説明

アウトバウンドサービスのための情報発信システム及び通信回線割当方法

【課題】通信回線を使用して、登録された複数の発信先への情報発信を行うことを内容とする複数のタスクを実行する際に、タスク間の総回線占有時間が均等になるようにする。
【解決手段】タスク毎に、発信先数、回線使用状況、総回線占有時間、及び、どの時刻からどのような制御手順で発信を開始するかを表すIVRフローを対応付けてタスク記憶部122に記録しておき、タスク・発信先決定部123が、実行対象となる複数のタスクの中から、総回線占有時間が相対的に短いタスクを発信タスクとして決定するとともに当該発信タスクのために使用可能な通信回線数分の発信数を発信先数及び回線使用状況に基づいて決定する。発信制御部111は、決定した発信数分の情報発信を制御する。また、情報発信に要した総回線占有時間を計測し、記録されている総回線占有時間に計測結果を加算する。これにより、総回線占有時間のバラツキが無くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテレマーケティング、セールス、顧客獲得、各種督促、国政調査等のために、外部に向けて情報発信を行うアウトバウンド(Outbound)サービスのための情報発信システム及び通信回線割当方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コールセンターのように外部からの情報を受け付けることが中心のインバウンド(Inbound)サービスから、外部に向けて情報発信を行うアウトバウンドサービスへの変革のニーズが高まってきている。このアウトバウンドサービスを既存のコールセンターにおいて導入する例も増えている。最近は、コスト増を考慮して、従前のオペレータが介在するサービスから自動応対までも行うアウトバウンドサービスシステムが検討され、しかも、このようなシステムを各社が個別に持つのではなく、「SaaS(Software as a Service)」のような1つのシステムを複数のテナントで共有できるサービスも登場している。
【0003】
例えば特許文献1には、音声通知サービスを提供するサービス提供者と音声サービスを利用するサービス利用者の双方が、インターネットのブラウザ経由でIVR(Interactive Voice Response)フローを生成することが可能なアウトバウンドシステムが開示されている。また、特許文献2には、複数種類のサービスのIVRで利用されている処理を部品化し、これらの部品を複数組み合わせたIVRフロー定義データを各種IVRについてデータベースに格納しておくことにより、複数種類のサービスのIVRを単一の情報処理システム上で実現可能とする音声受付・通知装置が開示されている。
【0004】
ところで、SaaS型のアウトバウンドサービスには大きく分けて2つの形態がある。
1つは保障型といわれるサービス形態であり、各テナントが回線を占有する契約を結ぶ。もう1つはベストエフォート型といわれるサービス形態であり、全回線を複数のテナントで共有する。保障型のサービス形態の場合、テナントが自己の占有回線を使用しない場合には未使用回線となって、無駄が生じてしまうのに対して、ベストエフォート型のサービス形態は、全回線を複数のテナントで共有するため、未使用回線の発生を防止できる。そのため、現在では、ベストエフォート型の形態が主流となりつつある。
【0005】
ベストエフォート型のサービス形態では、各テナント用に均等に回線を割り当てることが望まれる。そのための制御方式として、回線数を用いた制御方式と、発信数を用いた制御方式とがある。
【0006】
回線数を用いた制御方式は、実際に使用する回線数を基準に回線割当を行う方式である。しかしながら、回線数は整数であるため、テナントの数によっては、均等に割り振ることができない場合がある。例えば、全回線が5回線でテナント数が3つの場合に、回線数を均等に割り振ろうとすると、各テナントとも1.66になり、割当が不能となる。
【0007】
一方、発信数を用いた制御方式は、アウトバウンドサービスを実施した数、つまり発信数を基準に回線割当を行う方式である。この制御方式では、発信数を基準とするため、発信数は、各テナントで均等に割り振られることとなるが、1つの発信の際の処理時間が各テナント間で大きな差がある場合、実際に回線を占有した時間である総回線占有時間という点では、不平等となる。
この点に関連して、複数存在するサービスの進捗度を一定に保つように回線を割り振る技術も提案されている。例えば特許文献3には、アウトバウンドによりアンケートを収集する情報処理システムであって、電話アンケート支援サーバにより、CTIサーバで行われている電話発信処理の進捗度を算出し、この進捗度に基づいて次の発信先情報を抽出することにより、電話発信のための時間配分を均一にする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−009975
