説明

アクリルシラップ

【課題】種々の用途に適しかつ安定した品質のアクリルシラップの提供。
【解決手段】(A)メタクリル酸メチルを主成分とする単量体39〜90重量%、(B)メタクリル酸メチル単位を主成分とする単量体から得られ、GPCで測定した重量平均分子量が2万〜50万である重合体60〜9重量%、(C)炭素数4〜20のメルカプタン0.0005〜3.0重量%、(D)炭素数1〜30の脂肪族カルボン酸とグリセリンとの部分エステル化合物及び/又はブタジエンを主成分とする単量体から得られたポリマー0.0001〜0.3重量%及び(E)ヒンダードフェノール系重合禁止剤0.001〜1.0重量%(合計100重量%)からなり、25℃における粘度が10〜500,000mPa・sであるアクリルシラップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタクリル酸メチルを主成分とする単量体を重合して得られる重合体を含む、アクリルシラップに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルシラップはメタクリル樹脂注型板、光伝送繊維や光導波路等の光学材料、アクリル人造大理石、人工印材、床材、接着剤、粘着剤、文化財・剥製等修復材料又は医療用材料等の中間原料として用いられている。このうちメタクリル酸メチルを主成分とするメタクリル酸メチルシラップの製造方法は特許、文献等に多く紹介されており、その製造方法は以下の2つに大別される。1つは特開昭49−104937号公報、特開平9−194673号公報等に開示されている、別途調製した重合体を単量体に溶解する方法である。本発明とは基本的に異なる製造方法であり、しかも一旦重合体を取り出した後再度単量体に溶解するため、エネルギー的にも経済的にも不利である。もう1つは、単量体を部分的に塊状重合させる方法であり部分重合法とも呼ばれ、更に部分重合法は回分法と連続法とに分けられる。
【0003】
部分重合法のうち回分法による製造方法として、例えば特公昭36−3392号公報には、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体及び連鎖移動剤からなる原料を80℃に昇温し、少量の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル又は過酸化ベンゾイルを重合開始剤として加え、同時に100℃に昇温して27〜50分重合し、所定の粘度になった時点で重合禁止剤としてハイドロキノンを含有する冷たいメタクリル酸メチルを加えて急冷することによりアクリルシラップを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では重合開始剤が完全に分解しない状態で重合を停止するため、得られたシラップ中に重合開始剤が残存しており、たとえ重合禁止剤を加えても貯蔵安定性の劣ったものとなる。例えば重合開始剤に用いる過酸化ベンゾイルの100℃での半減期は約22分であるから、所定の粘度に達した時点では加えた量に対して42〜20%の重合開始剤が製品中に残存している。また反応に必要な量の重合開始剤を一度に添加するために一旦重合開始剤を加えた後に昇温を行うため、僅かな温度変化により製品の重合率、分子量、引いては製品粘度に大きく影響するため安定した製造は行えない。
【0004】
特公平1−11652号公報及び特開平9−67495号公報では、SMC又はBMCの中間原料としてシラップを製造するに際し、メタクリル酸メチル89重量%、メタクリル酸5重量%、トリメチロールプロパントリメタクリレート6重量%からなる単量体100部に対しn−ドデシルメルカプタン0.4部、2,2' −アゾビスイソブチロニトリル0.05部を含む原料を仕込み、80℃で重合を行い、反応液が所定の粘度に達した時点で重合禁止剤としてハイドロキノン及びp−メトキシフェノールを加え速やかに室温まで冷却し重合を停止する方法により、カルボン酸を含むアクリルシラップを製造する方法が開示されている。しかしながらこの方法で得られたシラップ中には重合開始剤が残存しており、たとえ重合禁止剤を加えても貯蔵安定性の劣ったものとなる。また反応に必要な量の重合開始剤を一度に添加するために反応の制御が困難であり、重合率、分子量及び製品粘度が大きく変化するので優れた製造方法とは言えない。しかも得られたシラップ中に重合開始剤が残存する可能性が大きく、たとえ重合禁止剤を加えても貯蔵安定性の劣ったものとなり、また貯蔵中に着色する原因ともなる。重合開始剤が残存しないようにするため重合温度での半減期の短い重合開始剤を用いれば良いが、この場合多量の重合開始剤を必要とするため、重合反応が急速に進行する結果となり反応を制御することがはなはだ困難となる。このため回分法で使用可能な重合開始剤は重合温度での半減期が長いものに制限されると言うジレンマに陥る。
【0005】
一方メルカプタン類により重合が進行することについては、例えば特公昭46−40693号公報で連鎖移動剤としてメルカプタン類のように活性水素を有する硫黄化合物を用い、重合開始剤を加えずに65〜105℃で部分重合を行いアクリルシラップを製造する方法が開示されている。この方法では所望の重合率まで重合するためには大量の連鎖移動剤を必要とし、分子量の高い重合体を含むアクリルシラップを得ることができない。また分子量の高い重合体を含むアクリルシラップを得るためには少量の連鎖移動剤を用いて長時間反応することが必要となり、いずれの場合にも実用的ではない。
