説明

アクチュエータ

【課題】電力を供給するための電源ラインの敷設を不要とし、レイアウトの変更に柔軟に対応できるようにする。
【解決手段】アクチュエータ3に、受電用アンテナ3−12と、整流部3−8と、蓄電部3−9を設ける。空調制御装置1から送られてくる周波数f1の電磁波を受電用アンテナ3−12で受信し、この電磁波が有するエネルギーを整流部3−8で直流電力に変換して取り出し、その取り出した直流電力を蓄電部3−9に蓄える。この蓄電部3−9に蓄えられた直流電力によってアクチュエータ3での必要電力を賄う。なお、受電用アンテナ3−12を省略し、データの送受信用アンテナ3−11を受電用アンテナと兼用させるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダンパやバルブの開度などを制御するアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビル等の空調制御システムは、温度、湿度等の環境情報を検出するセンサ、ダクト等の吹き出し口における開口部に設けられたダンパの開度を制御するアクチュエータ、センサが検出した環境情報並びにユーザからの操作指令を受けてアクチュエータの駆動制御を行う空調制御装置などを備えて構成される。
【0003】
この空調制御システムにおいて、空調制御装置とアクチュエータとはケーブルを介して接続され、このケーブルを通して空調制御装置からアクチュエータへの制御データが送られる。また、アクチュエータには、外部電源が接続され、この外部電源からの電力がアクチュエータへ供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実開平5−67877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した空調制御システムでは、アクチュエータに対して電力を供給するための電源ラインを敷設しなければならず、レイアウト変更が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電力を供給するための電源ラインの敷設を不要とし、レイアウトの変更に柔軟に対応することができるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために本発明は、アクチュエータに、所定の周波数の波動を受信する第1の受波部と、この第1の受波部によって受信された波動を整流して直流電力を取り出す整流部と、この整流部によって取り出された直流電力を蓄える蓄電部と、この蓄電部に蓄えられた直流電力の供給を受けて駆動される駆動部とを設けたものである。
この発明によれば、所定の周波数の波動が第1の受波部で受信され、この第1の受波部によって受信された波動が整流部で整流されて直流電力が取り出され、この取り出された直流電力が蓄電部に蓄えられ、この蓄電部に蓄えられた直流電力の供給を受けて駆動部が駆動される。
【0008】
本発明では、駆動部に対する制御データを搬送する波動を第1の受波部が受信する所定の周波数(f1)の波動とするようにしてもよいし、第1の受波部とは別に、駆動部に対する制御データを搬送する所定の周波数(f1)とは異なる周波数(f2(f1≠f2))の波動を受信する第2の受波部を設けるようにしてもよい。第1の受波部が受信する所定の周波数の波動を駆動部に対する制御データを搬送する波動とすると、第1の受波部が受電用の受波部と制御データの受信用の受波部とを兼ね、その構成を簡略化することができる。また、この場合、第1の受波部を外部へ送信する送信データの送波部を兼ねるものとしたり、第2の受波部を外部へ送信する送信データの送波部を兼ねるものとしたりしてもよい。また、本発明において、波動の概念には、電磁波(電波)の他、光や超音波なども含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクチュエータによれば、所定の周波数の波動が第1の受波部で受信され、この第1の受波部によって受信された波動が整流部で整流されて直流電力が取り出され、この取り出された直流電力が蓄電部に蓄えられ、この蓄電部に蓄えられた直流電力の供給を受けて駆動部が駆動されるので、電力を供給するための電源ラインの敷設が不要となり、レイアウトの変更に柔軟に対応することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るアクチュエータを用いた空調制御システムの一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。同図において、1は空調制御装置、2は金属製の空調ダクト、3は本発明に係るアクチュエータである。
