説明

たたみ込まれたスペクトルを逆たたみ込みするための方法および装置

本発明の実施形態は、例えば、質量分析計で採取したデータのようなたたみ込みスペクトルを、逆たたみ込みするのに適した方法に関する。本方法は、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、複数の主サマリー同位体ピークの各々について主サマリー同位体ピークを決定し、決定した各主サマリー同位体ピークに対して、少なくとも一つの下位質量同位体クラスター上側質量域サイドピークと、少なくとも一つの上位質量同位体クラスター下側質量域サイドピークとの既知強度寄与を、それぞれの主サマリー同位体ピークから差し引き、同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与をそれぞれの主サマリー同位体ピークに加えることによって、たたみ込みスペクトル中の各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を決定する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2003年11月26日出願の米国特許仮出願第60/524,844号、及び2004年8月12日出願の米国特許出願第10/916,629号に対する優先権を主張し、参考のためその開示内容を全体として本明細書に組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、スペクトルデータの分析に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(序論)
一部の実施形態において、本発明は、たたみ込みスペクトルを逆たたみ込み(例、正規化)して、定性及び/又は定量分析に使用可能な正規化されたピーク強度値を得るための方法及びシステムに関する。例えば、これらの正規化ピーク強度値を、定性及び/又は定量測定のため検体をマークするのに用いる標識体(例、参考のため全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願番号10/764,458号に記載されているような、同位体濃縮標識体及び/又は標識用試薬)と関連付けることができる。たたみ込みスペクトルを、定められたスペクトル領域で得られる複数成分スペクトルとすることができ、これには、オーバーラップした同位体クラスターが含まれる。オーバーラップした同位体クラスターの質量分析によってたたみ込みスペクトルを取得することができ、各同位体クラスターは、標識体、標識体の分画又は部分、及び/又は標識された検体を特定する。
【0004】
一部の実施形態において、質量分析計のような分析装置によって得られたアウトプット・データからたたみ込みスペクトルを編成することができる。逆たたみ込みされたスペクトルに加えて、各同位体クラスターに対する比率情報を提供することができる。ここで、比率情報とは、各同位体クラスターに対応するピークの相対的な強度をいうものとする。たたみ込みスペクトル及び比率情報を与えられれば、各同位体クラスターに対応する主ピークと、一つ以上の上側質量域及び一つ以上の下側質量域のサイドピークとのピーク強度を決定することが可能である。また、定性及び定量分析目的のため、同位体クラスター全体から得られる正規化ピーク強度をクラスターごとに決定することも可能である。同位体クラスターに対する正規化ピーク強度が決定可能であり、同位体クラスターは特定な標識体、標識体の分画又は部分、及び/又は標識された検体を特定することができるので、正規化ピーク強度を、分析装置によって分析される一つ以上のサンプル中の標識体及び/又は検体双方の定性及び/又は定量測定に使うことができる。
【0005】
本発明の一部の実施形態において、たたみ込みスペクトルは、同重体及び/又は異性体の標識試薬の解離による同位体クラスターの生成が可能な対象スペクトル領域を規定する。同重体及び/又は異性体の標識試薬の解離は、標識体及び/又は標識された検体を解離エネルギーレベルに曝す(例、衝突誘発解離(CID))ことによって生じさせることができる。各同位体クラスターの正規化ピーク強度を、同位体クラスターを生成する標識体の存在及び/又は量と関連付けることができ、次にそれを検体の存在及び/又は量と関連付けることができる。たたみ込みスペクトルを構成する種々の同位体クラスターを、各種の標識体又は各種の標識された検体にそれぞれ帰属させることができる。標識体及び/又は標識された検体を、同一のサンプルから又は異なるサンプルから採取することができる。一部の実施形態において、標識された検体を含む2つ以上のサンプルが混合され、各サンプルは、一組の同位体標識試薬のうちの相異なる同位体標識試薬で標識されている。このように、一つ以上のサンプル中の一つ以上の検体の定性及び/又は定量分析において、たたみ込みスペクトルの解析を使うことができる。一部の実施形態において、分析装置での同一のエネルギー走査により、標識試薬のレポーター・イオン及び娘(daughter)フラグメント・イオンを生成することができる。このことにより、同一エネルギー走査によって、2つ以上のサンプルの混合形成による分析混合サンプル中にある娘フラグメント・イオンを生成した検体の測定のほかその検体の相対値及び/又は絶対値定量測定を行うことができる。
【0006】
さまざまな方法で、たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みするプロセスを進めることができる。例えば、たたみ込みスペクトルを、複数の同位体クラスターの一つの同位体クラスターを各々が構成する波動関数の和と見なすことができる。また、たたみ込みスペクトルを複数の同位体クラスターの和とし、各々の同位体クラスターを、所定のピーク強度をそれぞれ持つ複数ピークを表す波動関数として定義することもできる。たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みする方法のいかんにかかわらず、解析を、たたみ込みスペクトル中の各同位体クラスターに対するアウトプット・ピーク強度データ(例、サマリー(summary)・ピーク強度データ)から始まり、各同位体クラスターに関連するピーク強度の加算、包含又は結合、及び、各同位体クラスターに関連しないピーク強度の減算又は除去にいたるプロセスと見ることができる。一部の実施形態において、当業者がよく知っているブラインド・デコンボリューション又はパラメータフリー手法によって、隣接同位体クラスターのピークからの寄与の除去及び主サマリー・ピークのサイドピークの補償を行うことができる。このように、各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を決定することができる。結果として、たたみ込みスペクトルの分析に基づいて各同位体クラスターに対し単一の定量値を割り当てることが可能である。
【0007】
波動関数を用いて分析を行う場合、サマリー・ピーク強度から正規化ピーク強度への移行には、波動関数の解析によるピーク強度の同時加算及び減算が可能となる。これらの計算のため、サマリー・ピーク強度を、同位体クラスター全体を規定する波動関数と見なすことができる。他の方法で分析を実施する場合は、サマリー・ピーク強度をアウトプット・ピーク強度と見ることができる。この場合、個別的にピーク強度の加算及び減算を行い、ピーク強度を所定の同位体クラスターに関連付けてこれにより同位体クラスターに対する正規化ピーク強度の決定へと進めるように、仮ピーク強度を割り当てることができる。
【0008】
本発明の一部の実施形態によって、同位体クラスターを生成できる標識試薬として使われる化合物を、質量スペクトル全域中の「クワイエットゾーン」に集めることができる。例えば、「クワイエットゾーン」を、ペプチドのような多数の検体についての強度情報を測定し、その結果を集約し、集約結果から「クワイエットゾーン」を判断することによって決定することができる。「クワイエットゾーン」は、選択した検体に対する集約結果の中で、質量情報がほとんどあるいはまったく観察されない領域である。標識試薬及び同位体濃縮プロセス(又は濃縮出発物質を用いる合成方法)の賢明な選択に基づいて、同位体クラスターの分析を「クワイエットゾーン」に導くことによって、定量分析の精度を阻害することの多いバックグラウンドノイズを最小化することができる。また、試薬から生成される娘フラグメント・イオンを「クワイエットゾーン」に集中するように標識試薬を選択することは、分析装置によるエネルギー走査単一回でのレポーター及び娘フラグメント・イオンの収集の助力となる、というのは、検体に関連するフラグメント(すなわち、娘フラグメント・イオン)と標識試薬に関連するフラグメント(すなわち、レポーター・イオン)との間のオーバーラップがほとんどあるいはまったくないからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(本発明のさまざまな実施形態の説明)
本明細書の説明の目的のため、以下の定義を適用し、適当と認められるときには、単数形で用いた用語が複数形を含むこともありその逆もあることとする。本明細書に参考として組み込まれた各文書に下記の定義と一致しない定義があれば下記の定義を優先するものとする。
【0010】
本明細書で用いる「標識体(label)」とは、測定のため検体をマークするのに適した「一部分(moiety)」をいう。標識体という用語は、タグ、マーク、及び他の同様な用語及び語句と同義である。例えば、標識された検体を、タグされた検体、又はマークされた検体ということもできる。標識体は、溶液にして使うことができ、又は固体支持材と結合して使うことができる。
【0011】
本明細書で用いる「同位体クラスター」とは、単一の化合物(例、標識体又は標識された検体)に関連する強度ピークの分類をいう。このような同位体クラスターを形成する化合物では同位体濃縮をすることができる。同位体クラスターは、単一の主ピーク(すなわち主同位体ピーク)及び2つ以上のサイドピークを含むことができる。通常、サイドピークの強度は主同位体ピークのものよりも低く、主同位体ピークの上側質量域と下側質量域との双方にある。主ピークとサイドピークとの間隔は、例えば1,2,3などの整数ダルトン(「Da」)で測定できるが、この間隔を、例えば0.5,1.2などの非整数で測定することもできる。例えば、主ピークはXDaにある同位体クラスターが、X+1Daにある上側質量域サイドピーク強度からの寄与、及びX−1Daにある下側質量域サイドピーク強度からの寄与を含むことがある。
【0012】
本明細書で用いる「同位体濃縮」とは、一つ以上の高質量同位体(例、重水素、13C、15N、18O、37Cl又は81Brのような安定同位体)を合成的に濃縮した化合物(例、標識体、標識試薬又は標識された娘フラグメント・イオン)をいう。「合成的に濃縮」という表現は、自然に存在する同位体量を上回って高質量同位体を取り込むプロセスを用いることをいう。同位体濃縮は100%効果的なわけでなく、濃縮状態の低い化合物の不純物があることがあり、これらはより低い質量を持つことになる。同様に、過剰濃縮(好ましくない濃縮)及び自然の同位体存在度が原因で、不純物の質量が大きすぎることもあり得る。このため、単一の同位体濃縮化合物(又はその一部)のサンプルが、これを質量分析計で分析すると、化合物の過半成分による主ピークに加えて少なくとも一つの上側質量域のサイドピークと少なくとも一つの下側質量域のサイドピークの双方を持つ娘フラグメント・イオンの同位体クラスターが化合物から生成してしまう。
【0013】
本明細書で用いる「自然の同位体存在度」とは、自然界における同位体の自然な分布に基づいて化合物中に見出される一つ以上の同位体のレベル(分布)をいう。例えば、生きている植物から取得した自然な化合物は、通常、約0.6%の13Cを包含することになる。
【0014】
同様に、本明細書で用いる「強度」とは、ピークの高さ又はその下の面積をいう。例えば、ピークを質量分析計で行った測定からのアウトプットデータ(例、質量対電荷比(m/z))とすることができる。本発明の一部の実施形態によって、強度情報を、質量対電荷比を表すサマリー・ピークの最大高さ又はサマリー・ピークの下の最大面積として表現することができる。
【0015】
本明細書で用いる「たたみ込みスペクトル(convoluted spectrum)」とは、分析装置からのアウトプットデータ又はその一部をいう。たたみ込みスペクトルは、一つ以上の異なる同位体クラスターによる強度を組み合わせることができる。すなわち、たたみ込みスペクトルに、2つ以上のオーバーラップした同位体クラスターのピーク強度を組み合わせた結果を含めることができる。たたみ込みスペクトルに、他のスペクトルデータを含めることもできるが、前記のように、これを「クワイエットゾーン」に存在させるように選択することもできる。このように、たたみ込みスペクトルには分析装置からの全アウトプットデータを含めることができ、あるいは、質量分析計のような分析装置からアウトプットされてくる可能性のある他のスペクトルデータを除外して、オーバーラップした同位体クラスターのピーク強度に関連する選定された情報又はデータだけを含めることもできる。たたみ込みスペクトルが、2つ以上の同位体クラスターの組み合わさった強度データ以外の情報を、対象スペクトル領域内のバックグラウンド・ノイズとして包含する場合、適切な修正を行って、そういった寄与情報を排除することができる。
【0016】
本明細書で用いる「主サマリー同位体ピーク」とは、たたみ込みスペクトル中に観察される、同位体クラスターの主たるピークをいう。同位体クラスターの主ピークは同位体クラスターの最大の強度を持つピークである。一部の実施形態において、「主サマリー同位体ピーク」のピーク強度を、たたみ込みスペクトルから測定される同位体クラスターの主ピークのアウトプット強度とすることができる。一部の実施形態においては、「主サマリー同位体ピーク」のピーク強度を、ある同位体クラスターに関連するすべての強度ピークの合算ピーク強度とすることができる。一部の実施形態において、「主サマリー同位体ピーク」のピーク強度を、主ピーク及びその上側質量域及び下側質量域の一つ以上のサイドピークによって定まる同位体クラスターに対するアウトプット強度の波動関数とすることができる。
