説明

アクセッサ移動装置およびアクセッサ移動方法

【課題】アクセッサの位置決めにおいてバックラッシの影響を低減し、精密な位置制御を可能にする。
【解決手段】本発明は、記憶媒体を収容したカートリッジ5を筐体15内の直線上の任意の場所から別の場所へ運ぶためのアクセッサ6と、ギアの回転によりアクセッサ6を直線上に沿って往復移動させるギア駆動機構とを備えたアクセッサ移動装置に係る。当該装置は、前記ギア駆動機構のバックラッシが除去されるように、アクセッサ6の往動方向もしくは復動方向Pにアクセッサ6を常時付勢する定荷重ばね16を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライブラリ装置内にて、記憶媒体を収容したカートリッジを運ぶアクセッサを直線上に沿って移動させるアクセッサ移動装置およびアクセッサ移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のライブラリ装置は、例えば磁気テープを収容する磁気テープカートリッジ(以下、カートリッジと略す。)を取り出し自在に格納可能な複数のカートリッジ格納スペースを有するマガジンと、磁気テープの記録情報を読み書きするためのテープドライブと、マガジンの一つのカートリッジ格納スペースとテープドライブとの間で磁気テープカートリッジを移送するアクセッサと、を備える。
【0003】
一般にマガジンのカートリッジ格納スペースは棚状に縦横に複数配設されている。そしてアクセッサは、縦方向および横方向に並ぶ複数のカートリッジ格納スペースの正面に沿って移動する機構になっている。さらに該アクセッサは、任意の一つのカートリッジ格納スペースの正面にて停止し、該カートリッジ格納スペース内のカートリッジをテープドライブの正面まで移動する、さらには、該カートリッジをテープドライブの正面からカートリッジ格納スペースの正面まで移動することが可能である。
【0004】
こうしたアクセッサの移動を可能にするため、例えば該アクセッサに歯付きベルトまたはラック&ピニオン機構のラックが係り止められ、該歯付きベルトまたは該ラックが、モータの駆動力を伝達するギアと噛み合って駆動される。また、該アクセッサはカードレールを用いて縦方向や横方向へ直線的に案内されるようになっている。
【0005】
しかし、上記のようにギアを使用した移動機構においては特にアクセッサの移動方向に沿った方向とギアの回転方向が一致している場合、バックラッシ(ガタ)が発生する。この場合、ステッピングモータを用いてアクセッサを位置決めしても、アクセッサの位置はバックラッシ分がずれてしまう。そのため、機能上高い位置決め精度が必要とされる移動機構ではバックラッシの影響を取り除くことを検討する必要があった。
【0006】
特許文献1では、バックラッシを除去するために、ソフトウェア制御によりバックラッシを測定して位置補正値を算出し、その補正値を位置制御にフィードバックさせる方法が提案されている。この方法では先ず移動対象を原点位置に移動させ、その原点位置をゼロとし、原点位置から、ステッピングモータを所定の駆動パルス数で駆動して移動対象をその移動可能方向に動かす。続いて、そこから原点位置まで移動対象を戻した際の駆動パルス数を測定する。そして、測定された駆動パルス数と前記所定の駆動パルス数の差をバックラッシ量として位置補正値を算出し、この位置補正値を移動対象の位置制御にフィードバックさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−131311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に示される手法では移動対象を移動させる際、移動対象の自重による慣性力が影響して測定値にばらつきが発生してしまう虞があった。こうしてばらつきが発生すると、制御にフィードバックする補正値の信頼性が低くなる問題があった。これは、移動対象は原点位置ではストッパ等への突き当てで正確に位置決めされたとしても、移動対象を移動させる際には移動対象は移動方向においてバックラッシ分ずれてしまうことがある為である。
【0009】
こうした問題があるため、上記アクセッサの移動機構ではギア駆動におけるバックラッシ分を考慮して、ある程度位置がずれても良いように、マガジンに対するカートリッジの出し入れ口の周縁にテーパを設けることが考えられている。しかし、マガジンにおけるカートリッジの実装密度が増して、カートリッジ同士の間隔が小さくなると、前記テーパを大きくとれなくなるため、更なる位置決めの高精度化が求められている。
【0010】
