説明

アクチュエータの製造方法、スイッチ装置、伝送路切替装置、および試験装置

【課題】長寿命化したバイモルフ型圧電式アクチュエータの製造方法、スイッチ装置、伝送切替装置、および試験装置を提供する。
【解決手段】基板上に第1圧電素子層を形成する第1圧電素子層形成段階と、第1圧電素子層上に絶縁体の支持層を形成する支持層形成段階と、支持層上に第2圧電素子層を形成する第2圧電素子層形成段階と、基板の一部を除去して、第1圧電素子層、前記支持層、および前記第2圧電素子層を有するアクチュエータを形成する除去段階と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの製造方法、スイッチ装置、伝送路切替装置、および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電膜と当該圧電膜に電圧を印加する電極とを設け、当該圧電膜に電圧が印加されて当該圧電膜が伸縮することによって、伸縮に応じた動作をするアクチュエータが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2001−191300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなアクチュエータは、圧電膜を伸縮させて動作して接点を接触または離間させるスイッチとして用いた場合、接点同士が凝着して接点を離間させることができなくなることがあった。また、このようなアクチュエータは、異なる材料を積層させて形成するので、電圧を印加しない初期状態においても圧電膜の応力等によりそりが生じていた。また、圧電膜は、伸縮動作を繰り返すことによって、寿命が短くなることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、基板上に第1圧電素子層を形成する第1圧電素子層形成段階と、第1圧電素子層上に絶縁体の支持層を形成する支持層形成段階と、支持層上に第2圧電素子層を形成する第2圧電素子層形成段階と、基板の一部を除去して、第1圧電素子層、前記支持層、および前記第2圧電素子層を有するアクチュエータを形成する除去段階と、を備えるバイモルフ型アクチュエータの製造方法を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。
【図2】本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。
【図3】本実施形態に係るスイッチ装置100を形成する製造方法の一例を示す。
【図4】本実施形態に係る台座部320となる基板上に第1保護膜152を形成した段階の断面を示す。
【図5】本実施形態に係る第1保護膜152上に第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を形成した段階の断面を示す。
【図6】本実施形態に係る第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を加工した段階の断面を示す。
【図7】本実施形態に係る第2電極層164上に支持層150、第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を形成した段階の断面を示す。
【図8】本実施形態に係る第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を加工した段階の断面を示す。
【図9】本実施形態に係る第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を加工した段階の上面図を示す。
【図10】本実施形態に係る第4電極層168上に第2保護膜154を形成した段階の断面を示す。
【図11】本実施形態に係る支持層150、第2保護膜154、および第1保護膜152を加工して、第2接点部132を形成した段階の断面を示す。
【図12】本実施形態に係る支持層150、第2保護膜154、および第1保護膜152を加工して、第2接点部132を形成した段階の上面図を示す。
【図13】本実施形態に係る基板を加工して、台座部320を形成した段階の断面を示す。
【図14】本実施形態に係る基板を加工して、台座部320を形成した段階の台座部320の下面図を示す。
【図15】本実施形態に係る台座部320と、キャビティ部310と、基体下部110とを接続した段階の断面を示す。
【図16】本実施形態に係る台座部320と、基体上部330とを接続した段階の断面を示す。
【図17】本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【図18】本実施形態に係る伝送路切替装置500の構成例を示す。
【図19】本実施形態に係るループバック試験する試験装置の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。図2は、本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。スイッチ装置100は、圧電膜と圧電膜に電圧を印加する電極との間に導電性酸化膜を備え、圧電膜を長寿命化させる。また、スイッチ装置100は、アクチュエータ130の剛性を高めつつ、アクチュエータ130の割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐ。
【0009】
スイッチ装置100は、基体下部に設けられた固定接点である第1接点122と、アクチュエータに設けられた可動接点である第2接点134とを接触または離間させることにより、固定接点および可動接点間の電気的導通または非導通を切り換える。スイッチ装置100は、パッケージ等に密封されて収容された装置であってよい。スイッチ装置100は、基体下部110と、アクチュエータ130と、第1電源部180と、第2電源部182と、基準電圧184と、制御部190と、キャビティ部310と、台座部320と、基体上部330とを備える。
【0010】
基体下部110は、固定接点が設けられる平坦な第1面を有する。また、基体下部110は、第1面とは異なる第2面に、外部と電気信号および電源等を授受する配線部を有してよい。基体下部110は、ガラス基板等の絶縁体であってよく、これに代えてシリコン等の半導体基板等であってよい。基体下部110は、ビア112と、配線部114と、グランド線116と、グランド線118と、第1信号線120と、第1接点122aと、第1接点122bと、第2信号線124とを有する。
【0011】
ビア112は、基体下部110を貫通して金属で被覆されることで、第1面に形成される電気配線と第2面に形成される電気配線とを電気的に接続する。一例として、ビア112は、第1接点122と第2面に形成された配線部114とを電気的に接続する。また、ビア112は、導電性材料が充填されて、貫通孔が形成される基体下部110の上面と下面の密閉性を保つように形成されてよい。ビア112は、基体下部110に設けられる第1接点122の数およびアクチュエータ130に供給する電気信号および電源等の数に応じて、基体下部110に複数設けられてよい。
【0012】
配線部114は、スイッチ装置100を通過させる信号、アクチュエータ130に供給する電気信号、または電源電圧等を伝送する。配線部114は、少なくとも1つのビア112に対して信号を送信または受信させるべく、基体下部110の第1面または第2面に設けられる導電性の配線パターンであってよい。これに代えて、配線部114は、基体上部330の第1面または第2面に設けられてもよい。配線部114は、ランド、コネクタ、および/またはアンテナ等を含み、外部からスイッチ装置100に通過させる信号を送受信してよい。
【0013】
グランド線116およびグランド線118は、基体下部110の第1面に設けられ、ビア112および配線部114を介して基準電圧184に接続される。グランド線116およびグランド線118は、導電性の配線パターンであってよい。
【0014】
第1信号線120および第2信号線124は、基体下部110の第1面の、グランド線116およびグランド線118の間に設けられる。第1信号線120および第2信号線124は、導電性の配線パターンであってよい。
【0015】
ここで、グランド線116、グランド線118、第1信号線120、および第2信号線124は、コプレーナ伝送線路を形成してよい。即ち、第1信号線120および第2信号線124の線幅、第1信号線120および第2信号線124とグランド線116との間隔、ならびに第1信号線120および第2信号線124とグランド線118との間隔は、第1信号線120および第2信号線124の特性インピーダンスに応じて予め定められた値で形成される。これによって、第1信号線120および第2信号線124は、数十GHzに至る高周波信号を伝送することができる。
【0016】
なお、スイッチ装置100を通過させる電気信号が、コプレーナ伝送線路を形成しなくても伝送できる程度の低周波信号の場合、グランド線116およびグランド線118は無くてもよい。
【0017】