【0011】
空調制御装置1は、制御部1−1と、送受信部1−2と、電力送信部1−3と、送受信部1−2に対して設けられた送受信用アンテナ1−4と、電力送信部1−3に対して設けられた送電用アンテナ1−5とを備えている。送受信用アンテナ1−4および送電用アンテナ1−5は空調ダクト2内に突出して設けられている。この空調制御装置1に対しては外部電源4が接続されている。
【0012】
空調制御装置1において、電力送信部1−3は、外部電源4からの電力の供給を受けて動作し、送電用アンテナ1−5から、第1の周波数f1(例えば、800MHz帯)の電磁波を送信する。この例において、電力送信部1−3は、第1の周波数f1の電磁波として、数W〜数十W程度の電磁波を短周期で定期的に送信する。
【0013】
空調制御装置1において、制御部1−1は、外部電源4からの電力の供給を受けて動作し、送受信部1−2を介して送受信用アンテナ1−4から、アクチュエータ3への制御データ(後述する駆動部に対する制御データ)を第1の周波数f1とは異なる第2の周波数f2(例えば、2.4GHz帯)の電磁波に載せて送信する。
【0014】
アクチュエータ3は、制御部3−1と、送信部3−2と、受信部3−3と、ドライバ部3−4と、モータ3−5と、減速部3−6と、位置検出部3−7と、整流部3−8と、蓄電部3−9と、安定化電源部3−10と、送信部3−2および受信部3−3に対して設けられた送受信用アンテナ(第2の受波部)3−11と、整流部3−8に対して設けられた受電用アンテナ(第1の受波部)3−12とを備えている。送受信用アンテナ3−11および受電用アンテナ3−12は空調ダクト2内に突出して設けられている。
【0015】
なお、アクチュエータ3において、受電用アンテナ3−12が本発明で言う第1の受波部に対応し、送受信用アンテナ3−11が本発明で言う第2の受波部に対応し、ドライバ部3−4,モータ3−5および減速部3−6を含む構成が本発明で言う駆動部に対応する。図1では、ドライバ部3−4,モータ3−5および減速部3−6を含む構成を点線で囲み、駆動部MDとして示している。
【0016】
アクチュエータ3において、受電用アンテナ3−12は、空調制御装置1の送電用アンテナ1−5から送り出された第1の周波数f1の電磁波を受信する。この受電用アンテナ3−12が受信した第1の周波数f1の電磁波は整流部3−8へ送られる。整流部3−8は、受電用アンテナ3−12が受信した第1の周波数f1の電磁波が有するエネルギーを整流し、直流電力として取り出す。この整流部3−8によって取り出された直流電力は蓄電部3−9に蓄えられる。
【0017】
蓄電部3−9に蓄えられた直流電力は安定化電源部3−10へ与えられる。安定化電源部3−10は、蓄電部3−9に蓄えられた直流電力より安定した電源電圧Vccを作り、この電源電圧Vccを制御部3−1,送信部3−2,受信部3−3,ドライバ部3−4およびモータ3−5へ与える。
【0018】
なお、整流部3−8としては、例えば、ダイオード等の電力用半導体デバイスを用いたブリッジ整流回路や半波整流回路等の整流回路を用いるとよい。また、蓄電部3−9としては、例えば、電解コンデンサ、電気2重層コンデンサや2次電池等の充放電可能なデバイスを用いるとよい。
【0019】
アクチュエータ3において、送受信用アンテナ3−11は、空調制御装置1の送受信用アンテナ1−4から送り出された駆動部MDに対する制御データを搬送する第2の周波数f2の電磁波を受信する。この送受信用アンテナ1−4が受信した第2の周波数f2の電磁波は受信部3−3に送られる。受信部3−3は、送受信用アンテナ1−4が受信した第2の周波数f2の電磁波より、その電磁波に載せて送られてくる駆動部MDに対する制御データを抽出し、その抽出した制御データを制御部3−1へ送る。
【0020】
制御部3−1は、受信部3−3からの駆動部MDに対する制御データに基づいて、ドライバ部3−4を介してモータ3−5を駆動する。モータ3−5の回転力は減速部3−6を介してダンパ100の駆動軸に伝達される。これによって、ダンパ100の開度が変化する。位置検出部3−7は、刻々と変化するそのダンパ100の開度を検出し、制御部3−1へフィードバックする。制御部3−1は、位置検出部3−7からフィードバックされてくるダンパ開度(実開度)と駆動部MDに対する制御データによって指示されるダンパ開度(設定開度)とが一致するように、モータ3−5の駆動を制御する。また、制御部3−1は、位置検出部3−7で検出されたダンパ開度を外部への送信データとして送信部3−2へ送り、送受信用アンテナ3−11を介し、周波数f2の電磁波に載せて空調制御装置1側に送信する。
