説明

アクリルエマルジョン組成物

【課題】
貯蔵安定性が良好で、被処理物に対する親和性、ヌレ性が良好であり、比較的低温で架橋反応を起こし、必要十分な機械的強度、接着力を発揮するアクリルエマルジョン組成物を得る。
【解決手段】
アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを2〜2000重量部含み、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン100重量部に対し、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤を1〜200重量部含むアクリルエマルジョン組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、粘着剤、接着剤、バインダーおよびサイジング剤、紙力増強剤、包装材などに用いられるアクリルエマルジョン組成物である。
【背景技術】
【0002】
アクリルエマルジョンは、低VOCで環境負荷が小さいことから塗料、粘着剤、接着剤などとして広く使用されている。一方で、アクリルエマルジョンは水を媒体として乳化重合で製造されるため、成膜後もポリマー中に乳化剤が残り、水を媒体とするため適切な硬化剤がないこともあって、十分な架橋反応を行うことができず機械的強度が低く、耐水性、耐溶剤性などの耐薬品性が劣っていた。
【0003】
アクリルエマルジョンの架橋方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1はカルボキシル基由来の高酸価アクリルエマルジョンと分子中にオキサゾニル基を有するビニル化合物のエマルジョンとを混合するものである。特許文献1が提案する技術は、基本的にはアクリルエマルジョンとオキサゾニル基を有するビニル化合物のエマルジョンとからなる2液混合型であり、連続処理を行うような現場では使い勝手が悪く、かつ十分な性能を引き出すためには200℃以上の高温での硬化反応、架橋反応が必要であり、耐熱性がさほどない、例えばプラスチック類には適用できない。
【0004】
ポリアミン化合物をバインダーとする炭素繊維の処理方法が提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。特許文献2または3で提案されている技術は、ポリエチレンイミンまたはポリアリルアミンで炭素繊維の集束体を製造した後、これをマトリックス樹脂に分散する炭素繊維チョップドストランドに関するものである。特許文献2または3で提案されている技術では、ポリエチレンイミン水溶液またはポリアリルアミン水溶液が炭素繊維との親和性が乏しいこと、ヌレ性が不十分であること、および、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンの分子量がせいぜい数千から数万未満と小さく、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンは架橋されることがなく、炭素繊維複合材料(CFRP)として期待される必要十分な機械強度、耐熱性、耐薬品性などが発現されないことが推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−328656号公報
【特許文献2】特開平3−65311号公報
【特許文献3】特開平7−266462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性が良好で、被処理物に対する親和性、ヌレ性が良好であり、比較的低温で架橋反応を起こし、必要十分な機械的強度、接着力を発揮するアクリルエマルジョン組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを2〜2000重量部含み、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン100重量部に対し、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤を1〜200重量部含むアクリルエマルジョン組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアクリルエマルジョン組成物は、貯蔵安定性が良好で、種々素材への親和性、ヌレ性に優れている。また、硬化性、架橋性に優れ、150℃以下程度の比較的低温でも必要十分な機械的強度、接着性を発現する。
【0009】
また、本発明のアクリルエマルジョン組成物は、塗料用、粘着剤用、接着剤用として有用であり、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ナイロン樹脂(NY)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリプロピレン樹脂(PP)などのプラスチック類、鉄、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属への接着性、付着性、防蝕性が優れ、耐薬品性、耐候性などバランスのとれた性能を発揮する。
【0010】
さらにまた、本発明のアクリルエマルジョン組成物は、ガラス繊維用および炭素繊維用バインダー、サイジング剤として優れた性能を発揮し、ガラス繊維や炭素繊維に強固に接着し、ガラス繊維や炭素繊維をマトリックス樹脂中に均一に分散する作用があり、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)および炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の引張強度、曲げ弾性率、熱変形温度などの機械的性質や化学的性質、および耐熱性を向上する作用がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン2〜2000重量部、およびポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン100重量部に対し、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤1〜200重量部を含むアクリルエマルジョン組成物である。
【0012】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンは、アクリル単量体を乳化重合して製造される。
