説明

べーカリー製品用品質改良剤

【課題】 アルドン酸二糖類を含有する品質改良剤により、ベーカリー製品に対して食塩代替だけでなく、食感に優れ、ソフトなボリュームがあり、焼成後の保存安定性に優れた、品質改良効果を有するベーカリー製品を得ることができるベーカリー製品用品質改良剤を提供する。
【解決手段】 アルドースとグルコン酸からなるアルドン酸二糖類又はその塩類又はそのラクトンのいずれか一つ又はそれらの組み合わせを含有することを特徴とするベーカリー製品用品質改良剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー製品用品質改良剤、並びに該品質改良剤を用いたベーカリー製品用生地、ベーカリー製品に関する。より詳しくは、アルドースとグルコン酸からなる2分子のオリゴ糖酸及び/又はその塩類及び/又はそのラクトンを含有するベーカリー製品用品質改良剤、並びに該品質改良剤を用いたベーカリー製品用生地、ベーカリー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活が洋風化しパンなどのベーカリー製品の消費量が増加するに従って、生地の作業性向上、焼成後のベーカリー製品の保存安定性、ボリュームアップや弾力性の付与、カルシウム強化や減塩などの機能性付与など、その解決に改良剤が開発されている。改良剤としてアルドン酸を有効成分としたものでは、グルコン酸やグルコノデルタラクトンを加えることで、膨化率が向上し、これらの食感や外観等に好影響を及ぼすと記載されている(特開平4−200341号公報および特開平5−23096号公報)。また、グルコン酸ナトリウムやカリウム(特許第3081900号公報)、グルコン酸カルシウム(特開平10−14481号公報)などで食塩の一部又は全てを置き換えることで、健康面に配慮した減塩したベーカリー製品が提供可能であり、また、製品の比容積が向上する旨、記載されている。しかしながら、ベーカリー製品の食感や、老化抑制効果すなわち保存安定性においては満足いくものでなかった。
【特許文献1】特開平4−200341号公報
【特許文献2】特開平5−23096号公報
【特許文献3】特許第3081900号公報
【特許文献4】特開平10−14481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、ベーカリー製品に対して食塩代替だけでなく、保存安定性に優れた品質改良効果を有し、且つ食味食感に優れたベーカリー製品用品質改良剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、アルドースとグルコン酸からなるアルドン酸二糖類、その塩類及びそのラクトンに着目し、該アルドン酸二糖類、その塩類及びそのラクトンのベーカリー製品への影響について種々の検討を進めた結果、グルコン酸やその塩類、グルコノデルタラクトンより調製されるベーカリー製品に対して、食味食感の改良効果が非常に優れていること、ソフトなボリュームのあるベーカリー製品が得られ、食味食感の向上が図れること、また保存安定性に優れたベーカリー製品が得られることなどの優れた品質改良効果を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、アルドースとグルコン酸からなるアルドン酸二糖類及び/又はその塩類及び/又はそのラクトンを含有することを特徴とするベーカリー製品用品質改良剤を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、穀類粉末に上記の本発明の品質改良剤を添加混合して調製したベーカリー製品用生地を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、上記の本発明のベーカリー製品用生地を成形・焼成したベーカリー製品を提供するものである。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のベーカリー製品用品質改良剤に用いられる「アルドースとグルコン酸からなるアルドン酸二糖類」としては、マルトビオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、イソマルトビオン酸、コージビオン酸、ニゲロビオン酸、ゲンチオビオン酸、ラミナリビオン酸などが挙げられる。