【0021】
尚、上述した送受信用アンテナ1−4、送電用アンテナ1−5、送受信用アンテナ3−11および受電用アンテナ3−12は、それぞれのアンテナが送受信する周波数の1/2波長となるアンテナ長を有するダイポールアンテナを用いるとよい。しかしながら、各アンテナのアンテナ長およびアンテナの形式は、1/2波長ダイポールアンテナに限定されるものではなく、1波長ダイポールアンテナ、ホイップアンテナ、スリーブアンテナまたはループアンテナの他、後述する平面アンテナ、八木アンテナ等であってもかまわない。つまり、所定周波数の電磁波を空調ダクト2内に送り出し、受け取るものであればその形式等は限定されるものではない。
【0022】
或いは、特に図示しないが、送受信用アンテナ1−4から送受信用アンテナ3−11に向かう方向に対して、それぞれのアンテナの背後方向における所定の位置、および送電用アンテナ1−5から受電用アンテナ3−12に向かう方向に対して、それぞれのアンテナの背後方向における所定の位置にそれぞれ金属製の平板等で構成される反射器を設け、この反射器によって各アンテナから送出された電磁波を反射する構成をとるとよい。この反射器は、詳細は後述するが送受信用アンテナ1−4、送電用アンテナ1−5、送受信用アンテナ3−11および受電用アンテナ3−12に所定の指向特性を与える役割を担っている。
【0023】
例えば、送受信用アンテナ1−4から空調ダクト2内に放射される電波を直接波とし、この直接波の一部が上記反射器によって反射された電波を反射波とすれば、直接波と反射波が同位相で合成され送受信用アンテナ3−11の方向に放射される。同様に、送受信用アンテナ3−11も送受信用アンテナ1−4から送受信用アンテナ3−11に直接到達する直接波と、送受信用アンテナ3−11の背後の位置付けられた反射器によって反射された反射波とが送受信用アンテナ3−11で合成されて受信電力(受信電界強度)を高めることができる。送電用アンテナ1−5および受電用アンテナ3−12についても同様のことが言える。
【0024】
尚、送受信用アンテナ1−4とこの背後方向に位置付けられる反射器の距離または送受信用アンテナ3−11とこの背後方向に位置付けられた反射器との距離は、それぞれのアンテナで直接波と反射波が同位相で合成される場所に位置付ければよい。つまり、各アンテナ1−4,3−11と反射器との距離は、送受信される電磁波の波長をλとすれば、λ/4、3λ/4、5λ/4・・・(2n−1)λ/4(ただし、n≧0の整数)となるように位置付ければよい。送電用アンテナ1−5および受電用アンテナ3−12についても同様のことが言える。
【0025】
また、上記各アンテナの背後方向に位置付けられる反射器は、空調ダクト2内における空気抵抗を低くするため、反射器に到達する電磁波の波長λよりも細かい目をもつメッシュ状の金属板であることが好ましい。
【0026】
この空調制御システムにおいて、空調制御装置1は、送電用アンテナ1−5から第1の周波数f1(例えば、800MHz帯)の電磁波を短周期で定期的に空調ダクト2内へ送出する。この電磁波は、金属製の空調ダクト2の内壁面を反射しながら、或いは直接、アクチュエータ3の受電用アンテナ3−12に到達する。アクチュエータ3は、受電用アンテナ3−12が受けた第1の周波数f1の電磁波が有するエネルギーを整流部3−8で直流電力に変換して取り出し、その取り出した直流電力を蓄電部3−9に蓄える。この蓄電部3−9に蓄えられた直流電力によってアクチュエータ3での必要電力が賄われる。
【0027】
このようにして、本実施の形態では、アクチュエータ3への電力の供給が空調制御装置1より無線で行われるので、アクチュエータ3に対して電力を供給するための電源ラインを敷設する必要がなく、レイアウトの変更に柔軟に対応することができるようになる。また、この実施の形態では、空調制御装置1から金属製の空調ダクト2内を通してアクチュエータ2へ第1の周波数f1の電磁波を送るようにしているので、少ない漏洩電力で、すなわち高効率で、空調制御装置1からのアクチュエータ3への電力の伝送が行われるものとなる。
【0028】
尚、空調ダクト2が方形形状である場合、例えば300mm×300mmであるとき、その遮断周波数は500MHzであるから、800MHz帯および2.4GHz帯の電磁波は、空調ダクト2によって確実に伝送することができる。
【0029】
