説明

アクセス制御システム

【課題】共通のバスに接続されている2つの記憶装置における一方の記憶装置へのアクセス中に当該記憶装置が動作不能状態となった場合においても、他方の記憶装置へのアクセスを行うことができる「アクセス制御システム」を提供すること。
【解決手段】アクセス処理装置4は、第1、第2の記憶装置2,3のいずれか一方へのアクセス中に、当該一方の記憶装置の第2のレジスタの所定のビットの値が正常状態を示す値からビジー状態を示す値へと変化した場合には、当該一方の記憶装置をバス1から切断した上で、他方の記憶装置の第1のレジスタの所定のビットの値を、当該他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に設定することによって、当該他方の記憶装置へのアクセスを許可させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセス制御システムに係り、特に、共通のバスに接続された複数の記憶装置に対する選択的なアクセスの制御に好適なアクセス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハードディスクドライブやDVDドライブ等のデバイスをホストコンピュータ等のシステム制御部に接続するバスとして、1つのバスに対して2つのデバイスを同時に接続することが可能なATA/ATAPIバスが採用されていた。
【0003】
図5は、このようなATA/ATAPIバス1を備えたシステムとして、ハードディスクドライブ(HDD)2およびDVDドライブ3に対するナビ/AV(Audio and Visual)系SoC(System On a Chip)4からのアクセスが可能な車載用データ転送システム5を示したものである。このような車載用データ転送システム5においては、ナビ/AV系SoC4が、ナビゲーション等のためのハードディスクドライブ2へのアクセスと、DVDコンテンツの観賞等のためのDVDドライブ3へのアクセスとを選択的に行うことが可能となっている。なお、ナビ/AV系SoC4には、不図示のインターフェースを介してディスプレイ6およびスピーカ7がそれぞれ接続されている。
【0004】
この種のシステムにおいて、2つのデバイス2,3をATA/ATAPIバス1に接続する場合には、図6に示すように、端子設定等の物理的な設定によって一方をマスタデバイス、他方をスレーブデバイスに設定する必要がある。図6は、ハードディスクドライブ2が、そのマスタ/スレーブ設定用の端子を電源側に接続されることによってスレーブデバイスに設定され、DVDドライブ3が、そのマスタ/スレーブ設定用の端子をグランド側に接続されることによってマスタデバイスに設定された状態を示している。そして、ナビ/AV系SoC4がいずれのデバイス2,3にアクセスするかは、各デバイス2,3に内蔵されているデバイスビット(以下、DEVビットと称する)の設定によって選択される。ただし、DEVビットの設定は、アクセスすべきデバイスの選択動作としてナビ/AV系SoC4によって行われ、マスタデバイスとスレーブデバイスとで互いに同一の値(0または1)が設定される。
【0005】
より具体的には、図6に示すように、DEVビット(Dev)は、デバイス2,3内のデバイス/ヘッドレジスタの所定のビット(例えば、bit4)からなり、マスタデバイスに対応する値が0(Dev=0)、スレーブデバイスに対応する値が1(Dev=1)とされている。そして、両デバイス2,3は、物理的な設定(端子設定)による自身のマスタ/スレーブの設定状態と、自身のDevビットの設定値とを比較して、両者が整合(合致)するか否かをLSI等のデバイス内蔵回路8によって判定するようになっている。そして、各デバイス2,3のデバイス内蔵回路8は、肯定的な判定結果が得られた場合(すなわち、マスタデバイスにおけるDevビットの値が0になった場合またはスレーブデバイスにおけるDevビットの値が1になった場合)に、出力イネーブル信号をナビ/AV系SoC4に出力すること(出力イネーブル制御)によって、ナビ/AV系SoC4からのアクセスを許可するようになっている。ここで、両デバイス2,3は、マスタ/スレーブの設定状態が互いに異なるのに対して互いに同一のDevビットの値が設定されているため、常に、いずれかの一方のデバイス内蔵回路8の判定結果が肯定的なものとなるとともに、他方の判定結果が否定的なものとなる。このようにして、両デバイス2,3のいずれか一方のみに対するナビ/AV系SoC4からの選択的なアクセスが行われるようになっている。
【0006】
なお、このような2つのデバイスを接続してアクセスを制御するシステムに関する従来技術としては、これまでにも、例えば、特許文献1および特許文献2に示す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−259324号公報
【特許文献2】特開2008−234242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この種のシステムにおいては、2つのデバイスがATA/ATAPIバスに同時に接続されている環境下において、アクセス中の一方のデバイスが何らかの要因によってアクセス不能状態となってしまうと、他方のデバイスへのアクセスもできなくなってしまうといった問題が生じていた。
【0009】
