説明

アカルボースを含有する口腔内崩壊剤

【課題】本発明は、口腔内で唾液により速やかに崩壊し、錠剤側面部にキズのないアカルボース含有口腔内崩壊錠、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、以下(A)及び(B)の造粒物を含有する口腔内崩壊錠;(A)アカルボースと結晶セルロースを含む造粒物;(B)速崩壊性成分を含む造粒物に関する。それにより本発明のアカルボース含有口腔内崩壊錠は、優れた崩壊性を有し、約30秒以内の口腔内崩壊時間を実現できる。また、本発明によれば口腔内崩壊錠の重量を抑えることが出来るため、錠剤が大きくならず服用しやすい口腔内崩壊錠が得られる。さらに、本発明の製造方法では、バインディングを防止することができるため、錠剤側面部にキズのないアカルボース含有口腔内崩壊錠を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後過血糖改善剤であるアカルボースを含有する口腔内崩壊剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アカルボースは腸管内において炭水化物の消化・吸収に関与するα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼ(スクラーゼ,マルターゼ等)の活性を阻害することにより食後の血糖上昇を抑制する作用を有しており、食後過血糖を改善する目的で糖尿病患者に用いられている。
【0003】
現在市販されているアカルボース製剤は食直前に適量の水と共に服用する必要があるが、患者のコンプライアンスを考慮すると、水なしでも服用可能な口腔内崩壊錠が好ましい。
しかしながら、アカルボースは成人の1回あたりの投与量が50〜100mgと比較的多く、またアカルボース原薬は吸湿性が強いためか(医薬品研究20(4)769−783(1989))、アカルボースを含有する口腔内崩壊錠に関する知見は下記の特許文献1(WO99/37308号公報)を除きほとんど見あたらない。
【0004】
そのWO99/37308号公報では、アカルボース、クロスポビドン、微結晶セルロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウムを直打法により製造しているが、この製剤の口腔内崩壊時間は2分以下と記載されているため、迅速な崩壊性を持つ口腔内崩壊錠のレベルに達しているか大いに疑問である。
【0005】
その他、口腔内崩壊錠の技術に関しては、特開2004−2326号公報に糖類、崩壊剤及び結晶セルロースの混合粉末にα−グルコシダーゼ阻害剤及びヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を噴霧する流動層造粒法により製造する速崩壊性固形製剤が開示されている。
しかしながら、本特許文献の製造方法は、実施例のように主剤含量が0.2〜0.3μgと微量だからこそ可能な手段であるため、これをアカルボースを少なくとも50mg含む口腔内崩壊錠に応用することは不可能である。
【0006】
また、アカルボースは水を含むと粘性を持つため、結合剤と同様の働きをする性質がある。そのため、一般的な練合造粒、流動層造粒などの製造方法で製造した場合、製造中にアカルボースが吸湿して、製剤が崩壊しなくなるという問題があった。
【0007】
このように、アカルボースについて口腔内崩壊錠が望まれているにも係わらず、迅速に崩壊し、錠剤が大きくなく服用しやすい口腔内崩壊錠を製造することができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】医薬品研究20(4)769−783(1989)
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO99/37308号公報
【特許文献2】特開2004−2326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、口腔内で唾液により速やかに崩壊し、適度な大きさの服用しやすいアカルボース含有口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、アカルボースに所定の賦形剤を含有することにより、または所定の製造方法を用いることにより上記目的を達成し得ることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)以下(A)及び(B)の造粒物を含有する口腔内崩壊錠
(A)アカルボースと結晶セルロースを含む造粒物
(B)速崩壊性成分を含む造粒物、
(2)前記(1)において、(A)の造粒物が流動層造粒法により製造されることを特徴とする口腔内崩壊錠に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアカルボース含有口腔内崩壊錠は、優れた崩壊性を有しているため、約30秒以内の口腔内崩壊時間を実現している。そのため、本発明のアカルボース含有口腔内崩壊錠は、口腔内で唾液により速やかに崩壊することができ、患者のコンプライアンスを向上させることができる。また、本発明によれば口腔内崩壊錠の重量を抑えることが出来るため、錠剤が大きくならず服用しやすい口腔内崩壊錠が得られる。さらに、本発明の製造方法では、バインディングを防止することができるため、錠剤側面部にキズのないアカルボース含有口腔内崩壊錠を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
本発明の口腔内崩壊錠とは口腔内で速やかに崩壊する錠剤である。
また、本発明の口腔内崩壊錠は水を摂取することなく口腔内で約30秒以内に崩壊することができる。
【0016】
本発明において使用するアカルボースは、公知の方法に従って製造したものを使用してもよい。
本発明の口腔内崩壊錠中におけるアカルボースの含有量は、錠剤中10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%で調製するのがよい。また、本発明の錠剤を食後過血糖改善剤として用いる場合、成人の1日量として、好ましくは150mg〜300mgになるようにアカルボースを配合するのがよい。
【0017】
本発明の口腔内崩壊錠は、(A)アカルボースと結晶セルロースを含む造粒物と(B)速崩壊性成分を含む造粒物を含有する口腔内崩壊錠である。
本明細書中の造粒物とは、製剤分野において通常用いられる方法により造粒されたものを意味する。たとえば、日本薬局方第15改正に定められている散剤及び顆粒剤等があげられる。
【0018】
本発明において(A)の造粒物に使用する結晶セルロースは、アカルボース1重量部に対して、0.6重量部以上、好ましくは0.6〜2重量部、より好ましくは1〜1.4重量部の割合で添加される。ここで、添加量が0.6重量部未満であると、口腔内崩壊時間が遅延する傾向があり好ましくない。
本明細書中の結晶セルロースは、微結晶セルロースと呼ばれる物も含まれ、医薬品に一般的に用いられている物であれば特に限定されない。
【0019】
