説明

ぶどうの栽培方法

【課題】ぶどうの木の樹勢を失わせず、年間に一回より多い十分な収穫を毎年連続して得ることができるぶどうの栽培方法を提供すること。
【解決手段】二年に三期のぶどうの収穫ができるように、加温設備が設けられているぶどうの栽培ハウスを一対用い、一方の前記ぶどうの栽培ハウスに対して他方の前記ぶどうの栽培ハウスにおいてはぶどうの栽培時期をずらして栽培し、該一対のぶどうの栽培ハウスにおいて一年に三期のぶどうの収穫を毎年行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ぶどうの栽培について、年間に一回より多い収穫が適切にできるようにするぶどうの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ぶどうの栽培方法にあっては、例えば巨峰の場合、露地ものでは、5〜6月に開花・結実し、9〜10月に収穫がなされる。また、ビニルハウスで加温を行い、最も早期に収穫する促成栽培では、11月から加温を開始して4〜5月の収穫が可能になっている。
【0003】
さらに、ブドウ果実の2〜3月の収穫が可能で且つ同一樹木からの年間2期を可能にし、単位栽培面積当たりの生産の向上を図るため、温室内でブドウ樹木を栽培してブドウ果実を収穫するに当たり、無加温状態で開花、結実、収穫の第1期作過程の終了後、休眠打破剤を散布し加温と併せて人工光による補光を葉展開期から開花後約30乃至45日間の合計で約60日〜80日間行う過程を経てブドウ樹木からブドウ果実を収穫するブドウの栽培方法(特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−155395号公報(第1頁、請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ぶどうの栽培方法に関して解決しようとする問題点は、年間に二期の収穫では、ぶどうの木を酷使することになって、毎年連続して十分な収穫を得ることが難しいという課題があった。
そこで本発明の目的は、ぶどうの木の樹勢を失わせず、年間に一回より多い十分な収穫を毎年連続して得ることができるぶどうの栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかるぶどうの栽培方法の一形態によれば、二年に三期のぶどうの収穫ができるように、加温設備が設けられているぶどうの栽培ハウスを一対用い、一方の前記ぶどうの栽培ハウスに対して他方の前記ぶどうの栽培ハウスにおいてはぶどうの栽培時期をずらして栽培し、該一対のぶどうの栽培ハウスにおいて一年に三期のぶどうの収穫を毎年行うことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかるぶどうの栽培方法の一形態によれば、二年に三期のぶどうの収穫ができるように、暖房及び冷房の機能を備えた空調設備が設けられているぶどうの栽培ハウスを一対用い、一方の前記ぶどうの栽培ハウスに対して他方の前記ぶどうの栽培ハウスにおいてはぶどうの栽培時期をずらして栽培し、該一対のぶどうの栽培ハウスにおいて一年に三期のぶどうの収穫を毎年行うことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるぶどうの栽培方法の一形態によれば、前記一対のぶどうの栽培ハウスについて、前記空調設備の構成要素として少なくとも一つの冷凍サイクル装置が設けられ、該冷凍サイクル装置によって、一方の前記ぶどうの栽培ハウスを冷房する際に他方の前記ぶどうの栽培ハウスを排熱によって暖房することを特徴とすることができる。
【0009】
本発明にかかるぶどうの栽培方法の一形態によれば、前記冷凍サイクル装置を稼働させる電源の少なくとも一部が太陽光発電によることを特徴とすることができる。
本発明にかかるぶどうの栽培方法の一形態によれば、前記空調設備の一部が、地下熱を利用した地下熱空調機であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のぶどうの栽培方法によれば、ぶどうの木の樹勢を失わせず、年間に一回より多い十分な収穫を毎年連続して得ることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るぶどうの栽培方法の例を説明するタイムテーブルである。
【図2】本発明に係るぶどうの栽培方法に用いられる施設の形態例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るぶどうの栽培方法の最良の形態例を、添付図面(図1、2)に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明に係るぶどうの栽培方法によれば、二年に三期のぶどうの収穫ができるように、加温設備が設けられているぶどうの栽培ハウスを一対10、20用い、一方のぶどうの栽培ハウス10に対して他方のぶどうの栽培ハウス20においてはぶどうの栽培時期をずらして栽培し、その一対のぶどうの栽培ハウス10、20を一つの栽培施設としてその栽培施設において一年に三期のぶどうの収穫を毎年行うことを特徴とする。すなわち、個々のぶどうの栽培ハウス(10又は20)では、同一の木から年間に1.5回の収穫を行うことができる。これは、同一のぶどうの木については、二年三作になっている。
【0014】
このぶどうの栽培方法によれば、同一の木から年間2回の収穫をする場合とは異なり、ぶどうの木の樹勢を失わせずに栽培ができ、十分な収穫を毎年連続して得ることができる。また、収穫時期を露地栽培とは好適にずらすことができ、商品価値を高めることができると共に栽培作業分散が可能になって作業効率を向上できる。