第1信号線120には、第1接点122aが、第2信号線124には、第1接点122bが、それぞれ設けられる。第1接点122は、突部のない平面状のパッドであってよい。第1接点122は、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、金、白金、ルテニウム、インジウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、および/またはニッケルを含んでよい。ここで、第1接点122は、これらの材料を含む2以上の材料の合金であってよい。また、第1信号線120および第2信号線124は、第1接点122と略同一の材質で形成されてよい。
【0018】
アクチュエータ130は、第2接点134を有し、第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させる。アクチュエータ130は、ゾルゲル法およびCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法等を用いる半導体製造装置等によって成膜されてよい。アクチュエータ130は、第2接点部132と、第1圧電膜136と、第2圧電膜138と、支持層150と、第1保護膜152と、第2保護膜154と、突出部156と、第1圧電膜136の第1電極層162および第2電極層164と、第2圧電膜138の第3電極層166および第4電極層168と、第1導電性酸化物膜210と、第2導電性酸化物膜220とを有する。
【0019】
第2接点部132には、第2接点134が設けられる。第2接点部132は、第1接点122と同様の金属を含んでよい。第2接点134は、突起を有する形状であってよい。これに代えて、第2接点134は、突部のない平面であってもよい。
【0020】
第2接点134は、第1接点122の破壊または劣化を防ぐように、半球状の形状であってよく、これに代えて先端を丸めた針状の形状であってもよい。一例として、第2接点134は、第1接点122と接触して伝送線路を形成する場合に、伝送する信号の周波数に応じた伝送線路幅等を形成するように、予め定められた形状で設けられてよい。
【0021】
本実施例において、スイッチ装置100は、第1接点122aおよび第1接点122bが基体下部110に設けられ、1つの第2接点134と接触または離間する。これにより、スイッチ装置100は、第2接点134を介して第1接点122aと第1接点122bとの間の電気的導通または非導通を切り換える。一例として、配線部114は、外部からの電気信号を第1接点122aへと伝送し、スイッチ装置100がONの場合に当該電気信号を第1接点122bから外部へと伝送する。
【0022】
これに代えて、スイッチ装置100は、基体下部110に1つの第1接点122を有し、アクチュエータ130に外部からの電気信号を第2接点134へと伝送する配線を有してもよい。また、当該配線は、第1接点122に伝送される外部からの電気信号を、第2接点134を介して受け取り、外部へと伝送してもよい。このように、スイッチ装置100は、第1接点122から第2接点134への信号伝送をON/OFFし、ONの場合に、外部から入力された信号を第1接点122から第2接点134を介して外部へと伝送してよい。
【0023】
第1圧電膜136は、支持層150の上面に形成される。第1圧電膜136は、第1駆動電圧に応じて伸縮してよい。この場合、第1圧電膜136は、第1駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ130の長さ方向に伸縮して、第1接点122と第2接点134との距離が変化する方向にアクチュエータ130を湾曲させるように配される。
【0024】
第1圧電膜136は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)のウルツ鉱型の結晶、またはチタン酸バリウム(BTO)等のペロブスカイト系強誘電体等により形成されてよい。
【0025】
第2圧電膜138は、支持層150を介して第1圧電膜136に対向して、支持層150の第1圧電膜136が形成される面とは反対側の面に設けられ、第2駆動電圧に応じて伸縮してアクチュエータ130のそり量を変化させる。第2圧電膜138は、第2駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ130の長さ方向に伸縮して、第1接点122と第2接点134との距離が変化する方向にアクチュエータ130を湾曲させるように配される。
【0026】
第2圧電膜138は、第1圧電膜136と同様に、ペロブスカイト系強誘電体等を用いてよい。第2圧電膜138は、第1圧電膜136と略同一の材料で、かつ、第1圧電膜136と略同一の形状で形成されることが望ましい。また、第1圧電膜136および第2圧電膜138の膜厚は、0.1μm〜5μmの範囲で形成されてよい。ここで、第1圧電膜136および第2圧電膜138としてPZTを成膜する場合、チタン酸鉛(PT)を成膜してからPZTを成膜してよい。これによって、PZTは、結晶性良く成膜することができる。
【0027】
ここで、第1圧電膜136は、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加しない状態におけるアクチュエータ130のそりを抑える。第1圧電膜136は、第2圧電膜138と略同一の材料で、かつ、第2圧電膜138と略同一の形状で形成され、アクチュエータ130の第2圧電膜138が形成される面と反対側に設けられるので、第2圧電膜138によって生じるそりと反対方向にそるように応力が働き、アクチュエータ130のそりを抑えることができる。
【0028】
また、第1圧電膜136は、第2圧電膜138の温度変化に伴う伸縮により生じるアクチュエータ130のそりを抑える。第2圧電膜138は、異なる熱膨張計数の材質の膜の面上に積層されるので、温度変化に伴って熱応力によって変形し、アクチュエータ130にそりを生じさせる。第1圧電膜136は、第2圧電膜138と略同一の材料で、かつ、第2圧電膜138と略同一の形状で形成され、アクチュエータ130の第2圧電膜138が形成される面と反対側に設けられるので、温度変化によって生じるそりに対しても反対方向にそるように応力が働き、アクチュエータ130の温度変化に伴うそりを抑えることができる。
【0029】
支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の間に設けられる。支持層150は、力の印加によって変形する弾性を有し、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138が伸縮して力を印加することによって、湾曲される。また、支持層150は、アクチュエータ130が撓みすぎるのを抑制する剛性を有し、第1圧電膜136および第2圧電膜138の電界の印加が停止すると、アクチュエータ130は初期位置に戻る。
【0030】
支持層150は、第1圧電膜136または第2圧電膜138が形成される場合に、当該圧電膜と共に焼成温度に加熱される。即ち、第1圧電膜136および第2圧電膜138は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱されて、支持層150上の異なる面にそれぞれ形成され、支持層150は、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138と共に焼成温度に加熱される。
【0031】
そこで支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても破壊されない材質で形成される。第1圧電膜136および第2圧電膜138をPZT等で形成する場合、焼成温度は、略700℃以上に達する場合もある。したがって、支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。
【0032】
また、支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても圧電膜または電極層と化学反応を生じ難い材質で形成されることが望ましい。第1支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、圧電膜または電極層と化合物を形成して、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。また、この場合、支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、第1圧電膜136および第2圧電膜138の圧電定数等の膜特性を劣化させない材質で形成することが望ましい。
【0033】
支持層は、絶縁材料で形成される。支持層150は、絶縁材料で形成されることで、例えば700℃程度の圧電膜の焼成温度に耐え、金属膜よりも安価なCVD等の製造方法により短時間で形成することができる。
【0034】
支持層150は、例えば、酸化シリコン(SiO)または窒化シリコン(SiN)を含む。これに代えて、支持層150は、アルミニウム、金、白金等の導電体、ガラス等の絶縁体、またはシリコン等の半導体を用いてよい。また、支持層150の膜厚は、0.1μm〜50μmの範囲で形成されてよい。
【0035】