【0017】
本明細書で用いる「サマリー・ピーク強度」とは、たたみ込みスペクトルのアウトプット・ピーク強度データ中の単一のピークの強度をいうか、又は、単一の主ピークの強度に、同位体クラスターの他の関連する一つ以上のサイドピークの強度を組み合わせたピーク強度をいうこともある。サマリー・ピーク強度データは、アウトプット・ピーク強度データである。
【0018】
本明細書で用いる「既知ピーク強度」とは、同位体クラスターに関連するピークについて知得された強度をいう。既知ピーク強度は、実験で測定したものとして知ることができ、また、実験データの解析から計算したものとして知ることができる。例えば、既知ピーク強度は、主ピークのピーク強度のことも、上側質量域サイドピーク又は下側質量域サイドピークのピーク強度のこともある。また、同位体クラスターが、モデル(比率についての)、波動関数又はマトリクスで定義できる場合には、同位体クラスターに対する既知ピーク強度を知ることができる。一部の実施形態において、同位体クラスターのピークについての相対比率情報から、実験的に既知ピーク強度データを求めることができる。一部の実施形態において、ブラインド・デコンボリューションを使って既知ピーク強度データを求めることができる。
【0019】
本明細書で用いる「仮(temporary)ピーク強度」とは、サマリー・ピーク強度データから正規化ピーク強度を計算する際に使うことのできるピーク強度の一時的な割り当て値をいう。各々の計算に対して複数の仮ピーク強度値を割り当てることができる。
【0020】
本明細書で用いる「正規化強度」又は「正規化ピーク強度」とは、同位体クラスターに関連する単一の化合物の累算(例、主ピーク及びすべての関連サイドピーク)ピーク強度をいう。例えば、主サマリー同位体ピークに対する正規化ピーク強度は、同位体クラスターに関連するピークの累算ピーク強度である。逆たたみ込みされたスペクトルにおいて、化合物(レポーターに関連するフラグメント・イオン)により形成される一つの同位体クラスターに対し、XDaにある同位体クラスターの「正規化ピーク強度」を、主同位体ピーク(例、XDaに位置)の寄与強度にプラスして、一つ以上の下側質量域のサイドピーク(例、X−1Da、X−2Da、X−3Da等に位置)の寄与強度及び一つ以上の上側質量域のサイドピーク(例、X+1Da、X+2Da、X+3Da等に位置)の寄与強度を包含し、他の化合物(別のレポーターに関連するフラグメント・イオン)のピーク強度成分を除いた強度として定義することができる。
【0021】
各々の同位体クラスターは、主ピーク強度、及び、上側質量域サイドピーク強度と下側質量域サイドピーク強度とを含むことができる。同位体クラスターの主同位体ピークは、一つの質量値、例えば115Daに中心を置き、サイドピーク強度は、一般に、主同位体ピークの上と下とにある異なる質量値に中心を置くことになる。一部の実施形態において、主ピークの質量より大きいか又は小さい一つ以上の質量単位の値の周辺に中心を置く2つ以上のサイドピークがあり得る。例えば、一部の実施形態において、同位体クラスターが115Da周辺に中心を置き、ピークの間が1ダルトンで、下側質量域サイドピークは114Da、113Da、112Da等の周辺に中心を置き、上側質量域サイドピークは116Da、117Da、118Da等の周辺に中心を置くことができる。当然、サイドピークが主ピークから次第に遠ざかるにつれて、各サイドピークの大きさは減り始め、ついにはゼロになることになる。従って、一部の実施形態において、わずかな強度(例、同位体クラスターの主ピーク強度の約0.1%から約0.5%より小さい)を持つサイドピークは、それらピークの寄与強度を考慮するに値しないほど、小さな影響しか与えない。当業者は、用途及び必要な精度の程度に応じて、上側質量域及び下側質量域に適用する細かさの程度を判断することができる。
【0022】
一部の実施形態において、たたみ込みスペクトルにおける同位体クラスターの間の間隔は不規則となり得、例えば、ある隣接同位体クラスターの主ピークの間は1Daであり、他の隣接同位体クラスターの主ピークの間は2Da以上である。間隔は、化合物を濃縮するために用いられた同位体に依存することになる(例、塩素(34Da)は35Da及び37Daの同位体を持つ)。同位体クラスターの種類が何であっても、化合物の各ロットに対する相対ピーク強度及びピーク質量を測定することができる。従って、同位体クラスターの実際的特性は、本発明の実施形態への制約とはならない、というのは、どのような形状のクラスターを適応させることもできるからである、但し、同位体クラスターの主ピークがその同位体クラスターの最低質量成分とならないことが予測できるというのが条件である。
【0023】
図1は、2つの同位体を濃縮した化合物(例、標識体、標識体の区画又は部分、又は標識された検体)の2つのオーバーラップした同位体クラスターの図を包含する。一つの化合物に由来する同位体クラスターは図1中のカーブB(点線)として図示され、第二の化合物に由来する同位体クラスターはカーブC(実線)として図示されている。図1のカーブB及びCの値を下の表1に示し、図の一部の特質に関する情報を提示する。
【0024】
【表1】

これらは、同位体濃縮されているので、化合物のプライマリー質量(同位体クラスターの主ピークで表される)は、非濃縮化合物の質量よりも大きい。しかしながら、同位体濃縮は100%効果的なわけでなく、濃縮程度の低い化合物の不純物があり、これらはより低い質量を持つことになる。同様に、過剰濃縮(好ましくない濃縮)及び自然の同位体の存在度が原因で、不純物の質量が大きすぎることもあり得る。このため、単一の化合物から、説明したような、少なくとも一つの上側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの下側質量域サイドピークの双方が観察されるタイプの同位体クラスターが生成してしまう。従って、このタイプの同位体クラスターは、同位体クラスターに関連するピークが化合物の存在につながっているため、化合物を特徴付けることができ、このことは、当業者にとって自明のはずである。また、同位体クラスターを特徴付けるさまざまなピークの強度は、濃縮された化合物のロットごとに変化し、濃縮プロセスや自然の同位体の存在度から来る化合物の濃縮状態に依存し得ることも自明であろう。従って、同位体クラスターを特徴付けるピークの相対強度は、また、分析に使用された同位体濃縮化合物のロット又はサンプルを示し、又はこれを同定することができる。例えば、同位体クラスターを生成する化合物を検体の標識に使用した場合、その同位体クラスターの検出を、特徴的ピーク・プロフィール(例、比率情報)に基づいて、対象検体の存在及び/又は量と相関させることができる。
【0025】
本発明の一部の実施形態は、分析装置での一回のエネルギー走査(例、「質量分析計/質量分析計」(「MS/MS」)又は衝突誘発解離(「CID」)による走査)による単一のスペクトルの中に、レポーター・イオン(検体の標識に使われて同位体クラスターを生成する化合物のフラグメント・イオン)及び標識された検体(及びそのフラグメント)の娘フラグメント・イオンを収集することを含む。一部の実施形態では、初回サーベイ走査(例、質量分析計(「MS」)走査)の後この単一回走査を行うことができる。このようにすれば、初回走査を使って、試験されるサンプル中に存在する所定の非標識検体又は検体の標識フラグメントを識別することができる。検体及び標識試薬については、双方のフラグメント・イオンを同一の走査で観測することができる。このとき、レポーター・イオンを生成するフラグメントを検体につなぐ結合と、一般的に解離して認識可能な娘フラグメント・イオンのスペクトルを生成する検体の一つ以上の結合との間では、結合力のバランス(又は類似性)が取れている。単一走査を実施して、(同位体クラスターを生成する)レポーター・イオンと娘フラグメント・イオンとの双方を生成する場合、同位体クラスターをクワイエットゾーンに存在させれば、レポーター・イオンのどのような定量分析も容易になる。
【0026】
これに対し、他のシステムでは、レポーター及び娘フラグメント・イオンを計量するためには2回のエネルギー走査(例えば、2回のMS/MS又はCIDスキャン)が必要となる。一つの走査では計量に使うレポーター・イオンを分析し、第二の走査では標識された検体の娘フラグメント・イオンを分析する。2つの走査が必要で、検体を認識可能な娘フラグメント・イオンに解離するのに要するレベルよりも、より低い又はより高いエネルギーレベルで、レポーター・イオンを分離(解離、分断)する。さらに、他のシステムで、レポーター・イオンが「クワイエットゾーン」に集められていない場合において、同位体クラスターとオーバーラップする検体の娘フラグメント・イオンが生成される状況では、単一走査におけるレポーター・イオン(すなわち、同位体クラスター)の計量は困難となろう。
【0027】
具体的には、初回MSサーベイ走査の後、一部の既存システムでは、最初に低エネルギーMS/MS又はCID走査を実施してレポーター・イオンを生成し、次にエネルギーレベルを上げ、別の高エネルギーMS/MS又はCID走査を実施して検体をその娘フラグメント・イオンに解離しなければならない。しかしながら、これによって、レポーター・イオンと、娘フラグメント・イオンとは、2つの別の走査スペクトルに収集されることになり、手間がかかる上、各々の検体の識別及び定量測定ごとに保管・処理しなければならない余分な情報が生成される。
【0028】
図1及び関連する表1を参照すると、主サマリー同位体ピークを115Da及び116Daに持つ2つだけの異なる同位体クラスターを含む典型的なたたみ込みスペクトルにおいて、主サマリー同位体ピーク(この例において、主サマリー同位体ピークはたたみ込みスペクトルの特定質量におけるピークの強度を表す)は、それぞれ9.0及び7.2のサマリー・ピーク強度を有する。さらに、2つの主サマリー同位体ピークは、114Daと115Daとにそれぞれ0.5及び0.3の強度の下側質量域サイドピークを、116Daと117Daとにそれぞれ1.0及び0.6の強度の上側質量域サイドピークを有する。各同位体クラスターの主ピークに関連するサイドピークの強度を組み合わせた(例、加算した)ものから、他の同位体クラスターのサイドピークの寄与強度を除去(例、減算)することによって、各々の主サマリー同位体ピークに対する正規化値を得ることができる。この例においては、次の式を使って、たたみ込みスペクトルからXDaの同位体クラスター強度(「IXmp」)を逆たたみ込みすることができる。
【0029】

Xmp=SIXmp−IX―1umsp−IX+1dmsp
+IXdmsp+IXumsp

ここで、SIXmpはXDaにおける主同位体ピークのサマリー強度;IX―1umspは、下隣(X−1Da)の上側質量域サイドピークの強度であり、XDa周りに集中していると見られる;IX+1dmspは、上隣(X+1Da)の下側質量域サイドピークの強度であり、これもXDa周りに中心を置いていると見られる;IXdmspは、主同位体ピーク(XDa)の下側質量域サイドピークの強度であり、X−1Da周りに中心を置いていると見られる;IXumspは、主同位体ピーク(XDa)の上側質量域サイドピークの強度であり、X+1Da周りに中心を置いていると見られる。
【0030】
これにより、前記の2つの同位体クラスターの簡単な例では、各ピークの計量化主ピーク強度を次のように求めることができる:I115=9.0−0−0.3+0.5+1.0=10.2、及びI116=7.2−0−1.0+0.3+0.6=7.1(表1参照)。しかして、115Daにおける同位体クラスターの正規化主ピーク強度は、116Daにおける同位体クラスターの計量化主ピーク強度よりも大きい。
【0031】
正規化ピーク強度を、時間経過による変化調査のようなさまざまな応用に使用することができる。例えば、同位体タグ(例、115Daのタグ及び116Daのタグ)の各々を、分析における2つの異なった時点を代表する2つの異なったサンプル各々の中の同一の検体を標識するために使ったとすれば(例、ゼロ時間にI115、1時間後にI116)、115Daタグの強度が116Daタグの強度より大きいことから、サンプル中の検体の濃度は、時間とともに低減する、といった結論が得られるかもしれない。逆に、115Daタグの正規化ピーク強度が116Daタグの計量主ピーク強度より小さいことがわかれば、検体の濃度は時間とともに増大するとの結論を得ることができよう。このように、たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みすることによって定性的及び/又は定量的情報を取得することができる。
【0032】
本発明の一部の実施形態によって、同位体で標識した化合物各々を、異なった検体と別個に結合させ、標識されたこれら検体を組み合わせて解析し、たたみ込みスペクトルを取得することができる。本実施形態において、各同位体クラスターについて取得した最終的な計量強度を使って、組み合わせサンプル中の異なる検体各々の相対的又は絶対的存在度を求めることができる。
【0033】
本発明の一部の実施形態によって、図1において、単独の実験から2つの同位体クラスターの比率情報を取得し、同位体クラスター中の各ピーク(例、下側質量域サイドピーク、主ピーク、上側質量域サイドピーク)の相対的存在度を知ることができる。例えば、表1において、115Da同位体クラスターについて、下側質量域サイドピークは正規化強度全体の4.9%に寄与し、主ピークは85.3%寄与、上側質量域サイドピークは9.8%寄与していることが見て取れる。比率情報を、たたみ込みスペクトルとは別個に、及び/又はこれに関連させて取得することができ、これを、たたみ込みスペクトルの逆たたみ込みに用いて、たたみ込みスペクトル中の各ピークの既知ピーク強度を測定することにより正規化ピーク強度を得ることができる。
【0034】
