説明

アクリル系粘着剤およびこれを利用した偏光フィルム用粘着シート並びに粘着型偏光フィルム

【課題】過酷な使用環境条件においても、優れた耐久性と光漏れ防止性とを備えたアクリル系粘着剤を提供する。
【解決手段】(A)次のモノマー、(a−1)(メタ)アクリル酸エステル、(a−2)官能基含有モノマーを共重合して得られるアクリル系ポリマー、(B)多官能イソシアネート化合物、(C)イソシアネート基反応性官能基を有する2官能スペーサ化合物を含有するアクリル系粘着剤であって、成分(B)中のイソシアネート基に対する成分(C)中のイソシアネート基反応性官能基の当量比が0.01〜0.60であり、これにより形成される粘着剤層の光弾性係数が−1000×10−12m2/N以上100×10−12m2/N未満であることを特徴とするアクリル系粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償機能を有する粘着剤に関し、より詳細には、光弾性係数を制御して複屈折を低減することによって光漏れを有効に防止することが可能なアクリル系粘着剤およびこれを用いた偏光フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、液晶材料が2枚の基板間に挟まれた構造を有しており、この基板の表面には粘着剤層を介して偏光板が貼着されている。近年、液晶素子は、車両搭載用、屋外計器用、パソコンのディスプレイ、テレビ等用途が拡大しており、それに伴い使用環境も過酷になってきているため、使用する粘着剤には、ハガレや浮き等が発生しないよう高い耐久性が要求されている。
【0003】
またこのような過酷な使用環境下においては、偏光板に生じる内部応力によって光の透過率が変化して光漏れが生じやすくなる。例えば、VAモードの液晶素子では、偏光板は0°/90°のクロスニコル状態となるように配置されるが、偏光板に生じる内部応力によって、画面のコーナー部分から光が漏れる現象が生じる。特に、近年のディスプレイの大型化に伴って、このような光漏れによる表示品質の低下が問題となっていた。
【0004】
上記問題を解決するために、芳香族環を有するイソシアネート系架橋剤のような正の固有複屈折率を有する架橋剤を含有するアクリレート系粘着剤、あるいは、例えばベンゼン環等の芳香族環を有するモノマー等の単独で正の固有複屈折率を有するモノマーと負の固有複屈折率を有するアクリレート系モノマーとの共重合体を含有する粘着剤を用いることによって、粘着剤の複屈折を調整して光漏れを防止する技術が開示されている(特許文献1および2)。
しかしながら、一般的に正の固有複屈折が大きい構造は、平面性が高い分子構造を取り高い結晶性を示すため、このような平面性が高いナフタレン構造などを含む高い正の固有複屈折率を有する架橋剤を、光モレをなくす程度に過剰量で添加すると、粘着剤ポリマーとの相溶が悪くなり、塗膜の白化や粘着力の低下、あるいは経時による剥がれなどを引き起こすおそれがあった。また、モノマーの共重合においても、多量の正の固有複屈折率を有するモノマーを使用すると共重合性が悪くなって作業性が悪化したり、粘着剤ポリマーのガラス転移温度の上昇により塗膜が硬くなり、粘着力の低下を引き起こすおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144125号公報
【特許文献2】特開2008−144126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、高温高湿条件下においても、ハガレや浮きが生じない高い耐久性を備えるとともに、良好な粘着性能を保ちながら光漏れを有効に防止し得る粘着剤を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アクリル系ポリマーにおけるモノマー組成や多官能イソシアネートの配合等により架橋後の粘着剤の光弾性係数が一定の範囲となるように調整し、さらにイソシアネート基と反応する2官能のスペーサ化合物を用いることにより、高い耐久性と優れた粘着性能が得られるとともに、内部応力によって生じる複屈折を著しく低減できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
次の成分(A)ないし(C)
(A)次のモノマー
(a−1)(メタ)アクリル酸エステル
(a−2)官能基含有モノマー
を共重合して得られるアクリル系ポリマー
(B)多官能イソシアネート化合物
(C)イソシアネート基反応性官能基を有する2官能スペーサ化合物
を含有するアクリル系粘着剤であって、成分(B)中のイソシアネート基に対する成分(C)中のイソシアネート基反応性官能基の当量比が0.01〜0.60であり、これにより形成される粘着剤層の光弾性係数が−1000×10−12m2/N以上100×10−12m2/N未満であることを特徴とするアクリル系粘着剤である。
【0009】
また本発明は、支持体の少なくとも一方の面に上記アクリル系粘着剤から形成される粘着剤層を設けてなる偏光フィルム用粘着シートである。
【0010】
さらに本発明は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に上記アクリル系粘着剤から形成される粘着剤層を設けてなる粘着型偏光フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクリル系粘着剤は、偏光板に生じる内部応力による複屈折を低減して、光漏れを有効に防止することが可能である。また、高温高湿環境下においてもハガレや浮き等がなく耐久性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の粘着剤に用いる成分(A)のアクリル系ポリマーは、モノマー(a−1)(メタ)アクリル酸エステルおよびモノマー(a−2)官能基含有モノマーを共重合して得られるものである。
【0013】
モノマー(a−1)の(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシエステル、メタクリル酸アルコキシエステル、アクリル酸アルキレングリコール、メタクリル酸アルキレングリコールなどが例示できる。
【0014】
アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0015】
メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0016】
アクリル酸アルコキシエステルとしては、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−メトキシプロピル、アクリル酸3−メトキシプロピル、アクリル酸2−メトキシブチル、アクリル酸4−メトキシブチル等が例示できる。
【0017】
メタクリル酸アルコキシエステルとしては、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシプロピル、メタクリル酸3−メトキシプロピル、メタクリル酸2−メトキシブチル、メタクリル酸4−メトキシブチル等が例示できる。