第1保護膜152は、絶縁材料で形成され、第1圧電膜136における支持層150とは反対側から第1圧電膜136の少なくとも一部を覆い、かつ、第1圧電膜136の端部の少なくとも一部において支持層150と接する。第1保護膜152および支持層150は、第1圧電膜136、第1電極層162および第2電極層164が露出しないように各層を覆うように形成されてよい。ここで、第1保護膜152および支持層150は、第1電極層162および第2電極層164がそれぞれ配線部114と接続される接続部を露出させて形成されてよい。
【0036】
ここで、第1保護膜152および支持層150は、第1圧電膜136、第1電極層162および第2電極層164の一部を覆って形成されてよい。例えば、第1保護膜152および支持層150は、各層の側部を覆う。即ち、第1保護膜152および支持層150は、アクチュエータ130の側部において覆う。また、第1保護膜152および支持層150は、アクチュエータ130の側部の支持層150側を覆ってもよい。
【0037】
第2保護膜154は、絶縁材料で形成され、第2圧電膜138における支持層150とは反対側から第2圧電膜138の少なくとも一部を覆い、かつ、第2圧電膜138の端部の少なくとも一部において支持層150と接する。第2保護膜154および支持層150は、第2圧電膜138、第4電極層168および第3電極層166が露出しないように各層を覆うように形成されてよい。ここで、第2保護膜154および支持層150は、第1電極層162、第2電極層164、第4電極層168および第3電極層166がそれぞれ配線部114と接続される接続部を露出させて形成されてよい。
【0038】
ここで、第2保護膜154および支持層150は、第2圧電膜138、第4電極層168および第3電極層166の一部を覆って形成されてよい。例えば、第2保護膜154および支持層150は、各層の側部を覆う。即ち、第2保護膜154および支持層150は、アクチュエータ130の側部において覆う。また、第2保護膜154および支持層150は、アクチュエータ130の側部の支持層150側を覆ってもよい。
【0039】
第1保護膜152および第2保護膜154は、酸化シリコンまたは窒化シリコンで形成されてよい。第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同種の絶縁材料で形成されてよく、望ましくは、支持層150と略同一の絶縁材料で形成される。即ち、第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同様に、弾性および剛性を有し、支持層150と密着性よく、強く結合して形成される。なお、本実施例は、第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同一の絶縁材料で形成される例であり、図2においてはこれらの境界を示していない。
【0040】
突出部156は、アクチュエータ130の可動端である先端部において、第1圧電膜136および第2圧電膜138が設けられていない支持層150の部分である。第2接点部132は、突出部156上に設けられてよい。これによって、第2接点134は、第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166、および第4電極層168と離間された位置に形成することができ、それぞれの電極層に供給される電気信号の影響を低減させることができる。
【0041】
また、突出部156は、第1接点122と第2接点134とが接触してON状態になった場合に、第1信号線120から第2信号線124までの伝送線路から、第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166、および第4電極層168の4つの電極を離間させた配置にすることができる。これによって、突出部156は、コプレーナ伝送線路に対して、それぞれの電極層に供給される電気信号に起因する雑音等の影響を低減させることができる。
【0042】
第1電極層162および第2電極層164は、第1圧電膜136の上面および下面に設けられ、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。ここで、第1駆動電圧は、正または負の予め定められた電圧でよい。
【0043】
第1電極層162および第2電極層164は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。第1電極層162および第2電極層164は、アルミニウム、金、白金、銅、インジウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、イリジウム等の低抵抗で加工が容易な金属であってよく、ルテニウムオキサイド(RuO)、イリジウムオキサイド(IrO)等酸化物電極、セラミック電極、または、シリコン等の半導体を用いてもよい。
【0044】
電極材料としてシリコンを用いる場合には、不純物を高濃度にドープしたシリコンを用いることが好ましい。本実施例の第1電極層162および第2電極層164は、白金である。ここで、白金を成膜する場合、チタン、タンタル、クロム等を成膜してから白金を成膜してよい。
【0045】
第3電極層166および第4電極層168は、第2圧電膜138の上面および下面に設けられ、第2圧電膜に第2駆動電圧を印加する。ここで、第2駆動電圧は、正または負の予め定められた電圧でよい。第3電極層166および第4電極層168は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。第3電極層166および第4電極層168は、第1電極層162および第2電極層164と略同一の形状、および略同一の材質でよい。
【0046】
また、第3電極層166は、第2電極層164と略同一の形状および略同一の材質でよく、第4電極層168は、第1電極層162と略同一の形状および略同一の材質でよい。これらの第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166および第4電極層168の膜厚は、0.05μm〜1μmの範囲で形成されてよい。
【0047】
第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136と第2電極層164との間に形成される。第1導電性酸化物膜は、導電性酸化物を含む。第1導電性酸化物膜210は、Ir系酸化物(例えばIrO)、Ru系酸化物(例えばRuO、SRO)、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分としてよい。
【0048】
第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136上に形成され、第1圧電膜136の伸縮による疲労を低減させる。第1圧電膜136は、伸縮を繰り返すことによって、圧電膜に含まれる酸素を放出して疲労が蓄積し、寿命が短くなると考えられている。そこで、第1導電性酸化物膜210は、酸化物を含み第1圧電膜136に接して形成されるので、第1圧電膜136からの酸素の放出を防ぐことができる。
【0049】
また、第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136の酸素を放出した部分に酸素を供給することができる。以上のように、第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136の酸素の欠乏領域が形成されることを防ぎ、第1圧電膜136を長寿命化することができる。
【0050】
第2導電性酸化物膜220は、第2圧電膜138と第4電極層168との間に形成される。第2導電性酸化物膜220は、導電性酸化物を含む。第2導電性酸化物膜220は、Ir系酸化物(例えばIrO)、Ru系酸化物(例えばRuO、SRO)、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分としてよく、第1導電性酸化物膜210と略同一の物質で形成されてよい。
【0051】
第2導電性酸化物膜220は、第2圧電膜138上に形成され、第2圧電膜138の伸縮による疲労を低減させる。即ち、第2導電性酸化物膜220は、第1導電性酸化物膜210と同様に、第2圧電膜138の酸素の欠乏領域が形成されることを防ぎ、第2圧電膜138を長寿命化することができる。
【0052】
第1電源部180は、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。第1電源部180は、制御部190の制御信号を受信して、制御信号に応じた駆動電圧を第1駆動電圧として第1圧電膜136に印加する。第2電源部182は、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加する。第2電源部182は、制御部190の制御信号を受信して、制御信号に応じた駆動電圧を第2駆動電圧として第2圧電膜138に印加する。
【0053】
基準電圧184は、予め定められた電圧を供給する。本実施例において、基準電圧184は、GND(0V)電圧である。
【0054】