【0010】
また、本発明のベーカリー製品用品質改良剤に用いられるアルドン酸二糖類の塩類とは、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸ナトリウム、ラクトビオン酸カルシウム、ラクトビオン酸ナトリウム、セロビオン酸カルシウム、セロビオン酸ナトリウム、イソマルトビオン酸カルシウム、イソマルトビオン酸ナトリウム、コージビオン酸カルシウム、コージビオン酸ナトリウム、ニゲロビオン酸カルシウム、ニゲロビオン酸ナトリウム、ゲンチオビオン酸カルシウム、ゲンチオビオン酸ナトリウム、ラミナリビオン酸カルシウム、ラミナリビオン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0011】
また、本発明のベーカリー製品用品質改良剤に用いられるアルドン酸二糖類のラクトンとは、マルトビオノラクトン、ラクトビオノラクトン、セロビオノラクトン、イソマルトビオノラクトン、コージビオノラクトン、ニゲロビオノラクトン、ゲンチオビオノラクトン、ラミナリビオノラクトンなどが挙げられる。
【0012】
本発明のベーカリー製品用品質改良剤に用いられるアルドン酸二糖類、その塩類又はそのラクトンの製造方法としては、化学的な酸化反応による酸化方法やオリゴ糖酸化能を有する微生物或いは酸化酵素を作用させる反応により製造することができる。
【0013】
化学的な酸化反応としては、パラジウムや白金、ビスマスを活性炭に担持させた酸化触媒の存在下、マルトースなどのアルドース二糖類と酸素をアルカリ雰囲気下で接触酸化させることにより得る方法が知られている。
【0014】
また、アルドース酸化能を有する微生物を用いた方法としては、アシネトバクター属やブルクホルデリア属、アセトバクター属、グルコノバクター属などの微生物変換・発酵法により得る方法が知られている。
【0015】
酵素反応による製造方法としては、前記酸化能を有する微生物から酸化酵素を抽出する方法で製造することが可能である。
【0016】
化学的な酸化反応による製造方法の一例を挙げれば、まず、50℃に保持した20%マルトース溶液100mlに白金−活性炭触媒3gを加え、100mL/minで酸素を吹き込みながら600rpmで攪拌する。反応pHは10N水酸化ナトリウム溶液を滴下することでpH9.0を維持させる。そして、反応5時間後、遠心分離とメンブレンフィルターろ過により触媒を取り除き、マルトビオン酸ナトリウム溶液を得ることができる。
【0017】
上記のように得たマルトビオン酸ナトリウム溶液をカチオン交換樹脂または電気透析により脱塩することで、マルトビオン酸を得ることができる。
【0018】
マルトビオン酸に各種塩類を添加することで、マルトビオン酸塩を調製可能であり、脱水操作によりマルトビオノラクトンの調製も可能である。また、マルトビオノラクトンは水に溶かすと速やかにマルトビオン酸となる。
【0019】
マルトビオン酸カルシウムの製造法については、上記方法で得られたマルトビオン酸溶液に炭酸カルシウムなどのカルシウム源を2:1のモル比となるように添加し溶解させることで、マルトビオン酸カルシウムの調製が可能である。また、本発明に用いるカルシウム源としては可食性のカルシウムであれば良く、例えば、卵殻粉末、サンゴ粉末、骨粉末、貝殻粉末等の天然素材や炭酸カルシウム、塩化カルシウム等の化学合成品などがある。
【0020】
本発明において、ベーカリー製品とは、小麦粉を主原料とし、これに水、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油、粉末油等)、糖類(単糖類、少糖類、多糖類)、乳製品(乳類、粉乳類、クリーム類、チーズ類等)、卵類、塩類(食塩等)、調味料(アミノ酸、核酸等)、膨張剤(重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等)、乳化剤(レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、イースト、酵素類、等の原料を所望の方法で添加し、次に混捏工程により生地を得る。これを必要があれば発酵・熟成させ、最終的に焼成、蒸し、フライ等の加熱処理を施した製品を言う。また必要に応じて小麦粉の一部又は全量を他の粉類(穀類粉、根菜類粉等)に置き換える場合もある。かかるベーカリー製品の例としては、パン類、パン類乾燥品、ドーナッツ、パイ、ピザ、ナン、ホットケーキ、スポンジケーキ、クレープ、餃子、春巻等が挙げられる。