【0013】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリル単量体としては、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有アクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有アクリル単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アクリル単量体、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルエチレンウレア、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの窒素原子含有アクリル単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、イソボルニルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸(フルオロ)アルキルエステル、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジシクロペンテニル基を有するアクリル単量体、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどのビニル化合物などが例示される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0014】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリル単量体として、好ましくは、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのかさ高い置換基を有するアクリル単量体が望ましい。ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類への接着性が向上する傾向が見られる。また、鉄、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属への接着性、防蝕性を向上する傾向が見られる。
【0015】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、かさ高い置換基を有するアクリル単量体は、アクリルエマルジョンに使用するアクリル単量体の総量を100重量%として、好ましくは、10〜100重量%、より好ましくは、10〜95重量%、さらに好ましくは、20〜90重量%使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、かさ高い置換基を有するアクリル単量体が10〜100重量%使用されるとき、接着性、防蝕性が向上する傾向が見られる。
【0016】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリル単量体として、好ましくは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アクリル単量体を含むことが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、エポキシ基含有アクリル単量体が使用されることにより、アクリルエマルジョン組成物の架橋反応性が改善される傾向が見られ、同時に種々素材への接着性が向上する傾向が見られる。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、エポキシ基含有アクリル単量体は、使用するアクリル単量体の総量を100重量%として、好ましくは、3〜50重量%、より好ましくは、5〜45重量%、さらに好ましくは、8〜30重量%使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、エポキシ基含有アクリル単量体が3〜50重量%使用されることにより、アクリルエマルジョンの貯蔵安定性、架橋反応性、素材への接着性が優れてバランスのとれたものとなる傾向が見られる。
【0017】
本発明のアクリルエマルジョン組成物のうち、アクリルエマルジョンの25℃で測定されるpHは、好ましくは、1.8〜8.5、より好ましくは、2.0〜8.5、さらに好ましくは、5.8〜8.5であることが推奨される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンの25℃で測定されるpHが1.8〜8.5のとき、アクリルエマルジョン組成物の貯蔵安定性が良好となる傾向が見られる。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、さらに望ましくは、アクリルエマルジョンの25℃で測定されるpHが5.8〜8.5のとき、エポキシ基含有アクリル単量体が使用された場合でも、アクリルエマルジョンの製造中および貯蔵中にエポキシ基の消失が抑制される傾向が見られ、推奨される。
【0018】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンは、好ましくは、イオン交換水を使用して、乳化重合で製造される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンは、好ましくは、陰イオン性乳化剤、および/または、非イオン性乳化剤を使用して製造され、製造される。
