説明

ねじ構造

【課題】作業性に優れる脱落防止用のねじ構造を提供する。
【解決手段】端子ねじ1は、工具に係合して回転される頭部1a、及び被締結体に設けた雌ねじ部2aに螺合する雄ねじ部を外周に形成する軸部1bで構成する。軸部1bは、頭部1aから先端部側に向かって雄ねじ部を形成する主ねじ部11bと、主ねじ部11bから先端部側に向かって形成された円柱状の無ねじ部13bと、無ねじ部13bから先端部に至るまで雄ねじを形成すると共に、一対の平坦面141・141を形成する先端ねじ部14bとを有する。雌ねじ部2aは、先端ねじ部14bが挿入可能な一対の無ねじ溝21d・21dと、先端ねじ部14bが回動自在に保持される中ぐり穴22hを有する。先端ねじ部14bは、軸方向に脱落が困難に中ぐり穴22hに保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ構造に関する。特に、端子台などに設けた雌ねじ部から雄ねじが脱落することを防止する処置を施したねじの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、変電所や発電所では、制御盤などに配置した端子台に電線の端末を接続する電気工事、又は、端子台から電線の端末を解除する電気工事が実施されることがある。このような電気工事では、電線の端末に圧着した圧着端子のスタッドホールにねじを挿通し、端子台に設けた雌ねじ部に雄ねじを締結して、圧着端子を端子台に接続している。又、端子台に設けた雌ねじ部から雄ねじを離間して、圧着端子を端子台から解除している。
【0003】
しかし、端子台に設けた雌ねじ部に雄ねじを締結後に、振動などで雄ねじが弛み、雄ねじが端子台から脱落することがあった。又、端子台に設けた雌ねじ部から雄ねじを離間するときに、雄ねじを不用意に脱落させることがあった。そして、例えば、制御盤の内部に落下した雄ねじを探し出すことは容易でなかった。
【0004】
このような不具合を解消するため、雌ねじ部から脱落することを確実に防止できると共に、ねじを製造するコスト面でも有利なねじ、特に、端子台に設けた雌ねじ部に締結するために好適な雄ねじが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−184636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7は、特許文献1による雄ねじの正面図であり、端子台に設けた雌ねじ部から雄ねじが脱落することが阻止された状態図である。なお、本願の図7は、特許文献1の図10に相当している。
【0007】
図7を参照すると、特許文献1による雄ねじ9は、頭部9aと軸部9bで構成している。頭部9aには、ドライバなどの工具の先端部が係合する溝91aを穿設している。軸部9bは、雄ねじを形成する主ねじ部91b、主ねじ部91bと頭部9aの間に形成された首部92b、主ねじ部91bから先端側に向かって形成された無ねじ部93b、及び無ねじ部93bから先端側に向かって形成された先端ねじ部94bで構成している。
【0008】
図7を参照すると、首部92bは、主ねじ部91bの外周(山径)より小さい外径を有している。そして、首部92bには、ばね座金9s及び爪付き角座金9tが遊動自在に保持されている。
【0009】
図7を参照すると、無ねじ部93bは、主ねじ部91b及び先端ねじ部94bの外周(山径)より小さく、主ねじ部91b及び先端ねじ部94bの谷径より僅かに大きい外径を有している。先端ねじ部94bは、雄ねじのねじ山を平坦に押し潰した一対の面状つぶし部95b・95bを相反する向きに形成している。
【0010】
図7を参照すると、端子台8は、一対の隔壁8a・8aで仕切られた端子収容室80の底部に導電板7を取り付けている。導電板7は、主ねじ部91b及び先端ねじ部94bが螺合可能な雌ねじ部7aを設けている。
【0011】
