説明

はすば歯車

【課題】プラスチック製のはすば歯車本体のウェブの側面に金属製の補強部材をねじ部品
で締め付け固定しても、歯先円寸法のばらつきを抑えることができるはすば歯車の提供を
目的とする。
【解決手段】補強部材5がはすば歯車本体2のウェブ13の一方の側面3側にねじ部品4
によって締め付け固定されると、ねじ部品4の頭部4bと補強部材5との間に挟み込まれ
るウェブ13のねじ部品取付穴15の周囲部分がねじ部品4の締め付け力で変形するが、
そのウェブ13のねじ部品取付穴15の周囲部分における変形を環状溝16の溝底部16
cの薄肉部分が肉厚を増す方向に変形して吸収し、はすば歯車本体2の歯先円寸法のばら
つきを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機やプリンタの画像形成手段等を駆動するために使用されるはすば歯
車に関するものであり、特に、プラスチック製のはすば歯車本体を金属製の補強部材で補
強したはすば歯車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の高精度の回転伝達が要求される動力伝達機構には、部
品費用の低廉化,軽量化及び作動音の静粛化等を目的としたプラスチック製の歯車、特に
、平歯車よりも噛み合い率が大きく且つ大きな回転力を円滑に伝達することができるプラ
スチック製のはすば歯車が使用されている。
【0003】
このようなプラスチック製のはすば歯車は、一般に射出成形で高精度に成形するため、
射出成形時におけるプラスチックの収縮を考慮し、歯車各部の肉厚を均一化して、歯車各
部の収縮量のばらつきを抑えるように工夫されている。
【0004】
図9は、このようなプラスチック製のはすば歯車2Aを示すものである。この図9に示
すプラスチック製のはすば歯車2Aは、円環状のリム6の外周に歯7が形成された歯部8
と、軸10に嵌合されるハブ12と、このハブ12の外周面とリム6の内周面とを径方向
に接続するウェブ13と、で構成されている。そして、このプラスチック製のはすば歯車
2Aは、リム6の肉厚(t1)とウェブ13の肉厚(t2)をほぼ同一(t1:t2=1
:1〜1.4)にしている。
【0005】
この図9に示すプラスチック製のはすば歯車2Aは、高精度の歯車精度となるように射
出成形されたとしても、ウェブ13が回転伝達時に作用するスラスト(F)で撓み変形し
(スラストの作用方向に沿った捩れが生じ)、図9の二点鎖線で示すような歯7の倒れが
生じる。その結果、図9に示すプラスチック製のはすば歯車2Aは、スラスト(F)の変
動と共に相手歯車との噛み合い位置が変動し、回転伝達速度にムラが生じ、回転伝達精度
が低下することになる。
【0006】
図10は、このような問題を解決するために案出されたはすば歯車1Aである。この図
10に示すはすば歯車1Aは、プラスチック製のはすば歯車本体2A(図9に示したプラ
スチック製のはすば歯車2Aと同一形状のもの)のウェブ13の側面に金属製の補強部材
5をねじ部品4で固定し、回転伝達時におけるウェブ13の撓み変形を抑えるようになっ
ている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−74971号公報
【特許文献2】特開2008−14438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図10に示したはすば歯車1Aは、金属製の補強部材5がプラスチック
製のはすば歯車本体2Aのウェブ13の側面にねじ部品4で締め付け固定されると、ウェ
ブ13のねじ部品取付穴15の周囲がねじ部品4の頭部4bと補強部材5との間で押し潰
される。そして、図10に示したはすば歯車1Aにおいて、ねじ部品4の頭部4bと補強
部材5との間で押し潰された肉(プラスチック製のウェブ13の一部)は、ねじ部品取付
穴15の径方向外方へ押し出されて、歯7の歯先円寸法のばらつきを生じさせる。その結
果として、はすば歯車1Aとこれに噛み合う相手歯車との噛み合い位置にばらつきを生じ
、はすば歯車1Aによる回転伝達速度のムラが生じる。