【0019】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するにあたり、乳化重合に使用する陰イオン性乳化剤として、好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性乳化剤が例示される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するときに好ましく使用される陰イオン性乳化剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0020】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するにあたり、乳化重合に使用する非イオン性乳化剤として、好ましくは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性乳化剤が例示される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するときに好ましく使用される非イオン性乳化剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0021】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョン製造時の乳化剤として、好ましくは、反応性乳化剤が使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、反応性乳化剤として、好ましくは、「ラテムルPD−104」(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム)、「ラテムルPD−420」(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル)(以上、花王(株)社の製品)「アデカリアソーブSR−1025」(α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩の水溶液)(旭電化工業(株)社の製品)、「アクアロンKH−1025」(第一工業製薬(株)社の製品)などが例示される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するときに好ましく使用される反応性乳化剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0022】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するにあたり、乳化剤として反応性乳化剤が使用されることにより、アクリルエマルジョンの乳化重合時および貯蔵時の安定性が向上し、耐水性、耐アルカリ性などの耐薬品性が向上する傾向が見られる。
【0023】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するために好ましく使用される重合開始剤として、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの水溶性重合開始剤が例示される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、重合開始剤は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0024】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するにあたり、重合開始剤として、好ましくは、有機アゾ系重合開始剤が使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、有機アゾ系重合開始剤として、好ましくは2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬工業(株)社のVA−061)、2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]の塩酸塩(和光純薬工業(株)社のVA−044)、2,2´−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕の塩酸塩(和光純薬工業(株)社のVA−060)などの分子中にイミダゾリン骨格を有する有機アゾ系重合開始剤が例示される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するときに好ましく使用される有機アゾ系重合開始剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0025】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンを製造するにあたり、重合開始剤として、好ましくは、分子中にイミダゾリン骨格を有する有機アゾ系重合開始剤が使用されることにより、アクリルエマルジョンの乳化重合時および貯蔵時の安定性が向上する傾向が見られる。特に、アクリル単量体としてエポキシ基含有アクリル単量体を使用する場合に顕著な効果が見られ、アクリルエマルジョンの貯蔵経時でもエポキシ基の消失が抑制される傾向が見られる。結果として、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンとの架橋反応がスムースに進行し、強靱で接着性に優れたアクリルエマルジョン組成物が製造される傾向が見られる。
【0026】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンは、好ましくは、イオン交換水を使用し、窒素ガスなどで重合系を不活性ガス置換した後、重合温度50〜100℃でラジカル重合し製造される。
【0027】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンの製造は、モノマー滴下法、プレエマルジョン法、プレチャージ法、シード乳化重合、パワーフィード法など公知の乳化重合法が適用できる。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンは公知のいずれの方法で製造してもよいが、製造されるアクリルエマルジョンのレーザー散乱法で測定される粒子径は、好ましくは、40〜250nm、より好ましくは、50〜200nm、さらに好ましくは、60〜160nmであるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンの粒子径が40〜250nmのとき、アクリルエマルジョンの粘度、濃度、チキソトロピー性が適切となり、アクリルエマルジョン組成物の製造が容易となり、ヌレ性、接着性が向上する傾向が見られる。
【0028】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンの粒子径は、濃厚系粒径アナライザー「FPAR−1000」(大塚電子(株)社の分析器)を使用して測定した。