図7を参照して、ドライバなどの工具を用いて、雄ねじ9の先端を雌ねじ部7aに押し当てながら、雄ねじ9を回転すると、先端ねじ部94bを強引に雌ねじ部7aにねじ込むことができる。そして、先端ねじ部94bが雌ねじ部7aを通過し、無ねじ部93bが雌ねじ部7aに係合すると、雄ねじ9を導電板7に回動自在に保持できる。雄ねじ9を更に回転すると、主ねじ部91bが雌ねじ部7aに螺合でき、軸部9bに予め取り付けておいた圧着端子(図示せず)を導電板7に固定できる。
【0012】
特許文献1による雄ねじ9は、雌ねじ部7aと螺合がしにくいように、雄ねじのねじ山を平坦に押し潰した一対の面状つぶし部95b・95bを先端ねじ部94bに備えているので、図7に示されるように、端子台8からの脱落を確実に防止できると、している。
【0013】
しかしながら、特許文献1による雄ねじ9は、先端ねじ部94bを雌ねじ部7aに強引にねじ込むので作業性が良くないという問題がある。又、特許文献1による雄ねじ9は、先端ねじ部94bで雌ねじ部7aのねじ山を傷つける心配がある。つまり、特許文献1による雄ねじ9が一度螺合した雌ねじ部7aには、再度、雄ねじ9を螺合することが困難になる心配がある。
【0014】
雄ねじを雌ねじ部に螺合するときに、作業性に優れると共に、再利用が容易な脱落防止用のねじ構造が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0015】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、雄ねじを雌ねじ部に螺合するときに、作業性に優れると共に、再利用が容易な脱落防止用のねじ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、工具に係合して回転される頭部と被締結体に設けた雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を外周に形成する軸部で雄ねじを構成し、軸部には、主ねじ部から先端側に向かって形成された無ねじ部、及び無ねじ部から先端側に向かって形成された先端ねじ部を設けると共に、先端ねじ部には、無ねじ部の外径より小さい幅を有するように、相反する向きに一対の平坦面を形成し、一方、雌ねじ部は、先端ねじ部が挿入可能な一対の対向する無ねじ溝と、これらの無ねじ溝に連通して、先端ねじ部が回動自在に保持される中ぐり穴を有することで、上記課題を解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな脱落防止用のねじ構造を発明するに至った。
【0017】
(1)本発明によるねじ構造は、工具に係合して回転される頭部、及び雄ねじ部を外周に形成する軸部を有する雄ねじと、この雄ねじが螺合する雌ねじ部を設けた被締結体で構成された、ねじ構造であって、前記雄ねじの軸部は、前記頭部から先端部側に向かって前記雄ねじ部を形成する主ねじ部と、この主ねじ部から先端部側に向かって形成され、前記雄ねじ部の谷径より小さい外径を設ける円柱状の無ねじ部と、この無ねじ部から先端部に至るまで前記雄ねじ部を形成すると共に、前記無ねじ部の外径より小さい幅を有するように、相反する向きに向かう一対の平坦面を形成する先端ねじ部と、を有し、雌ねじ部は、前記先端ねじ部が挿入可能な一対の対向する無ねじ溝と、これらの無ねじ溝を通過した前記先端ねじ部が回動自在に保持されるように、前記雄ねじ部の山径より大きい内径を形成する中ぐり穴と、を有し、前記先端ねじ部は、軸方向に脱落が困難に前記中ぐり穴に保持される。
【0018】
(2)前記軸部は、前記頭部と前記主ねじ部との間に形成された円柱状の首部を更に有し、前記首部には、少なくとも座金を保持していることが好ましい。
【0019】
(3)前記被締結体は、前記雌ねじ部に一対の前記無ねじ溝を形成した板状部材と、前記中ぐり穴、及び前記中ぐり穴と同軸上に前記雌ねじ部を形成したブロック部材と、を備えることが好ましい。
【0020】