例えば、表1において、たたみ込みスペクトルの114Daにおけるピーク強度は0.5である。このピークは、115Daに中心を持つ同位体クラスターの4.9%を占める下側質量域サイドピークを表している。115Daに位置する同位体クラスターのピーク(同位体クラスターの主ピーク)が同位体クラスターの85.3%となることが判明しているので、比率0.5/0.049=x/0.853を使って、主ピーク強度xを求めることができ、これにより8.7の値が求まる(表1参照)。同様に、116Daに位置する同位体クラスターのピーク(同位体クラスターの上側質量域ピーク)が同位体クラスターの9.8%となることが判明しているので、比率0.5/0.049=y/0.098を使って、上側質量域ピーク強度yを求めることができ、これにより1.0の値が求まる(表1参照)。これらの既知ピーク強度に基づいて、115Daに中心を持つ同位体クラスターの正規化ピーク強度を、0.5+8.7+1.0=10.2として計算することができる(表1)。
【0035】
この例の場合、115Daに中心を持つ同位体クラスターのすべての既知ピーク強度とともに、2つの方法のいずれかによって、116Daに中心を持つ同位体クラスターのすべてのピークの既知ピーク強度を計算することができる。
【0036】
例えば、前記で用いた方法のように、比率情報を使うことができる。117Daにおける上側質量域の既知ピーク強度(0.6)は、同位体クラスターの8.5%なので、116Da(同位体クラスターの主ピーク)における既知ピーク強度を、比率0.6/0.085=x/0.873を使って、主ピーク強度xを求めることによって計算することができ、これにより6.2の値が求まる(表1参照)。同様に、115Daにおけるピーク(同位体クラスターの下側質量域サイドピーク)は、同位体クラスターの4.2%となることが判明しているので、116Da(同位体クラスターの主ピーク)における既知ピーク強度を、比率0.6/0.085=z/0.042を使って、下側質量域サイドピーク強度zを求めることができ、これにより0.3の値が求まる(表1参照)。これらの既知ピーク強度に基づいて、116Daに中心を持つ同位体クラスターについての正規化ピーク強度を、0.3+6.2+0.6=7.1として計算することができる(表1)。
【0037】
また、提示した例において、たたみ込みスペクトル及び115Daに中心を持つ同位体クラスターの既知ピーク強度を解析することによって、116Daに中心を持つ同位体クラスターのピークの既知ピーク強度についての情報を得ることができる。例えば、115Daにおけるたたみ込みスペクトルの強度(9.0)は、115Daに中心を持つ同位体クラスターの主ピークの強度(前記で8.7と計算)と、116Daに中心を持つ同位体クラスターの下側質量域サイドピークの寄与強度との合計強度なので、116Daに中心を持つ同位体クラスターの下側質量域サイドピークについての既知ピーク強度は、2つの既知ピーク強度値の差、9.0−8.7=0.3として簡単に計算することができる。同様に、116Daにおけるたたみ込みスペクトルの強度(7.2)は、116Daに中心を持つ同位体クラスターの主ピークの強度と、115Daに中心を持つ同位体クラスターの上側質量域サイドピークの寄与強度(前記で1.0と計算)との合計強度なので、116Daに中心を持つ同位体クラスターの主ピークについての既知ピーク強度は、2つの既知ピーク強度値の差、7.2−1.0=6.2として簡単に計算することができる(表1)。
【0038】
計算の仕方はどうあれ、前記の情報から116Daに中心を持つ同位体クラスターの正規化ピーク強度を計算することができる。正規化ピーク強度は、0.3+6.2+0.6=7.1となろう(表1)。
【0039】
これにより、たたみ込みスペクトルと、同位体クラスターを規定するピークの相対強度とが与えられれば、同位体クラスターの正規化ピーク強度を計算するための方法は多様で数多くあることは明らかである。前記は、代表例であって、限定を意図したものではない。このような計算はマシン(計算機又はコンピュータ)の支援を得ても、得なくても実施することができる。このような計算は、正しい結果が得られるならばどのような順序で行うこともできる。
【0040】
本発明の一部の実施形態によって、次式により、同位体ピークを定義することができる:

I(m)=Iexp(−(m−μ)/σ

ここでmは質量、Iは所定質量における強度、μはピーク位置パラメータ(質量中心)、及びσはピーク幅のパラメータである。ピーク幅パラメータ(σ)は、ピークの高さが半分の箇所のピーク幅として測定することができる。ピーク幅の実際の測定は、ピークの高さ半分の箇所の幅を実測するか、あるいはたたみ込みスペクトルデータを所定の曲線タイプ、例えば、ガウス曲線に当てはめて反復計算をして実施する。
【0041】
本発明の一部の実施形態によって、同位体クラスターは、同位体ピークの和であって、次の式により定義される:

I(m)=Σi=0exp(−(m−μ/σ

ここでnは、逆たたみ込みスペクトルの計算の対象となるたたみ込みスペクトル中の同位体ピークの数である。一般に、nは質量範囲に依存し、例えば、100から1700Daの間の質量範囲に対してnは2から6の範囲にある。一部の実施形態は、nが2から6を上回るような異なる質量範囲を含み得る。
【0042】
本発明の一部の実施形態によって、たたみ込みスペクトルは、「濃度」に線形依存性を持つ同位体クラスターの和として定義され、次式によって定義できる:

I(m)=Σj=0Σi=0jiexp(−(m−μji/σji

ここでlは、たたみ込まれた成分の数であり、cは個別成分の正規化濃度である。あらゆるjに対して、同位体クラスター中の各所定質量における既知強度Ijiを用いて正規化濃度cを求めることができる。判明している化学式に基づいた理論計算から、あるいは、各個別成分jに対する同位体クラスターに関連する化合物の同位体存在度の過去の測定値から強度を知ることができる。例えば、各化合物の同位体クラスターの組成を、各化合物又はそのサンプルの個別質量分析によって測定することができる。測定したならば、その情報をたたみ込みスペクトルデータと同時に、又は、たたみ込みスペクトルの前又は後に提供することができる。さらに、既知強度情報を恒久的及び/又は一時的に保存しておき、本発明実施形態において使用することができる。
【0043】
一般に、本発明の実施形態によって、計算手順に、メリット関数Fが最小の場合のすべての濃度パラメータの計算を含めることができる、例えば:
F(I実験−I(m))⇒ min

考えられる一部のメリット関数には、以下に限らないが、次式を含めることができる:
χ=Σ(I実験−I(m))⇒ min、かつ
|χ|=Σ|I実験−I(m)|⇒ min

というわけで、これは、同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を計算し、これによりたたみ込みスペクトルを逆たたみ込みするさらに別の方法である。
【0044】
本発明の他の一部の実施形態によって、ピークの正規化強度の数値を、線形代数、例えば、AX=Bを使って計算することができる、ここでAは、各同位体タグの理論上の正規化強度のマトリクス、Bはスペクトル中に観測されたアウトプットピーク強度のベクトル、Xは相対的な計量値のベクトルである。例えば、A、B及びXを次のように表すことができる:
【0045】
【表2】

マトリクスAに見られるように、各々の質量タグに対するw,x,y及びzの値は、w,x,y及びzの値の少なくとも3つが0.0より大きければ加算して1.0(すなわち、100%)になることになる。w,x,y及びzの値を測定することができ、又は、各種標識試薬の各々の理論的比率を、一般に、純粋な試薬強度の測定から導き出すことができる。マトリクスAを6×4のマトリクスで示しているが、試薬(例、w,x,y及びz)よりも多くのピーク(例、113Daから118Da)があれば、任意のサイズのマトリクスを使うことができる。例えば、5×5のような正方マトリクス、及び7×9のような行よりも列の多いマトリクスも使うことができる。
【0046】
本発明のこの実施形態によれば、Aは正方マトリクスでないので、AX=Bを解くために次式を導くことができる。
1. Transpose(A)AX=Transpose(A)B
2. Inverse(Transpose(A)A)(Transpose(A)A)X=Inverse(Transpose(A)A)Transpose(A)B
3. X=Inverse(Transpose(A)A)Transpose(A)B
任意の標準マトリクス・ライブラリー、例えば、Cambridge University Press発行のNumerical Recipes参考書及び/又はソフトウエアから入手できる妥当な標準マトリクス・ライブラリーを使って、前記の式に定義したマトリクスの乗算、転置、逆変換コード計算を実施することができる。通常、これらの計算は同時に、特異値分解(SVD)アルゴリズムを使って実施することができ、これが最もしっかりした解法を提供することができる
というわけで、これは、同位体クラスターの正規化ピーク強度を計算するためのさらに別の方法である。本発明によって、任意の妥当な方法を用いて、同位体クラスターの正規化ピーク強度データを生成することができる。しかして、正規化ピーク強度データを生成するために用いられる方法に制約はない。さらに、一部の実施形態において、同一の同位体クラスターのピーク強度の解析、又は、異なる同位体クラスターのピーク強度の解析に対し、2つ以上の異なった方法を適用することが可能である。
【0047】
図2は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするための方法実施形態の流れ図である。図2によれば、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信することができる(210)。たたみ込みスペクトル中の複数の主サマリー同位体ピークの各々に対し、各主サマリー同位体ピークにより表されている同位体クラスターに関連する種々のピーク強度を累算することによって、たたみ込みスペクトル中の主サマリー同位体ピークの正規化ピーク強度を決定することができる(220)。
【0048】
図2における本発明の一部の実施形態において、主サマリー同位体ピーク強度から、主サマリー同位体ピークにより表される同位体クラスターと関連のない既知ピーク強度を差し引き、主サマリー同位体ピークにより代表される同位体クラスターと関連している異なる質量の既知ピーク強度をこれに加算することによって、累算を行うことができる。例えば、同位体クラスターの主サマリー同位体ピークと関連するピーク強度を選定し、他の同位体クラスターと関連するサイドピークの既知ピーク強度をこの選定された主サマリー同位体ピーク強度から差し引いて、仮ピーク強度を求めることができる。選定された主サマリー同位体ピークの少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知ピーク強度及び少なくとも一つの下側質量域サイドピークの既知ピーク強度を仮ピーク強度に加え、これにより同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得ることができる。
【0049】
前記のピーク強度減算及びピーク強度加算の順序は、本発明の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない、というのは、最初に適切な強度を加算して仮ピーク強度を求め、次に仮ピーク強度から適切な強度を差し引いても正しい結果が得られることになるからである。処理の順序がどうあれ、後でのアウトプットのため結果を保存及び/又は直ちにアウトプットし(230)、方法を終了することができる。
【0050】
図3は、それぞれが図4Aから4Dに図示された、4つのオーバーラップする同位体クラスターの群のピーク強度の和であるたたみ込みスペクトルをシミュレートしたものである。図3は、図1と比べて、さらに複雑なたたみ込みスペクトルの例を示している。このたたみ込みスペクトルを、本発明の実施形態を用いて逆たたみ込みすることができる。図3において、たたみ込みスペクトル310は、4つ別個の主サマリー同位体ピークA,B,C,Dを含み、それぞれ、約114、115、116及び117Daの質量を持つことが見て取れる。たたみ込みスペクトル310は、4つの同位体濃縮された化合物すべてに対し各同位体クラスターがすべて総和されることによって形成されている。たたみ込みスペクトル310は、4つ別個のサマリー同位体ピークA,B,C及びDを含むものとして示されているが、たたみ込みスペクトル・カーブには、2つ以上の別個の同位体ピークを含めることができる。
【0051】
図4Aから4Dまでは、同位体濃縮された化合物の同位体クラスターを示す。図4Aから4Dまでは、図3に図示されたたたみ込みスペクトルを生成するために用いられた各同位体クラスターである。図4Aの同位体クラスターにおける主ピークは114Daにあることが分かる。下側質量域サイドピークは113Daに、上側質量域サイドピークは115Daにあるのが見て取れる。図4Bの同位体クラスターにおける主ピークは115Daにあることが分かる。下側質量域サイドピークは114Daに、上側質量域サイドピークは116Daにあるのが見て取れる。図4Cの同位体クラスターにおける主ピークは116Daにあることが分かる。下側質量域サイドピークは115Daに、上側質量域サイドピークは117Daにあるのが見て取れる。図4Dの同位体クラスターにおける主ピークは117Daにあることが分かる。下側質量域サイドピークは116Daに、上側質量域サイドピークは118Daにあるのが見て取れる。図4Aから4Dまで描かれたすべての同位体クラスターにおいて、単一の上側質量域サイドピーク及び単一の上側質量域サイドピークがある。しかしながら、一部の実施形態において前述したように、2つ以上の上側質量域サイドピーク及び/又は2つ以上の下側質量域サイドピークの寄与を検討することはそれだけの価値がある。
【0052】