制御部190は、第1電源部180および/または第2電源部182に制御信号を送信して、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138を伸縮させる駆動電圧の印加または遮断を指示する。例えば、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜138を縮める制御信号を第2電源部182に送信する。また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138への第2駆動電圧の供給を停止する制御信号を第2電源部182に送信する。
【0055】
これに代えて制御部190は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加して第1圧電膜136を伸ばす制御信号を第1電源部180に送信してもよい。また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136への第1駆動電圧の供給を停止する制御信号を第1電源部180に送信してよい。
【0056】
また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加して第1圧電膜136を伸ばし、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜138を縮めてもよい。制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136および第2圧電膜138への駆動電圧の供給を停止してよい。
【0057】
また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136を縮めてアクチュエータ130の戻りを付勢してもよい。同様に、制御部190は、スイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138を伸ばしてアクチュエータ130の戻りを付勢してもよい。
【0058】
制御部190は、第1駆動電圧および第2駆動電圧として、予め定められた値を、対応する第1圧電膜136および第2圧電膜138にそれぞれ供給してよい。制御部190は、電子回路等のハードウェアであってよく、これに代えて、プログラム等により動作するソフトウェアであってもよい。
【0059】
キャビティ部310は、基体下部110上に設けられ、スイッチ装置100の側壁の一部としてアクチュエータ130を収容するように四方を覆う。キャビティ部310は、基体下部110と略同一の材質で形成されてよい。
【0060】
台座部320は、キャビティ部310上に設けられ、一部がアクチュエータ130の一端を固定してアクチュエータ130の固定端となる。台座部320とキャビティ部310とが接合されることにより、第1接点122と第2接点134との間の距離は、アクチュエータ130の最大変位量と同等もしくはそれ以下となる。即ち、台座部320と基体下部110との間の距離となるキャビティ部310の高さは、第1接点122と第2接点134との間の距離を調節する。
【0061】
ここで、アクチュエータ130の最大変位量とは、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138に印加できる最大の駆動電圧を印加した場合における、アクチュエータ130の変位量を意味してよい。台座部320は、半導体材料をエッチングすることで形成されてよい。台座部320は、一例として、シリコン基板から形成される。この場合、台座部320は、キャビティ部310と陽極接合によって接合されてよい。
【0062】
このように、アクチュエータ130は、長さ方向Lの一方の端部で台座部320に支持される。第1圧電膜136または第2圧電膜138に電圧を印加すると、アクチュエータ130において台座部320に支持されていない第2接点部132側の端部は、厚さ方向に屈曲する(図中、下向きに変位する)、若しくは、反り返る(図中、上向きに変位する)ことができる。
【0063】
基体上部330は、台座部320上に設けられ、基体下部110、キャビティ部310、および台座部320で形成されるスイッチ装置100のパッケージの蓋部となる。基体上部330は、ガラス等で形成される基板でよい。この場合、基体上部330は、台座部320と陽極接合によって接合されてよい。
【0064】
本実施例において、台座部320は、アクチュエータ130を基体上部330に固定することを説明したが、これに代えて、アクチュエータ130は、基体下部110またはキャビティ部310に固定されてもよい。
【0065】
以上の本実施形態に係るスイッチ装置100によれば、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一の第1圧電膜136および第2圧電膜138を備えるので、第1圧電膜136がそりを生じさせる応力と、第2圧電膜138がそりを抑える応力とを、略同一にさせることができる。また、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面に対し略対称に複数の膜を有しているので、複数の膜によって生じるアクチュエータ130がそる方向に働く残留応力および熱応力等と、そりを抑える方向に働く残留応力および熱応力等とを、略同一にさせてアクチュエータ130のそりを抑えることができる。
【0066】
このように、アクチュエータ130は、熱応力によるそりを抑えることができるので、様々な環境温度においてもスイッチング動作を実行することができる。また、アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138のそれぞれの上面に第1導電性酸化物膜および第2導電性酸化物膜を有するので、圧電膜を長寿命化することができる。
【0067】
ここで、本実施例において、アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138のそれぞれの上面に第1導電性酸化物膜および第2導電性酸化物膜を有することを説明した。これに代えて、アクチュエータ130は、更に多層構造に形成できる場合は、第1圧電膜136および第2圧電膜138のそれぞれの下面にも導電性酸化物膜を有してよい。
【0068】
また、本実施例において、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一の第1圧電膜136および第2圧電膜138を有することを説明した。これに代えて、第2圧電膜138の膜厚は、第1圧電膜136の膜厚よりも薄く形成されてよい。例えば、第1圧電膜136の側から第2圧電膜138の側へと複数の膜を積層してアクチュエータ130が形成される場合、第1圧電膜136には第2圧電膜138よりも多くの層が積層されるので、第1圧電膜136に生じる応力は、第2圧電膜138に生じる応力とは異なる場合がある。
【0069】
したがって、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面からの距離および厚さを略同一にして複数の材料を積層しても、材料毎に発生する応力のバランスが異なり、そりを生じさせる場合がある。また、アクチュエータ130は、積層される各材料を、厚さ方向の中心面からの距離および厚さを略同一にして積層することができず、支持層150の上方および下方に発生する応力の絶対値が異なってそりを生じさせる場合もある。
【0070】
そこで、アクチュエータ130は、第1圧電膜136の膜厚と第2圧電膜の膜厚とを異ならせて、支持層150の上方および下方に発生する応力の絶対値を略同一にさせてそりを抑える。例えば、アクチュエータ130は、先に形成される第1圧電膜136の厚さに比べて、後に形成される第2圧電膜138の厚さを薄くする。
【0071】
ここで、第1圧電膜136および第2圧電膜138の厚さの比は、アクチュエータ130に発生するそりの量に応じて決められてよい。第1圧電膜136および第2圧電膜138の厚さの比は、1:1から1:0.5の範囲で決められてよい。より望ましくは、厚さの比を、1:1から1:0.8の範囲で決めてよい。
【0072】
また、アクチュエータ130は、発生するそりの方向に応じて、先に形成される第1圧電膜136の厚さに比べて、後に形成される第2圧電膜138の厚さを厚くしてもよい。以上のように、アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の厚さの比を調節して、支持層150の上方および下方に発生する応力の絶対値を略同一にするので、発生する応力を打ち消してそりを抑えることができる。
【0073】
本実施例において、第2接点部132は、突出部156上に設けられることを説明した。これに代えて、第2接点部132は、保護膜を介して第4電極層168の下方に設けられてよい。この場合、アクチュエータ130は、突出部156が無くてもよい。
【0074】
図3は、本実施形態に係るスイッチ装置100を形成する製造方法の一例を示す。また、図4から図16は、本実施形態に係るスイッチ装置100が形成される過程におけるスイッチ装置100の断面を示す。
【0075】