【0021】
ここで、パン類としては、食パン(例えば白パン、黒パン、フランスパン、乾パン、バラエティブレッド、ロールパン等)、調理パン(例えばホットドッグ、ハンバーガー、ピザパイ等)、菓子パン(例えばジャムパン、アンパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、クロワッサン、ビリオッシュ、デニッシュペストリー、チョココロネ等)、蒸しパン(例えば肉まん、あんまん等)、特殊パン(例えばグリッシーニ、マフィン等)等が含まれる。
【0022】
パン類乾燥品とはラスクやパン粉等をいう。ラスクは一般に食パン等のパン類を薄切りにし、中が乾燥するまできつね色にトーストして得られるものである。パン粉は一般にパン類を粉砕し、そのまま生パン粉とするか、あるいは乾燥してドライパン粉として得られる。
【0023】
次に本発明のベーカリー製品用品質改良剤の使用方法について説明する。本発明の品質改良剤であるマルトビオン酸などのアルドン酸二糖類及びそのラクトンは、ベーカリー製品の穀類粉末に対して0.01%〜2.5%添加することが好ましく、更に好ましくは0.05%〜2%の量である。この場合、ベーカリー製品生地中へ一度に添加しても、少しずつ添加しても良く、添加時期は問われない。ベーカリー生地を冷蔵又は冷凍保存しても良い。また、このように添加されたアルドン酸二糖類及びそのラクトンは、グルコン酸では得られなかったソフトで食味食感の向上が図れ、保存安定性に優れたベーカリー製品が得られる。また、2.5%以上添加するとイーストを配合したベーカリー生地などではpH低下により発酵不良となり効果が得られない。
【0024】
本発明の品質改良剤であるマルトビオン酸カルシウムやナトリウム塩などのアルドン酸二糖類の塩類では、イーストを配合したベーカリー製品の場合、穀類粉末に対して0.1%〜10%添加することが好ましく、更に好ましくは0.5%〜5%の量である。また、イーストを配合しないベーカリー製品の場合では、穀類粉末に対して0.01%〜20%添加することが好ましく、更に好ましくは0.25%〜10%の量である。この場合、ベーカリー製品生地中へ一度に添加しても、少しずつ添加しても良く、添加時期は問われない。また、ベーカリー生地を冷蔵又は冷凍保存しても良い。このように添加されたアルドン酸二糖類の塩類は、炭酸カルシウム等の無機塩やグルコン酸カルシウム添加に比べ、ソフトで食味食感の向上が図れ、保存安定性に優れたベーカリー製品が得ることができる。
【0025】
さらに、アルドン酸二糖類とその塩類等を適宜組み合わせて配合することで、アルドン酸二糖類やその塩類を単独で用いる場合に比べて、よりソフトで食味食感の向上が図れ、保存安定性に優れたベーカリー製品を得ることが出来る。
【0026】
また、ベーカリー生地に配合されている食塩をアルドン酸二糖類である塩類と一部を置き換えることで減塩効果が得られるだけでなく、ボリュームも増大し、保存安定性に優れたベーカリー製品が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るアルドン酸二糖類及び/又はその塩類及び/又はそのラクトンを含有することを特徴とするベーカリー製品用品質改良剤によると、食感に優れ、ソフトなボリュームがあり、焼成後の保存安定性に優れた、品質改良効果を有するベーカリー製品を得ることができる。また、ベーカリー製品に対する食塩代替効果を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[調製例1](アルドン酸二糖類の調製)
【0030】
