説明

アウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケット

【課題】吊り引戸用ガイドレールやそのレールとこれから垂下する吊り引戸との上下相互間隙が、前方(正面側)へ見苦しく露出することを防ぐ。
【解決手段】レール取付ブラケット(B)を形作る水平な天井板片(12)の前端部から連続して前化粧板片(14)を上下方向へ直交状態に張り出して、その前化粧板片(14)における上記天井板片(12)から垂下する下側板片部(14b)の深さ(d2)を、ガイドレール(R)から垂下する吊り引戸(10)の上端面よりも深い寸法に設定すると共に、上記天井板片(12)の後端部付近から後上がり傾斜状態に起立させた取付板片(13)を建物の壁面(W)へ、後下がり傾斜姿勢にねじ込む固定ビス(16)によって取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の開口部へアウトセット(外付け)施工される吊り引戸のレール取付ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回動式の開閉扉が取り付けられた建物の開口部を、吊り引戸によって開閉できるように改装する場合、その吊り引戸のレール取付ブラケットが建物の壁面へ、横方向からアウトセット(外付け)施工されることになる。
【0003】
このような吊り引戸のレール取付ブラケットは特許文献1〜3に開示されており、そのうちの特許文献1に記載のものが本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−68208号公報
【特許文献2】特開2000−199377号公報
【特許文献3】特許第3162618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の吊り引戸用レール取付ブラケット(1)は図13に示す如く、ほぼ横向きT字形の押出断面形状を有し、その縦板片(1y)の上半部が取付ベース(2)として、ほぼ水平の固定ビス(3)により建物の壁面(W)へ取り付け固定されるようになっているため、吊り引戸(D)の荷重に対する対抗力(耐荷力)に劣る。
【0006】
又、横板片(1x)の下面へ垂直の固定ビス(4)と板ナット(5)を介して取り付けられた吊り引戸用レール(6)の前面(正面)が、全体的な露出状態にあり、たとえカバー(7)のほぼL字形フロントカバー(7a)によって、前方(正面側)から被覆したとしても、そのフロントカバー(7a)並びにサイド(エンド)カバー(7b)の下端縁部はレール(6)の下端縁部とほぼ同等の高さ位置にあるため、そのレール(6)とこれから垂下する吊り引戸(D)との上下相互間隙(S)が、前方(正面側)や両サイド(エンド)方向へ見苦しく露呈することとなり、その外観化粧効果にも劣る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では建物の壁面にフイットする背板片と、その背板片から前方へ一定の長さだけ連続的に張り出す水平な天井板片と、その背板片又は天井板片の後端部から連続的に起立する取付板片とを備えた断面形状のアルミ押出材から成り、
【0008】
上記背板片又は取付板片を複数の固定ビスによって建物の壁面へ取り付けると共に、吊り引戸のガイドレールを上記天井板片へ複数のネジ締結具により、幅方向への位置調整自在に取り付けるアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケットにおいて、
【0009】
上記天井板片の前端部から前化粧板片を、上記ガイドレールから吊り下がる引戸の上端面よりも深く連続的に垂下させる一方、
【0010】
上記取付板片を天井板片の後端部付近から一定角度の後上がり傾斜状態に起立させて、その取付板片から建物の壁面へ上記固定ビスを、その先端下がりの傾斜姿勢状態にねじ込み一体化することを特徴とする。
【0011】
又、請求項2では上記請求項1に従属する構成として、天井板片の前端部から連続して前化粧板片を上下方向へ直交状態に張り出すと共に、
【0012】
その前化粧板片における天井板片から垂立する上側板片部の背丈を、建物の壁面に対する取付板片のそれとほぼ同じ寸法に設定する一方、
【0013】
同じく前化粧板片における天井板片から垂下する下側板片部の深さを、建物の開口枠における上枠部の開口面(下端面)とほぼ一致する位置までの深い寸法に設定したことを特徴とする。
【0014】