【0029】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンが使用される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを併用することで、双方が良い性能をよりきわだたせる傾向が見られ、かつ相互に架橋することで、アクリルエマルジョンまたはポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン単独では得難い強靱性と接着性を併せ持つアクリルエマルジョン組成物が製造される。
【0030】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンは、2〜2000重量部使用される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンの使用量が2重量部未満の場合には、十分な接着性が発現されず、使用量が2000重量部を超える場合には、アクリルエマルジョン組成物の架橋性が不足して、被膜が脆くなり、また耐水性、耐酸性などの化学的性質が悪化する。
【0031】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンは、好ましくは、5〜2000重量部、より好ましくは、10〜1000重量部、さらに好ましくは、20〜500重量部使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン物の使用量が5〜2000重量部のとき、アクリルエマルジョン組成物の貯蔵安定性が良好で、接着性、機械的性質にバランスがとれて優れた性能を発揮する傾向が見られる。
【0032】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンの重量平均分子量が、好ましくは、500〜80000、より好ましくは、1000〜50000、さらに好ましくは、1000〜30000であるのが望ましい。
【0033】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、上市されているポリエチレンイミンとして、例えば、「エポミンSP−006」(分子量600)、「エポミンSP−012」(分子量1200)、「エポミンSP−018」(分子量1800)、「エポミンSP−200」(分子量10000)、「エポミンP−1000」(分子量70000)(以上、日本触媒(株)社の製品)などが例示される。
【0034】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、上市されているポリアリルアミンとして、例えば、「PAA−01」(分子量1000)、「PAA−03」(分子量3000)、「PAA−05」(分子量5000)、「PAA−08」(分子量8000)、「PAA−15C」(分子量15000)、「PAA−25」(分子量25000)(以上、日東紡(株)社の製品)などが例示される。
【0035】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、重量平均分子量500〜80000のポリエチレンイミン、ポリアリルアミンが使用されるとき、アクリルエマルジョン組成物の貯蔵安定性が良好となり、種々素材に対する接着性が最大に発揮される傾向が見られる。
【0036】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤が使用される。
【0037】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、非イオン性乳化剤のHLBは、16〜19であり、好ましくは、16.5〜19、より好ましくは、17〜19であるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、非イオン性乳化剤のHLBが16未満の場合には、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを混合する際、凝集物の発生や増粘が起こる。HLBが19を超える場合には、アクリルエマルジョン組成物の接着力が低下する。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19であれば、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンとの混合が何らのトラブルなくスムースに実施でき、アクリルエマルジョン組成物の貯蔵安定性が、例えアクリルエマルジョンにエポキシ基含有アクリル単量体が使用されていたとしても、飛躍的に向上する。
【0038】
なお、HLB(またはHLB値)とは、当業界で一般的に使われる非イオン性乳化剤(界面活性剤)特有の指標であり、本発明のアクリルエマルジョン組成物もこれにしたがう。簡単に説明すれば、HLBは界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標である。HLBは0〜20までの値をとり、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高い。HLBが16〜19の場合には、界面活性剤が水に透明に溶解し、一般に可溶化剤として使用される。
【0039】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤として、好ましくは、「エマルゲン147」(HLB16.3)、「エマルゲン150」(HLB18.4)(以上、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、「エマルゲン430」(HLB16.2)(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、「エマルゲン1118S−70」(HLB16.4)、「エマルゲン1135S−70」(HLB17.9)、「エマルゲン1150S−60」(HLB18.5)(以上、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、「エマルゲン4085」(HLB18.9)(ポリオキシエチレンミリスチルエーテル)(以上、花王(株)社の製品)などが例示される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0040】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤を使用することにより、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを凝集、沈殿、増粘などの不具合を起こすことなく混合でき、アクリルエマルジョン組成物の貯蔵安定性が飛躍的に向上する。