【0018】
アクリル酸アルキレングリコールとしては、アクリル酸エチレングリコール、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸プロピレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0019】
メタクリル酸アルキレングリコールとしては、メタクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸プロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0020】
これらのうち、炭素数4〜8のアクリル酸アルキルエステルをモノマー(a−1)全体において好ましくは60質量%以上(以下、単に「%」で示す)、より好ましくは80%以上使用すると、共重合性が良好で、得られる粘着剤の粘着力および柔軟性が優れたものとなる。特にアクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく用いられる。
【0021】
上記モノマー(a−2)の官能基含有モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が例示できる。
【0022】
カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、メタクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸5−カルボキシペンチル、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸などが例示できる。
【0023】
水酸基含有モノマーとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等が例示できる。
【0024】
アミノ基含有モノマーとしては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が例示できる。
【0025】
アミド基含有モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が例示できる。
【0026】
エポキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルメーテル、アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル、メタクリル酸−2−グリシジルエーテル等が例示できる。
【0027】
これらの官能基含有モノマー(a−2)は、後述する成分(B)多官能イソシアネート化合物の架橋点として作用するため、上記のうち、架橋点として反応性の良好なカルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマーが好ましく、中でもカルボキシル基含有モノマーが好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
【0028】
成分(A)のアクリル系ポリマーには、さらにモノマー(a−3)芳香族環含有モノマーを共重合させることができる。この芳香族環含有モノマーとしては、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル等のアクリル酸アリールやメタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル等のメタクリル酸アリール等が例示できる。
【0029】
成分(A)の組成において、上記モノマー(a−1)および(a−3)の合計量に対するモノマー(a−1)の含有量は60〜100%であり、モノマー(a−3)の含有量は0〜40%である。またモノマー(a−3)として、芳香族環が単環のモノマーのみを使用する場合には、モノマー(a−3)の含有量は0〜40%とすることが好ましい。一方、モノマー(a−3)として、芳香族環が複環のモノマーのみを使用する場合には、モノマー(a−3)の含有量は0〜24%とすることが好ましい。さらに、芳香族環が単環のモノマーと複環のモノマーとを併用する場合には、モノマー(a−1)および(a−3)の合計量に対する単環モノマーの含有量と、複環モノマーの含有量に1.67を乗じた値との合計を0〜40%とすることが好ましい。
【0030】
モノマー(a−2)は、モノマー(a−1)および(a−3)の合計100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して、1〜30部用いることが好ましい。また、成分(A)を構成するモノマー全体におけるモノマー(a−2)の含有量は0.1〜15%であることが好ましい。モノマー(a−2)として、カルボキシル基含有モノマーを用いた場合の好適な使用量は、モノマー(a−1)および(a−3)の合計100部に対して1〜10部である。
【0031】
成分(A)には、上記モノマー(a−1)ないし(a−3)のほか、これらと共重合可能なモノマー(a−4)を配合することができる。このようなモノマーとして、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸アリル、アクリロニトリル等が例示できる。モノマー(a−4)は、モノマー(a−1)および(a−3)の合計100部に対して0〜10部配合することが好ましい。
【0032】
成分(A)のアクリル系ポリマーは、上記モノマー(a−1)〜(a−2)および必要に応じて(a−3)〜(a−4)を、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等公知の重合方法によって共重合させることにより得ることができるが、中でも溶液重合が分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。
【0033】
かくして得られる成分(A)のアクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が60万〜300万であることが好ましい。重量平均分子量が60万未満であると、湿熱時の耐久性が低下し、ハガレや浮き、リワーク時の糊残りが発生する場合があり、一方300万より大きいと、作業性が悪化する場合がある。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算での重量平均分子量である。
【0034】
また、成分(A)のアクリル系ポリマーは、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が0℃よりも高いと、得られる粘着剤の基材への密着性や粘着剤層の可撓性が低下し、基材からのハガレや浮きが生じる場合がある。なお、本明細書において、ガラス転移温度は下記のFOXの式によって算出される値である。
【0035】
(FOXの式)
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+・・・