請求項3では建物の壁面にフイットする背板片と、その背板片から前方へ一定の長さだけ連続的に張り出す水平な天井板片と、その背板片又は天井板片の後端部から連続的に起立する取付板片とを備えた断面形状のアルミ押出材から成り、
【0015】
上記背板片又は取付板片を複数の固定ビスによって建物の壁面へ取り付けると共に、吊り引戸のガイドレールを上記天井板片へ複数のネジ締結具により、幅方向への位置調整自在に取り付けるアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケットにおいて、
【0016】
上記天井板片の前端部から前化粧板用受け止めマスト片を上向き連続的に垂立させて、その受け止めマスト片へ上記ガイドレールから吊り下がる引戸の上端面よりも深く垂下することになる別個な断面ほぼF字形の前化粧板を、前方又は左右両サイドから抜き差し自在に差し込み係止させる一方、
【0017】
上記取付板片を天井板片の後端部付近から一定角度の後上がり傾斜状態に起立させて、その取付板片から建物の壁面へ上記固定ビスを、その先端下がりの傾斜姿勢状態にねじ込み一体化することを特徴とする。
【0018】
請求項4では建物の壁面にフイットする背板片と、その背板片から前方へ一定の長さだけ連続的に張り出す水平な天井板片と、その背板片又は天井板片の後端部から連続的に起立する取付板片とを備えた断面形状のアルミ押出材から成り、
【0019】
上記背板片又は取付板片を複数の固定ビスによって建物の壁面へ取り付けると共に、吊り引戸のガイドレールを上記天井板片へ複数のネジ締結具により、幅方向への位置調整自在に取り付けるアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケットにおいて、
【0020】
上記天井板片の前端部から前化粧板用受け止めマスト片を上向き連続的に垂立させて、その受け止めマスト片へ上記ガイドレールから吊り下がる引戸の上端面よりも深く垂下することになる別個な断面ほぼ倒立J字形の前化粧板を、上方又は左右両サイドから抜き差し自在に差し込み係止させる一方、
【0021】
上記取付板片を天井板片の後端部付近から一定角度の後上がり傾斜状態に起立させて、その取付板片から建物の壁面へ上記固定ビスを、その先端下がりの傾斜姿勢状態にねじ込み一体化することを特徴とする。
【0022】
更に、請求項5では上記請求項3又は4に従属する構成として、前化粧板用受け止めマスト片に差し込み係止された前化粧板が天井板片から垂下することになる深さを、建物の開口枠における上枠部の開口面(下端面)とほぼ一致する位置までの深い寸法に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の上記構成によれば、レール取付ブラケットに設置された吊り引戸用のガイドレールのみならず、そのガイドレールとこれから吊り下がる引戸との上下相互間隙をも、上記レール取付ブラケットにおける水平な天井板片の前端部から連続的に垂下する前化粧板片によって、前方(正面側)や前下方からの目視不能に被覆することができ、優美な外観化粧効果を得られるのである。
【0024】
又、建物の壁面に対するレール取付ブラケットの取付板片が、その上記天井板片の後端部付近から一定角度の後上がり傾斜状態に起立しており、その取付板片から建物の壁面へ複数の固定ビスを、逆な後下がり(先端下がり)の傾斜姿勢状態にねじ込み一体化するようになっているため、吊り引戸の荷重に対する対抗力(耐荷力)が向上する。
【0025】
その場合、請求項2の構成を採用するならば、上記建物の壁面に対する取付板片の固定ビスが前方(正面側)へ露出することを、上記前化粧板片の上側板片部によって被覆化粧することができるほか、同じく前化粧板片の下側板片部が建物の開口枠における上枠部の開口面(下端面)とほぼ一致する位置まで深く垂下していることにより、アウトセット(外付け)施工される吊り引戸のレール取付ブラケットであるも、建物の開口枠を爾後的に狭い開口形状に制限したり、壁面の内外方向から看取される段差を生成したりするおそれがなく、外観化粧効果がますます向上する。
【0026】
請求項3や請求項4の構成によれば、上記請求項1の構成に伴なう効果としての優れた耐荷力を得られることは勿論、レール取付ブラケットと別個な前化粧板がそのブラケット側の受け止めマスト片へ差し込み係止された状態において、やはり吊り引戸のガイドレールのみならず、そのガイドレールとこれから吊り下がる引戸との上下相互間隙をも、その前方(正面側)や前下方へ見苦しく露出することを防ぐため、優美な外観化粧効果を得られることになる。
【0027】
しかも、上記前化粧板はレール取付ブラケット側の受け止めマスト片から抜き出し分解できるのであり、そうすればレール取付ブラケットの背板片が前方(正面側)へ露出するため、その前方(正面側)から挿入するねじ廻し工具の操作により、その背板片から建物の壁面へ水平に固定ビスをねじ込めるのであり、上記後下がり(先端下がり)傾斜姿勢状態にねじ込まれる固定ビスとも相俟って、レール取付ブラケットの固定強度と吊り引戸の耐荷力をますます向上させることができる。
【0028】
更に、上記前化粧板をレール取付ブラケット側の受け止めマスト片から抜き出せば、ブレーキ付き戸車のブレーキパッドを吊り引戸用ガイドレール側のブレーキシューに対して昇降することにより、制動力を強弱調整するための工具係止凸子がやはり前方(正面側)へ露出するため、その前方(正面側)からスパナやレンチなどの回動操作工具を水平に挿入して、その工具係止凸子へ差し込み係止させることにより、上記制動力の調整を外部から行なえる効果もある。
【0029】
上記請求項3と請求項4との何れにあっても、特に請求項5の構成を採用するならば、上記請求項2の構成に伴なう効果とほぼ同等の効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るレール取付ブラケットの第1実施形態を示す斜面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2の背面図である。
【図4】図2の平面図である。
【図5】図2の底面図である。
【図6】図4の5−5線拡大断面図である。
【図7】上記レール取付ブラケットの施工状態を示す斜面図である。
【図8】図7の8−8線拡大断面図である。
【図9】図8の要部拡大断面図である。
【図10】上記レール取付ブラケットの第2実施形態を示す図9に対応する断面図である。
【図11】図10の11─11線断面図である。
【図12】上記レール取付ブラケットの第3実施形態を示す図9に対応する断面図である。
【図13】従来のレール取付ブラケットを示す図9に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1〜9は本発明の第1実施形態とその施工状態を示しており、(B)はアウトセット用吊り引戸(10)のレール取付ブラケットであって、建物の壁面(W)にフイットする背板片(11)と、その背板片(11)の上端部から前方(正面側)へ一定の長さ(帯幅)(L)(例えば約52mm)だけ連続的に張り出す水平な天井板片(12)と、その天井板片(12)の後端部付近から一定角度(α)(例えば約120度)の後上がり傾斜状態に起立する取付板片(13)と、同じく天井板片(12)の前端部から連続して上下方向へ直交状態に張り出す前化粧板片(14)とを備えた断面形状のアルミ押出材から成る。
【0032】
そして、このようなレール取付ブラケット(B)の取付板片(13)には複数のビス受け入れ孔(丸孔)(15)が、一定間隔ピッチを保って開口分布されており、図7〜9のように、ここから建物の壁面(W)に向かって固定ビス(16)が、その先端下がり(後下がり)の傾斜姿勢状態にねじ込み一体化されることによって、その壁面(W)へアウトセット(外付け)施工されるようになっている。(17)は上記背板片(11)と天井板片(12)との境界屈折面部であり、上記取付板片(13)とほぼ直角(β)に交叉している。
【0033】
その場合、図6の拡大図から確認できるように、上記天井板片(12)と直交する前化粧板片(14)の上側板片部(14a)は、上記取付板片(13)とほぼ同じ背丈(h)として、その天井板片(12)から例えば約13mmだけ垂立しているにとどまるが、同じく前化粧板片(14)の下側板片部(14b)は上記背板片(11)の深さ(d1)(例えば約20mm)よりも深く、その天井板片(12)から例えば約45mmの深さ(d2)だけ垂下されている。
【0034】
つまり、前化粧板片(14)における上記水平の天井板片(12)から垂下する下側板片部(14b)の深さ(d2)は、図8、9のように吊り引戸用ガイドレール(R)から垂下する吊り引戸(10)の上端面(10a)よりも深く、好ましくは後述する上枠部の開口面(下端面)とほぼ一致する位置までの寸法(先に例示した約45mm)として設定されており、これによって吊り引戸(10)のガイドレール(R)のみならず、そのガイドレール(R)とこれから垂下する吊り引戸(10)との上下相互間隙(S)をも、前方(正面側)や前下方から全然目視できない状態に被覆化粧している。
【0035】
尚、上記背板片(11)の下端部は水平の補強兼目隠し片部(18)として、前向き直角に曲げ出されているが、これは無くても良い。又、上記前化粧板片(14)の上端縁部と上記取付板片(13)の上端縁部とは、何れも補強フック片部(19)(20)として、後向きに曲げ出されているが、これらも省略することができる。
【0036】
更に、(21)は上記天井板片(12)の前端部付近から上向きに隆起されたビス受け入れ凹条であり、ここへ両サイド(両端部)方向からねじ込まれる固定ビス(22)によって、図7のように上記レール取付ブラケット(B)へ、その別個な左右両サイドカバー板(23)(24)が各々取り付け固定されるようになっている。(25)は同じく天井板片(12)のほぼ中央部に位置しつつ、その長手方向(左右方向)に沿い点在分布された複数のビス受け入れ長孔であって、上記ガイドレール(R)の幅方向(前後方向)に延在する楕円形に開口している。
【0037】
上記左右両サイドカバー板(23)(24)はレール取付ブラケット(B)よりも薄肉な鋼板やアルミ板、硬質の合成樹脂板などから成り、その上端縁部と下端縁部が上記前化粧板片(14)のそれとほぼ同等の高さ位置に揃う大きさの長方形として、その前化粧板片(14)の下側板片部(14b)とほぼ同じ深さ(d2)を有するため、両サイドカバー板(23)(24)によって上記吊り引戸(10)のガイドレール(R)や、そのガイドレール(R)とこれから垂下する吊り引戸(10)との上下相互間隙(S)を、両サイド(両端)方向からも目視できない状態に被覆化粧することができる。(23a)(24a)は上記レール取付ブラケット(B)の就中前化粧板片(14)へ係止し得る両サイドカバー板(23)(24)の折曲げ片を示している。
【0038】
そして、吊り引戸(10)のガイドレール(R)は図8、9から明白なように、上記背板片(11)の就中目隠し片部(18)と前化粧板片(14)との向かい合う相互間隙(懐空間)(G)に納まる大きさ並びに深さの断面チャンネル溝形に成形されたアルミ押出材から成り、その水平な上面片(26)のほぼ中央部に開口分布する複数のビス受け入れ孔(丸孔)(27)から、上記レール取付ブラケット(B)の天井板片(12)に開口分布する対応的なビス受け入れ長孔(25)へ差し込み垂立される固定ビス(28)と、その先端部へ上方から螺合締結されるキャップナット(29)によって、上記天井板片(12)の下面へ取り付け固定されるようになっており、その際吊り引戸(10)の厚み変化などに応じて、その取付位置が幅方向(前後方向)へ調整されるのである。
【0039】
(30)は上記ガイドレール(R)の下面片をなす前後一対のローラー受けフランジであり、ここを長手方向(左右方向)に沿って前後一対のローラー(31)が転動する。(32)はその両ローラー(31)の軸受け枠を兼ねたほぼU字形のランナーであり、ここから吊り下がるローラー本体(33)とそのケーシング(図示省略)との組立体が、上記吊り引戸(10)の上端角隅部に埋設一体化されている。
【0040】
上記ローラー本体(33)には吊り引戸(10)をそのガイドレール(R)に対して、上下方向へ高さ(昇降)調整するためのセットビス(34)と、前後方向(幅方向)へ位置調整するためのセットビス(35)とが設けられている。尚、(36)は吊り引戸(10)の下端面に列設されたガイド受け入れ凹欠であり、ここへ床面から一体的に垂立する振れ止めガイド片(37)が嵌まり込むことによって、吊り引戸(10)の下部を振れ止め状態に保っている。
【0041】
上記第1実施形態のレール取付ブラケット(B)を施工するに当っては、図7〜9に示す如く、その背板片(11)の下端部を建物の門字形開口枠(F)における就中水平な上枠部(38)の上端面(38a)に載置させ、その上枠部(38)に沿ってレール取付ブラケット(B)を平行に列設すると共に、そのブラケット(B)の後上がり傾斜状態に張り出している取付板片(13)を、逆な後下がり(先端下がり)傾斜姿勢状態にねじ込む固定ビス(16)の複数によって、上記建物の壁面(W)へ外付け(アウトセット)固定する。
【0042】
上記レール取付ブラケット(B)の天井板片(12)に対する吊り引戸用ガイドレール(R)の組み付けや、そのガイドレール(R)から垂下するランナー(32)に対する吊り引戸(10)の組み付けなどは、建物の壁面(W)へレール取付ブラケット(B)を外付け固定する前に行なっても良く、その外付け固定した後に行なってもさしつかえない。尚、(39)は上記開口枠(F)の縦枠部を示している。
【0043】
何れにしても、上記レール取付ブラケット(B)に対するガイドレール(R)の組み付け位置や、そのガイドレール(R)に対する吊り引戸(10)の設置高さ並びに前後方向(幅方向)の位置を各々調整することができ、その調整後に吊り引戸(10)を使用に供するのである。
