説明

ばねの表面処理方法

【課題】従来の多段ショットピーニングと同様の良好な圧縮残留応力及び表面粗さを確保しつつ、処理時間の短縮化を図ることができて、効率良く処理が行えるばねの表面処理方法を提供する。
【解決手段】複数段のショットピーニング工程により被処理材1に圧縮残留応力を付与するばねの表面処理方法において、全工程でのショットピーニングで同一種類、同一粒径の投射材2を用いるとともに、投射材2の投射速度を変化させて圧縮残留応力を付与する範囲を変更可能にするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に弁ばねやクラッチばね等の表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の弁ばね、内燃機関の動力伝達用クラッチに使用するクラッチばね等のコイルばねには、極めて高い信頼性(高疲労強度化)が要求される。コイルばねの表面強化法としては、化学的表面硬化法である窒化処理と、物理的表面硬化法であるショットピーニングの併用が一般的である。特に、ショットピーニングはコイルばねの表面付近に圧縮残留応力を与えることで疲労強度を向上させることができるため、コイルばねの耐疲労性の向上に有効である。
【0003】
ショットピーニングは、遠心(インペラー)式、又は空気(エアー)式の投射装置により、粒径が数十μmから数mm程度の投射材をコイルばねの外表面に均一に投射し、コイルばねの表面を冷間(温間)加工するものである。すなわち、投射材をコイルばねに投射することにより、全表面に均一に投射材の投射エネルギーを付加する。これにより、表面層の延展により微小な凹凸が均一に設けられて、表面層に加工硬化を起こさせたり、圧縮残留応力を付与させたりして、コイルばねの疲労強度を向上することができる。
【0004】
前記のようなショットピーニングにおいて、コイルばねの疲労強度を一層向上させるために、複数段でショットピーニングを行う、いわゆる多段ショットピーニングが知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の方法は、まず、所定粒径の投射材を所定速度でコイルばねに投射して第1ショットピーニングを行い、内部の深い位置にまで圧縮残留応力を付与する。その後、第1ショットピーニングで使用した投射材の粒径よりも小さな粒径の投射材を、所定速度でコイルばねに投射して第2ショットピーニングを行い、表面部に圧縮残留応力を付与する。このように、異なる粒径の投射材を使用してショットピーニングを2回以上実施することにより、表面の圧縮残留応力を高くすることができ、しかも内部の深い位置にまで圧縮残留応力を付与できて、コイルばねの疲労強度を向上させることができる。
【特許文献1】特開平5−177544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、多段ショットピーニングを行う場合、一種類の投射材につき1つの投射装置を使用するのが一般的であり、各段階で投射装置を変える必要がある。仮に、同一の投射装置にて異なる粒径の投射材を使用して連続的に多段ショットピーニングを行う場合、直前のショットピーニングで使用した投射材を投射装置から全て抜いて、この投射装置に別の投射材を投入する必要がある。しかしながら、投射材は非常に微細なものであるため、一旦投入した投射材を全て抜くには手間がかかり、時間的なロスとなる。
【0006】
このため、前記特許文献1に記載された方法のように、異なる粒径の投射材を使用して多段ショットピーニングを行う方法では、第1ショットピーニングを行った後、被処理材を別の投射装置に移動させて第2ショットピーニングを行う必要がある。このように、各段階で投射装置を変えることにより、被処理材を移動させる工程が増えて手間を要し、処理時間のロスに繋がっていた。特に、弁ばねやクラッチばねはバッチ処理を行うため、ショットピーニングの段階毎に投射装置を変えることは被処理材の大掛かりな移動となり、作業効率が悪いものとなる。