説明

アキシアルピストンポンプ

【課題】キャビテーションの発生及び吸入効率の低下を抑制できるアキシアルピストンポンプを提供する。
【解決手段】ベースハウジング11のベース面15には固定軸16が回転軸13の回転軸線131の方向に突設されており、回転軸13は、固定軸16に回転可能に支持されている。シリンダブロック20には嵌合孔22が凹設されており、嵌合孔22には固定軸16が嵌合されている。固定軸16の外周面である嵌合外周面23は、円周面であり、嵌合孔22の内周面である嵌合内周面24は、円周面である。シリンダブロック20が回転すると、嵌合内周面24は、嵌合外周面23の周りを周回する。ベースハウジング11には吸入通路29が形成されている。吸入通路29は、ベースハウジング11の外端面111から固定軸16内を通って嵌合外周面23に至る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックが回転してピストンが往復動するアキシアルピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献3に開示のアキシアルピストンポンプでは、シリンダボアに連通する連通ポートがバルブプレートに摺接するシリンダブロックの端面に形成されている。回転するシリンダブロックの吸入行程対応領域側のシリンダボアには流体が前記連通ポートを介して吸入され、吐出行程対応領域側のシリンダボア内の流体は、前記連通ポートを介して吐出される。
【0003】
シリンダブロックの端面とバルブプレートとの間に隙間が生じると、この隙間から吐出流体が洩れる。そのため、シリンダボア内の圧力によってシリンダブロックの端面をバルブプレートに押し付けて前記隙間の発生を無くすように前記連通ポートの径は、シリンダボアに対して小径とされる。しかし、このような小径化では吸入抵抗が増大し、吸入流体中にキャビテーションを発生させる。キャビテーションの発生は、容積効率の低下や騒音悪化の不具合をもたらす。
【0004】
特許文献2に開示のアキシアルピストンポンプでは、シリンダブロックがピントル弁(固定軸)に回転可能に嵌合している。シリンダブロック内のシリンダボアの側部に連通する連通ポートがシリンダブロックに形成されており、ピントル弁内に吸入通路及び吐出通路が形成されている。シリンダブロックの回転に伴って連通ポートが吸入通路に連通すると、吸入通路内の流体がシリンダボア内に吸入され、連通ポートが吐出通路に連通すると、シリンダボア内の流体が吐出通路へ吐出される。しかし、ピントル弁内に吸入通路及び吐出通路の両方を形成する構成では、ピントル弁の強度低下を回避するために吸入通路の径を大きくすることができず、キャビテーションの発生を回避することが難しい。
【0005】
特許文献1に開示のアキシアルピストンポンプでは、シリンダブロックの中心部に吸入室(特許文献1では吸入流路と称している)が設けられており、該吸入室とシリンダボアとを繋ぐ連通路上に逆止弁が設けられている。吸入室内の流体は、逆止弁を開いて吸入行程対応領域側のシリンダボアへ流入し、吐出行程対応領域側のシリンダボア内の流体圧力が逆止弁を閉じて該シリンダボア内の流体は、シリンダボアの端部とバルブプレート上の吐出ポートとを繋ぐ接続路を介して吐出流路に吐出される。
【0006】
特許文献1に開示のアキシアルピストンポンプでは、全ての連通路に逆止弁を設ける必要があり、アキシアルピストンポンプが大型化する。又、逆止弁は、吸入抵抗を増大させ、キャビテーションを生じさせる。
【0007】
特許文献4に開示のアキシアルピストンポンプでは、吸入口及び吐出口がシリンダボアの側部に連通するように形成されており、吸入口に通じる吸入通路(特許文献4では吸入ポートと称している)及び吐出口に通じる吐出通路(特許文献4では吐出ポートと称している)は、ハウジングに形成されている。
【0008】
特許文献4に開示のアキシアルピストンポンプでは、特許文献1〜3における前記した不都合は回避される。
【特許文献1】実開平2−39579号公報
【特許文献2】特開平9−250447号公報
【特許文献3】特開2000−18149号公報
【特許文献4】特開2006−214356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献4に開示のアキシアルピストンポンプでは、吸入口がシリンダボアよりも半径方向の外側にあるため、流体吸入がシリンダブロックの回転に伴う遠心力に逆らうことになる。これは、吸入効率の低下をもたらす。
【0010】