【特許文献2】特開2001−298540
【特許文献3】特開2004−304353
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1乃至3に代表される従来のアウトバウンドシステムでは、テナントが同じ料金を支払っているにもかかわらず、回線占有時間に着目すると、通信回線が混み合っているときの回線割当が不平等になる。例えば、テナントA及びテナントBの処理時間が1分、テナントCの処理時間が3分であったとすると、共に発信先を5つとすると、テナントA及びテナントBのために回線を占有する時間は5分であるのに対し、テナントCでは15分となる。これでは、著しく不平等となる。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、複数の通信回線を複数のテナントで共用して情報発信の自動化処理を行う際に、テナント間で通信回線の使用に際して不平等が生じないようにする仕組みを実現することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、テナントが行うアウトバウンドサービスをタスクとして捉え、タスクの実行による回線占有時間の合計を均等化することによりテナント間に不平等が生じないようにするアウトバウンドサービスのための情報発信システム及び通信回線割当方法により、上記課題を解決する。
本発明の情報発信システムは、それぞれ、通信回線の割当を受けて、登録された複数の発信先への情報発信を行うことを内容とする複数のタスクを実行可能なシステムであって、前記タスク毎に、発信先数、確保しているすべての通信回線の回線使用状況、発信先との間の自動応対手順を定めた情報発信フロー、及び、通信回線を使用したことによる回線占有時間を合算した総回線占有時間を対応付けて所定の記憶装置に記録する記録手段と、実行対象となる複数のタスクの中から、前記記憶装置に記録されている総回線占有時間が相対的に短いタスクを発信タスクとして決定するとともに当該発信タスクのために使用可能な通信回線数分の発信数を前記発信先数及び前記回線使用状況に基づいて決定し、決定した発信タスクに対応付けられている情報発信フローを前記記憶装置より取得するタスク・発信先決定手段と、前記タスク・発信先決定手段で取得した情報発信フローに従って前記決定した発信数分の情報発信を制御し、これにより情報発信に要した総回線占有時間を計測し、当該発信タスクに関連付けて前記記憶装置に記録されている総回線占有時間に前記計測結果を加算する制御手段と、を備えて成る。
【0011】
この情報発信システムでは、実行対象となる複数のタスクのうち、総回線占有時間が相対的に短いタスクを発信タスクに決定し、且つ、使用可能な通信回数分の発信数を決定するので、タスク間の総回線占有時間のバラツキが無くなるように通信回線が割り当てられる。タスク実行後は、総回線占有時間が増加するので、総回線占有時間が短いタスクが何時までも存在することが無い。さらに、情報発信フローに従って発信制御されるので、テナントが望むタスクの内容に応じた情報発信が可能になる。
【0012】
ある実施の態様では、前記タスク・発信先決定手段は、前記記憶装置に記録されている回線使用状況に基づいて使用可能回線数を特定し、実行対象となるすべてのタスクについての前記登録数から発信済数を差し引いた残発信数の合計が前記使用可能回線数を超えるまでは、前記複数のタスクを所定順に前記発信タスクとして決定するように、情報発信システムを構成する。
この態様では、使用可能回線が未使用状態になることが防止され、通信回線の稼働率の低下を回避することができる。この態様において、前記タスク・発信先決定手段を、前記使用可能回線数が前記残発信数を超えたときは、すべてのタスクについての前記総回線占有時間を比較し、当該時点で最も短い総回線占有時間のタスクを前記発信タスクとして決定するように構成することにより、タスクの実行に必要な通信回線が足りなくなった場合であっても、タスク間の総回線占有時間に差異が生じる事態を迅速に回避することができる。
【0013】
ある実施の態様では、前記発信タスクの実行に対する発信先からの回答を受け取り、受け取った回答を発信した情報の内容と関連付けて前記記憶装置に記録する回答管理手段をさらに備えて情報発信システムを構成する。
この態様では、発信した情報の内容と回答とが関連付けられて記録されるので、アウトバウンドサービスを円滑に実施することが可能となる。
【0014】
本発明の通信回線割当方法は、それぞれ、通信回線の割当を受けて、登録された複数の発信先への情報発信を行うことを内容とする複数のタスクの実行を制御する制御手段による前記通信回線の割当方法であって、実行対象となる複数のタスクの各々について、発信先数、確保しているすべての通信回線の回線使用状況、発信先との間の自動応対手順を定めた情報発信フロー、及び、通信回線を使用したことによる回線占有時間を合算した総回線占有時間を対応付けて所定の記憶装置に記録する段階と、前記複数のタスクのうち、前記記憶装置に記録されている総回線占有時間が相対的に短いタスクを発信タスクとして決定するとともに当該発信タスクのために使用可能な通信回線数分の発信数を前記発信先数及び前記回線使用状況に基づいて決定し、決定した発信タスクに対応付けられている情報発信フローを前記記憶装置から取得する段階と、取得した情報発信フローに従って前記決定した発信数分の情報発信を制御し、これにより情報発信に要した総回線占有時間を計測し、当該発信タスクに関連付けて前記記憶装置に記録されている総回線占有時間に前記計測結果を加算する段階とを有する、アウトバウンドサービスのための通信回線割当方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テナントが委託するアウトバウンドサービスをタスクとして把え、各タスクの総回線占有時間が均等に近づくように通信回線を割り当てる(使用する)ようにしたので、例えばベストエフォート型のサービス形態を採用する場合であっても、テナント間に不平等が生じることが無くなるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を、複数の通信回線(以下、単に「回線」と称する場合がある)を共用する契約を締結した複数のテナントより委託されたアンケート等のための情報発信及び自動応対の要求をそれぞれタスクとして捉え、これらのタスクの実行により、多数の顧客の公衆通信電話(固定電話、携帯電話等)との間で双方向通信を行うアウトバウンドサービスシステムに適用した場合の実施の形態例を説明する。
【0017】
[アウトバウンドサービスシステムの構成]
図1は、本実施形態のアウトバウンドサービスシステムの全体構成図である。このアウトバウンドサービスシステム1は、タスクを委託するテナントA,B,Cに設けられる情報端末20a,20b,20c(以下、これらを総称して情報端末20とする)、及び、アンケート等を受け取る複数の顧客の各々に設けられる電話(固定電話機、携帯電話無線機等)30a,30b,30c(以下、これらを総称して電話30とする)と公衆回線L1,L2を通じて通信を行う情報発信システム10を含んで構成される。
【0018】
情報発信システム10は、発信サーバ11、タスク発信コントローラ12及びWebサーバ13により構成される。発信サーバ11及びWebサーバ13は、サーバ機能を有するコンピュータ、タスク発信コントローラ12は、大容量記憶装置を備えたコンピュータであり、それぞれ、プロセッサが所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行することにより、各コンピュータを情報処理のための制御手段ないし種々の機能実現手段として動作させる。
【0019】
本実施形態では、発信サーバ11を、電話30に対する発信制御を行う発信制御部111として動作させ。また、Webサーバ13を、情報端末20からのタスクの設定を受け付けるタスク設定部131として動作させる。さらに、タスク発信コントローラ12を、登録受付部121、タスク・発信先決定部123として動作させるとともに、大容量記憶装置に、タスク記憶部122及びログ記憶部124を構築する。
なお、ここでは、3種類のコンピュータにより情報発信システム10を構成する場合の例を示しているが、上記の制御手段ないし種々の機能実現手段を単独のコンピュータで実現することで情報発信システム10を構成しても良い。
【0020】
タスク記憶部122は、大容量記憶装置に構築されるデータベースの一種であり、テナントから委託されたタスク情報を登録するためのタスク登録テーブル、各タスクの実行経過に関する情報を記録するためのタスク経過テーブル、発信先のアドレス(本例では電話番号)を含む顧客の情報を記録するための発信先管理テーブル、回線の確保状況及び使用状況を記録するための使用可能回線管理テーブルが格納される。タスク記憶部122に格納される各種テーブルの内容は、以下の通りである。
【0021】
