説明

アクリレートコポリマーに基づく水性塗料組成物

本発明は、A)少なくとも1種の水希釈性(メタ)アクリレートコポリマーと、B)遊離イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート架橋剤とを含む水性塗料組成物であって、(メタ)アクリレートコポリマーがa)モノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの少なくとも1種の反応生成物10〜80重量%と、b)成分a)とは異なる少なくとも1種のヒドロキシ官能性不飽和モノマー0〜40重量%と、c)少なくとも1種の不飽和酸官能性モノマー1〜8重量%と、d)少なくとも1種の他の重合性不飽和モノマー0〜70重量%と(但し、成分A)およびB)の重量%および成分a)〜d)の重量%は100重量%になる)を含み、(メタ)アクリレートコポリマーが少なくとも2つのフィードストリームによるスキューフィード重合法によって調製され、1つのフィードストリームが成分a)の全量を基準にして成分a)の主たる量、すなわち60〜100重量%と、モノマーc)の全量を基準にして不飽和酸官能性モノマーc)のより低い量、すなわち0〜30重量%と含むことを特徴とする水性塗料組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシ官能性アクリレートコポリマーおよびポリイソシアネート架橋剤に基づく自動車塗料および工業塗料のための水性2成分塗料組成物であって、車両を塗換え、大型車両の被覆において好ましくは用いられる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境上の理由のために、水性塗料は自動車塗料および工業塗料の中でますます用いられている。この目的は、水性塗料の中の有機共溶媒の比率を可能な限り小さくしておくことである。水性塗料の中で用いられる水希釈性結合剤、例えばアクリレートポリマーは、1工程プロセスまたは数工程プロセスにおいて有機溶媒の中で普通は製造される。溶媒は、後の段階で少なくとも部分的に蒸留で除去される。
【0003】
米国特許第5,773,513号明細書には、有機溶媒中での重合によって数段階で製造される水希釈性アクリレート樹脂に基づく水性塗料組成物が記載されている。この手順では、第1の段階においてモノエポキシエステルおよび有機溶媒が導入され、不飽和酸官能性モノマー、不飽和ヒドロキシ官能性モノマーおよびビニル芳香族モノマーが添加され、重合され、第2の段階において、残りの不飽和酸官能性モノマーおよびおそらく更なる不飽和モノマーが添加され、重合される。1つのフィードストリームは、不飽和酸官能性モノマー5〜60重量%と、モノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物40〜95重量%と、他の重合性化合物0〜55重量%とを含む。水相の中和および移送の後、過剰の溶媒は蒸留で除去される。しかし、これらのアクリレート樹脂に基づく水性塗料組成物は、疎水性ポリイソシアネートとの相溶性の最適バランスを与えず、良好な保存安定性および乾燥性能における全体的な生産性も与えない。
【0004】
欧州特許第1024184号明細書は、第1の疎水性モノマー混合物と0〜2重量%のアクリル酸の重合、その後、第2の親水性モノマー混合物と5〜30重量%のアクリル酸の重合によって調製された2工程アクリルコポリマーに関連している。このコポリマーは、ポリイソシアネート硬化剤により硬化させることが可能である。これらのコポリマーに基づくコポリマー分散液および塗料組成物は良くない固体粘性を示し、コポリマー分散液は疎水性ポリイソシアネートと良くない相溶性を示す。
【0005】
欧州特許第619329号明細書(米国特許第5,539,022号明細書)には、a)アルファ位で分岐している脂肪族飽和モノカルボン酸の少なくとも1種のグリシジルエステル5〜40重量部と、b)アルファ,ベータ−オレフィン系不飽和ジカルボン酸の少なくとも1種のジエステル0〜30重量部と、c)少なくとも1種のビニル芳香族炭化水素0〜70重量部(但し、成分c)のモル量は常に成分b)のモル量以上である)と、d)アルファ,ベータ−オレフィン系不飽和カルボン酸のアルキルエステル0〜60重量部と、e)少なくとも1種のアルファ,ベータ−オレフィン系不飽和カルボン酸2〜40重量部(但し、成分e)のモル量は常に成分a)のモル量を上回っている)と、f)アルファ,ベータ−オレフィン系不飽和カルボン酸の少なくとも1種のヒドロキシアルキルエステル5〜40重量部の1工程のラジカル共重合によって得られるヒドロキシル価および酸価を有するアクリレートコポリマーの水希釈性分散液が記載されている。この分散液は、メラミン架橋剤を含むストービング(焼付)ワニスまたはストービング(焼付)一体色トップコートのための水希釈性結合剤として適する。しかし、メラミン架橋剤の使用は、一般に高い焼付温度の利用を必要とし、これらの水性塗料材料が車両を塗換える分野のためにより適さず、代わりに自動車およびトラックの製造ライン仕上塗の分野で主として用いられるという結果になる。