(4)前記板状部材に前記雌ねじ部の下穴を設けると共に、前記ブロック部材の表面から座ぐり加工した前記中ぐり穴の底面から前記雌ねじ部の下穴を当該ブロック部材の裏面に貫通させ、前記板状部材の雌ねじ部の下穴の中心と前記ブロック部材の雌ねじ部の下穴の中心を一致させると共に、前記中ぐり穴を覆うように、前記板状部材と前記ブロック部材を接合し、これらの下穴にタップ加工して前記雌ねじ部を形成することが好ましい。
【0021】
(5)本発明によるねじ構造を端子台に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるねじ構造は、工具に係合して回転される頭部、及び雄ねじ部を外周に形成する軸部を有する雄ねじと、この雄ねじが螺合する雌ねじ部を設けた被締結体で構成し、軸部には、主ねじ部から先端側に向かって形成された無ねじ部、及び無ねじ部から先端側に向かって形成された先端ねじ部を設けると共に、先端ねじ部には、無ねじ部の直径より小さい幅を有するように、相反する向きに一対の平坦面を形成し、一方、雌ねじ部は、先端ねじ部が挿入可能な一対の対向する無ねじ溝と、これらの無ねじ溝に連通して、先端ねじ部が回動自在に保持される中ぐり穴を有するので、作業性に優れると共に、再利用が容易な脱落防止用のねじ構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態によるねじ構造を備える端子台の構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態によるねじ構造を備える端子台の要部を拡大した斜視図である。
【図3】前記実施形態によるねじ構造の構成を示す図であり、図3(A)は、雄ねじの正面図、図3(B)は、雄ねじの下面図である。
【図4】前記実施形態による雄ねじに螺合される雌ねじ部を有する被締結体の構成を示す図であり、図4(A)は、被締結体の平面図、図4(B)は、被締結体の縦断面図である。
【図5】前記実施形態による雄ねじが雌ねじ部に螺合する前の状態を示す正面図であり、被締結体を縦断面で示している。
【図6】前記実施形態による雄ねじの正面図であり、被締結体に設けた雌ねじ部からねじが脱落することが阻止された状態図である。
【図7】従来技術による雄ねじの正面図であり、端子台に設けた雌ねじ部から雄ねじが脱落することが阻止された状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明によるねじ構造は、端子台に備わる端子ねじ(雄ねじ)と雌ねじ部を好適な実施形態として説明する。
[端子台の構成]
最初に、本発明の一実施形態によるねじ構造を備える端子台の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態によるねじ構造を備える端子台の構成を示す斜視図である。図2は、前記実施形態によるねじ構造を備える端子台の要部を拡大した斜視図である。
【0025】
図1又は図2を参照すると、実施形態による端子台10は、雄ねじとなる端子ねじ1、被締結体となる導電金具2、及び基台3を備えている。端子ねじ1は、頭部1aと軸部1bで構成している。頭部1aには、ドライバなどの工具の先端部が係合する溝11aを穿設している。軸部1bは、雄ねじ部を外周に形成している。
【0026】
図1又は図2を参照すると、導電金具2は、例えば、導電性の鉄板からなる板状部材21と導電性を有する一対のブロック部材22・22で構成している。一対のブロック部材22・22は、所定の距離を設けて、板状部材21に接合されている。そして、導電金具2の両端部には、軸部1bの雄ねじ部が螺合する一対の雌ねじ部2a・2aを設けている。雌ねじ部2aは、板状部材21の表面からブロック部材22の裏面に貫通している。
【0027】
図1又は図2を参照すると、本発明の一実施形態によるねじ構造1Sは、図示しない工具に係合して回転される頭部1a、及び雄ねじ部を外周に形成する軸部1bを有する端子ねじ1と、端子ねじ1が螺合する雌ねじ部2aを設けた被締結体となる導電金具2で構成している。
