説明

アクセル操作装置

【課題】 ハンドルバーに取り付けられ使用されると共にスロットル弁を開閉するためのワイヤが削除されたアクセル操作装置において、スロットル弁を開閉するためのワイヤを備えているアクセル操作装置の操作感覚に近い操作感覚を、操作する者に与える。
【解決手段】 ハンドルバー3に取り付けられるアクセル操作装置1において、前記ハンドルバー3に対して回動自在なグリップ本体部5と、前記グリップ本体部5の回動量に応じたトルクを前記グリップ本体部5に加えるトルク付与手段9と、前記グリップ本体部5が回動する際に、前記グリップ本体部5の回動量に応じた摩擦抵抗トルクを前記グリップ本体部5に加える摩擦抵抗トルク付与手段11とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル操作装置に係り、特に、ハンドルバーに対してグリップ本体部が回動する際にこの回動に対する抵抗をたとえば摩擦板によって付与するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のハンドルバーに対して回動自在なスロットルグリップ(グリップ本体部)と、前記スロットルグリップの回動時に、その回動方向とは逆向きの摩擦力を付与する摩擦板と、前記回動方向とは逆向きの力を付与するバネとを備えたスロットル開度検出装置(アクセル操作装置)が知られている(たとえば特許文献1)。
【0003】
前記従来のアクセル操作装置では、前記グリップ本体部とスロットル弁とが連動するように両者を互いに連結しているワイヤ等が削除されており、代わりに、前記車両の搭乗者によって操作された(回動された)前記グリップ本体部の回動量を検出可能なセンサユニットが設けられている。
【0004】
そして、前記センサユニットから出力される電気信号(前記グリップの回動量に応じた電気信号)を制御装置が受け取り、この制御装置の制御の下、前記電気信号に応じてトルクモータでスロットルバルブを回動しインジェクションからの燃料の供給を調節しエンジンの出力を調整するようになっている。
【0005】
前記摩擦板やバネが設けられている理由は、アクセルワイヤが削除されても、アクセルワイヤが設けられているときと同様なグリップ本体部の操作感覚を、車両の搭乗者に与えるためである。
【特許文献1】特開2003−2522744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来のアクセル操作装置では、前記グリップ本体部の回動量にかかわらず、前記摩擦板により付与される摩擦力(摩擦トルク)がほぼ一定であるので、前記グリップ本体部の操作感覚が、ワイヤ等を用いてスロットル弁を開閉しているアクセル操作装置におけるグリップ本体部の操作感覚とは異なるという問題がある。
【0007】
なお、前記問題は、二輪車だけでなく、レジャービークル、スノーモービル等の車両、レジャーボート等の小型船舶の船外機等、これらの操舵用のハンドルバーに設置されて使用されるアクセル操作装置においても同様に発生する問題である。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、ハンドルバーに取り付けられ使用されると共にスロットル弁を開閉するためのワイヤが削除されたアクセル操作装置において、スロットル弁を開閉するためのワイヤを備えているアクセル操作装置の操作感覚に近い操作感覚を、操作する者に与えることができるアクセル操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ハンドルバーに取り付けられるアクセル操作装置において、前記ハンドルバーに対して回動自在なグリップ本体部と、前記グリップ本体部の回動量に応じたトルクを前記グリップ本体部に加えるトルク付与手段と、前記グリップ本体部が回動する際に、前記グリップ本体部の回動量に応じた摩擦抵抗トルクを前記グリップ本体部に加える摩擦抵抗トルク付与手段とを有するアクセル操作装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアクセル操作装置において、前記摩擦抵抗トルク付与手段は、前記グリップ本体部に形成されているネジ部と、このネジ部に螺合しているネジ部を備えていることにより前記グリップ本体部の回動に応じて前記ハンドルバーの軸方向に移動自在な移動部材と、前記グリップ本体部に接触している摩擦部材と、この摩擦部材を前記グリップ本体部へ押し付けるため前記移動部材と前記摩擦部材との間に設けられ前記移動部材が前記グリップ本体部に近づくにしたがって圧縮される弾性部材とによって構成されているアクセル操作装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のアクセル操作装置において、前記摩擦抵抗トルク付与手段は、前記グリップ本体部に設けられ前記グリップ本体部の回動中心軸からの半径が徐々に変化している異形部位と、前記異形部位に接触している摩擦部材と、前記摩擦部材を前記異形部へ押し付けるため前記摩擦部材を前記異形部位のラジアル方向から付勢している弾性部材とによって構成されているアクセル操作装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のアクセル操作装置において、前記摩擦抵抗トルク付与手段は、前記グリップ本体部に設けられた突起と、弾性を備えていると共に基端部側が前記ハンドルバーに一体的に支持され先端部側が前記突起と接触して前記突起を押圧する片持ち梁とを備え、前記グリップの回動に応じて、前記突起が接触する前記片持ち梁の部位が変化するように構成されているアクセル操作装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアクセル操作装置において、前記グリップ本体部の回動量が増加するにしたがって、前記摩擦抵抗トルク付与手段によって加える摩擦抵抗トルクが大きくなるように構成されているアクセル操作装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハンドルバーに取り付けられ使用されると共にスロットル弁を開閉するためのワイヤが削除されたアクセル操作装置において、スロットル弁を開閉するためのワイヤを備えているアクセル操作装置の操作感覚に近い操作感覚を、操作する者に与えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアクセル操作装置1の概略構成を示す断面図であり、図2は、図1におけるIIA−IIB矢視を示す図であり、図3は、図1におけるIIIA−IIIB矢視を示す図である。
【0016】
アクセル操作装置1は、二輪車、(レジャービークル、スノーモービル)等の車両、レジャーボート等の小型船舶の船外機等、これらの操舵用のハンドルバーに設置され使用されるものである。
【0017】
以下、本実施形態では、二輪車を例に掲げて説明する。
【0018】
アクセル操作装置1は、二輪車の搭乗者が、グリップ本体部5を手動で回動することによって入力されたエンジンの出力の指令値を、前記エンジンの制御装置(図示せず)等に伝達するためのものであり、ハンドルバー3の一端部側に設けられている。
【0019】
アクセル操作装置1は、円筒状に形成されたハンドルバー3に対して回動自在なグリップ本体部5を備えている。このグリップ本体部5は、円筒状に形成され、内面が前記ハンドルバー3の外面に接触して前記ハンドルバー3の一端部を覆うように、前記ハンドルバー3に設けられている。なお、前記グリップ本体部5の先端部側は、一端部側が閉じているグリップカバー7によって覆われている。このグリップカバー7は、前記グリップ本体部5と一体的に設けられており、前記グリップ本体部5と共に回動する。
【0020】
また、前記アクセル操作装置1には、前記グリップ本体部5の回動量を規制するストッパ(図示せず)が設けられている。このストッパが設けられていることによって、前記グリップ本体部5は前記ハンドルバー3に対して、たとえば50°の角度だけ回動するようになっている。
【0021】
さらに、アクセル操作装置1には、搭乗者により回動された前記グリップ本体部5の回動量を検出し、前記グリップ本体部5の回動量を電気信号にして出力するセンサユニット(前記ハンドルバー3の内部で前記ハンドルバー3に固定されているセンサユニット;図示せず)が設けられている。
【0022】
