説明

アクリル樹脂組成物、該アクリル樹脂組成物からなるアクリル樹脂成形体および光拡散板

【課題】 光拡散板の表面に使用することで光拡散板への埃などの付着を防止し、その結果、光拡散板の輝度低下を抑制可能なアクリル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 アクリル樹脂成形体とした時のJIS K 6911に準拠した表面抵抗値が、1×1013Ω未満であるアクリル樹脂組成物。このアクリル樹脂組成物からなるアクリル樹脂成形体を表面に備えた光拡散板を使用することにより、輝度低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板の表面の保護層形成に好適なアクリル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置として、液晶層の下面側にバックライトユニットが装備され、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式のものが普及している。バックライト方式は、冷陰極管等からなる光源の配置の仕方により、サイド型と直下型に大別される。いずれの液晶表示装置においても、光源からパネルに至る光伝達路でのロスを抑え、パネル上の輝度を向上させることが求められているが、特に近年、15インチを超えるような大画面の液晶テレビやPC用ディスプレイ等の需要が飛躍的に増加しており、このような大型の平面発光装置として、直下型のバックライトユニットが用いられるケースが増えている。
直下型バックライトユニットは、光源の背面に反射板を、発光面に光拡散板を配置して光源からの光を反射および拡散させる方式であり、発光面のすぐ裏側にランプを配置できるために多数のランプを使用でき、高輝度を発揮できるという長所がある。
【0003】
このような直下型バックライトユニットに使用される光拡散板としては、主にポリカーボネート樹脂からなるものが提案され実用化されている。
例えば、特許文献1には、大型液晶ディスプレイや液晶テレビ用途として、ポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板が提案されている。この光拡散板は、反りが少なく、優れた面発光性を有し、かつ、輝度ムラが無く、色調に優れるという特徴を有している。
【特許文献1】特開2004−126185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような光拡散板には、帯電により埃などが付着しやすく、それにより輝度低下を招くという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、光拡散板の表面に使用することで光拡散板への埃などの付着を防止し、その結果、光拡散板の輝度低下を抑制可能なアクリル樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、光拡散板の表面を、特定の表面抵抗値のアクリル樹脂組成物で形成することにより、上記課題を解決可能であることに想到し、本発明を完成するに至った。
本発明のアクリル樹脂組成物は、光拡散板の表面を形成するアクリル樹脂組成物であって、該アクリル樹脂組成物からなるアクリル樹脂成形体のJIS K 6911に準拠した表面抵抗値が、1×1013Ω未満であることを特徴とする。
本発明のアクリル樹脂成形体は、前記アクリル樹脂組成物からなることを特徴とする。
本発明の光拡散板は、前記アクリル樹脂成形体を表面に備えたことを特徴とする。
本発明のバックライトユニットは、前記光拡散板を備えたことを特徴とする。
本発明の液晶表示装置は、前記バックライトユニットを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光拡散板の表面に使用することで光拡散板への埃などの付着を防止し、その結果、光拡散板の輝度低下を抑制可能なアクリル樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
[アクリル樹脂組成物]
本発明のアクリル樹脂組成物は、光拡散板の表面の形成に好適に使用されるものであって、アクリル樹脂成形体とした場合に、そのアクリル樹脂成形体単独での表面抵抗値が、1×1013Ω未満のものである。光拡散板は、液晶表示装置のバックライトユニットなどにおいて、冷陰極管などからなる光源の発光面に配置され、光源からの光を拡散させるものである。
このようなアクリル樹脂組成物で光拡散板の表面を形成することにより、光拡散板への埃などの付着が防止でき、その結果、光拡散板の輝度低下を抑制することができる。具体的には、アクリル樹脂組成物からなるアクリル樹脂フィルムを、保護層として光拡散板本体の表面に積層し、光拡散板とする形態が好適である。このような方法では、光拡散板の表面に均一に埃付着防止効果を付与できる。
なお、本発明において表面抵抗値は、JIS K 6911に準拠し、アクリル樹脂成形体を23℃、50%RHの状態に24時間放置した後、同雰囲気中、印加電圧500Vの条件で超絶縁計(東亜電波工業(株)製SM−10E型)を用いて測定した値である。
【0009】
アクリル樹脂組成物は、光拡散板の少なくとも一方の面の形成に使用されるが、好ましくは両表面、すなわち、光源側表面および液晶側表面の両方に使用されると、光拡散板の輝度低下をより抑制できる。また、好ましいアクリル樹脂組成物の表面抵抗値は、5×1012Ω未満であり、より好ましくは1×1012Ω未満である。
【0010】
このような表面抵抗値のアクリル樹脂組成物は、例えばアクリル樹脂に対して帯電防止剤を配合することにより得られる。
帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩やグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤や、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系などの導電性高分子などが使用できる。これらの中では、アクリル樹脂に均一に分散し、十分な帯電防止性を付与できること、さらに熱安定性、着色性、透明性、成形性(製膜性)などの観点から、グリセリン脂肪酸モノまたはジエステル、あるいはアルキルベンゼンスルホネートが好ましい。具体的な帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸エステルからなる理研ビタミン(株)製「リケマールS100A」、グリセリン脂肪酸エステルからなる花王(株)製「エレクトロストリッパーTS−5」、アルキルスルホン酸塩からなる竹本油脂(株)製「MOA215」が例示できる。
帯電防止剤の添加量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.2〜10質量部の範囲が好ましい。0.2質量部以上とすると、帯電防止性が発現しやすく、10質量部以下とすると、アクリル樹脂組成物から例えばフィルムを成形する際の製膜性、フィルムの透明性、耐温水白化性も良好となる。より好ましい添加量は1〜5質量部である。
【0011】
また、本発明のアクリル樹脂組成物は、フィルムなどのアクリル樹脂成形体とした時に、JIS K7361−1による全光線透過率が、80%以上であることが好ましい。全光線透過率が80%以上であれば、アクリル樹脂組成物で表面が形成された光拡散板は光源からの光が効率良く透過するため、これを用いた液晶表示装置は発光品位が良好になる。さらに好ましい全光線透過率は85%以上、より好ましくは90%以上である。
【0012】
さらに、本発明のアクリル樹脂組成物は、フィルムなどのアクリル樹脂成形体とした時に、アクリル樹脂成形体単独での引張弾性率(JIS K7161に従う引張特性を試験したときの値)は、500〜3000MPaであることが好ましい。
引張弾性率が500〜3000MPaの場合、アクリル樹脂組成物からなるフィルムを光拡散板本体に連続してラミネートするときに、しわによる外観異常が減少する傾向にある。好ましくは500〜2000MPa、より好ましくは700〜1500MPaである。良好な外観は、液晶表示装置に用いられる光拡散板において最も重要な要素である。
【0013】
本発明のアクリル樹脂組成物を構成するアクリル樹脂としては、特に限定されないが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートおよびブチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を主原料とし、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として用いることによって得られる単一重合体または共重合体が挙げられる。
また、特公昭59−36646号公報、特公昭62−19309号公報、特公昭63−20459号公報および特開昭63−77963号公報に記載されているような多層構造重合体を用いることができる。
【0014】
好ましくは、本発明のアクリル樹脂組成物では、アクリル(メタ)アクリレートを主成分とするゴム含有重合体を含むアクリル樹脂を使用する。ゴム含有重合体としては、以下に説明する多層構造重合体(I)、多層構造重合体(III)、ゴム含有グラフト共重合体(IV)が挙げられる。これらのゴム含有重合体を少なくとも1種含んだアクリル樹脂組成物は、耐光性、透明性が良好であるため、光拡散板の表面の形成に好適である。
また、アクリル樹脂として、これらゴム含有重合体とともに、アルキルメタクリレートを主成分として含む後述の熱可塑性重合体(II)をさらに含有するものを使用すると、アクリル樹脂組成物を例えばフィルムとする際の流動性が優れ、膜厚の安定性が良好となる。さらに、得られたフィルムは透明性が良好であり外観の点から好ましいとともに、光拡散板本体に積層する時などにしわなどが入りにくいことからも好適である。
【0015】
以下、上述した多層構造重合体(I)、多層構造重合体(III)、ゴム含有グラフト共重合体(IV)、熱可塑性重合体(II)について具体的に説明する。
(多層構造重合体(I))
多層構造重合体(I)は、中心から最内層重合体(I−A)、第1中間層重合体(I−B)、第2中間層重合体(I−C)、最外層重合体(I−D)の順に配置された多層構造重合体である。
最内層重合体(I−A)は、少なくとも、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−A1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−A2)、芳香族ビニル単量体(I−A3)および多官能性単量体(I−A4)を重合して得られ、ガラス転移温度が10℃以上である重合体である。
第1中間層重合体(I−B)は、少なくとも、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−B1)、芳香族ビニル単量体(I−B2)、多官能性単量体(I−B3)およびグラフト交叉剤(I−B5)を重合して得られ、ガラス転移温度が0℃以下である重合体である。
第2中間層重合体(I−C)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−C1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−C2)、芳香族ビニル単量体(I−C3)およびグラフト交叉剤(I−C4)を重合して得られた重合体である。