本発明は、キャビテーションの発生及び吸入効率の低下を抑制できるアキシアルピストンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固定軸に回転可能に嵌合されたシリンダブロックが前記固定軸を中心にして回転し、前記固定軸は、前記シリンダブロックの端面に対向するベースハウジングから突設されており、前記シリンダブロックに形成されたシリンダボアにピストンが往復動可能に収容されており、前記シリンダブロックの回転によって前記ピストンがカム体からカム作用を受けて往復動し、前記ピストンの復動に伴って前記シリンダボアに流体が吸入され、前記ピストンの往動に伴って前記シリンダボア内の流体が吐出されるアキシアルピストンポンプを対象とし、請求項1の発明では、前記固定軸に形成され、前記固定軸の嵌合外周面上に吸入接続口を有する吸入通路と、前記シリンダブロックの回転軸線を中心とする半径方向において前記固定軸の嵌合外周面より外側に形成された吐出通路と、前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記吐出通路に間欠的に連通するように前記シリンダブロックに形成され、前記回転軸線の方向又は前記回転軸線から離れる方向に向けて開口する複数の吐出口と、前記シリンダボアに連通し、且つ前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記吸入接続口に間欠的に連通するように前記シリンダブロックの嵌合内周面に形成された複数の吸入口とを備え、前記ピストンの復動に伴って、流体が前記回転軸線から離れる方向へ前記吸入口へ向かうと共に、前記吸入口から前記シリンダボアに吸入され、前記ピストンの往動に伴って、前記シリンダボア内の流体が前記吐出口から吐出される。
【0012】
ここにおける固定軸とは、単一部材であってもよいし、複数部材を用いて構成してもよい。吸入通路と吐出通路とのうちの吸入通路のみが固定軸に形成されるため、吸入通路の通路断面積を大きくすることができ、キャビテーションの発生を回避することができる。又、吸入口が半径方向においてシリンダボアよりも内側にあるため、シリンダブロックの回転に伴う遠心力が吸入通路から吸入口を介してシリンダボアに至る流体吸入を助勢する。これは、吸入効率の低下の回避に寄与する。
【0013】
好適な例では、前記吸入通路の途中に分岐接続する副吸入通路と、
前記シリンダボアに連通し、且つ前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記副吸入通路に間欠的に連通するように前記シリンダブロックの前記端面に形成された副吸入口とを備えている。
【0014】
副吸入通路及び副吸入口の存在は、吸入断面積を増やし、キャビテーション発生の抑制に寄与する。
好適な例では、前記副吸入通路は、前記シリンダブロックの前記端面に対向する前記ベースハウジングのベース面に沿って、前記回転軸線の周方向に延びる弧状の副吸入接続口を備えており、前記副吸入口は、前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記副吸入接続口に間欠的に連通する。
【0015】
好適な例では、前記回転軸線を中心とする前記副吸入接続口の角度範囲は、吸入行程対応領域にあって、下死点に位置した前記ピストンに対応する部位である下死点対応部と、上死点に位置した前記ピストンに対応する部位である上死点対応部との中間部を含む角度範囲である。
【0016】
ピストンが上死点と下死点との中間点にあるときにピストンの後退速度が最大となり、流量不足となってキャビテーションが生じやすいが、前記中間部を含むように副吸入接続口の角度範囲を適宜設定すれば、流量不足が補償されてキャビテーションの発生が抑制される。
【0017】
好適な例では、前記副吸入通路は、前記ベースハウジング内で前記吸入通路に分岐接続している。
好適な例では、前記ベースハウジングのベース面と前記シリンダブロックの前記端面との間にはバルブプレートが介在されており、前記副吸入接続口は、前記バルブプレートを貫通するように前記バルブプレートに形成されている。
【0018】
好適な例では、前記ベースハウジングのベース面と前記シリンダブロックの前記端面との間にはバルブプレートが介在されており、前記吐出通路は、前記シリンダブロックの前記端面に対向する前記ベースハウジングのベース面に沿って、前記固定軸の周方向に延びる弧状の吐出接続口を備えており、前記吐出接続口は、前記バルブプレートを貫通するように前記バルブプレートに形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のアキシアルピストンポンプは、キャビテーションの発生及び吸入効率の低下を抑制できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、固定容量型アキシアルピストンポンプに本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1に示すように、ベースハウジング11にはフロントハウジング12が連結されており、フロントハウジング12には回転軸13がラジアルベアリング14を介して回転可能に支持されている。ベースハウジング11の内端面であるベース面15には固定軸16が回転軸13の回転軸線131の方向に突設されており、固定軸16の先端面161には支持凹部17が凹設されている。回転軸13の内端部132は、支持凹部17内でラジアル軸受け18を介して固定軸16に回転可能に支持されている。