前記センサユニットから出力された電気信号は、図示しない前記制御装置(ECU)に送られ、この制御装置の制御の下、前記グリップ本体部5の回動量に応じた適量の燃料が図示しないインジェクションからエンジンへ供給されるようになっている。また、前記制御装置の制御の下、図示しないスロットル弁がトルクモータ等のアクチュエータで回動し、前記グリップ本体部5の回動量に応じた適量の空気が、エンジンへ供給されるようになっている。
【0023】
したがって、前記アクセル操作装置1では、前記グリップ本体部の回動に応じてスロットル弁を開閉するためのワイヤ等が削除されている。
【0024】
ところで、前記アクセル操作装置1には、前記グリップ本体部5の回動量に応じたトルクを前記グリップ本体部5に加えるトルク付与手段9と、前記グリップ本体部5が回動する際に、前記グリップ本体部5の回動量に応じた摩擦抵抗トルクを前記グリップ本体部5に加える摩擦抵抗トルク付与手段11とが設けられている。
【0025】
前記グリップ本体部5の回動量が増加するにしたがって(エンジンの出力を上昇させる方向に前記グリップ本体部が回動するにしたがって)、前記トルク付与手段9によって加えるトルク(前記エンジンの出力を上昇させる方向に前記グリップ本体部が回動する場合、この回動方向とは逆向きのトルク)が直線的に大きくなるように構成されていると共に、前記グリップ本体部5の回動量が増加するにしたがって、前記摩擦抵抗トルク付与手段11によって加える摩擦抵抗トルク(前記エンジンの出力を上昇させる方向に前記グリップ本体部5が回動する場合、この回動方向とは逆向きのトルク)が直線的に大きくなるように構成されている。
【0026】
なお、前記グリップ本体部5の回動量が増加するにしたがって、前記摩擦抵抗トルク付与手段11によって加える摩擦抵抗トルクが直線的に増加するのではなく、摩擦抵抗トルクの増加する割合がたとえば小さくなるように構成されていてもよい。
【0027】
ここで、前記アクセル操作装置1のトルク付与手段9や摩擦抵抗トルク付与手段11についてより詳しく説明する。
【0028】
前記摩擦抵抗トルク付与手段11は、前記グリップ本体部5に形成されているネジ部19と、このネジ部19に螺合しているネジ部15を備えていることにより前記グリップ本体部5の回動に応じて前記ハンドルバー3の軸方向に移動自在な移動部材(雄ネジ部材)17と、前記グリップ本体部5に接触している摩擦部材27と、前記摩擦部材27を前記グリップ本体部5へ押し付けるため前記移動部材17と前記摩擦部材27との間に設けられ前記移動部材17が前記グリップ本体部5に近づくにしたがって圧縮される弾性部材(圧縮コイルバネ29)とによって構成されている。
【0029】
すなわち、グリップ本体部5は、前述したように、内径が前記ハンドルバー3の外径とほぼ等しい円筒状に形成され、内面が前記ハンドルバー3の外面と係合し、前記ハンドルバー3の一端部側で前記ハンドルバー3に対して回動自在に設けられている。
【0030】
グリップ本体部5の基端部側(前記一端部側よりも内側;前記ハンドルバー3の中心側)は、前記ハンドルバー3に一体的に設けられた箱状もしくは筒状のカバー部材13で覆われており、前記カバー部材13の内部であって前記カバー部材13の基端部側には雄ネジ(内径が前記ハンドルバー3の外径よりも大きい台形ネジ)15を備えた雄ネジ部材(移動部材)17が一体的に設けられている。
【0031】
前記カバー部材13の一端部側の壁13Aを、前記グリップ本体部5の基端部側に設けられた2つの鍔5A、5Bで挟み込んでいることにより、前記グリップ本体部5が前記ハンドルバー3の延伸方向には移動しないようになっている。
【0032】
また、前記グリップ本体部5の基端部とこの近傍には、内径が前記ハンドルバー3の外径よりも大きい雌ネジ(台形ネジ)19が形成されており、前記雄ネジ15と前記雌ネジ19とが互いに螺合していることにより、前記グリップ本体部5の回動に応じて前記移動部材17が前記ハンドルバー3の軸方向に僅かに移動するようになっている。
【0033】
そして、移動した前記移動部材17の位置に応じて、前記移動部材17(移動部材の一端部に設けられている円板状の部位)と前記摩擦部材27との間に設けられた前記圧縮バネ29が弾性変形し、前記摩擦部材27が前記グリップ本体部5を押圧するための力を、前記圧縮バネ29が前記摩擦部材27に加えるようになっている。
【0034】