【0041】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤のなかでは、アルキル基の炭素原子数が8〜14個のポリオキシエチレンアルキルエーテルが望ましく、好ましくは、「エマルゲン1118S−70」(HLB16.4)、「エマルゲン1135S−70」(HLB17.9)、「エマルゲン1150S−60」(HLB18.5)(以上、花王(株)社の製品)などのポリオキシエチレンアルキルエーテルが望ましく使用される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLB16〜19のポリオキシエチレンアルキルエーテルが使用されるとき、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンとの混合がスムースに実施でき、アクリルエマルジョン組成物の貯蔵安定性が一段と向上するだけでなく、被塗物への親和性、ヌレ性が向上して接着性が良好となる傾向が見られる。
【0042】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤は、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン100重量部に対し、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤1〜200重量部が使用される。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤の使用量が1重量部未満の場合には、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンとを凝集、増粘などの不具合を起こすことなく混合することが不可能となり、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤の使用量が200重量部を超える場合には、アクリルエマルジョン組成物の接着力が悪化する。
【0043】
本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤は、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン100重量部に対し、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤が、好ましくは、1.5〜160重量部、より好ましくは、2〜120重量部、さらに好ましくは、2.5〜120重量部使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョン組成物では、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤の使用量が1.5〜160重量部であれば、アクリルエマルジョンとポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンとの混合が何らのトラブルなくスムースに実施でき、アクリルエマルジョン組成物の貯蔵安定性が、例えアクリルエマルジョンにエポキシ基含有アクリル単量体が使用されていたとしても、飛躍的に向上する傾向が見られる。
【0044】
本発明のアクリルエマルジョン組成物は、アクリルエマルジョン、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン、および、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤を所定の量で混合することにより製造できる。この際、アクリルエマルジョン量が多い場合には、好ましくは、アクリルエマルジョンに所定量のHLBが16〜19の非イオン性乳化剤を添加し、攪拌しながら、ポリアミン化合物を添加、攪拌、混合することで製造できる。ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンの量が多い場合には、好ましくは、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンにHLBが16〜19の非イオン性乳化剤を添加し、攪拌しながら、アクリルエマルジョンを添加することで製造できる。また、粘度が必要以上に高くなる場合には、好ましくは、イオン交換水を添加することができる。さらにまた、泡立ちが多く混合作業性が悪い場合には、好ましくは、消泡剤を添加することができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例で本発明の詳細を説明する。なお、以下の実施例では、評価方法、測定方法等を次の通りとした。
【0046】
1)固形分(%)
JIS K 5407:1997にしたがって加熱残分を測定、これを固形分とした。なお、測定は140℃で30時間加熱乾燥し、行った。
【0047】
2)pH
pHメーターを使用し、25℃で測定した。
【0048】
3)粘度
B型粘度計を使用し、25℃で測定した。
【0049】
4)粒子径
濃厚系粒径アナライザー「FPAR−1000」(大塚電子(株)社の分析機)を使用して測定した。
【0050】
5)貯蔵安定性
アクリルエマルジョン組成物を100mLガラスビンにとり、密栓して23℃で1ヶ月間静置した。状態(外観、増粘)を目視観察し、製造直後と変わらないものを合格とした。
【0051】
6)付着性
ポリカーボネート板にアクリルエマルジョン組成物を乾燥膜厚が5μmになるよう塗布し、100℃で20分間加熱乾燥した。この試験片を使用して、JIS K 5400:1997にしたがい、碁盤目テープ法で試験した。100/100を合格とし、それ以下の場合は不合格とした。
【0052】
7)塩水噴霧試験
JIS G 3141 SPCE級鋼板をアクリルエマルジョン組成物中に浸漬し、乾燥塗膜厚が5μmとなるよう塗布し、これを140℃で30分間加熱乾燥した。この試験片を使用して、JIS Z 2371:2000にしたがって、48時間、塩水噴霧試験を行い、塗膜の防蝕性を評価した。なお、一部のアクリルエマルジョン組成物については、さらに試験時間を延長し384時間、塩水噴霧試験を行った。
【0053】