前記テーパを大きくとれない場合は、アクセッサからマガジン内へカートリッジを装填するときにカートリッジ出し入れ口の周縁が削れてカスが生じる虞があり、このカスがギア歯の噛み合い部に挟まるとアクセッサが移動不能になるという懸念もある。
【0011】
本発明は上記課題を解決することを目的とするもので、その目的の一例は、アクセッサの位置決めにおいてバックラッシの影響を低減し、精密な位置制御を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、記憶媒体を収容したカートリッジを筐体内の直線上の任意の場所から別の場所へ運ぶためのアクセッサと、ギアの回転により前記アクセッサを直線上に沿って往復移動させるギア駆動機構とを備えたアクセッサ移動装置に係る。上記課題を解決すべく、当該アクセッサ移動装置は、前記ギア駆動機構のバックラッシが除去されるように、前記アクセッサの往動方向もしくは復動方向に前記アクセッサを常時付勢する定荷重ばねを備えている。
【0013】
また、別の態様は、直線上の任意の場所から別の任意の場所へ記憶媒体を運ぶためのアクセッサを、ギアの回転により直線上に沿って往復移動させるアクセッサ移動方法に係る。上記課題を解決すべく、当該アクセッサ移動方法は、定荷重ばねを用いて前記アクセッサの往動方向もしくは復動方向に前記アクセッサを常時付勢して前記ギアのバックラッシを除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アクセッサの位置決めにおいてバックラッシの影響を低減でき、精密な位置制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態によるアクセッサが適用される磁気テープライブラリ装置の平面図。
【図2】図1のアクセッサのカートリッジ搭載側を示す概略斜視図
【図3】図2のアクセッサのカートリッジ搭載部とは反対側を示す概略斜視図。
【図4】本発明に係るバックラッシ対策装置を備えたライブラリ装置の平面図。
【図5】図4のライブラリ装置内に実装された定荷重ばねの斜視図。
【図6】定荷重ばねのばね特性を示すグラフ。
【図7】図4に示す定荷重ばねの位置を説明するための平面図。
【図8】図4に示した定荷重ばねの位置ずれ対策を含むアクセッサの平面図および正面図。
【図9】図4に示す定荷重ばねのより望ましい位置を説明するための平面図および正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態によるアクセッサが適用される磁気テープライブラリ装置(以下、ライブラリ装置と略す。)の平面図である。
【0018】
本実施形態のライブラリ装置は、図1に示すように、複数のカートリッジ格納スペース2aを有するマガジン2と、磁気テープの記録情報を読み書きするためのテープドライブ3と、マガジン2の正面とテープドライブ3の正面との間でカートリッジ5を移送するアクセッサ6の走行スペース7と、制御ユニット8と、電源9とを備える。この例では各々のカートリッジ格納スペース2aには2つのカートリッジ5が格納可能であるが、本発明はこの構成に限定されない。
【0019】
図1では複数のカートリッジ格納スペース2aが横並びに配設された態様が示されているが、カートリッジ格納スペース2aは紙面に垂直な方向にも配設されている。つまり、マガジン2のカートリッジ格納スペース2aは棚状に縦横に複数配設されている。
【0020】
さらに、テープドライブ3の正面が、縦横に複数のカートリッジ格納スペース2aを持つマガジン2の正面と面一に配置されている。これらの正面の前側空間が、アクセッサ6の走行スペース7となっている。走行スペース7にてアクセッサ6が図1の左右方向(矢印Xの往復移動方向)に移動することで、マガジン2の任意のカートリッジ格納スペース2aとテープドライブ3との間をカートリッジ5が行き来する。
【0021】
このため、走行スペース7にはアクセッサ6とラック(不図示)とガイド(不図示)が設けられ、前記ラックと前記ガイドが、図1の矢印X方向において平行に設けられている。前記ラックと前記ガイドのそれぞれの両端は筐体15に固定される。アクセッサ6は、前記ラックと前記ガイドに沿って直線上を往復移動できるようになっている。
【0022】
前記ラックと前記ガイドとを含むアクセッサ6を移動させる駆動機構の例を図2および図3に示す。図2はアクセッサ6のカートリッジ搭載側を示す概略斜視図、図3は図2のアクセッサ6のカートリッジ搭載部とは反対側を示す概略斜視図である。
【0023】
