路として示されており、流出路16は、横断方向側壁12dに接続された開水路として示されている。
【0010】
さけ・ます用自然産卵床装置10は又、外槽12の横断方向側壁12cとの間に所定間隔へだてて配置された内部横断方向壁18と、外槽12の底壁12eとの間に所定間隔へだてて配置された内部底壁20を備えており、これにより外槽12の横断方向側壁12c及び底壁12eと内部底壁20との間に底部流路22が形成されることとなる。
【0011】
さけ・ます用自然産卵床装置10は更に、外槽12、内部横断方向内壁18、及び内部底壁20及び外槽12によって囲まれる産卵槽を備えている。産卵槽は、第1区画壁24及び第2区画壁26によって、3つの槽、即ち、第1産卵槽28、第2産卵槽30、及び第3産卵槽32に分割されている。
【0012】
各産卵槽28、30、32の底部を形成する内部底壁20には、複数の貫通穴34が設けられており、これにより底部流路22と各産卵槽28、30、32は連通している。なお、さけ・ます用自然産卵床装置10の使用時には、図3に最も良く示されるように、各産卵槽28、30、32の底部には砂利が敷き詰められている。
【0013】
各産卵槽28、30、32は、流路36を介して、流出路16と連通しており、各産卵槽28、30、32と流路36は、昇降可能なゲート28a、30a、32aによって互いに遮断されている。なお、好ましくは、流路36には、さけ・ますの遡上を防止するため、流出路16との間に昇降可能なゲート36aが設けられている。
【0014】
また、好ましくは、流入路14から流入した水が、各産卵槽28、30、32に越流し易いように、内部横断方向壁18、第1区画壁24、第2区画壁26の上端に切欠き18a、24a、26aが設けられている。そして、各切欠き18a、24a、26aの下端高さは、切欠き18aよりも切欠き24aが低く、切欠き24aよりも切欠き26aが低くなるように形成されているため、各産卵槽28、30、32に導入された水は、流水状態を維持して産卵槽から排出されるようになっている。
【0015】
以上のように構成されたさけ・ます用自然産卵床装置10の使用について説明する。装置10の使用に先立って、流入路14を介して装置10内に水を供給する。すると、内部横断方向壁18、第1区画壁24、及び第2区画壁26をそれぞれ越流して、第1産卵槽28、第2産卵槽30、第3産卵槽32内に水が導入されるが、導入された水は、第1産卵槽28から第2産卵槽30に流水状態で移動し、次いで第2産卵槽30から第3産卵槽32に流水状態で移動して、流出路16から排出されるようになっている。一方、横断方向側壁12cと内部横断方向内壁18との間に位置する水槽と各産卵槽28、30、32との水頭差により、各産卵槽28、30、32の底部の貫通穴34を介して、砂利層から水が湧き上がるようになっているので、各産卵槽28、30、32の底部は、さけ・ますにとって好適な産卵場所になる。なお、産卵した後に受精卵が核分裂を起こし発眼する前に、他のさけ・ますが受精卵の上に産卵すると、受精卵に衝撃が与えられて死滅するおそれがあることが知られているが、上述のように、複数の産卵槽が設けられているので、或る槽において産卵があった後は受精卵の安定時期になるまで、他の槽で産卵行動をさせるようにすることができる。
【0016】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0017】
例えば、前記実施の形態においては、3つの産卵槽が設けられているが、産卵槽の数をこれ以上にしてもよく、或いはこれ以下にしてもよい。また、装置自体の形状、ゲートの設置位置や形状、産卵槽の底部の貫通穴の形状や個数などは、単なる例示にすぎず、図示したもの以外にしてもよい。さらに、ゲート28a、30a、32a、34aは、手動式のものでもよく、自動式(機械駆動、電気駆動を含む)のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係るさけ・ます用自然産卵床装置を模式的に示した部分切り取り斜視図である。
【図2】図1のさけ・ます用自然産卵床装置の平面図である。
【図3】図2の線3−3に沿って見た断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 さけ・ます用自然産卵床装置
12 外槽
14 流入路
16 流出路
18 内部横断方向壁
20 内部底壁
22 底部流路
24、26 区画壁
28、30、32 産卵槽
34 貫通穴
36 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
さけ・ます用自然産卵床装置であって、
外槽と、
前記外槽の内部に配置され、前記外槽の底壁との間に所定間隔へだてて設けられた底壁を有する産卵槽とを備え、
前記産卵槽の前記底壁には複数の貫通穴が設けられ、前記産卵槽の底部には砂利を敷き詰めた砂利層が設けられており、
前記外槽に水を供給すると、前記産卵槽に水が導入され、前記産卵槽に導入された水が流水状態で前記産卵槽から排出され、かつ、前記外槽と前記産卵槽との水頭差により、前記貫通穴を介して、前記砂利層から水が湧き上がるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記産卵槽が区画壁により複数の槽に分割されており、所望の槽で産卵行動をさせることができるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−312725(P2007−312725A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147959(P2006−147959)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(500253634)株式会社平雄組 (1)
【Fターム(参考)】