【0021】
フロントハウジング12内には環状のカム体19が固定して設けられており、回転軸13は、カム体19の環内を通されている。カム体19のカム面191は、ベースハウジング11のベース面15に対向する環状の平面であって回転軸13の回転軸線131に対して傾いている。
【0022】
回転軸13には環状のシリンダブロック20がスプライン結合を介して回転軸13と一体的に回転可能に支持されている。ベース面15に対向するシリンダブロック20の端面201とベース面15との間にはバルブプレート21が介在されている。バルブプレート21は、ベース面15に面接触した状態で固定されており、シリンダブロック20の端面201は、バルブプレート21の端面211に面接触している。
【0023】
シリンダブロック20には嵌合孔22が端面201側から凹設されており、嵌合孔22には固定軸16が嵌合されている。固定軸16の外周面である嵌合外周面23は、円周面であり、嵌合孔22の内周面である嵌合内周面24は、円周面である。シリンダブロック20が回転すると、嵌合内周面24は、嵌合外周面23の周りを周回する。
【0024】
回転軸13の半径方向において嵌合内周面24より外側のシリンダブロック20には複数のシリンダボア25がカム面191に対向するシリンダブロック20の端面202から回転軸線131の方向に凹設されている。各シリンダボア25にはピストン26が回転軸線131の方向へ往復動可能に嵌入されている。カム面191に対向するピストン26の端部には球面継ぎ手261が一体形成されており、球面継ぎ手261にはシュー27が連結されている。各シュー27は、環状のリテーナ28に係留された状態でカム面191に面接触している。
【0025】
回転軸13の回転に伴ってシリンダブロック20が回転すると、シュー27がカム面191上を摺接し、ピストン26がシリンダボア25内を往復動する。
ベースハウジング11には吸入通路29が形成されている。吸入通路29の入口291は、ベースハウジング11の外端面111上に開口しており、吸入通路29の出口である吸入接続口292は、固定軸16の嵌合外周面23上に開口している。つまり、吸入通路29は、ベースハウジング11の外端面111から固定軸16内を通って嵌合外周面23に至る。
【0026】
図3に示すように、シリンダブロック20の嵌合内周面24には吸入口30がシリンダボア25と1対1に連通するように形成されている。吸入口30は、シリンダブロック20の半径方向においてシリンダボア25よりも内側にあり、吸入接続口292は、シリンダブロック20の半径方向において吸入口30よりも内側にある。吸入口30における通路断面積は、吸入通路29における最小通路断面積以上にしてある。シリンダブロック20の回転に伴い、吸入口30は、周方向に移動して吸入接続口292に間欠的に連通する。
【0027】
図1に示すように、ベースハウジング11及びバルブプレート21には吐出通路31が形成されている。吐出通路31の入口である吐出接続口311は、バルブプレート21の端面211に開口しており、吐出通路31の出口312は、ベースハウジング11の外端面111上に開口している。つまり、吐出通路31は、バルブプレート21の端面211からバルブプレート21内及びベースハウジング11内を通って外端面111に至る。吐出通路31は、シリンダブロック20の回転中心(つまり、回転軸線131)を中心とする半径方向において固定軸16の嵌合外周面23より外側に形成されている。
【0028】
図3に示すように、吐出接続口311は、回転軸線131を中心とする周方向に延びる円弧形状である。
シリンダブロック20の端面201には吐出口32がシリンダボア25と1対1に連通するように形成されている。吐出口32は、回転軸線131の方向に向けて開口している。シリンダブロック20の回転に伴い、吐出口32は、周方向に移動して吐出接続口311に間欠的に連通する。
【0029】
図2に示すように、回転軸13及びシリンダブロック20は、矢印Rの方向に回転する。回転軸13の回転軸線131の方向に見て、回転軸線131を含む仮想平面Hによって分けられた一方の空間(カム面191の片側半分を回転軸線131の方向へ投影した領域)は、吸入行程対応領域Psであり、他方の空間(カム面191の他方の片側半分を回転軸線131の方向へ投影した領域)は、吐出行程対応領域Pdである。回転軸13の回転軸線131の方向に見て、吸入行程対応領域Psに対応するピストン26は、吸入行程にあり、吐出行程対応領域Pdに対応するピストン26は、吐出行程にある。シリンダブロック20の端面201が対向する面であるバルブプレート21の端面211(回転軸線131に対して垂直な面)において、下死点に位置したピストン26に対応する部位が下死点対応部Hdであり、上死点に位置したピストン26に対応する部位が上死点対応部Htである。バルブプレート21の端面211において規定された下死点対応部Hd及び上死点対応部Htは、仮想平面Hと交差する。
