説明

アイドルストップ車の給電システム

【課題】スタータの起動時に、スタータ以外の電気負荷に供給される電圧が低下することを防止できる、アイドルストップ車の給電システムを提供する。
【解決手段】エンジン2を始動させるためのスタータ3は、配線14を介して、バッテリ12と接続されている。また、キャパシタ9およびDC−DCコンバータ5が設けられており、キャパシタ9とDC−DCコンバータ5の入力側回路とは、配線8によって接続されている。DC−DCコンバータ5の出力側回路は、配線11を介して、バッテリ12と接続されている。そして、配線11の途中部には、リレー13が介装されている。リレー13の接点が開かれると、スタータ3がキャパシタ9から電気的に切り離される。この状態で、スタータ3とバッテリ12との電気的な接続は維持される。したがって、バッテリ12からスタータ3に電力を供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドルストップ車の給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを駆動源とする自動車には、オルタネータおよびバッテリが備えられている。オルタネータは、エンジン出力などの動力(運動エネルギー)を受けて発電する。オルタネータから出力される電力は、DC/DCコンバータで適当な電圧に調整されて、バッテリに供給される。これにより、バッテリが充電される。
【0003】
また、エンジンに付随して、エンジンを始動させるためのスタータ(セルモータ)が設けられている。エンジンが始動されるときには、バッテリからスタータに電力が供給され、スタータによるクランキングが行われる。このとき、スタータでの電力消費により、バッテリの出力電圧が低下することがある。バッテリの出力電圧が低下すると、自動車に搭載されているヘッドライトおよびワイパモータなどの電気負荷の動作が不安定になるおそれがある。
【0004】
たとえば、エンジンおよびモータを駆動源として搭載したハイブリッドカーにおいて、主電池および補機電池の2つのバッテリを備え、モータの駆動中にオルタネータによる発電の要求が生じた場合に、モータを駆動するインバータと主電池との間に介裝されたメインリレーをオフにして、モータの駆動を停止させた後、スタータによってエンジンを始動させることが提案されている。これにより、スタータの起動に起因する主電池の出力電圧の低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−115709号公報
【特許文献2】特開2006−158173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の提案に係る構成では、主電池がインバータから電気的に切り離されている間、スタータを含む各種の電気負荷には、補機電池から電力が供給される。そのため、スタータの起動に伴って、補機電池の出力電圧が低下し、スタータ以外の電気負荷の動作が不安定になるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、スタータの起動時に、スタータ以外の電気負荷に供給される電圧が低下することを防止できる、アイドルストップ車の給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係るアイドルストップ車の給電システムは、エンジンおよび前記エンジンを始動させるためのスタータを備え、前記エンジンの駆動中に所定の停止条件が成立したことに応答して、前記エンジンが停止され、その後に所定の再始動条件が成立したことに応答して、前記エンジンが再始動される機能を有するアイドルストップ車の給電システムであって、第1蓄電デバイスと、前記第1蓄電デバイスと前記スタータとを接続する第1配線と、第2蓄電デバイスと、前記第2蓄電デバイスから出力される電圧を降圧するためのDC−DCコンバータと、前記第2蓄電デバイスと前記DC−DCコンバータの入力側回路とを接続する第2配線と、前記DC−DCコンバータの出力側回路と前記第1蓄電デバイスとを接続する第3配線と、前記第3配線の途中部に介装されたリレーとを含む。
【0009】
アイドルストップ車では、エンジンの駆動中に所定の停止条件(たとえば、停止状態でブレーキペダルが一定時間以上踏まれている)が成立すると、エンジンが停止される。そして、そのエンジン停止後、所定の再始動条件(たとえば、ブレーキペダルから足が離される)が成立すると、エンジンが再始動される。
【0010】
エンジンを始動させるためのスタータは、第1配線を介して、第1蓄電デバイスと接続されている。また、第2蓄電デバイスおよびDC−DCコンバータが設けられており、第2蓄電デバイスとDC−DCコンバータの入力側回路とは、第2配線によって接続されている。DC−DCコンバータの出力側回路は、第3配線を介して、第1蓄電デバイスと接続されている。
