説明

ねじりバネを有するクラッチ装置

【課題】自動車においてモーターと変速機とを接続するために使用可能なバネ器具を有するクラッチ装置において、制限された構成空間に収容することができ、モーターの振動によるクラッチ装置のノイズ発生をできる限り回避し、簡単に構成され、簡単に組み込めるようにする。
【解決手段】第1クラッチ部分8と、第1クラッチ部分8に対して同軸状に配置された第2クラッチ部分11と、バネ器具とを設ける。クラッチ部分8,11間においてトルクを滑ることなく伝達するために、第1クラッチ部分8が、少なくとも1つの第1噛合部材9を備え、第2クラッチ部分11が、少なくとも1つの第2噛合部材12を備え、バネ器具によって、第1噛合部材9と第2噛合部材12とを周方向に付勢する。ねじりバネ13にクラッチ部分8,11に対して同軸状に、または、偏心状に配置されたリング部分と、放射状に外へ向けて延びている2つの脚17,18とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1クラッチ部分と、第1クラッチ部分に対して同軸状に配置された第2クラッチ部分と、バネ器具とを備え、クラッチ部分間においてトルクを滑ることなく伝達するために、第1クラッチ部分が少なくとも1つの第1噛合部材を有し、第2クラッチ部分が少なくとも1つの第2噛合部材を有し、バネ器具により第1噛合部材と第2噛合部材とは周方向に付勢されているクラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなクラッチ装置は、例えば、自動車において、内燃機関を自動車の変速機と接続するために使用される。通常、クラッチ部分は、噛合部材として、例えばドグクラッチではドグを、または、スプラインでは歯を多数備えている。クラッチ部分を周方向に付勢するバネ器具によって、内燃機関による振動励起の際にクラッチ装置に生じる可能性のある不都合なノイズ(例えば、バックラッシの範囲内における前後の動きによる歯のカタコトする音)を回避するのがよい。同時に、クラッチ装置は、モーターおよび変速機の方向における軸方向の力を最小化するために、軸方向にシフト可能である必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1に、第1噛合部材としての突起が切り込みを有し、この切り込みにより、突起が、硬い本体を形成する突起部分と所定の弾力特性を有する突起部分とに分けられているクラッチが開示されている。突起は、相補的に形成された窪みにはまる。窪みは、第2クラッチ部分の第2噛合部材を形成している。この場合、弾力性のある突起部分によって、突起および窪みは周方向に付勢されている。
【特許文献1】独国特許公開第19623287号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のようなクラッチでは、構成空間が制限されているため、伝達しようとするトルクを考慮に入れて、また、簡単な組み込みに関して、自動車におけるモーターと変速機との間の接続としては使用されない。
【0005】
本発明の目的は、制限された構成空間に収容することができ、モーターの振動によるクラッチ装置のノイズ発生をできる限り回避し、簡単に構成され、簡単に組み込める、特に自動車においてモーターと変速機とを接続するために使用可能なバネ器具を有するクラッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1の特徴の組み合わせによって達成される。好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
請求項1によれば、クラッチ装置は、バネ器具が1つのリング部分と一対の脚とを有するねじりバネを備え、リング部分がクラッチ部分に対して同軸状または偏心状に配置されており、脚が放射方向に外へ延びていることを特徴とする。この場合、一方の脚は、第1噛合部材を直接的または間接的に押圧しており、他方の脚は、第2噛合部材を直接的または間接的に押圧している。その結果、第1噛合部材は、ねじりバネの力によって、周方向へ第2噛合部材に押し付けられる。ねじりバネは、クラッチ装置の操作において、噛合部材が互いから離れ、そして、互いに衝突しないようにする。噛合部材が互いから離れ、そして、互いに衝突すると、望ましくないノイズ(カタコトいう音)となり、そのうえ、クラッチを損傷してしまう。
【0008】
ねじりバネのリング部は、周方向において閉じていない、それゆえ、開いている2つの端部を有するリングを備えていてもよい。この場合、リングの各端部は、いずれかの脚と接続されている。リングの一対の脚で形成される角度範囲は、300°を超え360°以内であってもよく、320°を超えていることが好ましい。端部に接続された脚は、互いにほぼ平行に延びていてもよい。
【0009】