【0006】
ところで、上述した回分重合法においては系内組成物の沸点より低い温度で重合が行われていた。他方、重合組成物の沸点で重合を行うことにより温度変化を小さくすることが期待できるが、実際には重合が進み系内の粘度が上昇するにつれ、発泡による液面上昇又はこれに起因する槽内付着物の生成等の問題が生じる。大型装置では反応液の体積に比べ液面の面積が小さくなることからこの傾向が顕著になる。そのため、沸点重合は現実的には不可能と言って良い状況にあった。これらを解決する手段として、特開昭53−24380号公報にはメタクリル酸メチル70重量%以上を含むモノマーを(共)重合する際、オルガノシロキサン類1〜10,000ppm を添加することを特徴とする重合物製造方法を開示している。しかしながら、上記特許明細書にも明記されているように基本的にオルガノシロキサン類はアクリルモノマー及びポリマーとの相溶性がなく、得られた成型品は白濁を呈する。加えて、オルガノシロキサン類が成型品の表面現れると塗装の際のハジキの原因になったり、ほこり付着の遠因になったりするため使用には注意を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来法の上記のような問題点を解決し、種々の用途に適しかつ安定した品質のアクリルシラップ及び該アクリルシラップの効率的かつ簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究した結果、特定の製造方法によって種々の用途に適し、かつ安定した品質のアクリルシラップを効率的、かつ容易に製造し得ることを見いだし本発明に到った。すなわち本発明は、(1)メタクリル酸メチルを主成分とする単量体原料の20〜70重量%に、炭素数1〜30の脂肪族カルボン酸とグリセリンとの部分エステル化合物及び/又はブタジエンを主成分とする単量体から得られたポリマーからなる消泡剤を添加した後、昇温し、(2)系内組成物の温度が沸点に達し、還流を開始した時点で連鎖移動剤の全量を添加し、(3)還流を維持しながら、残りの単量体を該沸点での半減期が10〜300秒である重合開始剤とともに0.1〜10時間かけて連続的又は分割して添加し、(4)添加終了後さらに加熱を継続し、(5)加熱終了後にヒンダードフェノール系重合禁止剤を加えることを特徴とするアクリルシラップの製造方法に関する。また本発明は、(A)メタクリル酸メチルを主成分とする単量体39〜90重量%、(B)メタクリル酸メチル単位を主成分とする単量体から得られ、GPCで測定した重量平均分子量が2万〜50万である重合体60〜9重量%、(C)炭素数4〜20のメルカプタン0.0005〜3.0重量%、(D)炭素数1〜30の脂肪族カルボン酸とグリセリンとの部分エステル化合物及び/又はブタジエンを主成分とする単量体から得られたポリマー0.0001〜0.3重量%及び(E)ヒンダードフェノール系重合禁止剤0.001〜1.0重量%(合計100重量%)からなり、25℃における粘度が10〜500,000mPa・sであることを特徴とするアクリルシラップに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により所望の特性を有するアクリルシラップを安定に製造することができ、かつ得られたシラップは成型性に優れたものであり、工業的意義は大きい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明のアクリルシラップ及びその製造方法について具体的に説明する。本発明では単量体成分としてメタクリル酸メチルを必須成分とし、メタクリル酸メチルと共重合可能な他のビニル性単量体成分を任意に加えて用いることができる。この単量体成分はメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸等の不飽和カルボン酸;前記不飽和カルボン酸のエステル、ニトリル、アミド、イミド及び酸無水物;スチレン等の芳香族ビニル;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニル等のエチレン性二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0011】
本発明ではメタクリル酸メチルを必須成分とする単量体原料の初めの仕込み分に消泡剤を添加した後、単量体原料の沸点まで昇温する。消泡剤添加後で昇温する前に、初期仕込原料に対し200〜1000vol%の不活性ガスを仕込原料に接触させて溶存酸素濃度を置換したのち昇温してもよい。不活性ガスとしては窒素が例示できる。消泡剤としては、重合反応及び得られた製品に悪影響を及ぼさず、気泡を安定化させる物質の活動を抑制し、液体の泡抜けをよくするもの、表面の泡を破泡するもの、かつ液体粘度を低下させる性質を有する物質が選択される。この様な消泡剤として本発明では炭素数1〜30の脂肪族カルボン酸とグリセリンとの部分エステル化合物及び/又はブタジエンを主成分とする単量体から得られたポリマーからなる消泡剤が用いられる。具体的にはビックケミー・ジャパン(株)「プラスチック添加剤」や、花王(株)「花王のプラスチック用滑剤」等に記載されているカプリル酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ミリスチン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、リノレン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド及びベヘニン酸モノグリセリド等の炭素数1〜30の脂肪酸とグリセリンとの部分エステル化合物;ブタジエンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー等のブタジエンを主成分とする単量体のポリマーである。