最外層重合体(I−D)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−D1)、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−D2)および芳香族ビニル単量体(I−D3)を重合して得られ、ガラス転移温度が50℃以上である重合体である。
【0016】
さらに各重合体(I−A)〜(I−D)は、次のような構成であることが好ましい。
すなわち、最内層重合体(I−A)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−A1)30〜99.7質量%、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−A2)0.1〜69.8質量%、芳香族ビニル単量体(I−A3)0.1〜25質量%、多官能性単量体(I−A4)0.1〜10質量%およびグラフト交叉剤(I−A5)0〜5質量%を重合して得られ、ガラス転移温度(以下、Tgと記す)が10℃以上である重合体であることが好ましい。なお、(I−A1)+(I−A2)+(I−A3)+(I−A4)+(I−A5)=100質量%である。
Tgが10℃以上の場合、アクリル樹脂組成物の透明性が良好になる傾向にあるため好ましい。また、多層構造重合体(I)100質量%に占める最内層重合体(I−A)の量は、得られるアクリル樹脂組成物の透明性の点で2〜35質量%が好ましい。
【0017】
第1中間層重合体(I−B)は、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−B1)60〜99.7質量%、芳香族ビニル単量体(I−B2)0.1〜39.8質量%、多官能性単量体(I−B3)0.1〜10質量%、共重合可能な二重結合を有する単量体(I−B4)0〜20質量%およびグラフト交叉剤(I−B5)0.1〜5質量%を重合して得られた、Tgが0℃以下である重合体であることが好ましい。なお、(I−B1)+(I−B2)+(I−B3)+(I−B4)+(I−B5)=100質量%である。
Tgが0℃以下の場合、アクリル樹脂組成物からフィルムを成形する際の製膜安定性が優れる。また、得られたアクリル樹脂フィルムは強度が十分であり、これを光拡散板本体に積層する際に切れたりせず、加工性が良好になる傾向がある。また、多層構造重合体(I)100質量%に占める第1中間層重合体(I−B)の量は5〜60質量%であることが好ましい。
【0018】
第2中間層重合体(I−C)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−C1)20〜89.8質量%、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−C2)10〜79.8質量%、芳香族ビニル単量体(I−C3)0.1〜25質量%およびグラフト交叉剤(I−C4)0.1〜5質量%を重合して得られた重合体であることが好ましい。なお、(I−C1)+(I−C2)+(I−C3)+(I−C4)=100質量%である。
多層構造重合体(I)100質量%に占める第2中間層重合体(I−C)の量は、2〜20質量%であることが好ましい。また、多層構造重合体(I)の製造中における第2中間層重合体(I−C)段階でのラテックス粒子径は、0.03〜0.2μmであることが好ましい。
【0019】
最外層重合体(I−D)は、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−D1)51〜99.8質量%、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−D2)0.1〜48.9質量%および芳香族ビニル単量体(I−D3)0.1〜25質量%を重合して得られた、Tgが50℃以上である重合体であることが好ましい。なお、(I−D1)+(I−D2)+(I−D3)=100質量%である。
Tgが50℃以上の場合、アクリル樹脂組成物の耐熱性が良好になる傾向にあるため好ましい。また、多層構造重合体(I)100質量%に占める最外層重合体(I−D)の量は、アクリル樹脂組成物の耐熱性の点で10〜80質量%であることが好ましい。
【0020】
ここで、重合体のTgは、例えば、単量体a,b,c・・・からなる共重合体の場合、以下のFox式で求められる。
1/Tg=ma/Tga+mb/Tgb+mc/Tgc・・・
Tg:共重合体のTg[K]
ma:単量体aの質量分率
Tga:単量体aから得られるホモポリマーのTg[K]
mb:単量体bの質量分率
Tgb:単量体bから得られるホモポリマーのTg[K]
mc:単量体cの質量分率
Tgc:単量体cから得られるホモポリマーのTg[K]
【0021】
最内層重合体(I−A)を構成する炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(I−A1)としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でも、透明性の点からメチルメタクリレートが望ましい。
炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−A2)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でも、Tgの点からブチルアクリレートが望ましい。
芳香族ビニル単量体(I−A3)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でも、経済性の点からスチレンが好ましい。
多官能性単量体(I−A4)は、同程度の共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体である。多官能性単量体(I−A4)としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートのようなアルキレングリコールジメタクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;アルキレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でも、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートがさらに好ましい。
グラフト交叉剤(I−A5)は、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体である。グラフト交叉剤(I−A5)としては、例えば、共重合性のα,β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のアリルエステル、メタアリルエステル、クロチルエステル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でも、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレートが特に好ましい。
【0022】
第1中間層重合体(I−B)を構成する炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート(I−B1)としては、(I−A2)で示したアルキルアクリレートを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
芳香族ビニル単量体(I−B2)としては、(I−A3)で示したスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
多官能性単量体(I−B3)としては、(I−A4)で示したエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートのようなアルキレングリコールジメタクリレート;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;アルキレングリコールシアクリレート等を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でも、アルキレングリコールジメタクリレートが好ましく、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートがさらに好ましい。
共重合可能な二重結合を有する単量体(I−B4)としては、上述の単量体(I−B1)〜(I−B3)以外で、かつ上述の単量体と共重合可能な単量体であり、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アクリル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
グラフト交叉剤(I−B5)としては、(I−A5)で示した共重合性のα,β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のアリルエステル、メタアリルエステル、クロチルエステル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でも、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレートが特に好ましい。
【0023】
第2中間層重合体(I−C)および最外層重合体(I−D)を構成する単量体およびグラフト交叉剤としては、最内層重合体(I−A)および第1中間層重合体(I−B)と同様のものが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
多層構造重合体(I)の最終ラテックス粒子径は、0.03〜0.2μmであることが好ましく、さらに好ましい粒子径は0.04〜0.15μm、最も好ましい粒子径は0.05〜0.1μmである。最終ラテックス粒子径が大きくなり過ぎると、アクリル樹脂組成物の透明性が低下するだけでなく、温度変化により透明性が変化することがある。その結果、アクリル樹脂組成物で光拡散板の表面を形成した場合、冷陰極管等の光源からの熱により透明性が変化すると、発光品位の低下を招く可能性がある。一方、粒子径が小さくなりすぎると、例えばアクリル樹脂組成物をフィルムに成形する際、フィルムが切れやすくなって加工性が悪化する場合がある。また、得られたアクリル樹脂フィルムを光拡散板本体に積層する際にもアクリル樹脂フィルムが強度不足により切れて、加工性が悪化する場合がある。光拡散板の表面に使用されるアクリル樹脂組成物は、透明性が高い方が液晶表示装置にしたときの発光品位の点で好ましく、また、加工性の点で耐衝撃性が高いほうが好ましい。
【0025】
さらに、全光線透過率や曇価の温度依存性を少なくするためには、多層構造重合体(I)において各層に占める炭素数4以下のアルキルメタクリレート量が、第1中間層重合体(I−B)から、第2中間層重合体(I−C)、最外層重合体(I−D)に向かって単調増加し、かつ最内層重合体(I−A)に占めるアルキルメタクリレート量が第1中間層重合体(I−B)に占める量より多いことが好ましい。
また、多層構造重合体(I)の各層を構成する各重合体(I−A)〜(I−D)における芳香族ビニル単量体と炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートとの質量比(芳香族ビニル単量体/アルキルアクリレート)が5/95〜50/50であることが好ましく、10/90〜30/70であることがさらに好ましい。該質量比が、この範囲から離れるにつれて多層構造重合体(I)の透明性が低下し、光拡散板の表面を形成した時にこれを用いた液晶表示装置の発光品位が低下する傾向にある。
【0026】