30%マルトース溶液(サンエイ糖化株式会社製)1000mlに、5%パラジウム炭素触媒(川研ファインケミカル株式会社製)を9g添加した。この溶液を40℃に保持した後、空気1.0L/min、回転数600rpmで反応を開始させた。反応pHは9.0に維持するように20%水酸化ナトリウム溶液を連続的に添加した。反応6時間後、触媒を含む反応液を遠心分離と0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、マルトビオン酸ナトリウム溶液を得た。この溶液を強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社製、商品名「DOWEX−88」)2Lをつめたカラムへ通液することで脱塩処理を行った。次に、弱塩基性アニオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名「WA30」)200mlと強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社製、商品名「DOWEX−88」)200mlの混合樹脂をつめたカラム、次いで粒状活性炭(武田薬品工業製、粒状白鷺)200mlをつめたカラムに順次通液し脱色を行った後、減圧濃縮と凍結乾燥によりマルトビオン酸粉末285gを得た。
【0031】
また、ラクトビオン酸、セロビオン酸、イソマルトビオン酸についてもラクトース、セロビオース、イソマルトースを原料に上記と同じ方法でそれぞれ調製した。
【0032】
[調製例2](アルドン酸二糖類カルシウム塩の調製)
【0033】
調製例1で得たマルトビオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、イソマルトビオン酸粉末30gをそれぞれ蒸留水100mlへ溶解後、炭酸カリウムに対して2:1のモル重量比となるように添加し、50℃で2時間攪拌した。反応終了後の溶液を0.2μmフィルターで濾過し、凍結乾燥することで、マルトビオン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、セロビオン酸カルシウム、イソマルトビオン酸カルシウム粉末サンプルを得た。
【0034】
[調製例3](アルドン酸二糖類ナトリウム塩の調製)
【0035】
調製例1で得たマルトビオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、イソマルトビオン酸粉末30gをそれぞれ蒸留水100mlへ溶解後、水酸化ナトリウムをアルドン酸二糖に対して1:1のモル重量比となるようにそれぞれ添加し、50℃で2時間攪拌した。反応終了後の溶液を0.2μmフィルターで濾過し、凍結乾燥することで、マルトビオン酸ナトリウム、ラクトビオン酸ナトリウム、セロビオン酸ナトリウム、イソマルトビオン酸ナトリウム粉末サンプルを得た。
【0036】
[調製例4](マルトビオノラクトンの調製)
【0037】
調製例1で得たマルトビオン酸粉末5gにアセトン100mlを加え、エバボレーターにて濃縮操作を行った。この操作を数回繰り返すことで脱水しマルトビオノラクトン約4gを得た。
【0038】
[実施例1](アルドン酸二糖類またはそのラクトン配合による食パンへの影響)
【0039】
コントロールとして表1に示す配合にて各原料を混合し、家庭用パン焼き器(商品名「自動ホームベーカリーSD−BT−103」、National製)を用い、ねかし、ドライイースト投入、ねり、発酵、ドライイースト投入、ねり、発酵、焼き上げの各工程を逐次経由して食パンを調製した。実施例及び比較例には、小麦粉に対して0.025〜2.5重量%の試料を添加し同様に食パンを調製した。また、試験は一点について3回試作評価した。
【0040】
食パンの評価は、焼成後室温で1時間冷却した後、菜種置換法によりパンの容積を測定し、クラムの「すだち」を目視で評価した。また、老化抑制効果については、食パンを厚さ20mm、5枚にスライスしたときの内部3枚の中央部分を40mm×40mmに切り出したクラム部分を、円柱状プランジャー(直径30mm)を装着したクリープメータ(RE2−3305)(株)山電製にて、圧縮速度1mm/secで試料の厚さの30%を変形上限として単軸圧縮を行い、歪率25%のときの応力(gf)を測定し、試作当日と室温保存2日後のクラムの硬さ変化量がコントロールである無添加に比べて、+10gf以上を×、+10gf〜−10gfを△、−10gf〜−20gfを○、−20gf以下を◎と評価した。結果を表2に示す。
【0041】
