ぬれ状態推定方法、ぬれ状態推定装置、電線劣化推定方法および電線劣化推定システム
【課題】 相対湿度の観測データがすべてそろわなくても、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子から電線の劣化を推定することを可能にするぬれ状態推定方法、ぬれ状態推定装置、電線劣化推定方法および電線劣化推定システムを提供する。
【解決手段】 電線の腐食速度を推定する電線劣化推定システムであって、シミュレーションで得た塩分通過量を基に、所定区域の塩分到達マップを作成すると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に、所定区域のぬれ時間マップを作成し、かつ、平均相対湿度のデータが無いときにはぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いるサーバ20と、所定区域の塩分到達マップから電線の塩分付着度を求めると共に、所定区域のぬれ時間マップから電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する端末10とを備える。
【解決手段】 電線の腐食速度を推定する電線劣化推定システムであって、シミュレーションで得た塩分通過量を基に、所定区域の塩分到達マップを作成すると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に、所定区域のぬれ時間マップを作成し、かつ、平均相対湿度のデータが無いときにはぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いるサーバ20と、所定区域の塩分到達マップから電線の塩分付着度を求めると共に、所定区域のぬれ時間マップから電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する端末10とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、推定したぬれ時間を基に電線の劣化状況を推定するぬれ状態推定方法、ぬれ状態推定装置、電線劣化推定方法および電線劣化推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線等の電線は、例えば塩分を含む水分が電線内に浸入することにより、劣化していく。電線の劣化状況を把握するために全径間を調査する方法があるが、この方法は設備量や費用面から現実的でない。このために、次の方法がある。この方法によれば、まず、現在、最も劣化が進行していると想定される送電線がある場合に、この送電線を支持する鉄塔の位置を、この送電線の代表点とする。そして、送電線間を代表点で連結するジャンパ線のサンプリングにより、実引張強度を調査している。また、渦流探傷診断等により径間本線を調査している。
【0003】
ところで、代表点の選定は次のようにして行われている。急速汚損時における碍子最大塩分付着量から汚損区分、海・河川近傍等を求める。そして、これらの中から、代表点を選定する。しかし、こうした手法では、真に劣化が進行している箇所を選定することが困難である、という問題が生じる。また、電線の劣化状況を把握するためには、作業者が現地に出向いてジャンパ線を採取し診断する必要がある。
【0004】
こうした点を解消した評価装置がある(例えば、特許文献1参照。)。この評価装置は、該当する地域つまり電線設置区域で、ぬれ時間、塩分付着量および亜硫酸ガス量を取得する。この後、この評価装置は、相対湿度等のデータを基に生成した評価式により腐食速度を計算し、現在の腐食状態と腐食速度とに基づいて、腐食残存寿命を評価する。現在の腐食状態はACM(Atmospheric Corrosion Monitor)腐食センサで調べられる。
【0005】
また、次のような評価装置もある(例えば、特許文献2参照。)。この評価装置は、金属材料の腐食速度を目的変数とし、かつ、その腐食速度に影響を与える環境因子と地形因子とを説明変数とする重回帰分析を行う。このとき、この評価装置は、説明変数の一つとして、例えば相対湿度による重み付けをした仮想ぬれ時間を用いる。この場合の仮想ぬれ時間は、重み係数と、相対湿度の値の幅に応じた時間との積である。例えば、相対湿度が100%〜80%であるときの時間、相対湿度が80%〜60%であるときの時間、相対湿度が60%〜40%であるときの時間、相対湿度が40%〜20%であるときの時間、相対湿度が20%〜0%であるときの時間に対して、それぞれ異なる重み係数を掛けた値が仮想ぬれ時間である。そして、この評価装置は、重回帰分析法により腐食速度推定式を求め、この腐食速度推定式に基づいて、非測定エリアの金属材料の腐食速度を推定演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2005−337838号公報
【特許文献2】特開平2008−224405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、先に述べた各評価装置には次の課題がある。例えば、所定の評価式を用いる評価装置は、相対湿度等のデータを基に評価式を生成する必要がある。つまり、この装置はすべての電線設置地区で相対湿度の観測データを必要とする。また、この評価装置では、塩分付着量とぬれ時間の相乗効果が反映されていない。塩分付着量は評価対象とする物により異なるため、別途個別に各位置での塩分付着量を、多大な費用と時間とを費やして実測する必要がある。
【0008】
一方、重回帰分析を行う評価装置は、仮想ぬれ時間を得るために、相対湿度の値の幅を用いる。このために、金属材料が電線である場合に、この評価装置は、腐食速度推定式を求めるために、所定の区域で相対湿度等の観測データを必要とする。また、多重回帰式の説明変数がぬれ時間単独となっており、塩分付着量とぬれ時間との相乗効果が反映されていない。
【0009】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、相対湿度の観測データがすべてそろわなくても、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子から電線の劣化を推定することを可能にするぬれ状態推定方法、ぬれ状態推定装置、電線劣化推定方法および電線劣化推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、平均相対湿度を推定するぬれ状態推定方法であって、気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、ことを特徴とするぬれ状態推定方法である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のぬれ状態推定方法において、観測点で観測された月別の平均気温と月別の水蒸気量との関係から得た近似式を用いて、所定区域での年平均気温に対応する水蒸気量を推定して所定区域での水蒸気量とする、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のぬれ状態推定方法において、算出した平均相対湿度と、平均気温とを基に所定の第1の計算式から、観測点でのぬれ時間を算出する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、空気中の水蒸気によるぬれ時間であり、かつ、観測点のぬれ時間を推定するぬれ状態推定装置であって、このぬれ状態推定装置は、気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、ことを特徴とするぬれ状態推定装置である。
【0014】
請求項5の発明は、電線の腐食速度を推定する電線劣化推定方法であって、シミュレーションで得た塩分通過量を基に作成された、所定区域の塩分到達マップから、電線の塩分付着度を求めると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に作成され、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いて作成された、所定区域のぬれ時間マップから、電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する、
