説明

ふりかけの製造方法

【課題】食感がソフトで口溶けが良いふりかけを提供することを目的とする。
【解決手段】食品素材、セルロース及び賦形剤を含有する混合液を乾燥し、粉砕することを特徴とする鱗片状のふりかけの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふりかけの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ふりかけなどの調味食品は、粉末状、顆粒状、チップ状など各種形態で供給されており、魚粉、卵粉、ゴマ、海藻類、調味料、その他の香辛料を加えて製造した長期保存が可能なドライタイプのふりかけもよく知られている。
しかし、ドライタイプのふりかけは、その形状が粉末状であると見栄えが悪く、また顆粒状やチップ状では食感が硬く、口溶けが悪いという問題があった。
【0003】
ふりかけの食感を改善するための従来技術としては、粉末化したひじきを水に調味料を加えてなる調味料液に入れ、これをドラムドライヤーにおける加熱ドラムの外面に薄膜状に付着させ、乾燥後、該加熱ドラムから掻き取り、粉砕することにより鱗片状のひじきふりかけを得るようにしたことを特徴とするひじきふりかけの製造方法(特許文献1)、粒径0.25〜4m/mの脱臭おからに着色料、着香料及び調味料を混合することを特徴とするふりかけの製造方法(特許文献2)などが開示されている。しかし、従来技術では一長一短があり、更に食感がよいふりかけの製造方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−20074号公報
【特許文献2】特開平3−80059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、食感がソフトで口溶けが良いふりかけを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、セルロースを配合してふりかけを製造することにより、ふりかけの食感を改良することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、食品素材、セルロース及び賦形剤を含有する混合液を乾燥し、粉砕することを特徴とする鱗片状のふりかけの製造方法、からなっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、見た目がふわふわで、喫食する際の食感、具体的には、ふわふわ感、口溶け感に優れている鱗片状のふりかけを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いられる食品素材としては、食用となるものであれば特に制限はなく、例えば、わかめ、ひじき、めかぶ、昆布、フノリ、もずく、海苔等の海藻類;鶏卵、ウズラの卵等の液卵類;かぼちゃ、人参、ほうれん草、玉ねぎ、長ねぎ等の野菜類;牛、豚、鶏等の畜肉類;鮭、鰹、鯛、平目、海老、烏賊、帆立、浅利、牡蠣等の魚介類;いちご、バナナ、りんご等の果実類;醤油、味噌、味醂、酒類、酒粕、ヨーグルト等の発酵物;梅干、納豆等の加工食品等が挙げられる。中でも、わかめ、ひじき、昆布、めかぶ、液卵が好ましい。
【0009】
本発明に用いられるセルロースとしては、食品に用いられるセルロースであれば特に制限はなく、例えば、食品添加物公定書(第8版)に記載されている、パルプを分解して得られたセルロースを主成分とする粉末セルロース、パルプから得られた結晶セルロースを主成分とする微結晶セルロース等が挙げられる。
具体的には、例えば、ハンフロックHL200/30(商品名;J.RETTENMAIER&SOHNE社製、粉末セルロース)、KCフロックW−250(商品名;日本製紙ケミカル社製、粉末セルロース)又はセオラスUF−711(商品名;旭化成ケミカルズ社製、結晶セルロース)などが商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。上記セルロースは単独で用いても良いし、また2種以上を混合して用いても良い。
【0010】
本発明に用いられる賦形剤としては、例えば、でん粉、加工でん粉、デキストリン等のでん粉類;乳糖、砂糖、ぶどう糖、麦芽糖、トレハロース等の糖類;あるいはグアガム、ローカストビーンガム、寒天等の増粘安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
その他に本発明の効果を損なわない範囲で、一般の食品製造に用いられる周知の物質を添加してもよく、例えば、畜肉類、魚介類、植物類、海藻類などのエキス類;たん白加水分解物、アミノ酸などの調味料類;動植物由来の油脂、香辛料、かん水、乳化剤、酸化防止剤、着色料等が挙げられる。
