説明

ろ過摂食水性有機体用の微生物飼料

本発明は、自然に生成する顕微鏡的な藻類を特定の微生物で代替し、これらの有機体の生長に最適な条件を提供することによってアルテミアのようなろ過摂食動物を養殖する方法を提供する。これらの代替した特定の微生物はアルテミアのために大量の食料源を提供し、次いでアルテミアは海洋の食物連鎖におけるより高位の生物のための食物源を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国の仮特許出願である出願番号60/429,095号、2002年11月26日出願の優先権を主張するものであり、これに言及することによりその全てが取り込まれる。
本発明は、ろ過摂食有機体、例えばアルテミア(Artemia)の水産養殖における生産の増加方法に関し、これらのろ過摂食有機体を養殖魚類、甲殻類及び貝類の養殖における飼料として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
最近、制御された環境で海洋生物種を養殖することがますます一般的になってきた。この養殖は、一般的には水産養殖と呼ばれ、これによって人間が消費する種々の海洋生物種の生産が可能となった。水産養殖を使用して、ますます多くの食用魚類が生産されるようになった。水産養殖は顕著な技術的進展を見せてこの産業の成長を支えてきたが、人工飼料を生産すること又は天然に産する食物、例えばアルテミア、ブラキナス サリナ(Brachinus salina)、ミジンコ等の収穫を増加させることが必要である。
海中にある全ての海洋生命は、究極的には、自身の成長又は食物連鎖にあるその食物の成長のために顕微鏡的な藻類に依存する。この顕微鏡的な藻類は海洋食物連鎖の最初の連鎖であり、ろ過摂食動物、例えば貝類によって直接消費され、残りの海洋生命体によって海中の複雑な食物連鎖を通して間接的に消費される。しかしながら、藻類は1日に約1回しか分裂することがなく、その成長が非常に遅いために、藻類を得ることは容易ではない。このように入手が困難であることから、水産養殖製品のコストが顕著に増加している。
【0003】
水産養殖において天然の食物を複製し又は代替しようとする試みは、限られた範囲でしか成功しなかった。ラベンス等の米国特許第5,158,788号(ラベンス特許)には、イーストからの水産養殖用の飼料を製造する方法が記載されている。ラベンス特許では多段階処理が必要であり、この処理ではイーストの細胞壁を加水分解することによってイースト細胞が処理されて水産養殖用の消化可能な飼料が生成する。残念なことに、ラベンス特許が提案する多段階処理は労働集約的であり、そのため経済的には実行可能ではない。最も重要なことは、この人工飼料の生成に必要な細胞壁の破壊によって、イースト細胞に含まれる細胞物質によって水産養殖の汚染が生じることである。
顕微鏡的な藻類を食物とする、海洋の食物連鎖における一つの重要な天然食物源は、アルテミアである。アルテミアは一般にホウネンエビといわれ、その海洋の食物連鎖における位置及び海洋養殖のより高位の生物に対する食物源として望ましいことから、水産養殖のための優れた食物である。水産養殖における先行技術の食物と異なり、これは水産養殖で使用した微生物及び汚染水によって腐敗することがなく、むしろ汚れた微生物の水を明澄化することから、これは水産養殖用の優れた食物である。アルテミアをエビ類、魚類等の種に対する飼料として使用できることが一般に知られている。
【0004】
しかしながら、水産養殖で使用するためにアルテミアを自然採取することは環境因子に左右され、最近環境因子が品不足をもたらしている。アルテミアはユタ州のグレートソルトレーク湖のような大きな塩水湖で生育する。多年にわたって、アルテミアはグレートソルトレークで採取されてきた。残念なことに、最近の収穫高は貧弱であり、アルテミアシストのコストは3倍以上に増加している。このような最近の貧弱な収穫高は、天候パターンの変化によって生じたと考えられている。温暖な天候及び過剰の降雨によって生じた、エルニーニョ現象を伴う厳しい気候の撹乱は、グレートソルトレークからのアルテミアの生産レベルを劇的に減少させた。1995〜96年及び1996〜97年におけるアルテミアシストの収穫は総質量で約6800トン(1500万ポンド)であった。この収穫物のうち約15%だけが使用に適している。1997〜1998年の収穫は総質量でわずかに約2720トン(600万ポンド)であった。エルニーニョ現象の場合のようなアルテミアシストの収穫の減少は、入手可能性の問題だけでなく、アルテミアシストの価格の急激な高騰をももたらす。この価格の急騰によって、水産養殖用の飼料としてアルテミアを使用することが経済的に許容されなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
