説明

そば類の製造方法

【課題】そばの風味に富み、透明感及び粗粒そば粉による独特の外観を有し、かつ歯切れの良い食感を有するそば類の提供。
【解決手段】粒径200μm以上の粗粒そば粉を25質量%以上含有するそば粉を用いることを特徴とするそば類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そば類の製造方法に関し、詳しくは、そばの風味に富み、透明感及び粗粒そば粉による独特の外観を有し、かつ歯切れの良い食感を有するそば類を得ることができるそば類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、そば粉は脱殻したそば粒(ヌキ)を石臼或いはロールにて製粉して得られ、その平均粒径は、通常約90〜120μm、又はこの範囲より小さい。
従来、そば類の製造方法の例として、目開き106μmの篩を通過するそば粉を用いることを特徴とする茹でそばの製造方法(特許文献1);(a)粒径106μm以下のそば粉、(b)澱粉、及び(c)グルテンを用いて、α化したそばを製造した後、凍結することを特徴とする冷凍そばの製造方法(特許文献2);粒径51μm以下の微粉を50%以上含有するそば粉と、そば粉以外の穀粉とを含む原料から調製された生そばに蒸煮処理、pH調整処理を施した後、加熱殺菌処理することを特徴とする保存性に優れた蒸煮そばの製造方法(特許文献3);粒径25μm以下の微粉の含有率が25重量%以上45重量%以下であるそば粉を用いる多加水そばの製造方法(特許文献4)等が知られている。
しかしながら、上記文献に記載の方法は、いずれも微粉そば粉(粒経が約120μm以下のそば粉)を多く使用してそばの食感(コシ)改善を図るものであったが、そばの風味や透明感に欠け、また十分満足のいく歯切れの良い食感が得られないのが実状であった。
【特許文献1】特開平11−32713号公報
【特許文献2】特開平11−69950号公報
【特許文献3】特開2002−153226号公報
【特許文献4】特開2005−237346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の如き従来の実状に鑑みてなされたものであり、そばの風味に富み、透明感及び粗粒そば粉による独特の外観を有し、かつ歯切れの良い食感を有するそば類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、当該課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、粒径200μm以上の粗粒そば粉を特定量含有するそば粉を用いれば、そばの風味に富み、透明感及び粗粒そば粉による独特の外観を有し、かつ歯切れの良い食感を有するそば類が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、粒径200μm以上の粗粒そば粉を25質量%以上含有するそば粉を用いることを特徴とするそば類の製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、そば本来の風味に富み、透明感及び粗粒そば粉による独特の外観を有し、かつ歯切れの良い食感を有するそば類を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る実施形態について、以下に述べる。
一般的に、そば類、例えば日本そばは、そば粉と、必要に応じてそば粉以外の穀粉等を配合した原料粉に水を加えて混練することにより製造されているが、本発明においては、粒径200μm以上の粗粒そば粉を25%以上含有するそば粉と云う特定組成のそば粉を用いることを必須としている
【0008】
本発明に用いられる粗粒そば粉の粒径は、200μm以上であるが、好ましくは200μm以上700μm以下、特に好ましくは300μ以上650μm以下である。粗粒そば粉の粒径が200μmより小さいと、そば類の透明感および独特の外観が得られにくい。
そば粉中、粒径200μm以上の粗粒そば粉の含有量は、25質量%以上、好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは40〜70質量%である。粗粒そば粉の含有量が25質量%より少ないと、得られるそば類が、透明感・粗挽き感に乏しく、またザラついた歯切れの悪い食感となり易い。
【0009】
また、本発明において、粒径500μm以上の粗粒そば粉を30〜50質量%含有するそば粉を用いれば、より一層そば本来の風味の強いそば類を得ることができる。粒径500μm以上の粗粒そば粉の粒径は、好ましくは500μm以上700μm以下、特に好ましくは500μm以上650μm以下である。また、そば粉中、粒径500μm以上の粗粒そば粉の含有量は、特に30〜40質量%が好ましい。30質量%より少ないと、得られるそば類が、十分な風味が得られにくく、他方50質量%より多いと、得られるそば類の表面の滑らかさが低下し、そば類の製造時、特に複合及び圧延工程における作業性の低下につながる。
なお、そば粉等の粒径は、公知の粒度測定装置を使用することにより測定できる。例えば、「マイクロトラック」(日機装株式会社製)を用いて、公知のレーザー回折散乱法を利用した粒度分布測定等を挙げることができる。