ねじりバネの断面は、長方形であってもよいし、または、他の形(円、楕円、多角形など)であってもよい。ねじりバネは、バネ鋼により一体型として形成されていることが好ましい。このようなねじりバネによって、30Nm以上(例えば50Nm)の圧縮トルクが実現される。この場合、収容されるねじりバネによって、クラッチ装置の構成空間が拡大されることはない、または、少ししか拡大されない。
【0010】
好ましい形態によれば、通常操作において、第1クラッチ部分は、トルクを主回転方向に第2クラッチ部分へ伝達する。この場合、バネ器具は、第1噛合部材を、主回転方向へ第2噛合部材に押し付ける。その結果、第1噛合部材は、負荷面によって、第2噛合部材の負荷面に接する。この配置により、第1クラッチ部分から第2クラッチ部分へ主回転方向にトルクが伝達される際に、ねじりバネには負荷がかからない。これに対し、トルク伝達の逆転では、すなわち、第2クラッチ部分から第1クラッチ部分への伝達では、伝達トルクがねじりバネによって生成されるトルクよりも大きければ通常操作において負荷面に接している噛合部材が互いに離れるように押される。第1噛合部材の負荷面が第2噛合部材の負荷面から離れるのを防止するため、ねじりバネは、ねじりバネによって生成されるトルクがトルク逆転の際に通常生じるトルクよりも大きいように、目的に合わせて寸法決定されている。
【0011】
あるいは、または、さらに、第1噛合部材および/または第2噛合部材が、第2噛合部材から第1噛合部材へのトルク伝達(クラッチの通常操作に対するトルク伝達の逆転)の際にバネ器具のバネ経路を制限するフリーホイール停止部を形成してもよい。複数の停止位置を有していてもよい。この停止部により、バネ経路およびバネ器具に作用する力が制限され、その結果、バネ器具は過負荷からまたはブロック位置から効果的に保護される。
【0012】
好ましい形態において、ねじりバネは、軸方向において、第1クラッチ部分または第2クラッチ部分に対して固定されており、脚の一自由端に斜面を有している。この斜面は、クラッチ装置の組み込み時のクラッチ部分の軸方向の相互シフトを簡単化する。この場合、ねじりバネは、予め荷重がかけられていてもよい。
【0013】
第1および第2の噛合部材は、潤滑油室または油室に配置されていてもよい。潤滑油室または油室内の潤滑油または油は、第1に、軸力を低減し、第2に、周方向における第1および第2の噛合部材間に起こり得る振動をある程度減衰する。また、潤滑油または油は、噛合部材の相互の相対運動による摩損の回避、または、少なくとも低減に寄与することができる。
【0014】
潤滑油室または油室は、室内の温度が上昇した場合に空気を流出させることのできる少なくとも1つの空気流出開口部を備えていてもよい。
【0015】
複数の第1噛合部材および複数の第2噛合部材が設けられていてもよく、複数の第1噛合部材および複数の第2噛合部材は、ほぼ均等に分散して周上に配置されていることが好ましい。例えば、クラッチ装置は、ドグクラッチとして構成されていてもよく、したがって、この場合、第1噛合部材と第2噛合部材とはそれぞれドグとして構成されている。この場合、第1クラッチ部分のドグは、第2クラッチ部分の隣り合う2つのドグ間の窪みすなわち間隙にはまる。
【0016】
複数の第1および第2の噛合部材が設けられている限り、一形態では、ねじりバネが直接接している、すなわち、ねじりバネをその他の噛合部材と相互作用させる、第1噛合部材のグループのうちの1つの噛合部材および/または第2噛合部材のグループのうちの1つの噛合部材が、第1クラッチ部分と第2クラッチ部分との間のトルク伝達経路から外されていてもよい。したがって、ねじりバネに直接接している噛合部材は、ねじりバネの力のみを伝達し、トルクをモーターから変速機へ伝送する機能は果たさない。このことは、ねじりバネに必要不可欠な所要面積のせいで噛合部材が比較的小さく形成されており、それゆえに、噛合部材がクラッチ装置の「最も弱い」伝達部材である場合に特に利点である。したがって、噛合部材は、ねじりバネの力を伝達するためだけに構成されていてもよく、それぞれ他のクラッチ部分の隣り合う噛合部材と接触していない。このために必要なあそびは、上述のフライホイール停止部に設けられるあそびよりも大きい必要がある。したがって、クラッチ装置の全伝達容量の分散幅が最小化される。
【0017】
バネ器具は、スプリングのきいた付加要素として、好ましくはクッションを少なくとも1つ備えていてもよい。なお、この弾力のある付加要素は、第2噛合部材のフリーホイール面に配置されている。スプリングのきいた付加要素は、漸進的なバネ特性を有していてもよい。付加要素は、ねじりバネに対して並列または直列に接続されていてもよい。付加要素は、金属部品、エラストマー部品、または、ゴム部品であってもよい。
【0018】
特にクラッチ部分の軸方向への相互シフト時における組み込みを簡単化するため、クッションはクッションホルダーによって予め荷重がかけられていてもよく、その場合、クッションホルダーは、好ましくは第2噛合部材に支えられており、それゆえ、クッションはフリーホイール面において止まる。