なお、図1に示す状態では、エンジンがアイドル状態であるときにおける前記グリップ本体部5の位置を示している。図1に示す状態から、前記グリップ本体部5が矢印AR1の方向(エンジンの出力を上昇する方向)に回動すると、矢印AR3の方向(ハンドルバー3やグリップ本体部5の基端部側へ向う方向)に、前記移動部材17が僅かに移動するようになっている。
【0035】
さらに詳しく説明すると、前記グリップ本体部5の外周には、外径が円形状に形成された板状の鍔21が一体的に設けられている。なお、この鍔21は、前記カバー部材13の内部で前記グリップ本体部5の長手方向(ハンドルバー3の延伸方向)の中間部に存在していると共に、前記鍔21の厚さ方向は、前記矢印AR3で示す方向(ハンドルバー3の延伸方向)と一致している。したがって、前記鍔21の基端部側には、リング状の平面(基端部側平面)23が形成されており、前記鍔21の一端部側(先端部側)には、リング状の平面(先端部側平面)25が形成されている。
【0036】
また、前記カバー部材13の内部には、中空の円板状に形成された摩擦部材27が設けられている。この摩擦部材27の内径は、前記グリップ本体部5の外径よりも大きくなっており、前記摩擦部材27の厚さ方向は、前記矢印AR3で示す方向と一致している。そして、前記摩擦部材27の厚さ方向の一方の面が、前記グリップ本体部5の基端部側平面23に面接触している。したがって、前記雄ネジ部材17と前記摩擦部材27とは、離れて存在していることになる。
【0037】
前記雄ネジ部材17と前記摩擦部材27との間には、前記摩擦部材27が前記グリップ本体部5(鍔21)を押圧するための力を前記摩擦部材27に加える第1の弾性部材(前記圧縮コイルバネ29)が設けられている。
【0038】
そして、前記グリップ本体部5が回動して前記移動部材17の位置(ハンドルバー3の延伸方向における位置)が変化するとこの変化に応じて、前記圧縮コイルバネ29が前記摩擦部材27を押す力が変化し、前記鍔21(グリップ本体部5)と前記摩擦部材27との間の摩擦力(摩擦トルク)が変化するようになっている。
【0039】
なお、前記グリップ本体部5が矢印AR1の方向に回動して前記移動部材17が、矢印AR3の方向に移動すると、前記圧縮コイルバネ29が摩擦部材27を強い力で押し、前記鍔21と前記摩擦部材27との間の摩擦力が大きくなる。
【0040】
また、前記移動部材17が、図1に示すような回動位置にあるときにおいても、前記圧縮コイルバネ29が前記摩擦部材27を押しており、図1に示す状態から前記グリップ本体部5が、矢印AR3の方向に移動すると、圧縮コイルバネ29が弾性変形して縮み、より大きな力で前記摩擦部材27を押すことになる。
【0041】
また、前記カバー部材13の内壁(前記雄ネジ部材17が設けられている側とは反対側の内壁)と、前記鍔21の先端部側平面25との間であって前記グリップ本体部の外側には、前記グリップ本体部5の回動量に応じたトルクを、前記グリップ本体部5に加える第2の弾性部材(たとえばねじりコイルバネ:リターンスプリング)31が設けられている。
【0042】
前記グリップ本体部5が、図1に示すような回動位置にあるときにおいても、前記ねじりコイルバネ31が前記グリップ本体部5を付勢しており、図1に示す状態から前記グリップ本体部5が、矢印AR1の方向に回動すると、前記ねじりコイルバネ31が、より大きな力で前記グリップ本体部5を付勢することになる。
【0043】
次に、アクセル操作装置1を回動したときに、前記トルク付与手段9や前記摩擦抵抗トルク付与手段11により前記グリップ本体部5に加えられるトルクについて説明する。
【0044】
図4は、グリップ本体部5の回動量と、前記トルク付与手段9と前記摩擦抵抗トルク付与手段11とによって前記グリップ本体部5に加えられるトルクとの関係を示す図である。
【0045】
図4の横軸はグリップ本体部5の回動角度θを示し、縦軸は前記グリップ本体部5に加えられるトルクTを示す。また、グリップ本体部5の回動角度が「θ」であるときには、エンジンはアイドル状態にあり、グリップ本体部5の回動角度が「θmax」に近づくにしたがってエンジンの出力が上昇するものとする。以下、グリップ本体部5が、アイドル時の回動角度「θ」から最大の回動角度「θmax」の方向に回動することを、グリップ本体部5が開く方向に回動するといい、逆に、回動角度「θmax」から回動角度「θ」の方向に回動することを、グリップ本体部5が閉じる方向に回動するという場合がある。
【0046】
図4に破線で示すグラフG1は、前記トルク付与手段9(ねじりコイルバネ31)によって前記グリップ本体部5に加えられるトルクを示す。グラフG1は、前記グリップ本体部5が開く方向に回動するにしたがって(前記グリップ本体部5の回動角度が大きくなるにしたがって)、前記グリップ本体部5の回動方向とは逆向きのトルク(グリップ本体部5を閉じる方向のトルク)がほぼ直線的に増加することを示している。
【0047】
グラフG3は、グリップ本体部5が開く方向に回動するときに、前記トルク付与手段9(ねじりコイルバネ31)と前記摩擦抵抗トルク付与手段11(圧縮コイルバネ29や摩擦部材27)とによって前記グリップ本体部5に加えられるトルクを示し、グリップ本体部5が開く方向に回動するにしたがって、トルク(グリップ本体部5を閉じる方向のトルク)がほぼ直線的に増加することを示している。
【0048】
なお、グラフG3で示すトルクは、前記トルク付与手段9で付与されるトルク(グラフG1で示すトルク)に、前記摩擦抵抗トルク付与手段11によるトルクが加えられたトルクであるので、グラフG1で示すトルクよりも大きくなっている。また、グラフG3の勾配は、グラフG1の勾配よりも大きくなっている。
【0049】
グラフG5は、グリップ本体部5を閉じる方向に回動するときに、前記トルク付与手段9と前記摩擦抵抗トルク付与手段11とによって前記グリップ本体部5に加えられるトルクを示し、グリップ本体部5が閉じる方向に回動するにしたがって、トルク(グリップ本体部5を閉じる方向のトルク)がほぼ直線的に減少することを示している。
【0050】
グラフG5で示すトルクは、前記グリップ本体部5を閉じる方向に回動するときのトルクであるので、前記トルク付与手段9のトルクから、前記摩擦抵抗トルク付与手段11によるトルクを減じたものになる。したがって、グラフG5で示すトルクは、グラフG1で示すトルクよりも小さくなっており、グラフG3の勾配は、グラフG1の勾配よりも小さくなっている。
【0051】
前記各グラフG3、G5で示したように、グリップ本体部5に加えられるトルクがグリップ本体部5の回動角度や回動方向に応じて変化するので、点P1(グリップの回動角度が「θmax」であるときのグラフG3上の点)、点P3(グリップの回動角度が「θmax」であるときのグラフG5上の点)、点P5(グリップの回動角度が「θ」であるときのグラフG5上の点)、点P7(グリップの回動角度が「θ」であるときのグラフG3上の点)を順に結ぶ線分によって囲まれた四角形のヒステリシスのグラフが形成される。
【0052】
前記ヒステリシスのグラフは、前記点P1と前記点P3との間の距離が、前記点P5と前記点P7との間の距離よりも長くなっている。また、グラフG3で示すトルクは、グラフG5で示すトルクよりも大きくなっており、グラフG3の勾配は、グラフG5の勾配よりも大きくなっている。したがって、スロットル弁を開閉するためのワイヤを備えているアクセル操作装置の操作感覚により近い操作感覚を、操作する者に与えることができる。
【0053】
なお、前記説明では、グリップ本体部5が、回動角度「θ」と「θmax」との間で回動する場合について説明したが、グリップ本体部5が、回動角度「θ」と「θ」との間で回動する場合についても、ほぼ同様の結果を得ることができる。ただし、「θ」、「θ」、「θ」、「θmax」の順に、グリップ本体部5が開く方向に回動している(グリップ本体部5の回動角度が大きくなっている)ものとする。
【0054】
アクセル操作装置1によれば、前記グリップ本体部5が回動する際に、前記グリップ本体部5の回動量に応じた摩擦抵抗トルクを前記グリップ本体部5に加える摩擦抵抗トルク付与手段11が設けられているので、前記グリップ本体部5の回動量に応じ前記グリップ本体部5に加えられる摩擦抵抗トルクが変化し、スロットル弁を開閉するためのワイヤを備えているアクセル操作装置の操作感覚に近い操作感覚を、操作する者に与えることができる。
【0055】
前記グリップ本体部5の回動量が増加するにしたがって、前記トルク付与手段9によって加えるトルクが大きくなり、前記グリップ本体部5の回動量が増加するにしたがって、前記摩擦抵抗トルク付与手段11によって加える摩擦抵抗トルクが大きくなるように構成されているので、前述したように良好なヒステリシスを得ることができ、スロットル弁を開閉するためのワイヤを備えているアクセル操作装置の操作感覚により近い操作感覚を、操作する者に与えることができる。
