説明

ふわとろすり身製品及びその製法

【課題】ふわっとし、かつ、とろっとした食感を有する新規のすり身製品を提供する。
【解決手段】魚肉すり身に豆腐を混入し、α化加工澱粉を添加して、それをベースにして豆乳、植物油を添加し、その後再度加工澱粉を投入した後、蒸し加工し冷凍及び/又は衣付けして油ちょうすることにより、「ふわとろ感」を出す魚肉すり身製品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
豆乳、油、加工澱粉等を原料とした、ふわっとした食感を有する新規のすり身製品の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
水産練製品にはかまぼこ等があり、それを揚げたものとしてはさつま揚げ等がある。これらのものは、魚肉のすり身を主成分としており、得られる独特の食感から広く食べられている。
【0003】
また、がんもどきは略して「がんも」とも呼ばれ、「雁擬き」と字を宛てて表記することもあるが、水気を絞った豆腐にすったヤマイモ、ニンジン、ゴボウ、シイタケ、コンブ、ギンナン等を混ぜ合わせて丸く成形し油で揚げたものである。おでんや煮物に用いられることが多い。
【0004】
一方、柔らかい、ふわっとした食感を有する揚げ調理物としては、小麦粉、生クリーム、バター等を固めたものを具材とする、クリームコロッケの具材部分がある。
【0005】
特許文献を調査してみると、「魚肉のすり身、コーンスターチ、タピオカ澱粉、調味料、天然蛋白質エキス、食塩、焼酎、菜種油、ごま油、卵白、豆乳を混合攪拌した後、所定形状に成形して油で揚げてなる薩摩揚げ様食材。」(特許文献1)や、「魚肉摺身に対して粉末状大豆蛋白、油脂、食塩及び水を添加するに際して、(a)粉末状大豆蛋白を粉体でかつ油脂を添加すること、及び(b)魚肉摺身100重量部に対して食塩を1.55〜2.65重量部添加すること、を特徴とする豆腐様水産練製品の製法。」(特許文献2)、あるいは「大豆蛋白、水、油脂及び生の野菜、果物或いはこれらの搾汁を均質化したエマルジョンと鳥獣魚介肉含有ペーストとを混練し加熱することを特徴とする練製品の製造法。」(特許文献3)や「粉末状大豆蛋白素材、液体油及び水を含む原料を混練して大豆蛋白生地を調製し、成形後フライしてがんもどきを製造する方法において、大豆蛋白生地の原料として冷凍豆腐を使用し、かつ、フライを生地が膨化しない条件下で行うことを特徴とする、未膨化タイプのがんもどきの製造法。」(特許文献4)等が散見される。
【0006】
しかしながら、これらはいずれも本発明が目指す「ふわとろ感」を出すような製品ではない。消費者は、この「ふわとろ感」が出るような製品の開発を望んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−271361号公報
【特許文献2】特開平8−19384号公報
【特許文献3】特開平11−299459号公報
【特許文献4】特開2010−233521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ふわっとし、かつ、とろっとした食感を有する新規のすり身製品の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決する為に鋭意努力した結果、すりみの他に豆腐、豆乳、植物油と加工澱粉(特にα化澱粉)を入れることにより、「ふわとろ感」を出す製品が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は次のとおりである。
(1)すり身に豆腐、加工澱粉、豆乳、油を添加したことを特徴とするすり身製品。
(2)すり身が魚肉すり身であることを特徴とする(1)記載のすり身製品。
(3)加工澱粉がα化澱粉であることを特徴とする(1)又は(2)記載のすり身製品。
(4)α化澱粉がタピオカ由来であることを特徴とする(3)記載のすり身製品。
(5)油が植物油であることを特徴とする (1)、(2)、(3)又は(4)記載のすり身製品。
(6)すり身に豆腐を混入し、加工澱粉を添加して、それをベースにして豆乳、油を添加し、その後再度加工澱粉を投入した後、蒸し加工し冷凍及び/又は衣付けして油ちょうすることを特徴とするすり身製品の製造方法。