【0006】
欧州特許第707608号明細書(米国特許第5,670,600号明細書)には、(a1)カルボキシル基のない(メタ)アクリル酸エステル20〜60重量%と、(a2)分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を有し、本質的にカルボキシル基のないエチレン系不飽和モノマー10〜40重量%と、(a3)分子当たり5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分岐モノカルボン酸のビニルエステル1〜25重量%と、(a4)アクリル酸および/またはメタクリル酸と分子当たり5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分岐モノカルボン酸のグリシジルエステルの少なくとも1種の反応生成物1〜25重量%と、(a5)分子当たり少なくとも1個のカルボキシル基を有するエチレン系不飽和モノマー1〜15重量%と、(a6)本質的にカルボキシル基のないエチレン系不飽和モノマー5〜30重量%とを重合することにより得ることができる水希釈性ポリアクリレートコポリマーを含む水性2成分ポリウレタン塗料組成物が記載されている。これらのコポリマーも疎水性ポリイソシアネートと良くない相溶性を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、疎水性ポリイソシアネート、すなわち、特に親水変性されておらず、これらのコポリマーに容易に混和するポリイソシアネートと高度に相溶性であるヒドロキシ官能性アクリレートコポリマーに基づく水希釈性2成分塗料組成物が必要とされている。混和性は、混和性を得るために大量の有機共溶媒を添加する必要がなく、および/または高い剪断速度を用いずに保証されるべきである。更に、塗料組成物は、良好な安定性および乾燥性能ならびに満足な光学的外観、例えば、光沢および流れを与えるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
A)少なくとも1種の水希釈性(メタ)アクリレートコポリマーと、
B)遊離イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート架橋剤と、
を含む水性塗料組成物であって、(メタ)アクリレートコポリマーが
a)モノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%と、
b)成分a)とは異なるヒドロキシ官能性不飽和モノマー0〜40重量%、好ましくは10〜30重量%と、
c)不飽和酸官能性モノマー1〜8重量%、好ましくは2〜6重量%と、
d)他の重合性不飽和モノマー0〜70重量%、好ましくは20〜50重量%と、
(但し、成分A)およびB)の重量%および成分a)〜d)の重量%は100重量%になる)
を含み、(メタ)アクリレートコポリマーが少なくとも2つのフィードストリームによるスキューフィード重合法(skew feed polymerization process)によって調製され、1つのフィードストリームが
I)コポリマー中の成分a)の全量を基準にしてモノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物a)60〜100重量%と、
II)コポリマー中のモノマーb)の全量を基準にしてヒドロキシ官能性不飽和モノマーb)0〜60重量%と、
III)コポリマー中のモノマーc)の全量を基準にして不飽和酸官能性モノマーc)0〜30重量%と、
IV)コポリマー中のモノマーd)の全量を基準にして他の重合性不飽和モノマーd)0〜80重量%と、
を含み、残りの1つ以上のフィードストリームが成分a)〜d)の残りを含む水性塗料組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(メタ)アクリレートコポリマーA)の水性分散液が好適な固体粘性を示し、水性系においてポリイソシアネートと良好な相溶性を有し、疎水性ポリイソシアネート、すなわち、特に親水変性されなかったポリイソシアネートと容易に混合して、良好な光学的外観、例えば、良好な光沢と流れ、および化学薬品と水分、ならびに例えば引っ掻きおよび擦傷を引き起こす機械的作用に対する良好な抵抗力を有する塗料になることが可能であることが驚くべきことに見出された。
【0010】
以後、本発明をより詳しく説明する。
【0011】
ここでおよび本明細書で以後用いられる(メタ)アクリルという用語は、メタクリルおよび/またはアクリルを意味すると解釈されるべきである。
【0012】
本明細書に関連するすべての分子量は、標準としてポリスチレンを用いるGPC(ゲル透過クロマトグラフィ)によって決定される。
【0013】