錆の発生が全くないものを合格(○)、カット部に錆の発生が見られるものを不合格(△)、カット部以外にも錆が見られるものを不合格(×)とした。
【0054】
以下、実施例および比較例で使用するアクリルエマルジョンの製造について説明する。アクリルエマルジョン(AE−1〜AE−8)の製造処方、特性値等についての詳細を表1に示した。なお、表1中、(1)は、フラスコに仕込むイオン交換水、希釈用のイオン交換水を表す。(2)は、乳化重合用の反応性乳化剤であり、「アデカリアソーブSR−1025」は旭電化工業(株)社の製品、「アクアロンKH−1025」は第一工業製薬(株)社の製品である。(3)は、アクリルエマルジョンに使用するアクリル単量体を表す。(4)は、重合開始剤を表し、2,2´−アゾビス[2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]は和光純薬工業(株)社の製品「VA−061」である。(5)は製造したアクリルエマルジョンの特性値を示した。
【0055】
実施例および比較例で使用するアクリルエマルジョンの製造
アクリルエマルジョンAE−1の製造
攪拌機、窒素ガス吹き込み口、還流冷却器、温度センサーを備えた500ミリリットル四つ口フラスコに窒素ガスを吹き込みフラスコ内を窒素ガス置換した。
【0056】
フラスコにあらかじめ窒素ガスを吹き込み脱酸素処理を行ったイオン交換水(フラスコ仕込みイオン交換水)32.4g、反応性乳化剤の「アクアロンKH−1025」(第一工業製薬(株)社の製品)10g、アクリル単量体混合物のメタクリル酸メチル/メタクリル酸n−ブチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(=48/20/15/1/16)100gのうち、20gを仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点で、重合開始剤の過硫酸アンモニウム0.5gを添加し、80℃まで30分間で昇温した。ここ後、80℃で60分間乳化重合を行った。
【0057】
アクリル単量体混合物の残り80gをフラスコに3時間で滴下し、滴下終了後、さらに2時間乳化重合を行って希釈用イオン交換水190.5gを添加し、40℃以下になるまで冷却し、アクリルエマルジョンAE−1を製造した。
【0058】
アクリルエマルジョンAE−1は、固形分30.2%、粘度350mPa・s、pH2.6、粒子径85nmであった。
【0059】
アクリルエマルジョンAE−2〜AE−8の製造
表1に示すとおり、各原料組成、仕込量等を変える以外はアクリルエマルジョンAE−1の製造と同様にしてアクリルエマルジョンAE−2〜AE−8を製造した。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例1
ステンレス製容器にアクリルエマルジョンAE−1を100g、イオン交換水123.5gを仕込み、攪拌を行った。これに、「アデカネートB−1016」(旭電化工業(株)社の消泡剤)を0.05g添加し、30分間攪拌を行った。次いで、「エマルゲン1118S−70」(花王(株)社の非イオン性乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、HLBは16.4)を6.4g(ポリアミン化合物100重量部に対し75部に相当)を添加し、さらに30分間攪拌を行った。さらに、PAA−08(日東紡(株)社のポリアリルアミン水溶液、固形分15%、重量平均分子量8000)の40.0g(アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し20部に相当)を少しずつ添加し、添加終了後1時間攪拌を行った後、125メッシュのナイロン製網でろ過し、実施例1のアクリルエマルジョン組成物P−1を製造した。
【0062】
アクリルエマルジョン組成物P−1製造中に大きい増粘や凝集はなく、ナイロン網でのろ過もスムースであった。
【0063】
アクリルエマルジョン組成物P−1は、固形分14.8%、粘度12.3mPa・s、pH11.6であった。アクリルエマルジョン組成物P−1を使用して行った性能試験(貯蔵安定性、付着性、塩水噴霧試験)でも良好な結果を示した。
【0064】
アクリルエマルジョン組成物P−1の製造処方詳細、特性値、性能試験結果を表2に示した。ここで、表2中、(1)は、使用したアクリルエマルジョンを示した。(2)は、希釈、固形分調節用のイオン交換水を示した。(3)は、泡立ちを押さえるための消泡剤「アデカネートB−1016」(旭電化工業(株)社製の消泡剤)を示した。(4)は、使用した非イオン性乳化剤を示した。「エマルゲン1118S−70」(HLB16.4)、「エマルゲン1135S−70」(HLB17.9)、「エマルゲン1150S−60」(HLB18.5)はいずれも花王(株)社の製品で、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。(5)は、使用したポリアミン化合物を表す。「エポミンSP−200」の15%水溶液は、「エポミンSP−200」(日本触媒(株)社のポリエチレンイミン、分子量10000)をイオン交換水で固形分が15%になるよう希釈したものである。「PAA−03」、「PAA−05」、「PAA−08」、「PAA−15C」はいずれも日東紡(株)社のポリアリルアミン水溶液であり、固形分はそれぞれ20%、20%、15%、15%である。また、分子量は、それぞれ3000、5000、8000、15000である。(6)は、アクリルエマルジョン組成物の特性値、(7)はアクリルエマルジョン組成物を使用した性能試験結果を示した。
【0065】
実施例2〜16
実施例2〜実施例16のアクリルエマルジョン組成物を実施例1のアクリルエマルジョン組成物P−1と同様にして製造した。実施例2〜8のアクリルエマルジョン組成物P−2〜P−8の製造処方詳細、特性値、性能試験結果を表2に示した。実施例9〜16のアクリルエマルジョン組成物P−9〜P−16の製造処方詳細、特性値、性能試験結果を表3に示した。
【0066】
実施例2のアクリルエマルジョン組成物P−2〜実施例16のアクリルエマルジョン組成物P−16製造中に大きい増粘や凝集はなく、ナイロン網でのろ過もスムースであった。
【0067】
表2に示したとおり、アクリルエマルジョン組成物P−2〜P−8は、貯蔵安定性、付着性、塩水噴霧性に良好な性能を発揮した。
【0068】