【0015】
また、本発明に係るぶどうの栽培方法によれば、二年に三期のぶどうの収穫ができるように、暖房及び冷房の機能を備えた空調設備30が設けられているぶどうの栽培ハウスを一対10、20用い、一方のぶどうの栽培ハウス10に対して他方のぶどうの栽培ハウス20においてはぶどうの栽培時期をずらして栽培し、その一対のぶどうの栽培ハウス10、20において一年に三期のぶどうの収穫を毎年行うことを特徴とする。このように冷房の機能を備えることで、休眠打破や他の栽培の条件を好適に整えることができ、より適切な栽培方法に調整することができる。
【0016】
一対のぶどうの栽培ハウス10、20について、空調設備30の構成要素として少なくとも一つの冷凍サイクル装置30aが設けられ、その冷凍サイクル装置30aによって、一方のぶどうの栽培ハウス10を冷房する際に他方のぶどうの栽培ハウス20を排熱によって暖房するように構成するとよい。これによれば、空調設備30によって無駄に廃棄されるエネルギーを無くすこと或いは軽減することができ、省エネルギーを実現できる。
【0017】
次に、具体的に暖房と冷房の用い方について、図1に基づいて説明する。なお、図1では、一方の栽培ハウス10をハウスAとし、他方の栽培ハウス20をハウスBとして説明する。図1に明らかなように、この一対のハウスA、Bによれば、その一対を一つの栽培施設としてその栽培施設において、一年に三期(早期、中期、晩期)のぶどうの収穫を毎年行うことができる。収穫時期は、図1において白抜きの矢印で示してあり、この例では早期が4月、中期が9月、晩期が12月となっている。
【0018】
早期の栽培期間は例えば10月から翌年の4月であり、中期の栽培期間は例えば12月から翌年の9月であり、晩期の栽培期間は例えば5月から同年の12月である。これによれば、晩期の栽培期間における冷房時期(4〜5月)に、中期の栽培期間における暖房時期(4〜5月)を対応させることができる。また、晩期の栽培期間における暖房時期(10〜12月)に、早期の栽培期間における冷房時期(10〜11月)を対応させることができる。
【0019】
このように暖房と冷房とを対応させることができる期間においては、冷凍サイクル30aの吸熱と発熱の両方を利用でき、省エネルギーを実現できる。
なお、休眠打破の方法は、冷房に限定されるものではなく、シアミド剤などの休眠打破剤や加温をする方法がある。これらの方法を、単独で或いは組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、冷凍サイクル装置30を稼働させる電源の少なくとも一部について、太陽光発電40を利用してもよい。これによれば、太陽光という自然エネルギーを巧みに利用し、特に夏場の冷房にかかる電力を効果的に供給できることになる。このため、電力会社によって供給される電力のピークカットを効果的に行って節電になると共に、さらに二酸化炭素の排出量を低減するための一助となる。
なお、60は外部電源であり、例えば電力会社から供給される電力或いは自家発電による電力によるものである。
【0021】
また、空調設備の一部について、地下熱を利用した地下熱空調機50を利用してもよい。例えば5mより深い地中は、年間を通じて一定の温度(例えば15℃)に保たれている。従って、その地熱を利用することによって、夏は冷房に利用ができ、冬は暖房に利用できる。地熱の利用方法は、例えば地中に地上に連通するパイプを埋設し、そのパイプ内に地上から空気を導入・流通させて熱交換を行い、その熱交換がされた空気をハウス内に導入することで容易に行うことができる。これも自然エネルギーであり、節電になると共に、さらに二酸化炭素の排出量を低減するための一助となる。
【0022】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0023】
10 一方の栽培ハウス(ハウスA)
20 他方の栽培ハウス(ハウスB)
30 空調設備
30a 冷凍サイクル装置
40 太陽光発電装置
50 地下熱空調機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二年に三期のぶどうの収穫ができるように、加温設備が設けられているぶどうの栽培ハウスを一対用い、一方の前記ぶどうの栽培ハウスに対して他方の前記ぶどうの栽培ハウスにおいてはぶどうの栽培時期をずらして栽培し、該一対のぶどうの栽培ハウスにおいて一年に三期のぶどうの収穫を毎年行うことを特徴とするぶどうの栽培方法。
【請求項2】
二年に三期のぶどうの収穫ができるように、暖房及び冷房の機能を備えた空調設備が設けられているぶどうの栽培ハウスを一対用い、一方の前記ぶどうの栽培ハウスに対して他方の前記ぶどうの栽培ハウスにおいてはぶどうの栽培時期をずらして栽培し、該一対のぶどうの栽培ハウスにおいて一年に三期のぶどうの収穫を毎年行うことを特徴とするぶどうの栽培方法。
【請求項3】
前記一対のぶどうの栽培ハウスについて、前記空調設備の構成要素として少なくとも一つの冷凍サイクル装置が設けられ、該冷凍サイクル装置によって、一方の前記ぶどうの栽培ハウスを冷房する際に他方の前記ぶどうの栽培ハウスを排熱によって暖房することを特徴とする請求項2記載のぶどうの栽培方法。
【請求項4】
前記冷凍サイクル装置を稼働させる電源の少なくとも一部が太陽光発電によることを特徴とする請求項3記載のぶどうの栽培方法。
【請求項5】
前記空調設備の一部が、地下熱を利用した地下熱空調機であることを特徴とする請求項2記載のぶどうの栽培方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate