説明

アイソレータ

【課題】遮断保持又は自己復旧を任意に切り替えることを可能にしたアイソレータを提供する。
【解決手段】火災受信機10と、火災受信機10の端末系統毎にそれぞれ接続された感知器S1〜Snとの間に接続され、端末系統の短絡を検出すると、火災受信機10と感知器S1〜Snとの接続を遮断するアイソレータ12において、火災受信機10と端末系統の感知器とを定常的には接続している切り離し回路23と、端末系統の短絡を検出する短絡検出部28と、短絡検出部28の短絡信号に基づいて火災受信機10と端末系統の感知器とを切り離し回路23により切り離させる切り離し制御部29と、切り離し状態を保持するか又は自己復旧するかが設定されるスイッチ31と、短絡検出部28の短絡信号に基づいて切り離し保持制御信号を出力するCPU30と、CPU30の切り離し保持制御信号及びスイッチ31の設定に基づいて切り離し回路23による切り離し状態を保持させる切り離し保持制御部32とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイソレータに関し、特に、火災受信機と、火災受信機の端末系統毎にそれぞれ接続された端末機器との間に接続され、端末系統の短絡を検出すると、火災受信機と端末機器との接続を遮断するアイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアイソレータとして、例えば「感知器と警報受信機とを接続する感知器ラインLに使用され、その電圧レベルを監視する電圧検出回路と、感知器ラインLを遮断又は復旧するスイッチング回路と、固有のアドレスを保持するアドレス回路と、警報受信機からの制御信号を受信する受信回路と、上記スイッチング回路を制御する制御回路とにより構成される…」ものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3470466号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のアイソレータは、感知器ライン毎に、短絡を検出した際に遮断を保持するか又は自己復旧するかを設定することができなかった。したがって、遮断を保持する形式のアイソレータを一過性の短絡現象が頻繁に発生する感知器ラインに設置すると警報が多くなり、現場の保守作業者からの誤報低減の要望に対して柔軟に応じることができなかった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、遮断保持又は自己復旧を任意に切り替えることを可能にしたアイソレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るアイソレータは、火災受信機と、前記火災受信機の端末系統毎にそれぞれ接続された端末機器との間に接続され、前記端末系統の短絡を検出すると、前記火災受信機と前記端末機器との接続を遮断するアイソレータにおいて、前記火災受信機と前記端末系統の端末機器とを定常的には接続している切り離し回路と、前記端末系統の短絡を検出する短絡検出回路と、前記短絡検出回路の短絡信号に基づいて前記火災受信機と前記端末系統の端末機器とを前記切り離し回路により切り離させる切り離し制御部と、切り離し状態を保持するか又は自己復旧するかが設定される遮断状態設定部と、前記短絡信号及び遮断状態設定部の設定に基づいて前記切り離し回路による切り離し状態を保持させる切り離し保持制御部とを備えたものである。
【0006】
本発明に係るアイソレータは、前記短絡検出回路の短絡信号に基づいて切り離し保持制御信号を出力する演算手段を有し、前記遮断状態設定部は、前記演算手段と前記切り離し保持制御部とを接続するスイッチから構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、遮断状態設定部に切り離し状態を保持するか又は自己復旧するかを設定することができ、このため、火災警報システムに例えば遮断状態を保持する形式のアイソレータを用いる場合において、特定の分岐線においては一過性の短絡現象が頻繁に発生する場合には、その分岐線のアイソレータだけは安全性を向上させるため自己復旧するようにすることが簡単にできる。警報システムの稼働後の現場の状況に合わせて設定を切り替えることができるので、現場の保守作業者からの誤報低減の要望に対して柔軟に応じることができる。
また、遮断状態設定部は、演算手段と切り離し保持制御回路とを接続するスイッチから構成され、切り離し状態を保持するように設定する場合にはスイッチを閉じ、自己復旧するように設定する場合にはスイッチを開くようにすればよいので、現場の保守作業者でも簡単に取り扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施形態1.