【0010】
本発明に用いられる粗粒そば粉の原料としては、国内産、中国産、北米産等の産地を問わず、普通そば等を挙げることができる。
粗粒そば粉の製造方法としては、特に制限されないが、例えば玄そば、又は脱穀したそば粒(ヌキ)を、石臼又はロール等の粉砕度を調整することにより粒径200μm以上の粒径を有する粗粒そば粉を得る方法(1);あるいは、石臼又はロール等を使用して、玄そば、又は脱穀したそば粒(ヌキ)を製粉後、粒度別に分けられた画分の混合比を調整することにより粒径200μm以上の粒径を有する粗粒そば粉を得る方法(2)等を挙げることができる。
【0011】
本発明においては、前記粒径の粗粒そば粉以外のそば粉も配合されるが、当該そば粉は、粗粒そば粉と同様の原料、製造方法を用いて得ることができ、粒径のみが異なるものである。
そば粉を含有するそば類の原料粉中、そば粉の含有量は30〜70質量%が好ましく、特に30〜50質量%が好ましい。30質量%より少ないと、得られるそば類が、十分な風味が得られにくく、他方70質量%より多いと、得られるそば類の表面の滑らかさが低下し、そば類の製造時、特に複合及び圧延工程における作業性の低下につながる。
【0012】
本発明において、前記そば粉を含有するそば類の原料粉には、前記そば粉以外の成分を必要に応じて配合することができる。例えば、そばの製造に従来から用いられている小麦粉、米粉、大麦粉、山芋粉、各種の澱粉類(例えば小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、米澱粉、甘薯澱粉、それらの化工澱粉等)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて添加配合することができる。
これらのうち、つなぎ粉としては、小麦粉が好適に用いられる。小麦粉としては、薄力小麦粉、中力小麦粉、強力小麦粉、それらの2種以上の混合粉のいずれもが使用できるが、特に強力小麦粉が好ましい。
【0013】
また、上記した成分以外に、従来からそばに汎用されている副原料や添加剤、例えば、小麦グルテン、食塩、卵白、麺質改良剤、色素、乳化剤、アルコール、ゲル化剤、着色料、防腐剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸などの栄養強化剤、茶粉末、海草粉末等の1種又は2種以上を適宜組み合わせて添加配合することができる。
【0014】
本発明のそば類は、上記原料粉を使用して、常法に従って製造することができる。例えば、加水、混練(ミキシング)、複合、圧延、裁断を行うことにより、生そば類が調製される。また、必要に応じて、この生そばを乾燥させて、乾燥そば類を調製してもよい。なお、水の添加量は、原料粉100質量%に対して、水を28〜33%加えることが好ましい。加える水が28%より少ないと麺帯のつながりが悪く、作業性が困難になり易く、他方加える水が33%をより多いと歯切れの悪い食感となり易い。
【0015】
本発明のそば類としては、日本そば、うどん、中華麺等を挙げることができる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明をさらに具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
実施例1
そば粉30質量%及び小麦粉70質量%を含有する原料粉を調製した。使用したそば粉は、粗粒そば粉を26質量%含有するそば粉であり、この粗粒そば粉は、石臼を使用して、玄そばを製粉後、粒度別に分けられた画分の混合比を調整することにより得たもので、粒径200μm以上の粒径を有するものであった。また、小麦粉は、「オーション」(日清製粉製)を用いた。
上記で調製した原料粉100質量%に、水を31質量%加え、ピンミキサーにて10分間ミキシングを行い、その後、常法に従い、複合、圧延(最終麺帯厚1.30mm)、切り出し(切り刃#22角)を行った。調製後のそばを1分間茹で、冷水にさらし、生そばを得た。
【0018】
実施例2
そば粉50質量%及び小麦粉50質量%を含有する原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0019】
実施例3
そば粉70質量%及び小麦粉30質量%を含有し、かつ原料粉100質量%に対して、小麦グルテン6質量%を添加した原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0020】
実施例4
石臼を使用して、玄そばを製粉後、粒度別に分けられた画分の混合比を調整することにより、粒径500μm以上の粒径を有する粗粒そば粉を得た。
得られた粒径500μm以上の粗粒そば粉41質量%を含有するそば粉30質量%、及び小麦粉70質量%を含有する原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0021】
実施例5
上記実施例4で得られた粒径500μm以上の粗粒そば粉41質量%を含有するそば粉50質量%、及び小麦粉50質量%を含有し、かつ原料粉100質量%に対して、小麦グルテン3質量%を添加した原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0022】