例えば、ハードディスクドライブ2は、一定の振動レベル以上の振動が継続する環境下においては、動作不能なビジー状態になってしまうことが知られている。ここで、図7に示すように、デバイス2,3がビジー状態であるか否かは、デバイス2,3内のステータスレジスタの所定のビット(例えば、bit7)(以下、ビジー状態確認ビットと称する)を読み出すことによって確認することができる(Read Data bit7=BSY)。すなわち、ビジー状態確認ビットの値が1(BSY=1)に設定されている場合には、該当するデバイスがビジー状態であり、逆に、ビジー状態確認ビットの値が0(BSY=0)に設定されている場合には、該当するデバイスが正常状態であることを示す。このようなビジー状態確認ビットの値の設定は、例えば、内蔵の振動センサの検出値等に基づいて各デバイス内の回路がそれぞれ行うようになっている。
【0010】
そして、図7に示すように、ナビ/AV系SoC4からのアクセス中にハードディスクドライブ2がビジー状態(BSY=1)となった場合には、ナビ/AV系SoC4は、ステータスレジスタを読み出す以外のアクセスは禁止されるため、Devビットの値を1(Dev=1)から0(Dev=0)に切り替えてアクセス先をハードディスクドライブ2からDVDドライブ3に切り替えることはできない。
【0011】
この結果、ハードディスクドライブ2のビジー状態が解消されない限り、ハードディスクドライブ2だけでなくDVDドライブ3へのアクセスもできなくなってしまう。
【0012】
より具体的な現象としては、例えば、DVDドライブ3からのデータの読出しと、ハードディスクドライブ2からのデータの読出しとを所定のタイミングで交互に並行して行っている場合には、ハードディスクドライブ2がビジー状態となることによってDVDドライブ3からのデータの読出しが行えず、再生中のDVD映像も止まってしまうことになる。
【0013】
なお、特許文献1および特許文献2には、ハードディスクドライブに振動が加わった場合に、ハードディスクドライブへのアクセスを禁止することが記載されているが、既にハードディスクドライブにアクセスしている最中に生じた振動による問題点およびその具体的な解決策については何等触れられていない。
【0014】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、共通のバスに接続されている2つの記憶装置における一方の記憶装置へのアクセス中に当該記憶装置が動作不能状態となった場合においても、他方の記憶装置へのアクセスを行うことができるアクセス制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するため、本発明に係るアクセス制御システムは、第1の記憶装置と、第2の記憶装置と、これら第1の記憶装置および第2の記憶装置に選択的にアクセス可能とされたアクセス処理装置と、このアクセス処理装置に前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置を接続する共通の所定のバスとを備え、前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置は、一方がマスタデバイスに設定されているとともに、他方がスレーブデバイスに設定されており、前記アクセス処理装置は、前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置のそれぞれの所定の第1のレジスタの所定のビットの値を、前記マスタデバイスおよび前記スレーブデバイスのいずれか一方に対応する互いに同一の値に設定し、前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置は、自身のマスタ/スレーブの設定状態と自身の前記第1のレジスタの所定のビットの設定値とを比較して、両者が整合する場合に、原則的に前記アクセス処理装置からのアクセスを許可し、一方、前記両者が整合する場合であっても、自身の所定の第2のレジスタの所定のビットの値がビジー状態を示す値に設定されている場合には、例外的に前記第2のレジスタを読み出す以外の前記アクセス処理装置からのアクセスを禁止するアクセス制御システムにおいて、前記アクセス処理装置は、前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置のいずれか一方へのアクセス中に、当該一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が正常状態を示す値からビジー状態を示す値へと変化した場合には、当該一方の記憶装置を前記バスから切断した上で、他方の記憶装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を、当該他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に設定することによって、当該他方の記憶装置へのアクセスを許可させることを特徴としている。
【0016】
そして、このような構成によれば、第1の記憶装置および第2の記憶装置のうちのアクセス中の一方の記憶装置がビジー状態となった場合においても、一方の記憶装置をバスから切断して、他方の記憶装置の第1のレジスタの所定のビットの値を他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に変更することができるので、他方の記憶装置へのアクセスを行うことが可能となる。
【0017】
また、前記アクセス処理装置は、前記一方の記憶装置の前記ビジー状態にともなう前記他方の記憶装置へのアクセスの切替の後に、前記他方の記録装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を、前記一方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に戻した上で、前記一方の記録装置を前記バスに再接続し、前記一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が正常状態を示す値に復帰している場合には、前記一方の記憶装置へのアクセスが許可されてもよい。