図5は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするための方法実施形態の流れ図である。本方法を使って、例えば、図1又は図3に示すオーバーラップした同位体クラスターのたたみ込みスペクトルを逆たたみ込みすることができる。図5によって、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信することができ(505)、たたみ込みスペクトル中のサマリー同位体ピークの主サマリー同位体ピーク及びピーク強度を決定することができる(510)。オーバーラップした同位体クラスターの群から一つの主サマリー同位体ピークを選定することができる(515)。選定したピークが、群中の主サマリー同位体ピークで最低の質量を持つものかどうかを決定することができる(520)。例えば、114、115、116及び117Daの質量を有する主サマリー同位体ピークを持つ、4つのオーバーラップする同位体クラスターにおける最低の質量は114Daとなる(例、図3)。選定されたピークが最低の質量(例、114Da)を持つ場合、一つ上位の同位体クラスター(主ピークが115Da)の下側質量域サイドピーク(115Daに位置)の既知強度を、選定した主サマリー同位体ピーク強度から差し引いて(525)仮ピーク強度を求めることができる。選定された主サマリー同位体ピークの下側質量域サイドピーク(113Daに位置)の既知強度と、上側質量域サイドピーク(115Daに位置)の既知強度とを仮ピーク強度に加算して(530)、これにより、たたみ込みスペクトルの最低質量同位体(又は同位体クラスター)に対する正規化ピーク強度を得ることができる。前記のピーク強度の減算(525)及びピーク強度の加算(530)の順序は、本発明の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない、というのは、最初に適切な強度を加算し(530)、次に、主サマリー同位体ピーク強度から適切な強度を差し引いても(525)正しい結果が得られることになるからである。処理の順序がどうあれ、後でのアウトプットのため結果を保存(535)及び/又は直ちにアウトプットすることができる。
【0053】
選定されていない主サマリー同位体ピークがオーバーラップした同位体クラスターの群の中にまだ残っているかどうかを決定する(540)ことができ、残っていない場合には本方法を終了することができる。まだ選定されていないさらなる主サマリー同位体ピークが残っていると決定された(540)場合には、次の主サマリー同位体ピークが選定され(550)、本方法は、選定された主サマリー同位体ピークが群中の主サマリー同位体ピーク中で最低の同位体質量を有するかどうかの決定(520)に戻ることができる。前記要素は、通常、1回しか実施する必要がない、というのは群の中には、最低質量の主サマリー同位体ピークが一つしかないからである。
【0054】
図5において、選定された主サマリー同位体ピークが群の中の主サマリー同位体ピークの最低質量のものでないと決定(520)された場合、選択された主サマリー同位体ピークは群の中の主サマリー同位体ピークの最高質量のものかどうかを決定(555)することができる。選定された主サマリー同位体ピークが最高の質量を持つものでない場合、一つ上位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークの既知強度と、一つ下位の同位体クラスターの上側質量域サイドピークの既知強度とを、選定された主サマリー同位体ピーク強度から差し引いて(560)仮ピーク強度を求めることができる。選定された主サマリー同位体ピークの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を仮ピーク強度に加え(565)、これにより、この同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得ることができる。最低質量の主サマリー同位体ピークの場合と同様、前記のピーク強度の減算(560)及びピーク強度の加算(565)の順序は本実施形態の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない、というのは、最初に適切な強度を加算し(565)、次に主サマリー同位体ピークから適切な強度を差し引いても(560)正しい結果が得られることになるからである。処理の順序がどうあれ、後でのアウトプットのため結果を保存(535)及び/又は直ちにアウトプットすることができる。
【0055】
図5によって、群の中に選定されていない主サマリー同位体ピークが残っているかどうかを決定することができ(540)、残っていない場合には本方法を終了できる。まだ選定されていないさらなる主サマリー同位体ピークが残っていると決定された(540)場合には、次の主サマリー同位体ピークを選定することができ(550)、本方法は、選定された主サマリー同位体ピークが群中の主サマリー同位体ピーク中で最低の同位体質量を有するかどうかの決定(520)に戻ることができる。選定された主サマリー同位体ピークは、主サマリー同位体ピーク中の最低質量を持つものでもなく(520)最高質量を持つものでもない(555)と決定された(520)場合には、本方法は、前記作業を継続することができる。前記要素は、通常、中間の同位体クラスターの数によって一回以上実施することができる。例えば、3つの同位体クラスターの群に対しては、一つだけの中間同位体クラスターがあり、4つの同位体クラスターに対しては2つの中間同位体クラスターがある等のことになる。すなわち、中間同位体クラスターの数は群の中の同位体クラスターの合計数よりも2つ少ないことになる。
【0056】
図5によれば、選定された主サマリー同位体ピークは群の中で最低の質量を持つものでないと決定された(520)場合、選定された主サマリー同位体ピークは最高質量のものであるかどうかを決定する(555)ことができる。選定された主サマリー同位体ピークが最高の質量を持つ場合、一つ下位の同位体クラスターの上側質量域サイドピークの既知強度を、選定された主サマリー同位体ピーク強度から差し引いて(570)仮ピーク強度を求めることができる。選定された主サマリー同位体ピークの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を仮ピーク強度に加え(575)、これにより、たたみ込みスペクトルの最高質量の主サマリー同位体ピークに対する正規化ピーク強度を得ることができる。最低及び中間質量の主サマリー同位体ピークの場合と同様、前記のピーク強度の減算(570)及びピーク強度の加算(575)の順序は本実施形態の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない。というのは、最初に適切な強度を加算し(575)、次に適切な強度を差し引いても(570)正しい結果が得られることになるからである。処理の順序がどうあれ、後でのアウトプットのため結果を保存(535)及び/又は直ちにアウトプットすることができる。
【0057】
図5の方法にれば、選定されていない主サマリー同位体ピークが群の中に残っているかどうかを決定する(540)ことができ、残っていない場合には、本方法を終了することができる。さらなる未選定の主サマリー同位体ピークが残っていると決定(540)された場合には、次の主サマリー同位体ピークを選定することができ(550)、本方法は、前記のように、選定された主サマリー同位体ピークが群中の主サマリー同位体ピーク中で最低の同位体質量を有するかどうかの決定(520)及び処理の継続に戻ることができる。
【0058】
図5に示された方法の前記の説明は、本発明の実施のために前記の順序が必要なことを示していると解すべきではなく、単に、一つの可能な順序の例示である。前記に説明・記載したように、実行の順序を、最低質量の主サマリー同位体ピークから最高の主サマリー同位体ピークへの順とすることも、最高質量の主サマリー同位体ピークから最低の主サマリー同位体ピークへの順とすることも、あるいは、主サマリー同位体ピークの任意のランダム順序とすることもできる。
【0059】
図6は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするための別の方法実施形態の流れ図である。本方法を使って、例えば、図1又は図3に示すオーバーラップした同位体クラスターのたたみ込みスペクトルを逆たたみ込みすることができる。図6において、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する(610)ことができる。たたみ込みスペクトル中のサマリー同位体ピークの主サマリー同位体ピーク及びピーク強度を決定することができ(620)、オーバーラップした同位体クラスターの群から一つの主サマリー同位体ピークを選定する(630)ことができる。
【0060】
図5と違って、図6に示す実施形態においては、選定した主サマリー同位体ピークが、最低、最高又は中間の質量を持つかどうかを決定する必要はない。一つ上位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークの既知強度と、一つ下位の同位体クラスターの上側質量域サイドピークの既知強度とを選択された主サマリー同位体ピークから差し引いて(640)仮ピーク強度を求めることができる。選定された主サマリー同位体ピークの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を仮ピーク強度に加え(650)、これにより、たたみ込みスペクトルの最高質量同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得ることができる。図5における説明と同様に、図6における前記ピーク強度減算(640)及びピーク強度加算(650)の順序は、本発明の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない、というのは、最初に適切な強度を加算し(650)、次に適切な強度を差し引いても(640)正しい結果が得られることになるからである。処理の順序がどうあれ、後でのアウトプットのため結果を保存(660)及び/又は直ちにアウトプットすることができる。
【0061】
図6において、群の中に選定されていない主サマリー同位体ピークが残っているかどうかを決定することができ(670)、残っていない場合には本方法を終了できる。まだ選定されていないさらなる主サマリー同位体ピークが残っていると決定された(670)場合には、次の主サマリー同位体ピークを選定する(680)ことができ、方法は新しく選定された(680)主サマリー同位体ピークに対する既知強度の減算(640)及び加算(650)に戻ることができる。
【0062】
図7は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするためのさらに別の方法実施形態の流れ図である。本方法を使って、例えば、図1又は図3に示すオーバーラップした同位体クラスターのたたみ込みスペクトルを逆たたみ込みすることができる。図7において、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する(710)ことができる。たたみ込みスペクトル中のサマリー同位体ピークの主サマリー同位体ピーク及びピーク強度を決定することができ(720)、群から一つの主サマリー同位体ピークを選定する(730)ことができる。図5と違って、図7に示す実施形態においては、選定した主サマリー同位体ピークが、最低、最高又は中間の質量を持つかどうかを決定する必要はない。上位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークのすべての既知強度と、下位の同位体クラスターの上側質量域サイドピークのすべての既知強度とを、選定された主サマリー同位体ピーク強度から差し引いて(740)、選定された主サマリー同位体ピークに対する仮ピーク強度を求めることができる。選定された主サマリー同位体ピークの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を仮ピーク強度に加え(750)、これにより、選定された主サマリー同位体ピークに関連する同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得ることができる。
【0063】
図5の場合と同様に、図7における前記ピーク強度減算(740)及びピーク強度加算(750)の順序は、本発明の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない、というのは、最初に適切な強度を加算し(750)、次に適切な強度を差し引いても(740)正しい結果が得られることになるからである。処理の順序がどうあれ、後でのアウトプットのため結果を保存(760)及び/又は直ちにアウトプットすることができる。
【0064】
図7において、群の中に選定されていない主サマリー同位体ピークが残っているかどうかを決定することができ(770)、残っていない場合には本方法を終了できる。まだ選定されていないさらなる主サマリー同位体ピークが残っていると決定された(770)場合には、次の主サマリー同位体ピークを選定する(780)ことができ、方法は新しく選定された(780)主サマリー同位体ピークに対する既知強度の減算(740)及び加算(750)に戻ることができる。これはすべての主サマリー同位体ピークが処理されるまで続けられ、終わった時点で本方法は終了する。
【0065】
図8は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするためのさらに別の方法実施形態の流れ図であって、方法のステップの一部が「同時に」実行される。本方法を使って、例えば、図1又は図3に示すオーバーラップした同位体クラスターのたたみ込みスペクトルを逆たたみ込みすることができる。図8において、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する(810)ことができる。たたみ込みスペクトル中のサマリー同位体ピークの主サマリー同位体ピーク及びピーク強度を決定することができ(820)、群中のすべての主サマリー同位体ピークを選定する(830)ことができる。図7と同様に、図8に示す実施形態においても、選定した主サマリー同位体ピークが、最低、最高又は中間の質量を持つかどうかを決定する必要はない。選定された主サマリー同位体ピーク強度の各々から、一つ上位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークの既知強度及び一つ下位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークの既知強度を同時に差し引いて(840)、各主サマリー同位体ピークに対する仮ピーク強度を求めることができる。選定された主サマリー同位体ピークの各々の下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を、同時に、各仮ピーク強度のそれぞれに加え(850)、これにより、たたみ込みスペクトルの主サマリー同位体ピークの各々に関連する各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得ることができる。