また、複数の装置を使用する必要があるため、設置スペースが大となったり、設備投資が増えたりするという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、従来の多段ショットピーニングと同様の良好な圧縮残留応力及び表面粗さを確保しつつ、処理時間の短縮化を図ることができて効率良く処理が行えるばねの表面処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のばねの表面処理方法は、複数段のショットピーニング工程により被処理材に圧縮残留応力を付与するばねの表面処理方法において、全工程でのショットピーニングで同一種類、同一粒径の投射材を用いるとともに、前記投射材の投射速度を変化させて圧縮残留応力を付与する範囲を変更可能にするものである。ここで、「同一種類、同一粒径の投射材と用いる」とは、全工程を通して使用する投射材を変更しないことを意味する。すなわち、使用する全ての投射材の材質及び粒径を同じものとして、1種類の投射材を使用することができる。また、各投射材において粒径が相違したり、材質が相違したりして、2種類、3種類等の異なる種類の投射材を混在させてもよい。
【0009】
本発明のばねの表面処理方法によれば、全工程で同一の投射材を使用しているため、全工程で同一の投射装置を使用することができる。これにより、途中段階において被処理材を移動させることなくショットピーニングを行うことができる。しかも、投射材の投射速度を変更することにより、被処理材の所定位置に所望の圧縮残留応力を付与することができる。
【0010】
投射材の投射速度を所定間隔毎に断続ないしは連続的に減速することができる。すなわち、複数の段階でショットピーニングを行う、いわゆる多段ショットピーニングにおいて、投射材の投射速度を、直前の段階におけるショットピーニングの投射材の投射速度よりも低速で投射することができる。これにより、従来と同様、後続のショットピーニングで発生する単位面積当たりの投射エネルギーを、直前のショットピーニングで発生した単位面積当たりの投射エネルギーよりも小とすることができる。ここで、所定間隔とは任意の所定時間毎であって、ある投射速度で投射材を投射することにより所定の部位に圧縮残留応力が付与できる時間である。
【0011】
投射速度変更前後におけるショットピーニングの単位面積当たりの投射エネルギーの比の設定値を設けて、この設定値に近似するように、投射材の投射速度を設定することができる。
【0012】
ショットピーニング工程によって、被処理材を40℃〜70℃にまで上昇させて、この温度を維持しつつ後続のショットピーニングを行うことができる。これにより、各段階において、いわゆる温間ショットピーニングを行うことができる。温間ショットピーニングとは、被処理材を室温以上の温度に上昇させた状態でショットピーニングを施すことをいう。
【0013】
粒径が0.2mm以上の投射材を用いることができる。インペラー式の投射装置では、粒径0.2mmより小さな投射材を投射すると失速することがある。このため、インペラー式の投射装置を使用して、投射材の粒径を徐々に小さくする従来の多段ショットピーニングを行う場合、粒径が0.2mmの投射材を用いると、それより小さな粒径とすることができず、次の段階のショットピーニングを行うことができなかった。本発明では全工程において0.2mm以上の投射材を用いているので、インペラー式の装置装置を使用しても、投射材が失速するのを防止することができる。
【0014】
前記本発明に係るばねの表面処理方法は、バッチ処理にて製造される弁ばね又はクラッチばねに特に最適となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のばねの表面処理方法は、被処理材を移動させる工程を省略することができるため、処理時間の短縮化を図ることができて効率良く処理を行うことができる。しかも、既存の投射装置を使用することができて、コストの低減を図ることができる。さらには、良好な圧縮残留応力及び表面粗さを確保することができる。
【0016】
従来の多段ショットピーニングと同様の投射エネルギーとすることができ、従来の多段ショットピーニングと同様の良好な圧縮残留応力を確保することができる。しかも、従来の多段ショットピーニングと同様の投射エネルギーとした場合、本発明に係る方法にて処理した被処理材の表面粗さは、従来の多段ショットピーニングにて処理した被処理材の表面粗さよりも良好となる。これにより、従来の多段ショットピーニングと同様又はそれ以上の疲労強度を得ることができる。
【0017】
単位面積当たりの投射エネルギーに基づいて設定値を設け、設定値に近似するように投射材の投射速度を設定すると、所望の圧縮残留応力を得ることができる。
【0018】