まず、台座部320となる基板上に、絶縁材料で第1保護膜152を形成する(S300)。本実施例において、基板はシリコン基板であり、第1保護膜152は酸化シリコンである。第1保護膜152は、CVD法で形成されてよい。一例として、酸化シリコンの第1保護膜152は、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を原料として、酸素またはオゾンと反応することで形成される。
【0076】
次に、第1保護膜152を第1アニールする(S304)。第1保護膜152は、第1アニールによって、基板上に形成される。図4は、本実施形態に係る台座部320となる基板上に第1保護膜152を形成した段階の断面を示す。
【0077】
次に、第1保護膜152上に第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を形成する(S310)。第1電極層162は、第1保護膜152上に導電性材料で成膜される。第1圧電膜136は、第1電極層162上にゾルゲル材料を塗布してアニールするゾルゲル法によって、第1電極層162上に成膜される。ここで、ゾルゲル材料は、PZTゾルゲル液を含んでよい。
【0078】
本実施例において、第1圧電膜136は、PZTゾルゲル液を塗布して形成されるPZT膜である。第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136上に導電性酸化物で成膜され、第2電極層164は、第1導電性酸化物膜210上に導電性材料で成膜される。第1導電性酸化物膜210は、Ir系酸化物(例えばIrO)、Ru系酸化物(例えばRuO、SRO)、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分とする導電性酸化物膜が成膜されて形成される。
【0079】
第1電極層162および第2電極層164を形成する導電性材料は、白金(Pt)を含んでよい。第1電極層162および第2電極層164は、蒸着またはスパッタによって形成されてよい。図5は、本実施形態に係る第1保護膜152上に第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を形成した段階の断面を示す。ここで、第2電極層164は、フォトリソグラフィによって、第1圧電膜136上に予め定められた形状で形成されてよい。
【0080】
ここで、第1電極層162は、予め定められた成長温度で成膜されて、第1電極層162の電極材料を<111>方向に優先配向させてよい。これによって、第1電極層162上に成膜される第1圧電膜136は、第1電極層162の配向に応じて<111>方向に優先配向する。
【0081】
本実施例で用いたPZT等の圧電膜は、全ての結晶の結晶軸を<001>方向に配向させて形成させると、圧電性を最も高くすることができる。しかしながら、このような圧電膜は、結晶軸を<001>方向に配向させるように成長温度を調節しても、一部の結晶の結晶軸が<010>または<100>方向になってしまう。この一部の結晶は、圧電性を示さないので、圧電膜全体の圧電性を高くすることを困難にさせていた。
【0082】
これに対して、本実施例の圧電膜は、結晶軸を<111>方向に配向させて形成させるので、圧電性を示さない、<010>または<100>方向に配向することを防ぐことができる。これによって、第1圧電膜136は、成長温度を調節して<001>方向に配向させるように形成させた圧電膜に比べて、安定して再現良く高い圧電性を得ることができる。ここで、結晶軸を<111>方向に配向させる目的で、PZTゾルゲル液を塗布する前に、予めPT液を塗布してもよい。
【0083】
次に、第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を加工する(S320)。第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164は、後に加工して形成される支持層150の表面積よりも小さくなるように、表面形状をエッチング等によって加工される。ここで、第1保護膜152は、エッチングストップ層として用いられてよい。ここで、第2電極層164が予め定められた形状で形成されている場合は、第1電極層162、第1圧電膜136、および第1導電性酸化物膜210を加工して、第2電極層164と略同一の形状に加工してもよい。
【0084】
図6は、本実施形態に係る第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を加工した段階の断面を示す。ここで、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164は、後に配線部114と接続される第1電極層162の接続部が基板の上面方向に露出するように加工されてよい。
【0085】
次に、第2電極層164上に支持層150を形成する(S330)。支持層150は、第2電極層164上に絶縁材料で成膜されてよい。本実施例において、支持層150は、酸化シリコンであり、第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を覆って形成される。支持層150は、第1保護膜152と同様にCVD法で形成されてよい。
【0086】
次に、支持層150をアニールする(S334)。支持層150は、支持層アニールによって、第2電極層164上に形成される。支持層150および第1保護膜152は、同一の材料で形成されるので、両者で形成される酸化シリコン層の内部に、第1電極層162、第1圧電膜136、および第2電極層164が配置されるように形成される。
【0087】
ここで、第1アニールおよび支持層アニールは、第1圧電膜136を形成するアニールと比較して長いアニール時間で、かつ、小さい温度勾配でアニールする。例えば、第1アニールおよび支持層アニールは、10℃/秒よりも小さい温度勾配で、1分以上のアニール時間でアニールする。第1アニールおよび支持層アニールは、望ましくは、1℃/秒よりも小さい温度勾配で、10分以上のアニール時間でアニールする。
【0088】
第1アニールおよび支持層アニールは、より望ましくは、0.33℃/秒よりも小さい温度勾配で、30分以上のアニール時間でアニールする。これによって、第1保護膜152および支持層150は、例えば製造過程等で混入される炭素(C)、酸素(O)、および/または水素(H)といった不純物等を外部へ放出して、純度の高い絶縁膜を形成することができる。
【0089】
次に、支持層150上に、第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を形成する(S340)。第3電極層166は、支持層150上に導電性材料で成膜される。第2圧電膜138は、第3電極層166上にゾルゲル材料を塗布してアニールすることにより成膜される。第2導電性酸化物膜220は、第2圧電膜138上に導電性酸化物で成膜され、第4電極層168は、第2導電性酸化物膜220上に導電性材料で成膜される。第2導電性酸化物膜220は、Ir系酸化物(例えばIrO)、Ru系酸化物(例えばRuO、SRO)、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分とする導電性酸化物膜が成膜されて形成される。
【0090】
第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168は、第1保護膜152上に第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を形成するステップS310と同様に形成されてよい。図7は、本実施形態に係る第2電極層164上に支持層150、第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を形成した段階の断面を示す。ここで、第4電極層168は、フォトリソグラフィによって、第2圧電膜138上に予め定められた形状で形成されてよい。
【0091】
ここで、第3電極層166は、予め定められた成長温度で成膜されて、第3電極層166の電極材料が<111>方向に優先配向してよい。これによって、第2圧電膜138は、第1圧電膜136と同様に、第3電極層の配向に応じて<111>方向に優先配向する。これによって、第2圧電膜138は、実際に<001>方向に配向させるように形成させた圧電膜よりも高い圧電性を得ることができる。
【0092】
次に、第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を加工する(S350)。第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168は、第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を加工するステップS320と同様に加工されてよい。図8は、本実施形態に係る第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を加工した段階の断面を示す。
【0093】
ここで、第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168は、後に配線部114と接続される第1電極層162、第2電極層164、および第3電極層166が有するそれぞれの接続部が基板の上面方向に露出するように加工されてよい。