図2は、タスク登録テーブルの内容例を示す。タスク登録テーブル200には、タスク毎に、そのタスクを識別するタスクIDを記録するためのタスクID領域201、登録された複数の発信先(何人の顧客に発信するか)を記録するための発信先数領域202、情報発信フローの一例となるIVRフローの開始時間を記録するための時間領域203、IVRフローのシナリオの種別を記録するための種別領域204その他の領域205が形成されている。IVRは「音声自動応対システム」の略であり、例えば「○○に該当する方は1番のボタンを押して下さい」のようなシナリオを音声で再生し、発信先の顧客との応答を自動で行なうこと、ないし、そのためのシステムを表す。IVRフローは、発信先との間で行う音声自動応対の開始時期及びその制御手順等を記述したものであり、コンピュータ読み取り可能な制御情報の一種である。
【0022】
図3は、タスク経過テーブルの内容例を示す。タスク経過テーブル210には、タスクIDを記録するためのタスクID領域211、各タスクを実行したときの回線占有時間の合計(総回線占有時間)を記録するための総回線占有時間領域212、現在使用されている回線数を表す回線使用状況領域213、既に処理の終わった発信数を記録するための発信数領域214、及び、登録された発信先数から既に処理の終わった発信数を差し引いた残発信数を記録するための残発信数領域215が形成されている。
【0023】
図4は、使用可能回線管理テーブルの内容例を示す。使用可能回線管理テーブル220は、情報発信システム10が確保している全回線数(最大回線数)を記録するための最大回線数領域221、及び、全タスクによって使用されている回線数(使用中回線数)を記録するための使用中回線数領域222が形成されている。
【0024】
図5は、発信先管理テーブルである。発信先管理テーブル240は、タスク毎に、当該タスクを識別するタスクIDを記録するためのタスクID領域241、発信先のアドレス、例えば電話番号を記録するための発信先領域242、及び、発信する質問等の処理が終了したかどうかを識別するタグを記録するための質問番号領域243が形成されている。
【0025】
ログ記憶部124は、発信サーバ11が、タスク実行時の質問に対する発信先からの回答を受け取り、これをログとして記録するためのデータベースである。図6は、ログ記憶部124の内容例を示す。本例では、上述した各種テーブルと同じテーブル形式でログを記録する。そのために、タスクIDを記録するためのタスクID領域231と、発信先アドレスを記録するための発信先領域232と、アンケートの質問内容を識別する質問番号を記録するための質問番号領域233と、回答例となるアンケート結果等を記録するためのアンケート結果領域234とが形成される。一つのIVRフローで複数のアンケート結果を取得する可能性があるため、質問番号が必要となる。
【0026】
情報発信システム10の各部は、以下のように動作する。
発信制御部111は、IVRフローに従う自動発信応答の制御、すなわち発信先の電話30との間に使用可能な回線を割り当て、電話30の電話番号を呼び出して通信を確立するとともに、電話30を操作する顧客との応対を、図示しない音声処理手段等を起動して、IVRフローに含まれるシナリオに従って自動で行なうための制御を行う。
【0027】
発信制御部111は、また、情報発信からIVRフローに従う自動応対が終了するまでに要した時間を、発信サーバ11が有する計時機構を用いて計測し、計測結果を総回線占有時間の増分として、タスク記憶部122のタスク経過テーブル210の総回線占有時間領域212に記録させる機能と、回線割当時に、タスク記憶部122の使用可能回線管理テーブル220の内容を更新する機能も有する。
【0028】
タスク・発信先決定部123は、各テナントA,B,Cの情報端末20を通じて委託された、実行対象となる複数のタスクの中から、発信対象となるタスク(発信タスク)と、その発信タスクの発信数とを決定し、決定した発信タスクのタスクIDをもとに、IVRフローをタスク登録テーブル200から取得するとともに、発信数分の電話番号を発信先管理テーブル240から取得し、これらを発信制御部111に伝達する。なお、発信先の電話番号は、図示しない外部データベースより取得するようにしても良い。
【0029】
タスク・発信先決定部123は、全タスクの総回線占有時間がほぼ平等となるように発信タスク及び発信数を決定する。例えば、各タスクのIVRフローを参照して、開始時期達したタスクがあるかどうかを定期的に調べ、開始時期に達したタスクが存在するときは、そのタスクの処理時間と使用可能な回線数とを調べ、各処理時間中、回線数を確保できる場合は、そのタスクについて登録されている発信先数を発信タスク及び発信数として決定し、IVRフロー及び発信先電話番号と共に、発信制御部111に伝達する。
【0030】
一方、開始時期に達したタスクが複数存在し、各タスクの発信数が多くなる結果、使用可能な回線数が不足する場合は、タスク経過テーブル210に記録されている総回線占有時間が相対的に短いタスク、及び/又は、その処理時間の短いタスクの発信先を次の発信タスクの発信先として決定するとともに当該発信タスクのために使用可能な回線数分の発信数を決定し、決定した発信タスクに対応付けられているIVRフローをタスク経過テーブル210より取得する。そして、決定した発信タスクを、そのIVRフロー及び発信先電話番号と共に、発信制御部111に伝達する。