本発明の口腔内崩壊錠の(B)の造粒物に使用する速崩壊性成分とは、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、エリスリトール、トレハロース、キシリトール等の糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、トウモロコシデンプン、軽質無水ケイ酸、無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の賦形剤、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースカルシウム、カルメロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の結合剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ソルビトール、アセスルファムカリウム、白糖、ブドウ糖、マルチトール等の甘味剤等が挙げられる。また、これらの速崩壊性成分は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明の口腔内崩壊錠は、例えば、(A)アカルボース、結晶セルロースを含有する造粒物と(B)速崩壊性成分を含む造粒物を製造し、それらを混合した後、打錠することにより製造することが出来る。
(A)の造粒物の製造は、流動層造粒法で製造するのが好ましい。練合造粒法で製造した場合、口腔内崩壊時間が遅延する傾向があり好ましくない。(A)の造粒物の製造の具体例としては、流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕にアカルボース、結晶セルロース及び必要に応じて医薬品の製造において一般的に用いられている添加剤を入れて混合し、流動層造粒機下部から空気を送入し、当該混合物を浮遊させて流動状態を保ち、これに造粒溶媒をスプレーノズルにより噴霧し、流動層造粒機内で乾燥することにより均一な造粒物を得る方法が挙げられる。噴霧・吸着させる時の流動空気の温度は、特に限定されないが、通常50〜80℃であり、好ましくは60〜70℃である。乾燥する時の温度は、特に限定されないが、60〜70℃で乾燥するのが好ましい。また、この方法で用いられる造粒溶媒は、例えば水、エタノール又はこれらの1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0021】
(B)の造粒物の製造としては、例えば、速崩壊性成分及び必要に応じて医薬品の製造において一般的に用いられている添加剤を混合し、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、練合造粒法等の種々の造粒法を用いて造粒することにより目的の造粒物を得る方法が挙げられる。具体的には、慣用されている方法に従って、プラネタリーミキサー(淺田鉄工株式会社)、バーチカルグラニュレーター(株式会社パウレック)、ハイスピードミキサー(深江パウテック株式会社)、マルチプレックスMP−01(株式会社パウレック)、ハイスピードミキサー等を用いて行われる。この方法で用いられる造粒溶媒は、例えば水、エタノール又はこれらの1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0022】
上記の方法で製造した各造粒物は、(A)の造粒物1重量部に対して、(B)の造粒物0.4〜3重量部、好ましくは0.8〜1.5重量部の割合で混合される。当該混合物には、必要に応じて医薬品の製造において一般的に用いられている添加剤を添加してもよい。混合は、慣用されている方法に従ってV型混合機VM−5(株式会社ダルトン)等を用いて行われる。
【0023】
本発明の口腔内崩壊錠は、上記の方法で製造した混合物を慣用の方法により打錠して行うことができる。例えば、上記の方法で製造した組成物を単発打錠機(株式会社菊水製作所)、ロータリー打錠機(VIRGO−512)等の通常使用される装置で打錠することにより目的の錠剤を得る方法が挙げられる。この場合の錠剤の打錠圧は、錠剤の製造に際して支障のない程度であれば特に限定されないが、200〜800kg/cm2、好ましくは250〜740kg/cm2であるのがよい。
【0024】
本発明の口腔内崩壊錠は、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、甘味剤、矯味剤、香料、着色料等の添加剤を含有することができる。例えば、トウモロコシデンプンなどのデンプン類、乳糖、白糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、結晶セルロース、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、無水リン酸水素カルシウム等の賦形剤;ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、プルラン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン等の結合剤;クロスポビドン、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋カルメロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油等の滑沢剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の界面活性剤;アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ソルビトール、白糖、ブドウ糖、マルチトール等の甘味剤;クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、DL−リンゴ酸、グリシン、DL−アラニン等の矯味剤;ストロベリー、レモン、レモンライム、オレンジ、l−メントール、ハッカ油等の香料;黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用タール色素、天然色素等の着色料等が挙げられる。
【0025】
本発明の口腔内崩壊錠の大きさ、形状は医薬上許容されるものであれば特に限定されないが、円形錠の場合は、直径7〜12mm、厚さ3.40〜6.50mm、好ましくは直径8〜11mm、厚さ3.65〜6.15mm、変形錠の場合は、短径:4〜8mm、長径8〜18mm好ましくは短径:4〜6.5mm、長径:8〜15mm、厚さ3.00mm〜6.50mm好ましくは3.65mm〜6.15mmであるのがよい。また、本発明の口腔内崩壊錠の硬度においても、口腔内崩壊錠の取扱いに支障のない程度であれば特に限定されない。
【0026】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0027】