〔実施の形態2〕
図2はこの発明に係るアクチュエータを用いた空調制御システムの他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す図である。この実施形態2の実施の形態1と異なるところは、空調制御装置1の送電用アンテナ1−5と電力送信部1−3を省いた点、アクチュエータ3の受電用アンテナ3−12を省き、送受信用アンテナ(第1の受波部)3−13が受信する周波数f2の電磁波(駆動部MDに対する制御データを搬送する電磁波)を整流部3−8に導くようにした点にある。なお、この実施の形態2において、空調制御装置1は、制御データが生じていない場合にも、送受信用アンテナ1−6から周波数f2の電磁波を短周期で定期的に送信するものとする。
【0030】
この空調制御システムにおいて、空調制御装置1は、送受信用アンテナ1−6から周波数f2(例えば、2.4GHz帯)の電磁波を短周期で定期的に空調ダクト2内へ送出する。この電磁波は、金属製の空調ダクト2の内壁面を反射しながら、或いは直接、アクチュエータ3の送受信用アンテナ3−13に到達する。アクチュエータ3は、送受信用アンテナ3−13が受けた周波数f2の電磁波が有するエネルギーを整流部3−8で直流電力に変換して取り出し、その取り出した直流電力を蓄電部3−9に蓄える。この蓄電部3−9に蓄えられた直流電力によってアクチュエータ3での必要電力が賄われる。
【0031】
この実施の形態2では、アクチュエータ3での必要電力を送受信用アンテナ3−13によって受け取っているので、すなわち送受信用アンテナ3−13が受電用のアンテナと制御データの受信用のアンテナとを兼ねているので、その構成が簡略化される。また、この実施の形態2では、空調制御装置1に電力送信部1−3や送電用アンテナ1−5を設ける必要がなく、空調制御装置1の基本構成を変えることなく実現できるのでより好ましい。
【0032】
〔シミュレーション〕
発明者らは、上述したような優れた高価を得ることができる空調制御システムに関し、シミュレーションを行いその効果を確認した。このシミュレーションは、レイトレーシング法を用いた伝送シミュレーションであり、次の5つの異なる場合について、それぞれ受信点における受信電力比較を行った。
【0033】
(1)正方形状の断面を有する直線状ダクト内と自由空間との受信電力比較
(2)円形状の断面を有する直線状ダクト内と自由空間との受信電力比較
(3)屈曲部を有するダクト内と自由空間との受信電力比較
(4)基本モード平面アンテナおよび高次モード平面アンテナを用いた場合の直線状ダクト内の受信電力比較
(5)反射器(反射板)の有無による直線状ダクト内の受信電力比較
【0034】
まず、正方形状の断面を有する直線状ダクト内と自由空間との受信電力比較については、次の条件でシミュレーションを実施した。
(A)空調ダクト 断面:300mm×300mmの正方形状
材質:スチール
(B)送信アンテナおよび受信アンテナ:空調ダクトの断面の中央部に、その断面方向に対して垂直に延伸する位置に配置した1/2波長ダイポールアンテナ
(C)送信アンテナと受信アンテナとの距離:1m〜40mまでの1m毎
(D)周波数:2450MHz
(E)送信出力:0dBm
(F)送信アンテナから受信アンテナに至るまでの間、空調ダクト内で反射する電磁波の回数:5回以下
(G)比較対象:自由空間における受信電力とダクト内における受信電力
【0035】
尚、上述した送信アンテナは、空調ダクト2内に電磁波を送り出す送電用アンテナ1−5、送受信用アンテナ3−11(3−13)または送受信用アンテナ1−4(1−6)であり、受信アンテナは、空調ダクト2によって伝搬された電磁波を受け取る受電用アンテナ3−12、送受信用アンテナ1−4(1−6)または送受信用アンテナ3−11(3−13)である。
【0036】
その結果、図3の破線に示すように、自由空間おける受信電力は、送信アンテナから受信アンテナまで至る距離が1mの地点で−42dBm、距離が10mの地点で−55dBm、距離が20mの地点で−62dBm、距離が30mの地点で−65dBm、距離が40mの地点で−68dBmであった。
【0037】
それに対して、空調ダクト内における受信電力は、同図の実線にて示されるように送信アンテナから受信アンテナまで至る距離が1mの地点で−23dBm、距離が10mの地点で−51dBm、距離が20mの地点で−52dBm、距離が30mの地点で−58dBm、距離が40mの地点で−59dBmであった。
【0038】