これにより、例えば総回線占有時間が20分のタスクよりも総回線占有時間が15分のタスク、あるいは、処理時間が3分のタスクよりも処理時間が1分のタスクが優先的に次の発信タスクとして決定されやすくなり、総回線占有時間を全タスクで均等に近づけることができる。
【0031】
なお、総回線占有時間は、タスクを実行するたびに、発信制御部111から送られてくる回線占有時間の増分が、当該タスクの新たな回線占有時間として更新(加算)されて、タスク経過テーブル210の総回線占有時間領域212に記録された時間データである。また、使用可能な回線数は、使用可能回線管理テーブル220の最大回路数領域221に記録された数値から使用中回線数領域222に記録された数値を差し引くことによって得られる数値データである。
【0032】
タスク・発信先決定部123では、使用可能な回線数が充分である場合、すなわち実行対象となるすべてのタスクについての残発信数の合計が使用可能な回線数を超えるまでは、複数のタスクを所定順に発信タスクとして決定する。「所定順」は、例えばテナントからのタスク情報の登録順であっても良く、登録数又は残発信数に満たないいくつかの発信数のタスクのうち、最も短い総回線占有時間又は処理時間のタスク順であっても良い。
そして、使用可能回線数が残発信数を超えた時点で、すべてのタスクについての総回線占有時間を比較し、その時点で最も短い総回線占有時間のタスクを、当該時点での次の発信タスクとして決定する。なお、この場合も処理時間の長さを考慮するようにしても良い。このようにすれば、総回数占有時間のバラツキが生じることを比較的早い段階で防止することができる。
【0033】
タスク設定部131は、テナントより委託されたタスク情報を情報発信システム10に設定登録するための処理を行う。具体的には、テナントから情報端末20のGUI等を通じて入力されたタスク情報を、公衆回線L1を通じて受信し、受信したタスク情報をタスク受付部121に伝達する。タスク情報は、上記の「発信先数」と、発信先との間の音声自動応対の手順を定めた上記の「IVRフロー」とを少なくとも含む。
【0034】
登録受付部121は、タスク設定部131から伝達されたタスク情報を、タスク記憶部122のタスク登録テーブル200に登録(記録)するためのものである。
【0035】
発信サーバ11は、発信制御部111による自動応対制御の後、発信タスクの実行に対する発信先からの回答を受け取り、受け取った回答を発信した情報の内容と関連付けてログ記憶部24に記録する機能を有する。この機能を実現するときの発信サーバ11は、回答管理手段として動作する。
【0036】
[情報発信システムの動作]
次に、上記のように構成される情報発信システム10の動作を説明する。図7〜図9は、情報発信システム10において実行される処理の手順説明図である。
【0037】
[タスク登録]
図7を参照し、情報発信システム10は、まず、情報端末20から入力されたタスク情報をタスク設定部131で受け付ける(ステップS1)。タスク情報は、登録受付部121を通じてタスク記憶部122のタスク登録テーブル200に登録される(ステップS2)。登録は、具体的には、図2のように、新たに受け付けたタスク情報についてのタスクID領域201、発信先数領域202、IVRフローにおける開始時間領域203、IVRフローにおけるシナリオの種別領域204その他の領域205をタスク登録テーブル200に形成する処理である。
【0038】
タスク登録テーブル200へのタスク情報の登録を終えると、登録受付部121は、タスク経過テーブル210に、上記のタスクIDを記録するためのタスクID領域211、総回線占有時間212、回線使用状況領域213、発信数領域214、残発信数領域214を形成するとともに、タスクID領域211を除く各領域の値を初期値にする初期化処理を行なう(ステップS3)。
【0039】
[タスク・発信先決定]
初期化処理後、タスク・発信先決定部123は、使用可能回線管理テーブル220より、使用可能回線数(最大回線数−使用中回線数)を取得する(ステップS4)。また、タスク登録テーブル200より、実行可能なタスクを探しだし、そのタスクを発信タスクとして決定して、発信数分の使用可能回線数を割り当てる(ステップS5)。このとき、割り当てる回線数が不足する場合は、上述したように、タスク間の総回線占有時間が平等に近づくように次のタスクを発信タスクとして決定する。
【0040】