世界中にはアルテミアの他の産地はいくつかあるものの、グレートソルトレークが世界のアルテミアのシスト消費の90%以上を提供している。アルテミアの他の産地はロシア、トルコ、及び中国に見出されるが、これらの産地はグレートソルトレークの減少する収穫を埋め合わせていない。水産養殖でアルテミアを生産する種々の方法が検討されており、例えばベトナムでは天然藻類が豊富な池でアルテミアを生長させた。ハワイでは、イースト及びグリーンウォーター(greenwater)を使用してタツノオトシゴびスズキの水産養殖のためにアルテミア及び輪形動物を生育している。残念なことに、これらの種々の試みの成功は限られており、それはこれらの先行技術によるアルテミアの製造方法が労働集約的であり経済的に実現可能ではないからである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
海の全ての生命体のための食物の大部分は顕微鏡的な藻類に端を発する。この顕微鏡的な藻類は貝類のようなろ過摂食動物によって直接消費され、かつ複雑な食物連鎖を通じて残りの海洋生物によって間接的に消費される。本発明の方法は、海洋牧場におけるこの自然現象を模倣することから成り、この場合天然に生じる顕微鏡的な藻類を特定の微生物で置き換え、かつこれらの微生物の成長に適した条件を提供する。これらの置き換えた特定の微生物は、次いで海洋の食物連鎖におけるより高位の生物に対する大量の食物源を提供する。
先に述べたように、顕微鏡的な藻類の生長は非常に遅く、それらに必要なミネラルを提供した場合であっても24時間に約1回しか分裂しない。一方、微生物、例えば細菌、ある種の藻類、藍藻類、及び真菌類は、有機エネルギー源を供給した場合には30分に約1回分裂する。本発明の方法に従うと、ミネラル元素を海水に添加して、選択した微生物の最適な生長のための培養を提供する。
添加したミネラル元素は窒素、リン、及び鉄であり、それはこれらが海水に不足しているミネラル元素であり、これらが全ての生命に必須だからである。添加した元素に加えて、糖(スクロース)を添加してエネルギー源を提供する。本発明の方法を説明する態様において、エネルギー源及び炭素源の両者を提供するためにスクロースを使用する。スクロースは炭素、酸素、及び水素のみから成り、エネルギー源として有利である。しかしながら、スクロースは、この機能を奏することができる炭素性物質の一例に過ぎない。
【0007】
他の食物原料を使用してこれらの特定の微生物の成長を補助することができ、それは以下のような安価な製品を含む:油を搾り取った後のピーナツケーキ、砂糖生産の副産物である廃糖蜜、テンサイシロップ及びサトウキビシロップ等。これらの不利な点はこれらが多種類の微生物の成長を補助し、これには病原性のものあることである。しかしながら、これらの不利な点は海水を塩素で殺菌するか又は海水をろ過することによって改善することができる。しかしながら、培地に外来の微生物が侵入することを阻止するように注意する必要がある。本発明の範囲内において、培養培地内の海水を頻繁に入れ替えて望ましくない微生物が培地を占拠することを阻止することも考えられる。
さらに、本発明の範囲内において、本発明の方法は大気中の二酸化炭素を固定する有効な方法としても使用し得ることが考えられる。大気中の二酸化炭素を植物に固定するためには大量のエネルギーを必要とする。大規模に貝類を生長させる本発明の方法を使用すると、貝類は大気中の二酸化炭素から炭酸カルシウムを生成し、この方法は大気中の過剰の二酸化炭素を軽減するエネルギー効率の良い方法になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、食物源として細菌のような特定の微生物を使用してアルテミアのようなろ過摂食動物を成長させる進歩性のある方法を提供する。他のろ過摂食動物、例えばハマグリ、カキ及びホタテガイ等が本発明の範囲内にあることが企図されている。アルテミアの生長は、既存方法より大きな生産量及び既存方法と同程度の確実性をもって達成される。
本発明の方法に従うと、海水を養殖タンクに入れ、窒素、リン及び鉄を加えて栄養補強し、塩素で殺菌して養殖培地を製造する。塩素を放散させた後、スクロース等の糖及びバチルス メガテリウム(Bacillus megatherium)又は他の適切な有機物の濃縮培養物を養殖培地に添加する。ミネラル類及び糖を加え、培地に通気すると約1日後に濃厚な細菌培養物が形成される。アルテミアのシストを添加すると次いでそれは細菌を消費して生長する。バチルス メガテリウムを一夜培養すると、養殖タンク中で約1/10,000の容量となる。それは、ろ過摂食動物であるアルテミアがバチルス メガテリウムによって生長するからであり、この食物によって生長しうるハマグリ、カキ等の他のろ過摂食動物が本発明の範囲内にあることが企図されている。