ことを特徴とする電線劣化推定方法である。
【0015】
請求項6の発明は、電線の腐食速度を推定する電線劣化推定システムであって、シミュレーションで得た塩分通過量を基に、所定区域の塩分到達マップを作成すると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に、所定区域のぬれ時間マップを作成し、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いる第1の装置と、所定区域の塩分到達マップから電線の塩分付着度を求めると共に、所定区域のぬれ時間マップから電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する第2の装置と、を備えることを特徴とする電線劣化推定システムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および請求項4の発明によれば、平均相対湿度のデータが無い観測点でも、平均相対湿度を得ることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、月別の平均気温と月別の水蒸気量との関係から所定区域での水蒸気量を得るので、平均相対湿度のデータが無い各観測点で水蒸気量を得ることを不要にすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、平均相対湿度のデータが無い観測点でも、ぬれ時間を得ることができる。
【0019】
請求項5および請求項6の発明によれば、塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定するので、電線の腐食速度を推定する際に、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子による相乗効果を反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1による電線劣化推定システムを示す構成図である。
【図2】塩分到達マップデータの一例を示す図である。
【図3】ぬれ時間マップデータの一例を示す図である。
【図4】ぬれ時間の採用を説明する図である。
【図5】ぬれ時間計算に使用する変換テーブルを示す図である。
【図6】ぬれ時間計算に使用する変換テーブルを示す図である。
【図7】山陰側での地域比較を示す図である。
【図8】山陽側での地域比較を示す図である。
【図9】山間部・沿岸部での地域比較を示す図である。
【図10】平均気温・相対湿度の相関を説明する図である。
【図11】水蒸気量飽和曲線を示す図である。
【図12】平均気温・空気中の水蒸気量の関係を示す図である。
【図13】ぬれ時間算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】平均気温・水蒸気量の近似式を示す図である。
【図15】年平均相対湿度の算出結果を示す図である。
【図16】塩分付着関連データの一例を示す図である。
【図17】ぬれ時間関連データの一例を示す図である。
【図18】係数データの一例を示す図である。
【図19】電線劣化推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図20】推定値のバラツキを説明する図である。
【図21】標高とぬれ時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1による電線劣化推定システムを図1に示す。図1の電線劣化推定システムは、電線の劣化を推定するものであり、担当者により操作される端末10と、LAN(Local Area Network)のような通信網NWに接続されているサーバ20とを備えている。
【0023】
サーバ20は、気象庁等のような、外部の各種機関が提供するデータから、塩分到達マップデータを作成する。塩分到達マップデータには、各地区の塩分到達の状態を表すデータが記録されている。各地区は、所定区域として例えば中国地方をメッシュ状に細分化して形成されている。この塩分到達マップデータの一例を図2に示す。この塩分到達マップデータには、各地区を通過する塩分量(kg)が塩分通過量の欄に記録されている。そして、同じ値の塩分通過量を色分けや模様分けして地図上に記録することにより、塩分到達マップが得られる。
【0024】
サーバ20は、この塩分通過量を、シミュレーションにより得ている。こうしたシミュレーションはソフトウエアにより行われる。このソフトウエアでは、風向分布などを考慮して解析を行うために、解析対象地域における風況のデータを観測結果から得る必要があるが、このデータとして気象庁のアメダスデータなどが利用可能であり、観測データは不必要である。
【0025】
サーバ20は、各種機関が提供するデータから、ぬれ時間マップデータを作成する。ぬれ時間マップデータには、マップ作成対象の地方をメッシュ状に細分化した各地区における、年間のぬれ時間を表すデータが記録されている。このぬれ時間マップデータの一例を図3に示す。このぬれ時間マップデータには、各地区でのぬれ時間(h)が記録されている。そして、同じ値のぬれ時間を色分けや模様分けして地図上に記録することにより、ぬれ時間マップが得られる。
【0026】
ぬれ時間マップデータは、複数のアメダス観測所などのデータから得たぬれ時間を基に作成されている。例えば図4に示すように、P地点のぬれ時間を得る場合、P地点にアメダス観測所が無いとき、アメダス観測所であるK1観測所〜K5観測所の中から、距離が最も近いK5観測所を選択し、この観測所のぬれ時間をP地点のぬれ時間として採用する。このように、ぬれ時間マップデータは、複数のアメダス観測所などのデータを使用している。ぬれ時間は、0℃よりも高い気温のときに相対湿度が80%以上であるときの時間である。つまり、ぬれ時間は、空気中の水蒸気で電線等がぬれる時間を表す。サーバ20は、ぬれ時間を次の所定の計算式から得ている。
ぬれ時間=8766×P(RH)×P(T)
ここで、
P(RH): 年平均相対湿度(%R.H)による確率係数
P(T): 年平均気温(℃)による確率係数
である。なお、このぬれ時間算出式は、「大気暴露試験ハンドブック〔II〕金属編」(平成19年1月財団法人日本ウエザリングテストセンター)による算出方法を使用している。ぬれ時間算出式の係数で、年平均相対湿度と年平均気温とは、気象庁のホームページで公開されている、各アメダス観測所の気象統計資料を使用している。つまり、年平均気温は、各観測地点において5〜30年間でまとめられている値を使用し、年平均相対湿度は、観測データがある地点についてはその値を使用した。
【0027】
サーバ20は、ぬれ時間算出式の中で、「20(%R.H)」等の各値の年平均相対湿度が発生する可能性を表す確率係数P(RH)を、「大気暴露試験ハンドブック〔II〕金属編」による変換つまり図5に示す変換テーブルを用いた変換で得る。また、サーバ20は、「−13℃」等の各値の年平均気温が発生する可能性を表す確率係数P(T)を、同じく「大気暴露試験ハンドブック〔II〕金属編」による変換つまり図6に示す変換テーブルを用いた変換で得る。
【0028】
ところで、アメダス観測所などがある地点(以下、「観測点」という)で年平均相対湿度の観測データが無い場合、サーバ20は次のようにして年平均相対湿度を算出している。この算出は、本発明者による次のような分析を基にしている。本発明者は、各気象台、各観測所における月別の平均気温と平均相対湿度について地域別の特徴を比較した。この結果、例えば図7および図8に示すように、山陰側および山陽側では地域毎に同じような傾向を示すが、図9に示すように山間部と沿岸部では異なる特徴を示す。図7〜図9に示す関係は、図10に示すように、ラインL1からラインL2の間にあり、相関係数が0.375となるので、平均気温と相対湿度の関係から各地の相対湿度を想定することは、相関関係が悪いためにできない。
【0029】