発信タスクを決定すると、タスク・発信先決定部123は、その発信タスクのIVRフロー及び発信数分の電話番号を発信制御部111に伝達するとともに、使用可能回線管理テーブル220の使用中回線数領域222の数値を更新する(ステップS6)。この更新は、既に記録されている数値の減算である。
【0041】
発信制御部111は、タスク・発信先決定部123より伝達されたIVRフローに従い、発信先電話番号への発信処理を行なう。その際、発信からIVRフローが終了するまでに実際に要した時間を計測し、計測された時間を、IVRフローが終了後、タスク経過テーブル210の更新時に、対応するタスクの総回線占有時間に加算する。回線数を割り当てた全タスクについての発信が終了したかどうかを判定し(ステップS7)、未発信のタスクがある場合はステップS4に戻る(ステップS7:No)。全タスクの発信が終了した場合は、処理を終える(ステップS7:YES)。
【0042】
[後処理]
図8に移り、各タスクが終了した後の後処理につき説明する。
発信サーバ11は、IVRフローの終了後、タスクの実行によって顧客の電話30から受信したアンケート結果をログとしてログ記憶部124に記録し、さらに、タスク経過テーブル210の総回線占有時間、回線使用状況、発信数、残発信数を更新するとともに、使用可能回線管理テーブル220の使用中回線数領域222の数値を更新する(ステップS11)。
【0043】
[各タスクへの回線割当/発信タスクの決定]
上述したステップS5において発信タスクを決定する際の回線割当の手順をより詳細に説明する。図9は、ステップS5の詳細手順説明図である。
ステップS4において使用可能回線数を取得した後、タスク・発信先決定部123は、タスク経過テーブル210から全タスクの残発信数を抽出する(ステップS21)。抽出した残発信数を合計し、その合計が、使用可能回線数以下かどうかを判定する(ステップS22)。残発信数の合計が使用可能回線数以下であった場合は、ステップS6に戻る(ステップS22:YES)。すなわち、使用可能回線が充分の状態なので、複数のタスクを所定順に発信タスクとして決定する。
【0044】
一方、ステップS22における判定の結果、残発信数の合計が使用可能回線数を超えている場合、タスク・発信先決定部123は、タスク経過テーブル210の総回線占有時間領域212から各タスクの総回線占有時間を取得する(ステップS22:NO、S23)。そして、取得した各タスクの総回線占有時間を比較し、総回線占有時間が最小のタスクを次の発信タスクとして選択し(ステップS24)、その発信タスクについて、発信数分の回線を割り当てる。その後、ステップS6の処理に戻る。
【0045】
このように、情報発信システム10では、実行対象となる複数のタスクの各々について、IVRフロー、総回線占有時間等を対応付けて記録するためのタスク経過テーブル210を記憶装置に格納しておき、複数のタスクのうち、総回線占有時間が相対的に短いタスクを発信タスクとして決定するとともに当該発信タスクのために使用可能な回線数分の発信数を決定し、発信数分の情報発信を制御するとともに、情報発信に要した総回線占有時間を計測し、当該発信タスクに関連付けて総回線占有時間に計測結果を加算するようにしたので、総回線占有時間の小さなタスクが優先的に発信タスクとして決定されやすくなり、結果的に、全てのタスクの総回線占有時間の合計を均等化することができる。
【0046】
従来、確保している最大回線数を超えた複数のタスクが生じたときの回線割当をタスク間で均等に行うことができなかったが、上述した情報発信システム10によれば、それが可能となる。そのため、アウトバウンドサービスシステム1において、ベストエフォート型のサービス形態を採用しつつ、個々のテナントのタスクによる回線の総回線占有時間が、各テナントでほぼ均等となる仕組みを実現することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、発信先の通信端末の例として電話30を用いた場合の例を示したが、通信端末は、通信機能を有するパーソナルコンピュータ又は携帯情報端末であっても良い。電話30以外の通信端末では、電話番号に代えて、発信先アドレスを用いる。また、本実施形態では、情報端末20と情報発信システム10との間に公衆回線L1が介在し、他方、電話20と情報発信システム10との間に公衆回線L2が介在する例を示したが、これらの公衆回線L1、L2に代えて、専用回線、ネットワーク回線を介在させて良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態のアウトバウンドサービスシステムの全体構成図。
【図2】タスク登録テーブルの内容例を示す図。
【図3】タスク経過テーブルの内容例を示す図。
【図4】使用可能回線管理テーブルの内容例を示す図。