このシミュレーションの結果が示すように、空調ダクト内を伝搬する電磁波の受信強度(受信点における電界強度)は、自由空間を伝搬する電磁波に比べて約10dB高くなることがわかる。これは、自由空間における電磁波は、自由空間に放射状に広がりながら拡散していくのに対して、空調ダクト内の送信アンテナから放射される電磁波は、空調ダクトの内壁面で反射を繰り返しながら受信アンテナに到達することによる。
【0039】
また、発明者らは、円形状の断面を有する直線状ダクト内と自由空間との受信電力比較に関するシミュレーションを行った。このシミュレーションは、直径300mmの直径を有する真円形の断面形状を有する空調ダクトを用いたもので、これ以外は、上述と同一の条件である。
【0040】
その結果、図4の実線に示されるように空調ダクト内における受信電力は、送信アンテナから受信アンテナまで至る距離が1mの地点で−5dBm、距離が10mの地点で−25dBm、距離が20mの地点で−32dBm、距離が30mの地点で−38dBm、距離が40mの地点で−43dBmであった。
【0041】
このシミュレーションの結果が示すように、空調ダクト内を伝搬する電磁波の受信点における電界強度は、自由空間を伝搬する電磁波に比べて約20dB高くなることが確かめられた。これは、角形の空調ダクトに比べて円形形状の内壁面で反射された電磁波が効率的に受信アンテナに到達することによる。
【0042】
次に、発明者らは、図5に示すように屈曲部を有する空調ダクト内と自由空間との受信電力比較に関し、その伝送特性をシミュレーションによって確かめた。このシミュレーションは、次に示す条件で行った。
【0043】
(A)空調ダクト 断面:300mm×300mmの正方形状
材質:スチール
曲げ角度:90°
曲げ部の内半径:500mm
曲げ部の外半径:800mm
(B)送信アンテナおよび受信アンテナ:空調ダクトの断面の中央部に、その断面方向に対して垂直に延伸する位置に配置した1/2波長ダイポールアンテナ
(C)送信アンテナと曲げ部の距離:5m固定
(D)曲げ部と受信アンテナの距離:1m〜10m(即ち送信アンテナから、6m〜15m)までの1m毎(図6参照)
(E)周波数:2450MHz
(F)送信出力:0dBm
(G)送信アンテナから受信アンテナに至るまでの間、空調ダクト内で反射する電磁波の回数:5回以下
(H)比較対象:自由空間における受信電力とダクト内における受信電力
【0044】
その結果、図7の実線に示されるように、空調ダクト内における受信電力は、送信アンテナから受信アンテナまで至る距離が6mの地点で―40dBm、距離が10mの地点で−37dBm、距離が15mの地点で−49dBmであった。
【0045】
このシミュレーションの結果が示すように、空調ダクト内を伝搬する電磁波の受信点における電界強度は、自由空間を伝搬する電磁波に比べて10dB以上高くなることが検証できた。これは、空調ダクトにおける屈曲部の内壁面が凹面鏡のように作用し、屈曲部を有さない直管タイプの空調ダクトに比べて受信電界強度が高くなったことによる。
【0046】
更に、発明者らは、上述したシミュレーションで用いた1/2波長ダイポールアンテナに代えて、平面アンテナを空調ダクトの内壁面に設置したときの受信電力の変化をシミュレーションした。この平面アンテナは、図8に示す指向特性を有する利得が9dBiの基本モード平面アンテナと、図9に示す指向特性を有する利得が6dBiの高次モード平面アンテナを用い、次の条件でシミュレーションを行った。
【0047】
(A)空調ダクト 断面:300mm×300mmの正方形状
材質:スチール
(B)送信アンテナおよび受信アンテナ:双方のアンテナとも基本モード平面アンテナと高次モードアンテナを適用
(C)送信アンテナと受信アンテナとの距離:1m〜20mまでの1m毎
(D)周波数:2450MHz
(E)送信出力:0dBm
(F)送信アンテナから受信アンテナに至るまでの間、空調ダクト内で反射する電磁波の回数:5回以下
(G)比較対象:基本モード平面アンテナと高次モード平面アンテナにおける受信電力
【0048】
その結果、図10の破線に示されるように基本モードアンテナを送信アンテナおよび受信アンテナに用いた場合の受信電力は、送信アンテナから受信アンテナまで至る距離が1mの地点で−32dBm、距離が5mの地点で−67dBm、距離が10mの地点で−86dBm、距離が15mの地点で−77dBm、距離が20mの地点で−77dBmであった。
【0049】
それに対して、高次モードアンテナを送信アンテナおよび受信アンテナに用いた場合の受信電力は、送信アンテナから受信アンテナまで至る距離が1mの地点で−20dBm、距離が5mの地点で−41dBm、距離が10mの地点で−59dBm、距離が15mの地点で−58dBm、距離が20mの地点で−58dBmであった。