(1)アカルボース164.96g及び結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕160gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水109gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて70℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(2)D−マンニトール181.8g、結晶セルロース120g、クロスポビドン80g及びスクラロース4gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)218gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(3)上記(1)で得られた顆粒101.55g及び上記(2)で得られた顆粒96.45gを混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに軽質無水ケイ酸1.0g及びステアリン酸マグネシウム1.0gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8.5mm、R面の杵で打錠圧3330−3820Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は25秒であった。
【実施例2】
【0028】
(1)アカルボース164.96g、結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕160g及びクロスポビドン〔ポリプラスドンXL−10:アイエスピー・ジャパン株式会社〕32gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水147gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて70℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(2)D−マンニトール177.25g、結晶セルロース200g、クロスポビドン100g及びスクラロース5.0gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)725gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(3)上記(1)で得られた顆粒55.775g及び上記(2)で得られた顆粒43.225gを混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに軽質無水ケイ酸0.5g及びステアリン酸マグネシウム0.5gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8.5mm、R面の杵で打錠圧1470−1670Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は23秒であった。
【実施例3】
【0029】
(1)アカルボース206.2g、結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕160g及び無水リン酸水素カルシウム〔協和化学工業株式会社〕80gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)240gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(2)D−マンニトール177.25g、結晶セルロース200g、クロスポビドン100g及びスクラロース5.0gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)725gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(3)上記(1)で得られた顆粒55.775g及び上記(2)で得られた顆粒43.225gを混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに軽質無水ケイ酸0.5g及びステアリン酸マグネシウム0.5gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8.5mm、R面の杵で打錠圧1570−1660Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は26秒であった。
【実施例4】
【0030】
(1)アカルボース154.65g及び結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕150gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)151.2gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて60℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(2)エリスリトール32.725g、結晶セルロース5.0g、クロスポビドン10g及びスクラロース0.5gを乳鉢にて混合し、精製水/エタノール混合溶媒(w/w=1/1)21gを添加して練合した。得られた混合物を乾燥機〔ミニジェットオーブン〕にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(3)上記(1)で得られた顆粒25.4g及び上記(2)で得られた顆粒24.1gを混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに軽質無水ケイ酸0.25g及びステアリン酸マグネシウム0.25gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8.5mm、R面の杵で打錠圧1570−1760Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は20秒であった。
【実施例5】
【0031】
(1)アカルボース206.2g及び結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕280gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水152gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて70℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(2)D−マンニトール133.8g、結晶セルロース88g、クロスポビドン80g及びスクラロース4gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)172.5gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(3)上記(1)で得られた顆粒及び上記(2)で得られた顆粒を混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに軽質無水ケイ酸4g及びステアリン酸マグネシウム4gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8.5mm、R面の杵で打錠圧2550−2840Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は31秒であった。
【0032】
実施例1〜5の結果より、いずれも良好な口腔内崩壊時間を有する口腔内崩壊錠が得られた。また、口腔内崩壊錠の主剤含量が約26%であるため、錠剤重量が抑えられ適度な大きさの服用しやすい口腔内崩壊錠が得られた。