【0018】
そして、このような構成によれば、他方の記憶装置へのアクセスに切り替えた後においても、他方の記録装置の第1のレジスタの所定のビットの値を、一方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に戻した上で、一方の記憶装置をバスに再接続することによって、一方の記憶装置へのアクセスの再開の機会を窺うことが可能となる。
【0019】
さらに、前記アクセス処理装置は、前記一方の記録装置を前記バスに再接続した際に、前記一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が依然としてビジー状態を示す値に設定されている場合には、前記一方の記憶装置を前記バスから再切断した上で、前記他方の記憶装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を、前記他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に再設定してもよい。
【0020】
そして、このような構成によれば、一方の記憶装置へのアクセスの再開の機会を窺う過程で、依然として一方の記憶装置のビジー状態が解消されていない場合には、一方の記憶装置をバスから再切断した上で、他方の記憶装置の第1のレジスタの所定のビットの値を、他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に再設定することによって、他方の記憶装置へのアクセスをすみやかに続行することが可能となる。
【0021】
さらにまた、前記アクセス処理装置は、前記他方の記録装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を前記一方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に戻す処理および前記一方の記録装置を前記バスに再接続する処理を、前記一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が正常状態を示す値に復帰するまで所定のタイミングで繰り返してもよい。
【0022】
そして、このような構成によれば、一方の記憶装置へのアクセスの再開の機会を繰り返し窺うことによって、一方の記憶装置へのアクセスを再開できる可能性を高めることが可能となる。
【0023】
また、前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置の一方は、所定の振動が検出された場合に前記第2のレジスタの所定のビットの値がビジー状態に設定されるハードディスクドライブであってもよい。
【0024】
そして、このような構成によれば、アクセス中のハードディスクドライブがビジー状態となった場合においても、ハードディスクドライブをバスから切断して、他方の記憶装置の第1のレジスタの所定のビットの値を他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に変更することができるので、他方の記憶装置へのアクセスを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、共通のバスに接続されている2つの記憶装置における一方の記憶装置へのアクセス中に当該記憶装置が動作不能状態となった場合においても、他方の記憶装置へのアクセスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るアクセス制御装置の実施形態を示す構成図
【図2】本発明に係るアクセス制御装置の実施形態を示す第1の動作工程図
【図3】本発明に係るアクセス制御装置の実施形態を示す第2の動作工程図
【図4】本発明に係るアクセス制御装置の実施形態を示す第3の動作工程図
【図5】ATA/ATAPIバスを備えた車載用データ転送システムを示す構成図
【図6】マスタ/スレーブの設定状態およびレジスタ構造を示す概念図
【図7】従来の問題点を説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るアクセス制御システムの実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0028】
なお、従来と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態におけるアクセス制御システム10は、アクセス処理装置としてのナビ/AV系SoC4と、これに所定のバスとしての単一のATA/ATAPIバス1を介して接続された第1および第2の記憶装置としてのハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3とを有している。
【0030】
また、図1に示すように、ハードディスクドライブ2とATA/ATAPIバス1との間には、半導体等からなるHDD用バススイッチ11が接続されており、このHDD用バススイッチ11は、ナビ/AV系SoC4の汎用ポート等を介してナビ/AV系SoC4によってオン/オフ制御されるようになっている。そして、ハードディスクドライブ2は、HDD用バススイッチ11のオン状態において、ATA/ATAPIバス1に接続され、HDD用バススイッチ11のオフ状態において、ATA/ATAPIバス1から切断されるようになっている。
【0031】