【0009】
そこで、本発明は、プラスチック製のはすば歯車本体のウェブの側面に金属製の補強部
材をねじ部品で締め付け固定しても、歯先円寸法のばらつきを抑えることができるはすば
歯車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係るはすば歯車1は、図1〜2及び図8に示すように、(1).円環
状のリム6の外周側に歯7が形成された歯部8と、軸10が嵌合されるハブ12と、前記
ハブ12の外周面12aと前記リム6の内周面6aを径方向に接続するウェブ13と、を
有するプラスチック製のはすば歯車本体2と、(2).前記ウェブ13の両側面3,14
のうちの少なくとも一方の側面3で、且つ、前記はすば歯車本体2の回転伝達時に作用す
るスラストの作用方向下流側の側面3に複数のねじ部品4で締め付け固定され、前記はす
ば歯車本体2の前記ウェブ13が前記スラストで変形するのを抑える金属製の補強部材5
と、を備えている。この発明に係るはすば歯車1において、前記ねじ部品4は、雄ねじが
形成された軸部4aの一端に、前記軸部4aよりも大径の頭部4bが一体に形成されてい
る。また、前記ウェブ13は、前記リム6の肉厚をt1とすると、前記リム6との接続部
分における肉厚t2がt2=(1〜1.4)・t1となるように形成されると共に、前記
ねじ部品4の前記軸部4aを挿入するねじ部品取付穴15が前記両側面3,14の前記一
方の側面3から他方の側面14まで貫通するように形成されている。また、前記補強部材
5は、前記ウェブ13の前記他方の側面14側から前記ねじ部品取付穴15に挿入された
前記軸部4aの前記雄ねじに螺合する雌ねじ24が形成され、前記ウェブ13の前記一方
の側面3に前記ねじ部品4によって締め付け固定されると、前記ウェブ13の前記ねじ部
品取付穴15の周囲部分を前記ねじ部品4の前記頭部4bとの間に挟み込むようになって
いる。また、前記ウェブ13のうちの前記ねじ部品取付穴15の前記周囲部分を取り囲む
部分には、環状溝16が前記ねじ部品取付穴15と同心状に形成されている。そして、前
記ウェブ13のうちの前記環状溝16の溝底部16cにおける肉厚t3が前記ウェブ13
の他部の肉厚t2よりも薄く(t3<t2)なっている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係るはすば歯車1において、前記ウェブ13の前
記一方の側面3側で且つ前記ねじ部品取付穴15の開口縁に沿った部分が円筒状に突出す
るように形成され、この円筒状に突出するように形成された部分(リング状突起18)の
端面18aが前記補強部材5に当接するようになっている(図1〜2参照)。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明に係るはすば歯車1において、前記補強部材5に特
徴を有するものである。すなわち、請求項1の発明に係るはすば歯車1において、前記補
強部材5は、前記ウェブ13の前記一方の側面3に対向する側面側で、且つ、前記雌ねじ
24を取り囲む部分が前記ウェブ13の前記一方の側面3に向かって円筒状に突出するよ
うに形成され、この円筒状に突出するように形成された部分(リング状突起25)の端面
が前記ウェブ13の前記一方の側面3に当接するようになっている(図8参照)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、補強部材がはすば歯車本体のウェブの一方の側面側にねじ部品によっ
て締め付け固定されると、ねじ部品の頭部と補強部材との間に挟み込まれるウェブのねじ
部品取付穴の周囲部分がねじ部品の締め付け力で変形するが、そのウェブのねじ部品取付
穴の周囲部分における変形を環状溝の溝底部の薄肉部分が肉厚を増す方向に変形して吸収
し、はすば歯車本体の歯先円寸法のばらつきを抑えることができる。したがって、本発明
のはすば歯車は、噛み合う相手歯車との噛み合い位置のばらつきを抑えることができ、回