多層構造重合体(I)の製造法としては、乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法である。多層構造重合体(I)の製造は、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、それぞれの重合体の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法によっても行うことができる。
また、特に限定されるわけではないが、多層構造重合体(I)を乳化重合により製造する場合は、最内層重合体(I−A)を与える単量体成分をあらかじめ水および界面活性剤と混合して乳化液を調製し、この乳化液を反応器に供給し重合した後、残りの各層を構成する単量体成分をそれぞれ順に反応器に供給し、重合する方法が好ましい。
最内層重合体(I−A)を与える単量体成分を、あらかじめ水および界面活性剤と混合して調製した乳化液を反応器に供給し、重合させることにより、特にアセトン中に分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が当該多層構造重合体(I)100gあたり0〜50個である多層構造重合体(I)を容易に得ることができる。こうして得られた多層構造重合体(I)を含有するアクリル樹脂組成物をフィルム状にしたものは、フィッシュアイが少なく外観が良好になりとともに、光学的物性が良好になるため好ましい。さらに好ましくは、アセトン中に分散させた際にその分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が、当該多層構造重合体(I)100gあたり0〜30個、さらに好ましくは0〜20個となる多層構造重合体(I)である。
【0027】
なお、多層構造重合体をアセトン中に分散させた際にその分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数は、秤量した粉状の多層構造重合体をアセトン中に、濃度5質量%〜10質量%の範囲で分散させ、分散液を調製し、この分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数をJIS B9921に準拠する光散乱式のパーティクルカウンター等により測定することで求められる。
また、分散液を調製する際は、アセトンを十分に多層構造重合体の粒子間に浸透させるために、予め多層構造重合体を55μmより小さい目開きのメッシュ上で多層構造重合体の良溶媒にて超音波洗浄させた後、メッシュ上の残存物を再度アセトン中に分散させる方法が好ましい。このようにして分散液を調製すると、分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数をより正確に測定可能である。
【0028】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、およびノニオン系の界面活性剤が使用でき、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン石鹸;オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等が挙げられる。このうち、特に昨今問題となっている内分泌かく乱化学物質からの生態系保全の点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が好ましい。
【0029】
上記界面活性剤の好ましい具体例としては、三洋化成工業社製のNC−718、東邦化学工業社製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、花王社製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407等が挙げられる。
【0030】
また、乳化液を調製する方法としては、水中に単量体成分を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、水中に界面活性剤を仕込んだ後、単量体成分を投入する方法、単量体成分中に界面活性剤を仕込んだ後、水を投入する方法等が挙げられる。このうち、水中に単量体を仕込んだ後界面活性剤を投入する方法、および水中に界面活性剤を仕込んだ後単量体成分を投入する方法が多層構造重合体(I)を得る方法としては好ましい。
また、乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機;ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置;膜乳化装置等が挙げられる。
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体成分の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。
【0031】
多層構造重合体(I)を構成する最内層重合体(I−A)、第1中間層重合体(I−B)、第2中間層重合体(I−C)、および最外層重合体(I−D)を形成する際に使用する重合開始剤としては、公知のものが使用できる。その添加方法は、水相、単量体相のいずれか片方、または双方に添加する方法を採用できる。特に好ましい重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。この中でさらにレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0032】
多層構造重合体(I)を製造する最も好ましい具体的方法としては、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリットを含む水溶液を反応器内で重合温度まで昇温した後、最内層重合体(I−A)を与える単量体成分と乳化剤とヒドロパーオキサイドとを含む乳化液をこの反応器に供給して重合し、ついで過酸化物等の重合開始剤を含む第1中間層重合体(I−B)、第2中間層重合体(I−C)、および最外層重合体(I−D)を与える単量体成分を順次反応器に供給し重合する方法挙げられる。重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは60〜95℃である。また、多層構造重合体(I)を乳化重合で得るときは、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤は公知のものが使用でき、好ましくはメルカプタン類である。
多層構造重合体(I)は、上述の方法で製造した重合体ラテックスから回収される。回収方法としては特に限定されないが、塩析または酸析凝固、あるいは噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられ、粉状で回収される。
【0033】
(多層構造重合体(III))
多層構造重合体(III)は、中心から最内層重合体(III−A)、中間層重合体(III−B)、最外層重合体(III−C)の順に配置された多層構造重合体である。
最内層重合体(III−A)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−A1)に由来する単位およびグラフト交叉剤(III−A5)に由来する単位を有する重合体である。
中間層重合体(III−B)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−B1)に由来する単位、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−B2)に由来する単位およびグラフト交叉剤(III−B5)に由来する単位を有し、かつ最内層重合体(III−A)とは異なる組成の重合体である。
最外層重合体(III−C)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−C1)に由来する単位を有する重合体である。
【0034】
さらには、各重合体(III−A)〜(III−C)は、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物の透明性やアクリル樹脂成形体の強度など、物性の点から、次のような組成であることが好ましい。
すなわち、最内層重合体(III−A)を構成する全単量体単位100質量%中の各単位の含有量は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−A1)に由来する単位については、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物の成形性および強度等の物性の点から50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは55〜77.9質量%であり、最も好ましくは60〜69.9質量%である。
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−A2)に由来する単位については、0〜49.9質量%が好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは30質量%以上である。また、最も好ましくは39.9質量%以下である。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−A3)に由来する単位については、0〜20質量%が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。
多官能性単量体(III−A4)に由来する単位については、0〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、6質量%以下である。
グラフト交叉剤(III−A5)に由来する単位については、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%以上の含有量では、得られる多層構造重合体を含有するアクリル樹脂組成物を透明性等の光学的物性を低下させずに成形することができる。また、10質量%以下の含有量では、多層構造重合体に十分な柔軟性、強靭さを付与することができるため好ましい。より好ましくは0.5質量%以上、2質量%以下である。
【0035】
中間層重合体(III−B)を構成する全単量体単位100質量%中の各単位の含有量は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−B1)に由来する単位については、9.9〜90質量%が好ましい。多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物の透明性の観点から、より好ましくは19.9質量%以上、最も好ましくは29.9質量%以上である。また、より好ましくは60質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−B2)に由来する単位については、9.9〜90質量%が好ましい。多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物の透明性の観点から、より好ましくは39.9質量%以上、最も好ましくは49.9質量%以上である。また、より好ましくは80質量%以下、最も好ましくは70質量%以下である。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−B3)に由来する単位については、0〜20質量%であり、より好ましくは15質量%以下である。
多官能性単量体(III−B4)に由来する単位については、0〜10質量%であり、より好ましくは6質量%以下である。