【0030】
図3に示すように、吸入接続口292は、吸入行程対応領域Psにある。
図4に示すように、円弧形状の吐出接続口311は、吐出行程対応領域Pdにある。
図2〜図4におけるシリンダブロック20の回転角度を0°とする。図2〜図4の状態からシリンダブロック20が半回転すると、シリンダブロック20の回転角度は、180°となり、図2〜図4の状態からシリンダブロック20が1回転すると、シリンダブロック20の回転角度は、360°(0°)となる。
【0031】
シリンダブロック20の回転に伴ってピストン26が復動〔図1において右側から左側への移動〕する状態(吸入行程)では、該ピストン26の嵌入されるシリンダボア25の吸入口30が吸入接続口292に連通し、吸入通路29内の流体は、回転軸線131から離れる方向に吸入口30へ向かうと共に、吸入口30を経由してシリンダボア25に吸入される。
【0032】
シリンダブロック20の回転に伴ってピストン26が往動〔図1において左側から右側への移動〕する状態〔吐出行程〕では、該ピストン26のシリンダボア25の嵌入される吐出口32が吐出接続口311に連通し、シリンダボア25内の流体が吐出口32を経由して吐出通路31に吐出される。
【0033】
つまり、複数の吸入口30は、シリンダブロック20の回転角度に応じて吸入接続口292に間欠的に連通するようにシリンダブロック20の嵌合内周面24に形成されている。又、複数の吐出口32は、シリンダブロック20の回転角度に応じて吐出通路31の吐出接続口311に間欠的に連通するようにシリンダブロック20に形成されている。
【0034】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)吸入通路29と吐出通路31とのうちの吸入通路29のみが固定軸16に形成されるため、吸入通路29の通路断面積を大きくすることができ、吸入抵抗を下げることができる。これにより、アキシアルピストンポンプの高回転時等、高容量時においてもキャビテーションの発生を回避することができる。又、吸入口30がシリンダブロック20の半径方向においてシリンダボア25よりも内側にあるため、シリンダブロック20の回転に伴う遠心力が吸入通路29から吸入口30を介してシリンダボア25に至る流体吸入を助勢する。これは、吸入効率の低下の回避に寄与する。
【0035】
(2)吸入流体中のキャビテーションは、吸入口がシリンダブロック20の回転軸線131からの距離が大きいほど、つまりシリンダブロック20の回転に伴う吸入口の周速が大きいほど、発生し易くなる。嵌合内周面24に形成した吸入口30は、従来のシリンダブロック20の端面201に形成した吸入口に比べて、シリンダブロック20の回転軸線131からの距離が短くなる。嵌合内周面24に吸入口30を形成した構成は、キャビテーションの発生の抑制に寄与する。
【0036】
次に、図5及び図6の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
図5に示すように、ベースハウジング11及びバルブプレート21には副吸入通路33が形成されている。副吸入通路33は、ベースハウジング11内の吸入通路29に分岐接続されている。副吸入通路33の出口である副吸入接続口331は、バルブプレート21の端面211上に開口している。つまり、副吸入通路33は、ベースハウジング11内の吸入通路29からベースハウジング11内及びバルブプレート21内を通って端面211に至る。
【0037】
図6に示すように、副吸入接続口331は、回転軸線131を中心とする周方向に延びる円弧形状である。回転軸線131を中心とする副吸入接続口331の角度範囲θ1は、吸入行程対応領域Psにあって、上死点対応部Htと下死点対応部Hdとの中間部Hmを含む角度範囲である。
【0038】
シリンダブロック20の端面201に形成されている吐出口32は、シリンダブロック20の回転に伴って周方向に移動して副吸入接続口331に間欠的に連通する。つまり、吐出口32は、シリンダブロック20の回転角度に応じて副吸入接続口331に間欠的に連通する。
【0039】
第2の実施形態における吐出口32は、副吸入接続口331に間欠的に連通する副吸入口を兼ねる。円弧形状の副吸入接続口331は、吸入行程対応領域Psにある。副吸入接続口331の角度範囲θ1は、シリンダボア25が吸入行程中にある間は副吸入口としての吐出口32が副吸入接続口331に連通するように、設定されている。
【0040】
シリンダブロック20の回転に伴ってピストン26が復動〔図5において右側から左側への移動〕する状態(吸入行程)では、該ピストン26のシリンダボア25の吐出口32が副吸入接続口331に連通する。つまり、副吸入口としての吐出口32は、シリンダブロック20の回転角度に応じて副吸入接続口331に間欠的に連通する。これにより、吸入通路29内の流体が副吸入通路33、副吸入接続口331及び吐出口32を経由してシリンダボア25に吸入される。