転を高精度で伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るはすば歯車を示す図である。図1(a)がはすば歯車の側面図であり、図1(b)が図1(a)のA1−A1線に沿って切断して示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るはすば歯車の構成部品であるはすば歯車本体を示す図である。図2(a)がはすば歯車本体の一方の側面側から見て示す側面図であり、図2(b)が図2(a)のA2−A2線に沿って切断して示す断面図であり、図2(c)がはすば歯車本体の他方の側面側から見て示す側面図であり、図2(d)が図2(b)のB部を拡大して示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るはすば歯車の構成部品である補強部材を示す図である。図3(a)が補強部材の側面図であり、図3(b)が図3(a)のA3−A3線に沿って切断して示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るはすば歯車及びはすば歯車本体の歯先円半径の測定箇所を示す図である。図4(a)がはすば歯車及びはすば歯車本体の側面側における歯先円半径の測定箇所を示す図であり、図4(b)がはすば歯車及びはすば歯車本体の断面図(図1(b)に対応する断面図)における歯先円半径の測定箇所を示す図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第1実施形態に係るはすば歯車及びはすば歯車本体の歯幅方向一端(x1)側における歯先円半径の測定結果を示す図である。図5(b)は、本発明の第1実施形態に係るはすば歯車及びはすば歯車本体の歯幅方向他端(x2)側における歯先円半径の測定結果を示す図である。
【図6】従来のはすば歯車及びはすば歯車本体の歯先円半径の測定箇所を示す図である。図6(a)が従来のはすば歯車及びはすば歯車本体の側面側における歯先円半径の測定箇所を示す図であり、図6(b)がはすば歯車及びはすば歯車本体の断面図(図10(b)に対応する断面図)における歯先円半径の測定箇所を示す図である。
【図7】図7(a)は、従来のはすば歯車及びはすば歯車本体の歯幅方向一端(x1)側における歯先円半径の測定結果を示す図である。図7(b)は、従来のはすば歯車及びはすば歯車本体の歯幅方向他端(x2)側における歯先円半径の測定結果を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るはすば歯車の断面図であり、図1(b)に対応する断面図である。
【図9】従来のプラスチック製のはすば歯車を示す図である。図9(a)がはすば歯車の側面図であり、図9(b)が図9(a)のA4−A4線に沿って切断して示す断面図である。
【図10】図9に示したプラスチック製のはすば歯車をはすば歯車本体とし、このはすば歯車本体の側面に補強部材をねじ部品で締め付け固定してなる従来のはすば歯車の図である。図10(a)が従来のはすば歯車の側面図であり、図10(b)が図10(a)のA5−A5線に沿って切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るはすば歯車1を示す図である。この図1において
、図1(a)がはすば歯車1の側面図であり、図1(b)が図1(a)のA1−A1線に
沿って切断して示す断面図である。
【0017】
(はすば歯車)
この図1に示すように、はすば歯車1は、プラスチック製のはすば歯車本体2と、この
はすば歯車本体2の一方の側面3側に複数のねじ部品4(丸平子ねじ、十字穴付き丸子ね
じ、六角穴付きボルト等のねじ部品)で締め付け固定された金属製の補強部材5と、を有
している。なお、本実施形態において、ねじ部品4は、丸平子ねじを例示してあり、軸部
4aの少なくとも一端側に雄ねじが形成され、軸部4aの他端側に軸部4aよりも大径の
頭部4bが形成されている。
【0018】
(はすば歯車本体)
図1乃至図2に示すように、はすば歯車本体2は、ポリアセタールやポリカーボネート
等のプラスチックを使用して射出成形されたものである。このはすば歯車本体2は、円環