グラフト交叉剤(III−B5)に由来する単位については、0.1〜10質量%である。0.1質量%以上の含有量では、得られる多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物について、透明性等の光学的物性を低下させずに成形することができる。また、10質量%以下の含有量では、多層構造重合体(III)に十分な柔軟性、強靭さを付与することができるため、好ましい。より好ましくは0.5質量%以上であり、2質量%以下である。
【0036】
最外層重合体(III−C)を形成するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、共重合可能な二重結合を有する他の単量体、多官能性単量体、およびグラフト交叉剤の含有量は、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物の成形性、透明性の観点から、以下の範囲が好ましい。
最外層重合体(III−C)を構成する全単量体単位100質量%中、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−C1)に由来する単位については、80〜100質量%が好ましく、より好ましくは85質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−C2)に由来する単位については、0〜20質量%が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、より好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。
共重合可能な二重結合を有する単量体(III−C3)に由来する単位については、0〜20質量%が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。
【0037】
最内層重合体(III−A)を構成する炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−A1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、好ましいものはn−ブチルアクリレートである。
最内層重合体(III−A)を構成する炭素数1〜4のアルキルメタクリレート(III−A2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルメタクリレートである。
最内層重合体(III−A)を構成する共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−A3)としては、例えば、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体;スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が使用できる。
【0038】
最内層重合体(III−A)を構成する多官能性単量体(III−A4)は、必要に応じて用いることができる。多官能性単量体とは、同程度の共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体と定義する。その好ましい具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが挙げられる。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。これらのうち、好ましいものは1,3−ブチレングリコールジメタクリレートである。また、多官能性単量体(III−A4)が全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤(III−A5)が存在する限り、かなり安定な多層構造重合体(III)を形成することが可能であるので、多官能性単量体(III−A4)は、例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて、任意に用いればよい。
最内層重合体(III−A)を構成するグラフト交叉剤(III−A5)とは、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体と定義する。その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸のアクリルエステルが好ましい。これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し、好ましい。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。グラフト交叉剤(III−A5)においては、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基、またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。アリル基、メタリル基、またはクロチル基の実質上、かなりの部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。また、その際には、連鎖移動剤を使用してもよい。
【0039】
なお、最内層重合体(III−A)単独のTgは、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物からなるフィルムの強度など、物性の観点から、後述の中間層重合体(III−B)単独のTg未満であることが好ましい。より好ましくは5℃未満、さらに好ましくは0℃以下、最も好ましくは−5℃以下である。
また、多層構造重合体(III)100質量%中の最内層重合体(III−A)の含有量は、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物の透明性の点で15〜50質量%が好ましく、より好ましくは15〜35質量%である。この場合、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物で光拡散板の表面を形成した際の光学的物性の点で有利である。
【0040】
最内層重合体(III−A)は、単層でも良いが、2層からなるものがより好ましい。また、最内層重合体(III−A)中の2層の単量体構成比は、それぞれ同じでもよいし、異なっていてもよい。
最内層重合体(III−A)が2層からなり、その2層の単量体構成比が異なる場合、内側層(III−A−1)のTgは、外側層(III−A−2)のTgより高くてもよいし低くてもよい。
また、透明性の観点から、最内層重合体(III−A)100質量%中の内側層(III−A−1)の含有量は1〜20質量%が好ましく、外側層(III−A−2)の含有量は80〜99質量%が好ましい。光拡散板の表面を形成するアクリル樹脂組成物は、透明性が高い方が好ましい。
最内層重合体(III−A)が2層からなる場合の好ましい多層構造重合体としては、特公昭62−19309号公報に記載の多層構造重合体等が挙げられる。
【0041】
中間層重合体(III−B)を構成する炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−B1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルアクリレート、n−ブチルアクリレートである。
中間層重合体(III−B)を構成する炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−B2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルメタクリレートである。
中間層重合体(III−B)を構成する共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−B3)としては、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が使用できる。
【0042】
中間層重合体(III−B)を構成する多官能性単量体(III−B4)は、必要に応じて用いればよい。その好ましい具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが挙げられる。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。これらのうち、好ましいものは1,3−ブチレングリコールジメタクリレートである。また、多官能性単量体(III−B4)が全く作用しない場合でも、グラフト交叉剤(III−B5)が存在する限り、かなり安定な多層構造重合体(III)を形成することが可能であるので、多官能性単量体(III−B4)は、例えば、熱間強度等が厳しく要求されたりする場合など、その添加目的に応じて添加に用いればよい。
中間層重合体(III−B)を構成するグラフト交叉剤(III−B5)としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリル、またはクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、またはフマル酸のアクリルエステルが好ましい。これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し、好ましい。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。グラフト交叉剤(III−B5)においては、主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基、またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。アリル基、メタリル基、またはクロチル基の実質上、かなりの部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。また、その際には連鎖移動剤を使用してもよい。
【0043】
また、中間層重合体(III−B)の組成は、最内層重合体(III−A)の組成と異なることが好ましい。これらの重合体の組成が異なることで、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物を成形した時の耐衝撃性などの物性、透明性などを満足できる。
ここで、本発明で言う「異なる組成」とは、各重合体を形成するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、共重合可能な二重結合を有する他の単量体、多官能性単量体、およびグラフト交叉剤の、種類および/または量が異なることである。
【0044】
中間層重合体(III−B)単独のTgは、5〜100℃の範囲であることが好ましい。Tgが5℃以上の場合、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物の耐熱性、耐擦傷性、透明性が良好になるため好ましい。より好ましくは10℃以上、最も好ましくは15℃以上である。またTgが100℃以下の場合、成形性の良好な多層構造重合体が得られるため好ましい。より好ましくは70℃以下、最も好ましくは50℃以下である。
また、特に限定されるわけではないが、多層構造重合体(III)100質量%中の中間層重合体(III−B)の含有量は、5〜35質量%が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。この範囲内であれば、中間層として必要な機能、例えば透明性を発現させることができる。
