説明

ひと続きの眼科用レンズを製造するプロセスおよびこのようなプロセスに使用されるフィルムのシート

ひと続きの眼科用レンズを製造するプロセスによれば、それぞれのレンズは、基板と、前記基板に取り取り付けられたフィルム部分(3)から成る。前記フィルム部分を機能化することによって、それぞれのレンズに特殊な特性が得られる。フィルム機能化は、前記フィルムが大きな平らなシート(2)の形態にあり、その次にそれぞれの部分が前記シートから切り出される時に実行される。良好な製造収率で経済的なレンズ製造を得るために、前記フィルム部分は、前記プロセスの最初から、それぞれのレンズがはめ込まれることを目的とするフレームのハウジングに実質的に対応する大きさを持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひと続きの眼科用レンズを製造するプロセス、およびこのようなプロセスに使用されるフィルムのシートに関わる。
【背景技術】
【0002】
現在、装用者の屈折異常を修正することを目的とする眼科用レンズは、要求される矯正を提供するのに適した形状を持った、前部および後部の表面を持つ基板から成る。この目的に対して、半仕上がりレンズブランクが、それぞれのブランクの表面の1つが最終的な形状を所有するという状態で工場において大量製造される。それぞれのブランクの他の面は、その後に、工場とレンズ販売店との間の中間の試験室において、装用者のために処方された屈折異常矯正に応じて個々に機械加工される。このような眼科用レンズの製造のための組織は、それぞれの試験室において、ブランクそれ自身の製造の際に最終的に形成される表面の湾曲に応じたいくつかのブランクのモデルの在庫を必要とする。装用者の必要に応じて、例えば耐反射性の機能のような追加の光学機能が、レンズの別個の処理の際にそれぞれのレンズに付加される。上記処置は、それらの一方または両方の面を機能的コーティングで覆うことにある。このような処理は、装用者にレンズを供給するための時間スケールを長くする。最終的に上記ブランクは、フレームにはめ込まれるレンズを得るために、装用者によって選択された一対の眼鏡のためのフレームのハウジングに対応する外形に沿って機械加工される。この目的で、眼鏡レンズブランクは、通常60mmから80mm(ミリメートル)の間の十分な直径をそれぞれ持つ。
【0003】
このような眼科用レンズ製造プロセスは、レンズに実行される追加の処理段階を必要とせずにレンズに機能を加える単純な方法が存在しない、という点で融通がきかない。さらに、それぞれの試験室で保持されるブランクの在庫は、重要で高価な管理と物流システムを必要とする。
【0004】
これらの欠点を改善しようとする試みにおいて、1つ以上の層が形成され、将来的なその装用者に必要とされる屈折異常矯正のような、ある特定の光学機能をレンズに提供する基板の形態で、それぞれのレンズを製造する、ということが提案された。これで、すべての人口の要求を満たすのに必要な様々な基板モデルの数は、大いに減少される。なぜならば、それぞれの装用者に特殊な特性のいくつかは、層の手段によって作られるからである。これらの層は、装用者の処方箋と要求される通りの追加の光学機能とに従って、要求に応じて製造される。このような機能化された層を作る1つの方法は、可変的で選択的な方法で層の異なった部分を照射することにあり、これによりレンズの表面上の異なった点の間で光学的屈折率が変えられる。しかしながら、それぞれの装用者に特殊な特性を得るためのこのような層の処理は、個別のベースの上に実行される場合に、実施するのには長期にわたる。そして多数の異なったレンズを次々に速やかに作ることを可能にしない。
【0005】
例えば基板とは独立に製造されるフィルムによる偏光パワーまたは耐反射性の機能のように、レンズにある特定の機能を提供することも知られている。そして、そのフィルムは、例えば熱接着によって基板ブランクに取り付けられ、次にその組み立て体がフレームのハウジングの大きさに機械加工される。このタイプのプロセスの1つの欠点は、基板ブランクに接着される間のフィルムが経験する変形から生ずる。実際には、接着の際に、しわ、伸び、または破れが、フィルムで起こりうる。
【0006】
さらに、レンズのに要求される光学特性を、レンズの1つの表面上に並列された多くの別個のセルの形態に作ることも知られている。それぞれのセルは、隣接するセルの間で材料を変化させることによって、レンズに要求される特性を与えるような、機能的な材料を含む。例えば、セルに異なった光学的屈折率を持つ材料を導入することによって、このようにしてレンズに光学パワーを与えることが知られている。一定の光学パワーを持ったセルを備えたレンズに対して、レンズ上の局所的に変化する材料をセル内に包含させることによって、累進多焦点レンズまたはPAL(累進付加レンズ)をこのようにして製造することも知られている。次に、レンズの光学機能は、レンズに、通常ピクセルと呼ばれる点の形態で書き込まれる。次に、フィルムが、熱的に基板に接着させられる。しかしながら、このようなプロセスでは、レンズの湾曲させられた表面上にセルを作り、そして充填する動作は、実行することが難しい。
【0007】
これらのプロセスの1つの欠点は、連続的で経済的な方法で、そして眼科的適用に適した品質のレベルで、異なったレンズを製造することにおいて困難が存在することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、上述のような欠点を持たず、また特に、ひと続きの異なったレンズを簡単に製造することを可能にする、眼科用レンズを製造するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、それぞれのフレームのハウジングにはめ込まれることを目的とするひと続きの眼科用レンズを製造するプロセスであって、それぞれのレンズが基板と前記基板に取り付けられた機能化フィルム部分とから成るようなプロセスを提供する。前記プロセスは以下の段階:
(i)それぞれのひと続きの眼科用レンズのために、以下のデータ:
・前記ンズがはめ込まれることを目的とするフレームハウジングの大きさ、および、
・前記レンズに対応する機能化フィルム部分の光学特性
を集める段階と;
(ii)前記フィルムの平らなシートにおける前記フィルム部分の配置を決定する段階であって、それぞれの部分が対応するレンズのためのフレームハウジングの大きさを実質的に持つような段階と;
(iii)少なくとも1つの機能的な材料を前記フィルムのシート中のそれぞれのフィルム部分の上に堆積(蒸着)する段階であって、前記部分が平らな形状を持ち、前記材料が、前記フィルム部分を機能化するように前記部分の光学特性を得るのに適しているような段階と、;
(iv)前記フィルムのシートから前記機能化フィルム部分を切り出す段階と、
(v)それぞれの機能化フィルム部分を、対応するレンズの基板と共に組み立てる段階と、
を有する。
【0010】
従って、本発明のプロセスによれば、それぞれの眼科用レンズの光学機能は、基板と共に組み立てられる機能化フィルム部分を使用して作られる。このようにして、本発明によって製造される多くの異なったレンズのために、同一の基板を使うことができる。従って、少数の異なった基板モデルが、非常に広範なレンズの多種多様さのための要求を満たすのに十分である。次に、これらの基板の長く続いたものが、低コストのために大量製造されうる。