【0019】
この場合、クッションは圧縮されてもよい。その結果、クッションを、第2噛合部材と共に隣り合う2つの第1噛合部材間の間隙すなわち窪みへと押し入れることができる。例えば、クッションホルダーは、複数の第2噛合部材のクッションを接続し、共通して予め荷重をかけるように形成されている。
【0020】
好ましい形態では、第1噛合部材が第1クラッチ部分の放射状に内へ向かう内歯部として形成されており、第2噛合部材が第2クラッチの放射状に外へ向かう外歯部として形成されている。したがって、滑りのないクラッチ装置は、軸方向においてクラッチ部分間の相対運動を可能にするスプラインとして形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図に示す実施形態を参照して本発明を詳しく説明する。
【0022】
図1は、自動車の内燃機関1とダブルクラッチ変速機2とを概略的に示す。ダブルクラッチ変速機2は、ダブルクラッチ3と歯車セット4とを有している。内燃機関1のクランクシャフト(図示せず)に、フライホイール5がネジによって固定されている。ダブルクラッチ3とフライホイール5との間に、トーショナルダンパーすなわち振動ダンパー6が配置されている。なお、振動ダンパー6は、滑りのないクラッチ装置7を介して、回転しないようにフライホイール5に接続されている。クラッチ装置7は、例えば、スプラインまたはドグクラッチとして形成されていてもよい。スプラインもドグクラッチも、振動ダンパー6またはダブルクラッチ3に関してクランクシャフトまたはフライホイール5の相対運動を可能にし、その結果、起こり得るクランクシャフトの軸方向の動きが変速機2へ伝達されない。
【0023】
図2は、フライホイール5の一実施形態の斜視図を示す。フライホイール5は、クラッチ装置7の第1クラッチ部分8に回転しないように接続されている。第1クラッチ部分8は、ほぼ回転対称に形成されており、その周に均等に分散した第1噛合部材としての8個のドグ9を有している。この場合、ドグ9は、フライホイール5の軸方向に延びている。
【0024】
2つの隣り合うドグ9の間に、間隙すなわち窪み10が設けられている。クラッチ装置7が最終的に組み込まれたら、図3の一実施形態において示す第2クラッチ部分11の第2噛合部材としてのドグ12が、この窪み10にはまる。第2クラッチ部分11は、振動ダンパー6に回転しないように接続されている。ドグ12は、同じく、周に均等に分散して配置されており、且つ、第1クラッチ部分のドグ9に対してほぼ相補的に形成されている。つまり、第2クラッチ部分11のドグ12は、第1クラッチ部分の2つの隣り合うドグ9間の間隙10に配置される。これにより、クラッチ部分8,11間が回転しないように確実に接続されることとなる。
【0025】
さらに、第2クラッチ部分11は、バネ器具を備え、このバネ器具は、ねじりバネ13と、スプリングのきいた付加要素としての弾力的に変形可能な複数のクッション14とを有している。
【0026】
ねじりバネ13は、環状バネ筐体16に保持されるリング15を有している。さらに、ねじりバネ13は、放射状に延びる2つの脚17,18有している。ねじりバネ13のバネ力に対抗して、最終的に接触するまで脚17,18は互いに反発し合う。
【0027】
第2クラッチ部分11のバネ器具は、第2クラッチ部分11のドグ12のフリーホイール面19にそれぞれ配置されている合計6個のクッション14を有している。2つのドグ12a,12eは、そのそれぞれのフリーホイール面19にクッション14を備えていない。
【0028】
これら6個のクッション14は、1つの共通のクッションホルダー20によって互いに接続されている。クッションホルダー20は、型打物として形成されており、弾力的に変形可能なクッション14を定位置において保持する、または、予め荷重をかける機能を果たす。このため、クッションホルダー20は、オフセットウェブ21を備えている。オフセットウェブ21は、ドグ12(ドグ12h参照)の内部収容部22にはまり、周方向において収容部22の側端部の1つに接している。
【0029】
図4は、振動ダンパー6側から観察した第2クラッチ部分11のドグ12と第1クラッチ部分8のドグ9との相互作用を示す図である。第2クラッチ部分11を内燃機関1またはフライホイール5の側から示す図3とは観点が違うので、図3の表示に関して図4における個々の部材は左右逆に表示されている。例えば、図4においてドグ12aは、ねじりバネ13の脚17,18の右に配置されており、一方、図3ではドグ12aは脚17,18の左に見える。
【0030】