しかし、本発明者は、各気象台、各観測所における月別の平均気温と平均相対湿度、さらに、図11に示す一般的な水蒸気量飽和曲線から空気中に含まれる水蒸気量を算出して地域別の比較をした。この結果、図12に示すように、山陰側と山陽側、および山間部での平均気温と空気中の水蒸気量との関係は、ラインL11からラインL12の間に入る。つまり、この関係は、先に示した図10の関係に見られるような地域的なバラツキが少なく、平均気温と空気中の水蒸気量との相関(相関係数:0.968)も良いことが判明した。
【0030】
こうした分析結果を基に、サーバ20は、年平均相対湿度の観測データが無い観測点については、年平均気温に対する飽和水蒸気量と、各アメダス観測所の年平均気温に対する水蒸気量を算出して、年平均相対湿度を算出する。そして、年平均気温と、算出した年平均相対湿度とから、ぬれ時間算出式により、各地区のぬれ時間を算出する。つまり、サーバ20は図13に示すぬれ時間算出処理を行う。サーバ20は、ぬれ時間算出処理を開始すると、空気中の水蒸気量を推定する(ステップS1)。
【0031】
ステップS1で、例えば中国地方の場合、サーバ20は、各アメダス観測所での、年平均気温の80箇所の平均値から、図14に示す近似式
y=3.3823e0.0641x
により、空気中の水蒸気量を推定する。この近似式は、アメダス観測所等のような各気象台、各観測所で観測された月別の平均気温と、月別の水蒸気量とに、例えば最小二乗法を適用して得たものである。そして、
x=13.925
として、近似式から、
y=3.3823e0.0641×13.925
=8.257(g/m3)
という値を得る。なお、13.925℃は中国地方におけるアメダス80箇所の年平均気温の平均値である。この値は中国地方の標準水蒸気量として、各地一定とする。これにより、多数の気温および水蒸気量のデータを処理して、標準の水蒸気量を算出することを不必要にしている。
【0032】
ステップS1が終了すると、サーバ20は、一般的な水蒸気量飽和曲線(図11)から、各アメダス観測所の年平均気温に対する飽和水蒸気量を求める(ステップS2)。この後、サーバ20は、ステップS1で求めた水蒸気量と、ステップS2で求めた飽和水蒸気量とにより相対湿度を求め、これを年平均相対湿度とする(ステップS3)。算出結果の精度を検証するための、年平均相対湿度の算出結果の一例を図15に示す。図15は、年平均相対湿度の観測データが有る観測点における年平均相対湿度(推定値)の算出結果をまとめたものである。推定した年平均相対湿度の精度は、観測値との比較を行った結果、おおよそ10%程度の高い精度である。
【0033】
ステップS3が終了すると、サーバ20は、ステップS3で求めた年平均相対湿度と、年平均気温とから、確率係数P(RH)と確率係数P(T)を求める(ステップS4)。この後、サーバ20は、求めた確率係数を用いてぬれ時間算出式によりぬれ時間を算出し(ステップS5)、ぬれ時間算出処理を終了する。
【0034】
こうして、年平均相対湿度の観測データが観測点に無い場合でも、この観測点でのぬれ時間を算出することができる。
【0035】
端末10は、入力部11、読取部12、記憶部13、処理部14、表示部15、出力部16および通信部17を備えている。入力部11は担当者によって操作されるキーボード等の装置であり、電線の劣化推定に関連する各種の指示やデータが入力されると、これらを処理部14に送る。読取部12は記録媒体からデータを読み取る装置であり、読み取ったデータを処理部14に送る。表示部15は、電線の劣化推定に関連するデータを表示するLCD(液晶ディスプレイ)などの表示装置である。つまり、表示部15は、入力部11に入力された指示やデータ、処理部14が処理したデータなどを表示する。出力部16は、処理部14が処理したデータ等をプリントアウトなどにより出力する。通信部17は、処理部12の制御によって、外部の通信網NWネットワーク、たとえばLAN(Local Area Network)とデータの送受信を行う。
【0036】
端末10の記憶部13は、電線の劣化推定に関連するデータを記憶する記憶装置である。また、記憶部13は、電線の劣化推定に必要とするプログラムをあらかじめ記憶している。
【0037】
端末10の記憶部13が記憶しているデータには、塩分付着関連データがある。塩分付着関連データは、電線の劣化推定に際して用いられるデータである。この塩分付着関連データの一例を図16に示す。この塩分付着関連データでは、電線の各線路毎に、電線を保持する鉄塔近傍における海風の平均の風速が海風平均風速の欄に記録され、海風の発生する頻度が海風頻度の欄に記録されている。これらのデータは過去に記録されたデータ等から得られ、観測データは不必要である。
【0038】
塩分付着関連データには、各電線に対する塩分到達の様子を表す塩分到達率が記録されている。塩分到達率は、サーバ20の塩分到達マップデータから求められたデータである。例えば、海上での塩分通過量を塩分到達マップデータから求め、同じように、各電線が設置されている地区での塩分通過量を求める。そして、2つの塩分通過量を基に塩分到達率を求める。
【0039】
塩分付着関連データには、送電線による塩分の遮蔽の度合いを表す塩分遮蔽率が記録され、送電線に到達する塩分の濃縮の度合いを表す塩分濃縮度(EXP)が記録されている。これらのデータは過去に記録されたデータの平均値などから得られ、観測データは不必要である。塩分付着関連データには、各電線から海岸までの距離が記録されている。このデータは地図データ等から得られ、観測データは不必要である。さらに、塩分付着関連データには、各線路に使用されている電線の断面積が記録されている。このデータは電線の製造者から提供され、実測データは不必要である。
【0040】
記憶部13が記憶しているデータには、ぬれ時間関連データがある。ぬれ時間関連データは、電線の劣化推定に際して用いられるデータである。このぬれ時間関連データの一例を図17に示す。このぬれ時間関連データでは、電線の各線路毎に、年間のぬれ時間の割合を表す年間ぬれ時間率が記録されている。年間ぬれ時間率は、サーバ20のぬれ時間マップデータから求められたデータである。例えば、各電線が設置されている地区でのぬれ時間を求める。そして、このぬれ時間が年間に占める割合から年間ぬれ時間率を求める。
【0041】
ぬれ時間関連データには、年間の日照の様子を表す年間日照時間率が記録されている。このデータは気象庁などから得られ、観測データは不必要である。
【0042】
記憶部13が記憶しているデータには係数データがある。係数データは、電線の劣化を推定する際に用いられる係数である大気腐食係数αおよび塩分強度低下係数βである。係数データは、処理部14の制御により読取部12または通信部17から読み取られて、記憶部13に記憶される。この係数データの一例を図18に示す。係数α、βは電線のサイズ毎に記録されている。係数α、βは次のようにして求められる。係数α、βに初期値として同じ値「1」を入力する。電線の劣化度から求めた予測値と、実際の腐食速度(初期値110%からの年当たりの引張強度低下)の残差を求め、残差平方和が最小となる係数α、βを求める。このときに、例えば電線サイズが、
120mm2≦160mm2≦330mm2≦410mm2
である場合、電線を形成する素線径が細い程、塩分の影響を受け、強度低下しやすい。このため、係数βを決定する条件として、
β120≧β160≧β330≧β410
を設定する。この条件で、β120は電線サイズが120mm2であるときのβの値を表す。他も同様である。なお、係数αはその他の不確定要素を含んだ係数としているため、値の大きさを制限するなどの条件は設定しない。係数α、βは過去に記録したデータの平均値などから得られ、観測データは不必要である。
【0043】
処理部14は、記憶部13に記憶されているプログラムを実行する。処理部14が実行するプログラムにはデータ更新処理がある。処理部14は、サーバ20の塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとが変更された場合や、各機関が提供するデータが変更された場合に、塩分付着関連データやぬれ時間関連データ、係数データを更新する。なお、読取部12から読み取ったデータが変更されたものである場合も、記憶部13の塩分付着関連データ等を同様に更新する。