【0009】
養殖培地は意図的に簡単でかつ高度に選択的である。高い塩分濃度の海水中では非常に小数の有機体しか生長することができず、ミネラル類及び糖類のみを提供した場合にその複雑な分子の全てを生産する。この養殖培地の単純さによって、有機体が病原性であることはほとんどない。このことは以下に記載する実験で裏付けられ、この実験では、単一の(優勢な)細菌有機体はバチルス メガテリウム及びビブリオ アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)である。ビブリオ属は日和見病原体として分類されることがあるものの、これらの細菌のいずれも病原性であるとは考えられていない。望ましくない有機体の有害な作用を、例えばバチルス メガテリウムのクローン株を使用することによって軽減できることが、本発明の範囲内に含まれる。バチルスは胞子形成性であり、従って純粋培養又は純粋培養に近い培養を維持することが相対的に容易である。
【0010】
いくつかの実施例において、糖を添加すると養殖タンクが濃い緑色になることが見出された。この色の変化は藻類又は藍藻類が養殖培地中に存在し、糖によってそれらの生長が強化されたことを示している。養殖培地に真菌類がさらに見出され、それは大量の不飽和脂肪酸を含んでおり、不飽和脂肪酸は海洋牧場で不足する供給物である。この単純な培地中で真菌類が生育するかどうかは知られていない。
消化するのが困難であるという点を除いてあらゆる点で選択した特定の微生物が適切であることを見出すことができる。ろ過摂食動物、例えばアルテミア又はハマグリを選択する場合には、選択した特定の微生物消化するそれらの能力を考慮に入れる必要がある。自然に生じる特定の微生物を遺伝子的に変化させてより適切な食物を提供することは、本発明の範囲内に含まれる。この遺伝子的な改変によって不飽和脂肪酸の含量を増加させることができるが、これに限定されない。
本発明が例としてより詳細に説明され、これらの例は本発明の方法を単に説明するものとして理解されるべきであり、これらに限定されると理解すべきではない。
【0011】
例1
細菌の栄養価値及び培養の手順を試験するために、以下の実験を行った。2つの200リットルのガラス製水槽を戸外に設置した。水槽の一部を遮光した。水槽を紅海の海水で満たした。第1日目に、グレートソルトレークから得た10mgのアルテミアシスト、鉄EDTA、尿素、及びリン酸水素二ナトリウムを水槽に添加した。水槽の最終濃度は以下のとおりであった:塩化鉄 0.002g/l、EDTAナトリウム 0.0035g/l、リン酸水素二ナトリウム 0.0025g/l、及び尿素 0.05g/l。第3日目に、10gのスクロースを水槽1に添加し、水槽2には何も添加しなかった。23日目に、微細な水槽ネットでアルテミアを収穫し、塗布乾燥し、秤量した。タンク1(糖添加)から27.0gのアルテミアを収穫し、タンク2(糖添加なし)から3.0gのアルテミアを収穫した。実験期間の温度は約25〜36℃の範囲であった。
【0012】
糖を添加した場合には糖を添加しない場合に対して約10倍多くのアルテミアが生産された。糖が存在しなくてもアルテミアはある程度生産され、それは太陽光の一部で藻類がアルテミアの食物を生産したことによると考えられるが、いずれの理論にも拘束されるものではない。食物の大部分は糖が生成した細菌であった。この実験では、1グラムの糖がほぼ3グラムのアルテミア(湿質量)を生産した。
この実験の結果として、池における生産割合は以下のように計算された:200リットル当たり23日間当たり27グラムは、1立方メートルが1000リットルであるから1立方メートル当たりの生産量は27グラムを5倍した量、1立方メートル当たり1年当たり5×27グラム×365/23の量、1ヘクタールは池の深さを1メートルとした場合10,000立方メートルであり、1トンは1,000,000グラムであるから5×27グラムに10,000を掛け365/23を掛け1,000,000で割った1ヘクタールあたり1年当たりのトン数に等しい。これは1ヘクタールあたり1年当たり約21トンに等しい。
この実験はアルテミアシストから出発したので、アルテミアが成体に生長し増殖するまで初期期間は遅い生長期間である。商業生産では、制御された速度で連続して部分的な収穫を行うことにより、生長数を高く保持する。
【0013】
例2