【0011】
そして、第3配線の途中部には、リレーが介装されている。リレーの接点が閉じられると、DC−DCコンバータの出力側回路と第1蓄電デバイスおよびスタータとが電気的に接続される。この状態で、DC−DCコンバータから出力される電圧により、第1蓄電デバイスを充電することができる。一方、リレーの接点が開かれると、スタータが第2蓄電デバイスから電気的に切り離される。この状態で、第1配線により、スタータと第1蓄電デバイスとの電気的な接続は維持される。したがって、第1蓄電デバイスからスタータに電力を供給することができる。
【0012】
リレーの接点を開いて、スタータを第2蓄電デバイスから切り離した状態で、第1蓄電デバイスから出力される電力でスタータを起動させることにより、スタータの起動に起因する第2蓄電デバイスの出力電圧の低下を防止することができる。そして、第2蓄電デバイスからスタータ以外の電気負荷に電力が供給される構成にすれば、そのスタータ以外の電気負荷に供給される電圧が低下することを防止できる。その結果、スタータ以外の電気負荷に電力を安定して供給することができる。
【0013】
たとえば、背景技術として述べた提案に係る構成では、モータの駆動中に、メインリレーの接点が閉状態(オン)から開状態(オフ)に切り替えられる。モータの駆動中は、主電池からインバータに大電流が供給されている。その状態でメインリレーが開閉されると、接点の溶着を生じるおそれがある。
【0014】
第3配線を流れる電流を検出する電流検出手段が設けられて、リレーの接点が閉状態から開状態に切り替えられるときには、電流検出手段によって検出される電流値が所定電流値以下となるように、DC−DCコンバータから出力される電圧が制御されることが好ましい。一方、リレーの接点が開状態から閉状態に切り替えられるときには、DC−DCコンバータから出力される電圧が所定電圧以下に制御されることが好ましい。
【0015】
これにより、リレーの接点が開閉される前に、第3配線を流れる電流を小さくすることができる。その結果、リレーの接点の溶着を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スタータの起動時に、スタータ以外の電気負荷に供給される電圧が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る給電システムが備えられるアイドルストップ車の要部の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、リレーの接点が閉状態から開状態に切り替えられるときに実行される制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、リレーの接点が開状態から閉状態に切り替えられるときに実行される制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る給電システムが備えられるアイドルストップ車の要部の構成を示すブロック図である。
【0020】
アイドルストップ車1は、エンジン2を駆動源とする自動車であり、アイドルストップ機能を有している。アイドルストップ機能は、エンジン2の駆動中の所定の停止条件の成立に応答して、エンジン2が停止され(アイドルストップ状態)、その後の所定の再始動条件の成立に応答して、アイドルストップ状態が解除されて、エンジン2が再始動される機能である。停止条件は、たとえば、停止状態でブレーキペダルが一定時間以上踏まれているという条件である。また、再始動条件は、たとえば、ブレーキペダルから足が離されるという条件である。
【0021】
エンジン2に付随して、スタータ(始動用モータ)3が設けられている。停止状態のエンジン2は、スタータ3によるクランキング後に始動する。
【0022】
エンジン2に関連して、オルタネータ4が設けられている。オルタネータ4の回転軸(ロータ)には、エンジン2の出力軸の回転が伝達される。オルタネータ4の回転軸が回転すると、その回転が電力に変換されて、オルタネータ4から電力が出力される。
【0023】
また、アイドルストップ車1には、DC−DCコンバータ5が備えられている。
【0024】
DC−DCコンバータ5の入力側回路は、配線6を介して、オルタネータ4のプラス端子と電気的に接続されている。オルタネータ4のマイナス端子は、アイドルストップ車1のボディ7と電気的に接続されることによって接地(ボディアース)されている。
【0025】
また、DC−DCコンバータ5の入力側回路は、配線8を介して、キャパシタ9のプラス端子と電気的に接続されている。配線8は、たとえば、配線6の途中部に分岐して接続されている。配線8の途中部には、スイッチ10が介装されている。キャパシタ9のマイナス端子は、アイドルストップ車1のボディ7と電気的に接続されることによって接地(ボディアース)されている。