【0066】
図5の場合と同様に、図8における前記ピーク強度減算(840)及びピーク強度加算(850)の順序は、本発明の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない、というのは、最初にそれぞれ適切な強度を同時に加算し(850)、次に、それぞれ適切な主サマリー同位体ピークからそれぞれ適切な強度を同時に差し引いても(840)正しい結果が得られることになるからである。一部の実施形態において、すべての加算及びすべての減算は同時に処理される(例、波動関数解析を行う場合)。処理の順序がどうあれ、結果を後でアウトプットするために保存(860)及び/又は直ちにアウトプットし、方法を終了することができる。本発明の一部の実施形態によって、マトリクス構造、例えば40×40マトリクスを使って、減算(840)及び加算(850)を実施し、結果を保存(880)することができる。
【0067】
図9は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を同時に逆たたみ込みするためのさらに別の方法実施形態の流れ図である。本方法を使って、例えば、図1又は図3に示すオーバーラップした同位体クラスターのたたみ込みスペクトルを逆たたみ込みすることができる。図9において、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する(910)ことができる。たたみ込みスペクトル中のサマリー同位体ピークの主サマリー同位体ピーク及びピーク強度を決定することができ(920)、群中のすべての主サマリー同位体ピークを選定する(930)ことができる。図7と同様に、図9に示す実施形態においても、選定した主サマリー同位体ピークが、最低、最高又は中間の質量を持つかどうかを決定する必要はない。選定された主サマリー同位体ピーク強度の各々から、より上位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークすべての既知強度と、より下位の同位体クラスターの上側質量域サイドピークすべての既知強度とを同時に差し引いて(940)、各主サマリー同位体ピークに対する仮ピーク強度を求めることができる。選定された各主サマリー同位体ピークのすべての下側質量域サイドピークの既知強度及びすべての上側質量域サイドピークの既知強度を、同時にそれぞれの仮ピーク強度に加え(950)、これにより、たたみ込みスペクトルの各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得ることができる。
【0068】
図5の場合と同様に、図9における前記ピーク強度減算(940)及びピーク強度加算(950)の順序は、本発明の単なる例示であって、系統的な順序を示すものと解すべきではない、というのは、最初にそれぞれ適切な強度を同時に加算し(950)、次にそれぞれ適切な強度を同時に差し引いても(940)正しい結果が得られることになるからである。一部の実施形態において、すべての加算及びすべての減算は同時に処理される(例、波動関数解析を行う場合)。処理の順序がどうあれ、結果を後でアウトプットするために保存(960)及び/又は直ちにアウトプットし、方法を終了することができる。本発明の一部の実施形態によって、マトリクス構造、例えば40×40マトリクスを使って、減算(840)及び加算(850)を実施し、結果を保存(880)することができる。
【0069】
図10は、波動関数解析に従った、たたみ込みスペクトル中の強度情報の逆たたみ込みのための方法実施形態の最上位の流れ図である。本方法を使って、例えば、図1又は図3に示すオーバーラップした同位体クラスターのたたみ込みスペクトルを逆たたみ込みすることができる。図10において、例えば、一般に、x,yプロット様式でx値は質量又は質量対電荷比を表しy値は各x値に対する強度を表すようなピーク・リスト又はアウトプット・データを、入力する既知ピーク強度情報のデータ様式に選ぶ(1010)ことができる。各同位体クラスターに対するピーク・リスト又はアウトプット・データの中に、例えば、同位体クラスター中の各ピークの相対存在度に関する比率情報を含め、サンプル又はその分留物の質量分析によって生成することができる。ピーク・リストを使って、たたみ込みスペクトルを生成することができる。「既知」ピーク・データ強度情報を解析するために用いるピーク形状関数を選択することができる(1020)。形状関数をクレニガー関数、ガウス関数、ローレンツ関数又はディラックのデルタ関数とすることができる。同位体クラスター分布のタイプを選んで(1030)、例えば、計算又は実験的に測定する「既知」同位体クラスター強度情報を表現することができる。当初の選択(1010)、(1020)及び(1030)を、本方法における特定の順序を示していると解すべきではない、これらのは各々は、他の選択の前にでも同時にでも実施できる。インプット・ピーク・データ、選択した(1010)ピーク・データ様式、選択した(1020)ピーク形状関数、及び選択した(1030)同位体クラスター分布を用いて、「既知」同位体クラスター強度情報に対するベースライン・クラスター形状を生成することができる。相関係数を選定し(1050)これを用いて、たたみ込みスペクトル中のサマリー・ピークのベースライン・クラスター形状に対する適合度の信頼水準を決定することができる。計算アルゴリズムを選択し(1060)これを用いて、各サマリー・ピークに対する正規化ピーク強度を計算することができる。例えば、計算アルゴリズムを、ガウス−ニュートン・アルゴリズム、シンプレックス・アルゴリズム、ジェネリック・アルゴリズム、上下(LU)分解アルゴリズム及びSVDアルゴリズムから選ぶ(1060)ことができる。選択した(1060)計算アルゴリズム、選択した(1050)相関係数、及び「既知」同位体クラスター強度情報に対して生成した(1040)ベースライン・クラスター形状を使って、たたみ込みスペクトル中の各サマリー同位体ピークに対し正規化ピーク強度を計算する(1070)ことができる。たたみ込みスペクトル中の各主サマリー同位体ピークに対し、正規化ピーク強度をアウトプットし(1080)、本方法を終了することができる。
【0070】
図11は、本発明の実施形態の一部を実施することが可能なシステムのブロック図である。図11において、たたみ込みスペクトル生成源1110をコンピュータシステム1120に結合することができる。たたみ込みスペクトル生成源1110に、以下に限りはしないが、例えば、質量分析計(MS)、MS/MS、4極子MS、及び、過去のMS分析からのデータファイルを含めることができる。コンピュータシステム1120に、ディスプレイ1124に連結されたプロセシング・ユニット1122、及び入力装置1126、例えばキーボードを含めることができる。他の入力装置1126には、以下に限らないが、電子書き込みタブレット、マウス、音声作動入力装置等が含まれる。プロセシング・ユニット1122に、メモリ及び大量記憶装置に連結されたプロセッサ、例えばマイクロプロセッサ又はマルチプロセッサを含めることができる。以下には、プロセシング・ユニット1122の可能な構成を限定する意図はまったくないが、例えば、プロセッサにマイクロプロセッサを含めることができ、メモリにランダムアクセス・メモリ(RAM)を含めることができ、大量記憶装置にハードディスク装置を含めることができる。コンピュータシステム1120は、たたみ込みスペクトル生成源1110から、たたみ込みスペクトルデータ及び/又は「既知」同位体クラスター情報(例、比率情報)を受信することができ、本発明の各種の実施形態に従って、「既知」同位体クラスター情報を用いてたたみ込みスペクトルデータを逆たたみ込みすることができる。
【0071】
図12は、本発明の実施形態の一部を実施することが可能な別のシステムのブロック図である。図12においては、図11のたたみ込みスペクトル生成源1110とコンピュータシステム1120とを、ネットワーク1210を介して、例えば、通信ネットワーク、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)及び無線ネットワークを介して結合することができる。図12中のシステム、及び類似の構成体の作動は、たたみ込みスペクトル生成源1110からコンピュータシステム1120への情報の通信をネットワーク1210を通して行うことができるということを除き、図11のシステムと同様である。
【0072】
図13は、本発明の実施形態の一部を実施することが可能なさらに別のシステムのブロック図である。図13において、例えば、ディスプレイ装置1322及び入力装置1324を含む周辺サブシステム1320に結合可能なプロセシング・ユニット1310を、たたみ込みスペクトル生成源1110に含めることができる。プロセシング・ユニット1310を、図11でプロセシング・ユニット1110について説明したように構成することができる。図13中のシステム及び類似の構成体の作動は、プロセシング・ユニット1310がたたみ込みスペクトル生成源1110の中に配置されていることを除き、図11のシステムと同様である。
【0073】
本発明の詳細を開示したが、これらについて、さまざまな変更、置き換え、及び改変が可能なことを理解すべきである。さらに、特定の機能を制御するためのソフトウエア及びハードウエアについて説明しているが、このような機能は、技術的によく知られているように、ソフトウエア、ハードウエア、又はソフトウエアとハードウエアとの組み合わせのいずれかを使って実行することができる。当業者は、他の実施例を容易に確かめることができ、後記の請求範囲に明示した本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、オーバーラップする2つの同位体クラスターの簡単なモデルの図である。
【図2】図2は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするための方法の実施形態の最上位流れ図である。
【図3】図3は、図4A−4Dにそれぞれを示すオーバーラップする4つの同位体クラスターに対するシミュレートたたみ込みスペクトルの図である。
【図4A】図4Aは、波合成されて図3のたたみ込みスペクトルを形成できる同位体クラスターの例である。
【図4B】図4Bは、波合成されて図3のたたみ込みスペクトルを形成できる同位体クラスターの例である。
【図4C】図4Cは、波合成されて図3のたたみ込みスペクトルを形成できる同位体クラスターの例である。
【図4D】図4Dは、波合成されて図3のたたみ込みスペクトルを形成できる同位体クラスターの例である。
【図5】図5は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするための方法実施形態の流れ図である。
【図6】図6は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするための別の方法実施形態の流れ図である。
【図7】図7は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするためのさらに別の方法実施形態の流れ図である。
【図8】図8は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を同時逆たたみ込みするための方法実施形態の流れ図である。
【図9】図9は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を同時逆たたみ込みするためのさらに別の方法実施形態の流れ図である。
【図10】図10は、たたみ込みスペクトル中の強度情報を逆たたみ込みするためのさらに別の方法実施形態の最上位流れ図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態を実施できるシステムのブロック図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態を実施できる別のシステムのブロック図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態を実施できるさらに別のシステムのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
複数の主サマリー同位体ピークの各々について主サマリー同位体ピークを決定し、決定した各主サマリー同位体ピークに対して、少なくとも一つの下位質量同位体クラスター上側質量域サイドピークと、少なくとも一つの上位質量同位体クラスター下側質量域サイドピークとの既知強度寄与を、前記それぞれの主サマリー同位体ピークから差し引き、前記同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を前記それぞれの主サマリー同位体ピークに加えることによって、前記たたみ込みスペクトル中の各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度は、オーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程と
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1の前記方法であって、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程は、
前記たたみ込みスペクトルについての強度情報を受信する工程を包含し、前記たたみ込みスペクトル強度情報は、前記群の各同位体クラスターに対する比率情報を包含するサマリー・ピーク強度を含むものとする、方法。
【請求項3】
請求項1の前記であって、