さらに、図1に示すように、DVDドライブ3とATA/ATAPIバス1との間には、半導体等からなるDVD用バススイッチ12が接続されており、このDVD用バススイッチ12も、ナビ/AV系SoC4の汎用ポート等を介してナビ/AV系SoC4によってオン/オフ制御されるようになっている。そして、DVDドライブ3は、DVD用バススイッチ12のオン状態において、ATA/ATAPIバス1に接続され、DVD用バススイッチ12のオフ状態において、ATA/ATAPIバス1から切断されるようになっている。
【0032】
さらにまた、従来と同様に、ハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3は、物理的な設定によって一方がマスタデバイスに設定されているとともに、他方がスレーブデバイスに設定されている。また、ナビ/AV系SoC4は、ハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3のそれぞれの所定の第1のレジスタの所定のビットとしてのデバイス/ヘッドレジスタのDEVビット(DEV)(図6、図7参照)の値を、マスタデバイスおよびスレーブデバイスのいずれか一方に対応する互いに同一の値(DEV=0またはDEV=1)に設定するようになっている。さらに、ハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3は、自身のマスタ/スレーブの設定状態(端子接続状態)と自身のDEVビットの設定値とを比較して、両者が整合する場合に、原則的にナビ/AV系SoC4からのアクセスを許可するようになっている。このような比較およびアクセス許可は、図6の場合と同様に、デバイス内蔵回路8によって行えばよい。これにより、ナビ/AV系SoC4は、ハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3への選択的なアクセスが可能となっている。ただし、図7の場合と同様に、ハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3は、自身のマスタ/スレーブの設定状態と自身のDEVビットの設定値とが整合する場合であっても、自身の所定の第2のレジスタの所定のビットの値としてのステータスレジスタのビジー状態確認ビット(BSY)がビジー状態を示す値(BSY=1)に設定されている場合には、例外的にステータスレジスタを読み出す以外のナビ/AV系SoC4からのアクセスを禁止するようになっている。
【0033】
そして、本実施形態において、ナビ/AV系SoC4は、ハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3のいずれか一方のデバイスへのアクセス中に、当該一方のデバイスのビジー状態確認ビットの値が正常状態を示す値(BSY=0)からビジー状態を示す値(BSY=1)へと変化したことが確認された場合には、当該一方のデバイスをATA/ATAPIバス1から切断するようになっている。その上で、ナビ/AV系SoC4は、他方のデバイスのDEVビットの値を、当該他方のデバイスのマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に設定することによって、当該他方のデバイスへのアクセスを許可させるようになっている。なお、一方のデバイスがビジー状態となるトリガとしては、例えば、一方のデバイスに内蔵された振動センサによって所定の検出値以上の振動が一定時間検出されたこと等を挙げることができる。また、当該一方のデバイスのATA/ATAPIバス1からの切断は、他方のデバイスのビジー状態確認ビットの値が正常状態であることを確認した上で行うようにしてもよい。さらに、ナビ/AV系SoC4は、ビジー状態確認ビットの確認を、所定時間ごとに定期的に行うようにしてもよい。
【0034】
ここで、図2は、このような構成の具体的な動作例を示したものである。すなわち、図2のステップ1(ST1)においては、スレーブデバイスに設定されたハードディスクドライブ2と、マスタデバイスに設定されたDVDドライブ3とが、それぞれに対応するバススイッチ11,12を介してATA/ATAPIバス1に接続され、かつ、両デバイス2,3のDEVビットの値が1、ビジー状態確認ビットの値が0に設定された状態で、ナビ/AV系SoC4からハードディスクドライブ2へのアクセスが行われている。なお、このようなハードディスクドライブ2へのアクセスは、特許文献2に記載のように、DVDドライブ3のシーク動作期間中における割り込み処理(オーバーラップ処理)として行われているものであってもよいし、DVDドライブ3に対するリード/ライトとハードディスクドライブ2に対するリード/ライトとを所定のタイミングで交互に並行して行う工程における動作であってもよい。そして、ステップ1(ST1)の状態から、図2のステップ2(ST2)に示すように、ハードディスクドライブ2のビジー状態確認ビットの値が、振動等の原因によって1に変化したとする。この場合に、ナビ/AV系SoC4は、図2のステップ3(ST3)に示すように、HDD用バススイッチ11をオフ状態に切り替えることによって、ハードディスクドライブ2をATA/ATAPIバス1から切断する。次いで、図2のステップ4(ST4)に示すように、ナビ/AV系SoC4は、DVDドライブ3のDEVビットの値を1から0へと変更する。これにより、DVDドライブ3は、出力イネーブル制御によってナビ/AV系SoC4からのアクセスを許可する。
【0035】
このような構成によれば、ハードディスクドライブ2およびDVDドライブ3のうちのアクセス中の一方のデバイスがビジー状態となった場合においても、他方のデバイスへのアクセスを行うことによって、データ転送を効率的に行うことが可能となる。
【0036】