【0012】
本発明のふりかけの製造方法は、以下の工程を有している。
工程1:水、食品素材、セルロース、賦形剤を含有する混合液を作製する工程。
工程2:工程1で得た混合液を乾燥し、乾燥物を得る工程。
工程3:工程2で得た乾燥物を粉砕して、鱗片状のフレークを得る工程。
【0013】
工程1においては、水、食品素材、セルロース、賦形剤とを撹拌混合して混合液を作製すればよい。混合液は、水、食品素材、セルロース、賦形剤以外の物質(一般の食品製造に用いられる周知の物質)を含有してもよい。撹拌混合は公知の手段を適宜用いて上記混合液を攪拌すればよく、例えば、プロペラ攪拌機等を用いるのが好ましい。また所望により公知の手段、例えばマスコロイダー等で上記混合液を粉砕してもよい。
【0014】
工程1で用いる食品素材は、食品素材が液体又はペースト状の場合はそのまま用いればよく、食品素材が固形物の場合は細かく粉砕するか、液状又はペースト状に溶解して用いるのが好ましい。固形物を細かく粉砕する方法としては、物理的に細かく粉砕すればよく、例えば、圧縮破砕機、剪断粗砕機、衝撃破砕機、ロールミル、高速回転ミル、ジェットミルなど公知の粉砕方法や、サイレントカッター、チョッパー、らいかい機などで固形物を小さくする方法が挙げられる。また、固形物を液状又はペースト状に溶解する方法としては、例えば、固形物が海藻などの場合は、アルカリ金属塩の溶液中で加熱撹拌して溶解することが挙げられ、固形物が野菜・果物などの場合は、酵素分解、搾汁などが挙げられ、固形物が畜肉・魚介などの場合は酸分解やアルカリ分解などが挙げられる。
食品素材の添加量は、乾燥した鱗片状のふりかけ100質量部中に乾燥状態で約5〜70質量部、好ましくは約10〜50質量部である。
【0015】
工程1で用いるセルロースの添加量は、食品素材、賦形剤の種類によって一概にはいえないが、乾燥した鱗片状のふりかけ100質量部中に乾燥状態で約1〜20質量部、好ましくは約2〜10質量部に相当する量である。
賦形剤の添加量は、乾燥した鱗片状のふりかけ100質量部中に乾燥状態で約1〜70質量部、好ましくは約2〜60質量部である。
【0016】
工程2における乾燥手段としては、薄いフィルム状の乾燥物が得られれば特に制限はないが、例えば、常圧ドラム乾燥法または真空ドラム乾燥法が挙げられ、コスト、生産性の面から常圧ドラム乾燥法が好ましい。
常圧ドラム乾燥法を用いる場合は、常圧下で、例えばスチーム等の熱媒体により加熱され回転するドラム表面に、工程1で得られた混合液(被乾燥処理材料)を付着させ、ドラムが1回転する間に被乾燥処理材料を迅速に蒸発乾燥させればよい。ドラム表面で乾燥した乾燥物は、スクレーパーナイフ等によりドラム表面から簡単にかき取られ得る。この常圧ドラム乾燥法を用いる場合において、ドラム表面温度は特に限定されないが、約80〜200℃程度、好ましくは約100〜180℃程度、より好ましくは約120〜160℃程度である。
上記常圧ドラム乾燥法における乾燥時間は、特に限定されないが、数秒〜数分間という短時間乾燥が好ましい。その時間としては、長くとも約1分以下が好ましく、より好ましくは約45秒以下、さらに好ましくは約6〜30秒間程度である。常圧ドラムの回転数は、特に限定されないが、通常約1〜10rpm(revolution per minute;毎分回転数)程度、好ましくは約2〜10rpmである。
上記常圧ドラム乾燥法は、例えばドラムドライヤー(回転熱ドラム式蒸発乾涸装置)等を用いることにより実施し得る。
【0017】
工程3において、工程2でかき取られた乾燥物を砕いて鱗片状のフレークを得る手段としては、公知の手段を用いることができ、例えば粉砕機を用いて乾燥物を砕き、鱗片状のフレーク形状とすることができる。鱗片状のフレーク形状とすることにより、ふわふわとした外観および食感、口溶け感を得ることができる。得られたフレークは、例えば篩目開が約5mm〜15mmの篩を用いて篩分されるのが好ましく、約8mm〜13mmの篩を用いて篩分されるのがより好ましい。
本発明における「鱗片状」とは、平たく薄い形状を意味する。鱗片状のフレークとしては、例えば、厚さは約0.1mm〜0.5mmが好ましく、約0.2mm〜0.4mmがさらに好ましい。長径は約5mm〜15mmが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法で得られる鱗片状のふりかけは、ご飯や握り飯、おかゆ、パスタなどに振りかけて用いることができる。また、本発明の製造方法で得られる鱗片状のふりかけは、お茶漬けの素、パスタ用調味料、フライドポテト用調味料、スナック用調味料などの他の加工食品の原料としても用いることができる。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載の「%」は「質量%」を示す。