状のリム6の外周に歯7が形成された歯部8と、軸10が嵌合される軸穴11が形成され
た略円筒状のハブ12と、このハブ12の外周面12aとリム6の内周面6aとを径方向
に接続する板状のウェブ13と、を有している。
【0019】
ウェブ13は、その径方向外方端がリム6の歯幅方向略中央部に接続されており、一方
の側面3から他方の側面14まで軸芯CLに沿って貫通するねじ部品取付穴15が軸芯C
Lを中心とする円上に等間隔で3箇所形成されている。
【0020】
ウェブ13の他方の側面14側には、ねじ部品取付穴15を取り囲むように、ねじ部品
取付穴15と同心の環状溝16が形成されている。この環状溝16は、その内側周面16
aの直径がねじ部品4の頭部4bの外径と同一か又はねじ部品4の頭部4bの外径よりも
僅かに小さくなるように形成されている。また、環状溝16は、その外側周面16bの直
径がねじ部品4の頭部4bの外径寸法よりも大きくなるように形成されている。そして、
ウェブ13は、環状溝16とねじ部品取付穴15との間に円筒部17が形成されている。
【0021】
ウェブ13の一方の側面3側で、且つ、ねじ部品取付穴15の開口縁に沿った部分には
、リング状突起18が円筒状に突出している。このリング状突起18の外径寸法は、環状
溝16の内側周面16aの直径と同一寸法になっている。そして、リング状突起18の端
面18aは、はすば歯車本体2の軸芯CLに直交する仮想平面と平行の平坦面であり、補
強部材5の側面に当接するようになっている。また、リング状突起18は、はすば歯車1
による回転伝達時に歯7に作用するスラストでウェブ13が倒れを生じたとしても、補強
部材5の径方向外方端がウェブ13の一方の側面3に当接して、ウェブ13の倒れを抑え
ることができ、はすば歯車本体2の歯先円寸法の変化を抑えることができるように、一方
の側面3からの突出量が定められる。
【0022】
また、ウェブ13は、リム6の肉厚をt1とすると、リム6の内周面6aとの接続部分
(径方向外方端)の肉厚t2がt2=(1〜1.4)・t1となるように形成され、環状
溝16の溝底部16cの肉厚t3がt3=(0.35〜0.55)・t1となるように形
成されている。すなわち、ウェブ13の環状溝16の溝底部16cは、ウェブ13の他部
よりも薄肉となるように形成されている。なお、ウェブ13は、環状溝16で囲まれた部
分を除く他部が同一肉厚寸法(t2)に形成されている。また、ウェブ13の環状溝16
の溝底部16cは、使用条件(回転方向の負荷)に耐え得る剛性となるように、その肉厚
t3(環状溝16の溝深さ)が決定されている。
【0023】
ハブ12は、リム6の肉厚(t1)と同一の肉厚に形成されており、軸10の径方向外
方へ突出する回り止めピン20を収容する回り止めピン係合部21がウェブ13の一方の
側面3の径方向に沿って一対形成されている。なお、この一対の回り止めピン係合部21
,21は、軸芯CLと交差する中心線に対して線対称となるように形成されている。
【0024】
(補強部材)
図1及び図3に示すように、補強部材5は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム合金等の
金属で略円板状に形成されており、はすば歯車本体2のウェブ13の一方の側面3側であ
って、且つ、ハブ12及び回り止めピン係合部21とリム6との間の空間に嵌め込むこと
ができる形状に形成されている。すなわち、この補強部材5の外周面5aは、リム6の内
周面6aに僅かな隙間で嵌り合う寸法に形成されている。また、補強部材5の中心部には
、ハブ12の外周面及び回り止めピン係合部21の外表面に僅かな隙間で嵌り合うハブ収
容穴22が形成されている。
【0025】
また、補強部材5は、その中心軸23を中心とする円の周方向に沿って3個の雌ねじ2
4が等間隔で形成されており、ハブ12及び回り止めピン係合部21とリム6との間の空
間に収容された際に、雌ねじ24がハブ12のねじ部品取付穴15と合致するように形成
されている。
【0026】
