説明

アクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物

【課題】 高い屈折率異方性及び低い閾値電圧を有し、アクティブマトリクス駆動コレステリック液晶表示素子を構成した場合における焼き付き現象を改善した液晶組成物を提供し、併せて焼き付き現象が改善された表示品位が優れたアクティブマトリクス駆動コレステリック液晶表示素子を提供する。
【解決手段】 フルオロベンゼン骨格を有する2又は3環の化合物であり、屈折率異方性が0.16〜0.40であり、誘電率異方性が12〜30である化合物群Aを含有し、シアノベンゼン骨格を有する2又は3環の化合物であり、屈折率異方性が0.10〜0.40であり、誘電率異方性が10〜80である化合物群Bを含有し、光学活性化合物を含有し、化合物群Aの含有量が50〜90%であり、化合物群Bの含有量が4〜30%であり、光学活性化合物の含有量が0.1〜5%であるアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は電気光学的液晶表示材料として有用なアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶組成物に光学活性化合物を添加することにより液晶相にねじれ配向を付与したコレステリック(カイラルネマティック)液晶組成物を用いた液晶表示素子は双安定性を有することから、特に低消費電力を要求される電子書籍、電子値札、プレゼンテーションパネル等に用いられる。コレステリック液晶における双安定性は、パルス電圧の印加によりプレーナ状態とフォーカルコニック状態に切り換えることによって達成され、プレーナ及びフォーカルコニックの各状態はパルス電圧印加後も維持されることから当該双安定性についてメモリー性と呼ぶこともある。
【0003】
一方、表示品質が優れていることから、アクティブマトリクス形液晶表示装置が携帯端末、液晶テレビ、プロジェクタ、コンピューター等の市場に出されている。アクティブマトリクス表示方式は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)あるいはMIM(メタル・インシュレータ・メタル)等が使われており、表示品位が高いことから液晶表示素子の主流を占めるに至っている。
【0004】
コレステリック液晶表示素子は前述のメモリー性を有することから、従来はアクティブマトリックス駆動を必要とせず、単純なパッシブマトリックス駆動による表示素子が多く用いられてきた。パッシブマトリクス駆動によるコレステリック液晶表示素子は、表示品位の点で劣ることから、低消費電力特性に優れるにもかかわらず、液晶表示素子の主流を占めるには至っていない。
【0005】
コレステリック液晶をアクティブマトリクス駆動することについては、既に開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、コレステリック液晶と通常のネマチック液晶とは液晶表示素子における表示原理が本質的に異なることから、パッシブマトリクス駆動用のコレステリック液晶をアクティブマトリクス用に転用したとしても十分な特性を得ることはできない。例えば、コレステリック液晶を用いた表示素子においては、通常螺旋軸が基板に対して垂直であるプレーナー状態における選択反射状態を使用する。このとき選択反射光の半値幅(Δλ)は
【0006】
【数1】