表3に示したとおり、アクリルエマルジョンAE−5(アクリル単量体組成:メタクリル酸イソボルニル/アクリル酸シクロヘキシル/グリシジルメタクリレート)、AE−6(アクリル単量体組成:メタクリル酸イソボルニル/ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート)を使用したアクリルエマルジョン組成物は、塩水噴霧試験において優れた性能を発揮した。塗膜は薄膜でありながら、優れた耐蝕性、防蝕性を示すことが明らかとなった。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
比較例1
ステンレス製容器にアクリルエマルジョンAE−5を100g、イオン交換水123.8gを仕込み、攪拌を行った。これに、「アデカネートB−1016」(旭電化工業(株)社の消泡剤)を0.05g添加し、30分間攪拌を行った。次いで、「エマルゲン120」(花王(株)社の非イオン性乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、HLBは15.3)を4.2g(ポリアミン化合物100重量部に対し70部に相当)を添加し、さらに30分間攪拌を行った。さらに、PAA−03(日東紡(株)社のポリアリルアミン水溶液、固形分15%、重量平均分子量3000)の30.0g(アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、20部に相当)を少しずつ添加し、添加終了後1時間攪拌を行った後、125メッシュのナイロン製網でろ過し、比較例1のアクリルエマルジョン組成物P−17を製造した。
【0072】
アクリルエマルジョン組成物P−17製造には、HLB15.3の非イオン性乳化剤を使用した。このため、アクリルエマルジョン組成物P−17製造中に大きい増粘があり、ペースト状となった。また、多くの凝集物が発生した。ナイロン網でのろ過はできず、特性値評価、性能試験は実施できなかった。
【0073】
アクリルエマルジョンP−17の製造処方詳細、特性値、性能試験結果を表4に示した。ここで、表4中、(1)は、使用したアクリルエマルジョンを示した。(2)は、希釈、固形分調節用に使用したイオン交換水を示した。(3)は、泡立ちを押さえるための消泡剤「アデカネートB−1016」(旭電化工業(株)社製の消泡剤)を示した。(4)は、使用した非イオン性乳化剤を示した。「エマルゲン120」(HLB15.3)、「エマルゲン1135S−70」(HLB17.9)はいずれも花王(株)社の製品で、それぞれポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。(5)は、使用したポリアミン化合物を表す。「PAA−03」は日東紡(株)社のポリアリルアミン水溶液であり、固形分はそれぞれ20%、分子量3000である。(6)は、アクリルエマルジョン組成物の特性値、(7)は、アクリルエマルジョン組成物を使用した性能試験結果を示した。
【0074】
比較例2
ステンレス製容器にアクリルエマルジョンAE−6を100g、イオン交換水102.1gを仕込み、攪拌を行った。これに、「アデカネートB−1016」(旭電化工業(株)社の消泡剤)を0.05g添加し、30分間攪拌を行った。次いで、「エマルゲン1135S−70」(花王(株)社の非イオン性乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、HLBは17.9)を0.043g(ポリアミン化合物100重量部に対し0.5部に相当)を添加し、さらに30分間攪拌を行った。さらに、PAA−03(日東紡(株)社のポリアリルアミン水溶液、固形分15%、重量平均分子量3000)の30.0g(アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、20部に相当)を少しずつ添加し、添加終了後1時間攪拌を行った後、125メッシュのナイロン製網でろ過し、比較例2のアクリルエマルジョン組成物P−18を製造した。
【0075】
アクリルエマルジョン組成物P−18の製造ではHLB17.9の非イオン性乳化剤を使用したが、使用量が少なかった。このため、アクリルエマルジョン組成物P−18製造中に大きい増粘があり、ペースト状となった。また、多くの凝集物が発生した。ナイロン網でのろ過はできず、特性値評価、性能試験は実施できなかった。
【0076】
比較例3〜比較例5
表4に示した組成、仕込量で、実施例1と同様にして比較例3〜比較例5のアクリルエマルジョン組成物P−19〜P−21を製造した。
【0077】
アクリルエマルジョン組成物P−19〜P−21製造中に大きい増粘や凝集はなく、ナイロン網でのろ過もスムースであった。
【0078】
表4に示したとおり、比較例3のアクリルエマルジョン組成物P−19では、非イオン性乳化剤の量が過剰であるため、付着性、塩水噴霧試験で性能の悪化が見られた。比較例4のアクリルエマルジョン組成物P−20では、ポリアミン量が少なすぎるため、付着性、塩水噴霧試験で性能の悪化が見られた。比較例5のアクリルエマルジョン組成物P−21では、ポリアミン量が過剰であるため、貯蔵安定性が劣悪で、貯蔵経時で増粘、ゲル化が観測された。
【0079】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルエマルジョンの固形分100重量部に対し、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミンを2〜2000重量部含み、ポリエチレンイミンおよび/またはポリアリルアミン100重量部に対し、HLBが16〜19の非イオン性乳化剤を1〜200重量部含むアクリルエマルジョン組成物。
【請求項2】
非イオン性乳化剤が、アルキル基の炭素原子数が8〜14個のポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1に記載のアクリルエマルジョン組成物。
【請求項3】
アクリルエマルジョンがエポキシ基含有アクリル単量体を含む請求項1または2に記載のアクリルエマルジョン組成物。

【公開番号】特開2010−180293(P2010−180293A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23384(P2009−23384)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】