自動車の通常走行時に、内燃機関1からクラッチ装置7を介してトルクがダブルクラッチ変速機2へ伝達される。このことは、クラッチ装置7に関しては、第1クラッチ部分のドグ9が、対応するトルクを第2クラッチ部分のドグ12へ伝達することを意味している。この場合、回転方向は、参照符号23を有する矢印で示されている。対応して、ドグ9は負荷面24を、直接接するドグ12の負荷面25に押し付ける。負荷面25の反対側にあるフリーホイール面19に、上述のように、ドグ12a、ドグ12e以外は、クッション14が配置されている。ドグ12aのフリーホイール面19に、ねじりバネ13の脚17が接している。ねじりバネ13の他方の脚18は、ドグ9hのフリーホイール面26に接している。ねじりバネ13を介して、ドグ12aおよびその他のドグ12は、それぞれ隣り合うドグ9に押し付けられる。したがって、ねじりバネ13は、ドグ12の負荷面25を、ドグ9の対応する負荷面24に押し付ける。通常走行時のトルクフローについて、このことは、ねじりバネ13もクッション14も、モーターから変速機へ伝達とされるトルクによる作用を受けない、ということを意味している。
【0031】
負荷逆転時に、例えば、自動車が上りを走り、モーターによって減速される場合に、ドグ12は、そのフリーホイール面19を、それぞれ隣り合うドグ9のフリーホイール面26に押し付ける。この場合、クッション14もねじりバネ13も、変速機2からモーター1へ伝送されるトルクの作用を受ける。クッション14およびねじりバネ13を高すぎる負荷から保護するため、クラッチ装置7は、フリーホイール停止部としてのフリーホイールストップ27を備えている。負荷逆転時に、すなわち、つまり、第2クラッチ部分から第1クラッチ部分へのトルク伝達時に、ねじりバネ13の脚17,18およびクッション14は圧縮される。その結果、図4に示すドグ12eとドグ9dとの間のフリーホイールストップ27における割れ目が閉じられる。その結果、ドグ12eのフリーホイール面19は、ドグ9dのフリーホイール面26に接する。ドグ12e,9dの接触により、ねじりバネ13とクッション14とは過負荷から保護される。
【0032】
脚17,18のための場所をつくるために、周方向におけるドグ9h,12aは、周方向における他のドグ9,12よりもやや短く形成されている。これによれば、クラッチ装置7を介して伝達されるトルクが8対のドグに均等に分散されるとする場合に、ドグ9h,12aにおいては剪断応力がより大きくなる可能性がある。より短い、それゆえ、より少ない負荷に耐え得るドグ9h,12aを過負荷から保護するため、ドグ12aとドグ9aとの間、および、ドグ9hとドグ12hとの間に、それぞれ割れ目が設けられていてもよい。これにより、ドグ9h,12aは、クラッチのトルクを伝達しなくなり、ねじりバネ13のバネ力を受け入れ、双方のクラッチ部分8,11を周方向に付勢する機能のみを果たす。
【0033】
ネジ28は、第1クラッチ部分8をフライホイール5に回転しないように固定する機能を果たす。第2クラッチ部分11を振動ダンパー6に固定するための対応するネジを、参照符号29で示す。
【0034】
図5は、クラッチ装置7の他の実施形態を示す。図5の実施形態は、ドグ9,12の数が図4の実施形態とは異なっている。ここでは、クラッチ部分8,11は、それぞれたった4個のドグ9,12を備えている。また、ここでは、隣り合うドグ9,12の対向するフリーホイール面19,26間にクッションは配置されていない。このことは、ドグ9,12が、そのそれぞれの負荷面24,25のみにおいて、ねじりバネ13のクランピング力によって互いに押されることを意味している。図5および図4の実施形態のさらなる違いは、脚17がドグ12aのフリーホイール面19に接しているのではなく、別な接触面30に接している点である。第1クラッチ部分のドグ9dのフリーホイール面26とドグ12aとの間に、小さな割れ目が設けられており、この割れ目は、負荷逆転時に、つまり、変速機からモーターへのトルク伝達時に、双方の足17,18がねじりバネ13の力に対抗して圧縮される場合に閉じられる。したがって、図5の実施形態は、図4の図面説明において既に言及したフリーホイールストップ27に対して約180°ずれて配置されたフリーホイールストップ27’に備えている。したがって、図5の実施形態のねじりバネ13の脚17,18は、ドグ9,12の外周まで延びておらず、ドグ9,12のほぼ内周までしか延びていない。脚18に対する充分に大きな接触面を形成するために、ドグ9dのフリーホイール面は、放射状に内へ向かって伸びている。
【0035】
図6は、クラッチ装置7の一実施形態を縦断面で示す。図6の表示では、右側に、フライホイール5に固定して接続された(ほとんど図示されていない)モーター1がある。モーター1のクランクシャフト31は、第1フライホイール5を収容する機能を果たす壁段32を有している。壁段32により、フライホイール5はクランクシャフト31の中央に据え付けられる。また、フライホイール5は、壁段33と共に、第1クラッチ部分8のための収容部を形成しており、その結果、第1クラッチ部分8もクランクシャフト31に対して同軸状に整列されている。ネジ28によって、クランクシャフト31、フライホイール5、および、第1クラッチ部分8は、軸方向にも周方向にも固定して互いに接続されている。フライホイール5および第1クラッチ部分8が2つの部分からなることにより、これらの部分は、互いに別々に製造される。その結果、硬化のための熱処理は、第1クラッチ部分8に目的を絞って制限される。