【0007】
(式中Δnは液晶組成物の屈折率異方性、Pは自然ピッチを表す。)で表されることが知られている。明るい表示を実現するためには、大きな屈折率異方性を有する化合物を必要とするが、アクティブマトリクス駆動用のネマチック液晶組成物として多用されている、フルオロベンゼン系化合物を主体とした液晶組成物では、屈折率異方性が小さく、明るい表示を実現できないだけではなく、駆動電圧が高いといった問題があった(特許文献2、4、5及び6参照)。又、パッシブマトリクス駆動の代表的な駆動方式であるSTN用に多用されるシアノベンゼン系化合物を主体とした液晶組成物を用いた場合においては、駆動電圧等は十分低いものの、表示素子として構成した場合の焼き付き現象を抑えることができないといった問題を有していた(特許文献3参照)。
【0008】
以上のことから、コレステリック液晶をアクティブマトリクス駆動する場合において、実用上必要とされる要求特性を満たした液晶組成物は開発されておらず、アクティブマトリクス駆動のコレステリック液晶表示素子の実用化の妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−140440号公報
【特許文献2】特許3740856号公報
【特許文献3】特許3765182号公報
【特許文献4】特開2002−285159号公報
【特許文献5】特開2001-164253号公報
【特許文献6】特表平9−506337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高い屈折率異方性及び低い閾値電圧を有し、アクティブマトリクス駆動コレステリック液晶表示素子を構成した場合における焼き付き現象を改善した液晶組成物を提供し、併せて焼き付き現象が改善された表示品位が優れたアクティブマトリクス駆動コレステリック液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のフッ素系液晶化合物、シアノベンゼン系化合物及び光学活性化合物を含有するコレステリック液晶組成物を使用することにより課題を解決できることを見出し本願発明の完成に至った。
【0012】
本願発明は、2又は3の6員環からなり化合物中に3,4−ジフルオロベンゼン骨格又3,4,5−トリフルオロベンゼン骨格を有し、屈折率異方性が0.16〜0.4であり、誘電率異方性が12〜30である化合物群Aを含有し、2又は3の6員環からなり化合物中にシアノベンゼン骨格を有し、屈折率異方性が0.10〜0.40であり、誘電率異方性が10〜80である化合物群Bを含有し、光学活性化合物を含有し、化合物群Aの含有量が50〜90%であり、化合物群Bの含有量が4〜30%であり、光学活性化合物の含有量が0.1〜5%であるアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物及び当該液晶組成物を用いたアクティブマトリクスコレステリック液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶組成物は、高い屈折率異方性及び低い閾値電圧を有し、アクティブマトリクス駆動コレステリック液晶表示素子を構成した場合における焼き付き現象の改善に優れた効果を有している。本願発明の液晶組成物はアクティブマトリクス駆動コレステリック液晶表示素子等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の液晶組成物は、2又は3の6員環からなり化合物中に3,4−ジフルオロベンゼン骨格又3,4,5−トリフルオロベンゼン骨格を有する化合物群Aを含有するが、化合物群Aとして一般式(Ia)及び一般式(Ib)
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、
1及びA2はそれぞれ独立して、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い、
1及びZ2はそれぞれ独立して、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表し、X1は水素原子又はフッ素原子を表し、
Yは炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基又はフッ素原子を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を用いることが好ましい。
【0017】
一般式(Ia)及び一般式(Ib)において、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜6のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましい。
【0018】
1は、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又はメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い1,4-フェニレン基が好ましい、A2は、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又はメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い1,4-フェニレン基が好ましく、メチル基又はフッ素原子により置換されていても良い1,4-フェニレン基がより好ましい。
【0019】
1は、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合が好ましく、-COO-、-OCO-、-C≡C-又は単結合がより好ましい、Z2は、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合が好ましく、-COO-、-OCO-、-C≡C-又は単結合がより好ましく、Z1及びZ2の何れか一つが単結合を表し、他方が-C≡C-を表すことが好ましい。 X1は水素原子及びフッ素原子の何れも用途により好ましいがフッ素原子がより好ましい。
【0020】
Yは炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜10のアルキル基又はフッ素原子が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜8のアルキル基又はフッ素原子がより好ましい。
【0021】
具体的な化合物としては以下の一般式(Ia-a)〜一般式(Ia-d)、一般式(Ib-a)又は一般式(Ib-b)
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R1は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、X40〜X63はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表す。)で表される化合物が特に好ましい。
化合物群Aの化合物は屈折率異方性が0.16〜0.4であるが、0.21以上が好ましく、0.22以上がより好ましく、誘電率異方性が12〜30であるが、14以上が好ましく、15以上がより好ましい。
【0024】
化合物群Aの含有量は50〜90%であるが、50〜85%が好ましく、50〜80%がより好ましい。
化合物個別の屈折率異方性及び誘電率異方性は次のように定義される。
以下の組成で表される屈折率異方性0.102、誘電率異方性4.4のホスト液晶
【0025】
【化3】

【0026】
に、化合物を10%添加した場合の、屈折率異方性及び誘電率異方性を測定し、測定結果から100%に外挿した値を用いた。
本願発明の液晶組成物においては、屈折率異方性が0.10〜0.40であり、誘電率異方性が10〜80である化合物群Bを含有するが、化合物群Bとして一般式(II)
【0027】
【化4】

【0028】
(式中、R2は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、
3及びA4はそれぞれ独立して、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良い、
3及びZ4はそれぞれ独立して、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表し、X2及びX3はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表す。)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0029】
一般式(II)において、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜6のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜8のアルキル基が特に好ましい。
【0030】
3は、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又はメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い1,4-フェニレン基が好ましい。
【0031】
4が基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又はメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い1,4-フェニレン基が好ましい。
【0032】
3は、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合が好ましく、-COO-、-OCO-、-C≡C-又は単結合がより好ましい。
4は、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合が好ましく、-COO-、-OCO-、-C≡C-又は単結合がより好ましい。X2は、フッ素原子が好ましく、X3は、フッ素原子が好ましい。
一般式(II)の具体的な化合物としては以下の一般式(II-a)〜一般式(II-e)
【0033】
【化5】