【0026】
DC−DCコンバータ5の出力側回路は、配線11を介して、バッテリ12のプラス端子と電気的に接続されている。配線11の途中部には、リレー13が介装されている。バッテリ12のマイナス端子は、アイドルストップ車1のボディ7と電気的に接続されることによって接地(ボディアース)されている。
【0027】
また、バッテリ12のプラス端子には、配線14を介して、スタータ3のプラス端子が電気的に接続されている。配線14は、配線11におけるバッテリ12のプラス端子とリレー13との間に分岐して接続されている。スタータ3のマイナス端子は、アイドルストップ車1のボディ7と電気的に接続されることによって接地(ボディアース)されている。
【0028】
また、DC−DCコンバータ5の出力側回路は、配線15を介して、ヘッドライト、ワイパモータ、エアコンディショナおよびオーディオ機器などの電気負荷16のプラス端子が接続されている。電気負荷16のマイナス端子は、アイドルストップ車1のボディ7と電気的に接続されることによって接地(ボディアース)されている。
【0029】
アイドルストップ車1には、CPUを含む構成の制御部21が備えられている。制御部21には、配線11を流れる電流を検出する電流センサ22の検出信号が入力される。また、制御部21には、DC/DCコンバータ5から出力される電圧が入力される。制御部21は、それらの入力信号に基づいて、オルタネータ4の発電電圧、DC/DCコンバータ5の出力電圧、スイッチ10のオン/オフおよびリレー13の接点の開閉を制御する。
【0030】
具体的には、制御部21により、オルタネータ4の界磁巻線に供給される界磁電流が制御されて、オルタネータ4から出力される電圧(発電電圧)が約12〜60Vの範囲内で制御される。
【0031】
また、制御部21により、キャパシタ9の充電状態に基づいて、スイッチ10の開閉が制御される。スイッチ10が開かれることにより、キャパシタ9が配線6から電気的に切り離される。このとき、オルタネータ4から出力される電力は、すべてDC−DCコンバータ5に供給される。一方、スイッチ10が閉じられることにより、キャパシタ9が配線6と電気的に接続される。このとき、オルタネータ4から出力される電力は、DC−DCコンバータ5およびキャパシタ9に供給される。これにより、キャパシタ9が充電される。オルタネータ4が発電していないときには、キャパシタ9からの放電により、DC−DCコンバータ5に電力が供給される。
【0032】
制御部21により、DC−DCコンバータ5に含まれるスイッチング素子のオン/オフが制御される。この制御により、DC−DCコンバータ5に入力される電力は、バッテリ12および電気負荷16への供給に適した電圧に降圧されて、DC−DCコンバータ5から出力される。
【0033】
図2は、リレーの接点が閉状態から開状態に切り替えられるときに実行される制御の流れを示すフローチャートである。
【0034】
アイドルストップ状態が解除されて、エンジン2が再始動されるときには、リレー13の接点が閉状態から開状態に切り替えられる。
【0035】
この切替えに先立ち、制御部21により、DC−DCコンバータ5が制御されて、DC−DCコンバータ5の出力電圧が降圧される(ステップS1)。
【0036】
DC−DCコンバータ5の出力電圧は、電流センサ22によって検出される電流値(検出電流値)が所定電流値以下に低下するまで降圧される(ステップS2)。
【0037】
そして、検出電流値が所定電流値まで低下すると(ステップS3)、制御部21により、リレー13の接点が閉状態から開状態に切り替えられる。
【0038】
リレー13の接点が開いた状態では、スタータ3およびバッテリ12がDC−DCコンバータ5から電気的に切り離される。スタータ3およびバッテリ12は、配線14によって電気的に接続されているので、スタータ3の起動に必要な電力は、バッテリ12からスタータ3に供給される。スタータ3の起動により、エンジン2が再始動される。
【0039】
また、この状態において、電気負荷16の駆動に必要な電力は、キャパシタ9から電気負荷16に供給される。
【0040】
図3は、リレーの接点が開状態から閉状態に切り替えられるときに実行される制御の流れを示すフローチャートである。
【0041】
エンジン2の再始動後は、リレー13の接点が開状態から閉状態に戻される。
【0042】
リレー13の接点の開状態から閉状態への切替えに先立ち、制御部21により、DC−DCコンバータ5の出力電圧がバッテリ12の出力電圧とほぼ等しい電圧(たとえば、12V)となるように、DC−DCコンバータ5が制御される(ステップS11)。
【0043】
そして、DC−DCコンバータ5の出力電圧が12Vに降圧すると、制御部21により、リレー13の接点が開状態から閉状態に切り替えられる(ステップS12)