次の説明のための例を屋内で行って温度を制御した。空調によって室温を約27℃に一定に保持した。第1日目に、3個のプラスチックバケツそれぞれに紅海の海水50リットルを入れた。各バケツにグレートソルトレークから得たアルテミアのシスト60ミリグラムを加え、先の実験と同様に窒素、リン、及び鉄を加えた。先の実験と同様にバケツに通気した。第2日目に、バケツ2及び3に、2.5グラムのスクロース、及び細菌の一夜培養物50mlを加えた。細菌の培養物を、500mlの新鮮な海水を取り、鉄、窒素及びリンを予め加え、1リットル当たり0.2グラムの糖を加え、一夜通気することによって製造した。一夜培養することによってかなり濁った。第5日目に、バケツ3に2.5グラムの糖を加え、最初に加えたものと当量の窒素、リン及び鉄を加えた。バケツ3にさらに50mlの細菌培養物を加えた。第9日目及び第13日目に、バケツ3に前回と同様に窒素、リン及び鉄を加え、50mlの細菌培養物を加えた。第9日目及び13日目に、バケツ3だけにそれぞれ5グラムの糖を加えた。第16日目にアルテミアを収穫し秤量した。
【0014】
細菌の接種における少量の糖を除いて糖を添加しなかったバケツ1では検出できるアルテミアを得られなかった。全量で5.0グラムの糖を加えたバケツ2から2.3グラムのアルテミアを得、全量で15グラムの糖を加えたバケツ3から16.8グラムのアルテミアを得た。
さらに、培養培地に糖を加えると、細菌及びアルテミアが生長する。加えた糖が少ないと生産されるアルテミアは少ない。日光がない密閉された室内では、培地中で藻類は生長せず、糖がないとアルテミアは生産されない。特定のいずれの理論に拘束されるものではないが、アルテミアは糖があると生長するが日光がないと複製しないと考えられる。子のアルテミアは見出せず、アルテミアは連結しない。このことは最終収量を低下させ、それは有性生殖によって最終収量は最初に加えたシストから誘導された成体だけでなくその子孫からも成っているからである。
糖1グラム当たりのアルテミアの収量は、糖1グラム当たり1グラムをやや超えるアルテミア(湿質量)であった。1年当たりの深さ1メートルの池1ヘクタール当たりの収量は、1年当たり1ヘクタール当たり約50トンである。この実験の不備は、バケツ1に添加していない糖がバケツ3に添加されていることだけではなく、バケツ1に添加していない追加のミネラル及び細菌の接種をバケツ3に対して行っていることであった。このことは、重大な因子が糖であることを示すさらなる実験において是正された。
【0015】
例3
さらなる説明のための例を、それぞれ50リットルの4個のプラスチックバケツについて行った。上記の海水に加えて、先の説明のための例と同様に窒素、リン、鉄及び約60ミリグラムのアルテミアシストを加えた。第2日目に、バケツ2、3及び4に2.5グラムの糖(1ml当たり0.25グラムの糖を含む液10ml)を加えた。さらにこれらのバケツに50mlの一夜培養した細菌培養物を添加した。第3日目に、100ワットの電球を水面から約15cm(6インチ)に保持してバケツ2を照射した。この光を実験期間中保持した。第5日目に、2.5グラムのスクロースをバケツ2、3及び4に添加した。第5日目に、50mlの細菌培養物を全てのバケツに加えた。第9日目に、2.5グラムのスクロースをバケツ2、3及び4に加え、50mlの細菌培養物をさらに全てのバケツに加えた。第12日目に、2.5グラムの糖をバケツ2、3及び4に加え、全てのバケツに50mlの細菌培養物及び最初に加えたのと同等の窒素、リン及び鉄を加えた。
16日目に、アルテミアを収穫し秤量した。糖を添加しなかったバケツ1は、検出可能なアルテミアを生産しなかった。10グラムの糖を添加しかつ光を照射したバケツ2は、7.97グラムのアルテミアを生産した。10グラムの糖を添加しかつ光を照射しなかったバケツ3は、6.08グラムのアルテミアを生産した。バケツ4は空気ポンプが壊れ全てのアルテミアが死滅したので、収穫はなかった。
糖が培養培地に添加される場合、細菌とアルテミアは生長する。糖を添加せずかつ光を照射しないと、アルテミアは生産されない。100ワットの電球からの光によって、光がない場合より多くのアルテミアが生産される。電球は、自然の太陽光の完全スペクトルより少ない光を提供する。太陽光が強いプラスの効果を持つように生産の実行を戸外で行うことは、本発明の範囲に含まれる。光の効果が光自身によるのか又は藻類のわずかな生産によるのかはわかっていない。説明のためのこの例では、1グラムの糖当たり約0.8グラムのアルテミアが得られた。
【0016】
例4