これらの図に示すように、平行に設けられたラック10とガイド11の上にアクセッサ6がラック10とガイド11に沿って移動可能に搭載されている。そしてアクセッサ6のカートリッジ搭載部側にはステッピングモータ12が取り付けられ、アクセッサ6のカートリッジ搭載部とは反対側には、ラック10の歯と噛み合うピニオン13ならびに該ピニオン13と噛み合う伝達ギア14等が取り付けられている。伝達ギア14はステッピングモータ12の出力軸のギアと噛み合っている。したがって、ステッピングモータ12を駆動すると、その駆動力は伝達ギア14を介してピニオン13を回転させ、ラック10およびガイド11に沿ってアクセッサ6が移動することとなる。
【0024】
このように、アクセッサ6を移動させる機構にはラック&ピニオンといったギア駆動機構が採用されているため、アクセッサ移動方向においてバックラッシ(ガタ)が発生する。このバックラッシはアクセッサの位置決め精度に影響するため、本発明ではアクセッサの位置決めにおいてバックラッシの影響を無くす装置が設けられている。以下、この装置について説明する。なお、図3の構成例においてラック10の代わりに歯付きベルトを用いたり、ピニオン13の代わりにウォームギアを用いたりした場合にも同様に、以下のバックラッシ対策装置を適用可能である。
【0025】
図4はそのバックラッシ対策装置を備えたライブラリ装置の平面図である。ライブラリ装置の筐体15内のアクセッサ走行スペース7において、定荷重ばね(コンスタントフォーススプリング)16が実装されている。
【0026】
定荷重ばね16の斜視図を図5に示す。この図に示すように定荷重ばね16は樹脂製のドラム17とこの外周面に密着巻きされた金属の薄板18を備え、薄板18の端部を直線的に引き出して使用するばねである。このばねは、ばね用語(JIS B 0103)に分類されている定荷重ばねであり、図6に示すようにコイルスプリングやゼンマイと比較すると、ストロークや回転数が変化しても荷重やトルクがほぼ一定のばねである。
【0027】
この定荷重ばね16のドラム17が、図4に示すように、アクセッサ6におけるテープドライブ3側とは反対側の端面6aに配置されている。さらに、定荷重ばね16の薄板18がアクセッサ6と筐体15の間の隙間を通ってアクセッサ移動方向に延び、かつ、その薄板先端が、アクセッサ移動方向にある筐体15の側面に固定されている。言い換えれば、アクセッサ6の端面6aと筐体15との間に定荷重ばね16のドラム17が引っ掛けられた状態で、定荷重ばね16の薄板18が伸ばされている。これにより、定荷重ばね16のドラム17は図4中の矢印P方向(復動方向)にアクセッサ6を常時押し続けているため、アクセッサ6の移動に関するギア機構のバックラッシが除去される。
【0028】
なお、図7に示すように、アクセッサ6が矢印Qの方向に移動すると、定荷重ばね16のドラム17は薄板18を巻き取るようにして矢印Rの方向に回転する。この時、アクセッサ6とドラム17の間に摩擦があるため、ドラム17は矢印Sの方向に移動する。このようにドラム17が移動すると、移動中のアクセッサ6に対して矢印Pの方向に作用している定荷重ばね16の荷重が安定しなくなる。また、ドラム17がガイド11やラック10に衝突する虞や、この虞が無くてもアクセッサ6に対する定荷重ばね16の設置場所が限定されてしまう。
【0029】
この対策をとった構成例が図8である。図8の(a)は定荷重ばね16の位置ずれ対策を含むアクセッサの平面図、(b)は該アクセッサと定荷重ばね16の正面図である。図8を参照すると、図7に示した定荷重ばね16のドラム17の位置に対応して支柱19が配置され、支柱19にドラム17の軸穴が回転自在に支持されている。支柱19は、アクセッサ6に固定されたブラケット20に形成されている。このような構成により、ドラム17がアクセッサ6の移動に伴って移動することが出来なくなり、アクセッサ6にかかる定荷重ばね16の荷重が安定する。
【0030】
また、定荷重ばね16をアクセッサ6に配置する位置に関して、定荷重ばね16のドラム17の位置は、モータの駆動をギア(図3のピニオン13)を介して受けるラック9の近くか、アクセッサ6を一直線に案内するガイド11の近くが望ましい。この構成例を示したのが図9であり、図9の(a)はそのような位置にある定荷重ばね16とアクセッサ6の平面図、(b)は該アクセッサ6と定荷重ばね16の正面図である。この図例では、定荷重ばね16のドラム17および薄板18がラック10とガイド11の中間を通るように配置されている。また、何れの構成でも、バックラッシが生じるギア機構の近くに定荷重ばね16を配置するのが望ましいので、該ギア機構がアクセッサ6の下部に設けられている場合は図8および図9に示したようにアクセッサ6の下側に定荷重ばね16を配置するのが良い。
【0031】