【0012】
消泡剤添加量は、必要な性能を発揮するために単量体原料全量(初めに仕込む単量体と後に加える単量体との合計量)に対して0.0001〜0.3重量%添加することが望ましい。0.3%を超えて添加しても消泡効果に大きな違いは見られない。添加した消泡剤は最終製品を製造する際に気泡の内包を抑制し、成型時の脱泡を良くするために、注型板、光伝送繊維や光導波路等の光学材料、アクリル人造大理石、人工印材、床材、接着剤、粘着剤、文化財・剥製等修復材料又は医用材料等の最終製品においても外観不良率又は機械的欠陥を低減させると言う効果も期待できる。
【0013】
本発明では単量体原料の初めの仕込み分に消泡剤を添加した後、単量体原料の沸点まで昇温する。沸点に達したら、還流を開始する。還流の目的は追加原料の添加により系内にもたらされる酸素を系外へ除去することであり、それにより重合反応を安定に行うことが出来る。
【0014】
還流を開始した時点で全量添加される連鎖移動剤としては重合反応を阻害せず所望の分子量の製品が得られるメルカプタン類が用いられ、例えば、1−ブタンチオール、2,2−ジメチルエタンチオール、1−オクタンチオール、2,2−ジメチルヘキサンチオール、1−ドデカンチオール、2,2−ジメチルデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタデカンチオール、ベンゼンチオール、チオクレゾール、チオナフトール等炭素数4〜20のメルカプタン類の少なくとも1種を使用する。連鎖移動剤の添加量は単量体原料全量に対し0.0005〜3.0重量%、好ましくは0.03〜1.5重量%である。
【0015】
連鎖移動剤を添加したのち、残りの単量体を該沸点での半減期が10〜300秒である重合開始剤とともに0.1〜10時間かけて連続的又は分割して添加する。本発明で使用する重合開始剤は、反応温度での半減期が10〜300秒になるような重合開始剤であり、この様な重合開始剤を用いることにより重合開始剤を完全に消費させ、得られるシラップの貯蔵安定性を向上させることができる。この様な重合開始剤は日本油脂(株)「有機過酸化物」資料第13版、アトケム吉富(株)技術資料 及び和光純薬工業(株)「Azo Polymerization Initiators」等に記載の諸定数等により容易に求めることができ、例えば2,2' −アゾビスイソブチロニトリル、2,2' −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2' −アゾビス(2,4ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1' −アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート及びビス( 4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が例示される。
【0016】
重合開始剤は、単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができ、所望の重合率を得るために必要な量が添加される。そして重合開始剤は単独で添加する方法、又は単量体原料と混合して添加する方法のいずれも用いることができる。本発明により製造されたアクリルシラップの粘度は重合率、分子量及び重合体中のメタクリル酸メチルと共重合可能な不飽和単量体単位の組成により影響を受けるが、必要な粘度範囲を満足するためには、単量体原料全量に対する重合開始剤の使用量は5 .0×10-5〜2.0重量%が好ましく、5 .0×10-4〜1.0重量%がさらに好ましい。
【0017】
追加の単量体と重合開始剤との添加時間が10時間を超えることも可能であるが、仕込から製品取出までの工程時間が長くなり生産性の点から好ましくない。また、連鎖移動剤としてメルカプタン類を用いた場合には僅かずつ重合が進行することが知られている。最初に仕込む原料中にメルカプタン類を加えた状態で昇温すると、昇温速度の長短により重合率が変動するため安定した製造が行えない。また、重合開始剤と同時に連鎖移動剤を調合すると、重合開始剤と連鎖移動剤とのレドックス反応による原料槽内での重合が起こる虞があり好ましくない。
【0018】
本発明においては追加の単量体と重合開始剤との添加終了後、一定時間加熱を継続し重合反応を完結させた後、重合禁止剤を添加した後冷却し製品を取り出す。加熱終了時に重合禁止剤を加えることにより、冷却操作中にメルカプタン類による重合を完全に防止し、さらに安全に製造でき、安定した製品品質のアクリルシラップを製造することができる。また加熱終了時に重合禁止剤を加えることによりアクリルシラップの貯蔵安定性は良好となるため、アクリルシラップ中に残存するメルカプタン類の不活性化処理を行う必要はない。