【0045】
最外層重合体(III−C)を構成する炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(III−C1)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルメタクリレートである。
最外層重合体(III−C)を構成する炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(III−C2)は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良い。その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用できる。これらのうち、好ましいものはメチルアクリレート、n−ブチルアクリレートである。
最外層重合体(III−C)を構成する共重合可能な二重結合を有する他の単量体(III−C3)としては、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が使用できる。
【0046】
また、特に限定されないが、最外層重合体(III−C)の重合時に連鎖移動剤を使用し、最外層重合体(III−C)の分子量を調整することができる。この連鎖移動剤は通常ラジカル重合に用いられるものの中から選択して用いるのが好ましく、具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられ、これらは単独、または2種以上を混合して使用できる。連鎖移動剤の含有量は、最外層重合体(III−C)を与える単量体成分((III−C1)〜(III−C3))100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。より好ましくは0.2質量部以上、最も好ましくは0.4質量部以上である。
【0047】
最外層重合体(III−C)単独のTgは、60℃以上が好ましい。該Tgが60℃以上の場合、多層構造重合体(III)を含有するアクリル樹脂組成物をフィルム状に成形したときの耐擦傷性が優れる等、フィルム物性の良好なアクリル樹脂フィルムが得られるため好ましい。より好ましくは80℃以上、最も好ましくは90℃以上である。
また、特に限定されないが、多層構造重合体(III)100質量%中の最外層重合体(III−C)の含有量は、フィルム物性の点で15〜80質量%が好ましく、より好ましくは45〜80質量%、最も好ましくは45〜70質量%以下である。
【0048】
多層構造重合体(III)の好適な製造法の詳細については、多層構造重合体(I)と同様である。そのような製造法によれば、アセトン分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が多層構造重合体(III)100gあたり0〜50個である多層構造重合体(III)を容易に得ることができる。また、こうして得られた多層構造重合体(III)を原料に用いたアクリル樹脂フィルムは、フィルム中のフィッシュアイ数が少ないという特性を有し、外観が良好になり、光学的物性が優れるため好ましい。さらに好ましくは、アセトン中に分散させた際にその分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数が、当該多層構造重合体(III)100gあたり0〜30個、さらに好ましくは0〜20個となる多層構造重合体(III)である。
【0049】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としても、多層構造重合体(I)について示した界面活性剤と同様のものが使用できる。
また、乳化液を調製する方法も、多層構造重合体(I)と同様の方法が好ましい。
また、多層構造重合体(III)を構成する最内層重合体(III−A)を与える単量体成分を水、および界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製するための混合装置としては、多層構造重合体(I)を製造する際の乳化液の調製に用いられる装置が挙げられる。
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体成分の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。
さらに、重合開始剤の種類、具体的な重合方法、重合温度などについても、多層構造重合体(I)の場合と同様である。また、先にも述べたが、多層構造重合体(III)を乳化重合で得るときは、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤は公知のものが使用でき、好ましくはメルカプタン類である。
多層構造重合体(III)は、上述の方法で製造した重合体ラテックスから回収される。回収方法としては特に限定されないが、塩析または酸析凝固、あるいは噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられ、粉状で回収される。
【0050】
(ゴム含有グラフト共重合体(IV))
ゴム含有グラフト共重合体(IV)は、アクリル樹脂組成物の成形性等をより高めるためのものであって、弾性共重合体100質量部の存在下に、アルキルメタクリレート50〜100質量%と、共重合可能なビニル系単量体の少なくとも1種0〜50質量%とからなるグラフト成分10〜400質量部を少なくとも1段階以上で重合させることにより得られ、ラテックス粒子径が0.15〜0.5μmのゴム含有グラフト共重合体である。ここで、弾性共重合体は、アルキルアクリレート35〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜65質量%とからなるビニル単量体成分100質量部に対して、架橋性単量体0.1〜10質量部を重合させて得られた1層以上の構造を有するものである。
【0051】
弾性共重合体のビニル単量体成分に使用されるアルキルメタクリレートとしては、公知のアルキル基の炭素数1〜8のものが用いられ、そのうちブチルアクリレート、2―エチルヘキシルアクリレート等が好ましい。
また、その使用量は、ビニル単量体成分中35〜100質量%の範囲で使用される。35質量%以下ではアクリル樹脂組成物の伸度が不足し、フィルムへの成形が困難になる場合がある。好ましい使用範囲は50〜90質量%である。
ビニル単量体成分には、共重合可能な他のビニル単量体を65質量%以下の範囲で使用してもよく、具体的には、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましく、これらを1種以上使用できる。
【0052】
弾性共重合体に使用される架橋性単量体としては特に制限はないが、好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられ、これらを1種以上使用できる。
架橋性単量体は、ビニル単量体成分100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で使用される。0.1質量部未満では、弾性共重合体にグラフトされる単量体量が極端に少なくなり、アクリル樹脂組成物を成形する際の成形性が不十分となる場合があり、10質量部を超えて使用してもよいが、添加量に見合う効果は発現しない。好ましい使用範囲は0.3〜7質量部である。
【0053】
弾性共重合体は、1層または2層以上の構造とすることができる。2層以上の構造とする場合、弾性共重合体の全体としてのアルキルアクリレートの含有量が35質量%以上であればよい。例えばハード芯構造にする場合は、1層目のアルキルアクリレートの含有量を35質量%以下とすることもできる。
【0054】
弾性共重合体にグラフトされるグラフト成分には、アルキルメタクリレート50質量%以上が使用される。具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2―エチルヘキシルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。さらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種50質量%以下が使用でき、具体的には、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
グラフト成分は、弾性共重合体100質量部に対し10〜400質量部、好ましくは20〜200質量部が使用され、少なくとも1段以上で重合できる。
【0055】
ゴム含有グラフト共重合体(IV)は、通常の乳化重合で得られる。なお、重合時に連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤は公知のものが使用できるが好ましくはメルカプタン類である。
また、ゴム含有グラフト共重合体のラテックス粒子径は0.15〜0.5μmの範囲にあることが好適である。0.15μm未満ではアクリル樹脂組成物を成形した際の成形性が不十分となる場合があり、0.5μm以上では、ゴム含有グラフト共重合体(IV)自体の製造が困難となり、アクリル樹脂組成物からフィルムを成形した時のフィルムの透明性も悪化する傾向にある。
【0056】
(熱可塑性重合体(II))
熱可塑性重合体(II)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位50〜100質量%、およびこれと共重合可能な他のビニル単量体に由来する構成単位0〜50質量%からなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定)が0.1l/g以下の重合体である。
用いられる炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレートが最も好ましい。
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等が挙げられ、これらを1種以上使用できる。
【0057】
また、熱可塑性重合体(II)の還元粘度は、0.1l/g以下である。還元粘度が0.1l/gを超えると、流動性が悪化し、アクリル樹脂組成物の成形性の点で好ましくない。
このような熱可塑性重合体(II)を得るための重合方法は、特に限定されるものではなく、通常公知の懸濁重合法、乳化重合法等の各種方法が適用される。
熱可塑性重合体(II)は、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBRシリーズ、三菱レイヨン(株)製アクリペットとして工業的に入手可能である。
【0058】
以上説明したように、本発明においては、アクリル樹脂として、多層構造重合体(I)、多層構造重合体(III)、ゴム含有グラフト共重合体(IV)などのゴム含有重合体を少なくとも1種含み、熱可塑性重合体(II)をさらに含有するものを使用すると、耐光性、透明性、流動性などの観点から光拡散板の表面の形成に好適であるが、例えば、多層構造重合体(I)または(III)と熱可塑性重合体(II)とを組み合わせたアクリル樹脂を用いる場合、多層構造重合体(I)または(III)を20〜90質量部とし、熱可塑性重合体(II)を80〜10質量部((I)+(II)=100質量部)とすることが好ましい。多層構造重合体(I)または(III)の割合が20質量部以上では、アクリル樹脂成形体の強度が向上する傾向にあり、90質量部以下であれば、アクリル樹脂組成物を成形する際の加工性が良好になる傾向にある。