【図5】発信先管理テーブルの内容例を示す図。
【図6】ログ記憶部の内容例を示す図。
【図7】情報発信システムにおいて実行される処理手順説明図。
【図8】情報発信システムにおいて実行される処理手順説明図。
【図9】図7の一部の処理ステップの詳細手順説明図。
【符号の説明】
【0049】
1 アウトバウンドサービスシステム
20a,20b,20c(20) 情報端末
30a,30b,30c(30) 電話(固定電話機、携帯電話無線機等)
L1,L2 公衆回線
10 情報発信システム
11 発信サーバ
12 タスク発信コントローラ
13 Webサーバ
111 発信制御部
131 タスク設定部
121 登録受付部
123 タスク・発信先決定部
122 タスク記憶部
124 ログ記憶部
200 タスク登録テーブル
210 タスク経過テーブル
220 使用可能回線管理テーブル
240 発信先管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、通信回線の割当を受けて、登録された複数の発信先への情報発信を行うことを内容とする複数のタスクを実行可能なシステムであって、
前記タスク毎に、発信先数、確保しているすべての通信回線の回線使用状況、発信先との間の自動応対手順を定めた情報発信フロー、及び、通信回線を使用したことによる回線占有時間を合算した総回線占有時間を対応付けて所定の記憶装置に記録する記録手段と、
実行対象となる複数のタスクの中から、前記記憶装置に記録されている総回線占有時間が相対的に短いタスクを発信タスクとして決定するとともに当該発信タスクのために使用可能な通信回線数分の発信数を前記発信先数及び前記回線使用状況に基づいて決定し、決定した発信タスクに対応付けられている情報発信フローを前記記憶装置より取得するタスク・発信先決定手段と、
前記タスク・発信先決定手段で取得した情報発信フローに従って前記決定した発信数分の情報発信を制御し、これにより情報発信に要した総回線占有時間を計測し、当該発信タスクに関連付けて前記記憶装置に記録されている総回線占有時間に前記計測結果を加算する制御手段と、を備えて成る、
アウトバウンドサービスのための情報発信システム。
【請求項2】
前記タスク・発信先決定手段は、前記記憶装置に記録されている回線使用状況に基づいて使用可能回線数を特定し、実行対象となるすべてのタスクについて前記記憶装置に記録されている発信先数から発信済数を差し引いた残発信数の合計が前記使用可能回線数を超えるまでは、前記複数のタスクを所定順に前記発信タスクとして決定する、
請求項1記載の情報発信システム。
【請求項3】
前記タスク・発信先決定手段は、前記使用可能回線数が前記残発信数を超えたときは、すべてのタスクについての前記総回線占有時間を比較し、当該時点で最も短い総回線占有時間のタスクを前記発信タスクとして決定する、
請求項2記載の情報発信システム。
【請求項4】
前記発信タスクの実行に対する発信先からの回答を受け取り、受け取った回答を発信した情報の内容と関連付けて前記記憶装置に記録する回答管理手段をさらに備えて成る、
請求項1、2又は3記載の情報発信システム。
【請求項5】
それぞれ、通信回線の割当を受けて、登録された複数の発信先への情報発信を行うことを内容とする複数のタスクの実行を制御する制御手段による前記通信回線の割当方法であって、
実行対象となる複数のタスクの各々について、発信先数、確保しているすべての通信回線の回線使用状況、発信先との間の自動応対手順を定めた情報発信フロー、及び、通信回線を使用したことによる回線占有時間を合算した総回線占有時間を対応付けて所定の記憶装置に記録する段階と、
前記複数のタスクのうち、前記記憶装置に記録されている総回線占有時間が相対的に短いタスクを発信タスクとして決定するとともに当該発信タスクのために使用可能な通信回線数分の発信数を前記発信先数及び前記回線使用状況に基づいて決定し、決定した発信タスクに対応付けられている情報発信フローを前記記憶装置から取得する段階と、
取得した情報発信フローに従って前記決定した発信数分の情報発信を制御し、これにより情報発信に要した総回線占有時間を計測し、当該発信タスクに関連付けて前記記憶装置に記録されている総回線占有時間に前記計測結果を加算する段階とを有する、
アウトバウンドサービスのための通信回線割当方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−87678(P2010−87678A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252456(P2008−252456)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】