各段階において温間ショットピーニングを行うことができるため、より大きな圧縮残留応力を効果的に付与することができる。
【0019】
インペラー式の投射装置を用いても失速することがないため、確実に多段ショットピーニングを施すことができる。
【0020】
前記本発明に係るばねの表面処理方法を用いると、疲労強度に優れた弁ばね又はクラッチばねを効率良く低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0022】
本発明のばねの表面処理方法を用いて製造されるばねは、例えば、弁ばねやクラッチばね等の線状の素材を螺旋形状に成形したコイルばねである。
【0023】
本発明に係るばねの表面処理方法を用いて製造したコイルばねの製造方法を説明する。まず、ばね素材(オイルテンパー線)をコイリングして被処理材としてのコイルばねを成形した後、所定時間・所定温度で加熱して応力除去焼鈍を行う。次いで、研削により座面を形成し、窒化処理を行う。その後、図2に示すように、本発明に係るばねの表面処理方法にて、被処理材1の表面へ投射材2を複数段で投射する多段ショットピーニングを行う。なお、本実施形態では、先に行われる第1ショットピーニング、及び後続の第2ショットピーニングの2段階を有する場合について説明する。
【0024】
まず、インペラー式投射装置を使用して、投射材2を被処理材1に所定時間(例えば、20分)投射して第1ショットピーニングを行う。この場合、投射材2として粒径が0.2mm以上の球形粒子(スチールショット)を使用している。インペラー式の投射装置では、粒径0.2mmより小さな投射材を投射すると失速することがあるが、本発明では全工程において0.2mm以上の投射材を用いているので、インペラー式の装置装置を使用しても投射材が失速するのを防止することができる。第1ショットピーニングは、終了時の被処理材の温度が40℃〜70℃の範囲となるように制御しつつ処理を行う。
【0025】
その後、この温度を維持したまま、連続的に投射材2を被処理材1に所定時間(例えば、20分)投射して第2ショットピーニングを行う。これにより、第2ショットピーニングは40℃〜70℃の温間ショットピーニングとすることができる。温間ショットピーニングとは、被処理材を室温以上の温度に上昇させた状態でショットピーニングを施すことをいう。
【0026】
第2ショットピーニングでは、第1ショットピーニングで使用した投射材2と同一の投射材2を使用する。すなわち、先に行われる第1ショットピーニングと、後続の第2ショットピーニングの全工程において同一の投射材2を用いている。これにより、第1ショットピーニングで使用した投射装置を、第2ショットピーニングでそのまま使用することができる。また、第2ショットピーニングでの投射材2の投射速度を、第1ショットピーニングでの投射材2の投射速度から断続的に減速させている。これにより、第2ショットピーニングで発生する単位面積当たりの投射エネルギーは、第1ショットピーニングで発生した単位面積当たりの投射エネルギーよりも小となる。そして、圧縮残留応力を付与する範囲を第1ショットピーニングよりも表面側に変更することができる。
【0027】
なお、第1ショットピーニングの単位面積当たりの投射エネルギーと、第2ショットピーニングの単位面積当たりの投射エネルギーとの比の設定値を設けて、この設定値に近似するように、第1ショットピーニングの投射材2の投射速度と第2ショットピーニングの投射材2の投射速度とを設定している。投射エネルギーは、1/2mvにて表される。従来の2段ショットピーニングにおいて、第1ショットピーニングと第2ショットピーニングとの投射材2の投射速度が一定であるとして、第2ショットピーニングで使用する投射材2の粒径rを、第1ショットピーニングで使用する投射材2の粒径Rよりも小としている。この場合、第1ショットピーニングの投射エネルギーと第2ショットピーニングの投射エネルギーとの比は、(r/R)となる。この(r/R)を設定値とする。なお、R及びrは、従来の2段ショットピーニングを行って得られたデータの中から、理想的な圧縮残留応力が得られた2段ショットピーニングを選択して、その際に使用した投射材2の粒径である。
【0028】