【0028】
図2を参照すると、板状部材21には、一対の凸部2c・2cを一方の端縁に設けている。これらの凸部2c・2cは、基台3に設けた一対の凹部3c・3cに挿入されて、基台3に対して導電金具2を位置決めして収容できる。
【0029】
図1又は図2を参照すると、基台3は、非導電性の材料からなり、絶縁性の合成樹脂を成形している。そして、基台3は、鍔状の背面板31を有している。図1を参照すると、複数の基台3を相互に連設することもでき、背面板31は、隣接する端子ねじ1を隔絶する隔壁として機能している。
【0030】
図1を参照すると、実施形態による端子台10は、マルチレール式の端子台を示している。端子台10は、導電金具2及び基台3を端子ユニットとして、レール33上に配列することができ、端子ユニットの極数を増減できる。又、これらの端子ユニットの両端部には、一対のエンドプレート31a・31bを配置することが好ましく、ストッパ32を用いて、これらのエンドプレート31a・31bをレール33に固定できる。
【0031】
図2を参照すると、端子ねじ1は、ばね座金1sを介して、座金1tを首部12b(図3参照)に回動自在に保持している。つまり、端子ねじ1は、ばね座金1s及び座金1tと一体に移動でき、座金1tに対して端子ねじ1を回転できる。このような座金組み込みねじは、座金1tの貫通穴を縮径するように、鍛造する(かしめる)ことで実現できる。
【0032】
図1を参照すると、端子台10には、圧着端子4が接続される。圧着端子4は、電線4wの端末を結線している。図示された圧着端子4は、丸形圧着端子を示している。そして、圧着端子4の舌部4sには、端子ねじ1の軸部1b(図2参照)が入るスタッドホール4hを開口している。
【0033】
図1又は図2を参照すると、圧着端子4のスタッドホール4hに端子ねじ1の軸部1bが挿通されて、端子ねじ1が雌ねじ部2aに締結することにより、圧着端子4と導電金具2とが電気的に接続される。
【0034】
図1を参照すると、例えば、一方の電線4wを電源側電力線としてよく、他方の電線4wを負荷側電力線としてよく、それぞれの電線4wの端末に結線した圧着端子4を導電金具2の両翼にねじ止めして、電源側と負荷側とを電気的に接続できる。
【0035】
[ねじ構造の構成]
次に、実施形態によるねじ構造1Sの構成を説明する。図3は、前記実施形態によるねじ構造の構成を示す図であり、図3(A)は、雄ねじの正面図、図3(B)は、雄ねじの下面図である。図4は、前記実施形態による雄ねじに螺合される雌ねじ部を有する被締結体の構成を示す図であり、図4(A)は、被締結体の平面図、図4(B)は、被締結体の縦断面図である。
【0036】
図5は、前記実施形態による雄ねじが雌ねじ部に螺合する前の状態を示す正面図であり、被締結体を縦断面で示している。図6は、前記実施形態による雄ねじの正面図であり、被締結体に設けた雌ねじ部からねじが脱落することが阻止された状態図である。なお、図3及び図5又は図6において、ばね座金1s及び座金1t(図2参照)の図示を省略している。
【0037】
図3を参照すると、端子ねじ1は、主ねじ部11b、円柱状の無ねじ部13b、及び先端ねじ部14bを軸部1bに有している。主ねじ部11bは、頭部1aから先端部側に向かって所定ピッチの雄ねじ部を形成している。無ねじ部13bは、主ねじ部11bから先端部側に向かって円柱状に形成されている。そして、無ねじ部13bは、雄ねじ部の谷径d3より小さい外径d1を設けている。
【0038】
図3を参照すると、先端ねじ部14bは、無ねじ部13bから先端部に至るまで前記雄ねじを形成している。又、先端ねじ部14bは、無ねじ部13bの外径d1より小さい幅wを有するように、相反する向きに向かう一対の平坦面141・141を形成している。
【0039】