【0094】
図9は、本実施形態に係る第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を加工した段階の上面図を示す。本図において、複数の電極層および圧電膜で形成された1つのアクチュエータ130が、基板上に形成されている例を示す。ここで、製造に用いる基板の直径は、2インチ以上の基板を用いてよく、この場合、複数のアクチュエータ130が当該基板上に形成される。本段階において、第1電極層162、第2電極層164、および第3電極層166の一部は、上方から露出するように形成され、対応する配線部114とそれぞれ接続される接続部となる。
【0095】
次に、第4電極層168上に絶縁材料で第2保護膜154を形成する(S360)。本実施例において、第2保護膜154は、酸化シリコンであり、支持層150と共に、第4電極層168、第2導電性酸化物膜220、第2圧電膜138、および第3電極層166を覆って形成される。第2保護膜154は、支持層150および第1保護膜152と同様に、CVD法で形成されてよい。
【0096】
次に、第2保護膜154を第2アニールする(S364)。第2保護膜154は、第2アニールによって、第4電極層168上に形成される。第2保護膜154および支持層150は、同一の材料で形成されるので、両者で形成される酸化シリコン層の内部に、第4電極層168、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第3電極層166が配置されるように形成される。図10は、本実施形態に係る第4電極層168上に第2保護膜154を形成した段階の断面を示す。
【0097】
ここで、第2アニールは、第1圧電膜136または第2圧電膜138を形成するアニールと比較して長いアニール時間で、かつ、小さい温度勾配でアニールしてよい。これによって、第2保護膜154は、第1保護膜152および支持層150と同様に、製造過程等で混入される不純物等を外部へ放出して、純度の高い絶縁膜を形成することができる。
【0098】
次に、支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154を加工する(S370)。ここで、支持層150、第2保護膜154、および第1保護膜152は、第1圧電膜136、第2圧電膜138、第1電極層162、第1導電性酸化物膜210、第2電極層164、第3電極層166、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を覆ったまま、アクチュエータ130の形状に加工される。
【0099】
また、支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154は、アクチュエータ130の可動端である先端部において、第2圧電膜138および第1圧電膜136が設けられていない突出部156を残して形成される。支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154は、エッチングによって形成されてよい。
【0100】
次に、突出部156上に、第2接点部132を形成する(S380)。図11は、本実施形態に係る支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154を加工して、第2接点部132を形成した段階の断面を示す。ここで、支持層150および第2保護膜154は、各電極の接続部が露出するように形成される。
【0101】
図12は、本実施形態に係る支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154を加工して、第2接点部132を形成した段階の上面図を示す。本段階において、支持層150、第1保護膜152、および第2保護膜154は、アクチュエータ130の表面形状に加工されているので、基板上の一部は、台座部320となる基板が露出している。また、第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166、および第4電極層168の接続部は、上方から露出する。
【0102】
次に、基板を加工して、台座部320を形成する(S390)。ここで、台座部320は、アクチュエータ130が形成される面と反対の他方の面から、半導体基板の一部がエッチングによって除去されて形成される。ここで、台座部320は、第1保護膜152をエッチングストップ層としてエッチングされてよい。本段階において、アクチュエータ130の一端は基板と分離されて可動端となり、台座部320に固定された他端を固定端として自立する。図13は、本実施形態に係る基板を加工して、台座部320を形成した段階の断面を示す。
【0103】
図14は、本実施形態に係る基板を加工して、台座部320を形成した段階の台座部320の下面図を示す。即ち、本図は、台座部320側から見たアクチュエータ130を示す。アクチュエータ130の台座部320側は、第1保護膜152が露出する。ここで、台座部320は、開口部322が設けられてよい。開口部322は、アクチュエータ130と電気信号をやりとりする電気配線の接続作業に用いられてよい。
【0104】
次に、台座部320は、基体下部110、キャビティ部310、および基体上部330と、それぞれ接続される。本実施例の基体下部110、キャビティ部310、および基体上部330は、それぞれガラス基板で形成されてよい。キャビティ部310および基体上部330は、電圧を印加しつつ加熱して接合する陽極接合によって台座部320とそれぞれ接合されてよい。
【0105】
図15は、本実施形態に係る台座部320と、基体下部110およびキャビティ部310とを接続した段階の断面を示す。第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166、および第4電極層168の接続部は、基体下部110に設けられた配線部114とそれぞれ接続されてよい。ここで、接続部と配線部114とは、圧着によって接続されてよい。また、当該接続の作業は、台座部320の開口部322から実行してよい。
【0106】
図16は、本実施形態に係る台座部320と、基体上部330とを接続した段階の断面を示す。このようにして形成したスイッチ装置100は、基体の外部に設けられた制御部190からの制御信号に応じて、アクチュエータ130が駆動され、第1接点122と第2接点134とが接触または離間する。
【0107】
以上のように、本実施形態によるスイッチ装置100のアクチュエータ130は、台座部320となる基板上に、第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を有する第1圧電素子層が形成される。また、アクチュエータ130は、第1圧電素子層上に絶縁体の支持層150が形成され、当該支持層150上に、第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を有する第2圧電素子層が形成される。また、アクチュエータ130は、第1圧電素子層、支持層150、および第2圧電素子層を有する基板の一部を除去して形成されるバイモルフ型アクチュエータである。
【0108】
これによって、スイッチ装置100は、第1電極層162上に第1圧電膜136を第1電極層162に応じた配向で形成させつつ、第1圧電膜136上に第1導電性酸化物膜210を形成して第1圧電膜136を長寿命化させることができる。また、スイッチ装置100は、第3電極層166上に第2圧電膜138を第3電極層166に応じた配向で形成させつつ、第2圧電膜138上に第2導電性酸化物膜220を形成して第2圧電膜138を長寿命化させることができる。
【0109】
したがって、第1圧電膜136と第2圧電膜138の少なくとも一方は、長寿命で、かつ、ペロブスカイト構造を有する菱面体晶の強誘電体薄膜を形成することができる。即ち、本実施形態によるスイッチ装置100は、例えば、数十μm程度の可動範囲のアクチュエータを備えることができる。また、第1圧電膜136と第2圧電膜138の少なくとも一方は、第1電極層162および第3電極層166のうち隣接する層と格子定数が整合し、当該膜に対して面方向において略同一の平均粒子径で接することができる。
【0110】
また、本実施形態によるスイッチ装置100は、第1圧電膜136、第2圧電膜138、第1電極層162、第1導電性酸化物膜210、第2電極層164、第3電極層166、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を、支持層150と略同一の弾性および剛性を有する第1保護膜152および第2保護膜154で包み込んで形成されるアクチュエータを備えることができる。これによって、第1保護膜152、第2保護膜154、および支持層150は、アクチュエータ130を製造する過程またはアクチュエータ130を湾曲させる場合において、各層の割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができる。
【0111】