また、ゴム含有グラフト共重合体(IV)と熱可塑性重合体(II)を組み合わせたアクリル樹脂を用いる場合、アクリル樹脂100質量部中、ゴム含有グラフト共重合体(IV)は15〜99.9質量部の範囲で使用され、かつアクリル樹脂100質量部中においてゴム含有グラフト共重合体(IV)に含まれる弾性共重合体とグラフト鎖とからなる架橋弾性共重合体の割合が12質量部以上であることが好ましい。架橋弾性共重合体のアクリル樹脂中に含まれる割合が12質量部未満ではアクリル樹脂組成物を成形する際の加工性が不良となる傾向にある。
【0059】
(添加剤)
アクリル樹脂組成物は、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発砲剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、紫外線吸収剤を含むことができる。
これらのなかで特に紫外線吸収剤を添加すると、光拡散板の表面を形成した際に耐光性を付与でき、光拡散板の黄変や、それに起因する劣化を効果的に抑制できる。
使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、特に好ましくは400以上である。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系または分子量400以上のトリアジン系のものが特に好ましく使用でき、前者の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のチヌビン234、旭電化工業社のアデカスタブLA−31等、後者の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のチヌビン1577等が挙げられる。
【0060】
また、アクリル樹脂組成物を成形する際に添加される加工助剤としては、成形安定化の点から、以下に示す熱可塑性重合体(V)が好ましい。
熱可塑性重合体(V)は、メチルメタクリレート50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50質量%とを重合してなり、生成重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定)が0.2〜2l/gとなるように重合した重合体であり、アクリル樹脂組成物を成形する際の加工性、耐薬品性に対し重要な役割を示す成分である。
熱可塑性重合体(V)の還元粘度は重要であり、特に好ましい還元粘度は0.2〜0.8l/gである。
【0061】
熱可塑性重合体(V)の製造に使用される、メチルメタクリレートと共重合可能な他のビニル系単量体としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物等が挙げられる。
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートは直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。
炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートは、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−置換スチレン、核置換スチレンおよびその誘導体、例えば、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
ビニルシアン化合物としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0062】
熱可塑性重合体(V)の製造時に使用される重合開始剤としては、通常の過硫酸塩などの無機開始剤または有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。また、これら化合物と亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等とを組み合わせ、レドックス系開始剤として用いることもできる。
重合開始剤として好ましい過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が挙げられる。
【0063】
熱可塑性重合体(V)の分子量および分子量分布は、加工性付与効果に対して重要な因子であるので、熱可塑性重合体(V)の製造の際には、目的に応じて適当な連鎖移動剤を使用することができる。
重合は、重合開始剤の分解温度以上の温度にて、通常の乳化重合の条件で行うことができ、目的に応じて一段または多段で重合することができる。重合体の回収は、通常、塩析あるいは酸析凝固後、濾過、水洗し粉末状で回収するか、あるいは噴霧乾燥、凍結乾燥を行い粉末状で回収することができる。
熱可塑性重合体(V)は、三菱レイヨン(株)製メタブレンPとして工業的に入手可能である。
【0064】
熱可塑性重合体(V)の配合量は、例えば、多層構造重合体(I)、多層構造重合体(III)、ゴム含有重合体(IV)および熱可塑性重合体(II)のうちの1種以上を使用したアクリル樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。熱可塑性重合体(V)の配合量が0.1質量部未満では、アクリル樹脂組成物をフィルムに成形する際の製膜安定性など、成形安定性が不十分になる傾向がある。ここで製膜安定性とは、均一な厚みを持つフィルムを安定して製造することを意味する。一方、熱可塑性重合体(V)の配合量が10質量部を超えると、アクリル樹脂組成物を成形する際の溶融粘度が上がり、成形性が低下する傾向にある。さらに好ましい熱可塑性重合体(V)の配合量は0.5〜5質量部である。
【0065】
これら添加剤の添加方法としては、アクリル樹脂組成物を成形する際に、成形機にアクリル樹脂とともに供給する方法と、予めアクリル樹脂に添加剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法がある。後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。
なお、ここで溶融混練を行う際には、帯電防止剤としては、アクリル樹脂との溶融混練温度で分解しないものを選択することが好ましい。
【0066】
[アクリル樹脂成形体]
以上説明したアクリル樹脂組成物をフィルム状、シート状などに成形することにより、アクリル樹脂成形体を製造できる。
特に、光拡散板の表面には、アクリル樹脂成形体のうちアクリル樹脂フィルムを保護層として設けることが好適であり、フィルム成形の具体的方法としては、公知の溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法等が挙げられる。このうち経済性の点でTダイ法が最も好ましい。
保護層に好適なアクリル樹脂フィルムの厚みは、フィルム物性および加工性の点で10〜500μmである。10〜500μmであると、適度な剛性となるためラミネート性、二次加工性等が容易となり、さらに製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。さらに好ましくは15〜200μm、より好ましくは30〜200μmである。
【0067】
[光拡散板、バックライトユニットおよび液晶表示装置]
本発明の光拡散板は、例えば、液晶表示装置のバックライトユニットなどにおいて、冷陰極管などからなる光源の発光面に配置され、光源からの光を拡散させるものであって、上述のアクリル樹脂組成物で表面が形成されたものである。より好ましい形態としては、アクリル樹脂フィルムが保護層として光拡散板本体に積層された形態である。保護層は、光拡散板本体の少なくとも一方の面の積層されるが、好ましくは両表面、すなわち光源側表面および液晶側表面の両方に積層されると、光拡散板の輝度低下をより抑制できる。
バックライトユニットは、冷陰極管などからなる光源と、光源からの光を反射する反射板と、光源から光を拡散する光拡散板とを有して概略構成され、光源の配置の仕方により、サイド型と直下型に大別される。本発明のバックライトユニットとしては、サイド型、直下型のいずれでもよいが、特に高輝度を発揮できる直下型バックライトユニットにおいて本発明の光拡散板を採用すると、埃などの光拡散板への付着を防止し、輝度低下を抑制でき、さらに高輝度を発現できるため好適である。
また、このようなバックライトユニットと液晶層とを備えた液晶表示装置は、カラー液晶表示における色合いや発光品位を長時間維持することができる。
【0068】
光拡散板本体の材質は特に限定されず、シート状、板状とした時に透明であり、光線透過率が高く、複屈折率が低く、さらにはアクリル樹脂フィルムが容易に積層できるものが好ましい。
例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、MS樹脂(メチルメタクリレート−スチレン樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの中では、特に光線透過率の高いメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
また、これら樹脂中に、透明で、耐光性、耐熱性、耐湿性があり、ビーズとした場合に高い光拡散性を有するもの、すなわち光拡散剤を必要に応じて含有させてもよい。光拡散剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロヘキサン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の有機物あるいは、結晶性シリカ、ガラス、フッ化リチウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機物が挙げられる。
【0069】
アクリル樹脂組成物からなる表面が形成された光拡散板の製造方法としては、例えば光拡散板本体の表面に対して、例えば、共押出Tダイ法、共押出ラミネーション法等の共押出法を利用してアクリル樹脂組成物を積層する方法が挙げられる。また、アクリル樹脂フィルムをまず形成し、これをドライラミネーション、熱ラミネーション等のフィルムラミネーション法や、樹脂溶液をコーティングするようなコーティング法等の公知の方法を適宜利用して、光拡散板本体に積層してもよい。これらの中では、装置が簡単で、安定した品質の光拡散板が連続的に容易に得られることから、共押出法、フィルムラミネーション法が好ましく、特にフィルムラミネーション法が好ましい。
【0070】
こうして得られた光拡散板は、60℃、95%RH環境下または80℃、DRY環境下で500時間放置された後において、アクリル樹脂組成物で形成された表面の表面抵抗値が1×1013Ωを維持するものであることがより好ましい。このような表面抵抗値を維持していれば、埃等の付着が長期間抑制され、この光拡散板を備えた液晶表示装置の発光品位を長期間維持できる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されることはない。
なお、実施例および比較例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。また、参考例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート MMA
メチルアクリレート MA
ブチルアクリレート BA
スチレン St
アリルメタクリレート AMA
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 1.3BD
t−ブチルハイドロパーオキサイド tBH
クメンハイドロパーオキサイド CHP
n−オクチルメルカプタン nOM
