説明

ろ過装置

【課題】ろ過エレメントの破損に好適に対応しうるろ過装置を提供する。
【解決手段】各浸漬膜(1)のろ過水出口と集水管(2)のろ過水入口とをそれぞれ連結するろ過水管(3)の内部に安全ネット(4)を設置する。一つの浸漬膜(1)で破損が生じ、その浸漬膜(1)のろ過水管(3)に原水(S)が流入すると、そのろ過水管(3)の安全ネット(4)が原水(S)中の固形物(P)により短時間で閉塞され、そのろ過水管(3)での流れが止まる。
【効果】破損したろ過エレメントが自動的に除去されたことになるので、残りのろ過エレメントで支障なく運転を継続できる。破損したろ過エレメントのろ過水管(3)が原水(S)で濁っているのを視認でき、容易に発見できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関し、さらに詳しくは、ろ過エレメントの破損に好適に対応しうるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ろ過膜を用いたろ過モジュール(膜モジュール)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ろ過モジュール(ろ過分離円筒膜カートリッジ)をろ過水管(排水管)で集水管に連結する構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、ろ過膜の破損を考慮して、ろ過膜を直列2段にする構成が知られている(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開平11−33363号公報
【特許文献2】特開2002−306932号公報([0031])
【特許文献3】特開平6−15271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数のろ過エレメントを用いたろ過装置で、一つのろ過エレメントが破損すると、ろ過水に原水が混入し、ろ過水が濁る。従来技術では、この濁りを視認により発見した保守員が、運転を止めて、破損したろ過エレメントを探し出し、その破損したろ過エレメントを除去し、残りのろ過エレメントで運転を再開していた。
しかし、これでは、運転停止時間が相当長くなり、ろ過装置の稼働効率が低下してしまう問題点がある。また、ろ過エレメントが破損したことを保守員が発見するまでに時間がかかる可能性があり、その間、ろ過水に原水が混入し続ける問題点がある。
他方、ろ過膜を直列2段にする構成では、ろ過水に原水が混入する問題点は解消できる。
しかし、ろ過装置が大型化し、広い設置スペースが必要になる。また、ろ過膜が余分に必要なため、設備コストが増大する。さらに、ろ過水をろ過膜に2重に通すため、電力コストが増大する問題点がある。
そこで、本発明の目的は、ろ過エレメントの破損に好適かつ安価な装置で対応しうるろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、原水をろ過する複数のろ過エレメントと、前記各ろ過エレメントのろ過水出口にそれぞれ連結される複数のろ過水管と、前記原水中の固形物により閉塞されうる複数の小開口を有し且つ前記ろ過水管の内部に設置される安全部材とを具備したことを特徴とするろ過装置を提供する。
上記第1の観点によるろ過装置では、一つのろ過エレメントが破損すると、そのろ過エレメントのろ過水管に原水が混入するため、そのろ過水管の内部に設置される安全部材が原水中の固形物により短時間で閉塞されてしまう。つまり、破損したろ過エレメントが自動的にろ過停止されたことになる。従って、運転を止める必要がなくなり、ろ過装置の稼働効率の低下を防止することが出来る。また、破損したろ過エレメントが短時間で自動的にろ過停止されるから、ろ過水への原水の混入を短時間で自動的に止めることが出来る。また、ろ過水管の内部に安全部材を設置するため、ろ過装置のサイズが変わらず、設置スペースが増大することはない。また、安全部材はろ過膜に比べて格段に安価なため、設備コストの増大を抑えることが出来る。さらに、ろ過膜の破損が無い通常運転時には、安全部材によるろ過抵抗はほとんど無いため、電力コストの増大も抑えることが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による膜ろ過装置において、前記ろ過水管は、前記原水中の固形物により前記安全部材が閉塞されたことを視認しうる透明部分を、前記安全部材と前記ろ過エレメントの間に有することを特徴とするろ過装置を提供する。
上記第2の観点によるろ過装置では、一つのろ過エレメントが破損すると、その破損したろ過エレメントのろ過水管の透明部分に濁った水が見える。従って、保守員が複数のろ過水管を点検することにより、破損したろ過エレメントを容易に発見できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のろ過装置によれば、省スペース、低コストの装置により、一つのろ過エレメントが破損しても運転を止める必要がなくなる。また、ろ過水への原水の混入を短時間で自動的に止めることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
図1は、実施例1に係る膜ろ過装置100の斜視図である。