また、第1保護膜152および第2保護膜154は、剛性を有するので、アクチュエータ130の剛性を高めることができる。これによって、アクチュエータ130は、接点同士の凝着を防ぐことができる。
【0112】
また、第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と略同一の材料で形成されるので、支持層150と略同一の剛性および弾性を持つことができる。したがって、第1保護膜152および第2保護膜154は、アクチュエータ130が変位した場合に、アクチュエータ130内部の剛性および弾性の不一致に起因する応力の発生を抑えることができる。
【0113】
また、複数の膜が積層されたことによって生じるアクチュエータ130がそる方向に働く残留応力および熱応力等と、そりを抑える方向に働く残留応力および熱応力等とを、略同一にさせて打ち消し合わせることによりアクチュエータ130のそりを抑えることができる。また、第1保護膜152、第2保護膜154、および支持層150は、第2圧電膜138、第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166、および第4電極層168を外部へ露出させないので、これらの層を酸化等から防ぐこともできる。
【0114】
以上の本実施形態のスイッチ装置100は、第1圧電膜136および第2圧電膜138を有するアクチュエータ130を備えることを説明したが、これに代えて、3以上の圧電膜を積層させたアクチュエータ130を備えてもよい。この場合、アクチュエータ130は、本例の第1圧電膜136上および/または第2圧電膜138上に、圧電膜と電極を多層に積層させてよい。
【0115】
これに代えて、スイッチ装置100は、第2圧電膜138または第1圧電膜136のどちらか一方の圧電膜を有するアクチュエータ130を備えてもよい。ここで、アクチュエータ130が第2圧電膜138を有する場合、台座部320となる基板上に、第1保護膜152を形成する代わりに、支持層150を形成してよい。支持層150は、第1保護膜152と同様の絶縁材料を用いているので、台座部をエッチングする場合にエッチングストップ層として用いることができる。
【0116】
以上の本実施形態のスイッチ装置100は、第1保護膜152および第2保護膜154を有するアクチュエータ130を備えることを説明した。これに代えて、アクチュエータ130は、保護膜がなくても各層の割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない場合は、第1保護膜152および第2保護膜154が無くてもよい。
【0117】
図17は、本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。試験装置410は、アナログ回路、デジタル回路、アナログ/デジタル混載回路、メモリ、およびシステム・オン・チップ(SOC)等の少なくとも1つの被試験デバイス400を試験する。試験装置410は、被試験デバイス400を試験するための試験パターンに基づく試験信号を被試験デバイス400に入力して、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する出力信号に基づいて被試験デバイス400の良否を判定する。
【0118】
試験装置410は、試験部420と、信号入出力部430と、制御装置440とを備える。試験部420は、被試験デバイス400との間で電気信号を授受して被試験デバイス400を試験する。試験部420は、試験信号発生部423と、期待値比較部426とを有する。
【0119】
試験信号発生部423は、信号入出力部430を介して1または複数の被試験デバイス400に接続されて、被試験デバイス400へ供給する複数の試験信号を発生する。試験信号発生部423は、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する応答信号の期待値を生成してよい。
【0120】
期待値比較部426は、信号入出力部430から受信した被試験デバイス400の応答信号に含まれるデータ値と試験信号発生部423が生成する期待値とを比較する。期待値比較部426は、比較結果に基づき、被試験デバイス400の良否を判定する。
【0121】
信号入出力部430は、試験すべき被試験デバイス400と試験部420との間を電気的に接続して、試験信号発生部423が発生した試験信号を当該被試験デバイス400に送信する。また、信号入出力部430は、試験信号に応じて当該被試験デバイス400が出力する応答信号を受信する。信号入出力部430は、受信した被試験デバイス400の応答信号を期待値比較部426へと送信する。信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400を搭載するパフォーマンスボードであってよい。信号入出力部430は、スイッチ装置100を有する。
【0122】
スイッチ装置100は、試験部420および被試験デバイス400の間に設けられ、試験部420および被試験デバイス400の間を電気的に接続または切断する。試験装置410は、本実施形態に係るスイッチ装置100によって電気的な接続または切断を実行してよい。
【0123】
本例において、信号入出力部430は1つの被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、1つの被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインにそれぞれ1つ設けられる例を説明した。これに代えて信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、複数の被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインのそれぞれに1つ設けられてよい。また、信号入出力部430から1つの被試験デバイス400へ接続される信号入出力ラインが1つの場合、1つの入出力ラインに1つのスイッチ装置100が設けられてよい。
【0124】
制御装置440は、試験装置410の試験を実行すべく、試験部420および信号入出力部430に制御信号を送信する。制御装置440は、試験プログラムに応じて、試験部420に、試験信号の発生または応答信号と期待値との比較等を実行させる制御信号を送信する。また、制御装置440は、試験プログラムに応じて、接続すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の接続の指示、および切断すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の切断の指示等を、信号入出力部430に送信する。
【0125】
以上の本実施形態に係る試験装置410は、剛性を高めつつ、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができるアクチュエータ130を備えたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、電圧制御による低消費電力のスイッチング制御で、かつ、長寿命化させたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、接点間の凝着を低減させたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。
【0126】
図18は、本実施形態に係る伝送路切替装置500の構成例を示す。伝送路切替装置500は、入力端と複数の出力端のそれぞれの間に各々接続された複数のスイッチ装置100を備える。本実施例の伝送路切替装置500は、入力端Aと出力端BおよびCのそれぞれの間に各々接続された複数のスイッチ装置100aおよびスイッチ装置100bを備える。
【0127】
伝送路切替装置500は、スイッチ装置100aをON状態にし、かつ、スイッチ装置100bをOFF状態にすることで、入力端Aと出力端Bとを電気的に接続し、かつ、入力端Aと出力端Cとを電気的に切断する。また、伝送路切替装置500は、スイッチ装置100aをOFF状態にし、かつ、スイッチ装置100bをON状態にすることで、入力端Aと出力端Bおよび出力端Cとを電気的に切断し、かつ、出力端Bと出力端Cとを電気的に接続する。
【0128】
このように、伝送路切替装置500は、複数のスイッチ装置をそれぞれON/OFFすることで、入力端と複数の出力端との伝送路を切り換える。伝送路切替装置500は、複数のスイッチ装置が1つのパッケージ等に密封されて収容された装置であってよい。
【0129】
図19は、本実施形態に係るループバック試験する試験装置の構成例を被試験デバイス400と共に示す。本実施形態のループバック試験する試験装置は、図17で説明した試験装置410と、図18で説明した伝送路切替装置500の組み合わせで構成される。そこで、図17、18に示された本実施形態に係る試験装置410および伝送路切替装置500の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
【0130】