【0050】
このシミュレーションの結果が示すように、円錐状の指向特性をもつ高次モードアンテナは、基本モードアンテナに比べて受信点における受信電力が約20dB増加することが確認できる。
【0051】
この種の平面アンテナは、空調ダクトの内壁面に貼り付けるように取り付けることができるので、空調ダクト内を流れる流体の流路抵抗を増加させることなく好ましい。
【0052】
次に、発明者らは、アンテナの後方に反射板を設けた場合の伝送シミュレーションを行った。送信アンテナの反射板は、送信アンテナから受信アンテナに向かう方向に対して送信アンテナの背後に位置するように設置される。同様に受信アンテナの反射板は、受信アンテナから送信アンテナに向かう方向に対して受信アンテナの背後に位置するように設置される。
【0053】
発明者らは、このような反射器(反射板)の有無による直線状ダクト内の受信電力比較に関し、その伝送特性をシミュレーションによって確かめた。このシミュレーションは、次に示す条件で行った。
【0054】
(A)空調ダクト 断面:300mm×300mmの正方形状
材質:スチール
(B)送信アンテナおよび受信アンテナ:空調ダクトの断面の中央部に、その断面方向に対して垂直に延伸する位置に配置した1/2波長ダイポールアンテナ
(C)反射板:送信アンテナおよび受信アンテナのそれぞれ背後の位置に、それぞれのアンテナから90mm(3/4波長)離れた位置にスチール板を設置
(D)送信アンテナと受信アンテナとの距離:1m〜40mまでの1m毎
(E)周波数:2450MHz
(F)送信出力:0dBm(G)送信アンテナから受信アンテナに至るまでの間、空調ダクト内で反射する電磁波の回数:5回以下
(H)比較対象:ダクト内における反射板がないときの受信電力と反射板があるときの受信電力
【0055】
その結果、反射板がない場合の受信点における受信電力は、図11の破線に示されるように空調ダクト内の受信電力と同一であるが、反射板を設けた場合、図11の実線に示されるように空調ダクト内における受信電力は、送信アンテナから受信アンテナまで至る距離が1mの地点で−20dBm、距離が10mの地点で−42dBm、距離が20mの地点で−43dBm、距離が30mの地点で−49dBm、距離が40mの地点で−51dBmであった。
【0056】
このように送信アンテナおよび受信アンテナのそれぞれの背後に反射板を設けた場合、空調ダクト内を伝搬する電磁波の受信点における電界強度は、反射板が自由空間を伝搬する電磁波に比べて約10dB高くなることがわかる。これは送信アンテナの場合、送信アンテナから放射される直接波と、この直接波の一部が反射板によって反射された反射波とが同位相で合成されて受信アンテナの方向に放射されることによる。同様に受信アンテナも受信アンテナに直接到来する直接波と、反射板によって反射された反射波とが受信アンテナで同位相で合成されて受信電力が強くなることによる。
【0057】
尚、送信アンテナと反射板の距離または受信アンテナと反射板との距離は、それぞれのアンテナで直接波と反射波が同位相で合成されればよい。つまり、各アンテナと反射板との距離は、送受信される電磁波の波長をλとすれば、λ/4、3λ/4、5λ/4・・・(2n−1)λ/4(ただし、n≧0の整数)となるように位置付ければよい。
【0058】
上述した実施の形態1や2では、空調制御装置1から空調ダクト2内を通してアクチュエータ2へ電磁波を送るようにしたが、必ずしも空調ダクト2内を通さなくてもよく、自由空間を通して電磁波を送るようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1や2において、アクチュエータ3におけるモータは、必ずしも電動式でなくてもよく、圧縮空気で作動する空気式、あるいは油で作動する油圧式としてもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態1や2では、電磁波を波動として用いた場合について説明したが、波動は電磁波に限られるものではなく、光や超音波などを波動として用いてもよい。波動が光の場合は、送電用アンテナと送受信用アンテナの代わりにレーザ光照射手段、LED、電球などを用い、受電用アンテナや送受信用アンテナの代わりに太陽電池やフォトダイオードなどを用いる。また、波動が超音波の場合は、送電用アンテナと送受信用アンテナの代わりにピエゾ式振動子や電歪式振動子などを用い、受電用アンテナと送受信用アンテナの代わりにピエゾ式振動子や電歪式振動子などを用いる。