【0011】
さらに、ひと続きのレンズの1つに対応する機能化フィルム部分の光学特性は、そのレンズを装用する人の屈折異常を修正するための処方箋に従って決定されうる。この場合、その特性は、処方箋に対するレンズの湾曲の縮小を相殺するように適合されうる。
【0012】
本発明によるプロセスの第1の利点は、それぞれの機能化フィルム部分を作る時に、フレームのハウジングの大きさが考慮に入れられるということである。段階(v)において基板と組み合わせられる機能化フィルム部分の大きさは、その時最小である。従って、基板が湾曲させられる時、フィルム部分によって経験された変形は減少する。その結果、段階(v)においてしわ、伸び、または破れを形成する危険性は低減する。
【0013】
「対応するレンズのためのフレームハウジングの大きさを実質的にそれぞれ持ったフィルム部分」という表現は、それぞれのフィルム部分が対応するフレームハウジングより少し、例えばハウジングの全周周りに1または数ミリメートルだけ大きくありうる、という意味に解される。このようなマージンは、特に段階(v)の後に、組み立てられたレンズへの、最終的な機械加工動作を実行することを可能にする。このマージンは、基板と共に組み立てる段階(v)の際に変形する時に起こりうる機能化フィルム部分のエッジの何らかの縮小を相殺するために有用でもありうる。しかしながら、機能化フィルム部分が一対の眼鏡のためのレンズを形成することを目的とする時、前記部分が、このレンズのための基板ブランクよりもかなりより小さいことは有利である。そしてフィルムのシートの領域の節約は、一対の眼鏡のためのフレームにおけるレンズのためのハウジングの大きさにブランクを導入するために、機械加工によって除去される基板の領域にほぼ等しい。
【0014】
本発明によるプロセスの第2の利点は、段階(iv)においてシートが細かく切断される前に、段階(iii)においてひと続きのすべてのレンズのための機能的な材料の部分がフィルムの1つ、かつ同じシートの上に堆積される、という事実から生じる。このようにして、異なったレンズに対応する機能的な材料を堆積する動作は、異なったフィルム部分上で行なわれる連続した堆積動作の間でいかなる時間も失われることなく、次々に順に実行されうる。従って、プロセスの段階(iii)は、短時間の間で非常に多数のレンズのために実行されうる。この目的のために、フレームに関連するデータは、所定のレンズの製造に割り当てられることになるそのフィルム部分を決定するために、プロセスの開始において導入されなければならない。ゆえに、本発明によるプロセスの段階(iii)の後に、フィルムのシートの機能化フィルム部分の少なくとも2つは、異なったそれぞれの大きさを持ちうる。
【0015】
同時に、フィルムのシート中のある機能化フィルム部分は、異なった光学特性を持ちうる。
【0016】
本発明によるプロセスの第3の利点は、機能的な材料部分がフィルムの前記シート上に堆積された時に、レンズに対応するそれぞれのフィルム部分の平らな形状からもたらされる。この平らな形状のお陰で、機能的な材料の部分を堆積するために、単純な装備を使うことができる。「それぞれのフィルム部分の平らな形状」という表現は、そのフィルム部分が、もしかすると堆積の時において円筒形に湾曲させられうるにもかかわらず、そのフィルム部分はフィルムの柔軟性のお陰で展開可能な形を持つことを意味する、と解される。好ましくは、フィルムのシート全部が平らな形状を持つ。言い換えれば、機能的な材料のその部分が全てのフィルム部分上に堆積される時に、それは展開可能な形を持つ。
【0017】
これらの理由により、本発明によるプロセスは、減少したコストおよび高い収率で、レンズの速やかな製造を可能にする。その一方で、レンズの眼科的適用と矛盾しない品質基準を依然として満たす。
【0018】
特に、ひと続きのある特定のレンズは、一対の眼鏡にはめ込まれることを目的とするレンズでありうる。その時、段階(i)と(ii)において機能化フィルム部分を規定するために考慮されるフレームハウジングは、一対の眼鏡のためのフレームにハウジングである。
【0019】
本発明を実行する好ましい方法によれば、段階(ii)から(iv)で使われるフィルムのシートは、大きな大きさを持つ。次に、非常に多くの数のフィルム部分が、シートから抽出されうる。そして、段階(ii)が、フィルムのシートが堆積装備にただ一度だけ通されるという状態で、これらすべての部分のために同時に実行される。
【0020】
本発明の第1の改良によれば、フィルムの平らなシート中のフィルム部分の配置は、そのシートの最大の占有を達成するように段階(ii)で決定される。そして、レンズに対応するフィルム部分の最大の数が、フィルムの同じシートから抽出されうる。所定のシートから得られるこれらのさらに多数のフィルム部分は、段階(iii)において、機能的な材料を堆積するための装備を通したシートの1回の、そして同じ行程の時に処理される。換言すれば、フィルムの所定のシートに対応するひと続きのレンズは、より長い。さらに、切断段階(iv)から生じるフィルムのシートの浪費(廃棄)部分は、従って最小である。このようにして、それぞれの製造されたレンズの原価はさらに引き下げられる。
【0021】
本発明の第2の改良によれば、ひと続きのそれぞれのレンズに対応する機能化フィルム部分の光学特性は、段階(iii)において、当該フィルム部分上に別個の、および並列された部分の形態でフィルムのシート上に機能的な材料を堆積することによって製造される。本発明を実行するこのような方法は、段階(iii)を実行するために数値制御を使うことを可能にする。さらに一般的に、段階(iii)の数値制御は、その柔軟性と機能的な材料が堆積されるのに先立つプログラミングとのお陰で、時間を浪費することなく、お互いとは異なる機能化されたフィルム部分を製造することを可能にする。このようにして、それらの将来の装用者に応じてカスタマイズされたレンズを、さらにいっそう速やかに製造することが可能である。それで、レンズを短い納期の装用者に急送することができる。このような品質のサービスの他に、段階(iii)の数値制御は、この段階の管理を単純化することによってレンズの原価を引き下げることを可能にする。
【0022】
任意選択として、このプロセスは、段階(iii)の後に、それぞれの機能化フィルム部分の1つの面の上への少なくとも1つの機能的コーティングの付加を、さらに含むことができる。このようなコーティングは、最終的なレンズに1つ以上の追加的機能を与えることを可能にする。
【0023】
本発明はまた、それぞれの部分の上に置かれた少なくとも1つの機能的な材料によって機能化された、ひと続きのフィルム部分を有する、平らで、場合によっては柔軟なフィルムのシートをも提供する。これらの部分は、眼科用レンズを形成して、レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングに対応するそれぞれの大きさを持つように、それぞれの基板と組み合わせるのに適している。上述のようなプロセスの段階(iii)の後に得られるこのようなシートは、場合によって容易に輸送されうる半仕上がり製品を構成する。