Tg:共重合体のガラス転移温度
Tga,Tgb,・・:単量体a,単量体b,・・・のホモポリマーのガラス転移温度
Wa,Wb,・・・・:単量体a,単量体b,・・・の重量分率
【0036】
本発明の粘着剤に用いられる成分(B)の多官能イソシアネートは、成分(A)アクリル系ポリマーを架橋するとともに、また光弾性係数を調整する機能を有する。この多官能イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネートモノマーおよびこれらイソシアネートモノマーにトリメチロールプロパン等のポリオールを付加したポリオール変性イソシアネート化合物やイソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートが挙げられ、中でもポリオール変性イソシアネート化合物が、後述する成分(C)のイソシアネート基反応性官能基を有する2官能スペーサ化合物との反応性が良好で、アクリル系ポリマーが配向しやすく、光弾性係数を制御する上で好ましく用いられる。
【0037】
成分(B)は、成分(A)アクリル系ポリマー100部に対して、0.1〜10部用いることが好ましい。
【0038】
本発明の粘着剤に用いられる成分(C)のイソシアネート基反応性官能基を有する2官能スペーサ化合物(以下、「2官能スペーサ化合物」ということがある)は、2官能の水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基などのイソシアネート基反応性官能基を含有するものであり、成分(B)の多官能イソシアネート化合物と反応し、アクリル系ポリマーを配向しやすくする機能を有する。
【0039】
この2官能スペーサ化合物として、具体的には以下の化合物が例示できる。下記一般式(1)で表されるアルキルジオール、1,3−ブタンジオール(式2)1,3−アダマンタンジオール(式3)、1,3−シクロヘキサンジオール(式4)、1,4−シクロヘキサンジオール(式5)、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール(式6)、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール(式7)、1H,1H,10H,10H−ヘキサデカフルオロ−1,10−デカンジオール(式8)、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオール(式9)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール(式10)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール(式11)、2,2,3,3−テトラフルオロ−1,4−ブタンジオール(式12)、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(式13)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール(式14)、2,2−ジ−n−オクチル−1,3−プロパンジオール(式15)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(式16)、2,2−ジイソアミル−1,3−プロパンジオール(式17)、2,2−ジイソブチル−1,3−プロパンジオール(式18)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(式19)、2,3−ブタンジオール(式20)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(式21)、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(式22)、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール(式23)、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール(式24)、2,4−ペンタンジオール(式25)、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(式26)、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール(式27)、2,5−ヘキサンジオール(式28)、2−(2,2−ジエトキシエチル)−1,3−プロパンジオール(式29)、2−ブテン−1,4−ジオール(式30)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(式31)、ブチン−1,4−ジオール(式32)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(式33)、2−2−ブチン−1,4−ジオールビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(式34)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(式35)、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール(式36)、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール(式37)、2−メチルペンタン−2,4−ジオール(式38)、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール(式39)、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール(式40)、3,7−ジチア−1,9−ノナンジオール(式41)、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール(式42)、3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール(式43)、3−ヘキセン−2,5−ジオール(式44)、3−ヘキシン−2,5−ジオール(式45)、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール(式46)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(式47)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(式48)、3−モルホリノ−1,2−プロパンジオール(式49)、cis−1,2−シクロヘキサンジオール(式50)、cis−2−ブテン−1,4−ジオール(式51)、cis,trans−5,9−シクロドデカジエン−cis−1,2−ジオール(式52)、trans−1,2−シクロヘキサンジオール(式53)等のジオール化合物;
【0040】
【化1】