【0056】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係るアクセル操作装置41の概略構成を示す断面図であり、図6は、図5におけるVIA−VIB矢視を示す図である。
【0057】
本発明の第2の実施形態に係るアクセル操作装置41は、グリップ本体部43に異形部位45を設けこの異形部位45に摩擦部材47を係合させて、前記グリップ本体部43に摩擦トルクを付与している点が、前記第1の実施形態に係るアクセル操作装置1とは異なり、その他の点は、前記第1の実施形態に係るアクセル操作装置1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0058】
すなわち、第2の実施形態に係るアクセル操作装置41のグリップ本体部43は、前記ハンドルバー3に対して回動自在に設けられていると共に、前記グリップ本体部43の回動中心軸からの半径が徐々に変化している異形部位45が、前記グリップ本体部43の基端部側に設けられている。
【0059】
前記ハンドルバー3の基端部側には、カバー部材49が一体的に設けられている。そして、前記カバー部材49の一端部側の壁50を、前記グリップ本体部43の基端部側に設けられた2つの鍔51、53で挟み込んでいることにより、前記グリップ本体部43が前記ハンドルバー3の延伸方向には移動しないようになっている。
【0060】
また、板状の摩擦部材47が前記異形部位45の一部に接触し前記異形部位45を押圧するようになっている。
【0061】
そして、前記カバー部材49と前記摩擦部材47との間には、弾性部材の例である圧縮コイルバネ55が設けられており、この圧縮コイルバネ55により、前記異形部位45のうちの、前記摩擦部材47に接触している部位の半径に応じた押圧力を、前記摩擦部材47に加えるようになっている。
【0062】
つまり、第2の実施形態に係るアクセル操作装置41の摩擦抵抗トルク付与手段11は、前記グリップ本体部43に設けられ前記グリップ本体部43の回動中心軸からの半径が徐々に変化している異形部位45と、前記異形部位45に接触している摩擦部材47と、この摩擦部材47を前記異形部45へ押し付けるため前記摩擦部材47を前記異形部位45のラジアル方向から付勢している弾性部材(圧縮コイルバネ55)とによって構成されている。
【0063】
より詳しく説明すると、前記グリップ本体部43が回動すると、前記摩擦部材47と接触する前記異形部位45の箇所が変化し、圧縮コイルバネ55が前記グリップ本体部43の回動中心軸の延伸方向と直交する方向(グリップ本体部43の半径方向)で弾性変形で伸縮し、摩擦部材47を押す力が変化する。
【0064】
そして、図6(エンジンがアイドル状態であるときにおける前記グリップ本体部43の回動位置を示す図)に示す状態から、前記グリップ本体部43が矢印AR5の方向(エンジンの出力が上昇する方向)に回動すると、前記異形部位45の半径が増加して前記圧縮コイルバネ55が縮み、前記グリップ本体部43に付与される摩擦トルクの値が増えるようになっている。
【0065】
また、前記アクセル操作装置41には、前記グリップ本体部5の回動量に応じたトルクを、前記グリップ本体部5に加える弾性部材(前記第1の実施形態に係るアクセル操作装置1のねじりコイルバネ31と同様なねじりコイルバネ57)が設けられている。
【0066】
なお、図7(第2の実施形態に係るアクセル操作装置41の変形例を示す図)に示すように、前記板状の摩擦部材47に代え、球状の摩擦部材59を用いて、グリップ本体部43に摩擦トルクを付与するようにしてもよい。
【0067】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係るアクセル操作装置71の概略構成を示す断面図であり、図9は、図8におけるIXA−IXB矢視を示す図である。
【0068】