【0024】
フィルムのシート中に製造される機能化されたフィルム部分の少なくとも2つは、それぞれ、異なった大きさ、および/または、光学特性を持つことができる。
【0025】
このようなフィルムのシートの好ましい実施形態によれば、機能的な材料は、フィルム部分の上に並べられた材料の別個の部分の形態で、このシートのそれぞれの機能化フィルム部分の上に置かれる。従って、材料の機能的な部分は画素化された構造を有する。さらに、それぞれの機能化フィルム部分は、機能的な材料のそれぞれの部分がセルの中に含まれる、というような方法で、フィルムのシートによって運ばれる多くのセルに対応しうる。このような構造は、特にこれらが液体またはジェルの形態にある時に、機能的な材料の効果的な保持を提供することができる。それは、上述のように機能的な材料の部分がお互いから分離されるからである。このようにして、その機能化フィルム部分のセルの1つが破損する時でさえ、機能化フィルム部分は全体的に影響を受けず、その光学特性を維持する。さらに、隣接するセルに含まれる異なった機能的な材料は、拡散によって混合しえない。そして得られた眼科用レンズは、制限のない寿命を持つ。これを達成するために、フィルムのシートは、セルをシールするようにセルの上に配置されたシールフィルムをさらに含むことができる。好ましくは、セルをシールするためのこのようなフィルムは、フィルムの平らなシートにおける機能化フィルム部分のすべてを連続的に覆う。
【0026】
フィルムのシートは、機能化フィルム部分の少なくとも1つの面上に置かれた少なくとも1つの機能的コーティングをさらに含むことができる。このような機能的コーティングは、以下のものに限定されず単なる例としてであるが、耐反射性のコーティング、耐衝撃コーティング、耐汚染性コーティング、帯電防止コーティング、耐摩耗性コーティング、反射コーティング、偏光コーティング、光発色性コーティング、着色コーティング、または前記コーティングのいくつかの組み合わせでありうる。それは、フィルムのシート上の機能化フィルム部分のすべてを連続的に覆うことができる。機能的コーティングは、初め、非常に長い長さに製造された機能的フィルムのロールの形態で、特に安価に提供されうる。これは、段階(iii)と(iv)との間で、ロールから外され、次に機能化フィルム部分を有するフィルムの平らなシートに貼り付けられる。
【0027】
セルがシールフィルムによってシールされた時、機能的コーティングは後者(シールフィルム)によって好都合に支持されうる。機能的コーティングを持つシールフィルムは、それからフィルムのシートと独立して製造され、そして例えばすべてのセル上に強固に接着させることによってそれに付加されうる。このような方法は、機能化されたフィルム部分を製造することにおける、機能的コーティングの欠陥による不具合に帰する損失を分離することによって製造収率を改善する。
【0028】
本発明によるシートにおいて、機能化フィルム部分の少なくとも1つは、累進多焦点レンズの特性を持つことができる。この機能化フィルム部分または他のそのような部分は、対応するレンズを装用する人の視力に関与することを目的としない領域、偏光領域、着色された領域、光発色性領域、などを持つことができる。
【0029】
本発明は、上述のようなフィルムのシートを切り出すことによって得られた平らな機能化フィルム部分をも提供する。
【0030】
最終的に本発明は、本発明による製造プロセスによって得られた眼科用レンズを提供する。
【0031】
本発明の他の特徴と利点は、添付された図面を参照した、限定的でない模範的な実施形態の以下の記載において明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による眼科用レンズの製造における各段階を示すフローチャートである。
【図2a】平面図による眼科用レンズブランクを示す。
【図2b】断面図による眼科用レンズブランクを示す。
【図2c】図2aおよび図2bのブランクから切り出されたレンズを示す。
【図3】フィルムのシートにおけるそれぞれのレンズに対応するフィルム部分の配置を示す。
【図4】セルがシールされる前の機能化フィルム部分の断面図である。
【図5】機能化フィルム部分のセルをシールする段階を示す。
【図6】本発明によるプロセスによって得られる眼科用レンズの断面図である。
【図7】転送フィルムに固定された機能化フィルム部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図2〜図7の明確さのために、示された種々の要素の大きさは実際の大きさおよび大きさの比率に比例していない。さらに、異なる図に対する同一の参照番号は同一の要素を意味する。
【0034】
以下に続く記載では、当業者に知られている製造段階を詳細には記載しないが、どちらかと言えば、本発明を再現することを可能にするのに十分な指針のみを与えることになる。さらに、本明細書の記載を通じて、本発明によるプロセスの段階を意味する数字の参照は、図1に関連する。
【0035】
本発明による眼科用レンズの製造は、主に2つの要素を必要とする:それは、レンズ基板と、上記基板の1つの面に配置されることを目的とする機能化フィルム部分と、である。将来それを装用する人に応じた最終的なレンズのすべての特性、または多数のこれらの特性が、機能化フィルム部分によって提供されるならば、基板は、多数の眼科用レンズに共通なモデルでありうる。機能化フィルム部分によって提供される特徴は、特に屈折異常矯正特性、レンズをはめ込むことを目的とするフレームに関する幾何学的特性、あるいはレンズの特定の注文に特有の他の特性、を有することができる。換言すれば、顧客によって要求されるすべてのレンズの特性を予め知って機能化フィルム部分を作ることが好ましいのであるが、レンズの基板は、顧客によるレンズの注文が受け入れられる前に製造されうる。
【0036】
図2aおよび図2bに示されるように、基板1は、初め、S1で示される凸形前面とS2で示される凹形後面とを持ったブランクの形態でありうる。面S1およびS2は、それらが自らレンズに光学パワーを与えないように互いに平行でありうる。その代わりに、それらは、初めにレンズにある特定の基本特性を与えるよう選ばれうる。この場合、それらの基本特性は、機能化フィルム部分によって提供された特性と共に組み合わせられることになる。基板1は、一対の眼鏡のための何らかのフレームにおけるレンズハウジングの大きさに機械加工するのに十分な、例えば80mm(メートル)の直径を持つことができる。機械加工された外形は図2a中でCによって示され、そして図2cは、フレームのハウジングの大きさに機械加工された基板1を示す。
【0037】
基板1は、基板が機能化フィルム部分と共に組み立てられる前に、あるいはそのような組み立ての後に、フレームのハウジングの大きさに機械加工されうる。このような組み立ての後でフレームの大きさに基板を機械加工することは、有利でありうる。それによって組み立て装備内で基板を保持することを容易にする。