さらに説明のための例を、屋外の影においたプラスチック管で行った。第1日目に、3個のプラスチック管のそれぞれに20リットルの海水を満たし、ミネラル、窒素、リン及び鉄を前記のように添加した。各管に約24ミリグラムのアルテミアシストを加えた。管に通気した。第2日、5日、9日、12日及び14日目に、1グラムのスクロースを管1及び2に加えた。スクロースを加えた同じ日に、20mlの細菌培養物を3個の全ての管に加えた。18日目に、アルテミアを収穫し秤量した。管1は2.12グラムのアルテミアを生産し、管2は2.20グラムを生産し、糖を添加しなかった管3は0.15グラムを生産した。いずれの特定の理論に拘束されるものではないが、上昇した温度のために収量が低下したが、糖は重要であると考えられる。糖がない場合に比べて糖がある場合は10倍以上アルテミアが生産された。
【0017】
例5
説明のためのさらなる例において、実験施設に隣接する地域であるホノルル湾から得た海水を容器に入れた。1リットル当たり約100mgの濃度でスクロースを海水に加えた。さらに、1リットル当たり約50mgの濃度で無機物、例えば尿素、リン酸ナトリウム、EDTA及びFeCl3を海水に加えた。容器を密閉し空気をガラスプラグを通じてその中に吹き込んだ。約2日間で濃密な細菌の大増殖が生じた。培養物中の細菌は第一義的には多面的な桿菌であるが、速く泳ぐ細菌も少数あった。この細菌培養物は“野生の塩水細菌”(WSB)から成り、この例のための出発細菌であった。
研究センターで、約5000リットルの海水を入れた大きなポリエチレンタンクにおいて、大きなタンク試験を行った。タンクを戸外に置き、部分的に遮光した。タンクは通気し、水温を約28〜29℃の範囲とした。6%の次亜塩素酸塩(すなわちクロロックス)でタンクを殺菌した。海水1000リットル当たり約750mlの6%次亜塩素酸塩を添加した。約1日通気することによって、次亜塩素酸塩が自然に放散されるままとした。次亜塩素酸塩がタンクから放散された後で、約60グラムのアルテミアシストを添加した。次の日(第2日目)、及び第5、7、9及び11日目に、1:000希釈の細菌、無機物及び原料を添加した。
12日目に、収穫した。シストから成体への生存はわずかに約7%であったが、約60グラムのシストからの総収量は約3031グラムのアルテミアであり、顕著なものであった。最終アルテミア濃度は1リットル当たり約0.6グラム、すなわち海水約4ml当たり1個のアルテミアであった。タンク内のアルテミアの生長は良好であり、細菌が水から急速に消失し、より濃厚な希釈の細菌を5日目及び7日目(1:250希釈の細菌)並びに9日目及び11日目(1:125希釈の細菌)を使用した。
【0018】
例6
さらなる説明のための例において、実験施設に隣接する地域にあるホノルル湾から再度海水を得て容器に入れた。1リットル当たり約100mgの濃度で海水にスクロースを加えた。さらに海水に、無機物、例えば尿素、リン酸ナトリウム、EDTA及びFeCl3を1リットル当たり約50mgの濃度で加えた。容器を密閉しガラスプラグを通じて空気をその内部に吹き込んだ。約2日後、濃厚な細菌の大増殖が生じた。培養物中の細菌は第一義的には多面性の桿菌であるが、速く泳ぐ細菌もあった。この際菌培養物はWSBから成っており、この例のための出発細菌培養物であった。
この説明のための例は、2リットルのフラスコにオートクレーブ処理した海水1リットルを入れたものであって、無機物及び原料を上記の濃度で含むもので行われた。2リットルのフラスコは屋内にあって常時被覆されていた。フラスコは常に通気され、外部から空気ブランケットによって分離され、温度は約23℃に保たれた。第1日目に、6ミリグラムのアルテミアシストをフラスコに加えた。第2日、第5日、第7日、第9日及び第11日に、1:1000希釈の野生の塩水細菌及びスクロースを添加した。アルテミアの成長が早く細菌を急速に補食するので、追加の細菌をより低い希釈である1:100で加え、かつ細菌の追加を10日目及び12日目に上記の追加に加えて行った。
13日目に収穫した。フラスコの総収量は、約6ミリグラムのシストから約2.3グラムのアルテミアであった。最終のアルテミアの濃度は1リットル当たり約2.3グラムであった。生産された2.3グラムのアルテミアは、13日間の生長の間に約1.2グラムのスクロースを消費している。アルテミアのふ化及び生存率は約54パーセントであり、アルテミアの大きさは通常大きい。
【0019】
例として挙げた本発明の態様がアルテミアを飼料として使用することを示唆しているとしても、当業者はこれらのアルテミアが単独で使用され、又は本発明の方法に従って生長した他のろ過摂食動物と組み合わせて使用され、又は常用の飼料との混合物で使用されることを理解するであろう。
例として挙げた本発明の態様がアルテミアをろ過摂食動物として使用することを示唆しているとしても、当業者は他のろ過摂食動物、例えばハマグリ及び軟体動物を使用し得ることを理解するであろう。
例として挙げた本発明の態様が特定の微生物として細菌を使用することを示唆するとしても、当業者は培養培地中で分裂する他の微生物を使用し得ることを理解するであろう。