一方、図4を参照すると、雌ねじ部2aは、一対の対向する無ねじ溝21d・21dと中ぐり穴22hを有している。一対の無ねじ溝21d・21dには、先端ねじ部14b(図2又は図5参照)を挿入できる。中ぐり穴22hは、軸部1bに設けた雄ねじの山径D3(図3参照)より大きい内径D1を形成している。中ぐり穴22hは、一対の無ねじ溝21d・21dを通過した先端ねじ部14bを回動自在に保持できる(図6参照)。
【0040】
図4を参照すると、被締結体となる導電金具2は、板状部材21とブロック部材22を備えている。板状部材21は、雌ねじ部2aに一対の無ねじ溝21d・21dを形成している。ブロック部材22は、中ぐり穴22hと雌ねじ部2aを形成している。中ぐり穴22hは、その同軸上に雌ねじ部2aを形成している。
【0041】
図4を参照すると、例えば、雌ねじ部2aは、以下の方法で加工することができる。予め、板状部材21には、雌ねじ部2aの下穴と一対の無ねじ溝21d・21dを加工しておく。又、ブロック部材22は、中ぐり穴22hを表面から座ぐり加工して座ぐり穴を形成すると共に、この座ぐり穴の底面から裏面に雌ねじ部2aの下穴を貫通させておく。
【0042】
次に、図4を参照して、板状部材21の雌ねじ部2aの下穴の中心とブロック部材22の雌ねじ部2aの下穴の中心を一致させると共に、座ぐり穴(実質的には、中ぐり穴22h)の開口を覆うように、板状部材21とブロック部材22を溶接などで接合する。次に、これらの下穴にタップ加工して、導電金具2に雌ねじ部2aを形成できる。
【0043】
図3を参照すると、軸部1bは、頭部1aと主ねじ部11bとの間に、円柱状の首部12bを形成している。首部12bの外径d2は、雄ねじの谷径d3より大きく、雄ねじの山径D3より小さくなっている。そして、首部12bには、ばね座金1s及び座金1tを保持することができる(図2参照)。
【0044】
[ねじ構造の作用]
次に、実施形態によるねじ構造1Sの作用及び効果を説明する。
【0045】
図2又は図5を参照して、端子ねじ1は、先端ねじ部14bを一対の無ねじ溝21d・21dに挿入できる。図5及び図6を参照して、先端ねじ部14bが一対の無ねじ溝21d・21dを通過して、先端ねじ部14bの先端面が中ぐり穴22hの底面(実体として雌ねじ部2a)に当接すると、板状部材21に設けた雌ねじ部2aが無ねじ部13bに対応しているので、端子ねじ1を回動することができ、先端ねじ部14bは、軸方向に脱落が困難に中ぐり穴22hに保持される。
【0046】
図6に示された状態から、端子ねじ1の頭部1aをドライバなどで回転すると、先端ねじ部14bは、ブロック部材22に設けた雌ねじ部2aに螺合できる。又、主ねじ部11bは、板状部材21及びブロック部材22に設けた雌ねじ部2aに螺合できる。そして、圧着端子4を導電金具2に取り付けることできる(図1又は図2参照)。
【0047】
一方、図1又は図2参照して、圧着端子4を導電金具2から取り外すときは、端子ねじ1の頭部1aをドライバなどで解除方向に回転すると、図6に示された状態に至る。図6に示された状態は、先端ねじ部14bが中ぐり穴22hに遊動自在に保持されているので、ドライバの回転トルクが急激に軽くなることで、感覚的に推察できる。
【0048】
図6に示された状態では、端子ねじ1が傾動していると考えられ、先端ねじ部14bが一対の無ねじ溝21d・21dから抜け出すことは困難である。したがって、端子ねじ1の脱落が防止される。
【0049】
図6に示された状態から、先端ねじ部14bを一対の無ねじ溝21d・21dに位置合わせして、端子ねじ1を導電金具2から取り外すことができ、先端ねじ部14bを板状部材21に設けた雌ねじ部2aに螺合させて、端子ねじ1をド解除方向に回転して、端子ねじ1を導電金具2から取り外すこともできる。
【0050】
実施形態による端子ねじ1は、雌ねじ部2aに設けた一対の無ねじ溝21d・21dに挿入して、脱落が防止されるので、従来の脱落防止用のねじと比べて、作業性に優れるという効果がある。又、実施形態による端子ねじ1は、雌ねじ部2aのねじ山を容易に傷つけないので、端子ねじ1を繰り返し使用することができる。