【0041】
【化1−1】

【0042】
【化1−2】

【0043】
下記一般式54で表されるアルキルジアミン、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノクロトナート)(式55)、1,3−シクロヘキサンジアミン(式56)、1,4−シクロヘキサンジアミン(式57)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(式58)、2−メチル−1,3−プロパンジアミン(式59)、cis−1,2−シクロヘキサンジアミン(式60)、N,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(式61)、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル(式62)、エチレンジアミン(式63)、N,N’−ジエチルエチレンジアミン(式64)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(式65)、(1R,2R)−(−)−1,2−シクロヘキサンジアミン(式66)、(1R,2R)−(−)−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(式67)、(1S,2S)−(+)−1,2−シクロヘキサンジアミン(式68)、(1S,2S)−(+)−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(式69)、イソホロンジアミン(式70)、N−ブチルエチレンジアミン(式71)、N−エチルエチレンジアミン(式72)、N−イソプロピルエチレンジアミン(式73)、N−メチルエチレンジアミン(式74)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン(式75)、trans−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(式76)等のジアミン化合物;
【0044】
【化2】

【0045】
1,1−シクロブタンジカルボン酸(式77)、1,1−シクロプロパンジカルボン酸(式78)、1,3−アダマンタンジカルボン酸(式79)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸(式80)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(式81)、1,9−ノナンジカルボン酸(式82)、2,3−ノルボルナンジカルボン酸(式83)、アセトンジカルボン酸(式84)、アセチレンジカルボン酸(式85)、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(式86)、trans−2−ブテン−1,4−ジカルボン酸(式87)等のジカルボン酸;
【0046】
【化3】

【0047】
マロンアミド(式88)、2−メチル−2−(1−メチルプロピル)−1,3−プロパンジオール(式89)、ジカルバマート(式90)、N,N’−ジアセチルエチレンジアミン(式91)、trans−N,N’−ジアセチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(式92)等のジアミド化合物;
【0048】
【化4】

【0049】
3−ヒドロキシプロピオン酸(式92)、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(式93)等のヒドロキシカルボン酸;4−アミノ−1−ブタノール(式94)、trans−4−アミノシクロヘキサノール(式95)等のアルコールアミン;4−アミノ酪酸(式96)、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸(式97)等のアミノカルボン酸;N−アセチルエチレンジアミン(式98)等のアミドアミン化合物;2−アセトアミドエタノール(式99)、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド(式100)等のヒドロキシアミド;
【0050】
【化5】

【0051】
2,3−ピリジンジオール(式101)、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン(式102)、2−フェニル−1,3−プロパンジオール(式103)、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,4−ブタンジアミン(式104)、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,6−ヘキサンジアミン(式105)、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(式106)、N,N’−ジサリチラル−1,2−フェニレンジアミン(式107)、3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール(式108)、4−ベンジルオキシ−1,3−ブタンジオール(式109)、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール(式110)、4,4’−ビフェノール(式111)、2,2’−ビフェノール(式112)、フェニルヒドロキノン(式113)、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(式114)、1,3−ジヒドロキシナフタレン(式115)、1,4−ジヒドロキシナフタレン(式116)、1,5−ジヒドロキシナフタレン(式117)、1,6−ジヒドロキシナフタレン(式118)、1,7−ジヒドロキシナフタレン(式119)、2,3−ジヒドロキシナフタレン(式120)、2,7−ジヒドロキシナフタレン(式121)、1,4−ベンゼンジメタノール(式122)、ジエチルスチルベストロール(式123)、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン(式124)、2,6−ジヒドロキシキノリン(式125)、2,3−ジヒドロキシキノキサリン(式126)、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(式127)、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(式128)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(式129)、2,6−ピリジンジメタノール(式130)等の芳香族環含有二官能ジオール;
【0052】
【化6】

【0053】
【化6−1】

【0054】
(±)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(式131)、(11R,12R)−9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジアミン(式132)、(11R,12R)−9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセン−11,12−ジアミン(式133)、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン(式134)、(1R,2R)−(+)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(式135)、(1R,2R)−1,2−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)エチレンジアミン(式136)、(1R,2R)−1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(式137)、(1S,2S)−(−)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(式138)、1,3−フェニレンジアミン(式139)1,4−フェニレンジアミン(式140)、1,2−フェニレンジアミン(式141)、N,N’−ジアセチル−1,4−フェニレンジアミン(式142)、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(式143)、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン(式144)、(1S,2S)−1,2−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)エチレンジアミン(式145)、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン(式146)、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン(式147)、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン(式148)、2,4,5−トリフルオロ−1,3−フェニレンジアミン(式149)、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン(式150)、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン(式151)、m−キシリレンジアミン(式152)、N,N’−ビス(2−アミノベンザル)エチレンジアミン(式153)、N,N’−ジ−2−ナフチル−1,4−フェニレンジアミン(式154)、N,N’−ジ−sec−ブチル−1,4−フェニレンジアミン(式155)、N−ベンジルエチレンジアミン(式156)、N−フェニルエチレンジアミン(式157)、p−キシリレンジアミン(式158)、2,7−ジアミノフルオレン(式159)、2,6−ジアミノピリジン(式160)、3,6−ジアミノカルバゾール(式161)等の芳香族環含有二官能ジアミン;
【0055】
【化7】