本発明の第3の実施形態に係るアクセル操作装置71は、片持ち梁75と突起87とを用いて、グリップ本体部73に摩擦トルクを付与している点が、前記第1の実施形態に係るアクセル操作装置1とは異なり、その他の点は、前記第1の実施形態に係るアクセル操作装置1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0069】
より詳しく説明すると、ハンドルバー3の基端部側には、カバー部材77が一体的に設けられている。そして、前記カバー部材77の一端部側の壁79を、前記グリップ本体部73の基端部側に設けられた2つの鍔81、83で挟み込んでいることにより、前記グリップ本体部43が前記ハンドルバー3の延伸方向には移動しないようになっている。
【0070】
前記グリップ本体部73の基端部であって前記カバー部材77の内側には、前記第1の実施形態に係るアクセル操作装置1の鍔21と同様に構成された鍔85が設けられており、この鍔85の基端部側の面であって、前記グリップ本体部73の回動中心から所定の距離だけ離れたところ(所定の半径のところ)には、突起87が設けられている。
【0071】
前記カバー部材77の内部には、前記突起87に接触して前記突起87を押圧する片持ち梁75が設けられている。
【0072】
前記片持ち梁75は、所定の幅を備えた薄い板状の部材で円弧状に形成されており、基端部側が前記ハンドルバー3(カバー部材77)に一体的に支持され、先端部側が前記突起87と接触して前記突起87を押圧し、前記グリップ本体部73に、前記グリップ本体部73の回動量に応じた摩擦トルクを付与するようになっている。
【0073】
前記片持ち梁75は、前記突起87に接触していない状態では、図8に二点鎖線で示すように、先端部側が前記ハンドルバー3の一端部側に位置するようになっており、突起87に接触することにより、この突起87からの反力を受け、図8に実線で示すように、先端部側が撓んで前記ハンドルバー3の基端部側に位置するようになっている。
【0074】
そして、前記グリップ本体部73の回動量に応じて、前記突起87に接触する前記片持ち梁75の部位と前記片持ち梁75の基端部(片持ち梁75が固定されている部位)との間の距離が変化し、前記片持ち梁75で前記突起87を押圧する力が変化するように構成されている。
【0075】
つまり、第3の実施形態に係るアクセル操作装置71の摩擦抵抗トルク付与手段11は、前記グリップ本体部73に設けられた突起87と、弾性を備えていると共に基端部側が前記ハンドルバー3に一体的に支持され先端部側が前記突起87と接触して前記突起87を押圧する片持ち梁75とを備え、前記グリップ3の回動に応じて、前記突起87が接触する前記片持ち梁75の部位が変化するように構成されている
なお、図9に示すように、エンジンがアイドル状態であるときには、前記グリップ本体部73の突起87がPS1で示す位置に存在し、エンジンの出力が上昇する方向に前記グリップ本体部73を回動させると、前記グリップ本体部73の突起87がPS3で示す位置に存在するようになる。
【0076】
突起87がPS1の位置に存在しているときにおける前記位置PS1と前記片持ち梁75との間の距離L1に比べて、突起87がPS3の位置に存在しているときにおける前記位置PS3と前記片持ち梁75との間の距離L3のほうが短くなっているので、位置PS3にあるときのほうが位置PS1にあるときよりも大きな力で、前記突起87が前記片持ち梁75で押されることになる。
【0077】
したがって、エンジンの出力が上昇する方向に前記グリップ本体部73を回動させると、前記グリップ本体部73に付与される摩擦トルクが大きくなる。
【0078】
なお、前記アクセル操作装置71には、前記グリップ本体部5の回動量に応じたトルクを、前記グリップ本体部5に加える弾性部材(前記第1の実施形態に係るアクセル操作装置1のねじりコイルバネ31と同様なねじりコイルバネ89)が設けられている。
【0079】
アクセル操作装置71によれば、片持ち梁75を使用して摩擦トルクをグリップ本体部73に付与しているので、装置の構成が一層簡素になっていると共に、ハンドルバー3の軸方向の寸法を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアクセル操作装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、図1におけるIIA−IIB矢視を示す図である。