上記構成に加えて、更に、本実施形態において、ナビ/AV系SoC4は、前述した一方のデバイスのビジー状態にともなう他方のデバイスへのアクセスの切替の後に、他方のデバイスのDEVビットの値を、一方のデバイスのマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に戻した上で、一方のデバイスをATA/ATAPIバス1に再接続するようになっている。そして、ナビ/AV系SoC4は、再接続された一方のデバイスのビジー状態確認ビットの値が正常状態を示す値(BSY=0)に復帰している場合には、一方のデバイスへのアクセスが許可されるようになっている。
【0037】
ここで、図3は、このような構成の具体的な動作例を示したものである。すなわち、図3のステップ5(ST5)においては、図2のステップ4(ST4)の後に、ナビ/AV系SoC4によるDVDドライブ3へのアクセスが行われている。次いで、図3のステップ6(ST6)において、ナビ/AV系SoC4は、DVDドライブ3のDEVビットの値を0から1へと変更する。これにより、DVDドライブ3のDEVビットの値は、DVDドライブ3がマスタデバイスに設定されている状態に整合しないものとなるため、DVDドライブ3へのアクセスが禁止される。なお、ステップ5(ST5)からステップ6(ST6)への移行のタイミングは、例えば、ステップ5(ST5)におけるDVDデバイス3へのアクセスの切替後に、ナビ/AV系SoC4からのDVDデバイス3に対する単位コマンドの発行(例えば、リード/ライト要求)および当該発行コマンドに対するDVDドライブ3の応答(リード/ライト完了)が行われたことであってもよい。次いで、図3のステップ7(ST7)において、ナビ/AV系SoC4は、図2のステップ3(ST3)においてオフ状態にしたHDD用バススイッチ11をオン状態に切り替えて、ハードディスクドライブ2をATA/ATAPIバス1に再接続する。このとき、ハードディスクドライブ2のビジー状態確認ビットの値は、正常状態を示す値(BSY=0)に復帰しているため、ハードディスクドライブ2のデバイス内蔵回路8の出力イネーブル制御により、ナビ/AV系SoC4からハードディスクドライブ2へのアクセスが許可される。
このような構成によれば、他方のデバイスへのアクセスに切り替えた後においても、一方のデバイスへのアクセスの再開の機会を窺うことが可能となる。
【0038】
上記構成に加えて、更に、本実施形態において、ナビ/AV系SoC4は、前述のように一方のデバイスをATA/ATAPIバス1に再接続した際に、一方のデバイスのビジー状態確認ビットが依然としてビジー状態を示す値(BSY=1)に設定されている場合には、一方のデバイスをATA/ATAPIバス1から再切断した上で、他方のデバイスのDEVビットの値を、他方のデバイスのマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に再設定するようになっている。
【0039】
ここで、図4は、このような構成の具体的な動作例を示したものである。すなわち、図3のステップ6(ST6)の後、図4のステップ7’(ST7’)において、ナビ/AV系SoC4は、図2のステップ3(ST3)においてオフ状態にしたHDD用バススイッチ11をオン状態に切り替えて、ハードディスクドライブ2をATA/ATAPIバス1に再接続する。このとき、ハードディスクドライブ2のビジー状態確認ビットの値は、図3のステップ7(ST7)の場合とは異なり、依然としてビジー状態を示す値(BSY=1)に維持されているため、ナビ/AV系SoC4からハードディスクドライブ2へのアクセスは引き続き禁止される。次いで、ナビ/AV系SoC4は、図4のステップ8(ST8)において、図2のステップ3(ST3)の場合と同様に、HDD用バススイッチ11を再びオフ状態に切り替えることによって、ハードディスクドライブ2をATA/ATAPIバス1から再切断する。次いで、図4のステップ9(ST9)において、ナビ/AV系SoC4は、DVDドライブ3のDEVビットの値を1から0へと再変更する。これにより、DVDドライブ3は、出力イネーブル制御によってナビ/AV系SoC4からのアクセスを再許可する。
【0040】
このような構成によれば、一方のデバイスへのアクセスの再開の機会を窺う過程で、依然として一方のデバイスのビジー状態が解消されていない場合には、他方のデバイスへのアクセスをすみやかに続行することが可能となる。
【0041】
上記構成に加えて、更に、ナビ/AV系SoC4は、前述した他方のデバイスのDEVビットの値を一方のデバイスのマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に戻す処理および一方のデバイスをATA/ATAPIバス1に再接続する処理を、一方のデバイスのビジー状態確認ビットの値が正常状態を示す値に復帰するまで所定のタイミングで繰り返してもよい。この所定のタイミングは、他方のデバイスへのアクセスの切替後に、ナビ/AV系SoC4からの他方のデバイスへの単位コマンドの発行およびこれに対する他方のデバイスの応答が行われたタイミングであってもよい。
【0042】
このような構成の具体的な動作は、図3および図4の例で言えば、ST5→ST6→ST7’→ST8→ST9→ST5の一連の処理を、ST6の後にST7の状態となるまで繰り返すことに相当する。
【0043】
このような構成によれば、一方のデバイスへのアクセスの再開の機会を繰り返し窺うことによって、一方のデバイスへのアクセスを再開できる可能性を高めることが可能となる。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0045】