【0020】
[実施例1]
水760gにクエン酸三ナトリウム(商品名:精製クエン酸ナトリウム;扶桑化学工業社製)12g、炭酸水素ナトリウム(商品名:重炭酸ナトリウム;旭硝子社製)0.7gを溶解し、該溶液に乾燥わかめ(商品名:ふえるわかめ 花ざいく翠;理研ビタミン社製、中国産:水分10%)40gを加え分散させ、60℃で30分間攪拌しペースト状のわかめとした。さらに食塩4g、グルタミン酸ナトリウム10g、砂糖4g、トレハロース(商品名:トレハ;林原社製)2.5g、酸化でん粉(商品名:スタビローズS−10;松谷化学社製)6.5g、セルロース(商品名:ハンフロックHL200/30;J.RETTENMAIER&SOHNE社製)4gを加えて攪拌混合した。該混合液をマスコロイダー(型式:MKZA6−5;増幸産業社製)でさらに細かく粉砕した。得られたゾル状のわかめ入り混合液をドラムドライヤー(型式:30型;カツラギ工業社製)を用いて、ドラム表面温度125℃、回転数2rpmで乾燥した。得られた乾燥物を、目開き8mmの篩で整粒し、鱗片状のふりかけ(実施例品1)72.5g(水分3.4%)を得た。
【0021】
[実施例2]
実施例1の製造方法において、乾燥わかめを乾燥めかぶ(商品名:乾燥千切り芽かぶ 花めかぶ;理研ビタミン社製、水分10%)に替えた以外は、実施例1と同様の操作を行なって鱗片状のふりかけ(実施例品2)70.9g(水分3.1%)を得た。
【0022】
[実施例3]
水670g、卵黄液(商品名:加塩凍結卵黄10;キユーピータマゴ社製)560gを分散させ、80℃まで加熱攪拌した。さらに食塩45g、グルタミン酸ナトリウム25g、砂糖100g、トレハロース(商品名:トレハ;林原社製)30g、酸化でん粉(商品名:スタビローズS−10;松谷化学社製)580g、セルロース(商品名:ハンフロックHL200/30;J.RETTENMAIER&SOHNE社製)60gを加えて攪拌混合した。該混合液をマスコロイダー(型式:MKZA6−5;増幸産業社製)でさらに細かく粉砕した。得られたゾル状の卵黄入り混合液をドラムドライヤー(型式:30型;カツラギ工業社製)を用いて、ドラム表面温度125℃、回転数2rpmで乾燥した。得られた乾燥物を、目開き8mmの篩で整粒し、鱗片状のふりかけ(実施例品3)960.9g(水分2.8%)を得た。
【0023】
[比較例1]
実施例1の製造方法において、セルロース4gを加えない以外は、実施例1と同様の操作を行なって鱗片状のふりかけ(比較例品1)68.9g(水分2.9%)を得た。
【0024】
[比較例2]
実施例1の製造方法において、セルロース4gを粉末寒天(商品名:伊那寒天UP−37;伊那寒天社製)4gに替えた以外は、実施例1と同様の操作を行なって鱗片状のふりかけ(比較例品2)71.9g(水分3.0%)を得た。
【0025】
[比較例3]
実施例1の製造方法において、セルロース4gをデキストリン(商品名:サンデック#70;三和澱粉工業社製)4gに替えた以外は、実施例1と同様の操作を行って鱗片状のふりかけ(比較例品3)73.3g(水分2.8%)を得た。
【0026】
[比較例4]
実施例1の製造方法において、酸化でん粉6.5gを加えない以外は、実施例1と同様の操作を行って粉末状のふりかけ(比較例品4)68.0g(水分2.8%)を得た。比較例4では鱗片状のふりかけを得ることが出来なかった。
【0027】
[鱗片状の評価]
実施例1〜3、比較例1〜3にて得られた鱗片状のふりかけ(実施例品1〜3、比較例品1〜3)の見た目と食感について、表1に示す評価基準に基づいてふわふわ感、口溶け感の評価を行なった。各項目の評価は、男性4人および女性6人の計10人のパネラーで行った。
【0028】
【表1】

【0029】
10名のパネラーの評価点の平均値を以下の基準にしたがって記号化した。結果を表2に示す。また、得られたふりかけ(実施例品1〜3、比較例品1〜4)の形状を表2に示す。
◎ :評価点の平均値が3.5以上
○ :評価点の平均値が2.5〜3.4
△ :評価点の平均値が1.5〜2.4
× :評価点の平均値が1.4以下
【0030】
【表2】

【0031】
実施例品1〜3の見た目のふわふわ感、食感のふわふわ感および口溶け感は、非常に良い結果であった。比較例品1〜3の評価は、いずれかの評価が悪い評価であった。また、実施例1〜3ではいずれも鱗片状のふりかけが得られたが、比較例1、3では粉末状又は細かい鱗片状のふりかけしか得られず、比較例4では粉末状のふりかけしか得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品素材、セルロース及び賦形剤を含有する混合液を乾燥し、粉砕することを特徴とする鱗片状のふりかけの製造方法。