【図3】図3は、図1におけるIIIA−IIIB矢視を示す図である。
【図4】グリップ本体部の回動量と、トルク付与手段と摩擦抵抗トルク付与手段とによってグリップ本体部に加えられるトルクとの関係を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るアクセル操作装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】図5におけるVIA−VIB矢視を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係るアクセル操作装置の変形例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るアクセル操作装置の概略構成を示す断面図である。
【図9】図8におけるIXA−IXB矢視を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1、41、71 アクセル操作装置
3 ハンドルバー
5、43、73 グリップ本体部
9 トルク付与手段
11 摩擦抵抗トルク付与手段
27 47、59 摩擦部材
45 異形部位
75 片持ち梁
87 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルバーに取り付けられるアクセル操作装置において、
前記ハンドルバーに対して回動自在なグリップ本体部と;
前記グリップ本体部の回動量に応じたトルクを前記グリップ本体部に加えるトルク付与手段と;
前記グリップ本体部が回動する際に、前記グリップ本体部の回動量に応じた摩擦抵抗トルクを前記グリップ本体部に加える摩擦抵抗トルク付与手段と;
を有することを特徴とするアクセル操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセル操作装置において、
前記摩擦抵抗トルク付与手段は、前記グリップ本体部に形成されているネジ部と、このネジ部に螺合しているネジ部を備えていることにより前記グリップ本体部の回動に応じて前記ハンドルバーの軸方向に移動自在な移動部材と、前記グリップ本体部に接触している摩擦部材と、この摩擦部材を前記グリップ本体部へ押し付けるため前記移動部材と前記摩擦部材との間に設けられ前記移動部材が前記グリップ本体部に近づくにしたがって圧縮される弾性部材とによって構成されていることを特徴とするアクセル操作装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアクセル操作装置において、
前記摩擦抵抗トルク付与手段は、前記グリップ本体部に設けられ前記グリップ本体部の回動中心軸からの半径が徐々に変化している異形部位と、前記異形部位に接触している摩擦部材と、前記摩擦部材を前記異形部へ押し付けるため前記摩擦部材を前記異形部位のラジアル方向から付勢している弾性部材とによって構成されていることを特徴とするアクセル操作装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアクセル操作装置において、
前記摩擦抵抗トルク付与手段は、前記グリップ本体部に設けられた突起と、弾性を備えていると共に基端部側が前記ハンドルバーに一体的に支持され先端部側が前記突起と接触して前記突起を押圧する片持ち梁とを備え、前記グリップの回動に応じて、前記突起が接触する前記片持ち梁の部位が変化するように構成されていることを特徴とするアクセル操作装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアクセル操作装置において、
前記グリップ本体部の回動量が増加するにしたがって、前記摩擦抵抗トルク付与手段によって加える摩擦抵抗トルクが大きくなるように構成されていることを特徴とするアクセル操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−182178(P2006−182178A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377603(P2004−377603)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】