図1は本発明の実施形態1に係るアイソレータの構成図であり、図2は図1のアイソレータを用いた火災警報システムの構成図である。図2の火災警報システムは、火災受信機10と、火災感知器等の感知器S1〜Snと、火災受信機10と感知器S1〜Snとを接続している伝送線路11に設けられたアイソレータ12,13,14とから構成される。この警報システムの伝送線路11は、分岐線11a、11b、11cへ分岐しており、各分岐線11a、11b、11cにそれぞれ複数の感知器が接続され、分岐点の直後の分岐線11a、11b、11c上にそれぞれアイソレータ12,13,14が設置されている。伝送線路11及び分岐線11a、11b、11cはそれぞれ1対の電線から構成されており、火災受信機10からアイソレータ12,13,14及び感知器S1〜Snに電源が供給されている。感知器S1〜Snにより検知された例えば火災信号は分岐線11a、11b、11c及び伝送線路11に多重化されて火災受信機10に送信される。火災受信機10はこの火災信号を受信すると警報ベルを鳴動させて火災発生を発報する。また、例えば分岐線11aが点aにおいて短絡した場合には分岐線11aの電圧が低下するので、アイソレータ12はその電圧低下を検出して分岐線11aを遮断する。なお、アイソレータ12,13,14は必ず分岐点の直後に設けられるものではなく、一本の伝送線路に所定間隔毎に設けられることもある。
【0009】
図2のアイソレータ12,13,14は、図1に示されるように構成されている。ここでは、アイソレータ12について説明するが、アイソレータ13,14もその構成は同一である。分岐線11aは正導体11a(P)と負導体11a(N)とから構成されており、これらが伝送線路11に接続されている。アイソレータ12は、分岐線11aに接続されており、その入力側及び出力側には例えばサージアブソーバ等からなる保護回路21,22がそれぞれ配置されており、この保護回路21と22との間に切り離し回路23が配置される。この切り離し回路23は、スイッチング素子(例えばFET)24、抵抗25、ツェナーダイオード26及び抵抗27から構成されており、定常状態においてはスイッチング素子24がソース・ゲート間に制御電圧が印加されてオン状態になっており、感知器側と導通状態になっている。
【0010】
この切り離し回路23よりも出力側には短絡検出部28が配置されており、短絡検出部28はアイソレータ12の出力側の電圧を検出し、それを基準電圧と比較して、基準電圧よりも低い場合には、感知器側の端末系統で短絡現象が起きているとして、その短絡現象を検出する。短絡検出部28は、感知器側での短絡現象を検出すると、短絡信号を切り離し制御部29に出力する。切り離し制御部29は短絡検出部28からの短絡信号を入力すると、切り離し回路23を動作させてFETによるスイッチング素子24のソース・ゲート間に制御電圧が印加されないようにしてオフ状態にさせることにより、分岐ライン11aの正導体11a(P)を遮断し、感知器側の端末系統から切り離す。
【0011】
また、このとき、切り離し制御部29は短絡信号をCPU30に出力する。CPU30は、切り離し制御部29から短絡信号を入力すると、切り離しを保持するための切り離し保持制御信号をスイッチ31を介して切り離し保持制御部32に出力する。なお、上記のスイッチ31は例えばジャンパー線、短絡コネクタ等により構成される。切り離し保持制御部32はCPU30からの切り離し保持制御信号を入力すると、切り離し回路23の遮断状態を保持させる。ここで、仮にスイッチ31が開いている場合には、切り離し保持制御部32にはCPU30からの切り離し保持制御信号が入力しないので、切り離し回路23の遮断状態を保持させる機能が発揮しないことになり、切り離し制御部29は短絡検出部28からの短絡信号の入力がなくなると、切り離し回路12を元の状態(導通状態)に復帰させることになる。
【0012】
また、CPU30には、図1の火災受信機10との間で信号の授受を行うための送受信回路33と、短絡現象を検出し、出力側を切り離した場合に点滅する短絡/重複確認灯34とが接続されている。また、アイソレータ12の入力側には電源回路35が配置されている。この電源回路35は、ダイオードブリッジや安定化電源回路を内蔵しており、短絡検出部28、CPU30、切り離し保持制御部32、及び短絡/重複確認灯34にそれぞれ駆動電源を供給する。
【0013】
なお、図1のアイソレータ12において、スイッチ31は本発明の遮断状態設定部に相当し、CPU30は本発明の演算手段に相当し、感知器S1〜Snは本発明の端末機器に相当する。
【0014】
次に、アイソレータ12のスイッチ31が閉じられている状態(図1の状態)において、分岐線11aが短絡した場合(図2参照)の動作を説明する。
(A1)短絡検出部28は、感知器側で短絡現象が起きると、電圧が低下するのでそれを検出し、短絡信号を切り離し制御部29に出力する。
(A2)切り離し制御部29は、短絡検出部28からの短絡信号を入力すると、切り離し回路23のスイッチング素子24のソース・ゲート間に電圧を印加させないようにしてオフ状態にさせることにより、分岐ライン11aの正導体11a(P)を遮断し、分岐線11aの感知器側の端末系統を切り離す。
(A3)切り離し制御部29は、また、短絡信号をCPU30に出力する。CPU30は短絡信号を入力すると、切り離し保持制御信号をスイッチ31を介して切り離し保持制御部32に出力する。また、CPU30は、このとき、送受信回路33を介して火災受信機10に分岐線11aの感知器側の端末系統に短絡事故が発生したことを送信し、火災受信機10はその短絡事故に対応した警報を発報する。