前記群の各同位体クラスターの少なくとも3つのピークについてのピーク強度比率情報を受信する工程をさらに包含する、方法。
【請求項4】
請求項3の前記方法であって、各同位体クラスターの前記少なくとも3つのピークについての比率情報を受信する工程は、
前記群の各同位体クラスターに対する、少なくとも一つの下側質量域サイドピーク、主サマリー同位体ピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークについてのピーク強度比率情報を受信する工程を包含する、方法。
【請求項5】
請求項1の前記方法であって、オーバーラップした同位体クラスターの前記群の各々に対し、前記たたみ込みスペクトル中の主サマリー同位体ピークを決定する工程は、
選択した関数を用いて前記たたみ込みスペクトルを所定のピーク形状に当てはめる工程を包含する、方法。
【請求項6】
請求項5の前記方法であって、選択した関数を用いて前記たたみ込みスペクトルを所定のピーク形状に当てはめる工程は、
クレニガー関数、
ガウス関数、
ローレンツ関数、及び
ディラック・デルタ関数
のうちの一つを用いて前記たたみ込みスペクトルを当てはめる工程を包含する、
方法。
【請求項7】
請求項5の前記方法であって、
前記オーバーラップした同位体クラスターの各々を、前記選択した関数及び相関係数を用いて前記所定のピーク形状に当てはめる工程をさらに包含する、方法。
【請求項8】
請求項1の前記方法であって、
前記主サマリー同位体ピークの各々に対するサマリー・ピーク強度を決定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項9】
請求項8の前記方法であって、前記主サマリー同位体ピークの各々に対する前記サマリーピーク強度を決定する工程は、
前記主サマリー同位体ピークの各々の質量中心の最大高さを決定する工程を包含する、
方法。
【請求項10】
請求項8の前記方法であって、前記主サマリー同位体ピークの各々に対する前記サマリーピーク強度を決定する工程は、
前記主サマリー同位体ピークの各々の下の面積を決定する工程を包含する、
方法。
【請求項11】
請求項10の前記方法であって、前記主サマリー同位体ピークの各々の下の面積を決定する工程は、
前記サマリー・ピークの計算された幅の間にある前記主サマリー同位体ピークの各々の下の前記面積を決定する工程を包含する、
方法。
【請求項12】
請求項11の前記方法であって、前記サマリー同位体ピークの前記計算された幅は、前記サマリー同位体ピークの前記高さが半分の箇所で計算される、方法。
【請求項13】
請求項1の前記方法であって、各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を決定する工程は、決定される各主サマリー同位体ピークに対して、
少なくとも前記一つ下位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの上側質量域サイドピークの前記既知強度と、少なくとも前記一つ上位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの下側質量域サイドピークの前記既知強度とを、前記主サマリー同位体ピークの前記強度から差し引いて仮ピーク強度を求める工程と、
前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピークの既知強度及び前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度を、前記仮結果に加えて前記主サマリー同位体ピークの前記正規化ピーク強度を得る工程とを包含する、
方法。
【請求項14】
請求項13の前記方法であって、前記差し引く工程は、
オーバーラップしている少なくとも前記一つ下位の質量の同位体クラスターの上側質量域サイドピークのピーク高さと、オーバーラップしている少なくとも前記一つ上位の質量の同位体クラスターの下側質量域サイドピークのピーク高さとを、前記主サマリー同位体ピークのピーク高さから差し引いて仮ピーク高さを求める工程を包含する、
方法。
【請求項15】
請求項13の前記方法であって、前記加える工程は、
前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも前記下側質量域サイドピークのピーク高さ及び前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも前記上側質量域サイドピークのピーク高さを、前記仮ピーク高さに加えて前記主サマリー同位体ピークの正規化ピーク高さを得る工程を包含する、
方法。
【請求項16】
請求項13の前記方法であって、前記差し引く工程は、
オーバーラップしている少なくとも前記一つ下位の質量の同位体クラスターの上側質量域サイドピークのピーク面積と、オーバーラップしている少なくとも前記一つ上位の質量の同位体クラスターの下側質量域サイドピークのピーク面積とを、前記主サマリー同位体ピークのピーク面積から差し引いて仮ピーク面積を求める工程を包含する、
方法。
【請求項17】
請求項13の前記方法であって、前記加える工程は、
前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも前記下側質量域サイドピークのピーク面積及び前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも前記上側質量域サイドピークのピーク面積を前記仮ピーク面積に加えて、前記主サマリー同位体ピークの正規化ピーク面積を得る工程を包含する、
方法。
【請求項18】
請求項13の前記方法であって、前記差し引く工程及び前記加える工程は、選択されたアルゴリズムに従って実施される、方法。
【請求項19】
請求項18の前記方法であって、前記選択されたアルゴリズムは、
ガウス−ニュートン・アルゴリズム、
シンプレックス・アルゴリズム
ジェネリック・アルゴリズム、
LU分解、及び
SV分解のうちの一つを含む、
方法。
【請求項20】
請求項13の前記方法であって、前記加える工程は前記差し引く工程の前に実行される、方法。
【請求項21】
下記の方法を実施するための複数の実行可能命令を格納している機械可読媒体であって、該方法が、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
複数の主サマリー同位体ピークの各々について主サマリー同位体ピークを決定し、決定した各主サマリー同位体ピークに対して、少なくとも一つの下位質量同位体クラスター上側質量域サイドピークと、少なくとも一つの上位質量同位体クラスター下側質量域サイドピークとの既知強度寄与を、前記それぞれの主サマリー同位体ピークから差し引き、前記同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を前記それぞれの主サマリー同位体ピークに加えることによって、前記たたみ込みスペクトル中の各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度は、オーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する
媒体。
【請求項22】
請求項21の前記機械可読媒体であって、オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程は、
前記たたみ込みスペクトルについての強度情報を受信する工程を包含し、前記たたみ込みスペクトル強度情報は、オーバーラップした各同位体クラスターに対する個別の強度情報を包含するサマリー強度を含むものとする、
媒体。
【請求項23】
請求項22の前記機械可読媒体であって、
前記群の各同位体クラスターの少なくとも3つのピークについての個別ピーク強度比率情報を受信する工程をさらに包含する、媒体。
【請求項24】
請求項23の前記機械可読媒体であって、各同位体クラスターの前記少なくとも3つのピークについての比率情報を受信する工程は、
オーバーラップした各同位体クラスターに対する、下側質量域サイドピークと主サマリー同位体ピークと上側質量域サイドピークとについてのピーク強度比率情報を受信する工程を包含する、
媒体。
【請求項25】
請求項21の前記機械可読媒体であって、オーバーラップした同位体クラスターの前記群の各々に対し、前記たたみ込みスペクトル中の主サマリー同位体ピークを決定する工程は、
選択した関数を用いて前記たたみ込みスペクトルを所定のピーク形状に当てはめる工程を包含する、
媒体。
【請求項26】
請求項25の前記機械可読媒体であって、選択した関数を用いて前記たたみ込みスペクトルを所定のピーク形状に当てはめる工程は、
クレニガー関数、
ガウス関数、
ローレンツ関数、及び
ディラック・デルタ関数
の一つを用いて前記たたみ込みスペクトルを当てはめる工程とする、
媒体。
【請求項27】
請求項25の前記機械可読媒体であって、
前記オーバーラップした同位体クラスターの各々を、前記選択した関数及び相関係数を用いて前記所定のピーク形状に当てはめる工程をさらに包含する、媒体。
【請求項28】
請求項21の前記機械可読媒体であって、
前記主サマリー同位体ピークの各々に対するサマリー・ピーク強度を決定する工程をさらに包含する、媒体。
【請求項29】
請求項28の前記機械可読媒体であって、前記主サマリー同位体ピークの各々に対する前記サマリー・ピーク強度を決定する工程は、
前記主サマリー同位体ピークの各々の質量中心の最大高さを決定する工程を包含する、
媒体。
【請求項30】
請求項28の前記機械可読媒体であって、前記サマリー同位体ピークの各々に対するサマリー・ピーク強度を決定する工程は、
前記主サマリー同位体ピークの各々の下の面積を決定する工程を包含する、
媒体。
【請求項31】
請求項30の前記機械可読媒体であって、前記主サマリー同位体ピークの各々の下の面積を決定する工程は、
前記サマリー同位体ピークの計算された幅の間にある前記主サマリー同位体ピークの各々の下の前記面積を決定する工程を包含する、
媒体。
【請求項32】
請求項31の前記機械可読媒体であって、前記サマリー同位体ピークの前記計算された幅は、前記サマリー同位体ピークの前記高さが半分の箇所で計算される、媒体。
【請求項33】
請求項21の前記機械可読媒体であって、各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を決定する工程は、決定される各主サマリー同位体ピークに対して、
前記一つ下位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの上側質量域サイドピークの前記既知強度と、前記一つ上位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの下側質量域サイドピークの前記既知強度とを、前記主サマリー同位体ピークの前記強度から差し引いて仮ピーク強度を求める工程と、
前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも下側質量域サイドピークの既知強度及び前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの上側質量域サイドピークの既知強度を、前記仮結果に加えて前記主サマリー同位体ピークの前記正規化ピーク強度を得る工程を包含する、
媒体。
【請求項34】
請求項33の前記機械可読媒体であって、前記差し引く工程は、
前記一つ下位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの上側質量域サイドピークのピーク高さと、前記一つ上位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの下側質量域サイドピークのピーク高さとを、前記主サマリー同位体ピークのピーク高さから差し引いて仮ピーク高さを求める工程を包含する、
媒体。
【請求項35】
請求項33の前記機械可読媒体であって、前記加える工程は、
前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも前記下側質量域サイドピークのピーク高さ及び前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの前記上側質量域サイドピークのピーク高さを、前記仮ピーク高さに加えて前記主サマリー同位体ピークの正規化ピーク高さを得る工程を包含する、
媒体。
【請求項36】
請求項33の前記機械可読媒体であって、前記差し引く工程は、
前記一つ下位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの上側質量域サイドピークのピーク面積と、前記一つ上位の質量のオーバーラップ同位体クラスターの下側質量域サイドピークのピーク面積とを、前記主サマリー同位体ピークのピーク面積から差し引いて仮ピーク面積を求める工程を包含する、
媒体。
【請求項37】
請求項33の前記機械可読媒体であって、前記加える工程は、
前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの少なくとも前記下側質量域サイドピークのピーク面積及び前記主サマリー同位体ピークに関連する前記同位体クラスターの前記上側質量域サイドピークのピーク面積を、前記仮ピーク面積に加えて前記主サマリー同位体ピークの正規化ピーク面積を得る工程を包含する、
媒体。
【請求項38】
請求項33の前記機械可読媒体であって、前記差し引く工程及び前記加える工程は、選択されたアルゴリズムに従って実施される、媒体。
【請求項39】
請求項38の前記機械可読媒体であって、前記選択されたアルゴリズムは、
ガウス−ニュートン・アルゴリズム、
シンプレックス・アルゴリズム
ジェネリック・アルゴリズム、
LU分解、及び
SV分解
のうちの一つを含む、媒体。
【請求項40】
請求項33の前記機械可読媒体であって、前記加える工程は前記差し引く工程の前に実行される、媒体。
【請求項41】
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
前記たたみ込みスペクトル中の複数の主サマリー同位体ピークから、前記群の各同位体クラスターに対する主サマリー同位体ピークを決定する工程と、