【0056】
【化7−1】

【0057】
【化7−2】

【0058】
2,6−ピリジンジカルボン酸(式162)、2,5−ピリジンジカルボン酸(式163)、2,3−ピリジンジカルボン酸(式164)、3,5−ピリジンジカルボン酸(式165)、イソフタル酸(式166)、2,3−ピラジンジカルボン酸(式167)、テレフタル酸(式168)、フタル酸(式169)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(式170)、1,4−ナフタレンジカルボン酸(式171)、2,2’−ビフェニルジカルボン酸(式172)、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸(式173)、2,5−チオフェンジカルボン酸(式174)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸(式175)、4,4’−スチルベンジカルボン酸(式176)、アントラキノン−2,3−ジカルボン酸(式177)、アゾベンゼン−3,3’−ジカルボン酸(式178)、アゾベンゼン−4,4’−ジカルボン酸(式179)、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸(式180)等の芳香族環含有二官能カルボン酸;
【0059】
【化8】

【0060】
ピリジン−2,3−ジカルボキサミド(式181)、フタルアミド(式182)等の芳香族環含有ジアミド;テレフタルアミド酸(式183)、フタルアミド酸(式184)等の芳香族環含有カルボン酸アミド;4−(アミノメチル)安息香酸(式185)等の芳香族環含有アミノカルボン酸;6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(式186)等のオキシナフトエ酸;2−アミノ−4−フェニルフェノール(式187)等のアミノフェノール化合物;4’−ヒドロキシアセトアニリド(式188)、3’−ヒドロキシアセトアニリド(式189)、4’−アミノアセトアニリド(式190)、3’−アミノアセトアニリド(式191)等のアニリド化合物が例示できる。
【0061】
【化9】