本試験装置は、試験装置410からの試験信号を被試験デバイス400に供給する場合に、伝送路切替装置500のスイッチ装置100aをON状態にし、かつ、スイッチ装置100bをOFF状態にする。また、本試験装置は、被試験デバイス400から出力される信号を当該被試験デバイス400にループバックする場合に、伝送路切替装置500のスイッチ装置100aをOFF状態にし、かつ、スイッチ装置100bをON状態にする。
【0131】
これによって、本試験装置は、試験装置410から被試験デバイス400を試験するための試験信号を被試験デバイス400に入力させる伝送路と、被試験デバイス400からの信号をループバックさせて当該被試験デバイス400に入力させる伝送路とを切り換えることができる。本実施形態に係るループバック試験する試験装置は、1つの伝送路切替装置500を備える例を説明したが、これに代えて、2以上の伝送路切替装置500を備え、試験装置410と被試験デバイス400との複数の伝送路を切り換えることによって、試験信号による被試験デバイス400の試験とループバック試験とを切り換えてよい。
【0132】
以上の本実施形態に係るループバック試験する試験装置によれば、剛性を高めつつ、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができるアクチュエータ130を備えたスイッチ装置100を用いて試験信号による試験とループバック試験とを切り換えることができる。また、本試験装置は、電圧制御による低消費電力のスイッチング制御で、かつ、長寿命化させたスイッチ装置100を用いて2つの試験を切り換えることができる。また、本試験装置は、接点間の凝着を低減させたスイッチ装置100を用いて2つの試験を切り換えることができる。
【0133】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0134】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0135】
100 スイッチ装置、110 基体下部、112 ビア、114 配線部、116 グランド線、118 グランド線、120 第1信号線、122 第1接点、124 第2信号線、130 アクチュエータ、132 第2接点部、134 第2接点、136 第1圧電膜、138 第2圧電膜、150 支持層、152 第1保護膜、154 第2保護膜、156 突出部、162 第1電極層、164 第2電極層、166 第3電極層、168 第4電極層、180 第1電源部、182 第2電源部、184 基準電圧、190 制御部、210 第1導電性酸化物膜、220 第2導電性酸化物膜、310 キャビティ部、320 台座部、322 開口部、330 基体上部、400 被試験デバイス、410 試験装置、420 試験部、423 試験信号発生部、426 期待値比較部、430 信号入出力部、440 制御装置、500 伝送路切替装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1圧電素子層を形成する第1圧電素子層形成段階と、
前記第1圧電素子層上に絶縁体の支持層を形成する支持層形成段階と、
前記支持層上に第2圧電素子層を形成する第2圧電素子層形成段階と、
前記基板の一部を除去して、前記第1圧電素子層、前記支持層、および前記第2圧電素子層を有するアクチュエータを形成する除去段階と、
を備えるバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項2】
前記第1圧電素子層形成段階は、
前記基板上に導電性材料で第1電極層を成膜する第1電極層成膜段階と、
前記第1電極層上にゾルゲル材料を塗布してアニールすることにより、前記第1電極層上に第1圧電膜を成膜する第1圧電膜成膜段階と、
前記第1圧電膜上に導電性材料で第2電極層を成膜する第2電極層成膜段階と、
を有する請求項1に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項3】
前記第2電極層成膜段階は、前記第1圧電膜と前記第2電極層との間に第1導電性酸化物膜を成膜する第1酸化物膜成膜段階を含む請求項2に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項4】
前記第2圧電素子層形成段階は、
前記支持層上に導電性材料で第3電極層を成膜する第3電極層成膜段階と、
前記第3電極層上にゾルゲル材料を塗布してアニールすることにより、前記第3電極層上に第2圧電膜を成膜する第2圧電膜成膜段階と、
前記第2圧電膜上に導電性材料で第4電極層を成膜する第4電極層成膜段階と、
を有する請求項2または3に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項5】
第4電極層成膜段階は、前記第2圧電膜と前記第4電極層との間に第2導電性酸化物膜を成膜する第2酸化物膜成膜段階を含む請求項4に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項6】
前記第1電極層成膜段階は、予め定められた成長温度で前記第1電極層を成膜して、前記第1電極層を予め定められた方向に優先配向させ、
前記第1圧電膜成膜段階は、前記第1圧電膜を前記第1電極層の前記優先配向に応じて前記予め定められた方向に配向させ、
前記第3電極層成膜段階は、予め定められた成長温度で前記第3電極層を成膜して、前記第3電極層を予め定められた方向に優先配向させ、
前記第2圧電膜成膜段階は、前記第3電極層上に成膜される前記第2圧電膜を、前記第3電極層の前記優先配向に応じて前記予め定められた方向に配向させる
請求項4または5に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項7】
前記支持層形成段階は、前記第2電極層上に絶縁材料で前記支持層を成膜する支持層成膜段階と、成膜した前記支持層をアニールする支持層アニール段階とを含む請求項4から6のいずれか1項に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項8】
前記第1圧電素子層形成段階は、前記基板と前記第1電極層との間に絶縁材料で第1保護膜を成膜する第1保護膜成膜段階と、前記第1保護膜をアニールする第1アニール段階とを更に含み、
前記第2圧電素子層形成段階は、前記第4電極層上に絶縁材料で第2保護膜を成膜する第2保護膜成膜段階と、前記第2保護膜をアニールする第2アニール段階とを更に備える
請求項7に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記支持層アニール段階、前記第1アニール段階、および前記第2アニール段階は、前記第1圧電膜成膜段階のアニールのアニール時間以上のアニール時間で、かつ、前記第1圧電膜成膜段階のアニールの温度勾配以下の温度勾配でアニールする請求項8に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記絶縁材料は、SiOまたはSiNを主成分とする請求項7から9のいずれか1項に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記ゾルゲル材料は、PZTゾルゲル液を含む請求項3から10のいずれか1項に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項12】
前記導電性酸化物膜は、Ir系酸化物、Ru系酸化物、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分とする請求項11に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法。
【請求項13】
第1接点が設けられた接点部と、
請求項1から12のいずれか1項に記載のバイモルフ型アクチュエータの製造方法で製造され、第2接点が更に設けられ、前記第2接点を移動させて前記第1接点と接触または離間させるアクチュエータと、
を備えるスイッチ装置。
【請求項14】
入力端と複数の出力端のそれぞれの間に各々接続された複数の請求項13に記載のスイッチ装置を備える伝送路切替装置。
【請求項15】
被試験デバイスをループバック試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部からの信号を前記被試験デバイスに供給するか、前記被試験デバイスからの信号を前記被試験デバイスにループバックさせるかを切り換える請求項14に記載の伝送路切替装置と、
を備える試験装置。
【請求項16】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部および前記被試験デバイスの間を電気的に接続または切断する請求項13に記載のスイッチ装置と、
を備える試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−26608(P2013−26608A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163277(P2011−163277)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】