【0051】
このように、実施形態によるねじ構造1Sは、端子ねじ1の脱落の可能性が大きい締結時及び解除時にその可能性を低減できる。又、実施形態によるねじ構造1Sは、端子ねじに設けた先端ねじ部14bを中ぐり穴22hに到達させると容易に脱落しないという効果がある。
【0052】
実施形態によるねじ構造1Sは、端子ねじ1の脱落を防止するために特殊な工具を必要とせず、又、脱落を防止するために別部材を必要としないメリットがある他に、既存の雄ねじを加工するだけでよいという利点がある。
【0053】
本発明によるねじ構造は、端子台に備わる端子ねじを好適な実施形態として開示したが、本発明による雄ねじは、一般的な雄ねじに応用することも可能であり、ボルトに応用することも可能である。
【0054】
本発明によるねじ構造は、雄ねじが螺合する雌ねじ部を設けた被締結体を板状部材とブロック部材で構成することが好ましく、板状部には、雌ねじ部に一対の無ねじ溝を形成し、ブロック部材には、中ぐり穴と雌ねじ部を形成し、板状部材とブロック部材を接合して本発明による雌ねじ部を実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1 端子ねじ(雄ねじ)
1a 頭部
1b 軸部
1S ねじ構造
2 導電金具(被締結体)
2a 雌ねじ部
11b 主ねじ部
13b 無ねじ部
14b 先端ねじ部
21d 無ねじ溝
22h 中ぐり穴
141 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具に係合して回転される頭部、及び雄ねじ部を外周に形成する軸部を有する雄ねじと、この雄ねじが螺合する雌ねじ部を設けた被締結体で構成された、ねじ構造であって、
前記雄ねじの軸部は、
前記頭部から先端部側に向かって前記雄ねじ部を形成する主ねじ部と、
この主ねじ部から先端部側に向かって形成され、前記雄ねじ部の谷径より小さい外径を設ける円柱状の無ねじ部と、
この無ねじ部から先端部に至るまで前記雄ねじ部を形成すると共に、前記無ねじ部の外径より小さい幅を有するように、相反する向きに向かう一対の平坦面を形成する先端ねじ部と、を有し、
雌ねじ部は、
前記先端ねじ部が挿入可能な一対の対向する無ねじ溝と、
これらの無ねじ溝を通過した前記先端ねじ部が回動自在に保持されるように、前記雄ねじ部の山径より大きい内径を形成する中ぐり穴と、を有し、
前記先端ねじ部は、軸方向に脱落が困難に前記中ぐり穴に保持される、ねじ構造。
【請求項2】
前記軸部は、前記頭部と前記主ねじ部との間に形成された円柱状の首部を更に有し、
前記首部には、少なくとも座金を保持している請求項1記載のねじ構造。
【請求項3】
前記被締結体は、
前記雌ねじ部に一対の前記無ねじ溝を形成した板状部材と、
前記中ぐり穴、及び前記中ぐり穴と同軸上に前記雌ねじ部を形成したブロック部材と、を備える請求項1又は2記載のねじ構造。
【請求項4】
前記板状部材に前記雌ねじ部の下穴を設けると共に、前記ブロック部材の表面から座ぐり加工した前記中ぐり穴の底面から前記雌ねじ部の下穴を当該ブロック部材の裏面に貫通させ、
前記板状部材の雌ねじ部の下穴の中心と前記ブロック部材の雌ねじ部の下穴の中心を一致させると共に、前記中ぐり穴を覆うように、前記板状部材と前記ブロック部材を接合し、これらの下穴にタップ加工して前記雌ねじ部を形成する請求項3記載のねじ構造。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のねじ構造を備える端子台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−7445(P2013−7445A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140686(P2011−140686)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】