本実施形態では、第1ショットピーニングの単位面積当たりの投射エネルギーと第2ショットピーニングの単位面積当たりの投射エネルギーの比が(r/R)に近似するように、第1ショットピーニングの投射材2の投射速度と第2ショットピーニングの投射材2の投射速度とを設定する。すなわち、第2ショットピーニングの投射材2の投射速度をvとし、第1ショットピーニングの投射材2の投射速度をVとすると(V>v)、第1ショットピーニングの投射エネルギーと第2ショットピーニングの投射エネルギーとの比は、(v/V)である。この(v/V)が設定値(r/R)に近似するように、第1ショットピーニングの投射材2の投射速度Vと、第2ショットピーニングの投射材2の投射速度vとを設定する。
【0029】
本発明では、全工程で同一の投射材2を使用しているため、全工程で同一の投射装置を使用することができる。これにより、途中段階において、被処理材1を移動させることなくショットピーニングを行うことができるため、処理時間の短縮化を図ることができて効率良く処理を行うことができる。しかも、既存の投射装置を使用することができて、コストの低減を図ることができる。
【0030】
複数の段階でショットピーニングを行う、いわゆる多段ショットピーニングにおいて、投射材2の投射速度を、直前の段階におけるショットピーニングの投射材2の投射速度よりも低速で投射することができる。これにより、多段ショットピーニングを行う場合、従来と同様、後続のショットピーニングで発生する単位面積当たりの投射エネルギーを、直前のショットピーニングで発生した単位面積当たりの投射エネルギーよりも小とすることができる。従って、従来の多段ショットピーニングと同様の良好な圧縮残留応力を確保することができる。しかも、被処理材1の表面粗さは、従来の多段ショットピーニングにて処理した被処理材の表面粗さよりも良好となる。これにより、従来の多段ショットピーニングと同様又はそれ以上の疲労強度を得ることができる。
【0031】
単位面積当たりの投射エネルギーに基づいて設定値を設け、設定値に近似するように投射材2の投射速度を設定すると、所望の圧縮残留応力を得ることができる。
【0032】
各段階において温間ショットピーニングを行うことができるため、より大きな圧縮残留応力を効果的に付与することができる。
【0033】
インペラー式の投射装置を用いても失速することがないため、確実に多段ショットピーニングを施すことができる。
【0034】
前記本発明に係るばねの表面処理方法を用いると、疲労強度に優れた弁ばね又はクラッチばねを効率良く低コストで製造することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、多段ショットピーニングは2段ピーニングに限られず、3段以上で行ってもよい。また、投射材2の材質としては、鉄系、非鉄系等種々のものを採用でき、金属系に限らず、ガラス系、セラミック系、樹脂系等種々のものを採用することができる。投射材2の形状は、球状でなくカットワイヤであってもよい。投射材2の硬さや粒径、投射速度は、被処理材の材質や大きさに応じて適宜変更することができる。実施形態では、使用する全ての投射材2の材質及び粒径を同じものとして、1種類の投射材2を使用したが、異なる種類の投射材2を混在させてもよく、要は全工程を通して投射材2を変更しなければよい。例えば、粒径が0.4mmの投射材と0.6mmの投射材とを同じ割合で混ぜ合わせたり、材質が異なる2種類の投射材2を同じ割合で混ぜ合わせたりすることができる。投射材2の種類としては、2種類に限られず3種類、4種類、多種類とすることができる。この場合、各種の投射材2を必ずしも同じ割合で混ぜ合わせる必要はなく、特定の種類の投射材2を少数としたり、多数としたりして適宜変更することができる。また、投射エネルギーの比の設定値は、理想とする圧縮残留応力に応じて任意に設定することができる。投射装置としては、インペラー式に限られず、エアーの圧力にて投射材2を投射するエアー式のものであってもよい。この場合、エアー圧力を変えることにより、投射材2の投射速度を変更することができる。
【0036】
また、実施形態では、ショットピーニングを所定時間毎に複数の段階として、各段階で投射材2の投射速度を断続的に減速するものであったが、複数段に分けることなく、連続的に投射速度を減少させてもよい。また、各段階で一定の投射速度としたが、1つの段階で必ずしも一定速度にする必要はなく、1つの段階で徐々に速度を減速したり、1つの段階の終期において投射速度を減少させたりしてもよい。
【実施例】
【0037】