【0041】
第2の実施形態では以下の効果が得られる。
(3)副吸入口となる吐出口32の通路断面積が吸入断面積として吸入口30の通路断面積に加算されるため、吸入断面積が増し、キャビテーション発生の抑制効果が一層増す。
【0042】
(4)吸入行程対応領域Ps側のシリンダボア25のピストン26の後退速度は、上死点と下死点との中間点にあるときに最大となり、流量不足となってキャビテーションが生じやすい。第1の実施形態では、固定軸16内の吸入通路29における通路断面積は、このような場合の流量不足によるキャビテーションの発生防止を考慮した大きさにする必要がある。しかし、副吸入通路33は、前記のような場合の流量不足を補償するため、第2の実施形態では、吸入通路29における通路断面積を減らすことが可能である。これは、固定軸16の強度増をもたらす。
【0043】
次に、図7の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
回転軸線131を中心とする副吸入接続口331Aの角度範囲θ2は、第2の実施形態の副吸入接続口331の角度範囲θ1よりも小さくしてある。副吸入接続口331Aの角度範囲θ2は、吸入行程対応領域Ps側のシリンダボア25のピストン26が吸入行程中の中間付近にある間は副吸入口としての吐出口32が副吸入接続口331に連通するように、設定されている(例えば中間部Hmを中心とする90°)。
【0044】
第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、図8及び図9の第4の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
【0045】
図8に示すように、吸入口30Bは、シリンダブロック20の嵌合内周面24と端面201とにわたって形成されている。吸入口30Bは、シリンダブロック20の回転角度に応じて、吸入通路29の吸入接続口292に間欠的に連通すると共に、吐出接続口311に間欠的に連通する。
【0046】
図9に示すように、吸入行程対応領域Psにあるシリンダボア25の吸入口30Bは、吸入通路29の吸入接続口292に連通し、吐出行程対応領域Pdにあるシリンダボア25の吸入口30Bは、吐出通路31の吐出接続口311に連通する。つまり、吸入口30Bは、吐出接続口311に間欠的に連通する吐出口を兼ねる。
【0047】
吸入口と吐出口とを兼用させる構成は、吸入口及び吐出口の加工工程の簡素化をもたらす。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
【0048】
○第1〜第4の実施形態において、固定軸16を複数部材で構成してもよい。例えば、基本軸に筒部材を嵌合固定して固定軸を構成し、筒部材に吸入接続口を形成するようにしてもよい。即ち、固定軸16の外周面である嵌合外周面を筒部材が構成してもよい。あるいは、基本軸の外周面の一部に別部材を固定して固定軸を構成し、別部材に吸入接続口を形成するようにしてもよい。あるいは、基本軸に筒部材を嵌合固定して固定軸を構成し、基本軸の周面と筒部材の内周面との間に吸入通路を形成し、筒部材に吸入接続口を形成するようにしてもよい。
【0049】
○シリンダブロック20の外周面に吐出口を設けてもよい。この吐出口は、回転軸線から離れる方向に向けて開口する。この場合、フロントハウジング12の内側にシリンダブロック20を回転可能に嵌合し、吐出口に連通する吐出通路をフロントハウジング12に設ければよい。あるいは、ベースハウジング11のベース面15に円筒を立設し、該円筒内にシリンダブロック20を回転可能に嵌合し、吐出口に連通する吐出通路を円筒及びフロントハウジング12に設ければよい。
【0050】
○第1〜第4の実施形態におけるバルブプレート21を無くし、シリンダブロック20の端面201をベース面15に接合するようにしてもよい。
○第2,3の実施形態において、吸入通路29と副吸入通路33とをベースハウジング11の外部で配管を用いて分岐接続するようにしてもよい。
【0051】
○第2の実施形態において、回転軸線131を中心とする吸入接続口292の角度範囲を副吸入接続口331の角度範囲より小さくしても良い。
○固定軸16とベースハウジング11とを別体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施形態のアキシアルピストンポンプを示す側断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のB−B線断面図。
【図4】図1のC−C線断面図。
【図5】第2の実施形態のアキシアルピストンポンプを示す側断面図。
【図6】図5のD−D線断面図。
【図7】第3の実施形態を示す断面図。
【図8】第4の実施形態のアキシアルピストンポンプを示す部分側断面図。
【図9】図8のE−E線断面図。
【符号の説明】