この膜ろ過装置100は、例えば100枚の浸漬膜1と、各浸漬膜1からのろ過水を集めるための集水管2と、各浸漬膜1のろ過水出口と集水管2のろ過水入口とをそれぞれ連結するろ過水管3と、ろ過水管3の内部に設置される安全ネット4と、集水管2にろ過水Dを集めるためのポンプ5と、浸漬膜1の外面を気泡で洗浄するための散気管6とを具備している。
浸漬膜1などは、原水Sに浸かっている。
【0009】
図2に示すように、ろ過水管3は、集水管連結具2aで集水管2に連結されており、集水管連結具2aの上に乗るように安全ネット4が設置されている。
ろ過水管3は、耐食性・柔軟性があり且つ透明な樹脂チューブである。
【0010】
図3は、安全ネット4の平面図である。図4は、図3のA−A’断面図である。
安全ネット4は、耐食性がある樹脂(例えばポリエチレン)成形物であり、中央がメッシュ部4aになり、周縁が枠部4bになっている。メッシュ部4aの直径は例えば5.5mm、枠部4bの外径は例えば9mmである。
【0011】
さて、浸漬膜1が破損していないときは、固形物を含まないろ過水Dがろ過水管3に流れるから、安全ネット4は塞がらず、正常に運転を継続できる。この時、図1に示すように、全てのろ過水管3に濁りは見られない。
【0012】
例えば一番左側の浸漬膜1で、ろ過膜の破れ等の破損が起こると、原水Sが流入し、一番左側の浸漬膜1のろ過水管3を原水Sが流れる。
すると、図5に示すように、一番左側の浸漬膜1のろ過水管3の安全ネット4が原水中の固形物Pにより短時間で閉塞される。このため、一番左側の浸漬膜1のろ過水管3での流れが止まる。つまり、破損した一番左側の浸漬膜1が自動的に除去されたことになる。従って、残りの99枚の浸漬膜1で支障なく運転を継続できる。
【0013】
また、定期メンテナンス時や、濁度・ろ過水量に異常が見られた時などに、ろ過水管3が原水Sの水面上に現れるように水面との相対位置を操作すれば、破損した一番左側の浸漬膜1のろ過水管3が原水Sで濁っているのを視認できるから、破損した浸漬膜1を容易に発見できる。
なお、ろ過水管3が原水Sの水面より上に現れるように元々の水面との相対位置を設定しておけば、破損した一番左側の浸漬膜1のろ過水管3が原水Sで濁っているのをいつでも視認できるから、破損した浸漬膜1を直ちに発見できる。
【0014】
安全ネット4のメッシュ部4aの目の粗さは、原水Sに含まれる固形物の大きさと量、ろ過水管3での流量、原水Sの混入を許容できる時間の長さ、安全ネット4に起因する圧力損などを考慮して、選択する。
例えば、原水Sが有機汚泥(生活排水)で、流量が20L/hで、安全ネット4の閉塞時間を30分とし、圧力損を運転圧力の0.5%以下とすると、10メッシュ〜40メッシュを選択すればよい。
また、例えば、原水Sが無機汚泥で、流量が20L/hで、安全ネット4の閉塞時間を30分とし、圧力損を運転圧力の0.5%以下とすると、40メッシュ〜70メッシュを選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のろ過装置は、浄水、排水及び廃水処理施設などの水処理施設で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1に係る膜ろ過装置(正常時)を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係るろ過水管と安全ネットを示す斜視図である。
【図3】実施例1に係る安全ネットを示す平面図である。
【図4】図3のA−A’断面図である。
【図5】実施例1に係る膜ろ過装置(破損時)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1 浸漬膜
2 集水管
2a 集水管連結部
3 ろ過水管
4 安全ネット
4a メッシュ部
4b 枠部
5 ポンプ
6 散気管
100 膜ろ過装置
D ろ過水
P 固形物
S 原水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をろ過する複数のろ過エレメントと、前記各ろ過エレメントのろ過水出口にそれぞれ連結される複数のろ過水管と、前記原水中の固形物により閉塞されうる複数の小開口を有し且つ前記ろ過水管の内部に設置される安全部材とを具備したことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
請求項1に記載のろ過装置において、前記ろ過水管は、前記原水中の固形物により前記安全部材が閉塞されたことを視認しうる透明部分を、前記安全部材と前記ろ過エレメントの間に有することを特徴とするろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−104930(P2010−104930A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280617(P2008−280617)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000193508)水道機工株式会社 (50)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】