本実施例で使用したばねの線材は、弁ばね用シリコンクロム鋼線であり、これは、JIS規格のG3561をベースとした鋼材を伸線加工後オイルテンパー処理したものである。
【0038】
この弁ばね用シリコンクロム鋼線を冷間でコイリングし、線径φ3.2mm、コイル中心径φ21.2mm、有効巻数4.5巻、総巻数6.5巻、自由長53mm、ばね定数23.4N/mmのコイルばねに成形した。その後、435℃×20分の応力除去焼鈍を行い、次いで、座面を研削して被処理材を作製した。その後、被処理材に窒化処理前のデスケール処理を目的にショットピーニングを実施した。続いて窒化処理を行った後に2段ショットピーニングを施した。第1ショットピーニングは、投射材としてφ0.6、Hv550の球形粒子(スチールショット)を使用し、投射速度72m/s、処理時間20分でインペラー投射によるショットピーニングを実施した。次いで、第2段のショットピーニングを実施した。第2ショットピーニングは、第1ショットピーニングで使用した投射材と同一の投射材を使用し、投射速度60m/s、処理時間20分でインペラー投射によるショットピーニングを実施して実施品を作製した。
【0039】
また、実施品と同様の線材を用いて、実施品と同様の方法にて被処理材を作製した。その後、この被処理材に2段ショットピーニングを施した。第1ショットピーニングは、投射材としてφ0.6、Hv550の球形粒子(スチールショット)を使用し、投射速度72m/s、処理時間40分でインペラー投射によるショットピーニングを実施した。次いで、第2ショットピーニングを実施した。第2段ショットピーニングは、投射材としてφ0.4、Hv550の球形粒子(スチールショット)を使用し、投射速度72m/s、処理時間40分でインペラー投射によるショットピーニングを実施して比較品を作製した。
【0040】
このようにして作製した実施品と比較品との表面粗さを測定した結果を表1に表す。表1より、実施品の方が比較品よりもRa、Ramax、Rz、Rzmaxの全てにおいて小さい値を示している。これにより、実施品は比較品よりも表面粗さが小さい。すなわち、本発明に係る方法にて処理した被処理材の表面粗さは、従来の多段ショットピーニングにて処理した被処理材の表面粗さよりも良好であることがわかった。
【0041】
【表1】

【0042】
また、図1に実施品と比較品との圧縮残留応力を測定した結果を示す。図1より、実施品と比較品との圧縮残留応力はほぼ一致することがわかった。これにより、本発明のばねの表面処理方法は、従来の多段ショットピーニングと同様の良好な圧縮残留応力が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のばねの表面処理方法により製造した実施品と、従来のばねの表面処理方法により製造した比較品との圧縮残留応力を示すグラフ図である。
【図2】ショットピーニングの原理を示す概念図である。
【符号の説明】
【0044】
1 被処理材
2 投射材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段のショットピーニング工程により被処理材に圧縮残留応力を付与するばねの表面処理方法において、
全工程でのショットピーニングで同一種類、同一粒径の投射材を用いるとともに、前記投射材の投射速度を変化させて圧縮残留応力を付与する範囲を変更可能にすることを特徴とするばねの表面処理方法。
【請求項2】
投射材の投射速度を所定間隔毎に断続ないしは連続的に減速する請求項1のばねの表面処理方法。
【請求項3】
投射速度変更前後におけるショットピーニングの単位面積当たりの投射エネルギーの比の設定値を設けて、この設定値に近似するように、投射材の投射速度を設定する請求項1又は請求項2のばねの表面処理方法。
【請求項4】
ショットピーニング工程によって、被処理材を40℃〜70℃にまで上昇させて、この温度を維持しつつ後続のショットピーニング工程を行う請求項1〜請求項3のいずれか1項のばねの表面処理方法。
【請求項5】
粒径が0.2mm以上の投射材を用いる請求項1〜請求項4のいずれか1項のばねの表面処理方法。
【請求項6】
弁ばね又はクラッチばねに圧縮残留応力を付与する請求項1〜請求項5のいずれか1項のばねの表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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