例えば、本発明は、ATA/ATAPIバス1によって2つのデバイスを同時に接続してアクセス制御を行うシステムであれば、車載用データ転送システム以外のシステムにも有効に適用することができる。
【0046】
また、バススイッチは、一方のデバイス側(前述した実施の形態においてはハードディスクドライブ2側)のみに設け、他方のデバイスについてはバスに常時接続されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ATA/ATAPIバス
2 ハードディスクドライブ
3 DVDドライブ
4 ナビ/AV系SoC
10 アクセス制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の記憶装置と、
第2の記憶装置と、
これら第1の記憶装置および第2の記憶装置に選択的にアクセス可能とされたアクセス処理装置と、
このアクセス処理装置に前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置を接続する共通の所定のバスと
を備え、
前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置は、一方がマスタデバイスに設定されているとともに、他方がスレーブデバイスに設定されており、
前記アクセス処理装置は、前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置のそれぞれの所定の第1のレジスタの所定のビットの値を、前記マスタデバイスおよび前記スレーブデバイスのいずれか一方に対応する互いに同一の値に設定し、
前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置は、自身のマスタ/スレーブの設定状態と自身の前記第1のレジスタの所定のビットの設定値とを比較して、両者が整合する場合には、原則的に前記アクセス処理装置からのアクセスを許可し、一方、前記両者が整合する場合であっても、自身の所定の第2のレジスタの所定のビットの値がビジー状態を示す値に設定されている場合には、例外的に前記第2のレジスタを読み出す以外の前記アクセス処理装置からのアクセスを禁止する
アクセス制御システムにおいて、
前記アクセス処理装置は、
前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置のいずれか一方へのアクセス中に、当該一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が正常状態を示す値からビジー状態を示す値へと変化した場合には、当該一方の記憶装置を前記バスから切断した上で、他方の記憶装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を、当該他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に設定することによって、当該他方の記憶装置へのアクセスを許可させること
を特徴とするアクセス制御システム。
【請求項2】
前記アクセス処理装置は、
前記一方の記憶装置の前記ビジー状態にともなう前記他方の記憶装置へのアクセスの切替の後に、前記他方の記録装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を、前記一方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に戻した上で、前記一方の記録装置を前記バスに再接続し、前記一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が正常状態を示す値に復帰している場合には、前記一方の記憶装置へのアクセスが許可されること
を特徴とする請求項1に記載のアクセス制御システム。
【請求項3】
前記アクセス処理装置は、
前記一方の記録装置を前記バスに再接続した際に、前記一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が依然としてビジー状態を示す値に設定されている場合には、前記一方の記憶装置を前記バスから再切断した上で、前記他方の記憶装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を、前記他方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に再設定すること
を特徴とする請求項2に記載のアクセス制御システム。
【請求項4】
前記アクセス処理装置は、前記他方の記録装置の前記第1のレジスタの所定のビットの値を前記一方の記憶装置のマスタ/スレーブの設定状態に整合する値に戻す処理および前記一方の記録装置を前記バスに再接続する処理を、前記一方の記憶装置の前記第2のレジスタの所定のビットの値が正常状態を示す値に復帰するまで所定のタイミングで繰り返すこと
を特徴とする請求項2または請求項3に記載のアクセス制御システム。
【請求項5】
前記第1の記憶装置および前記第2の記憶装置の一方は、所定の振動が検出された場合に前記第2のレジスタの所定のビットの値がビジー状態に設定されるハードディスクドライブであること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のアクセス制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−221405(P2012−221405A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89188(P2011−89188)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】