【0044】
その吊り引戸(10)の使用状態では図8、9から明白なように、上記レール取付ブラケット(B)における前化粧板片(14)の就中下側板片部(14b)が、ガイドレール(R)から吊り下がる引戸(10)の上端面(10a)よりも深い深さ(d2)として垂下されているため、その前化粧板片(14)の下側板片部(14b)によって吊り引戸(10)のガイドレール(R)のみならず、そのガイドレール(R)とこれから吊り下がる引戸(10)との上下相互間隙(S)をも、前方(正面側)や前下方から目視不能に被覆することができ、優美な外観化粧効果を得られる。
【0045】
殊更、上記前化粧板片(14)の下側板片部(14b)を図示実施形態のように、建物の開口枠(F)における上枠部(38)の開口面(下端面)(38b)とほぼ一致する深さ(d2)として、この位置まで深く垂下させるならば、その上枠部(38)の開口面(下端面)(38b)と前化粧板片(14)の下端部とが、ほぼ同等の高さ位置に揃った端正な開口形状を得られ、アウトセット(外付け)式のレール取付ブラケット(B)であっても、上記開口枠(F)の開口形状を爾後的に狭く制限したり、壁面(W)の内外方向から看取される段差を起生したりするおそれがない。
【0046】
そして、このような効果の達成については、左右両サイド(エンド)カバー板(23)(24)がレール取付ブラケット(B)の前化粧板片(14)とほぼ同じ背丈(h)並びに深さ(d2)を有する大きさの長方形であることも、有機的に働くこととなり、上記ガイドレール(R)と上記間隙(S)は左右両サイド(両端)からも目視不能に被覆化粧されるのである。
【0047】
更に、上記レール取付ブラケット(B)はその背板片(11)において、図9のように建物の壁面(W)へ安定な面接触状態にフイットされると共に、後上がり傾斜状態にある取付板片(13)の補強フック片部(20)も、同じく建物の壁面(W)へ押し当てられた規定状態のもとで、その取付板片(13)から壁面(W)へねじ込まれる後下がり(先端下がり)傾斜姿勢の固定ビス(16)によって、その壁面(W)へ取り付け固定されることになるため、アウトセット(外付け)施工されるレール取付ブラケット(B)であるとしても、その吊り引戸(10)の荷重に対する対抗力(耐荷力)に優れ、その吊り荷重の大小に左右されない効果がある。
【0048】
次に、図10、11は先の図9と対応する本発明の第2実施形態を示しており、これでは上記レール取付ブラケット(B)における前化粧板片(14)の下側板片部(14b)を無くし、その前化粧板片(14)の上側板片部(14a)だけを前化粧板用受け止めマスト片(40)として残存させている。(41)は上記下側板片部(14b)に代る極めて短小な爪受け止め片であり、レール取付ブラケット(B)の長手方向(左右方向)に沿って延在していることは言うまでもない。
【0049】
又、第2実施形態のレール取付ブラケット(B)では上記背板片(11)の下端部をなす水平な補強兼目隠し片部(18)からも、ビス受け入れ凹条(42)を上向きに隆起させており、ここへ左右両サイド(両端)方向からねじ込まれる固定ビス(43)と、上記天井板片(12)側の上向き隆起するビス受け入れ凹条(21)へねじ込まれる固定ビス(22)との一対づつによって、左右両サイドカバー板(23)(24)を各々レール取付ブラケット(B)へ一層安定良く強固に取り付けることができるようになっている。
【0050】
そして、第2実施形態のレール取付ブラケット(B)では図10から明白なように、これと別個な断面ほぼF字形に押出成形された前化粧板(44)を用意し、上記レール取付ブラケット(B)の前化粧板用受け止めマスト片(40)並びに爪受け止め片(41)と対応位置するように、その前化粧板(44)の上側から後向き連続的に張り出し形成した上下一対の係止フック片(45)(46)を、そのレール取付ブラケット(B)の上記受け止めマスト片(40)と爪受け止め片(41)へ、前方(正面側)から又は左右両サイド(両端)から抜き差し自在に差し込み係止させることができるようになっている。
【0051】
そのレール取付ブラケット(B)の前化粧板用受け止めマスト片(40)と爪受け止め片(41)に差し込み係止されたアルミ押出材の前化粧板(44)は、上記第1実施形態の前化粧板片(14)とほぼ同じ背丈(h)並びに深さ(2)を備え、上記ガイドレール(R)から吊り下がる引戸(10)の上端面(10a)よりも深く、好ましくは建物の開口枠(F)における上枠部(38)の開口面(下端面)(38b)とほぼ一致する位置まで垂下されているため、その前化粧板(44)によって上記第1実施形態と同じく、吊り引戸(10)のガイドレール(R)のみならず、そのガイドレール(R)とこれから吊り下がる引戸(10)との上下相互間隙(S)をも、前方(正面側)や前下方から完全に被覆化粧することができる。
【0052】
尚、第2実施形態におけるその他の構成は上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図10、11に図1〜9との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0053】
更に、図12は先の図9と対応する本発明の第3実施形態を示しており、これでも上記第1実施形態のレール取付ブラケット(B)における前化粧板片(14)の下側板片部(14b)を省略し、その前化粧板片(14)の上側板片部(14a)だけを図10の上記第2実施形態と同じく、やはり前化粧板用受け止めマスト片(40)として残存させている。但し、その受け止めマスト片(40)の背面にはゴムや合成樹脂などのクッション材(47)が貼り付け一体化されている。
【0054】
そして、茲に第3実施形態のレール取付ブラケット(B)でもこれと別個な断面ほぼ倒立J字形に押出成形された前化粧板(48)を準備し、上記レール取付ブラケット(B)のクッション材(47)が裏打ちされた前化粧板用受け止めマスト片(40)と対応するように、その前化粧板(48)の上側から後向き連続的に張り出し屈曲された断面倒立L字形の深い係止フック片(49)を、そのレール取付ブラケット(B)の上記受け止めマスト片(40)へ、上方から又は左右両サイド(両端)から抜き差し自在に差し込んで、その吊り掛け状態に係止させることができるようになっている。
【0055】
そのレール取付ブラケット(B)の前化粧板用受け止めマスト片(40)へ吊り掛け状態に差し込み係止されたアルミ押出材の前化粧板(48)は、上記第1実施形態の前化粧板片(14)とほぼ同じ背丈(h)並びに深さ(d2)を備えており、上記ガイドレール(R)から吊り下がる引戸(10)の上端面(10a)よりも深く、望ましくは建物の開口枠(F)における上枠部(38)の開口面(下端面)(38b)とほぼ一致する位置まで垂下されているため、その前化粧板(48)によってやはり吊り引戸(10)のガイドレール(R)や、そのガイドレール(R)とこれから吊り下がる引戸(10)との上下相互間隙(S)が、前方(正面側)へ見苦しく露出することを防止でき、優美な外観化粧効果を得られるのである。
【0056】
尚、第3実施形態におけるその他の構成は上記第1、2実施形態と実質的に同一であるため、その図12に図1〜11との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0057】
上記第2、3実施形態の構成を採用するならば、図1〜9の第1実施形態について説明した効果に加えて、次の諸効果も達成することができる。
【0058】
即ち、図10〜12の第2、3実施形態では吊り引戸用レール取付ブラケット(B)から、これと別個な前化粧板(44)(48)を抜き出し分解できるようになっている構成のため、その前化粧板(44)(48)を抜き出して、レール取付ブラケット(B)の背板片(11)を前方(正面側)へ全開状態に露出させることにより、その前方(正面側)からねじ廻し工具(図示省略)を支障なく挿入して、その背板片(11)から建物の壁面(W)へ水平に固定ビス(50)をねじ込むことができる。その固定ビス(50)の受け入れ孔(丸孔)は図示省略してある。
【0059】
その結果、上記レール取付ブラケット(B)の取付板片(13)を固定する後下がり(先端下がり)傾斜姿勢状態の固定ビス(16)と相俟って、建物の壁面(W)に対するレール取付ブラケット(B)の固定強度と吊り引戸(10)の耐荷力をますます向上させることが可能となる。
【0060】
その場合、建物の壁面(W)へ傾斜姿勢にねじ込む固定ビス(16)と、同じく壁面(W)へ水平にねじ込む固定ビス(50)とは、その位相変化する状態(千鳥配列状態)に点在分布させることが好ましい。
【0061】
又、上記吊り引戸(10)のランナー(32)に図10、11のようなブレーキ付き戸車(C)のランナー(51)が、ジョイント(52)を介して連結一体化されることにより、吊り引戸(10)が閉鎖位置へ移動した時戸当り面へ衝撃的に接当することを防ぐ仕様では、そのブレーキ付き戸車(C)のランナー(51)に内蔵された制動体(53)のブレーキパッド(54)を、上記吊り引戸用ガイドレール(R)の上面片(26)に取り付けられているブレーキシュー(55)へ押圧すると共に、その押圧力(制動力)を強弱調整するために、偏心ピン(56)付きの高さ調整リング(57)とその回動作用をブレーキパッド(54)の昇降作用に変換するカム板(58)などから成る運動変換機構が組み込まれており、その高さ調整リング(57)を回動操作するスパナやレンチなどの工具係止凸子(59)は、上記ガイドレール(R)と吊り引戸(10)との上下相互間隙(S)に向かって垂下している。