【0044】
処理部14が実行するプログラムには電線劣化推定処理がある。処理部14は、入力部11から処理開始の指示を受け取ると、図19に示す電線劣化推定処理を開始する。処理部14は、この処理を開始すると、設置線路の中から最初の線路を選択する(ステップS21)。
【0045】
この後、処理部14は、選択した線路について、電線塩分付着度を算出する(ステップS22)。ステップS22で、処理部14は、塩分付着関連データと係数データとを参照して、次の式により電線塩分付着度を算出する。
電線塩分付着度=(β×鉄塔近傍の海風平均風速×海風頻度×塩分到達率
×塩分しゃへい率×塩分濃縮度)/(海岸からの距離)
ステップS22で電線塩分付着度を算出すると、処理部14は、電線のぬれ時間度を算出する(ステップS23)。ステップS23で、処理部14は、ぬれ時間関連データを参照して、次の式により、ぬれ時間度を算出する。
ぬれ時間度=年間ぬれ時間率×(1−年間日照時間率)
この後、処理部14は、ステップS22で算出した電線塩分付着度と、ステップS23で算出したぬれ時間度とを用い、かつ、係数データを参照して、次の腐食速度式から腐食速度推定値を算出する(ステップS24)。
腐食速度推定値=(α+β×塩分付着度)×ぬれ時間度
この腐食速度式により、電線の腐食速度を推定する際に、塩分付着量とぬれ時間とが掛け合わされているので、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子による相乗効果が反映される。
【0046】
この後、処理部14は、算出した推定値のバラツキを調べる(ステップS25)。ステップS25で処理部14は例えば図20に示すように、平均値に対する偏差3σにより、推定値のバラツキを調べる。この後、処理部14は、設置線路の中で未選択の線路が有るかどうかを判定する(ステップS26)。ステップS26で未選択の線路が有ると、処理部14は、次の線路を選択し(ステップS27)、処理をステップS22に戻す。また、ステップS26で未選択の線路が無ければ、処理部14は、ステップS24とステップS25とで得た腐食速度推定値により、電線の腐食が進んでいる危険箇所を選定し(ステップS28)、電線劣化推定処理を終了する。
【0047】
次に、この実施の形態による電線劣化推定システムの動作について説明する。サーバ20は、外部の各種機関が提供するデータに変更が有るかどうかを定期的に調べる。もし、データに変更があると、サーバ20は、塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとを更新する。このとき、サーバ20は、観測データが無い観測点については、ぬれ時間算出処理を行うことにより、ぬれ時間マップデータを更新する。
【0048】
同じように、端末10は、サーバ20の塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとに変更があるかどうかを定期的に調べる。もし、データに変更があると、データ更新処理により、塩分付着関連データやぬれ時間関連データ、係数データを更新する。
【0049】
ところで、担当者が端末10を操作して、電線の劣化推定を行うための指示を入力すると、端末10は、塩分付着関連データとぬれ時間関連データと係数データとを参照して、電線劣化推定処理を行う。この処理により、端末10は、電線の腐食が進んでいる危険箇所を選定する。この後、端末10は、選定結果を表示すると共に、担当者の指示に応じて選定結果をプリントアウトする。
【0050】
こうして、この実施の形態によれば、年平均相対湿度の観測データが無い観測点でも、ぬれ時間算出処理により、年平均相対湿度を推定することができ、これにより、ぬれ時間を得ることができる。これにより、精度の高い年平均相対湿度データを生成してぬれ時間マップを作成して、より精度の高い電線腐食速度の予測が可能である。また、この実施の形態によれば、塩分付着量とぬれ時間とを掛け合わせた値を基に電線の腐食速度を推定するので、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子による相乗効果を反映することができる。また、この実施の形態によれば、塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとを用いるので、塩分付着量およびぬれ時間の現地実測が不要で、電線腐食危険箇所の推定を安価に行うことができる。また、この実施の形態によれば、腐食速度を予測できるため、現地での診断が不要となり、費用の低減が可能である。さらに、この実施の形態によれば、腐食速度が予測できるため、電線の張替時期が推定でき、更新設備量の平準化等により、費用低減効果に寄与することができる。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態1では、ぬれ時間マップデータは、複数のアメダス観測所などのデータから得たぬれ時間を基に作成されている。この実施の形態では、ぬれ時間を採用する際に標高を考慮する。つまり、図21に示すように、標高が高い程、ぬれ時間が長くなる傾向がある。したがって、この実施の形態では、先の図4で示したように、採用したK5観測所に比べて、P地点の標高が高い場合、図21の関係を用いて、K5観測所のぬれ時間を修正する。
【0052】
これにより、年平均相対湿度の観測データが無い地区でも、さらに精度の高い年平均相対湿度データを生成するので、高精度で電線腐食速度を予測することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明は、電線の腐食速度推定に限らず、架線金具の腐食、鉄塔塗膜等の腐食速度推定に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 端末(第2の装置)
11 入力部
12 読取部
13 記憶部
14 処理部
15 表示部
16 出力部
17 通信部
20 サーバ(第1の装置)
【技術分野】
【0001】
この発明は、推定したぬれ時間を基に電線の劣化状況を推定するぬれ状態推定方法、ぬれ状態推定装置、電線劣化推定方法および電線劣化推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線等の電線は、例えば塩分を含む水分が電線内に浸入することにより、劣化していく。電線の劣化状況を把握するために全径間を調査する方法があるが、この方法は設備量や費用面から現実的でない。このために、次の方法がある。この方法によれば、まず、現在、最も劣化が進行していると想定される送電線がある場合に、この送電線を支持する鉄塔の位置を、この送電線の代表点とする。そして、送電線間を代表点で連結するジャンパ線のサンプリングにより、実引張強度を調査している。また、渦流探傷診断等により径間本線を調査している。
【0003】
ところで、代表点の選定は次のようにして行われている。急速汚損時における碍子最大塩分付着量から汚損区分、海・河川近傍等を求める。そして、これらの中から、代表点を選定する。しかし、こうした手法では、真に劣化が進行している箇所を選定することが困難である、という問題が生じる。また、電線の劣化状況を把握するためには、作業者が現地に出向いてジャンパ線を採取し診断する必要がある。
【0004】
こうした点を解消した評価装置がある(例えば、特許文献1参照。)。この評価装置は、該当する地域つまり電線設置区域で、ぬれ時間、塩分付着量および亜硫酸ガス量を取得する。この後、この評価装置は、相対湿度等のデータを基に生成した評価式により腐食速度を計算し、現在の腐食状態と腐食速度とに基づいて、腐食残存寿命を評価する。現在の腐食状態はACM(Atmospheric Corrosion Monitor)腐食センサで調べられる。
【0005】