【0038】
基板1は、何らかの透明な材料、特に、現在既に眼科用レンズを作るために使われている、有機材料、無機材料、または複合材料から作られうる。任意選択で、基板1は、例えばコントラスト向上または日光からの保護機能を得るための着色材料またはフィルター材料から作られうる。それはまた、光電池を含む、あるいは特定のレンズの製造を目的とする他の特徴を持った光発色性材料から作られうる。
【0039】
プロセスは、その将来の装用者によって要求される最終的なレンズの特性を集めることから始まる(段階100)。これらの特性は、例えば、装用者が眼鏡屋の店でレンズを注文している時に集めることができる。それらは、一方では、内部にレンズをはめ込むことを目的とするフレームの、顧客によって選択されるフレームに応じたハウジングの大きさを、他方では、レンズの光学特性を、有する。前出のそれらの光学特性、および基板データに応じて、基板に貼り付けられることになる機能化フィルム部分の光学特性が決定され、それにより最終的なレンズの光学特性が得られる。
【0040】
機能化フィルム部分の光学特性は、特に、以下:
・装用者の屈折異常を修正するための特性;
・フレームハウジングに対する、累進多焦点レンズまたはPALの特性の配置のデータ;
・フレームハウジングに対する、レンズに組み入れられるロゴまたはミニチュアの光電池のような、レンズの少なくとも1つの不透明な領域の配置のデータ;
・フレームハウジングに対する、レンズの少なくとも1つの偏光領域の配置のデータ;
・フレームハウジングに対する、機能化フィルム部分の少なくとも1つの着色領域の配置のデータ;および/または、
・フレームハウジングに対する、機能化フィルム部分の少なくとも1つの光発色性領域の配置のデータ
を有することができる。
【0041】
機能化フィルム部分の機能が大きな屈折異常矯正である時、この部分は、モールディングおよび機械加工によって作られた同じパワー(屈折力)のレンズに対する基板の湾曲の縮小を相殺するように、さらに適合されうる。この目的のために、より少なく湾曲させられた基板の使用に起因して光学収差と歪曲収差を減らすように、光学非球面性の特性が機能化フィルム部分に付与されなければならない。このようにして、基板は、正の光学パワーのために中心において、あるいは負の光学パワーのために周囲において、より薄い厚さを持ちうる。その時レンズは一層明るく、そしてより装用するのに快適である。さらに、基板の湾曲の縮小は、機能化フィルム部分が基板と共に組み合わせられる時に、生成されたその機能化フィルム部分の変形をも減少させる。
【0042】
プロセスの段階200は、製造される眼科用レンズに対応するシートの部分において機能化されることを目的とする透明なフィルムのシートを得ることにある。プロセスの1つ、かつ同じ実施において多数のレンズを製造するために、シートは、小さく切断される時、フレーム中にはめ込まれるそれぞれのレンズの大きさに多数のフィルム部分を提供するのに十分な大きさを持つ。特にこの理由のために、フィルムのシートの大きさは、好ましくは320mm×380mmに等しいかそれ以上である。
【0043】
フィルムのシートは、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのような何らかの透明な材料から作られうる。それは平らであって、柔軟であるように適切な厚さを持ち、場合によっては室温において円筒(シリンダー)状に湾曲させることが可能であるべきであり、また、局所的に(平面状に)非展開可能な形状を与えるように、それを加熱することによって変形させることが可能であるべきである。しかしながら、室温において、フィルムのシートは、機能化フィルム部分が切り出されるまで展開可能な形状を依然として持つ。例えば、フィルムのシートは、10μm(ミクロン)から200μmの間の厚さを持つことができる。
【0044】
製造されるフィルム部分の、与えられるひと続きのレンズに対応することになる、フィルムのシートにおける配置が、次に決定される(段階300)。引き続いてこれらの部分は、シートから切り出すことによって得られることになる。所定のフィルムのシートによってより多くの数のレンズを製造するために、眼鏡フレームのレンズの位置の大きさと等しいか、または少し大きな大きさを持ったフィルム部分が使われる。これはフィルムの浪費を回避する。その浪費は、図2aおよび図2cによって示された機械加工動作の際に、対応するブランクに対するレンズの領域の縮小に対応する。
【0045】
例えば、320mm×380mmと測定されたフィルムのシートから、基板ブランクに対応する、直径80mmの円盤の形態でそれぞれ12個のフィルム部分を、切断時に得ることが可能である一方で、35mm×50mmと測定される矩形中にそれぞれ存在する63個のフィルム部分と、30mm×40mmと測定される矩形中にそれぞれ存在する90個のフィルム部分とを得ることが可能である。加えて、一層密に相互配置されるようにシートの面内の部分を回転させることによって、所定のシートから得られるフィルム部分の数を増やすことがさらに可能である。フィルムの平らなシートにおけるフィルム部分のこのような配置は数値的に決定されうる。これをなすために多くアルゴリズムを使うことができ、それらのいくつかは、いくつかの可能な配置をシミュレートすることによって、および、それらからフィルムのシートの最大の占有に対応するものを選択することによって、反復手順を実行する。
【0046】
図3は最適化された配置を再現している。この図では、参照番号2および3が、フィルムの非切断シートと製造の際の眼科用レンズに対応するフィルム部分を、それぞれ意味する。
【0047】
その次に、それぞれの部分3の全面にわたって、並列されたセルのアレイがシート2上に形成される(段階400)。この目的のために、リソグラフ法を使うことができ、それによってリソグラフィレジストの層が全部の平らなシートの上に堆積され、次に、特定の場所に照射がなされ、そして照射された場所に対して選択的に溶解がなされる。そしてセルを互いに分離する壁のアレイが作られる。任意選択で、リソグラフィレジストは、インクジェットヘッドタイプの材料−ジェットヘッドを使って、またヘッドでシート表面を走査することによってシート上に堆積されうる。この目的のために、材料−ジェットヘッドはステッパーモーターを使ってシート2を超えて動かされうる。任意選択で、セルの形状は、それぞれの部分3の光学機能に応じて、一部分の範囲内において、または一部分から他の部分へと局所的に変化できる。レジストの消費を減らために、それ(レジスト)は部分3の範囲内のみのシート2上に堆積されうる。レジストの照射、また任意選択的にその堆積は、好都合に数値的に制御されうる。任意選択で、リソグラフィマスクを照射のために使うことができる。図4は、この時フィルム2のシート上で得られた構造を示す。この構造は、壁5によって分離されたセル4を有する。セル4は、それぞれのフィルム部分3において何らかのパターン(すなわち三角形、正方形、六角形、または任意のパターンでさえも)のアレイを形成することができる。
【0048】