【0053】
11…ベースハウジング。15…ベース面。16…固定軸。19…カム体。191…カム面。20…シリンダブロック。201…端面。21…バルブプレート。23…嵌合外周面。24…嵌合内周面。25…シリンダボア。26…ピストン。29…吸入通路。292…吸入接続口。30…吸入口。31…吐出通路。311…吐出接続口。32…吐出口。33…副吸入通路。331,331A…副吸入接続口。Ht…上死点対応部。Hd…下死点対応部。Hm…中間部。θ1,θ2…角度範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸に回転可能に嵌合されたシリンダブロックが前記固定軸を中心にして回転し、前記固定軸は、前記シリンダブロックの端面に対向するベースハウジングから突設されており、前記シリンダブロックに形成されたシリンダボアにピストンが往復動可能に収容されており、前記シリンダブロックの回転によって前記ピストンがカム体からカム作用を受けて往復動し、前記ピストンの復動に伴って前記シリンダボアに流体が吸入され、前記ピストンの往動に伴って前記シリンダボア内の流体が吐出されるアキシアルピストンポンプにおいて、
前記固定軸に形成され、前記固定軸の嵌合外周面上に吸入接続口を有する吸入通路と、
前記シリンダブロックの回転軸線を中心とする半径方向において前記固定軸の嵌合外周面より外側に形成された吐出通路と、
前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記吐出通路に間欠的に連通するように前記シリンダブロックに形成され、前記回転軸線の方向又は前記回転軸線から離れる方向に向けて開口する複数の吐出口と、
前記シリンダボアに連通し、且つ前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記吸入接続口に間欠的に連通するように前記シリンダブロックの嵌合内周面に形成された複数の吸入口とを備え、
前記ピストンの復動に伴って、流体が前記回転軸線から離れる方向へ前記吸入口へ向かうと共に、前記吸入口から前記シリンダボアに吸入され、前記ピストンの往動に伴って、前記シリンダボア内の流体が前記吐出口から吐出されるアキシアルピストンポンプ。
【請求項2】
前記吸入通路の途中に分岐接続する副吸入通路と、
前記シリンダボアに連通し、且つ前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記副吸入通路に間欠的に連通するように前記シリンダブロックの前記端面に形成された副吸入口とを備えている請求項1に記載のアキシアルピストンポンプ。
【請求項3】
前記副吸入通路は、前記シリンダブロックの前記端面に対向する前記ベースハウジングのベース面に沿って、前記回転軸線の周方向に延びる弧状の副吸入接続口を備えており、前記副吸入口は、前記シリンダブロックの回転角度に応じて前記副吸入接続口に間欠的に連通する請求項2に記載のアキシアルピストンポンプ。
【請求項4】
前記回転軸線を中心とする前記副吸入接続口の角度範囲は、吸入行程対応領域にあって、下死点に位置した前記ピストンに対応する部位である下死点対応部と、上死点に位置した前記ピストンに対応する部位である上死点対応部との中間部を含む角度範囲である請求項3に記載のアキシアルピストンポンプ。
【請求項5】
前記副吸入通路は、前記ベースハウジング内で前記吸入通路に分岐接続している請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載のアキシアルピストンポンプ。
【請求項6】
前記ベースハウジングのベース面と前記シリンダブロックの前記端面との間にはバルブプレートが介在されており、前記副吸入接続口は、前記バルブプレートを貫通するように前記バルブプレートに形成されている請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のアキシアルピストンポンプ。
【請求項7】
前記ベースハウジングのベース面と前記シリンダブロックの前記端面との間にはバルブプレートが介在されており、前記吐出通路は、前記シリンダブロックの前記端面に対向する前記ベースハウジングのベース面に沿って、前記固定軸の周方向に延びる弧状の吐出接続口を備えており、前記吐出接続口は、前記バルブプレートを貫通するように前記バルブプレートに形成されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のアキシアルピストンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−144579(P2010−144579A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321329(P2008−321329)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】