【0060】
また、上述した実施の形態1や2において、アクチュエータがリターンスプリングを備えたスプリング型アクチュエータの場合は、制御データの送受信を不要とすることも可能である。また、上述した実施の形態ではアクチュエータの制御対象をダンパとして説明したが、他にもバルブ等、アクチュエータが操作可能な各種制御対象に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るアクチュエータを用いた空調制御システムの一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。
【図2】本発明に係るアクチュエータを用いた空調制御システムの他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す図である。
【図3】レイトレーシング法を用いた自由空間内と方形ダクト内における受信電力シミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】レイトレーシング法を用いた自由空間内と円形ダクト内における受信電力シミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】屈曲部を有するダクトの外観を示す斜視図である。
【図6】屈曲部を有するダクトの外観を示す平面図である。
【図7】レイトレーシング法を用いた自由空間内と屈曲部を有するダクト内における受信電力シミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】基本モード平面アンテナの指向特性を示すグラフである。
【図9】高次モード平面アンテナの指向特性を示すグラフである。
【図10】レイトレーシング法を用いた基本モード平面アンテナと高次モード平面アンテナのダクト内における受信電力シミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】レイトレーシング法を用いて反射板の有無による受信電力をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0062】
1…空調制御装置、1−1…制御部、1−2…送受信部、1−3…電力送信部、1−4…送受信用アンテナ、1−5…送電用アンテナ、1−6…送受信用アンテナ、2…空調ダクト、3…アクチュエータ、3−1…制御部、3−2…送信部、3−3…受信部、3−4…ドライバ部、3−5…モータ、3−6…減速部、3−7…位置検出部、3−8…整流部、3−9…蓄電部、3−10…安定化電源部、3−11…送受信用アンテナ、3−12…受電用アンテナ、3−13…送受信用アンテナ、MD…駆動部、4…外部電源、100…ダンパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の波動を受信する第1の受波部と、
この第1の受波部によって受信された波動を整流して直流電力を取り出す整流部と、
この整流部によって取り出された直流電力を蓄える蓄電部と、
この蓄電部に蓄えられた直流電力の供給を受けて駆動される駆動部と
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載されたアクチュエータにおいて、
前記第1の受波部は、
前記駆動部に対する制御データを搬送する波動を前記所定の周波数の波動として受信する
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載されたアクチュエータにおいて、
前記第1の受波部とは別に、
前記駆動部に対する制御データを搬送する前記所定の周波数とは異なる周波数の波動を受信する第2の受波部
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項2に記載されたアクチュエータにおいて、
前記第1の受波部は外部へ送信する送信データの送波部を兼ねていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項3に記載されたアクチュエータにおいて、
前記第2の受波部は外部へ送信する送信データの送波部を兼ねていることを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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