【0019】
得られたシラップの重合及び着色をさけるため、本発明ではヒンダードフェノール系重合禁止剤を用いる。ヒンダードフェノール系重合禁止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、4,4' −チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)及び/又は2,2' −メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。これらのヒンダードフェノール系重合禁止剤は単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。ヒンダードフェノール系重合禁止剤の添加量は単量体原料全量に対して0.001〜1.0重量%が好ましく、0.005〜0.3重量%がより好ましい。
【0020】
以上のようにして得られたアクリルシラップは、(A)メタクリル酸メチルを主成分とする単量体39〜90重量%、(B)メタクリル酸メチル単位を主成分とする単量体から得られ、GPCで測定した重量平均分子量が2万〜50万である重合体60〜9重量%、(C)炭素数4〜20のメルカプタンから選ばれる少なくとも1種の化合物0.0005〜3.0重量%、(D)炭素数1〜30の脂肪族カルボン酸とグリセリンとの部分エステル化合物及び/又はブタジエンを主成分とする単量体から得られたポリマー0.0001〜0.3重量%及び(E)ヒンダードフェノール系重合禁止剤0.001〜1.0重量%(合計100重量%)からなり、25℃における粘度が10〜500,000mPa・sである。
【0021】
本発明の方法により得られたアクリルシラップは注型板、光伝送繊維や光導波路等の光学材料、アクリル人造大理石、人工印材、床材、接着剤、粘着剤、文化財・剥製等修復材料又は医用材料等の中間原料として用いることができる。必要に応じ充填材、繊維補強材、低収縮剤、滑剤、可塑剤、増粘剤、有機溶剤等の希釈剤、架橋剤、レベリング剤、沈降防止剤、離型剤、酸化防止剤、UV吸収剤、顔料及び/又は染料等の公知の添加剤を混合し用いることもできる。本発明をさらに具体的に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
重合率は重量法により、試料を大量の冷ヘキサン中に投入し生じた沈澱物を精製・減圧乾燥し求めた。重合体の分子量は東ソー(株)製8010型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。粘度はB型粘度計を用い25℃で測定した。
【0023】
実施例1
温度計、還流冷却器、定量ポンプ、撹拌装置を取り付けた1.5リットルセパラブル四つ口フラスコに、メタクリル酸メチル458g、メタクリル酸10.9g及びブタジエンを主成分とする単量体のポリマー(ビックケミー社、商品名BYK−A515)0.090gからなる混合物を投入し、100rpmで攪拌しながら昇温した。温度が100℃に達したところで連鎖移動剤としての1−ドデカンチオール2.6gをすばやく加え、次いで重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.058gを溶解したメタクリル酸メチル472gを3時間かけて定量ポンプを用いて2.6g/分で滴下した。滴下終了後0.15時間加熱を継続し重合禁止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却し、無色透明なアクリルシラップを得た。重合の進行に伴い反応溶液の粘度が高くなり泡が発生したが、界面に於いて直ちに破泡し、重合後期及び終了時に於いても泡の相はみられなかった。得られたシラップの重合率は31.3%で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は10.3万であった。また、25℃における粘度は4,200mPa・sであった。
【0024】
実施例2
実施例1におけるBYK−A515の0.09gをBYK−A515の0.045gに変更した以外は、実施例1と同様の反応を行いアクリルシラップを得た。重合の進行に伴い反応溶液中に泡が生じたが、気相部への泡抜けが良く、重合終了時でも泡の相はみられなかった。得られたアクリルシラップは無色透明であり、重合率は31.4%で、重量平均分子量(Mw)は10.0万であった。25℃における粘度は4,700mPa ・sであった。
【0025】
実施例3
実施例1におけるBYK−A515をステアリン酸モノグリセリド2.83gに変更する以外は、実施例1と同様の反応を行いアクリルシラップを得た。重合の進行に伴い反応溶液中に泡が生じたが、気相部への泡抜けが非常に良く、重合終了時でも泡の相はみられなかった。得られたアクリルシラップは無色透明で、重合率は32.2%、重量平均分子量(Mw)は10.0万で、25℃における粘度は6,100mPa ・sであった。
【0026】
実施例4
実施例1におけるBYK−A515をカプリル酸モノグリセリド2.83gに変更する以外は、実施例1と同様の反応を行いアクリルシラップを得た。重合の進行に伴い反応溶液中に泡が生じたが、気相部への泡抜けが良く、重合終了時でも泡の相はみられなかった。得られたアクリルシラップは無色透明であり、重合率は33.0%で、重量平均分子量(Mw)は10.0万であった。25℃における粘度は6,000mPa ・sであった。