【0062】
【化9−1】

【0063】
本件発明においては、成分(B)のイソシアネート基との反応性の高いジオール化合物が好ましい。中でも負の光弾性係数を制御する上で芳香族環を有さない2官能スペーサ化合物が好ましい。
【0064】
成分(C)は、ポリマーの配向を制御し、その配向を維持するという点から、成分(B)中のイソシアネート基に対する成分(C)中のイソシアネート基反応性官能基の当量比(成分(C)中のイソシアネート基反応性官能基/成分(B)中のイソシアネート基)が0.01〜0.6となるように配合することが好ましく、より好ましくは、0.1〜0.5である。0.01より小さいとポリマーの配向を有効に制御できず、また、0.6より大きいと多官能イソシアネート(B)のイソシアネート基との反応によりイソシアネートが架橋構造に有効に取り込まれなくなる場合がある。即ち、成分(C)が架橋の阻害因子として働き、架橋効率の低下を招くことがある。
【0065】
また、本発明のアクリル系粘着剤には、さらにシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が例示できる。
【0066】
シランカップリング剤の配合量は、成分(A)100部に対して、0.1〜10部であることが、ガラス密着性とリワーク性とのバランスが良好になるために好ましい。
【0067】
なお、本発明のアクリル系物粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ、さらに粘着付与樹脂等の任意成分を配合しても良い。
【0068】
本発明のアクリル系粘着剤の調製は、上記成分(A)ないし(C)および必要に応じて添加される任意成分を常法に従って混合することによって行われる。
【0069】
本発明のアクリル系粘着剤は、これを架橋して形成される粘着剤層の光弾性係数が−1000×10−12m2/N以上100×10−12m2/N未満、好ましくは、−500×10−12〜50×10−12m2/Nの範囲のものである。なお、本明細書において、光弾性係数は、実施例に記載の方法による測定値である。
【0070】
かくして得られたアクリル系粘着剤を、支持体上の少なくとも一方の面に常法に従って、塗工後、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成させることにより本発明の偏光フィルム用粘着シートが得られる。支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。粘着剤層の厚みは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度である。
【0071】
また、上記アクリル系粘着剤から形成される粘着剤層を、偏光フィルムの少なくとも一方の面に設けることによって、本発明の粘着型偏光フィルムを得ることができる。偏光フィルム上に粘着剤層を設ける方法としては、偏光フィルムに上記アクリル系粘着剤を直接塗工し、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成させてもよいが、上記偏光フィルム用粘着シートに形成された粘着剤層から偏光フィルム上に転写してもよい。偏光フィルム上に設けられる粘着剤層の厚みは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度である。また、本発明に使用される偏光フィルムとしては、他の機能を有する層が積層されていてもよく、具体的には、楕円偏光フィルム、位相差フィルム等も含まれる。
【0072】
上記のようにして得られる本発明の粘着型偏光フィルムが用いられる液晶素子の表示モードとしては特に限定されるものではないが、光漏れ防止効果がより発揮されるため、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In−Plane Switching)モードに好適に使用できる。
【0073】
本発明の粘着型偏光フィルムを用いることにより、高温高湿条件下における光漏れの発生を著しく低減することができるが、その理由は次のように考えられている。
すなわち、アクリル系ポリマーに対して、多官能イソシアネート化合物、及び、イソシアネート基と反応性を有する官能基を有する2官能スペーサー化合物を添加して、架橋させることにより、架橋後の構造にスペーサー構造を含んだ架橋構造を有するアクリレート架橋樹脂が得られる。
このスペーサー構造は、(1)粘着剤ポリマーに光学異方性を付与し、(2)多官能イソシアネート化合物(B)由来のポリ尿素構造体の配向を向上させる効果を有すると考えられる。
つまり、アクリル系ポリマーに対して、多官能イソシアネート化合物、及び、2官能スペーサー化合物を同時に添加、又は、多官能イソシアネート化合物存在下に2官能スペーサー化合物を添加することで、アクリル系ポリマーと多官能イソシアネート化合物との反応、及び、多官能イソシアネート化合物と2官能スペーサー化合物との反応が同時に進行し、アクリル系ポリマー鎖間がイソシアネート化合物とスペーサー化合物とによって連結される。このような構造によりアクリル系ポリマーが配向し光学異方性が付与される。また、後述するポリ尿素構造がアクリル系ポリマー鎖間の連結部分に取り込まれることによりさらに粘着剤全体の光学異方性が向上する(上記(1))。
また、多官能イソシアネート化合物は粘着剤中に含まれる水分や、熟成中に吸収される水分等により反応しポリ尿素構造を生成する。イソシアネート基と反応性を有するスペーサ−化合物は生成されたポリ尿素に残存するイソシアネート基と反応しポリ尿素構造体の配向性を向上させる効果を有する(上記(2))。
【実施例】
【0074】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0075】
製造例1
アクリル系ポリマーの調製:
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、n−ブチルアクリレート(BA)67部、メチルアクリレート(MA)30部、アクリル酸(AA)3部および酢酸エチル150部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を加え、窒素ガス気流中68℃にて8時間重合を行い重量平均分子量(Mw)100万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))35のアクリル系ポリマーA−1の溶液を得た。なお、MwおよびMnは下記測定方法により求めた。
【0076】
(MwおよびMnの測定方法)
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。
【0077】
<GPC測定条件>
装置:HLC−8120(東ソー(株)製)
カラム:G7000HXL(東ソー(株)製)
GMHXL(東ソー(株)製)
G2500HXL(東ソー(株)製)
サンプル濃度:1.5mg/ml
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
【0078】
製造例2
共重合モノマーの組成を、BA77部、ベンジルアクリレート(BzA)20部、AA3部に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリル系ポリマーA−2の溶液を得た。このポリマーのMwは100万、分子量分布(Mw/Mn)は35であった。
【0079】
製造例3
共重合モノマーの組成を、BA97部、AA3部に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリル系ポリマーA−3の溶液を得た。このポリマーのMwは100万、分子量分布(Mw/Mn)は35であった。
【0080】
製造例4
共重合モノマーの組成を、BA59.5部、BzA37.5部、AA3部に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリル系ポリマーA−4の溶液を得た。このポリマーのMwは100万、分子量分布(Mw/Mn)は35であった。
【0081】
実施例1
粘着型偏光フィルムの調製:
(アクリル系粘着剤の調製)
製造例1により得られたアクリル系ポリマーA−1溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパン付加トリレンジイソシアネート(コロネートL:日本ポリウレタン工業(株)社製)2部、1,6’−ヘキサンジオール0.036部および3−グリシドキシプロピルメトキシシラン0.2部を加えて混合しアクリル系粘着剤溶液を得た。
(粘着型偏光フィルムの作製)
得られたアクリル系粘着剤溶液をシリコーンコートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に厚みが25μmになるように塗布し、80℃の乾燥機中で2分間乾燥させた。その後、乾燥面に偏光フィルムを貼り合わせて、23℃、65%RHで7日間静置し粘着型偏光フィルムを得た。
【0082】
実施例2〜5および比較例1〜6
アクリル系ポリマーと多官能イソシアネート化合物、2官能スペーサ化合物を下記表1のように代えた以外は実施例1と同様にしてアクリル系粘着剤溶液を得た。また得られたアクリル系粘着剤溶液を用いて実施例1と同様にして粘着型偏光フィルムを得た。表中NCO当量は、多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基に対する2官能スペーサ化合物のイソシアネート基反応性官能基の当量比を意味する。
【0083】
【表1】

