説明

ろ過装置およびろ過装置の運転方法

【課題】散気管の配置の改善や、ろ過膜表面のクロスフロー流速の均一性を向上させることで、ろ過膜の閉塞を抑制するろ過装置およびその運転方法を提供する。
【解決手段】液体を入れた水槽内に浸漬するように設置されるろ過膜と、前記ろ過膜の下方に配置された1本以上の散気管と、前記散気管に気体を供給する送風機と備え、該散気管から排出される気泡の横方向の拡散範囲幅が前記ろ過膜の幅に対して均等になるように前記散気管が配置されており、前記ろ過膜の下端幅Aと、前記ろ過膜から前記散気管の気体放出口までの距離Bと、散気管の数nの関係が式1を満足することを特徴とする。
B≧4.1xA÷n

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過膜をバブリングして、ろ過膜の閉塞を抑制するろ過装置およびろ過装置の運転方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ろ過膜と、ろ過膜の下に3つに分岐した散気管を備え、この散気管の両端から同圧力で空気を送り込むことで、散気管から発生する気泡を均一にするろ過装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、濾過フィルタと、濾過フィルタの下方から気体を供給する第1のパイプと、この第1のパイプと接続部を介して接続され第1のパイプに気体を供給する第2のパイプとを備えたろ過装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−10848号公報
【特許文献2】特開2005−334829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献1,2は、発生する気泡を均一にさせることについて開示しているが、具体的にどのように装置を構成するか記載が不十分であるため、必ずしも気泡の発生が均一化できるとは限らないという課題がある。また、ろ過膜の下端と散気管との距離が長いほど散気管の数を少なくでき、装置のイニシャルコストを低減できるが、一方、水槽の水深を深くする必要が出てくるため、散気管から空気を噴出す圧力が高くなるので送風機の消費電力が高くなったり、吐出圧力の高いより大型な送風機を用いなければならなくなるという問題点があった。
【0006】
上記の課題を解決するべく、本発明は、ろ過膜と散気管の距離を改善することで、ろ過膜の閉塞を抑制できるろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るろ過装置は、液体を入れた水槽内に浸漬するように設置されるろ過膜と、前記ろ過膜の下方に配置された1本以上の散気管と、前記散気管に気体を供給する送風機と備え、該散気管から排出される気泡の横方向の拡散範囲幅が前記ろ過膜の幅に対して均等になるように前記散気管が配置されており、前記ろ過膜の下端幅Aと、前記ろ過膜から前記散気管の気体放出口までの距離Bと、散気管の数nとの関係が下記式1を満足することを特徴とする。
B≧4.1xA÷n ・・・式1
上記の構成によれば、ろ過膜の幅の全体に気泡を分散させることができ、固形分が膜表面に堆積することを防止できる。そのため、ろ過膜の閉塞を抑制できる。
【0008】
また、本発明に係るろ過装置の前記散気管は、軸方向を水平に配置した管に、該軸より下側の管側面に前記気体放出口として孔を開けた構造であることを特徴とする。
上記の構成によれば、ろ過装置の曝気を停止した際に散気管内に周囲の水が流入し、固形分が散気管内部に堆積しても、散気管への送風を再開すると流入した固形物が散気管外部に輩出されやすくなる。
【0009】
また、本発明に係るろ過装置の前記散気管と前記送風機を接続する配管の少なくとも一部は、前記水槽の水位より上にあることを特徴とする。
上記の構成によれば、送風機がろ過装置の水槽の水位より低い位置に配置されていたとしても、水槽内の水が散気管を経由して送風機に逆流することを防止できる。
【0010】
また、本発明に係るろ過装置の前記散気管と前記送風機を接続する配管に、逆流防止弁を備えることにしてもよい。
また、本発明に係るろ過装置の前記送風機が、前記ろ過装置の水槽の水位より上に配置することがより望ましい。
【0011】
上記の構成によれば、水槽内の水が散気管を経由して送風機に逆流することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ろ過膜と散気管の距離を改善することで、ろ過膜の閉塞を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る概略構成図である。
【図2】水槽に浸漬されたろ過膜を上面から見た図である。
【図3】検証実験において、2ケ月連続運転後のろ過膜の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るろ過装置の実施形態を説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
【0015】
図1は、本発明の実施形態におけるろ過装置の概略構成図である。
ポンプ7は、懸濁物を含んだ汚水を水槽5に流入させる。流入汚水量は、流量計14で計測され、制御装置6に入力される。ポンプ7の流入量は、制御装置6で制御されている。水槽5内には仕切り板17で区画された領域があり、上部と下部は相互に通水可能な空間がある。仕切り板17と水槽5の壁に挟まれた空間にろ過膜1が設置され、その下方には、散気管2が備えられている。散気管2には、孔3が複数開けられている。具体的な散気管の態様としては、管の軸方向を水平に配置した内径13mmの塩化ビニル製の管に、該軸より下側の管側面に前記気体放出口として直径2mmの孔が開けられている。管の軸の鉛直下向き方向に対して、左右2方向に角度22.5度の方向に孔を2列開けた構造としている。各孔は、ろ過膜の間の真下になる様に設けられている。
【0016】
散気管2は、配管L1を介して送風機4に接続されている。この配管L1は、水槽水位より高い位置まで立ち上がっている。配管L1を水槽水位より高い位置まで立ち上げない場合には、配管L1に逆流防止弁を設けたり、送風機を水槽の水位より上に配置したりしても良い。