フィルム2に垂直に測定される壁5の高さは、いくらかの値を持ちうる。例えば、それは約10μmに等しくありうる。シート2に平行に測定される壁5の厚さは、セル4によってそれぞれの部分を満たすために、95%を超える、あるいは98%さえも超える充填率を得るように調整される。このようにして、最終的なレンズ上にフィルム部分によって付与された光学機能は、高い振幅(大きさ)を持つことができる。
【0049】
次に、機能的な材料6の部分はセル4の中に堆積される(段階500)。セル4は、機能的な材料6のそれぞれの部分が、フィルム2のシートに平行に測定して1μmから500μmの間、あるいは好ましくは5μmから200μmの間の大きさを持つような大きさとされる。それぞれのセル4に堆積される機能的な材料は、最終的なレンズに要求される光学機能を得るように選択される。例えば、基板に光学パワーを与えるために、光学的屈折率の可変的な値を持つ透明な材料がセル4に導入される。この目的のために、極端な屈折率の値を持った2つの成分の材料を混合することによって、それぞれのセル4に導入される機能的な材料を形成すること、また1つのセルから他のセルへとそれぞれの成分の割合を変えることは、有利でありうる。フィルム部分に必要とされる屈折率分布を決定して、光学パワーまたは特定の累進多焦点レンズの設計を与えるために、当業者に知られている文献を参照することができる。
【0050】
それぞれのセル4に導入される機能的な材料6の部分はまた、最終的なレンズに局所的に着色するように1つ以上の染料を含むこともできる。隣接するセル4における染料の濃度を変えることによって、グラデーションまたは色彩度の変化を得ることができる。
【0051】
好都合に、機能的な材料6の部分は、堆積装備を介してフィルム2の全シートの一回の行程(パス)でセル4に堆積される。機能的な材料6の部分は、シート2と同じ行程(パス)の際に、製造されるひと続きのレンズに対応するすべてのフィルム部分3に堆積される。好ましくは、機能的な材料を堆積するこの段階は、ひと続きのレンズのために製造されるべき部分3のすべての特徴に従い、並行して、予めプログラムすることが可能なように、数値的に制御される。プロセスのこの段階の実行はその結果速やかとなる。
【0052】
機能的な材料6の部分を堆積するこの段階のために、シート2が平らな形状を持つこと、あるいは場合によって円柱状に湾曲させられた形状を持つことは、その全面を走査するように、堆積ヘッドを、シート2を超えて移動させるようにする単純化された堆積装備を使うことができるので、大いに有利である。堆積ヘッドがセル4の上を通過する時、それは内部に機能的な材料の部分を堆積するように作動する。セル4に機能的な材料6の部分を堆積するために、特に材料−ジェット印刷ヘッドが使われうる。部分6が2種以上の成分の混合物から成る時、この混合物は、各成分のそれぞれの適切な量を内部に堆積することによって対応するセル4中で直接作られうる。これを行なうために、材料−ジェットヘッド内の2種以上の口が、機能的な材料の成分を供給するためにそれぞれの槽に接続される。
【0053】
多くの変形が、今説明してきた機能化されたフィルム部分を製造するプロセスに導入されうる、ということが理解されるべきである。例えば、フィルム2のシートは、その全面上にすでに形成されたセル4のアレイを、段階200において提供されうる。その時、部分3の間に不必要なセルを残して、シート2の全面上に部分3を配列することが可能である。
【0054】
セルがフィルム2のシート上に予め存在することを必要とせずに、機能的な材料6の固体の部分、または十分な粘性を持った液体の形態の部分を堆積することも可能である。この場合、透明な封止物質が部分6の上部に、保護および固定するために好都合に堆積される。
【0055】
機能的な材料6の部分がセル4に堆積されることが完了した時、その後にセルを密封シールすることが有利である(段階600と700)。この目的のために、シールフィルム7がセルに貼り付けられ、それによってそれが壁5の上部に付着する。このようなフィルムは透明であって、またシート2のケースで上述した成分の1つを持つことができる。それは、セル4に直面している側でシート2に貼り付けることをより容易にするために、柔軟となるよう適切な厚さを持つ。それは、初めはロールの形態で得ることができ、フィルム2のシートの大きさに応じてそれは供給されうる。シールフィルム7は、壁5の上部に接着または加熱シールされる。1つの特に有利な選択によれば、シールフィルム7は、例えばラミネーションによって、連続した方法でシート2上の機能化されたフィルム部分3のすべてを覆うように、シート2の全面に同時に貼り付けられる。このようなシールフィルムの貼り付けは、部分3がシート2から個々に切り出される前に大領域上で実行され、特に速やかになされ、均一でありうる。
【0056】
任意選択で、シールフィルム7は、このフィルムの、セル4に貼り付けられる面とは反対側の上に、1つ以上の機能的コーティング8a−8cを運ぶことができる。機能的コーティング8a−8cは、それぞれ、耐衝撃コーティング、耐反射性のコーティング、および耐汚染性コーティングでありうる。図5において、参照符号10は、この明細書で記載されることになる本発明の実施形態に関して、それぞれの機能化フィルム部分3がここで持つような構造を意味する。
【0057】
フィルム7には、任意選択の機能的コーティング8a−8cと共に、セル4に対して貼り付けられることを目的とするのとは反対側の面に、さらに剥離可能な保護フィルム8dが提供される。任意選択的なこのようなフィルムは、フィルム7が使われる前、およびその後にコーティング8a−8cを保護する。これは、レンズを製造するプロセスの終わりに、あるいはレンズが一対の眼鏡フレームにはめ込まれた後にでさえも、取り除くことができる。それは、シールフィルム7の外面が、または存在する場合の機能的コーティング8a−8cが、うっかり汚されたり、または引っかかれることから保護されるようにすることを可能にする。
【0058】
シールフィルム7で任意選択で覆われた機能化フィルム部分3は、次に、例えばレーザー切断装備を使ってシート2から個々に切り出される(段階800)。その次に、それぞれの部分3は、それの1つの面上に何らかの不意の引っかき傷を作らないように、例えば吸引装置を使って慎重に扱われる。
【0059】
最終的に、それぞれの機能化フィルム部分3は、基板1と共に組み合わせられる(段階900と1000)。プロセスのこの時点では、それぞれの部分3が依然平らな形状を持っており、さらに、部分3を受けることを目的とする基板1の表面は、凹形または凸形のいずれかに湾曲させられうる。特に、基板1のこの表面は、(曲面から平面へと)展開可能でないようにできる。次に部分3は、その部分を変形する間にその面に貼り付けられる。知られているように、湾曲させられたサポート(支持体)に貼り付けられる時の平らな部分に経験される変形は、ほぼ(h/2R)に等しい。ここで、hはそれの中心に対する平らな部分の半径であり、Rはサポートの曲率半径である。従って、それぞれの機能化フィルム部分3によって経験される、基板1に貼り付けられる時の変形が小さくなればなるほど、部分3の領域はより小さくなる。このさらなる理由のために、機械加工されたレンズのおよその大きさをすでに持った部分3を基板1上に移す(転送する)ことは特に有利である。例を与えると、変形(h/2R)は、80mmの直径のフィルムディスクの場合で約4%であり、そして、50mm×35mmと測定される矩形の中に存在するフレームハウジングの形態の部分の場合に2.3%を下回る。