(式中、R2は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、X10〜X35はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表す。)で表される化合物が特に好ましい。
【0034】
化合物群Bの化合物は屈折率異方性が0.1〜0.4であるが、0.13以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、誘電率異方性が10〜80であるが、22以上が好ましく、25以上がより好ましい。
化合物群Bの含有量は4〜30%であるが、5〜30%が好ましく、5〜25%がより好ましい。
本願発明の液晶組成物は、誘電率異方性が−1〜1である化合物群Cを更に含有することが好ましい。
化合物群Cとして具体的には、一般式(III)
【0035】
【化6】

(式中、R3及びR8はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、
5、A6、及びA7はそれぞれ独立して、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良いが、A7は単結合を表していても良い、
5、及びZ6はそれぞれ独立的して、に-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表し、pは0、1又は2を表す。)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0036】
一般式(III)において、R3及びR8は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基が特に好ましい。
一般式(III)で表される化合物は具体的には下記の一般式(III-a)〜一般式(III-u)
【0037】
【化7】

【0038】
(式中、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物が好ましい。
化合物群Cの含有率は5〜30%が好ましいが、10〜30%がより好ましく、15%〜30%が特に好ましい。
本願発明の液晶組成物は光学活性化合物Dを含有するが、化合物群Dとして一般式(IVa)〜一般式(IVg)
【0039】
【化8】

【0040】
(式中、R9は、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、R10は、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基、水素原子、フッ素原子、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良い、
8、A10及びA11は、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良いが、A8、A10及びA11は単結合を表していても良い、A9
【0041】
【化9】

を表し、Z7、Z8、Z9及びZ10はそれぞれ独立的して-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表す。)で表される化合物を含有することが好ましい。
一般式(IVa)〜一般式(IVf)で表される化合物は具体的には下記の一般式(IVa-a)、一般式(IVb-a)、一般式(IVc-a)、一般式(IVd-a)〜一般式(IVd-c)、一般式(IVe-a)、一般式(IVf-a)又は一般式(IVg-a)
【0042】
【化10】

【0043】
(式中、R9は、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、R10は、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基、水素原子、フッ素原子、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良い、
8、A10又はA11は、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良いが、A8 、A10又はA11は単結合を表していても良い、
Z7、Z8、Z9又はZ10はそれぞれ独立的して、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物が好ましい。
【0044】
本願発明の液晶組成物のらせんピッチは、130nm〜1000nmが好ましく、200nm〜750nmがより好ましく、300nm〜700nmが特に好ましい。
液晶表示素子を構成する場合、可視波長範囲における光を反射するように選択することが好ましい。
本願発明の液晶組成物は、−10℃〜90℃においてコレステリック相を発現することが好ましく、−20℃〜100℃がより好ましく、下限温度が−40℃以下であり、上限温度が120℃以上であることが特に好ましい。
液晶組成物としての屈折率は、0.150以上が好ましく、0.180以上がより好ましい。閾値電圧は、1.7V以下が好ましく、1.5V以下がより好ましい。
本発明の液晶組成物は、添加剤として、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤を含むことができ、用途によっては、重合性液晶化合物を含有しても良い。
【実施例】
【0045】
以下、例を挙げて本願発明を更に詳述するが、本願発明はこれらによって限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
TN-I :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
Δn :複屈折(20℃及び589nm)
Vth :駆動電圧(25℃)
VHR :電圧保持率
λ :選択反射波長(25℃)(nm)
I.S. :焼き付きレベル
より詳しい測定方法を記載
○:加熱1000時間後に全く問題の無いレベル
△:加熱1000時間後に焼き付きが確認されるレベル
×:加熱1000時間に至る前に焼き付きが確認されるレベル
化合物の記載に下記の略号を使用する。
-末端の n(数字) : -CnH2n+1 ndm- : CnH2n+1-CH=CH-(CH2)m-1-
-T- : -C≡C- -ndm : -(CnH2n+1-CH=CH-(CH2)m-1)
-F : -F -On : -OCnH2n+1
-VO- : -COO- -CN : -C≡N
-Z- : -CH=N-N=CH- -CF2O- : -CF2-O-
【0046】
【化11】

