説明

アクリル浴槽及びこの浴槽を備えた浴室ユニット

【課題】 本発明は、生産性に優れ、型投資も抑制できるアクリル浴槽、このアクリル浴槽を備えた浴室ユニット、を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 アクリル樹脂層と、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層とを、この順番で表面から積層させた浴槽。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル浴槽、及び、この浴槽を備えた浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
入浴時に使用される浴槽は、その形状、材質に、様々なものが使用されており、色柄に関しても千差万別なものが発売されている。
そのような中で、アクリル浴槽は、アクリルの有する透明感、表面平滑性を生かし、深みのある色相、大理石模様等を出しやすく、中級品から高級品グレードにて広く用いられている。
【0003】
アクリル浴槽の構造は、アクリル樹脂層の裏面に、スプレーアップ、ハンドレイアップ、RTM等により、FRPの補強層を設けたものである。
また、アクリル樹脂層として無着色透明なものを用いた場合は、アクリル樹脂層と補強層との間に着色ゲルコート層を配置することもある(特許文献1参照)。
【0004】
アクリル浴槽の製造方法は、表面にアクリルシートを真空成形で浴槽形状に賦形したアクリル樹脂層、該アクリルシートが無着色、透明なものを用いた場合にはその裏面に着色ゲルコート層をスプレーで形成する。このアクリル樹脂層に補強層として、FRP層を形成する。その方法は、スプレーアップ、ハンドレイアップ、注入成形(プリフォームRTM)がとられる。このFRP層に使用される樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂が一般的であり、その硬化時間は、常温硬化あるいは中温硬化で、およそ20〜120分程度を要する。
【特許文献1】特開平09−192041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の浴槽の製造では、補強層となるFRPが、常温硬化の不飽和ポリエステル樹脂を用いるため、安価なSMCを用いた浴槽に比べると、硬化時間が長く、型占有時間も長くなり、生産性に劣る。
また、裏面が比較的美しい仕上がりのため、補強層の形成には、ガラスプリフォームによるRTM成形が多く用いられるが、この場合は樹脂の注入圧力に耐え得る高価な注入型が必要となる。
本発明は、生産性に優れ、型投資も抑制できるアクリル浴槽、このアクリル浴槽を備えた浴室ユニット、を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のものに関する。
(1)アクリル樹脂層と、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層とを、この順番で表面から積層させた浴槽。
(2)項(1)において、アクリル樹脂層とガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層との間に、着色ゲルコート層を配した浴槽。
(3)項(1)又は(2)において、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層がスプレーアップにより形成される浴槽。
(4)項(1)乃至(3)の何れかにおいて、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層の厚みが、4〜25mmである浴槽。
(5)項(1)乃至(4)の何れかにおいて、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のガラス繊維が、その繊維長を2〜50mmとした浴槽。
(6)項(1)乃至(5)の何れかにおいて、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のガラス繊維含有率を10〜60質量%とした浴槽。
(7)項(1)乃至(6)の何れかに記載の浴槽を備えた浴室ユニット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来に比べて生産性に優れ、また型投資を少なくして、アクリル浴槽を得ることができる。
本発明で用いる無発泡ウレタン樹脂は、超速硬化であり、数十秒から数分で脱型可能となるまで硬化するため、成形サイクルを大幅に短縮でき、型占有時間も短くなる。
アクリル樹脂層とガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層との間に、着色ゲルコート層を配した場合は、アクリル樹脂層を無色透明とすることで、任意の着色、模様を有する浴槽とすることができ、アクリル樹脂層を有色透明とした場合は、着色ゲルコート層との色、模様の重なりを表現可能となり、より深みのある浴槽とすることができる。
ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層がスプレーアップにより形成する場合は、イソシアネート成分とポリオール成分をスプレーガンの先端で衝突混合させることで、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のRTM成形では必要な注入型が不要となり、型投資も少なくできる。
ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層の厚みが、4〜25mmである場合は、従来浴槽と同等な面強度を確保することができる。
ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のガラス繊維が、その繊維長を2〜50mmとした場合は、無脱泡なスプレー成形が可能となり、注入型が不要であり、且つ加工コストを抑制できる。
ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のガラス繊維含有率を10〜60質量%とした場合は、浴槽重量を抑制でき、且つ運搬、施工作業を軽減可能である。
本発明の浴室ユニットは、浴槽が生産性に優れ、型投資が少ないことから、素早く安価に供給することができ、注文を受けてから施工が完了する迄の期間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にて述べるアクリル樹脂層は、アクリルシートを真空成形したものが、主に用いられる。アクリルシートの厚みは、特に限定されるものではないが、真空成形の行い易さから2〜5mmとすることが好ましい。