また、次のような評価装置もある(例えば、特許文献2参照。)。この評価装置は、金属材料の腐食速度を目的変数とし、かつ、その腐食速度に影響を与える環境因子と地形因子とを説明変数とする重回帰分析を行う。このとき、この評価装置は、説明変数の一つとして、例えば相対湿度による重み付けをした仮想ぬれ時間を用いる。この場合の仮想ぬれ時間は、重み係数と、相対湿度の値の幅に応じた時間との積である。例えば、相対湿度が100%〜80%であるときの時間、相対湿度が80%〜60%であるときの時間、相対湿度が60%〜40%であるときの時間、相対湿度が40%〜20%であるときの時間、相対湿度が20%〜0%であるときの時間に対して、それぞれ異なる重み係数を掛けた値が仮想ぬれ時間である。そして、この評価装置は、重回帰分析法により腐食速度推定式を求め、この腐食速度推定式に基づいて、非測定エリアの金属材料の腐食速度を推定演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2005−337838号公報
【特許文献2】特開平2008−224405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、先に述べた各評価装置には次の課題がある。例えば、所定の評価式を用いる評価装置は、相対湿度等のデータを基に評価式を生成する必要がある。つまり、この装置はすべての電線設置地区で相対湿度の観測データを必要とする。また、この評価装置では、塩分付着量とぬれ時間の相乗効果が反映されていない。塩分付着量は評価対象とする物により異なるため、別途個別に各位置での塩分付着量を、多大な費用と時間とを費やして実測する必要がある。
【0008】
一方、重回帰分析を行う評価装置は、仮想ぬれ時間を得るために、相対湿度の値の幅を用いる。このために、金属材料が電線である場合に、この評価装置は、腐食速度推定式を求めるために、所定の区域で相対湿度等の観測データを必要とする。また、多重回帰式の説明変数がぬれ時間単独となっており、塩分付着量とぬれ時間との相乗効果が反映されていない。
【0009】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、相対湿度の観測データがすべてそろわなくても、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子から電線の劣化を推定することを可能にするぬれ状態推定方法、ぬれ状態推定装置、電線劣化推定方法および電線劣化推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、平均相対湿度を推定するぬれ状態推定方法であって、気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、ことを特徴とするぬれ状態推定方法である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のぬれ状態推定方法において、観測点で観測された月別の平均気温と月別の水蒸気量との関係から得た近似式を用いて、所定区域での年平均気温に対応する水蒸気量を推定して所定区域での水蒸気量とする、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のぬれ状態推定方法において、算出した平均相対湿度と、平均気温とを基に所定の第1の計算式から、観測点でのぬれ時間を算出する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、空気中の水蒸気によるぬれ時間であり、かつ、観測点のぬれ時間を推定するぬれ状態推定装置であって、このぬれ状態推定装置は、気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、ことを特徴とするぬれ状態推定装置である。
【0014】
請求項5の発明は、電線の腐食速度を推定する電線劣化推定方法であって、シミュレーションで得た塩分通過量を基に作成された、所定区域の塩分到達マップから、電線の塩分付着度を求めると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に作成され、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いて作成された、所定区域のぬれ時間マップから、電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する、
ことを特徴とする電線劣化推定方法である。
【0015】
請求項6の発明は、電線の腐食速度を推定する電線劣化推定システムであって、シミュレーションで得た塩分通過量を基に、所定区域の塩分到達マップを作成すると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に、所定区域のぬれ時間マップを作成し、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いる第1の装置と、所定区域の塩分到達マップから電線の塩分付着度を求めると共に、所定区域のぬれ時間マップから電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する第2の装置と、を備えることを特徴とする電線劣化推定システムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および請求項4の発明によれば、平均相対湿度のデータが無い観測点でも、平均相対湿度を得ることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、月別の平均気温と月別の水蒸気量との関係から所定区域での水蒸気量を得るので、平均相対湿度のデータが無い各観測点で水蒸気量を得ることを不要にすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、平均相対湿度のデータが無い観測点でも、ぬれ時間を得ることができる。
【0019】
請求項5および請求項6の発明によれば、塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定するので、電線の腐食速度を推定する際に、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子による相乗効果を反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1による電線劣化推定システムを示す構成図である。
【図2】塩分到達マップデータの一例を示す図である。
【図3】ぬれ時間マップデータの一例を示す図である。
【図4】ぬれ時間の採用を説明する図である。
【図5】ぬれ時間計算に使用する変換テーブルを示す図である。
【図6】ぬれ時間計算に使用する変換テーブルを示す図である。
【図7】山陰側での地域比較を示す図である。
【図8】山陽側での地域比較を示す図である。
【図9】山間部・沿岸部での地域比較を示す図である。
【図10】平均気温・相対湿度の相関を説明する図である。
【図11】水蒸気量飽和曲線を示す図である。
【図12】平均気温・空気中の水蒸気量の関係を示す図である。
【図13】ぬれ時間算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】平均気温・水蒸気量の近似式を示す図である。
【図15】年平均相対湿度の算出結果を示す図である。
【図16】塩分付着関連データの一例を示す図である。
【図17】ぬれ時間関連データの一例を示す図である。
【図18】係数データの一例を示す図である。
【図19】電線劣化推定処理の一例を示すフローチャートである。
【図20】推定値のバラツキを説明する図である。
【図21】標高とぬれ時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0022】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1による電線劣化推定システムを図1に示す。図1の電線劣化推定システムは、電線の劣化を推定するものであり、担当者により操作される端末10と、LAN(Local Area Network)のような通信網NWに接続されているサーバ20とを備えている。
【0023】