前記主サマリー同位体ピークの各々に対するサマリー強度を決定する工程と、
より下位の質量同位体クラスターの上側質量域サイドピークのすべてと、より上位の質量同位体クラスターの下側質量域サイドピークのすべてとの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から差し引き、前記主サマリー同位体ピークに対する前記オーバーラップした同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記主サマリー同位体ピークの各々の正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程と
を包含する、方法。
【請求項42】
下記の方法を実施するための複数の実行可能命令を格納している機械可読の媒体であって、該方法が、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
前記たたみ込みスペクトル中の複数の主サマリー同位体ピークから、前記群の各同位体クラスターに対する主サマリー同位体ピークを決定する工程と、
前記主サマリー同位体ピークの各々に対するサマリー強度を決定する工程と、
より下位の質量同位体クラスターの上側質量域サイドピークのすべてと、より上位の質量同位体クラスターの下側質量域サイドピークのすべてとの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から差し引き、前記主サマリー同位体ピークに対する前記オーバーラップした同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記複数の主サマリー同位体ピークの各々の正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数のサマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する
媒体。
【請求項43】
プロセッサと、
前記プロセッサに連結された入力ポートであって、たたみ込みスペクトルデータを受信する入力ポートと、
前記入力ポート及び前記プロセッサに連結されたメモリであって、前記入力ポートから前記たたみ込みスペクトルデータを格納し、以下の方法を実施するための複数の実行可能命令をさらに格納しているメモリと
を含む、コンピュータシステムであって、該方法が、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
各主サマリー同位体ピークに対し、少なくとも一つの下位質量同位体クラスター上側質量域サイドピークと、少なくとも一つの上位質量同位体クラスター下側質量域サイドピークとの既知強度寄与を、前記それぞれの主サマリー同位体ピークから差し引き、前記同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を前記それぞれの主サマリー同位体ピークに加えることによって、前記たたみ込みスペクトル中の複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記たたみ込みスペクトル中の主サマリー同位体ピークの正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する、
コンピュータシステム。
【請求項44】
たたみ込みスペクトル生成源と、
前記たたみ込みスペクトル生成源に連結されたプロセッサであって、前記たたみ込みスペクトル生成源からたたみ込みスペクトルデータを受信するプロセッサと、
前記プロセッサに連結されたメモリであって、入力ポートから前記たたみ込みスペクトルデータを格納し、以下の方法を実施するための複数の実行可能命令をさらに格納しているメモリと
を含む、装置であって、該方法が、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
各主サマリー同位体ピークに対して、少なくとも一つの下位質量同位体クラスター上側質量域サイドピークと、少なくとも一つの上位質量同位体クラスター下側質量域サイドピークとの既知強度寄与を、前記それぞれの主サマリー同位体ピークから差し引き、前記同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を前記それぞれの主サマリー同位体ピークに加えることによって、前記たたみ込みスペクトル中の複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記たたみ込みスペクトル中の主サマリー同位体ピークの正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する、
装置。
【請求項45】
請求項44の前記装置であって、前記たたみ込みスペクトル生成源は、
タンデム型質量分析計/質量分析計(MS/MS)を含む、装置。
【請求項46】
プロセッサと、
前記プロセッサに連結された入力ポートであって、たたみ込みスペクトルデータを受信する入力ポートと、
前記入力ポート及び前記プロセッサに連結されたメモリであって、前記メモリは前記入力ポートから前記たたみ込みスペクトルデータを格納し、以下の方法を実施するための複数の実行可能命令をさらに格納しているメモリと
を含む、コンピュータシステムであって、該方法が、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
オーバーラップした同位体クラスターの前記群の各々に対する前記たたみ込みスペクトル中の主サマリー同位体ピークを決定する工程と、
前記主サマリー同位体ピークの各々に対するサマリー強度を決定する工程と、
より下位の質量同位体クラスターの上側質量域サイドピークのすべてと、より上位の質量同位体クラスターの下側質量域サイドピークのすべてとの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から差し引き、前記主サマリー同位体ピークに対する前記オーバーラップした同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記主サマリー同位体ピークの各々の正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する、
コンピュータシステム。
【請求項47】
たたみ込みスペクトル生成源と、
前記たたみ込みスペクトル生成源に連結されたプロセッサであって、前記たたみ込みスペクトル生成源からたたみ込みスペクトルデータを受信するプロセッサと、
前記プロセッサに連結されたメモリであって、入力ポートから前記たたみ込みスペクトルデータを格納し、以下の方法を実施するための複数の実行可能命令をさらに格納しているメモリと
を含む、装置であって、該方法が、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
前記たたみ込みスペクトル中の複数の主サマリー同位体ピークから、各同位体クラスターに対する主サマリー同位体ピークを決定する工程と、
前記主サマリー同位体ピークの各々に対するサマリー強度を決定する工程と、
より下位の質量同位体クラスターの上側質量域サイドピークのすべてと、より上位の質量同位体クラスターの下側質量域サイドピークのすべてとの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から差し引き、前記主サマリー同位体ピークに対する前記オーバーラップした同位体クラスターの少なくとも一つの下側質量域サイドピーク及び少なくとも一つの上側質量域サイドピークの既知強度寄与を、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記主サマリー同位体ピークの各々の正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する、
装置。
【請求項48】
請求項47の前記装置であって、前記たたみ込みスペクトル生成源は、
タンデム型質量分析計/質量分析計(MS/MS)を含む、装置。
【請求項49】
ピーク・データの様式を選択する工程と、
ピーク形状関数を選択する工程と、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対する複数の主サマリー同位体ピークを含む同位体クラスター分布を選定する工程と、
前記ピーク形状関数を使い、前記クラスタの形状をベースライン・クラスター分布に当てはめて前記同位体クラスター分布に対するクラスター形状を生成する工程と、
相関係数を選定する工程と、
計算アルゴリズムを選択する工程と、
前記計算アルゴリズム及び相関係数を使って、一つ下位の同位体クラスターの上側質量域サイドピークが寄与する既知強度と、一つ上位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークの既知強度とを各主サマリー同位体ピークのサマリー強度から差し引き、前記サマリー同位体ピークに対する下側質量域サイドピーク及び上側質量域サイドピークの既知強度を、前記各種サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記同位体クラスター分布の各主サマリー同位体ピークに対する正規化ピーク強度を計算する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度をアウトプットし、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程と
を包含する、方法。
【請求項50】
下記の方法を実施するための複数の実行可能命令を格納している機械可読の媒体であって、該方法が、
ピーク・データの様式を選択する工程と、
ピーク形状関数を選択する工程と、
オーバーラップした同位体クラスターの群に対する複数の主サマリー同位体ピークを含む同位体クラスター分布を選定する工程と、
前記ピーク形状関数を使い、前記クラスタ形状をベースライン・クラスター分布に当てはめて前記同位体クラスター分布に対するクラスター形状を生成する工程と、
相関係数を選定する工程と、
計算アルゴリズムを選択する工程と、
前記計算アルゴリズム及び相関係数を使って、一つ下位の同位体クラスターの上側質量域サイドピークが寄与する既知強度と、一つ上位の同位体クラスターの下側質量域サイドピークの既知強度とを各主サマリー同位体ピークのサマリー強度から差し引き、前記同位体クラスターに対する下側質量域サイドピーク及び上側質量域サイドピークの既知強度を、前記各種サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記同位体クラスター分布の各主サマリー同位体ピークに対する正規化ピーク強度を計算する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度をアウトプットし、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する、
媒体。
【請求項51】
各々があるサマリー強度を持ち、各々が、オーバーラップした同位体クラスターの群の一つに関連している、複数の主サマリー同位体ピークを包含するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
一つ下位の同位体ピークの上側質量域サイドピークによる既知強度寄与と、一つ上位の同位体ピークの下側質量域サイドピークによる既知強度寄与とを前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から差し引き、前記主サマリー同位体ピークに関連する前記一つのオーバーラップしたクラスターの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を、前記各主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記たたみ込みスペクトル中の前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程と
を包含する、方法。
【請求項52】
下記の方法を実施するための複数の実行可能命令を格納している機械可読の媒体であって、該方法が、
各々があるサマリー強度を持ち、各々が、オーバーラップした同位体クラスターの群の一つに関連している、複数の主サマリー同位体ピークを包含するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
一つ下位の同位体ピークの上側質量域サイドピークによる既知強度寄与と、一つ上位の同位体ピークの下側質量域サイドピークによる既知強度寄与とを前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から差し引き、前記サマリー同位体ピークに関連する前記一つのオーバーラップしたクラスターの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を、前記各種サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記たたみ込みスペクトル中の前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程とを包含する、
媒体。
【請求項53】
各々があるサマリー強度を持ち、各々が、オーバーラップした同位体クラスターの群の一つに関連している、複数の主サマリー同位体ピークを包含するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
より下位のすべての同位体ピークの上側質量域サイドピークに対する既知強度と、より上位のすべての同位体ピークの下側質量域サイドピークに対する既知強度とを、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から除去し、前記主サマリー同位体ピークに関連する前記一つのオーバーラップしたクラスターの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を、前記各種サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表すものとする工程と