(7)すり身が魚肉すり身であることを特徴とする(6)記載のすり身製品の製造方法。
(8)加工澱粉がα化澱粉であることを特徴とする(6)又は(7)記載のすり身製品の製造方法。
(9)α化澱粉がタピオカ由来であることを特徴とする(8)記載のすり身製品の製造方法。
(10)油が植物油であることを特徴とする(6)、(7)、(8)又は(9)記載のすり身製品の製造方法。
【0011】
本発明の製品は、ふわとろ感が良いことが特徴で、口の中でふわっとして溶けるような感触を楽しむことができる。ふわとろ感をより効果的に出すためには、すり身として魚肉、特にイトヨリのすり身を使用すると味もいいが、鶏肉を使用してもふわとろ感を出すことはできる。また、豆腐を混入させることにより、ゲルの形成の一助とすることができる。
【0012】
加工澱粉としては、α化澱粉を用いることが好ましい。α化澱粉はタピオカ由来、馬鈴薯由来、コーン由来等があるが、本発明のようなふわとろ感を出すためには、タピオカ由来のマツノリン340(登録商標、松谷化学工業(株)製)が効果的である。加工澱粉が多い場合には油分が保持でき、とろっとした食感にはなるものの、のりっぽくなり好ましくなく、逆に加工澱粉が少ない場合には、油分の分離が起きる。加工澱粉は、特に1〜30%程度の配合量で使うのが好ましく、さらに好ましくは、2〜15%、より好ましくは3〜10%くらいを用いることが好ましい。
また、油分をうまく澱粉中に保持するためにも1度ではなく2度以上に分けて投入することが好ましい。
【0013】
また、油としては、透明で液状の油であることが好ましく、植物由来の油が特に好ましい。例えば、大豆、菜種、コーン由来の白絞油、サラダ油等が利用しやすい。油分の量が多いほどトロッとした食感にはなるものの、加工澱粉の量と合わせたものでないと油分が分離し、表面から油分が漏出する。そのため、マツノリン340を使った場合には5〜30%くらいの油の量が好ましく、さらに好ましくは10〜20%、より好ましくは10〜15%程度が望ましい。
【0014】
本発明のすり身製品は、副食品として食することは勿論のこと、デザートとして供する
ことも可能である。デザートとする場合は、調味料として甘味料を使用してもよい。
【0015】
製法の代表的な工程を示すと、
1.まず初めにすり身(約3%)を塩ずりすることにより、魚肉蛋白質によるネットワークを作成する。
2.そこに絞った豆腐(約10%)を混入、大豆蛋白質によるゲルを混合させる。
3.その後調味料添加
4.加工澱粉(約5%)を添加、そこをベースにして豆乳(約14%)、白絞油(約13%)を抱き込ませていく。
5.その後に再度加工澱粉(約3%)を投入、水分(油分)を完全に保持させる。
6.その後生地が堅くなるまで、混合を続ける。
7.野菜を混合、均一にする。
8.暫く放置する。
9.蒸し加工
10.冷凍
11.衣付けして油ちょう
【0016】
なお、本発明において、上記、工程4から6までの混合時間が短いと、加熱前生地は柔らかく、冷凍後再加熱した生地はふんわり感は無いが、口どけ良好であるのに対し、混合時間が長すぎると、加熱前生地はやや堅い物性を示し、その結果、糊っぽい食感を示し、口どけが悪い。
【0017】
混合時間は、生地の状態を確認しながら決定し、混合時間が適度な場合には、成形機械で成形できる適度な堅さがあり、ふんわりしてとろける食感を持ち、良好な口どけ感を有している。
【発明の効果】
【0018】
ふわふわし、かつ、とろっとした食感のすり身及び豆腐、豆乳等を原料とした製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】すり身、豆腐、豆乳の他に人参等の野菜を添加して凍結した本発明品を示す図。
【図2】すり身、豆腐、豆乳の他に人参等の野菜を添加して油で揚げた本発明品の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を具体的に説明するために、実施例を示すが本発明はこれに限定されたものでないことは、言うまでもない。
【0021】
[実施例1]
表1に示す配合で本発明品を製造した。
【0022】
【表1】