本発明の塗料組成物は、好ましくは、A)ヒドロキシ・カルボキシ官能性アクリルコポリマーの固体30〜95重量%とB)遊離イソシアネート基を有する硬化剤の固体5〜70重量%を含む。(メタ)アクリレートコポリマーA)は、少なくとも2つのフィードストリームによるスキューフィード重合法によって調製される。本明細書で用いられるスキューフィード重合は、前の反応工程の製品を逐次方式で追加の反応物と組み合わせて、所望するコポリマーをもたらす多工程反応を意味する。本発明の好ましい実施形態は、モノマーの第1の群を反応させて中間ポリマーを形成させ、そしてモノマーの第2の群を前記中間ポリマーの存在下で反応させて本発明において用いられるコポリマーを形成させる2工程スキューフィード重合である。
【0014】
水希釈性(メタ)アクリレートコポリマーA)は、典型的には30〜250のヒドロキシ価、15〜50の酸価および1,000〜15,000の数平均分子量(Mn)を有し、好ましくは60〜150のヒドロキシ価、5〜35の酸価および1,500〜6,000の数平均分子量(Mn)を有する。コポリマーのヒドロキシ官能価は、不飽和酸官能性モノマーとモノエポキシエステルの反応生成物a)によって、および任意に、更なるヒドロキシ官能性不飽和モノマーb)によって提供される。コポリマーは、前述した成分a)〜d)のラジカル重合によって製造される。
【0015】
成分a)はモノエポキシエステルと不飽和酸官能性化合物の反応生成物に関連がある。これらのモノエポキシエステルは、好ましくは、アルファ位に第三炭素原子または第四炭素原子を有する脂肪族飽和モノカルボン酸から誘導されたグリシジルエステルである。酸分子中に5〜13個の炭素原子、特に酸分子中に好ましくは9〜11個の炭素原子を有する飽和アルファ,アルファ−ジアルキルアルカンモノカルボン酸のグリシジルエステルを用いることが好ましい。グリシジルエステルの例は、バーサティック酸から誘導されたグリシジルエステルおよびピバル酸から誘導されたグリシジルエステルである。バーサティック酸から誘導されたグリシジルエステルは特に好ましい。このタイプの適するモノエポキシエステルは、例えば、「カルディュラ(Cardura)」(登録商標)の名前で商業的に得ることができる。不飽和酸官能性化合物の例は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸およびイソクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸である。マレイン酸、フマル酸およびそれらの誘導体、例えば、マレイン酸半エステル−酸につながる無水マレイン酸とモノアルコールの反応生成物も用いることが可能である。これらの半エステル−酸をモノエポキシエステルと反応させることも可能である。好ましい不飽和酸官能性化合物は(メタ)アクリル酸である。
【0016】
更なる可能な成分a)は、炭素原子数12以下の第三脂肪酸とエピクロロヒドリンの反応生成物およびエポキシ官能性不飽和モノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレートと酸、例えば、アルファ位に第三炭素原子または第四炭素原子を有する脂肪族飽和モノカルボン酸の反応生成物である。
【0017】
特に好ましい成分a)は、バーサティック酸から誘導されたグリシジルエステルと(メタ)アクリル酸の反応生成物である。
【0018】
成分a)はヒドロキシ官能性重合性反応生成物であり、(メタ)アクリレートコポリマーの製造の過程中に形成させることが可能である。
【0019】
成分b)は成分a)とは異なるヒドロキシ官能性オレフィン系不飽和モノマーに関連がある。成分b)の例は、アルファ,ベータ−オレフィン系不飽和モノカルボン酸から誘導された一級ヒドロキシル基または二級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルキルエステルである。これらは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸および/またはイソクロトン酸からのヒドロキシアルキルエステルを含むことが可能である。(メタ)アクリル酸から誘導されたヒドロキシアルキルエステルは好ましい。ヒドロキシアルキル基は、例えば1〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を含むことが可能である。一級ヒドロキシル基を有するアルファ,ベータ−オレフィン系不飽和モノカルボン酸の適するヒドロキシアルキルエステルの例は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートである。二級ヒドロキシル基を有する適するヒドロキシアルキルエステルの例は、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0020】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとラクトンの反応生成物も成分b)のために用いることが可能である。このように、アルファ,ベータ不飽和モノカルボン酸の前述したヒドロキシアルキルエステルの少なくとも一部を変性することが可能である。変性はラクトン環を開環することにより行われるエステル化反応から起きる。