(A4)切り離し保持制御部32はCPU30からの制御信号を入力すると、切り離し回路23の遮断状態を保持させる。即ち、切り離し回路23のスイッチング素子24のソース・ゲート間に制御電圧を印加させないようにしてオフ状態を維持させる。したがって、例えば短絡検出部28が短絡現象を検出しない状態になっても(感知器側が復旧した場合でも)、切り離し回路23の遮断状態が継続することになる。このように遮断状態が保持された場合には電源を再投入することにより復旧させる。
【0015】
次に、アイソレータ12のスイッチ31が開いていて自己復旧(非保持)に設定されている状態において、分岐線11aが短絡した場合の動作を説明する。
(B1)短絡検出部28は、感知器側で短絡現象が起きると、電圧が低下するのでそれを検出し、短絡信号を切り離し制御部29に出力する。
(B2)切り離し制御部29は、また、短絡信号をCPU30に出力する。CPU30は短絡信号を入力すると、切り離し保持制御信号を出力する。しかし、このときスイッチ31が開いており、上記の切り離し保持制御信号切り離し保持制御部32には入力しないので、切り離し保持制御部32はその機能を発揮しない。また、CPU30は、このとき、送受信回路33を介して火災受信機10に分岐線11aの感知器側の端末系統に短絡事故が発生したことを送信し、火災受信機10はその短絡事故に対応した警報を発報する。
(B3)そして、分岐線11aの感知器側の端末系統の短絡状態が解消されて復旧すると、短絡検出部28は短絡現象を検出しない状態になり、短絡信号を出力しなくなる。切り離し制御部29は、短絡検出部28からの短絡信号が入力されなくなると、切り離し回路23のスイッチング素子24のソース・ゲート間に制御電圧を印加させてオン状態にし、切り離し回路23を定常状態(導通状態)に復帰させる。
【0016】
以上のように本実施形態1においては、CPU30と切り離し保持制御部32との間にスイッチ31を設けて、その開閉により、切り離し回路23の遮断状態を保持するか又は自己復旧させるかを設定することができ、このため、火災警報システムに例えば遮断状態を保持する形式のアイソレータを用いる場合において、特定の分岐線で一過性の短絡現象が頻繁に発生する場合には、その分岐線のアイソレータだけを自己復旧するように設定することが簡単にできる。このように、警報システムの稼働後の現場の状況に合わせて、一度でも短絡を検出したときに確実に原因調査をした後に復旧させたい場合には遮断を保持させる一方、一過性の短絡現象後の回復時に極力未監視状態を短くさせたい場合には自己復旧させるなどの設定を切り替えることができるので、現場の保守作業者からの誤報低減の要望に対して柔軟に応じることができる。また、その設定の切り替えも、スイッチ31を閉じるか或いは開くかということなので、現場の保守作業者でも簡単に取り扱うことができる。
【0017】
実施形態2.
なお、上記の実施形態1の説明においては、切り離し制御部29からCPU30に対して短絡信号を供給する例について説明したが、短絡検出部28からCPU30に対して短絡信号を直接供給するようにしてもよい。また、切り離し回路23のスイッチング素子24としてFETを用いた例について説明したが、トランジスタ、ラッチングリレー等の他のスイッチング素子を用いてもよい。また、端末機器として火災感知器等の感知器S1〜Snを接続した例について説明したが、端末機器には上記の感知器の他に防排煙機器も含まれる。
【0018】
実施形態3.
また、上記の実施形態1の説明においては、切り離し制御部29が、CPU30及びスイッチ31を介して、切り離し保持信号を切り離し保持制御部32に供給する例について説明したが、それに代えて、例えば切り離し制御部29からスイッチ31を介して短絡信号を切り離し保持信号として切り離し保持制御部32に供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1に係るアイソレータの構成例を示したブロック図である。
【図2】図1のアイソレータを用いた警報システムの構成例を示した図である。
【符号の説明】
【0020】
S1〜Sn 感知器、10 火災受信機、11 伝送線路、11a,11b,11c 分岐線、12〜14 アイソレータ、21,22 保護回路、23 切り離し回路、24 スイッチング素子、25 抵抗、26 ツェナーダイオード、27 抵抗、28 短絡検出部、29 切り離し制御部、30 CPU、31 スイッチ、32 切り離し保持制御部、33 送受信回路、34 短絡/重複確認灯、35 電源回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災受信機と、前記火災受信機の端末系統毎にそれぞれ接続された端末機器との間に接続され、前記端末系統の短絡を検出すると、前記火災受信機と前記端末機器との接続を遮断するアイソレータにおいて、
前記火災受信機と前記端末系統の端末機器とを定常的には接続している切り離し回路と、
前記端末系統の短絡を検出する短絡検出回路と、
前記短絡検出回路の短絡信号に基づいて前記火災受信機と前記端末系統の端末機器とを前記切り離し回路により切り離させる切り離し制御部と、
切り離し状態を保持するか又は自己復旧するかが設定される遮断状態設定部と、
前記短絡信号及び遮断状態設定部の設定に基づいて前記切り離し回路による切り離し状態を保持させる切り離し保持制御部と
を備えたことを特徴とするアイソレータ。
【請求項2】
前記短絡検出回路の短絡信号に基づいて切り離し保持制御信号を出力する演算手段を有し、
前記遮断状態設定部は、前記演算手段と前記切り離し保持制御部とを接続するスイッチから構成されることを特徴とする請求項1記載のアイソレータ。

【図1】
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【図2】
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