アクリル樹脂層は、着色されたもの、着色透明なもの、無色透明なものの、何れのものを用いても良い。
【0009】
本発明に述べる着色ゲルコート層は、先に述べたアクリル樹脂層と、後述する発泡樹脂層との間に配置されるものであれば、特に限定するものではなく、一般的には、不飽和ポリエステル樹脂を主成分としたゲルコート樹脂が用いられる。その他、アクリル、アクリルウレタン、ウレタンなどの着色塗料を用いることもできる。
また、着色部位により模様を描くこともできる。
【0010】
本発明に用いる無発泡ウレタン樹脂は、防水処理、自動車の内外装、擬岩などに広く使われている、イソシアネート成分とポリオール成分との2液タイプの速硬化タイプのものを用いることができる。
【0011】
無発泡ウレタン樹脂に含有させるガラス繊維は、一般にFRP用途に使われるものを用いることができ、その形態は、マット、クロス、チョップドストランド、ロービング等を用いることができるが、その中でもロービングを用いて、無発泡ウレタン樹脂をスプレーアップする時に、同時にガラス繊維チョッパーで所定の長さに切断し、吹き付ける方法が好適である。
ガラス繊維の繊維長は、2〜50mmの範囲のものを好適に用いることができる。2mm未満では、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層の強度が徐々に弱くなり、浴槽としての強度、剛性が不足し、これをカバーするには、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層の厚みを厚くする必要があり、コストアップと浴槽本体の重量増による施工性悪化を招くためである。50mmを超えると、特にスプレーアップ時にガラス繊維への無発泡ウレタン樹脂の含浸が不十分となり強度や外観の悪化を徐々に招く。
ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のガラス繊維含有率は、10〜60質量%の範囲が好適である。10質量%未満では、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層の強度が徐々に弱くなり、60質量%を超えると、ガラス繊維の無発泡ウレタン樹脂への含浸が不十分となり、外観や耐水性、汚染性などの悪化が徐々に進むためである。
また、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層の厚みは、特に限定されるものではないが、4〜25mmであることが好ましい。4mm未満では、浴槽としての強度、剛性が不足しやすく、25mmを超えると、材料費アップによるコスト増、重量増による搬送性や施工性の悪化につながる。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の浴槽の実施例を示す模式断面図であり、浴槽は、アクリル樹脂層1、着色ゲルコート層2、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層3を有する。
アクリル樹脂層1は、厚さ4mmの架橋タイプPMMA(三菱レイヨン株式会社製、商品名PX−200)を真空成形したものである。
着色ゲルコート層は、ゲルコート樹脂(ディーエイチ・マテリアル株式会社製、ビニルエステル樹脂(PS−6700−2))をアクリル樹脂層の裏面に厚さ約0.3mmにスプレーアップしたものである
ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層3は、最小厚み5mm、最大厚み10mm、ガラス繊維含有率20質量%である。
【0013】
浴槽の製造方法は、凸型に配置した裏面に着色ゲルコート層を有するアクリル樹脂層の着色ゲルコート層側にスプレーアップにより無発泡ウレタン樹脂とガラス繊維を吹きつけた。無発泡ウレタン樹脂(エッチアンドケー株式会社製 商品名ハイメックス6102(イソシアネート成分とポリオール成分の2液タイプ))を、ガスマー社製のスプレー機、H−35を用い、スプレーガンの先端にガラス繊維チョッパーを取り付け、該ガラス繊維チョッパーにガラス繊維ロービング(日東紡績株式会社製、商品名RS110FG−681)を導入し、ガラス繊維長4mmに切断して、スプレーガンから吐出される無発泡ウレタン樹脂に混合させて吹きつけた。
このようにして形成したガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層は、速硬化であるため、約2分で脱型できた。
以上の方法で得られた浴槽は、従来のFRP層を補強層とする浴槽と同等の外観、強度を有するものであり、従来に比べて、短いサイクルで生産ができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のアクリル浴槽の断面構成図である。
【符号の説明】
【0015】
1…アクリル樹脂層、2…着色ゲルコート層、3…ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂層と、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層とを、この順番で表面から積層させた浴槽。
【請求項2】
請求項1において、アクリル樹脂層とガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層との間に、着色ゲルコート層を配した浴槽。
【請求項3】
請求項1又2において、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層がスプレーアップにより形成される浴槽。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層の厚みが、4〜25mmである浴槽。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のガラス繊維が、その繊維長を2〜50mmとした浴槽。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、ガラス繊維含有無発泡ウレタン樹脂層のガラス繊維含有率を10〜60質量%とした浴槽。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の浴槽を備えた浴室ユニット。

【図1】
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【公開番号】特開2009−34430(P2009−34430A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202931(P2007−202931)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】