*魚肉すり身:約2mmまで細かくカット
*食塩:粘りが出るまで塩ずり
*絞り豆腐:カッターで滑らかになるまでカットしておく。
*加工澱粉(2回目):滑らかになり生地に堅さが出るまでカット
*こんぶだし、調味料、しょうゆ、卵白、加工澱粉(1回目)、水、豆乳、植物油脂及び乳化剤は、それぞれ均一になるまでカットし、たまねぎ、人参および葱は、均一になるまで混合する。
【0023】
表1に記載の配合物を使って、次の工程で本発明品を製造した。
すり身(イトヨリすり身AA)

塩ずり← 食塩

↓ ← 絞り豆腐

均一になるまでカット

↓ ← 厚味昆布だし
↓ 調味料各種(上白糖、グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダ、
薄口醤油)
↓ 凍結卵白

↓ 加工澱粉(マツノリン340:松谷化学工業の商標)

↓ ← 冷水
↓ ← 豆乳(不二製油製)
↓ ← 大豆白絞油
↓ ← 乳化剤(ポエムJ-0081HV:理研ビタミン製)

↓ ← 加工澱粉(マツノリン340)

滑らかになり、生地に堅さが出るまでカット
↓ ← たまねぎ
↓ ← 人参
↓ ← 青ねぎ

均一になるまで混合

暫く放置

蒸し工程

冷凍

衣付けして油ちょう
【0024】
即ち、30gの細かくカットした魚肉すり身に食塩4gを添加して粘りが出るまで塩ずりし、その後絞り豆腐(カッターで滑らかになるまでカットしたもの)を105g投入し、均一になるまでカットした。そこへ厚味の昆布だし12g、調味料として上白糖20g、グルタミン酸Na12g、イノシン酸Na1g、薄口醤油10gをそれぞれ添加し、更に凍結卵白30gと加工澱粉(マツノリン340)を50g投入し、次いで冷水400g、豆乳150g、大豆白絞油145g及び乳化剤(ポエムJ-0081HV)を添加し、均一になるまでカットした。
【0025】
そして、2回目の加工澱粉(マツノリン340)30gを投入して、滑らかになり、生地に堅さが出るまでカットした後、玉ねぎ60g、人参30g、青ねぎ10gを添加し均一になるまで混合した。これら全ての混合物を成形し、暫く放置してから蒸し工程に付した後冷凍し、衣を付けて油ちょうし最終製品(本発明品)とした。
【0026】
上記の方法で製造された本発明品を、男女合計5名の者に官能検査を行ったところ、次のような結果が得られた。
【0027】
【表2】

【0028】
以上の官能検査結果から分かるように、本発明品は、ふわふわし、かつ、とろっとした食感が得られることを特徴としている。
【0029】
[実施例2]
実施例1のマツノリン340の代わりにPASELLI PAC(オランダ、アベベ社製、アルファ化した馬鈴薯澱粉)を用いて同様の発明品を製作した。実施例1のようなフワッ、トロッとした食感はないものの、一定の粘性と歯ごたえを持ち、良好な食感であった。
【0030】
[比較例1]
実施例1のマツノリン340の代わりに通常の馬鈴薯澱粉を用いて同様の発明品を製作した。実施例1のようなフワッ、トロッとした食感はなく、ねちっとした食感になり、噛み切りにくい食感になった。
【0031】
[比較例2]
マツノリンを分けて配合する代わりに、一度に添加し、その他の冷水、豆乳、大豆白締油、乳化剤も同時に加え、攪拌を続ける以外は実施例1と同様の方法で比較例を試作した。油分が完全に吸収されず、表面から油が分離していた。また、衣付け後油ちょうし、試食したが、味が分離しており、かつ、のりっぽさを感じておいしくなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すり身に豆腐、加工澱粉、豆乳、油を添加したことを特徴とするすり身製品。
【請求項2】
すり身が魚肉すり身であることを特徴とする請求項1記載のすり身製品。
【請求項3】
加工澱粉がα化澱粉であることを特徴とする請求項1又は2記載のすり身製品。
【請求項4】
α化澱粉がタピオカ由来であることを特徴とする請求項3記載のすり身製品。
【請求項5】
油が植物油であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のすり身製品。
【請求項6】
すり身に豆腐を混入し、加工澱粉を添加して、それをベースにして豆乳、油を添加し、その後再度加工澱粉を投入した後、蒸し加工し冷凍及び/又は衣付けして油ちょうすることを特徴とするすり身製品の製造方法。
【請求項7】
すり身が魚肉すり身であることを特徴とする請求項6記載のすり身製品の製造方法。
【請求項8】
加工澱粉がα化澱粉であることを特徴とする請求項6又は7記載のすり身製品の製造方法。
【請求項9】
α化澱粉がタピオカ由来であることを特徴とする請求項8記載のすり身製品の製造方法。
【請求項10】
油が植物油であることを特徴とする請求項6、7、8又は9記載のすり身製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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