を包含する、方法。
【請求項54】
下記の方法を実施するための複数の実行可能命令を格納している機械可読の媒体であって、該方法が、
各々があるサマリー強度を持ち、各々が、オーバーラップした同位体クラスターの群の一つに関連している、複数の主サマリー同位体ピークを包含するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
より下位のすべての同位体ピークの上側質量域サイドピークに対する既知強度と、より上位のすべての同位体ピークの下側質量域サイドピークに対する既知強度とを、前記主サマリー同位体ピークの前記サマリー強度から除去し、前記主サマリー同位体ピークに関連する前記一つのオーバーラップしたクラスターの下側質量域サイドピークの既知強度及び上側質量域サイドピークの既知強度を、前記各種サマリー同位体ピークの前記サマリー強度に加えることによって、前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する正規化ピーク強度を決定する工程と、
前記複数の主サマリー同位体ピークの各々に対する前記正規化ピーク強度を保存し、各正規化ピーク強度はオーバーラップした同位体クラスターの前記群の個々の同位体クラスターを表するものとする工程とを包含する、
媒体。
【請求項55】
複数の検体の各々を、複数の同位体標識試薬の相異なる一つで標識する工程と、
前記複数の同位体標識試薬の各々に対する個々の成分の同位体ピーク強度分布を取得する工程と、
前記標識された複数の検体を混合する工程と、
前記混合した検体の分析からたたみ込みスペクトルを取得する工程であって、前記たたみ込みスペクトルはオーバーラップした同位体クラスターの群を含み、各同位体クラスターは、前記複数の検体の標識に用いた前記複数の同位体標識試薬各々の相異なる一つに関連するものとする工程と、
各同位体クラスターに関連する主サマリー同位体ピークを決定する工程、
前記個々の成分の同位体ピーク強度分布を用いて、各同位体クラスターの前記主サマリー同位体ピークに関連する、前記主サマリー同位体ピークと一つ以上の上側質量域サイドピーク及び下側質量域サイドピークとの各々に対する既知ピーク強度を決定する工程、及び、
下位質量の同位体ピークに関連する少なくとも一つの上側質量域成分と、上位質量の同位体ピークに関連する少なくとも一つの下側質量域成分との前記既知強度寄与を除去し、各主サマリー同位体ピークに関連する少なくとも一つの上側質量域成分及び少なくとも一つの下側質量域成分の前記既知強度寄与を加え、これにより各同位体クラスターに対する前記正規化ピーク強度を得る工程によって、
前記たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みする工程と、
オプションとして、前記逆たたみ込みしたスペクトルをアウトプットする工程と
を包含する、方法。
【請求項56】
複数の検体の各々を、複数の同位体標識試薬の相異なる一つで標識する工程と、
前記複数の同位体標識試薬の各々に対する個々の成分の同位体ピーク強度分布を取得する工程と、
前記標識された複数の検体を混合する工程と、
前記混合した検体の分析からたたみ込みスペクトルを取得する工程であって、前記たたみ込みスペクトルはオーバーラップした同位体クラスターの群を含み、各同位体クラスターは、前記複数の検体の標識に用いた前記複数の同位体標識試薬の各々の相異なる一つに関連するものとする、工程と、
各同位体クラスターと関連する主サマリー同位体ピークを決定する工程と、
前記個々の成分の同位体ピーク強度分布を用いて、各同位体クラスターに対する前記主サマリー同位体ピークに関連する、前記主サマリー同位体ピーク、及び前記一つ以上の上側質量域サイドピーク及び下側質量域サイドピークの各々に対する既知ピーク強度を決定する工程と、
下位質量の同位体クラスターに関連するすぐ隣の上側質量域成分と上位質量の同位体クラスターに関連するすぐ隣の下側質量域成分との既知強度寄与を除去し、各主サマリー同位体ピークに関連する少なくとも一つの上側質量域成分及び少なくとも一つの下側質量域成分の前記既知強度寄与を加え、これにより各同位体クラスターに対する前記正規化ピーク強度を得ることによって、前記たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みする機械実行可能ロジックを持つ工程と、
オプションとして、前記逆たたみ込みスペクトルをアウトプットする前記機械実行可能ロジックを持つ工程と
を包含する、方法。
【請求項57】
複数の検体の各々を、複数の同位体標識試薬の相異なる一つで標識する工程と、
前記複数の同位体標識試薬の各々に対する個々の成分の同位体ピーク強度分布を取得する工程と、
前記標識された複数の検体を混合する工程と、
前記混合した検体の分析からたたみ込みスペクトルを取得する工程であって、前記たたみ込みスペクトルはオーバーラップした同位体クラスターの群を含み、各同位体クラスターは、前記複数の検体の標識に用いた前記複数の同位体標識試薬の相異なる一つに関連するものとする工程と、
各同位体クラスターと関連する主サマリー同位体ピークを決定する工程と、
前記個々の成分の同位体ピーク強度分布を用いて、各同位体クラスターに対する前記主サマリー同位体ピークに関連する、前記主サマリー同位体ピークと前記一つ以上の上側質量域サイドピーク及び下側質量域サイドピークとの各々に対する既知ピーク強度を決定する工程と、
下位質量の同位体ピークに関連するすべての上側質量域成分と、上位質量の同位体ピークに関連するすべての下側質量域成分との前記既知強度寄与を除去し、各主サマリー同位体ピークに関連する少なくとも一つの上側質量域成分及び少なくとも一つの下側質量域成分を加え、これにより各同位体クラスターに対する前記正規化ピーク強度を得ることによって、前記たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みする工程と、
オプションとして、前記逆たたみ込みしたスペクトルをアウトプットする工程と
を包含する、方法。
【請求項58】
複数の検体の各々を、複数の同位体標識試薬の相異なる一つで標識する工程と、
前記複数の同位体標識試薬の各々に対する個々の成分の同位体ピーク強度分布を取得する工程と、
前記標識された複数の検体を混合する工程と、
前記混合した検体の前記分析からたたみ込みスペクトルを取得する工程であって、前記たたみ込みスペクトルはオーバーラップした同位体クラスターの群を含み、各同位体クラスターは、前記複数の検体の標識に用いた前記複数の同位体標識試薬の各々の相異なる一つに関連するものとする工程と、
各同位体クラスターと関連する主サマリー同位体ピークを決定する工程と、
前記個々の成分の同位体ピーク強度分布を用いて、各同位体クラスターに対する前記主サマリー同位体ピークに関連する、前記主サマリー同位体ピーク、及び前記一つ以上の上側質量域サイドピーク及び下側質量域サイドピークの各々に対する既知ピーク強度を決定する工程と、
より下位の同位体クラスターに関連するすべての上側質量域成分と、より上位の同位体クラスターに関連するすべての下側質量域成分の既知強度とを除去し、各主サマリー同位体ピークに関連する少なくとも一つの上側質量域成分及び少なくとも一つの下側質量域成分の既知強度寄与を加え、これにより各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得ることによって、前記たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みする機械実行可能ロジックを持つ工程と、
オプションとして、前記逆たたみ込みしたスペクトルをアウトプットする機械実行可能ロジックを持つ工程と
を包含する、方法。
【請求項59】
複数の同位体標識試薬に関連しオーバーラップしている同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
前記たたみ込みスペクトル中の前記同位体クラスターの各々の主サマリー同位体ピーク及び前記主サマリー同位体ピークの各々に対するピーク強度を決定する工程と、
オーバーラップした同位体クラスターの前記群からすべての主サマリー同位体ピークを選定する工程と、
一つ下位の同位体の上側質量域ピークの既知強度寄与と、一つ上位の同位体の下側質量域ピークの既知強度寄与とを、各主サマリー同位体ピークの前記強度から同時に差し引く工程と、
各同位体クラスターの下側質量域サイドピーク及び上側質量域サイドピークの既知強度寄与を、前記同位体クラスターの前記それぞれの主サマリー同位体ピークの前記強度に同時に加える工程と、
オプションとして、前記同時実施の減算と加算との前記結果を保存する工程と
を包含する、方法。
【請求項60】
下記の方法を実施するための複数の実行可能命令を格納している機械可読媒体であって、該方法が、
複数の同位体標識試薬に関連しオーバーラップしている同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
前記たたみ込みスペクトル中の前記同位体クラスターの各々の主サマリー同位体ピーク及び前記主サマリー同位体ピークの各々に対するピーク強度を決定する工程と、
オーバーラップした同位体クラスターの前記群からすべての主サマリー同位体ピークを選定する工程と、
一つ下位の同位体の上側質量域ピークの既知強度寄与と、一つ上位の同位体の下側質量域ピークの既知強度寄与とを、各主サマリー同位体ピークの前記強度から同時に差し引く工程と、
各同位体クラスターの下側質量域サイドピーク及び上側質量域サイドピークの既知強度寄与を、前記同位体クラスターの前記それぞれの主サマリー同位体ピークの前記強度に同時に加える工程と、
オプションとして、前記同時実施の減算と加算との前記結果を保存する工程とを包含する、
媒体。
【請求項61】
複数の同位体標識試薬に関連しオーバーラップしている同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
前記たたみ込みスペクトル中の前記同位体クラスターの各々の主サマリー同位体ピーク及び前記主サマリー同位体ピークの各々に対するピーク強度を決定する工程と、
オーバーラップした同位体クラスターの前記群からすべての主サマリー同位体ピークを選定する工程と、
下位の同位体の上側質量域ピークすべての既知強度寄与と、上位の同位体の下側質量域ピークすべての既知強度寄与とを、各主サマリー同位体ピークの前記強度から同時に差し引く工程と、
各同位体クラスターのすべての下側質量域サイドピーク及び上側質量域サイドピークのすべての既知強度寄与を、前記同位体クラスターの前記それぞれの主サマリー同位体ピークの前記強度に同時に加える工程と、
オプションとして、前記同時実施の減算と加算との前記結果を保存する工程と
を包含する、方法。
【請求項62】
下記の方法を実施するための複数の実行可能命令を格納している機械可読媒体であって、該方法が、
複数の同位体標識試薬に関連しオーバーラップしている同位体クラスターの群に対するたたみ込みスペクトルを受信する工程と、
前記たたみ込みスペクトル中の前記同位体クラスターの各々の主サマリー同位体ピーク及び前記主サマリー同位体ピークの各々に対するピーク強度を決定する工程と、
オーバーラップした同位体クラスターの前記群からすべてのサマリー同位体ピークを選定する工程と、
下位の同位体の上側質量域ピークすべての既知強度寄与と、上位の同位体すべての下側質量域ピークの既知強度寄与とを、各主サマリー同位体ピークの前記強度から同時に差し引く工程と、
各同位体クラスターのすべての下側質量域サイドピーク及びすべての上側質量域サイドピークの既知強度寄与を、前記同位体クラスターの前記それぞれの主サマリー同位体ピークの前記強度に同時に加える工程と、
オプションとして、前記同時実施の減算と加算との前記結果を保存する工程とを包含する、
媒体。
【請求項63】
サーベイ走査を実施し、一つ以上の標識された検体、又は一つ以上のその標識されたフラグメントを決定する工程と、
前記標識された検体又は標識されたフラグメントを選定する工程と、
前記選定された、標識された検体又は標識されたフラグメントを解離エネルギーレベルに曝し、これにより、標識された検体又は標識されたフラグメントを解離する工程と、
解離された被標識検体又は被標識フラグメントの単一のエネルギー走査を実施する工程と、
前記解離された検体又はフラグメントの前記単一のエネルギー走査から、単一のスペクトルを採取し、前記単一のスペクトルは、前記選定された被標識検体又は被標識フラグメントの一つ以上のレポーター・イオン及び一つ以上の娘フラグメント・イオンを含むものとする工程と
を包含する、方法。
【請求項64】
請求項63の前記方法であって、前記レポーター・イオンに関連する前記ピークは、前記スペクトルのクワイエット・ゾーンに位置する、方法。
【請求項65】
請求項63の前記方法であって、前記レポーター・イオンは、2つ以上の異なる同位体標識試薬に関連しオーバーラップしている同位体クラスターのたたみ込みスペクトルを生成する、方法。
【請求項66】
請求項65の前記方法であって、
前記たたみ込みスペクトルを逆たたみ込みして、前記たたみ込みスペクトル中の各同位体クラスターに対する正規化ピーク強度を得る工程をさらに包含する、方法。
【請求項67】
請求項66の前記方法であって、
前記たたみ込みスペクトル中の各同位体クラスターの前記正規化ピーク強度を比較することによって相異なる同位体標識試薬の各々の相対量を決定する工程をさらに包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−512538(P2007−512538A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541647(P2006−541647)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039301
【国際公開番号】WO2005/054875
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】