【0017】
配管L1には、弁11と流量計13が備えられている。流量計13の流量信号は、制御装置6に入力される。制御装置6は、水処理およびろ過膜に必要な送風量を演算し、必要量を送風するように送風機4と弁11を制御する。水槽5内には、活性汚泥が貯留されており、流入する汚水が生物学的に浄化される。
【0018】
ろ過膜1が複数枚用いられている場合は、膜間隔を調整するスペーサーが設置されている。ろ過膜間の間隔は、7mmから10mm程度が望ましく、8mmがより望ましい。間隔が狭くなる程、クロスフロー流速は増加するが、汚泥が膜面に閉塞し易くなる。逆に、間隔が広くなる程、クロスフロー流速は減少し、ろ過膜が閉塞し易くなる。
【0019】
各ろ過膜は、配管を通してポンプ8に接続されており、濾液が吸引される。この配管には、圧力計15、弁10が設置されている。ポンプ8は、水槽5に流入する流量と同じ量を吸引ろ過するように制御装置6で制御されている。圧力計15は、ろ過装置稼動中のろ過膜の閉塞状態を計測するために用いられている。
【0020】
散気管2から噴出される気泡により、上昇流が発生するが、仕切り板17を超えると、仕切り板17の下側の空間に向けて下降流になり、活性汚泥が循環する。
ポンプ9は、弁12を介して水槽5に接続している。制御装置6は、汚水処理の進行に伴って増加する活性汚泥を引き抜くようにポンプ9と弁12を制御している。
【0021】
イニシャルコストをランニングコストのどちらを優先するかによって、所定のろ過膜サイズに対する散気管の数と、ろ過膜と散気管の距離とろ過膜の高さに基づいて算出される散気管の水深と、送風機の最低吐出圧力が決定される。
(検証実験)
上記図1のろ過装置の構成において、ろ過膜と散気管の位置を上記式1の距離Bより短い状態にして、2ケ月間の連続運転を行った後、ろ過膜を引き上げて状態を観察した結果を図3に示す。散気管の孔から上方に16度の逆三角形の形状の範囲にはろ過膜上に汚泥が付着しておらず、その範囲より下のろ過膜表面には汚泥が付着しておりこの部分のろ過膜が閉塞していた。
【0022】
次に、上記式1を導いた過程を説明する。三角関数の関係式から下記式2が成り立つ。
tanθ = X/Y ・・・式2
X:散気管の曝気によって汚泥付着が防止される幅の半値
Y:ろ過膜下端から散気管までの距離
θ:散気管の孔から上方の垂線と、ろ過膜上に汚泥が付着し始める境界線とのなす角
式を変形すると、
Y = 2X/(2tanθ) ・・・式3
散気管の孔から上方に垂線を引き、この垂線とろ過膜上に汚泥が付着し始める境界線とのなす角は、8度であり、マージンを取るために、なす角を7度として上記式3に適用することがより望ましい。
1/2tanθは、なす角を8度まで許容する場合は3.6であり、なす角を7度まで限定的に許容する場合は4.1とされる。散気管が複数あり均等に配置される場合は、散気管の数に応じて上記2Xの幅でろ過膜下端の全体の幅を分割し、各散気管で分担して曝気すればよいので、式1では、式3の右辺を散気管の数nで割っている。上記式1のろ過膜から散気管の気体放出口までの距離Bが長くなればなる程、散気管の水深が深くなるので、曝気に要する電力が大きくなるデメリットがある。そこで、距離Bは、なるべく短いほうが望ましい。一方、距離Bを短くするには、散気管の数を増やすことになり、装置のイニシャルコストが増加する。より具体的には、1つの散気管が分担するろ過膜下端の幅は、10cmから15cmがよく、13cm程度がより望ましい。
【0023】
従って、ろ過膜の下端幅Aに対して、式1を満足するような距離Bおよび数nの散気管を配置すれば、気泡による膜表面の洗浄によって汚泥などの固形物の付着が防止できることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0024】
1 ろ過膜
2,2a,2b,2c 散気管
3 孔
4 送風機
5 水槽
6 制御装置
7,8,9 ポンプ
10,11,12 弁
13,14 流量計
15 圧力計
16 流量調整弁
17 仕切り板
18 スペーサー
L1 配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入れた水槽内に浸漬するように設置されるろ過膜と、前記ろ過膜の下方に配置された1本以上の散気管と、前記散気管に気体を供給する送風機と備え、
該散気管から排出される気泡の横方向の拡散範囲幅が前記ろ過膜の幅に対して均等になるように前記散気管が配置されており、
前記ろ過膜の下端幅Aと、前記ろ過膜から前記散気管の気体放出口までの距離Bと、散気管の数nとの関係が、B≧4.1xA÷nを満足することを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記散気管は、軸方向を水平に配置した管に、該軸より下側の管側面に前記気体放出口として孔を開けた構造であることを特徴とする請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記散気管と前記送風機を接続する配管の少なくとも一部は、前記水槽の水位より上にあることを特徴とする請求項1または2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記散気管と前記送風機を接続する配管に、逆流防止弁を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記送風機が、前記ろ過装置の水槽の水位より上に配置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のろ過装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−56298(P2013−56298A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195967(P2011−195967)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】