【0060】
それぞれの機能化フィルム部分3を対応する基板1に貼り付けるために、既に知られている貼り付け方法の1つを使うことができる。この貼り付けの際に、部分3は、場合によって、前記部分の大きさに小さな変化を起し勝ちな引っ張りを経験しうる。この場合、部分3の大きさのこれらの変化は、完全に部分3によって覆われるハウジングの大きさを持ったレンズを最終的に得るために、フレームハウジングの大きさに対して、初めに考慮に入れられうる。図6はこのようにして得られた眼科用レンズを示し、それは20と参照される。
【0061】
部分3を基板1と共に組み合わせる方法は、変形する時に、機能化フィルム部分3によって経験された応力を減らすように選択されうる。特に部分3は、基板1と共に組み合わせられる時点で変形しうる、転送フィルムによって運ばれうる。上記部分は、例えばフィルム7と同じ側で、転送フィルムに接着させられうる。そしてそれは、転送フィルムと同時に変形する。図7では、転送フィルム30は、破線を重ねることによって表すように基板1より大きいか、あるいは基板ブランクより大きい。従ってそれは、基板1に対しフィルム30を貼り付けることによって変形する間において強固に維持されうる。このようにして、セル4のアレイによって経験される応力は、部分3の変形に関わらず、壁5が押し潰されたり、損傷を与えられたりしないように減少する。転送フィルム30は、次に、剥離することによって個別に、またはフィルム8dと同時に、レンズ20から除去される。フィルム30の除去は、機能化フィルム部分3の、および任意選択の機能的コーティング8a−8cの、一時的な保護をフィルム30がなすように、レンズ20を製造するプロセスの終わりまで遅らされうる。
【0062】
特に有利な動作の方法の1つによれば、フィルム2のシートは、段階100において、粘着性のフィルム9aと剥離可能な保護フィルムまたはライナー9bとを提供される(図4および図5参照)。粘着性のフィルム9aと剥離可能なライナー9bは、機能的な材料6の各部分を受け取ることを目的とするのとは反対側においてシート2のその面によって運ばれる。粘着性のフィルム9とライナー9bは、段階800においてフィルム部分3と同時に切断される。部分3をサポート(支持体)1と共に組み合わせる段階1000の際に、剥離可能なライナー9bがまず除去され、そして次に部分3は、粘着性のフィルム9aを有するその面によって基板1に対して貼り付けられる。
【0063】
レンズ20、すなわち上部に接着された部分3と、そして任意選択による転送フィルム30とを備えた基板1は、次にその最終的な外形に機械加工され、目的とされるフレームにはめ込まれうる。
【0064】
もちろん、上記で詳述し本発明を実施する方法は、単に例示的なものとして与えられたものである。この実施の方法の多くの修正が導入でき、しかし依然として本発明の利点の少なくともいくつかを維持される。特に、機能的な材料を堆積するための単一の工程(パス)でひと続きの眼科用レンズを作るために使われるフィルム2のシートの大きさは、増やすことができる。その時、さらに多くの数のレンズを並行して製造することができる。
【0065】
本技術分野の当業者自身が、本発明による眼科用レンズ製造プロセスの経済的および商業的利点を正当に評価するであろう。特に、この方法で製造できるレンズの多種多様性は、使用される機能的な材料に応じて無制限である。これらの材料は、屈折率を変化させることができ、それらは色を変化させることができ、あるいは適切な刺激に応えて可逆的に変化する特性さえも所有させることができる。換言すれば、このような製造プロセスは、受動的な眼科用レンズと、「スマートグラス(smart glass)とも称される能動的なレンズの両方を製造するために使うことができる。
【0066】
装用者によ応じてカスタマイズされたレンズのためのすべての注文は、試験室において受けることができる。その次にこれらは、フィルムの平らなシートの領域の最大使用を可能にするひと続きのレンズを形成するように、コンピュータによって一貫したスケジュールを決められる。次に、それぞれのフィルム部分が、セルの構造を変えることによって、またはその中に堆積される機能的な材料を変えることによって、カスタマイズされた特性に従って作られる。
【0067】
最後に、本発明によるプロセスは、一対の眼鏡のためのものとは別のフレームにはめ込むことを目的とする眼科用レンズを作るためにも使うことができる。それは、スポーツマスクまたは保護マスク、ヘルメットサイト(helmet sight)、またはキャビンウインドウグラス(cabin window glass)などのためのグラスを形成することができる。人間の視力のために意図されるこのようなグラスは、フィルム2の1つ、かつ同じシートの中のそれぞれの機能化フィルム部分と組み合わせることによって、複数対の眼鏡のためのレンズと同時に、容易に製造できる。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 シート
3 機能化フィルム部分
4 セル
5 壁
6 材料
7 シールフィルム
8a−8c 機能的コーティング
8d 保護フィルム
9a フィルム
9b ライナー
10 構造
20 レンズ
30 転送フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれのフレームのハウジングにはめ込まれることを目的とするひと続きの眼科用レンズ(20)を製造するプロセスであって、それぞれのレンズが基板(1)と前記基板に取り付けられた機能化フィルム部分(3)とから成り、前記プロセスは以下の段階:
(i)それぞれのひと続きの眼科用レンズのために、以下のデータ:
・前記レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングの大きさ、および、
・前記レンズに対応する機能化フィルム部分の光学特性
を集める段階と;
(ii)前記フィルム(2)の平らなシートにおける前記フィルム部分(3)の配置を決定する段階であって、それぞれの部分が対応するレンズのためのフレームハウジングの大きさを実質的に持つような段階と;
(iii)少なくとも1つの機能的な材料(6)を前記フィルム(2)のシート中のそれぞれのフィルム部分(3)の上に堆積する段階であって、前記部分が平らな形状を持ち、前記材料が、前記フィルム部分を機能化するように前記部分の光学特性を得るのに適しているような段階と、;
(iv)前記フィルムのシートから前記機能化フィルム部分(3)を切り出す段階と、
(v)それぞれの機能化フィルム部分(3)を、対応するレンズ(1)の基板と共に組み立てる段階と、
を有することを特徴とするプロセス。
【請求項2】