このように形成された補強部材5は、雌ねじ24がはすば歯車本体2のウェブ13のね
じ部品取付穴15に合致するように、はすば歯車本体2のハブ12及び回り止めピン係合
部21とリム6との間の空間に嵌め込まれ、はすば歯車本体2の他方の側面14側からウ
ェブ13のねじ部品取付穴15に挿入されたねじ部品4の軸部4aの雄ねじが雌ねじ24
に螺合され、はすば歯車本体2のウェブ13の一方の側面3にねじ部品4で締め付け固定
される。
【0027】
また、補強部材5は、はすば歯車本体2のウェブ13の補強機能を有することはもちろ
んであるが、フライホイールとしても機能させることができ、はすば歯車1による回転伝
達をより一層円滑化させることが可能になる。
【0028】
ここで、補強部材5がねじ部品4によって固定されるはすば歯車本体2のウェブ13の
一方の側面3は、歯7のねじれ角の影響で生じるスラストの作用方向下流側に位置する側
面である。なお、はすば歯車本体2のウェブ13の他方の側面14は、一方の側面3に対
してスラストの作用方向上流側に位置する側面である。
【0029】
(本発明品と従来品における歯先円の測定結果)
本発明の実施の形態に係るはすば歯車1(図1参照)と従来のはすば歯車1A(図10
参照)に関し、補強部材5をはすば歯車本体2(2A)にねじ部品4で締め付け固定した
場合における歯先円寸法への影響を調べるため、歯先円を周方向に12等分した1〜12
箇所のそれぞれについて、歯7の歯幅方向一端(x1)側の歯先円半径R1と歯7の幅方
向他端(x2)側の歯先円半径R2を、はすば歯車本体2(2A)のみとはすば歯車1(
1A)とに分けて測定した(図4及び図6参照)。なお、図4が本発明の実施の形態に係
るはすば歯車本体2及びはすば歯車1(本発明品)を示しており、図6が従来のはすば歯
車本体2A及びはすば歯車1A(従来品)を示している。
【0030】
そして、本発明の実施の形態に係るはすば歯車本体2及びはすば歯車1に関し、歯幅方
向一端(x1)側の歯先円半径R1の測定結果を、図5(a)及び表1にまとめて記載し
た。また、本発明の実施の形態に係るはすば歯車本体2及びはすば歯車1に関し、歯幅方
向他端(x2)側の歯先円半径R2の測定結果を、図5(b)及び表2にまとめて記載し
た。
【0031】
また、従来のはすば歯車本体2A及びはすば歯車1Aに関し、歯幅方向一端(x1)側
の歯先円半径R1の測定結果を、図7(a)及び表3にまとめて記載した。また、従来の
はすば歯車本体2A及びはすば歯車1Aに関し、歯幅方向他端(x2)側の歯先円半径R
2の測定結果を、図7(b)及び表4にまとめて記載した。
【0032】
なお、図6及び図10に示した従来のはすば歯車1Aは、本発明の実施の形態に係るは
すば歯車1における環状溝16及びリング状突起18が形成されていない点を除き、本発
明の実施の形態に係るはすば歯車1と同一の構成であるため、本発明の実施の形態に係る
はすば歯車1の構成に対応する構成部分には同一符号を付してある。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
以上の測定結果によれば、本発明の実施の形態に係るはすば歯車本体2とはすば歯車1
における歯幅方向一端(x1)側の歯先円半径R1の差の最大値は、0.0150である
。また、本発明の実施の形態に係るはすば歯車本体2とはすば歯車1における歯幅方向他
端(x2)側の歯先円半径R2の差の最大値は、0.0139である。
【0038】
一方、従来のはすば歯車本体2Aとはすば歯車1Aにおける歯幅方向一端(x1)側の
歯先円半径R1の差の最大値は、0.0415である。また、従来のはすば歯車本体2A
とはすば歯車1Aにおける歯幅方向他端(x2)側の歯先円半径R2の差の最大値は、0
.0162である。
【0039】
すなわち、本発明の実施の形態に係るはすば歯車1は、補強部材5をはすば歯車本体2
にねじ部品4で締め付け固定した影響が歯幅方向一端(x1)側及び歯幅方向他端(x2
)側で共に従来のはすば歯車1Aよりも少なくすることができ、歯先円寸法のばらつきを
従来のはすば歯車1Aよりも小さく抑えることができる。