実施例6
石臼を使用して、玄そばを製粉後、粒度別に分けられた画分の混合比を調整することにより、粒径200μm以上の粒径を有する粗粒そば粉を得た。
得られた粒径200μm以上の粗粒そば粉75質量%を含有するそば粉30質量%、及び小麦粉70質量%を含有する原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0023】
実施例7
実施例1で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0024】
実施例8
実施例2で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0025】
実施例9
実施例3で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0026】
実施例10
実施例4で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0027】
実施例11
実施例5で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0028】
実施例12
実施例6で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0029】
比較例1
粗粒そば粉を3質量%含有するそば粉30質量%、及び小麦粉70質量%を含有する原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0030】
比較例2
粗粒そば粉を3質量%含有するそば粉50質量%、及び小麦粉50質量%を含有する原料粉を用いた以外は用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0031】
比較例3
粗粒そば粉を3質量%含有するそば粉70質量%、及び小麦粉30質量%を含有し、かつ原料粉100質量%に対して、小麦グルテン6質量%を添加した原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0032】
比較例4
比較例1で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0033】
比較例5
比較例2で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0034】
比較例6
比較例3で得られた生そばを乾燥させて乾麺とし、この乾麺を3分30秒間茹で、冷水にさらし、そばを得た。
【0035】
比較例7
粗粒そば粉を20質量%含有するそば粉30質量%、及び小麦粉70質量%を含有する原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0036】
比較例8
粒径200μmより小さい粒径を有するそば粉30質量%、及び小麦粉70質量%を含有する原料粉を用いた以外は、上記実施例1と同様にして生そばを得た。
【0037】
試験例1
実施例1〜12及び比較例1〜8で得られた各そばの外観並びに複合及び圧延工程における作業性について、下記の評価基準に従ってパネラー5名で評価すると共に、各そばを喫食し、下記の評価基準に従って食感の評価を行った。作業性は、製麺時の複合及び圧延工程における麺帯のつながりを評価した。その結果の平均値は表1のとおりであった。
なお、各実施例及び比較例において、そば粉の粒度の測定は、マイクロトラックFRA9220(乾式)(日機装株式会社製)を用いて、公知のレーザー回折散乱法を利用した粒度分布測定を行なった。
【0038】
◎外観の評価基準
5:透明感、粗挽き感、非常に強い。
4:透明感、粗挽き感、強い。
3:透明感、粗挽き感あり。
2:透明感、粗挽き感、乏しい。
1:透明感、粗挽き感、非常に乏しい。
【0039】
◎歯切れの良さの評価基準
5:非常に歯切れ良い。
4:歯切れ良い。
3:やや歯切れ良い。
2:やや歯切れ悪い。
1:歯切れ悪い。
【0040】
◎滑らかさの評価基準
5:滑らか。
4:やや滑らか。
3:普通。
2:ややザラつく。
1:ザラつく。
【0041】
◎風味の評価基準
5:そば本来の風味が、非常に強い。
4:そば本来の風味が、強い。
3:そば本来の風味は、感じられる。
2:そば本来の風味は、やや弱い。
1:そば本来の風味は、弱い。
【0042】
◎複合及び圧延工程における作業性の評価基準
5:非常に良い。
4:良い。
3:普通。
2:やや悪い。
1:非常に悪い。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径200μm以上の粗粒そば粉を25質量%以上含有するそば粉を用いることを特徴とするそば類の製造方法。
【請求項2】
前記そば粉は、粒径500μm以上の粗粒そば粉を30〜50質量%含有するそば粉である請求項1記載のそば類の製造方法。
【請求項3】
前記そば粉を含有するそば類の原料粉中、前記そば粉の含有量が30〜70質量%である請求項1又は2記載のそば類の製造方法。