【0036】
図6の左側において、クラッチ装置7に、ダブルクラッチ変速機2(図示せず)がつながっている。ダブルクラッチ変速機2には振動ダンパーすなわちトーショナルダンパー6がフランジを介して接続されている。ダンパー6は、第2クラッチ部分11を収容しており、そのドグ12は、第1クラッチ部分8のドグ9に噛み合っている。ねじりバネ13は、そのリング15が環状バネ筐体16に保持されていることが分かる。リング15から放射状に外へ脚17が延びている。
【0037】
トーショナルダンパー6と部分的にのみ示すダンパー収容部34との間にダンパー外部シール35が設けられている。ダンパー外部シール35は、トーショナルダンパー6のシリンダー状のカラー37の被覆外面36上にある。シリンダー状のカラー37は、フライホイール5と一体的に形成されたシリンダー状のカラー38を取り囲んでいる。この場合、カラー37の被覆内面39に、リップシール40が押し込まれており、リップシール40は、互いに差し込まれているカラー37,38の間の割れ目を塞いでいる。
【0038】
リップシール40によって、ドグ9,11およびねじりバネ13のある環状の潤滑油室41が塞がれる。潤滑油室41にある潤滑油または油によりドグ9,11の摩損は最小化され、これにより、クラッチ装置7の音響的な特性は非常に長い寿命に亘っても劣化しない。
【0039】
潤滑油室41において温度上昇により過圧力が生じる場合、空気は、好ましくはクランクシャフト31とフライホイール5との間に配置されている空気流出開口部としての小さなボア42を通って、潤滑油室41から漏出する。空気流出経路43を、図6において太い矢印で示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】内燃機関と変速機との間のトルク伝達鎖を概略的に示す図である。
【図2】第1クラッチ部分を有するフライホイールの斜視図である。
【図3】第2クラッチ部分の斜視図である。
【図4】第1および第2のクラッチ部分を共に示す図である。
【図5】第1および第2のクラッチ部分の他の実施形態を示す図である。
【図6】一実施形態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 内燃機関
2 ダブルクラッチ変速機
3 ダブルクラッチ
4 歯車セット
5 フライホイール
6 振動/トーショナルダンパー
7 クラッチ装置
8 第1クラッチ部分
9 ドグ(第1噛合部材)
10 間隙
11 第2クラッチ部分
12 ドグ(第2噛合部材)
13 ねじりバネ(バネ器具)
14 クッション(付加要素、バネ器具)
15 リング
16 環状バネ筐体
17 脚
18 脚
19 フリーホイール面
20 クッションホルダー
21 ウェブ
22 収容部
23 回転方向
24 負荷面
25 負荷面
26 フリーホイール面
27 フリーホイールストップ(フリーホイール停止部)
28 ネジ
29 ネジ
30 装備面
31 クランクシャフト
32 壁段
33 壁段
34 ダンパー上部
35 ダンパー外部シール
36 被覆外面
37 カラー(内歯部)
38 カラー(外歯部)
39 被覆内面
40 リップシール
41 潤滑油室
42 ボア(空気流出開口部)
43 空気流出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クラッチ部分(8)と、
前記第1クラッチ部分(8)に対して同軸状に配置された第2クラッチ部分(11)と、
バネ器具とを備え、
前記クラッチ部分(8,11)間においてトルクを滑ることなく伝達するために、前記第1クラッチ部分(8)が少なくとも1つの第1噛合部材(9)を有し、前記第2クラッチ部分(11)が少なくとも1つの第2噛合部材(12)を有し、前記バネ器具によって、前記第1噛合部材(9)と前記第2噛合部材(12)とが周方向に付勢されているクラッチ装置(7)であって、
前記バネ器具は、リング部分と一対の脚(17,18)とを有するねじりバネ(13)を有し、
前記リング部分は、前記クラッチ部分(8,11)に対して本質的に同軸状に配置されており、
前記脚(17,18)は、放射状に外へ延びている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ装置(7)において、
前記リング部分は、2つの開いた端部を有する周方向において閉じていないリング(15)を備え、
上記リング(15)の各端部は、いずれかの上記脚(17,18)と接続されている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項3】