反応中、新たなヒドロキシル基は、適切なラクトンに調和するヒドロキシアルキルエステル基の形を取って最終段階で形成される。前述したものは、用いることが可能であるヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートの例である。適するラクトンは、例えば、環の中に3〜15個の炭素原子を含むラクトンであり、環は種々の置換基を有することが可能である。好ましいラクトンは、ガンマ−ブチロラクトン、デルタ−バレロラクトン、イプシロン−カプロラクトン、ベータ−ヒドロキシ−ベータ−メチルデルタバレロラクトン、ラムダ−ラウリンラクトンまたはそれらの混合物である。イプシロン−カプロラクトンは特に好ましい。好ましい反応生成物は、アルファ,ベータ不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルエステル1モルと、ラクトン1〜5モル、好ましくは平均で2モルの、反応生成物である。ラクトンによるヒドロキシアルキルエステルのヒドロキシル基の変性は、共重合反応の前、共重合反応中または共重合反応後に行うことが可能である。
【0021】
成分c)はラジカル重合性オレフィン系不飽和酸官能性モノマーに関連がある。適する成分c)の例は、オレフィン系不飽和モノカルボン酸および/またはオレフィン系不飽和ジカルボン酸などの重合性オレフィン系不飽和カルボキシ官能性モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびイソクロトン酸ならびにオレフィン系不飽和ジカルボン酸の対応する半エステルおよび無水物である。これらのカルボン酸の酸残基は、一般に1〜8個の炭素原子を有する。例えば、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸または脱水ヒマシ油酸(castor acid)などの炭素原子数8〜22の不飽和脂肪酸も用いることが可能である。(メタ)アクリル酸の使用は特に好ましい。
【0022】
メタアクリルオキシエチルホスホン酸、スルホエチルメタクリレートおよびビニルホスホン酸などの強酸官能性モノマーも用いることが可能である。
【0023】
成分d)はモノマーa)〜c)とは異なるオレフィン系不飽和モノマーに関連がある。それは、少なくとも1個のオレフィン二重結合を有することは別として、一切の他の反応性官能基を含まないオレフィン系不飽和モノマーを含むことが可能である。他の官能基のない適する不飽和モノマーの例は、不飽和カルボン酸と1〜20個の炭素原子を有する脂肪族一価の分岐または直鎖および環式のアルコールのエステルである。不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびイソクロトン酸である。(メタ)アクリル酸のエステルは好ましい。脂肪族アルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートおよび適切なメチルアクリレートである。環式アルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの例は、シクロヘキシルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよび適切なメタクリレートである。芳香族アルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの例はベンジル(メタ)アクリレートである。
【0024】
他の官能基のない適する更なる不飽和モノマーであるが、好ましくない不飽和モノマーの例は、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルならびにアルファ位において分岐飽和モノカルボン酸から誘導されたビニルエステル、例えば、飽和アルファ,アルファ’ジアルキルアルカンモノカルボン酸から誘導されたビニルエステルおよび分子中に5〜13個の炭素原子、好ましくは9〜11個の炭素原子を各々が有する飽和アルファ−アルキルアルカンモノカルボン酸から誘導されたビニルエステルなどのビニルエステルである。
【0025】
少量のオレフィン系ポリ不飽和モノマーも用いることが可能である。これらは、少なくとも2個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーである。これらの例は、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレートである。
【0026】
他の官能基のない適する更なる不飽和モノマーの例は、ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、ビニルトルエンおよび/または第三ブチルスチレンである。
【0027】