【0084】
試験例1
実施例1〜5および比較例1〜6で得られたアクリル系粘着剤について、下記方法によりゲル分率、粘着力、光弾性係数を測定した。結果を表2に示す。
【0085】
(ゲル分率)
アクリル系粘着剤溶液を厚さ38μmのシリコーンコートされたPETフィルム上に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、80℃の乾燥機中2分間乾燥させた。その後、乾燥面に厚さ38μmのPETフィルムを貼り合せて、23℃、65%RHで7日間静置し粘着シートを得た。
得られた粘着シートを50mm×50mmの大きさに裁断して試験片を作成し、試験片から粘着剤層を剥がしとり粘着剤層の初期重量を測定した。その粘着剤層を100gの酢酸エチルに浸漬し室温で24時間放置した。その後、200メッシュ金網でろ過し、メッシュに残った残分を80℃で2時間乾燥し秤量した。初期の重量および残分の重量から下記式によってゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=100×(残分の重量/初期の重量)
【0086】
(粘着力)
アクリル系粘着剤溶液を厚さ38μmのシリコーンコートされたPETフィルム上に、乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、80℃の乾燥機中2分間乾燥させた。その後、乾燥面に厚さ38μmのPETフィルムを貼り合せて、23℃、65%RHで7日間静置し粘着シートを得た。
得られた粘着シートを幅25mm×長さ150mmに裁断して試験片を作成した。試験片を無アルカリガラスに貼り付けた。試験片の片端を引き剥がし速度300mm/minで180°方向に引っ張り剥離を開始する力を測定した。
【0087】
(光弾性係数)
アクリル系粘着剤溶液を厚さ38μmのシリコーンコートされたPETフィルム上に、乾燥後の厚みが50μmとなるよう塗布し、80℃の乾燥機中2分間乾燥させた。その後、乾燥面にシリコーンコートされたPETフィルムを貼り合せて、23℃、65%RHで7日間静置し粘着シートを得た。
得られた粘着シートを厚み1000μmに蓄積し、2cm×5cm角の試験片を作成した。25℃50%RHの環境下で、エリプソンメーターM−220(日本分光社製)を用いて、作成した試験片の両端部より0〜10Nの範囲で引っ張り応力をかけ、600nmの光弾性係数を測定した。
【0088】
【表2】

【0089】
試験例2
実施例1〜5および比較例1〜6で得られた粘着型偏光フィルムについて、下記方法により耐久性を評価し、また輝度を測定した。結果を表3に示す。
【0090】
(耐久性)
<耐熱性・耐湿熱性>
粘着型偏光フィルムを15インチサイズ(233mm×309mm)に裁断し、厚さ0.5mmの無アルカリガラス板の片面にラミネータロールを用いて貼り付けた。貼付後、オートクレーブ(栗原製作所製)にて0.5MPa、50℃、20分の条件で加圧処理して試験用プレートを得た。こうして得られたプレートを85℃/dry、60℃/95%RHの条件下に500時間放置し、ハガレ、浮きを目視にて観察して下記評価基準にて評価した。
[基準]
○:ハガレや浮き等の外観不良は見られなかった
△:ハガレや浮き等の外観不良が僅かに認められた
×:ハガレ及び/または浮きが確認された
【0091】
<冷熱サイクル耐久性>
上記により得られたプレートをエスペック株式会社製 冷熱衝撃装置TSA−71L−Aを用いて、−40℃で30分、80℃で30分を1サイクルとする冷熱サイクルを200回繰り返し、光学部材の発泡、浮き、ハガレの有無を観察して下記基準にて評価した。
[基準]
○:発泡、浮き、ハガレ等の外観不良は見られなかった
△:発泡、浮き、ハガレ等の外観不良が僅かに認められた
×:発泡、浮き、ハガレが確認された
【0092】
(輝度の測定)
粘着型偏光フィルムを15インチサイズ(233mm×309mm)に裁断し、厚さ0.5mmの無アルカリガラスの表面にクロスニコル状態になるようにそれぞれ貼付した(0°)。貼付後、オートクレーブ(栗原製作所製)にて0.5MPa、50℃、20分の条件で加圧処理して試験用プレートを得た。得られた試験用プレートを19インチのディスプレイモニタ(BenQ PF91G)の偏光板と交換して装着した。このディスプレイモニタを、85℃/dry、もしくは、60℃/95%RH環境下にそれぞれ200時間放置した後、25℃×50%RH環境下で2時間放冷し、暗室でパソコンに接続し全画面黒表示にした。この全画面黒表示のディスプレイモニタについて、各コーナー付近の直径1cmの領域における輝度(La,Lb,Lc,Ld)およびモニタ中央部分の直径1cmの領域における輝度(Lcenter)を輝度計(ハイランド社製 RISA−COLOR/CD8)を用いて測定し、下記式により光漏れ性(ΔL)を求めた。ΔLが小さいほど光漏れが少ないことを意味し、通常2.0未満であれば液晶表示用としての使用が可能となる。
ΔL=(La+Lb+Lc+Ld)/4−Lcenter
【0093】
【表3】