【0027】
実施例5
実施例1と同様の装置にメタクリル酸メチル458g、メタクリル酸10.9g及びBYK−A515の0.090gを仕込み、100rpmで攪拌しながら昇温した。温度が101℃に達したところで連鎖移動剤としての1−ドデカンチオール1.1gをすばやく加え、次いで重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.030gを溶解したメタクリル酸メチル472gを3時間かけて定量ポンプより加えた。滴下終了後0.25時間加熱を継続し重合禁止剤としての6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール0.2gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却し、無色透明なアクリルシラップを得た。重合の進行に伴い反応溶液の粘度が高くなり泡が発生したが、界面に於いて直ちに破泡し、重合後期及び終了時に於いても泡の相はみられなかった。得られたシラップの重合率は24.3%で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は20.3万であった。また、25℃における粘度は6,100mPa ・sであった。
【0028】
実施例6
実施例1と同様の装置にメタクリル酸メチル472gとオレイン酸モノグリセリド2.83gを仕込み、80rpmで攪拌しながら昇温した。温度が101℃に達したところで連鎖移動剤としての1−ドデカンチオール3.4gを加え、次いで重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.041gを溶解したメタクリル酸メチル472gを3時間かけて定量ポンプより加えた。滴下終了後0.25時間加熱を継続し重合禁止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却し、無色透明なアクリルシラップを得た。重合の進行に伴い反応溶液の粘度が高くなり泡が発生したが、界面に於いて直ちに破泡し、重合後期及び終了時に於いても泡の相はみられなかった。得られたシラップの重合率は27.6%で、GPCにより測定したMwは7.9万であった。また、25℃における粘度は500mPa ・sであった。
【0029】
実施例7
実施例1と同様の装置にメタクリル酸メチル472gとBYK−A515の0.090gを仕込み、100rpmで攪拌しながら昇温した。温度が101℃に達したところで連鎖移動剤としての1−ドデカンチオール3.4gを加え、次いで重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.102gを溶解したメタクリル酸メチル472gを3時間かけて定量ポンプより加えた。滴下終了後0.25時間加熱を継続し重合禁止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1.0gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却し、無色透明なアクリルシラップを得た。重合の進行に伴い反応溶液の粘度が高くなり泡が発生したが、界面に於いて直ちに破泡し、重合後期及び終了時に於いても泡の相はみられなかった。得られたシラップの重合率は40.4%で、GPCにより測定したMwは8.0万であった。また、25℃における粘度は50,000mPa ・sであった。
【0030】
比較例1
実施例1におけるBYK−A515を添加しない以外は、実施例1と同様の反応を行った。重合の進行に伴い、反応溶液の粘度上昇により泡が生じ、重合反応の進行と共に界面より泡立ちはじめ、高さ約5mmの泡の相ができたが重合反応を停止するまでには至らなかった。得られたシラップの重合率は32.1%で、GPCにより測定したMwは10.1万であった。また、25℃における粘度は5,000mPa ・sであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メタクリル酸メチルを主成分とする単量体39〜90重量%、(B)メタクリル酸メチル単位を主成分とする単量体から得られ、GPCで測定した重量平均分子量が2万〜50万である重合体60〜9重量%、(C)炭素数4〜20のメルカプタン0.0005〜3.0重量%、(D)炭素数1〜30の脂肪族カルボン酸とグリセリンとの部分エステル化合物及び/又はブタジエンを主成分とする単量体から得られたポリマー0.0001〜0.3重量%及び(E)ヒンダードフェノール系重合禁止剤0.001〜1.0重量%(合計100重量%)からなり、25℃における粘度が10〜500,000mPa・sであることを特徴とするアクリルシラップ。

【公開番号】特開2010−47766(P2010−47766A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242254(P2009−242254)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【分割の表示】特願2000−326624(P2000−326624)の分割
【原出願日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】