段階(iii)の後に、フィルム(2)のシート中の機能化フィルム部分(3)の少なくとも2つが、異なったそれぞれの大きさおよび/または光学特性を持つことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
段階(ii)から(iv)に使われるフィルム(2)のシートは、320mm×380mmに等しいか、それを超える大きさを持つことを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ひと続きのレンズの少なくとも1つに対応するフレームハウジングは、一対の眼鏡のためのフレームにおけるハウジングであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
ひと続きのレンズの少なくとも1つに対応する機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記レンズを装用する人の屈折異常を修正するための処方箋に従って決定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
処方箋に従って決定された機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記処方箋に対するレンズの湾曲の縮小を相殺するために適合させられることを特徴とする請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
段階(ii)において、フィルム(2)の平らなシート中のフィルム部分(3)の配置は、前記シートの最大の占有を達成するように数値的に決定されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
フィルム(2)の平らなシート中のフィルム部分(3)の配置は、前記部分によるフィルムのシートの最大の占有に対応する、いくつかの可能な配置をシミュレートすることによって、および前記可能な配置の1つを選択することによって、反復して決定されることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ひと続きのレンズの少なくとも1つの基板(1)は、湾曲させられた表面(S1)を持ち、対応する機能化フィルム部分(3)は、前記機能化フィルム部分を変形する間に、段階(v)において前記湾曲させられた表面に貼り付けられることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記基板(S1)の湾曲させられた表面は展開可能でないことを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記機能化フィルム部分(3)は、前記機能化フィルム部分が段階(v)において対応するレンズ基板(1)と組み立てられる時に変形しうる転送フィルム(30)によって運ばれることを特徴とする請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
変形可能な前記転送フィルム(30)は、機能化フィルム部分(3)を一時的に保護するのに適しており、その次に剥がされることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
段階(iii)の実行は、数値的に制御されることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
ひと続きのそれぞれのレンズのために、対応する機能化フィルム部分(3)の光学特性は、段階(iii)において、フィルム(2)の平らなシートの上に、前記フィルム部分上に別個の、および並列された部分の形態で前記少なくとも1つの機能的な材料(6)を堆積することによって、作られることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記機能的な材料(6)の部分は、材料−ジェット印刷ヘッドを使ってフィルム(2)のシート上に堆積されることを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記機能的な材料(6)のそれぞれの部分は、フィルムのシートに平行に測定された1μmから500μmの間の大きさを有することを特徴とする請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記機能的な材料(6)の部分は、フィルム(2)のシート上で、フィルムの前記シート上に予め形成されたそれぞれのセル(4)の中に堆積されることを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記セル(4)は、リソグラフ法を使ってフィルム(2)の平らなシートの上に形成されることを特徴とする請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
セルに密封シールする段階をさらに含み、それは段階(iii)と(v)の間に実行されることを特徴とする請求項17または18に記載のプロセス。
【請求項20】
段階(iii)の後に、それぞれの機能化フィルム部分(3)の面上への、少なくとも1つの機能的コーティング(8a−8c)の付加をさらに含むことを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記機能的コーティング(8a−8c)は、フィルム(2)の平らなシートの上において機能化フィルム部分(3)のすべてを連続的に覆うように、段階(iv)の前に付加されることを特徴とする請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記機能的コーティング(8a−8c)は、耐反射性のコーティング、耐衝撃コーティング、耐汚染性コーティング、帯電防止コーティング、耐摩耗性コーティング、反射コーティング、偏光コーティング、光発色性コーティング、着色コーティング、または前記コーティングのいくつかの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記機能的コーティング(8a−8c)はシールフィルム(7)によって運ばれ、前記シールフィルム(7)は、前記セルを密封シールするようにセル(4)に貼り付けられることを特徴とする請求項19と共に請求項20から22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記機能的コーティング(8a−8c)は、初めに機能的フィルムのロールの形態で提供され、前記機能的フィルムはロールから外され、その次に段階(iii)と(iv)の間で、機能化フィルム部分(3)を有するフィルム(2)の平らなシートに貼り付けられることを特徴とする請求項20から23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
ひと続きのレンズの1つに対応する機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングに対して、それを配置する累進多焦点レンズの特性のための配置データを有することを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