【0094】
本件発明のアクリル系ポリマーに多官能イソシアネート化合物及び2官能スペーサー化合物を添加して得られる粘着剤は、耐久性が良好で光漏れも少ない。それに対して、2官能スペーサー化合物を添加していない比較例1ないし4では、モノマー組成を変更してもわずかに光漏れ性が調整できるのみであり本願のような良好な性能は得られない。また、本願発明のスペーサー化合物をイソシアネート化合物に対して当量添加した比較例5ではイソシアネート化合物がスペーサー化合物と反応しポリマーを有効に架橋できないため、冷熱サイクルにおいて外観不良が確認され、耐光漏れ性も十分ではなかった。また、3官能スペーサ化合物を用いた比較例6でも耐久性、耐光漏れ性に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のアクリル系粘着剤は、優れた耐久性を有するとともに、光弾性係数を制御して、偏光板に生じる内部応力による複屈折を低減することにより光漏れを有効に防止することが可能である。したがって、偏光フィルム用の粘着剤として好適に利用可能である。
以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)ないし(C)
(A)次のモノマー
(a−1)(メタ)アクリル酸エステル
(a−2)官能基含有モノマー
を共重合して得られるアクリル系ポリマー
(B)多官能イソシアネート化合物
(C)イソシアネート基反応性官能基を有する2官能スペーサ化合物
を含有するアクリル系粘着剤であって、成分(B)中のイソシアネート基に対する成分(C)中のイソシアネート基反応性官能基の当量比が0.01〜0.60であり、これにより形成される粘着剤層の光弾性係数が−1000×10−12m2/N以上100×10−12m2/N未満であることを特徴とするアクリル系粘着剤。
【請求項2】
モノマー(a−1)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシエステルおよび(メタ)アクリル酸アルキレングリコールよりなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載のアクリル系粘着剤。
【請求項3】
モノマー(a−1)が、炭素数4〜8のアクリル酸アルキルエステルをモノマー(a−1)全体に対して60質量%以上含有するものである請求項1または2に記載のアクリル系粘着剤。
【請求項4】
モノマー(a−2)が、カルボキシル基含有モノマーである請求項1ないし3のいずれかの項記載のアクリル系粘着剤。
【請求項5】
成分(A)が、さらにモノマー(a−3)芳香族環含有モノマーを共重合して得られるものである請求項1ないし4のいずれかの項記載のアクリル系粘着剤。
【請求項6】
モノマー(a−3)が、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ナフチルよりなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項5記載のアクリル系粘着剤。
【請求項7】
モノマー(a−3)のモノマーが(a−1)および(a−3)の合計量に対する含有量が0〜40質量%である請求項5または6記載のアクリル系粘着剤。
【請求項8】
成分(B)が、ポリオール変性イソシアネート化合物である請求項1ないし7のいずれかの項記載のアクリル系粘着剤。
【請求項9】
支持体の少なくとも一方の面に請求項1ないし8のいずれかの項記載のアクリル系粘着剤から形成される粘着剤層を設けてなる偏光フィルム用粘着シート。
【請求項10】
偏光フィルムの少なくとも一方の面に請求項1ないし9の何れかの項記載のアクリル系粘着剤から形成される粘着剤層を設けてなる粘着型偏光フィルム。
【請求項11】
表示モードがVAモードまたはIPSモードの液晶素子用である請求項10記載の粘着型偏光フィルム。

【公開番号】特開2010−196001(P2010−196001A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45298(P2009−45298)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】