【0033】
(比較例1)
(1)アカルボース154.65g、乳糖水和物〔pharmatose(200M):DMV〕150gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水103gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて75℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(2)D−マンニトール181.8g、結晶セルロース120g、クロスポビドン80g及びスクラロース4gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)218gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(3)上記(1)で得られた顆粒30.47g及び上記(2)で得られた顆粒28.94gを混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに軽質無水ケイ酸0.3g及びステアリン酸マグネシウム0.3gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8.5mm、R面の杵で打錠圧3430−4410Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は57秒であった。
【0034】
比較例1では結晶セルロースの代わりに乳糖を使用したが、実施例1〜5と比較して口腔内崩壊時間が遅延しており、良好な口腔内崩壊錠は得られなかった。
【0035】
(比較例2)
アカルボース154.65g、結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕180g、D−マンニトール196.35g、クロスポビドン60g及びアスパルテーム3gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)304gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。得られた顆粒に軽質無水ケイ酸3g及びステアリン酸マグネシウム3gを添加し混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。その後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8.5mm、R面の杵で打錠圧2450−3040Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は55秒であった。また製造時にバインディングが認められた。
【0036】
(比較例3)
アカルボース206.2g、結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕160g及び無水リン酸水素カルシウム〔協和化学工業株式会社〕80gを粉砕機〔ロータースピードミル スクリーン径0.5mmパンチングタイプ:FRITSCH〕にて粉砕し、それを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合した。得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)221.8gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。得られた顆粒267.2gにD−マンニトール〔ペアリトールSD100:ロケットジャパン株式会社〕157.08g、クロスポビドン48g及びスクラロース2.4gを添加し混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに、軽質無水ケイ酸4g及びステアリン酸マグネシウム4gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8mm、R面の杵で打錠圧1370−1470Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は57秒であった。また製造時にバインディングが認められた。
【0037】
(比較例4)
(1)アカルボース51.55g及び結晶セルロース〔セオラス(登録商標)101:旭化成株式会社〕50gを乳鉢にて混合し、エタノール26gを添加して練合した。得られた混合物を乾燥機〔ミニジェットオーブン〕にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(2)D−マンニトール181.8g、結晶セルロース120g、クロスポビドン80g及びスクラロース4gを流動層造粒機〔マルチプレックスMP−01:株式会社パウレック〕を用いて混合し、得られた混合物に精製水/エタノール混合溶媒(w/w=2/8)218gを噴霧して造粒した。造粒物を同機械にて55℃で乾燥した後、22号篩にて整粒して、顆粒を得た。
(3)上記(1)で得られた顆粒50.775g及び上記(2)で得られた顆粒48.225gを混合機〔V型混合機VM−5:株式会社ダルトン〕を用いて混合した。さらに軽質無水ケイ酸0.5g及びステアリン酸マグネシウム0.5gを添加し混合した後、単発打錠機〔株式会社菊水製作所〕を用いて、直径8mm、R面の杵で打錠圧3700−4300Nで打錠し、1錠あたり活性成分を51.55mg含有する重量200mgの口腔内崩壊錠を製造した。
得られた錠剤の口腔内崩壊時間は52秒であった。
【0038】
比較例2、3は、実施例1〜5の製造方法とは異なる製造方法で製造したが、いずれも口腔内崩壊時間が遅延し、良好な口腔内崩壊時間が得られなかった。また、その製造時においてバインディングが起こり、錠剤側面部にキズが確認された。
比較例4は、実施例1〜5と同様に(A)アカルボースと結晶セルロースを含む造粒物と(B)速崩壊性成分を含む造粒物を製造し、それらを混合し、打錠しているが、(A)の造粒物の製造において、流動層造粒法ではなく練合造粒法で製造している。このように(A)の造粒物の造粒方法が流動層造粒法以外である場合には口腔内崩壊時間が遅延する傾向があることが確認された。
なお、(B)の造粒物については、流動層造粒法以外の方法(実施例4では練合造粒法で造粒している)で造粒しても良好な口腔内崩壊時間を有する口腔内崩壊錠が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(A)及び(B)の造粒物を含有する口腔内崩壊錠
(A)アカルボースと結晶セルロースを含む造粒物
(B)速崩壊性成分を含む造粒物
【請求項2】
請求項1において、(A)の造粒物が流動層造粒法により製造されることを特徴とする口腔内崩壊錠。

【公開番号】特開2010−202579(P2010−202579A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49903(P2009−49903)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000209049)沢井製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】