その結果、グルコン酸を添加した場合、コントロールよりも硬く老化抑制効果は得られなかったのに対し、マルトビオン酸では、0.1%〜2.25%添加区でグルコン酸添加よりもクラムは柔らかく老化抑制効果が得られ、特に0.25%〜2.0%で老化抑制効果は顕著であった。また、セロビオン酸、ラクトビオン酸、イソマルトビオン酸でも、マルトビオン酸同様にグルコン酸添加よりもクラムは柔らかく、老化抑制効果が得られた。マルトビオノラクトンについても、マルトビオン酸と同等の老化抑制効果が得られた。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
[実施例2](アルドン酸二糖類のカルシウム塩配合による食パンへの影響)
【0045】
表3に示す試料を実施例1と同様の方法で配合し食パンを調製し、パンの容積、クラムの「すだち」並びに老化抑制効果についてそれぞれ評価した。
【0046】
その結果、比較として用いたグルコン酸Caでは、何れの濃度でもコントロールよりも硬く老化抑制効果は得られなかった。また、炭酸Caでも何れの濃度でも老化抑制効果は得られず、すだちも悪かった。一方、マルトビオン酸Caでは、0.1%〜6.0%添加区でグルコン酸Ca添加よりもクラムは柔らかく老化抑制効果が得られ、4.0%以下ではクラムのキメが細かくすだちも良好であった。また、セロビオン酸Ca、ラクトビオン酸Ca、イソマルトビオン酸Caでも、マルトビオン酸Ca同様にグルコン酸Ca添加よりもクラムは柔らかく、老化抑制効果が得られた。
【0047】
【表3】

【0048】
[実施例3](アルドン酸二糖類のナトリウム塩配合による食パンへの影響)
【0049】
表4に示す試料を実施例1と同様の方法で配合し食パンを調製し、パンの容積、クラムの「すだち」並びに老化抑制効果についてそれぞれ評価した。
【0050】
その結果、マルトビオン酸Naでは、0.1%〜4.0%添加区で、比較例に比べすだちはキメが細かく良好であり、老化抑制効果も得られた。一方、グルコン酸Naでは、マルトビオン酸Naと同じ添加量又は同じNa量で比較した場合、マルトビオン酸Naよりも容積が小さく、すだちも悪かった。
【0051】
【表4】

【0052】
[実施例4](アルドン酸二糖類塩配合での食塩代替による食パンへの影響)
【0053】
表5に示すようにマルトビオン酸Na又はマルトビオン酸Caを食塩と置き換え、実施例1と同様の方法にてパンを調製し、パンの容積、クラムの「すだち」並びに老化抑制効果についてそれぞれ評価した。
【0054】
その結果、食塩の一部又は全部をマルトビオン酸Na又はマルトビオン酸Caに置き換えることにより、減塩させつつも、パンの容積が増大し老化抑制効果が得られた。
【0055】
【表5】

【0056】
[実施例5](マルトビオン酸又はその塩類添加による冷凍生地への影響)
【0057】
表6に示す試料を添加して実施例1と同様に家庭用パン焼き器(商品名「自動ホームベーカリーSD−BT−103」、National製)を用い、ねかし、ドライイースト投入、ねり、発酵、ドライイースト投入、ねりの各工程を逐次行った後、−30℃で冷凍保存し凍結生地を調製した。冷凍一週間後の冷凍生地を15時間かけて冷蔵庫中で解凍した後、成形・焼成し食パンを調製し、実施例1と同様の方法にて、パンの容積、クラムの「すだち」並びに老化抑制効果についてそれぞれ評価した。
【0058】
その結果、冷凍生地においてもマルトビオン酸又はその塩類を配合することで、すだちの良い、老化抑制効果の得られた食パンが調製出来た。
【0059】
【表6】

【0060】
[実施例6](マルトビオン酸およびその塩類併用配合による食パンへの影響)
【0061】
表7に示したように、マルトビオン酸、マルトビオン酸Na及びマルトビオン酸Caを各組み合わせにて混合配合し、実施例1と同様の方法で食パンを調製し、パンの容積、クラムの「すだち」並びに老化抑制効果についてそれぞれ評価した。
【0062】
その結果、何れもコントロールよりもクラムは柔らかく老化抑制効果が得られた。また、マルトビオン酸Naまたはマルトビオン酸Caを単独で配合するより、マルトビオン酸等と混合配合することで、よりクラムが柔らかくなり、老化抑制効果に優れた食パンとなった。
【0063】
【表7】

【0064】
[実施例7](アルドン酸二糖類のカルシウム塩配合によるホットケーキへの影響)
【0065】