サーバ20は、気象庁等のような、外部の各種機関が提供するデータから、塩分到達マップデータを作成する。塩分到達マップデータには、各地区の塩分到達の状態を表すデータが記録されている。各地区は、所定区域として例えば中国地方をメッシュ状に細分化して形成されている。この塩分到達マップデータの一例を図2に示す。この塩分到達マップデータには、各地区を通過する塩分量(kg)が塩分通過量の欄に記録されている。そして、同じ値の塩分通過量を色分けや模様分けして地図上に記録することにより、塩分到達マップが得られる。
【0024】
サーバ20は、この塩分通過量を、シミュレーションにより得ている。こうしたシミュレーションはソフトウエアにより行われる。このソフトウエアでは、風向分布などを考慮して解析を行うために、解析対象地域における風況のデータを観測結果から得る必要があるが、このデータとして気象庁のアメダスデータなどが利用可能であり、観測データは不必要である。
【0025】
サーバ20は、各種機関が提供するデータから、ぬれ時間マップデータを作成する。ぬれ時間マップデータには、マップ作成対象の地方をメッシュ状に細分化した各地区における、年間のぬれ時間を表すデータが記録されている。このぬれ時間マップデータの一例を図3に示す。このぬれ時間マップデータには、各地区でのぬれ時間(h)が記録されている。そして、同じ値のぬれ時間を色分けや模様分けして地図上に記録することにより、ぬれ時間マップが得られる。
【0026】
ぬれ時間マップデータは、複数のアメダス観測所などのデータから得たぬれ時間を基に作成されている。例えば図4に示すように、P地点のぬれ時間を得る場合、P地点にアメダス観測所が無いとき、アメダス観測所であるK1観測所〜K5観測所の中から、距離が最も近いK5観測所を選択し、この観測所のぬれ時間をP地点のぬれ時間として採用する。このように、ぬれ時間マップデータは、複数のアメダス観測所などのデータを使用している。ぬれ時間は、0℃よりも高い気温のときに相対湿度が80%以上であるときの時間である。つまり、ぬれ時間は、空気中の水蒸気で電線等がぬれる時間を表す。サーバ20は、ぬれ時間を次の所定の計算式から得ている。
ぬれ時間=8766×P(RH)×P(T)
ここで、
P(RH): 年平均相対湿度(%R.H)による確率係数
P(T): 年平均気温(℃)による確率係数
である。なお、このぬれ時間算出式は、「大気暴露試験ハンドブック〔II〕金属編」(平成19年1月財団法人日本ウエザリングテストセンター)による算出方法を使用している。ぬれ時間算出式の係数で、年平均相対湿度と年平均気温とは、気象庁のホームページで公開されている、各アメダス観測所の気象統計資料を使用している。つまり、年平均気温は、各観測地点において5〜30年間でまとめられている値を使用し、年平均相対湿度は、観測データがある地点についてはその値を使用した。
【0027】
サーバ20は、ぬれ時間算出式の中で、「20(%R.H)」等の各値の年平均相対湿度が発生する可能性を表す確率係数P(RH)を、「大気暴露試験ハンドブック〔II〕金属編」による変換つまり図5に示す変換テーブルを用いた変換で得る。また、サーバ20は、「−13℃」等の各値の年平均気温が発生する可能性を表す確率係数P(T)を、同じく「大気暴露試験ハンドブック〔II〕金属編」による変換つまり図6に示す変換テーブルを用いた変換で得る。
【0028】
ところで、アメダス観測所などがある地点(以下、「観測点」という)で年平均相対湿度の観測データが無い場合、サーバ20は次のようにして年平均相対湿度を算出している。この算出は、本発明者による次のような分析を基にしている。本発明者は、各気象台、各観測所における月別の平均気温と平均相対湿度について地域別の特徴を比較した。この結果、例えば図7および図8に示すように、山陰側および山陽側では地域毎に同じような傾向を示すが、図9に示すように山間部と沿岸部では異なる特徴を示す。図7〜図9に示す関係は、図10に示すように、ラインL1からラインL2の間にあり、相関係数が0.375となるので、平均気温と相対湿度の関係から各地の相対湿度を想定することは、相関関係が悪いためにできない。
【0029】
しかし、本発明者は、各気象台、各観測所における月別の平均気温と平均相対湿度、さらに、図11に示す一般的な水蒸気量飽和曲線から空気中に含まれる水蒸気量を算出して地域別の比較をした。この結果、図12に示すように、山陰側と山陽側、および山間部での平均気温と空気中の水蒸気量との関係は、ラインL11からラインL12の間に入る。つまり、この関係は、先に示した図10の関係に見られるような地域的なバラツキが少なく、平均気温と空気中の水蒸気量との相関(相関係数:0.968)も良いことが判明した。
【0030】
こうした分析結果を基に、サーバ20は、年平均相対湿度の観測データが無い観測点については、年平均気温に対する飽和水蒸気量と、各アメダス観測所の年平均気温に対する水蒸気量を算出して、年平均相対湿度を算出する。そして、年平均気温と、算出した年平均相対湿度とから、ぬれ時間算出式により、各地区のぬれ時間を算出する。つまり、サーバ20は図13に示すぬれ時間算出処理を行う。サーバ20は、ぬれ時間算出処理を開始すると、空気中の水蒸気量を推定する(ステップS1)。
【0031】
ステップS1で、例えば中国地方の場合、サーバ20は、各アメダス観測所での、年平均気温の80箇所の平均値から、図14に示す近似式
y=3.3823e0.0641x
により、空気中の水蒸気量を推定する。この近似式は、アメダス観測所等のような各気象台、各観測所で観測された月別の平均気温と、月別の水蒸気量とに、例えば最小二乗法を適用して得たものである。そして、
x=13.925
として、近似式から、
y=3.3823e0.0641×13.925
=8.257(g/m3)
という値を得る。なお、13.925℃は中国地方におけるアメダス80箇所の年平均気温の平均値である。この値は中国地方の標準水蒸気量として、各地一定とする。これにより、多数の気温および水蒸気量のデータを処理して、標準の水蒸気量を算出することを不必要にしている。
【0032】
ステップS1が終了すると、サーバ20は、一般的な水蒸気量飽和曲線(図11)から、各アメダス観測所の年平均気温に対する飽和水蒸気量を求める(ステップS2)。この後、サーバ20は、ステップS1で求めた水蒸気量と、ステップS2で求めた飽和水蒸気量とにより相対湿度を求め、これを年平均相対湿度とする(ステップS3)。算出結果の精度を検証するための、年平均相対湿度の算出結果の一例を図15に示す。図15は、年平均相対湿度の観測データが有る観測点における年平均相対湿度(推定値)の算出結果をまとめたものである。推定した年平均相対湿度の精度は、観測値との比較を行った結果、おおよそ10%程度の高い精度である。
【0033】
ステップS3が終了すると、サーバ20は、ステップS3で求めた年平均相対湿度と、年平均気温とから、確率係数P(RH)と確率係数P(T)を求める(ステップS4)。この後、サーバ20は、求めた確率係数を用いてぬれ時間算出式によりぬれ時間を算出し(ステップS5)、ぬれ時間算出処理を終了する。
【0034】
こうして、年平均相対湿度の観測データが観測点に無い場合でも、この観測点でのぬれ時間を算出することができる。
【0035】
端末10は、入力部11、読取部12、記憶部13、処理部14、表示部15、出力部16および通信部17を備えている。入力部11は担当者によって操作されるキーボード等の装置であり、電線の劣化推定に関連する各種の指示やデータが入力されると、これらを処理部14に送る。読取部12は記録媒体からデータを読み取る装置であり、読み取ったデータを処理部14に送る。表示部15は、電線の劣化推定に関連するデータを表示するLCD(液晶ディスプレイ)などの表示装置である。つまり、表示部15は、入力部11に入力された指示やデータ、処理部14が処理したデータなどを表示する。出力部16は、処理部14が処理したデータ等をプリントアウトなどにより出力する。通信部17は、処理部12の制御によって、外部の通信網NWネットワーク、たとえばLAN(Local Area Network)とデータの送受信を行う。
【0036】
端末10の記憶部13は、電線の劣化推定に関連するデータを記憶する記憶装置である。また、記憶部13は、電線の劣化推定に必要とするプログラムをあらかじめ記憶している。
【0037】
端末10の記憶部13が記憶しているデータには、塩分付着関連データがある。塩分付着関連データは、電線の劣化推定に際して用いられるデータである。この塩分付着関連データの一例を図16に示す。この塩分付着関連データでは、電線の各線路毎に、電線を保持する鉄塔近傍における海風の平均の風速が海風平均風速の欄に記録され、海風の発生する頻度が海風頻度の欄に記録されている。これらのデータは過去に記録されたデータ等から得られ、観測データは不必要である。
【0038】
塩分付着関連データには、各電線に対する塩分到達の様子を表す塩分到達率が記録されている。塩分到達率は、サーバ20の塩分到達マップデータから求められたデータである。例えば、海上での塩分通過量を塩分到達マップデータから求め、同じように、各電線が設置されている地区での塩分通過量を求める。そして、2つの塩分通過量を基に塩分到達率を求める。
【0039】
塩分付着関連データには、送電線による塩分の遮蔽の度合いを表す塩分遮蔽率が記録され、送電線に到達する塩分の濃縮の度合いを表す塩分濃縮度(EXP)が記録されている。これらのデータは過去に記録されたデータの平均値などから得られ、観測データは不必要である。塩分付着関連データには、各電線から海岸までの距離が記録されている。このデータは地図データ等から得られ、観測データは不必要である。さらに、塩分付着関連データには、各線路に使用されている電線の断面積が記録されている。このデータは電線の製造者から提供され、実測データは不必要である。
【0040】
記憶部13が記憶しているデータには、ぬれ時間関連データがある。ぬれ時間関連データは、電線の劣化推定に際して用いられるデータである。このぬれ時間関連データの一例を図17に示す。このぬれ時間関連データでは、電線の各線路毎に、年間のぬれ時間の割合を表す年間ぬれ時間率が記録されている。年間ぬれ時間率は、サーバ20のぬれ時間マップデータから求められたデータである。例えば、各電線が設置されている地区でのぬれ時間を求める。そして、このぬれ時間が年間に占める割合から年間ぬれ時間率を求める。
【0041】
ぬれ時間関連データには、年間の日照の様子を表す年間日照時間率が記録されている。このデータは気象庁などから得られ、観測データは不必要である。
【0042】
記憶部13が記憶しているデータには係数データがある。係数データは、電線の劣化を推定する際に用いられる係数である大気腐食係数αおよび塩分強度低下係数βである。係数データは、処理部14の制御により読取部12または通信部17から読み取られて、記憶部13に記憶される。この係数データの一例を図18に示す。係数α、βは電線のサイズ毎に記録されている。係数α、βは次のようにして求められる。係数α、βに初期値として同じ値「1」を入力する。電線の劣化度から求めた予測値と、実際の腐食速度(初期値110%からの年当たりの引張強度低下)の残差を求め、残差平方和が最小となる係数α、βを求める。このときに、例えば電線サイズが、
120mm2≦160mm2≦330mm2≦410mm2
である場合、電線を形成する素線径が細い程、塩分の影響を受け、強度低下しやすい。このため、係数βを決定する条件として、
β120≧β160≧β330≧β410
を設定する。この条件で、β120は電線サイズが120mm2であるときのβの値を表す。他も同様である。なお、係数αはその他の不確定要素を含んだ係数としているため、値の大きさを制限するなどの条件は設定しない。係数α、βは過去に記録したデータの平均値などから得られ、観測データは不必要である。
【0043】
処理部14は、記憶部13に記憶されているプログラムを実行する。処理部14が実行するプログラムにはデータ更新処理がある。処理部14は、サーバ20の塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとが変更された場合や、各機関が提供するデータが変更された場合に、塩分付着関連データやぬれ時間関連データ、係数データを更新する。なお、読取部12から読み取ったデータが変更されたものである場合も、記憶部13の塩分付着関連データ等を同様に更新する。
【0044】
処理部14が実行するプログラムには電線劣化推定処理がある。処理部14は、入力部11から処理開始の指示を受け取ると、図19に示す電線劣化推定処理を開始する。処理部14は、この処理を開始すると、設置線路の中から最初の線路を選択する(ステップS21)。
【0045】
この後、処理部14は、選択した線路について、電線塩分付着度を算出する(ステップS22)。ステップS22で、処理部14は、塩分付着関連データと係数データとを参照して、次の式により電線塩分付着度を算出する。
電線塩分付着度=(β×鉄塔近傍の海風平均風速×海風頻度×塩分到達率
×塩分しゃへい率×塩分濃縮度)/(海岸からの距離)
ステップS22で電線塩分付着度を算出すると、処理部14は、電線のぬれ時間度を算出する(ステップS23)。ステップS23で、処理部14は、ぬれ時間関連データを参照して、次の式により、ぬれ時間度を算出する。
ぬれ時間度=年間ぬれ時間率×(1−年間日照時間率)
この後、処理部14は、ステップS22で算出した電線塩分付着度と、ステップS23で算出したぬれ時間度とを用い、かつ、係数データを参照して、次の腐食速度式から腐食速度推定値を算出する(ステップS24)。
腐食速度推定値=(α+β×塩分付着度)×ぬれ時間度
この腐食速度式により、電線の腐食速度を推定する際に、塩分付着量とぬれ時間とが掛け合わされているので、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子による相乗効果が反映される。
【0046】
この後、処理部14は、算出した推定値のバラツキを調べる(ステップS25)。ステップS25で処理部14は例えば図20に示すように、平均値に対する偏差3σにより、推定値のバラツキを調べる。この後、処理部14は、設置線路の中で未選択の線路が有るかどうかを判定する(ステップS26)。ステップS26で未選択の線路が有ると、処理部14は、次の線路を選択し(ステップS27)、処理をステップS22に戻す。また、ステップS26で未選択の線路が無ければ、処理部14は、ステップS24とステップS25とで得た腐食速度推定値により、電線の腐食が進んでいる危険箇所を選定し(ステップS28)、電線劣化推定処理を終了する。
【0047】
次に、この実施の形態による電線劣化推定システムの動作について説明する。サーバ20は、外部の各種機関が提供するデータに変更が有るかどうかを定期的に調べる。もし、データに変更があると、サーバ20は、塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとを更新する。このとき、サーバ20は、観測データが無い観測点については、ぬれ時間算出処理を行うことにより、ぬれ時間マップデータを更新する。
【0048】
同じように、端末10は、サーバ20の塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとに変更があるかどうかを定期的に調べる。もし、データに変更があると、データ更新処理により、塩分付着関連データやぬれ時間関連データ、係数データを更新する。
【0049】
ところで、担当者が端末10を操作して、電線の劣化推定を行うための指示を入力すると、端末10は、塩分付着関連データとぬれ時間関連データと係数データとを参照して、電線劣化推定処理を行う。この処理により、端末10は、電線の腐食が進んでいる危険箇所を選定する。この後、端末10は、選定結果を表示すると共に、担当者の指示に応じて選定結果をプリントアウトする。
【0050】
こうして、この実施の形態によれば、年平均相対湿度の観測データが無い観測点でも、ぬれ時間算出処理により、年平均相対湿度を推定することができ、これにより、ぬれ時間を得ることができる。これにより、精度の高い年平均相対湿度データを生成してぬれ時間マップを作成して、より精度の高い電線腐食速度の予測が可能である。また、この実施の形態によれば、塩分付着量とぬれ時間とを掛け合わせた値を基に電線の腐食速度を推定するので、塩分付着量とぬれ時間との両方の因子による相乗効果を反映することができる。また、この実施の形態によれば、塩分到達マップデータとぬれ時間マップデータとを用いるので、塩分付着量およびぬれ時間の現地実測が不要で、電線腐食危険箇所の推定を安価に行うことができる。また、この実施の形態によれば、腐食速度を予測できるため、現地での診断が不要となり、費用の低減が可能である。さらに、この実施の形態によれば、腐食速度が予測できるため、電線の張替時期が推定でき、更新設備量の平準化等により、費用低減効果に寄与することができる。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態1では、ぬれ時間マップデータは、複数のアメダス観測所などのデータから得たぬれ時間を基に作成されている。この実施の形態では、ぬれ時間を採用する際に標高を考慮する。つまり、図21に示すように、標高が高い程、ぬれ時間が長くなる傾向がある。したがって、この実施の形態では、先の図4で示したように、採用したK5観測所に比べて、P地点の標高が高い場合、図21の関係を用いて、K5観測所のぬれ時間を修正する。
【0052】
これにより、年平均相対湿度の観測データが無い地区でも、さらに精度の高い年平均相対湿度データを生成するので、高精度で電線腐食速度を予測することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明は、電線の腐食速度推定に限らず、架線金具の腐食、鉄塔塗膜等の腐食速度推定に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 端末(第2の装置)
11 入力部
12 読取部
13 記憶部
14 処理部
15 表示部
16 出力部
17 通信部
20 サーバ(第1の装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均相対湿度を推定するぬれ状態推定方法であって、
気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、
所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、
ことを特徴とするぬれ状態推定方法。
【請求項2】
観測点で観測された月別の平均気温と月別の水蒸気量との関係から得た近似式を用いて、所定区域での年平均気温に対応する水蒸気量を推定して所定区域での水蒸気量とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のぬれ状態推定方法。
【請求項3】
算出した平均相対湿度と、平均気温とを基に所定の第1の計算式から、観測点でのぬれ時間を算出する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のぬれ状態推定方法。
【請求項4】
空気中の水蒸気によるぬれ時間であり、かつ、観測点のぬれ時間を推定するぬれ状態推定装置であって、
このぬれ状態推定装置は、気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、
ことを特徴とするぬれ状態推定装置。
【請求項5】
電線の腐食速度を推定する電線劣化推定方法であって、
シミュレーションで得た塩分通過量を基に作成された、所定区域の塩分到達マップから、電線の塩分付着度を求めると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に作成され、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いて作成された、所定区域のぬれ時間マップから、電線のぬれ時間度を求め、
求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する、
ことを特徴とする電線劣化推定方法。
【請求項6】
電線の腐食速度を推定する電線劣化推定システムであって、
シミュレーションで得た塩分通過量を基に、所定区域の塩分到達マップを作成すると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に、所定区域のぬれ時間マップを作成し、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いる第1の装置と、
所定区域の塩分到達マップから電線の塩分付着度を求めると共に、所定区域のぬれ時間マップから電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する第2の装置と、
を備えることを特徴とする電線劣化推定システム。
【請求項1】
平均相対湿度を推定するぬれ状態推定方法であって、
気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、
所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、
ことを特徴とするぬれ状態推定方法。
【請求項2】
観測点で観測された月別の平均気温と月別の水蒸気量との関係から得た近似式を用いて、所定区域での年平均気温に対応する水蒸気量を推定して所定区域での水蒸気量とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のぬれ状態推定方法。
【請求項3】
算出した平均相対湿度と、平均気温とを基に所定の第1の計算式から、観測点でのぬれ時間を算出する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のぬれ状態推定方法。
【請求項4】
空気中の水蒸気によるぬれ時間であり、かつ、観測点のぬれ時間を推定するぬれ状態推定装置であって、
このぬれ状態推定装置は、気象庁等の機関から得た平均気温であり、かつ、観測点の平均気温から、観測点を含む所定区域の空気中の水蒸気量を推定すると共に、この平均気温に対する飽和水蒸気量を水蒸気量飽和曲線から求め、所定区域の推定した水蒸気量と、求めた飽和水蒸気量とから、観測点の平均相対湿度を算出する、
ことを特徴とするぬれ状態推定装置。
【請求項5】
電線の腐食速度を推定する電線劣化推定方法であって、
シミュレーションで得た塩分通過量を基に作成された、所定区域の塩分到達マップから、電線の塩分付着度を求めると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に作成され、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いて作成された、所定区域のぬれ時間マップから、電線のぬれ時間度を求め、
求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する、
ことを特徴とする電線劣化推定方法。
【請求項6】
電線の腐食速度を推定する電線劣化推定システムであって、
シミュレーションで得た塩分通過量を基に、所定区域の塩分到達マップを作成すると共に、平均相対湿度と平均気温とを基に、所定区域のぬれ時間マップを作成し、かつ、平均相対湿度のデータが無いときには請求項1〜3のいずれか1項に記載のぬれ状態推定方法で推定した平均相対湿度を用いる第1の装置と、
所定区域の塩分到達マップから電線の塩分付着度を求めると共に、所定区域のぬれ時間マップから電線のぬれ時間度を求め、求めた塩分付着度とぬれ時間度とを基にして電線の腐食速度を推定する第2の装置と、
を備えることを特徴とする電線劣化推定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−185786(P2011−185786A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52168(P2010−52168)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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