【0040】
(本実施形態に係るはすば歯車の作用・効果)
本実施形態のはすば歯車1は、はすば歯車本体2のウェブ13の一方の側面3側に補強
部材5がねじ部品4によって締め付け固定されると、ねじ部品4の頭部4bと補強部材5
との間に挟み込まれるウェブ13のねじ部品取付穴15の周囲部分(円筒部17、リング
状突起18等)がねじ部品4の締め付け力で変形するが、そのウェブ13のねじ部品取付
穴15の周囲部分における変形を環状溝16の溝底部16cの薄肉部分が肉厚を増す方向
に変形して吸収し、はすば歯車本体2の歯先円寸法にばらつき(歯先円寸法の設計値に対
する測定値のずれ)が生じるのを抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態のはすば歯車1は、補強部材5の側面に接触するはすば歯車本体2の
リング状突起18が環状溝16の溝底部16cに位置するウェブ13の薄肉部分を介して
ウェブ13の他部(薄肉部分よりも1.8〜2.9倍の肉厚の部分)に接続されている。
そして、本実施形態のはすば歯車1は、環状溝16の溝底部16cに位置するウェブ13
の薄肉部分が変形することにより、ウェブ13の環状溝16で取り囲まれた部分(円筒部
17、リング状突起18等)がウェブ13の他部とは別に変位することが可能となる。そ
の結果、本実施形態のはすば歯車1は、はすば歯車本体2及び補強部材5の成形精度のば
らつきや、はすば歯車本体2と補強部材5の組付け誤差(例えば、3箇所のリング状突起
18の端面18aと補強部材5の側面との当接位置のばらつき、ねじ部品取付穴15の倒
れ)を環状溝16の溝底部16cに位置するウェブ13の薄肉部分が変形して吸収し、は
すば歯車本体2の歯先円寸法にばらつきが生じるのを抑えることができる。
【0042】
このような本実施形態に係るはすば歯車1を使用して回転伝達する場合には、従来のは
すば歯車1Aを使用して回転伝達する場合に比較して、噛み合う相手歯車との噛み合い位
置のずれを小さく抑えることができ、回転伝達速度の変動を抑えることができるため、回
転伝達精度を向上させることができる。したがって、本実施形態に係るはすば歯車1は、
画像形成装置(複写機、プリンタ、FAX装置等)の画像形成部(感光体ドラム、転写ロ
ーラ等)を回転駆動するために使用されれば、従来のはすば歯車1Aが使用される場合に
比較して、印刷精度を向上させることが可能になる。
【0043】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係るはすば歯車1を示すものであり、図1(b)に対
応する図である。なお、図8に示すはすば歯車1において、図1(b)のはすば歯車1に
対応する構成部分には同一符号を付し、上述の第1実施形態の説明と重複することになる
説明を省略する。
【0044】
この図8に示した本実施形態に係るはすば歯車1は、図1(b)及び図2(b)に示し
たはすば歯車1におけるウェブ13の一方の側面3に形成されたリング状突起18に代え
、リング状突起25を補強部材5の側面に突出形成してある。このような本実施形態に係
るはすば歯車1は、上述した本発明の第1実施形態に係るはすば歯車1と同様の効果を得
ることができる。
【0045】
[変形例]
本発明の第1実施形態に係るはすば歯車1は、ウェブ13がリム6の歯幅方向略中央部
に接続される態様を例示したが、これに限られず、ウェブ13がリム6の歯幅方向一端側
寄り又は歯幅方向他端側寄りにずらして接続されるようにしてもよい。
【0046】
また、本発明の第1実施形態に係るはすば歯車1は、ウェブ13の一方の側面3にリン
グ状突起18を一体に形成する態様を例示したが、ウェブ13の一方の側面3にリング状
突起18を形成せずに、ウェブ13と補強部材5との間にリング状突起18と同程度の大
きさのスペーサをリング状突起18に代えて配置してもよい。
【0047】
また、本発明の第1実施形態に係るはすば歯車1は、アイドルギヤとして使用される場
合、円筒部17をウェブ13の他方の側面14よりも側方に僅かに出っ張らせて、ねじ部