エチレンジアミン四酢酸 EDTA
【0072】
乳化剤(1):モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム[商品名フォスファノールRS−610NA、東邦化学(株)製]
乳化剤(2):モノ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸40%とジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60%混合物の水酸化ナトリウム部分中和物[商品名フォスファノールLO529、東邦化学(株)製]
【0073】
[製造例1]光拡散板本体の作製
ビスフェノールAとホスゲンから得た粘度平均分子量24,300のポリカーボネート樹脂に、不融性アクリル系重合体微粒子(ローム・アンド・ハース・カンパニー製パラロイドEXL−5136、質量分布平均粒径:7μm)を3.5部添加混合し、ベント付きTダイ押出機により、押出機温度250〜300℃、ダイス温度260〜300℃、ベント部の真空度を26.6kPaに保持して、厚さ2mm、幅1,000mmのポリカーボネート樹脂製光拡散板本体を溶融押出した。
【0074】
[実施例1〜3、比較例1、2]
(多層構造重合体(H−1)の製造)
多層構造重合体(H−1)は先に説明した「多層構造重合体(III)」に相当するものであり、下記二層架橋ゴム弾性体は先に説明した「最内層重合体(III−A)」に相当するものである。
まず、攪拌機を備えた容器にイオン交換水8.5部を仕込んだ後、以下に示す(I)からなる単量体成分を投入し、攪拌混合した。次いで乳化剤(1)1.1部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度攪拌を20分間継続し、乳化液(N−1)を調製した。得られた乳化液中の分散相の平均粒子径は、10μmであった。
一方、冷却器付き重合容器内にイオン交換水186.5部を投入し、70℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部に以下に示す(II)を加えて調製した混合物を一括投入した。次いで、窒素下で撹拌しながら、乳化液(N−1)を8分間かけて重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、最内層重合体(A−1)の重合を完結した。ここで、最内層重合体(A−1)単独のTgは−48℃であった。
続いて、以下に示す(III)からなる単量体成分を90分間で添加した後、60分間反応を継続させ、架橋弾性重合体(B−1)を含む二層架橋ゴム弾性体を得た。ここで、架橋弾性重合体(B−1)単独のTgは−48℃であった。
続いて、以下に示す(IV)の混合物を45分間かけて重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間層(D−1)を形成させた。
次いで、(V)からなる単量体成分を140分間かけて重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、最外層重合体(C−1)を形成し、多層構造重合体(H−1)の重合体ラテックスを得た。ここで、最外層重合体(C−1)単独のTgは84℃であった。
重合後測定した質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0075】
(I) MMA 0.3部
BA 4.5部
1.3BD 0.2部
AMA 0.05部
CHP 0.025部
(II) ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2部
硫酸第一鉄 0.0001部
EDTA 0.0003部
(III) MMA 1.5部
BA 22.5部
1.3BD 1.0部
AMA 0.25部
CHP 0.016部
(IV) MMA 6部
BA 4部
AMA 0.075部
CHP 0.0125部
(V) MMA 55.2部
BA 4.8部
nOM 0.204部
tBH 0.08部
【0076】
得られた多層構造重合体(H−1)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い濾過した後、酢酸カルシウム3部含有する水溶液中に投入して塩析させ、水洗し、分離回収後、乾燥して粉体状の多層構造重合体(H−1)を得た。
多層構造重合体(H−1)のゲル含有率は、60%であった。また、多層構造重合体(H−1)をアセトンに分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数は18個であった。
【0077】
(アクリル樹脂組成物の製造)
次に、多層構造重合体(H−1)100部、紫外線吸収剤として旭電化(株)製「アデカスタブLA−31RG」2.1部、抗酸化剤として旭電化(株)製「アデカスタブAO−50」0.1部、ヒンダードアミン系光安定剤として旭電化(株)製「アデカスタブLA−57」0.3部、帯電防止剤として理研ビタミン(株)製「リケマールS100A」、花王(株)製「エレクトロストリッパーTS−5」、竹本油脂(株)製「MOA215」を表1に示す配合量で添加した後ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(東芝機械(株)製TEM−35B)に供給し、混練してペレットを得た。
【0078】
(光拡散板の製造)
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、この乾燥ペレットを、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)に供給して40μm厚みのアクリル樹脂フィルムを作製した。その際の条件は、シリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃、冷却ロール温度70℃であった。そして、得られたアクリル樹脂フィルムを光拡散板本体の片面に140℃で熱ラミネートし、光拡散板を得た。
得られたアクリル樹脂フィルムの表面抵抗値、全光線透過率、引張弾性率測定結果、および光拡散板の帯電防止性能耐久性、塵埃付着性、耐光性(曝露試験後の変色度合い)を表1に示す。
なお、各種評価方法、測定方法について以下に示す。
【0079】
1)多層構造重合体、ゴム含有重合体の質量平均粒子径
乳化重合にて得られたポリマーラテックスについて、大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定し求めた。
2)多層構造重合体、ゴム含有重合体のゲル含有率
秤量した各重合体をアセトン溶媒中還流下で抽出処理し、この抽出処理液を遠心分離により分別した。次いで、得られた固形分を乾燥後、質量測定(抽出後質量)し、以下の式にて求めた。
ゲル含有率(%)=(抽出前質量(g)−抽出後質量(g))/抽出前質量(g)
3)アクリル樹脂フィルムの全光線透過率
JIS K7361−1に準拠して評価した。
4)アクリル樹脂フィルムの引張弾性率
JIS K7127に準拠して評価した。
5)アクリル樹脂フィルムの表面抵抗値
JIS K 6911に準拠し、得られたアクリル樹脂フィルムを23℃、50%RHの状態に24時間放置した後、同雰囲気中、印加電圧500Vの条件で超絶縁計(東亜電波工業(株)製SM−10E型)を用いて表面抵抗値を測定・計算した。
6)光拡散板の帯電防止性能耐久性(耐久試験)
得られた光拡散板を60℃、95%RH環境下および80℃、DRY環境下で500時間放置し、その後光拡散板の表面抵抗値を測定・計算し、下記の基準で評価した。
○:1×1013Ω未満
△:1×1013Ω以上1×1015未満
×:1×1015Ω以上
7)光拡散板の塵埃付着性
得られた光拡散板を室内に二ヶ月間吊るし、塵埃が付着する程度を下記基準で目視評価した。
○:塵埃の付着が殆ど見られない
×:塵埃が付着して光拡散板が曇って見える
8)光拡散板の耐光性
アクリル樹脂組成物で形成された光拡散板の表面を以下に示す条件で冷陰極管実曝露し、光拡散板の変色の度合いを評価した。変色のないものを○、あるものを×で示す。
冷陰極管実曝露条件
冷陰極管:φ2.6ランプ
ランプ電流:8mA、3本並列。
雰囲気温度:23℃50RH%
ランプ−サンプル面距離:1.4mm(設計値)
サンプル面温度:50℃程度
曝露期間:6ヶ月
【0080】
[実施例4]
(多層構造重合体(L−1)の製造)
多層構造重合体(L−1)は先に説明した「多層構造重合体(I)」に相当するものである。
冷却器付き反応容器内にイオン交換水195部を投入し、70℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部に以下に示す(LL1)を加えて調製した混合物を一括投入した。次いで、窒素下で撹拌しながら、以下に示す(LL2)からなる第1の単量体成分を8分間かけて反応容器に滴下した後、15分間反応を継続させて最内重合体(L−1−A)を得た。ここで、最内層重合体(L−1−A)のTgは13℃であった。
続いて、重合容器内に、以下に示す(LL3)からなる第2の単量体成分を90分間かけて添加した後、60分間反応を継続させて架橋弾性重合体を含む第1中間層重合体(L−1−B)を得た。ここで、第1中間層重合体(L−1−B)のTgは−40℃であった。
続いて、重合容器内に、以下に示す(LL4)の第3の単量体成分を30分間かけて滴下した後、60分間反応を継続させて第2中間層重合体(L−1−C)を形成させた。
次いで、重合容器内に、以下に示す(LL5)からなる第4の単量体成分を130分間かけて滴下した後、60分間反応を継続させて最外層重合体(L−1−D)を形成させ、多層構造重合体(L−1)を含有するアクリル樹脂ラテックスを得た。ここで、最外層重合体(L−1−D)のTgは94℃であった。重合後測定した質量平均粒子径は、0.09μmであった。
得られた多層構造重合体(L−1)の重合体ラテックスを、実施例1と同様の方法で濾過した後、酢酸カルシウム3部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状の多層構造重合体(L−1)を得た。
得られた多層構造重合体(L−1)のゲル含有率は、70%であった。また、多層構造重合体(L−1)をアセトンに分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数は8個であった。
【0081】
(LL1)ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.10部
硫酸第一鉄 0.0002部
EDTA 0.0006部
(LL2)MMA 2.3部
BA 2.13部
St 0.37部
1.3BD 0.2部
CHP 0.01部
乳化剤(1) 1.3部
(LL3)BA 24.54部
St 4.26部
1.3BD 1.2部
AMA 0.225部
CHP 0.03部
(LL4)MMA 6部
BA 3.28部
St 0.72部
AMA 0.15部
CHP 0.02部
(LL5)MMA 52.25部
BA 2.26部
St 0.49部
nOM 0.193部
tBH 0.055部
【0082】
(アクリル樹脂組成物の製造)
次に、多層構造重合体(L−1)50部、熱可塑性重合体としてダイヤナールBR−75(三菱レイヨン(株)製、還元粘度0.057l/g)50部、紫外線吸収剤として旭電化(株)製「アデカスタブLA−31RG」1.5部、抗酸化剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガノックス1076」0.1部、ヒンダードアミン系光安定剤として旭電化(株)製「アデカスタブLA−57」0.2部、帯電防止剤として理研ビタミン(株)製「リケマールS100A」1部、花王(株)製「エレクトロストリッパーTS−5」1部、竹本油脂(株)製「MOA215」1部を添加した後ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(東芝機械(株)製TEM−35B)に供給し、混練してペレットを得た。