表8に示す配合にて、無塩マーガリン、全卵、牛乳を30秒間ミキシングした後、混合し篩いにかけた粉類を加えて1分間ミキシングしたものをホットケーキ生地とした。得られたホットケーキ生地15gを140℃に加温したホットプレートに絞り流し、90秒ずつ両面を焼成しコントロールとした。実施例では、薄力粉に対して、0.05〜15.0%の各種試料をグラニュー糖と置き換え試作した。また、試験は一点について20枚試作測定を行った。
【0066】
ホットケーキの評価は、ボリュームについては、焼成後室温で2時間冷却した後、厚みを測定し、コントロールに比べて、0mm以下を×、0mm〜+1.0mmを△、+1.0mm〜2.0mmを○、+2.0mm以上を◎と評価した。老化抑制効果については、円柱状プランジャー(直径30mm)を装着したクリープメータ(RE2−3305)(株)山電製にて、圧縮速度1mm/secで試料の厚さの30%を変形上限として単軸圧縮を行い、歪率25%のときの応力(gf)を測定し、試作当日と室温保存1日後のホットケーキの硬さ変化量がコントロールに比べて、+10gf以上を×、−10gf〜+10gfを△、−20gf〜−10gfを○、−20gf以下を◎と評価した。結果を表9に示す。
【0067】
その結果、マルトビオン酸カルシウムを0.25%以上配合することで、明らかにホットケーキのボリュームが増し、10%まで添加量に依存して増大した。また、老化抑制効果は0.05%以上で効果が得られ、特に0.25%〜15%添加区では顕著な抑制効果が得られた。
【0068】
【表8】

【0069】
【表9】

【0070】
[実施例8](マルトビオン酸配合によるホットケーキへの影響)
【0071】
マルトビオン酸を実施例7と同様の方法で配合しホットケーキを調製し、ボリュームについて評価すると共に、クリープメータによる硬さ測定を行うことで老化抑制効果についてそれぞれ評価した。結果を表10に示す。
【0072】
その結果、マルトビオン酸を配合することでコントロールに比べ老化抑制効果が見られた。
【0073】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルドースとグルコン酸からなるアルドン酸二糖類又はその塩類又はそのラクトンのいずれか一つ又はそれらの組み合わせを含有することを特徴とするベーカリー製品用品質改良剤。
【請求項2】
アルドン酸二糖類が、マルトビオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、イソマルトビオン酸、コージビオン酸、ニゲロビオン酸から選択された一つ又は組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載のベーカリー製品用品質改良剤。
【請求項3】
塩類が、カルシウム塩又はナトリウム塩又はそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のベーカリー製品用品質改良剤。
【請求項4】
カルシウム塩又はナトリウム塩が、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸ナトリウム、ラクトビオン酸カルシウム、ラクトビオン酸ナトリウム、セロビオン酸カルシウム、セロビオン酸ナトリウム、イソマルトビオン酸カルシウム、イソマルトビオン酸ナトリウム、コージビオン酸カルシウム、コージビオン酸ナトリウム、ニゲロビオン酸カルシウム、ニゲロビオン酸ナトリウムから選択された一つ又は組み合わせであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のベーカリー製品用品質改良剤。
【請求項5】
ラクトンが、マルトビオノラクトン、ラクトビオノラクトン、セロビオノラクトン、イソマルトビオノラクトン、コージビオノラクトン、ニゲロビオノラクトンから選択された一つ又は組み合わせであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載のベーカリー製品用品質改良剤。
【請求項6】
穀類粉末に請求項1から5のいずれか一つに記載の品質改良剤を添加混合して調製したことを特徴とする、ベーカリー製品用生地。
【請求項7】
生地が、冷凍生地又は冷蔵生地であることを特徴とする、請求項6に記載のベーカリー製品用生地。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のベーカリー製品用生地を成形・焼成して製造したことを特徴とする、ベーカリー製品。