本発明がその例示的な態様に関して示されかつ記載されたとしても、その形態及び詳細における種々の他の変化、削除及び追加は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むろ過摂食動物の養殖方法:
微生物を有する海水を含むタンクを準備する工程;
該海水に必須元素を加える工程;
該海水に食物源を加えて混合物を形成し、該混合物を連続して通気しこれによって細菌の濃密な大増殖を形成する工程;及び
該混合物にアルテミアのシストを加える工程。
【請求項2】
必須元素を窒素、鉄及びリンから選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微生物がバチルス メガテリウム(Bacillus megatherium)及びビブリオ アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)から成る群から選択する細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
微生物が野生の塩水細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細菌が遺伝子工学により追加の栄養特性が増強されている、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
細菌がバチルス メガテリウム(Bacillus megatherium)及びビブリオ アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)から成る群から選択するクローン細菌である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
食物源がスクロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
食物源を廃糖蜜、ピーナツケーキ、サトウキビシロップ及びテンサイシロップから成る群から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ろ過摂食動物がアルテミアである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ろ過摂食動物をハマグリ及び軟体動物から成る群から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
海水から成体アルテミアを収穫する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
海水を殺菌する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
殺菌工程が海水へ塩素を添加することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
殺菌工程が海水をオートクレーブ処理することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
殺菌工程が海水をろ過することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
海水を交換して望ましくない有機体を阻止する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項9に記載のアルテミアシスト又はアルテミアノープリウス(nauplii)の生産を含む、魚類又は甲殻類の幼生用の食物の製造方法であって、この場合アルテミアシストの発生によって放出され又は卵胎生生殖によって生じたノープリウスが該幼生に給餌される。
【請求項18】
アルテミアシストが他の飼料との混合物で幼生に給餌される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アルテミアシストがハマグリ、カキ、サバヒー及び軟体動物に給餌される、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2006−507826(P2006−507826A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555833(P2004−555833)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/038197
【国際公開番号】WO2004/047523
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505195144)
【Fターム(参考)】