【0083】
(光拡散板の製造)
上記の方法で製造したペレットを実施例1と同様の方法で加工し、75μm厚みのアクリル樹脂フィルムを作製した。また、得られたアクリル樹脂フィルムを実施例1と同様にして光拡散板本体に積層した。
得られたアクリル樹脂フィルムおよび光拡散板の各種評価、測定結果を表1に示す。
【0084】
[実施例5]
(ゴム含有グラフト共重合体(I−2)の製造)
ゴム含有グラフト共重合体(I−2)は先に説明した「ゴム含有グラフト共重合体(IV)」に相当するものである。
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器内に脱イオン水244部を入れ、80℃に昇温した。そして、以下に示す(イ)を添加し、撹拌しながら、以下に示す最内層重合体内側層(I−2−A)用の原料(ロ)の1/15を仕込み、15分間保持した。次いで、残りの原料(ロ)を、水に対する単量体成分[原料(ロ)]の増加率8%/時間で、連続的に添加した後、60分間保持し、最内層重合体内側層(I−2−A)のラテックスを得た。なお、最内層重合体内側層(I−2−A)単独のTgは24℃であった。
続いて、このラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、以下に示す最内層重合体外側層(I−2−A)用の原料(ハ)を、水に対する単量体成分[原料(ハ)]の増加率4%/時間で、連続的に添加した後、120分間保持し、最内層重合体外側層(I−2−A)の重合を行って、最内層重合体(I−2−A)のラテックスを得た。なお、最内層重合体外側層(I−2−A)単独のTgは−38℃であった。
続いて、このラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、以下に示す最外層重合体(I−2−C)用の原料(ニ)を、水に対する単量体成分[原料(ニ)]の増加率10%/時間で、連続的に添加した後、60分間保持し、最外層重合体(I−2−C)の重合を行って、ゴム含有重合体(I−2)の重合体ラテックスを得た。なお、最外層重合体(I−2−C)単独のTgは99℃であった。重合後に測定したゴム含有重合体(I−2)の質量平均粒子径は0.28μmであった。
得られたゴム含有重合体(I−2)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き150μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い濾過した後、酢酸カルシウム3部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(I−2)を得た。得られたゴム含有グラフト共重合体(I−2)のゲル含有率は、90%であった。
【0085】
(イ)ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.6部
硫酸第一鉄 0.00012部
EDTA 0.0003部
(ロ)MMA 22.0部
nBA 15.0部
St 3.0部
AMA 0.4部
1.3BD 0.14部
tBH 0.18部
乳化剤(2) 1.0部
(ハ)nBA 50.0部
St 10.0部
AMA 0.4部
1.3BD 0.14部
tBH 0.2部
乳化剤(2) 1.0部
(ニ)MMA 57.0部
MA 3.0部
nOM 0.3部
tBH 0.06部
【0086】
(アクリル樹脂組成物の製造)
次に、ゴム含有重合体(I−2)16部、熱可塑性重合体としてアクリペットMD(三菱レイヨン(株)製、還元粘度0.057l/g)84部、紫外線吸収剤として旭電化(株)製「アデカスタブLA−31RG」1.0部、抗酸化剤として旭電化(株)製「アデカスタブAO−60」0.1部、ヒンダードアミン系光安定剤として旭電化(株)製「アデカスタブLA−67」0.15部、製膜性改良剤として三菱レイヨン(株)製「メタブレンP−551A」2部、滑剤として三菱レイヨン(株)製「メタブレンL−1000」0.8部、帯電防止剤として理研ビタミン(株)製「リケマールS100A」1部、花王(株)製「エレクトロストリッパーTS−5」1部、竹本油脂(株)製「MOA215」1部を添加した後ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(東芝機械(株)製TEM−35B)に供給し、混練してペレットを得た。
【0087】
(光拡散板の製造)
上記の方法で製造したペレットを実施例1と同様の方法で加工し、125μm厚みのアクリル樹脂フィルムを作製した。また、得られたアクリル樹脂フィルムを実施例1と同様にして光拡散板本体に積層し、光拡散板を得た。
得られたアクリル樹脂フィルムおよび光拡散板の各種評価、測定結果を表1に示す。
【0088】
[実施例6]
(多層構造重合体(Y−1)の製造)
多層構造重合体(Y−1)は先に説明した「多層構造重合体(III)」に相当するものであり、下記架橋ゴム弾性体は先に説明した「最内層重合体(III−A)」に相当するものである。
まず、攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、以下に示す(YY1)からなる単量体成分を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、乳化剤(1)1.3部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度攪拌を20分間継続し、乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部に以下に示す(YY2)を加えて調製した混合物を該重合容器内に一括投入した。次いで、窒素下で攪拌しながら、乳化液を8分間にわたり該重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合を完結させて最内層重合体(Y−1−A1)を得た。
続いて、以下に示す(YY3)からなる単量体成分を90分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、架橋弾性重合体(Y−1−A2)を含む架橋ゴム弾性体を得た。ここで、最内層重合体(Y−1−A1)単独のTgは−48℃、架橋弾性重合体(Y−1−A2)単独のTgは−10℃であった。
続いて、以下に示す(YY4)からなる単量体成分を45分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間層重合体(Y−1−B)を形成させた。ここで、中間層重合体(Y−1−B)単独のTgは60℃であった。
次いで、以下に示す(YY5)からなる単量体成分を140分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、最外層重合体(Y−1−C)を形成し、多層構造重合体(Y−1)の重合体ラテックスを得た。ここで、最外層重合体(Y−1−C)単独のTgは99℃であった。重合後測定した質量平均粒子径は0.11μmであった。
得られた多層構造重合体(Y−1)の重合体ラテックスを、実施例1と同様の方法で濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状の多層構造重合体(Y−1)を得た。得られた多層構造重合体(Y−1)のゲル含有率は、70%であった。また、多層構造重合体(Y−1)をアセトンに分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数は20個であった。
【0089】
(YY1)MMA 0.3部
BA 4.45部
1.3BD 0.2部
AMA 0.05部
CHP 0.025部
(YY2)ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.20部
硫酸第一鉄 0.0001部
EDTA 0.0003部
(YY3)MMA 9.5部
BA 14.25部
1.3BD 1.0部
AMA 0.25部
CHP 0.016部
(YY4)MMA 5.96部
MA 3.97部
AMA 0.07部
CHP 0.0125部
(YY5)MMA 57部
MA 3部
nOM 0.264部
tBH 0.075部
【0090】
(アクリル樹脂組成物の製造)
次に、多層構造重合体(Y−1)75部、熱可塑性重合体としてアクリペットVH(三菱レイヨン(株)製、還元粘度0.059l/g)25部、抗酸化剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガノックス1076」0.1部、紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「チヌビン234」1.4部、ヒンダードアミン系光安定剤として旭電化(株)製「アデカスタブLA−67」0.3部、帯電防止剤として理研ビタミン(株)製「リケマールS100A」1部、花王(株)製「エレクトロストリッパーTS−5」1部、竹本油脂(株)製「MOA215」1部を添加した後ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(東芝機械(株)製TEM−35B)に供給し、混練してペレットを得た。
【0091】
(光拡散板の製造)
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、実施例1と同様の方法で加工し、50μm厚みのアクリル樹脂フィルムを作製した。また、得られたアクリル樹脂フィルムを実施例1と同様にして光拡散板本体に積層し、光拡散板を得た。
得られたアクリル樹脂フィルムおよび光拡散板の各種評価、測定結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
各実施例の光拡散板は埃が付着しにくく、輝度低下が抑制されることが示唆された。また、帯電防止性能の耐久性にも優れ、埃の付着が長時間防止されることも示唆された。よって実施例のアクリル樹脂組成物、光拡散板は、工業的利用価値が高いものであることが明らかとなった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散板の表面を形成するアクリル樹脂組成物であって、
該アクリル樹脂組成物からなるアクリル樹脂成形体のJIS K 6911に準拠した表面抵抗値が、1×1013Ω未満であることを特徴とするアクリル樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のアクリル樹脂組成物からなることを特徴とするアクリル樹脂成形体。
【請求項3】
請求項2に記載のアクリル樹脂成形体を表面に備えたことを特徴とする光拡散板。
【請求項4】
請求項3に記載の光拡散板を備えたことを特徴とするバックライトユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のバックライトユニットを備えたことを特徴とする液晶表示装置。


【公開番号】特開2006−312658(P2006−312658A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134862(P2005−134862)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】