【0044】
以上のように、エンジン2を始動させるためのスタータ3は、配線14を介して、バッテリ12と接続されている。また、キャパシタ9およびDC−DCコンバータ5が設けられており、キャパシタ9とDC−DCコンバータ5の入力側回路とは、配線8によって接続されている。DC−DCコンバータ5の出力側回路は、配線11を介して、バッテリ12と接続されている。
【0045】
そして、配線11の途中部には、リレー13が介装されている。リレー13の接点が閉じられると、DC−DCコンバータ5の出力側回路とバッテリ12およびスタータ3とが電気的に接続される。この状態で、DC−DCコンバータ5から出力される電圧により、バッテリ12を充電することができる。一方、リレー13の接点が開かれると、スタータ3がキャパシタ9から電気的に切り離される。この状態で、配線14により、スタータ3とバッテリ12との電気的な接続は維持される。したがって、バッテリ12からスタータ3に電力を供給することができる。
【0046】
リレー13の接点を開いて、スタータ3をキャパシタ9から切り離した状態で、バッテリ12から出力される電力でスタータ3を起動させることにより、スタータ3の起動に起因するキャパシタ9の出力電圧の低下を防止することができる。これにより、電気負荷16に供給される電圧が低下することを防止できる。その結果、電気負荷16に電力を安定して供給することができる。
【0047】
また、リレー13の接点が閉状態から開状態に切り替えられるときには、電流センサ22によって検出される電流値が所定電流値以下となるように、DC−DCコンバータ5から出力される電圧が制御される。一方、リレー13の接点が開状態から閉状態に切り替えられるときには、DC−DCコンバータ5から出力される電圧がバッテリ12の出力電圧とほぼ等しい電圧となるように制御される。
【0048】
これにより、リレー13の接点が開閉される前に、配線11を流れる電流を小さくすることができる。その結果、リレー13の接点の溶着を防止することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0050】
たとえば、アイドルストップ車1は、エンジン2を駆動源とする自動車に限らず、エンジンおよびモータを駆動源とするハイブリッドカーであってもよい。
【0051】
また、第2蓄電デバイスの一例として、キャパシタ9を取り上げたが、第2蓄電デバイスは、たとえば、バッテリ(二次電池)であってもよい。
【0052】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 アイドルストップ車
2 エンジン
3 スタータ
5 DC−DCコンバータ
8 配線(第2配線)
9 キャパシタ(第2蓄電デバイス)
11 配線(第3配線)
12 バッテリ(第1蓄電デバイス)
13 リレー
14 配線(第1配線)
16 電気負荷
21 制御部(制御手段)
22 電流センサ(電流検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよび前記エンジンを始動させるためのスタータを備え、前記エンジンの駆動中に所定の停止条件が成立したことに応答して、前記エンジンが停止され、その後に所定の再始動条件が成立したことに応答して、前記エンジンが再始動される機能を有するアイドルストップ車の給電システムであって、
第1蓄電デバイスと、
前記第1蓄電デバイスと前記スタータとを接続する第1配線と、
第2蓄電デバイスと、
前記第2蓄電デバイスから出力される電圧を降圧するためのDC−DCコンバータと、
前記第2蓄電デバイスと前記DC−DCコンバータの入力側回路とを接続する第2配線と、
前記DC−DCコンバータの出力側回路と前記第1蓄電デバイスとを接続する第3配線と、
前記第3配線の途中部に介装されたリレーとを含む、アイドルストップ車の給電システム。
【請求項2】
前記第3配線を流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段によって検出される電流値が所定電流値以下となるように、前記DC−DCコンバータから出力される電圧を制御した後、前記リレーの接点を閉状態から開状態に切り替え、前記DC−DCコンバータから出力される電圧を所定電圧以下に制御した後、前記リレーの接点を開状態から閉状態に切り替える制御手段とをさらに含む、請求項1に記載のアイドルストップ車の給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91454(P2013−91454A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235419(P2011−235419)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】