例えば、以下に示すように略号を用いる。
【0047】
【化12】

(実施例1、比較例1、比較例2及び比較例3)
化合物群IとIIの物性値を表1に示す。
【0048】
【表1】

液晶組成物No.1(実施例1)、液晶組成物M1(比較例1) 、液晶組成物M2(比較例2) 及び液晶組成物M3(比較例3)を調製しこれらの物性値を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示すように、実施例1の液晶組成物は、比較例1や比較例3と比べ焼き付きのレベルで大きな差があることが明らかである。実施例1と比較例2を比べΔnとVthで大きな差があることが明らかである。よって、本願発明の液晶組成物は、焼き付きや表示不良等表示品位が良好、加えて高い複屈折異方性・低電圧を両立して達成できていることが明らかである。
(実施例2、比較例4及び比較例5)
液晶組成物No.2(実施例2)、液晶組成物M4(比較例4)及び 液晶組成物M5(比較例5)を調製しこれらの物性値を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3に示すように、実施例2の液晶組成物は、比較例5と比べ焼き付きのレベルで大きな差があることが明らかである。また、実施例2と比較例4を比べるとVHRは同等であるが焼き付きレベルに差があることが明らかである。よって、本願発明の液晶組成物は、焼き付きや表示不良等表示品位が良好、加えて高い複屈折異方性・低電圧を両立して達成できていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2又は3の6員環を有し、化合物中に3,4−ジフルオロベンゼン骨格又3,4,5−トリフルオロベンゼン骨格を有し、屈折率異方性が0.16〜0.40であり、誘電率異方性が12〜30である少なくとも1種の化合物からなる化合物群Aを含有し、2又は3の6員環を有し、化合物中にシアノベンゼン骨格を有し、屈折率異方性が0.10〜0.40であり、誘電率異方性が10〜80である少なくとも1種の化合物からなる化合物群Bを含有し、光学活性化合物を含有し、化合物群Aの含有量が50〜90%であり、化合物群Bの含有量が4〜30%であり、光学活性化合物の含有量が0.1〜5%であるアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項2】
誘電率異方性が−1〜1である化合物群Cを5〜30%含有する請求項1記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項3】
化合物群Aとして一般式(Ia)及び一般式(Ib)
【化1】

(式中、R1は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、
1及びA2はそれぞれ独立して、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い、
1及びZ2はそれぞれ独立して、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表し、X1は水素原子又はフッ素原子を表し、
Yは炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基又はフッ素原子を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を含有する請求項1又は2記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項4】
一般式(Ia)及び一般式(Ib)において、A2がメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い1,4-フェニレン基を表し、Z2が-C≡C-を表す請求項3記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項5】
化合物群Aとして一般式(Ia)及び一般式(Ib)で表される化合物を含有する請求項3記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項6】
化合物群Bとして一般式(II)
【化2】

(式中、R2は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、
3及びA4はそれぞれ独立して、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良い、
3及びZ4はそれぞれ独立して、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表し、X2及びX3はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表す。)で表される化合物を含有する請求項1、2又は3記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項7】
一般式(II)において、A4がメチル基又はフッ素原子により置換されていても良い1,4-フェニレン基を表し、Z4が単結合を表す請求項3記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項8】
化合物群Cとして一般式(III)
【化3】

(式中、R3及びR8はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、
5、A6、及びA7はそれぞれ独立して、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基、又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良いが、A7は単結合を表していても良い、
5、及びZ6はそれぞれ独立的して、に-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表し、pは0、1又は2を表す。)で表される化合物を含有する請求項2記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項9】
光学活性化合物群Dとして一般式(IVa)〜(IVf)
【化4】

(式中、R9は、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、R10は、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基、水素原子、フッ素原子、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良い、
8、A10及びA11は、基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基が酸素原子により置き換えられても良いトランス-1,4-シクロへキシレン基又は基中に存在する1個の炭素原子又は隣接していない2個以上の炭素原子が窒素原子に置き換えられてもよい1,4-フェニレン基を表し、該1,4-フェニレン基はフッ素原子により置換されていても良いが、A8、A10及びA11は単結合を表していても良い、A9
【化5】

を表し、Z7、Z8、Z9及びZ10はそれぞれ独立的して-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-(CH2)4-又は単結合を表す。)で表される化合物を含有する請求項1、2又は3記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物。
【請求項10】
請求項1から8の何れかに記載のアクティブマトリクス駆動用コレステリック液晶組成物を用いたアクティブマトリクスコレステリック液晶表示素子。

【公開番号】特開2010−275463(P2010−275463A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130410(P2009−130410)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】