【0062】
その結果、上記制動力を強弱調整するスパナなどの回動操作工具(図示省略)を、その高さ調整リング(57)の工具係止凸子(59)へ係止させるためには、その操作工具を前方(正面側)から上記間隙(S)へ水平に差し込む必要があるところ、上記第2、3実施形態のレール取付ブラケット(B)では前化粧板(44)(48)を抜き出して、上記工具係止凸子(59)を前方(正面側)へ全開状態に露出させることにより、その工具係止凸子(59)へ上記回動操作工具を支障なく差し込み係止させることができ、上記制動力の強弱調整も容易に正しく行なえる利便性がある。
【0063】
更に、第2、3実施形態のレール取付ブラケット(B)では天井板片(12)の前端部付近と背板片(11)の補強兼目隠し片部(18)との2個所に、固定ビス(22)(43)の受け入れ凹条(21)(42)が列設されているため、ここへ左右両サイド(両端)方向からねじ込む固定ビス(22)(43)の一対づつにより、上記レール取付ブラケット(B)へ左右両サイドカバー板(23)(24)をますます強固に安定良く取り付けることができる効果もある。
【0064】
尚、左右両サイドカバー板(23)(24)はレール取付ブラケット(B)を上方から被覆する細長いトップカバー板(図示省略)により連結した形態の一体品であっても良い。
【符号の説明】
【0065】
(10)・吊り引戸
(10a)・上端面
(11)・背板片
(12)・天井板片
(13)・取付板片
(14)・前化粧板片
(14a)・上側板片部
(14b)・下側板片部
(15)・ビス受け入れ孔
(16)(22)(28)(43)(50)・固定ビス
(17)・境界屈折面部
(18)・目隠し片部
(19)(20)・補強フック片部
(21)(42)・ビス受け入れ凹条
(23)(24)・サイドカバー板
(23a)(24a)・折曲げ片
(25)・ビス受け入れ長孔
(26)・上面片
(27)・ビス受け入れ孔
(29)・キャップナット
(30)・ローラー受けフランジ
(31)・ローラー
(32)(51)・ランナー
(33)・ローラー本体
(34)・昇降調整用セットビス
(35)・前後調整用セットビス
(36)・ガイド受け入れ凹欠
(37)・振れ止めガイド片
(38)・上枠部
(38a)・上端面
(38b)・下端面(開口面)
(39)・縦枠部
(40)・前化粧板用受け止めマスト片
(41)・爪受け止め片
(44)(48)・前化粧板
(45)(46)(49)・係止フック片
(47)・クッション材
(52)・ジョイント
(53)・制動体
(54)・ブレーキパッド
(55)・ブレーキシュー
(56)・偏心ピン
(57)・高さ調整リング
(58)・カム板
(59)・工具係止凸子
(B)・レール取付ブラケット
(C)・ブレーキ付き戸車
(F)・開口枠
(G)・懐空間
(R)・ガイドレール
(S)・上下相互間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁面(W)にフイットする背板片(11)と、その背板片(11)から前方へ一定の長さ(L)だけ連続的に張り出す水平な天井板片(12)と、その背板片(11)又は天井板片(12)の後端部から連続的に起立する取付板片(13)とを備えた断面形状のアルミ押出材から成り、
上記背板片(11)又は取付板片(13)を複数の固定ビス(16)によって建物の壁面(W)へ取り付けると共に、吊り引戸(10)のガイドレール(R)を上記天井板片(12)へ複数のネジ締結具(28)(29)により、幅方向への位置調整自在に取り付けるアウトセット用吊り引戸(10)のレール取付ブラケット(B)において、
上記天井板片(12)の前端部から前化粧板片(14)を、上記ガイドレール(R)から吊り下がる引戸(10)の上端面(10a)よりも深く連続的に垂下させる一方、
上記取付板片(13)を天井板片(12)の後端部付近から一定角度(α)の後上がり傾斜状態に起立させて、その取付板片(13)から建物の壁面(W)へ上記固定ビス(16)を、その先端下がりの傾斜姿勢状態にねじ込み一体化することを特徴とするアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケット。