なお、今までの説明図では分かりやすいように、アクセッサ6の外側に定荷重ばね16のドラム17を配置した態様を示したが、アクセッサ6の内部に定荷重ばね16のドラム17を配置することも可能である。さらに、今までの説明図では定荷重ばね16を用いてテープドライブ3側にアクセッサ6を常時付勢する態様を示しているが、アクセッサ6に荷重をかける方向が反対でも、アクセッサ6の移動に関するギア機構のバックラッシを無くす効果がある。
【0032】
以上に説明した実施形態によれば、アクセッサ6の移動に関するギア機構のバックラッシを無くすことが出来るため、マガジン2における各々のカートリッジ出し入れ口や、テープドライブ3のカートリッジ出し入れ口に対してアクセッサ6を高精度で位置決め制御することが可能になる。これにより、アクセッサ6からマガジン2内へカートリッジ5を装填するときにカートリッジ出し入れ口の周縁が削れてカスが生じる虞が無くなる。
【0033】
さらに、マガジン2内へカートリッジ5を挿入し易いようにマガジン2のカートリッジ出し入れ口の周縁に設けるテーパを小さくすることが出来る。そのため、カートリッジ出し入れ口の間隔を小さくしてマガジン2に対するカートリッジ5の実装数を増やすことが可能になる。
【0034】
なお、上述した各実施形態例では、記憶媒体として磁気テープを収容した磁気テープカートリッジを運ぶアクセッサを備えたライブラリ装置について説明したが、本発明のアクセッサはこれに限定されず、適用される装置に応じたものであってよい。
【符号の説明】
【0035】
2 マガジン
2a カートリッジ格納スペース
3 テープドライブ
5 カートリッジ
6 アクセッサ
7 アクセッサ走行スペース
8 制御ユニット
9 電源
10 ラック
11 ガイド
12 ステッピングモータ
13 ピニオン
14 伝達ギア
15 ライブラリ装置の筐体
16 定荷重ばね
17 定荷重ばねの構成要素であるドラム
18 定荷重ばねの構成要素である薄板
19 支柱
20 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体を収容したカートリッジを筐体内の直線上の任意の場所から別の場所へ運ぶためのアクセッサと、ギアの回転により前記アクセッサを直線上に沿って往復移動させるギア駆動機構とを備えたアクセッサ移動装置において、
前記ギア駆動機構のバックラッシが除去されるように、前記アクセッサの往動方向もしくは復動方向に前記アクセッサを常時付勢する定荷重ばねを備えたことを特徴とするアクセッサ移動装置。
【請求項2】
前記定荷重ばねが、ドラムとこの外周面に密着巻きされた金属の薄板を備え、該薄板の端部を前記ドラムから引き出して使用するばねであり、
前記アクセッサの往動方向とは反対側の端面に前記ドラムが配置され、かつ前記アクセッサの往動方向にある前記筐体の側面に前記薄板の端部が固定されているか、あるいは、前記アクセッサの復動方向とは反対側の端面に前記ドラムが配置され、かつ前記アクセッサの復動方向にある前記筐体の側面に前記薄板の端部が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のアクセッサ移動装置。
【請求項3】
前記アクセッサは前記ドラムを回転自在に支持する支柱を有することを特徴とする請求項2に記載のアクセッサ移動装置。
【請求項4】
前記ギア駆動機構は、前記アクセッサを直線移動させる、ピニオンおよび該ピニオンと噛み合うラックもしくは歯付きベルトと、該ピニオンを回転させるためのステッピングモータと、前記アクセッサを前記往復動方向に案内するガイドとを備えることを特徴とする請求項2または3に記載のアクセッサ装置。
【請求項5】
前記ドラムは前記ラックもしくは歯付きベルトの近くに位置していることを特徴とする請求項4に記載のアクセッサ移動装置。
【請求項6】
直線上の任意の場所から別の任意の場所へ記憶媒体を運ぶためのアクセッサを、ギアの回転により直線上に沿って往復移動させるアクセッサ移動方法であって、
定荷重ばねを用いて前記アクセッサの往動方向もしくは復動方向に前記アクセッサを常時付勢して前記ギアのバックラッシを除去することを特徴とするアクセッサ移動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62005(P2013−62005A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199523(P2011−199523)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(302069930)NECエンベデッドプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】