ひと続きのレンズの1つに対応する機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングに対して、レンズの不透明な領域を配置するためのデータを有することを特徴とする請求項1から25のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
ひと続きのレンズの1つに対応する機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングに対して、レンズの偏光領域を配置するためのデータを有することを特徴とする請求項1から26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項28】
ひと続きのレンズの1つに対応する機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングに対して、前記機能化フィルム部分の着色された領域を配置するためのデータを有することを特徴とする請求項1から27のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項29】
ひと続きのレンズの1つに対応する機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングに対して、前記機能化フィルム部分の光発色性領域を配置するためのデータを有することを特徴とする請求項1から28のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
少なくとも1つの機能的な材料(6)によって機能化されたひと続きのフィルム部分(3)を有する、平らな、および場合によって柔軟な、フィルム(2)のシートであって、前記機能的な材料(6)がそれぞれのフィルム部分の上に配置され、前記部分が、眼科用レンズ(20)を形成するようにそれぞれの基板(1)と組み合わせるのに適しており、また前記部分が、前記レンズをはめ込むことを目的とするフレームハウジングに概ね対応するそれぞれの大きさを持つことを特徴とするシート。
【請求項31】
前記機能化フィルム部分(3)の少なくとも2つは、異なったそれぞれの大きさおよび/または光学特性を持つことを特徴とする請求項30に記載のシート。
【請求項32】
320mm×380mmに等しいか、それを超える大きさを持つことを特徴とする請求項30または31に記載のシート。
【請求項33】
前記機能化フィルム部分(3)の少なくとも1つは、それのフレームに、前記フィルム部分に対応するレンズをはめ込むことを目的とする、一対の眼鏡のためのフレームのハウジングに概ね対応する大きさを持つことを特徴とする請求項30から32のいずれか1項に記載のシート。
【請求項34】
前記機能化フィルム部分(3)の少なくとも1つは、前記フィルム部分に対応するレンズを装用する人の屈折異常を修正するための処方箋に対応する光学特性を持つことを特徴とする請求項30から33のいずれか1項に記載のシート。
【請求項35】
前記処方箋に従って決定された前記機能化フィルム部分(3)の光学特性は、前記処方箋に対してレンズの湾曲の縮小を相殺するように適合させられることを特徴とする請求項34に記載のシート。
【請求項36】
前記機能的な材料(6)は、前記フィルム部分上に別個の、および並列された部分の形態で、それぞれの機能化フィルム部分(3)の上に配置されることを特徴とする請求項30から35のいずれか1項に記載のシート。
【請求項37】
前記機能的な材料(6)のそれぞれの部分は、フィルムのシートに平行に測定された1μmから500μmの間の大きさを持つことを特徴とする請求項36に記載のシート。
【請求項38】
機能化フィルム部分(3)にそれぞれ対応するセル(4)のグループを有し、それぞれのセルが機能的な材料(6)の一部分を含んでいることを特徴とする請求項36または37に記載のシート。
【請求項39】
前記セルの上に配置されたセル(4)をシールするためのフィルム(7)をさらに含むことを特徴とする請求項38に記載のシート。
【請求項40】
前記セルをシールするためのフィルム(7)は、フィルム(2)の平らなシートにおける機能化フィルム部分(3)のすべてを連続的に覆うことを特徴とする請求項39に記載のシート。
【請求項41】
少なくとも1つの機能化フィルム部分(3)の面上に配置された、少なくとも1つの機能的コーティング(8a−8c)をさらに含むことを特徴とする請求項30から40のいずれか1項に記載のシート。
【請求項42】
前記機能的コーティング(8a−8c)は、フィルム(2)の平らなシートの上において機能化フィルム部分(3)のすべてを連続的に覆うことを特徴とする請求項41に記載のシート。
【請求項43】
前記機能的コーティング(8a−8c)は、前記セルをシールするためのフィルム(7)によって運ばれることを特徴とする請求項39または40と共に請求項41または42に記載のシート。
【請求項44】
前記機能的コーティング(8a−8c)は、耐反射性のコーティング、耐衝撃コーティング、耐汚染性コーティング、帯電防止コーティング、耐摩耗性コーティング、反射コーティング、偏光コーティング、光発色性コーティング、着色コーティング、または前記コーティングのいくつかの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項41から43のいずれか1項に記載のシート。
【請求項45】
前記機能化フィルム部分(3)の少なくとも1つは累進多焦点レンズ特性を持つことを特徴とする請求項30から44のいずれか1項に記載のシート。
【請求項46】
前記機能化フィルム部分の少なくとも1つ(3)は、対応するレンズを装用する人の視力に関与することを目的としない領域、偏光領域、着色された領域、および/または、光発色性領域を持つことを特徴とする30から45のいずれか1項に記載のシート。
【請求項47】
請求項1から29のいずれか1項に記載のプロセスの段階(i)から(iii)を実行することによって得られたことを特徴とする、請求項30から46のいずれか1項に記載のシート。
【請求項48】
請求項1から29のいずれか1項に記載のプロセスの段階(i)から(iv)を実行することによって得られた平らな機能化フィルム部分(3)。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−508552(P2010−508552A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535058(P2009−535058)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061518
【国際公開番号】WO2008/052935
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(505425373)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラレ ドプテイク) (74)
【Fターム(参考)】