品4の頭部4bと円筒部17の端面との間に別の新たな補強部材を挟み込んで、ウェブ1
3の両側面3,14側にそれぞれ補強部材を締め付け固定し、スラストの作用によるウェ
ブ13の変形を抑えるようにすることが好ましい。なお、このようにアイドルギヤとして
使用されるはすば歯車1は、ハブ12と軸10とを相対回動させるように構成してもよい

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るはすば歯車は、複写機やプリンタ等の画像形成装置の回転伝達機構に適用
できることはもちろんのこと、自動車や精密機械等の高精度の回転伝達が要求される回転
伝達機構に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1……はすば歯車、2……はすば歯車本体、3……一方の側面、4……ねじ部品、4a
……軸部、4b……頭部、5……補強部材、6……リム、6a……内周面、7……歯、8
……歯部、10……軸、12……ハブ、12a……外周面、13……ウェブ、14……他
方の側面、15……ねじ部品取付穴、16……環状溝、16c……溝底部、18……リン
グ状突起、18a……端面、24……雌ねじ、25……リング状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のリムの外周側に歯が形成された歯部と、軸が嵌合されるハブと、前記ハブの外
周面と前記リムの内周面を径方向に接続するウェブと、を有するプラスチック製のはすば
歯車本体と、
前記ウェブの両側面のうちの少なくとも一方の側面で、且つ、前記はすば歯車本体の回
転伝達時に作用するスラストの作用方向下流側の側面に複数のねじ部品で締め付け固定さ
れ、前記はすば歯車本体の前記ウェブが前記スラストで変形するのを抑える金属製の補強
部材と、
を備えたはすば歯車において、
前記ねじ部品は、雄ねじが形成された軸部の一端に、前記軸部よりも大径の頭部が一体
に形成されており、
前記ウェブは、前記リムの肉厚をt1とすると、前記リムとの接続部分における肉厚t
2がt2=(1〜1.4)・t1となるように形成されると共に、前記ねじ部品の前記軸
部を挿入するねじ部品取付穴が前記両側面の前記一方の側面から他方の側面まで貫通する
ように形成されており、
前記補強部材は、前記ウェブの前記他方の側面側から前記ねじ部品取付穴に挿入された
前記軸部の前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成され、前記ウェブの前記一方の側面に前記
ねじ部品によって締め付け固定されると、前記ウェブの前記ねじ部品取付穴の周囲部分を
前記ねじ部品の前記頭部との間に挟み込むようになっており、
前記ウェブのうちの前記ねじ部品取付穴の前記周囲部分を取り囲む部分には、環状溝が
前記ねじ部品取付穴と同心状に形成され、
前記ウェブのうちの前記環状溝の溝底部における肉厚が前記ウェブの他部の肉厚よりも
薄くなっている、
ことを特徴とするはすば歯車。
【請求項2】
前記ウェブの前記一方の側面側で且つ前記ねじ部品取付穴の開口縁に沿った部分が円筒
状に突出するように形成され、この円筒状に突出するように形成された部分の端面が前記
補強部材に当接するようになっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のはすば歯車。
【請求項3】
前記補強部材は、前記ウェブの前記一方の側面に対向する側面側で、且つ、前記雌ねじ
を取り囲む部分が前記ウェブの前記一方の側面に向かって円筒状に突出するように形成さ
れ、この円筒状に突出するように形成された部分の端面が前記ウェブの前記一方の側面に
当接するようになっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のはすば歯車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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