【請求項2】
天井板片(12)の前端部から連続して前化粧板片(14)を上下方向へ直交状態に張り出すと共に、
その前化粧板片(14)における天井板片(12)から垂立する上側板片部(14a)の背丈(h)を、建物の壁面(W)に対する取付板片(13)のそれとほぼ同じ寸法に設定する一方、
同じく前化粧板片(14)における天井板片(12)から垂下する下側板片部(14b)の深さ(d2)を、建物の開口枠(F)における上枠部(38)の開口面(38b)とほぼ一致する位置までの深い寸法に設定したことを特徴とする請求項1記載のアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケット。
【請求項3】
建物の壁面(W)にフイットする背板片(11)と、その背板片(11)から前方へ一定の長さ(L)だけ連続的に張り出す水平な天井板片(12)と、その背板片(11)又は天井板片(12)の後端部から連続的に起立する取付板片(13)とを備えた断面形状のアルミ押出材から成り、
上記背板片(11)又は取付板片(13)を複数の固定ビス(16)によって建物の壁面(W)へ取り付けると共に、吊り引戸(10)のガイドレール(R)を上記天井板片(12)へ複数のネジ締結具(28)(29)により、幅方向への位置調整自在に取り付けるアウトセット用吊り引戸(10)のレール取付ブラケット(B)において、
上記天井板片(12)の前端部から前化粧板用受け止めマスト片(40)を上向き連続的に垂立させて、その受け止めマスト片(40)へ上記ガイドレール(R)から吊り下がる引戸(10)の上端面(10a)よりも深く垂下することになる別個な断面ほぼF字形の前化粧板(44)を、前方又は左右両サイドから抜き差し自在に差し込み係止させる一方、
上記取付板片(13)を天井板片(12)の後端部付近から一定角度(α)の後上がり傾斜状態に起立させて、その取付板片(13)から建物の壁面(W)へ上記固定ビス(16)を、その先端下がりの傾斜姿勢状態にねじ込み一体化することを特徴とするアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケット。
【請求項4】
建物の壁面(W)にフイットする背板片(11)と、その背板片(11)から前方へ一定の長さ(L)だけ連続的に張り出す水平な天井板片(12)と、その背板片(11)又は天井板片(12)の後端部から連続的に起立する取付板片(13)とを備えた断面形状のアルミ押出材から成り、
上記背板片(11)又は取付板片(13)を複数の固定ビス(16)によって建物の壁面(W)へ取り付けると共に、吊り引戸(10)のガイドレール(R)を上記天井板片(12)へ複数のネジ締結具(28)(29)により、幅方向への位置調整自在に取り付けるアウトセット用吊り引戸(10)のレール取付ブラケット(B)において、
上記天井板片(12)の前端部から前化粧板用受け止めマスト片(40)を上向き連続的に垂立させて、その受け止めマスト片(40)へ上記ガイドレール(R)から吊り下がる引戸(10)の上端面(10a)よりも深く垂下することになる別個な断面ほぼ倒立J字形の前化粧板(48)を、上方又は左右両サイドから抜き差し自在に差し込み係止させる一方、
上記取付板片(13)を天井板片(12)の後端部付近から一定角度(α)の後上がり傾斜状態に起立させて、その取付板片(13)から建物の壁面(W)へ上記固定ビス(16)を、その先端下がりの傾斜姿勢状態にねじ込み一体化することを特徴とするアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケット。
【請求項5】
前化粧板用受け止めマスト片(40)に差し込み係止された前化粧板(44)(48)が天井板片(12)から垂下することになる深さ(d2)を、建物の開口枠(F)における上枠部(38)の開口面(38b)とほぼ一致する位置までの深い寸法に設定したことを特徴とする請求項3又は4記載のアウトセット用吊り引戸のレール取付ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−2038(P2013−2038A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130928(P2011−130928)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(591212420)株式会社山口安製作所 (4)
【出願人】(511143287)株式会社阿部建具店 (1)
【Fターム(参考)】