請求項2に記載のクラッチ装置(7)において、
前記リング(15)の上記脚(17,18)は、300°を上回り、360°以下の角度範囲にある
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
前記ねじりバネ(13)の断面は、長方形である
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
通常操作において、前記第1クラッチ部分(8)は、トルクを主回転方向に前記第2クラッチ部分(11)へ伝達し、
上記バネ器具が、上記第1噛合部材(9)を、主回転方向に上記第2噛合部材(12)に押し付けることにより、前記第1噛合部材(9)は、負荷面(24)によって、前記第2噛合部材(12)の負荷面(25)に接する
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項6】
請求項5に記載のクラッチ装置(7)において、
前記第1噛合部材(9,37)と前記第2噛合部材(12)とが、前記バネ器具の前記バネ経路を前記バネ器具の保護のために制限するフリーホイール停止部(27)を形成している
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
前記ねじりバネ(13)は、前記第1または前記第2のクラッチ部分(8,11)に対して軸方向に固定されており、
前記脚(17,18)の自由端部に、前記クラッチ部分(8,11)の軸方向の相互シフトを簡単化する斜面が設けられている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
前記第1噛合部材(9)と前記第2噛合部材(12)とが、潤滑油室または油室(41)に配置されている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項9】
請求項8に記載のクラッチ装置(7)において、
上記潤滑油室または油室(41)は、空気流出開口部(42)を有している
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
前記第1噛合部材は複数設けられ、前記第2噛合部材も複数設けられている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項11】
請求項10に記載のクラッチ装置(7)において、
前記ねじりバネ(13)が直接接し、前記ねじりバネ(13)をその他の噛合部材と相互作用させる、前記第1噛合部材の第1グループのうちの1つの噛合部材、および/または、前記第2噛合部材の第2グループのうちの1つの噛合部材は、前記第1および前記第2のクラッチ部分間のトルク伝達経路から外されている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項12】
前記請求項1から11のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
前記第1噛合部材と前記第2噛合部材とは、それぞれ、ドグ(9,12)として形成されている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
前記バネ器具は、スプリングのきいた付加要素としてクッション(14)を備え、
前記クッション(14)は、前記第2噛合部材(12)のフリーホイール面(19)に配置されている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項14】
請求項13に記載のクラッチ装置(7)において、
前記クッション(14)は、クッションホルダー(20)によって予め荷重がかけられており、
前記クッションホルダー(20)は、前記第2噛合部材(12)に支えられている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のクラッチ装置(7)において、
前記第1噛合部材は、前記第1クラッチ部分(8)の放射状に内へ向けられた内歯部(37)として形成されており、
前記第2噛合部材は、前記第2クラッチ部分(11)の放射状に外へ向けられた外歯部(38)として形成されている
ことを特徴とするクラッチ装置(7)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−190717(P2008−190717A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20672(P2008−20672)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(506132120)ゲトラーク フォード トランスミシオーンス ゲーエムベーハー (18)
【出願人】(506210299)フォード−ヴェルケ ゲーエムベーハー (3)