成分d)は、他の官能基を有するオレフィン系不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロニトリル、例えば、アルコキシ基の中に1〜5個の炭素原子を各々が有する例えばメタアクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランなどのシラン官能性不飽和モノマー、例えばアセトアセトキシエチルメタクリレートなどのアセトアセチル官能性不飽和モノマー、エチレンウレアエチルメタクリレートなどの尿素基を含む不飽和モノマーおよび例えば、アルキル基の中に1〜5個の炭素原子を有する例えばジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を含む不飽和モノマーならびにヘテロ環式モノマー、例えばビニルイミダゾールも含んでよい。
【0028】
好ましくは、(メタ)アクリレートコポリマーは、不飽和カルボン酸と1〜20個の炭素原子を有する脂肪族一価の分岐または直鎖および環式のアルコールのエステルおよび/またはビニル芳香族モノマーを成分d)として含む。好ましくは、(メタ)アクリレートコポリマーは、アルファ位における分岐不飽和モノカルボン酸から誘導されたビニルエステルである。ビニルエステルが含まれる時、コポリマー分散液は不十分な貯蔵安定性を示す。
【0029】
好ましい(メタ)アクリレートコポリマーは、
a)モノエポキシエステルと(メタ)アクリル酸の少なくとも1種の反応生成物20〜60重量%と、
b)アルファ,ベータ−オレフィン系不飽和モノカルボン酸から誘導された一級ヒドロキシル基または二級ヒドロキシル基を有する少なくとも1種のヒドロキシアルキルエステル10〜30重量%と、
c)少なくとも1種の不飽和酸官能性モノマー2〜6重量%と、
d)d1)(メタ)アクリル酸と1〜20個の炭素原子を有する脂肪族一価の分岐または直鎖および環式のアルコールの少なくとも1種のエステル10〜25重量%と、
d2)ビニル芳香族モノマー10〜25重量%と、
d3)任意に、モノマーd1)およびd2)とは異なる他のモノマーと
を含み、ここで、成分a)、b)、c)、d1)、d2)およびd3)の重量%は100重量%になる。
【0030】
本発明による塗料組成物の中に含まれるヒドロキシ官能性(メタ)アクリルコポリマーはラジカル共重合によって製造される。ラジカル重合は当業者によって普通の方法に従って行われる。
【0031】
より詳しくは、本発明において用いられる(メタ)アクリルコポリマーは、好ましくは、還流反応器にモノエポキシエステルおよび有機溶媒または溶媒ブレンドを最初に投入することにより製造される。反応器内容物の温度は、重合中に典型的には60℃〜280℃の間で保持される。例えば、モノエポキシエステルと反応するとともにモノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物を作るための当量の不飽和酸官能性モノマーの第1の量、ヒドロキシ官能性モノマー、更なる不飽和モノマーおよび開始剤の混合物を含む第1のフィードストリームは一定時間にわたって前記反応器に投入される。第1のフィードストリームの添加後に、反応器内容物は追加の有機溶媒ですすがれる。例えば、所望する酸価を有するコポリマーを提供するための量の不飽和酸官能性モノマーの第2の量、更なる不飽和モノマー、追加の溶媒および追加の開始剤を含む第2のフィードストリームは一定時間にわたって反応器に投入される。
【0032】
少なくとも2つのフィードストリーム、好ましくは2つのフィードストリームによるスキューフィード重合法によって(メタ)アクリレートコポリマーA)を調製することが本発明のために必須である。不飽和酸官能性モノマーc)およびモノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物a)の全量は第1のフィードストリームと第2のフィードストリームとの間で異なることが可能であるが、第1のフィードストリームが主たる量、すなわち、モノマーa)の全量を基準にして60〜100重量%のモノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物a)、およびより少ない量の不飽和酸官能性モノマーc)、すなわち、モノマーc)の全量を基準にして0〜30重量%の不飽和酸官能性モノマーc)、ならびに任意に他の重合性化合物b)およびd)を含むことが必須である。
【0033】
第1のフィードストリームはモノマーa)〜d)の全量の例えば40〜80重量%を含み、第2のフィードストリームはモノマーa)〜d)の全量の例えば20〜60重量%を含む。
【0034】
残りの重量%の各成分を含む第2のフィードストリームの添加後に、反応器内容物は、典型的には追加の有機溶媒ですすがれ、還流状態で一定時間にわたり保持され、最終時に追加の有機溶媒ですすがれる。反応器内容物は冷却され、その後、塩基の適切な量の添加によって部分的にまたは全体的に中和され、水による正規希釈または逆希釈によって水性分散液に変換される。個々のモノマーa)〜d)は、最終(メタ)アクリレートコポリマーが初めに規定されたヒドロキシル価および酸価を有するようなモル量でそれぞれ導入される。
【0035】
脂肪族アゾ化合物、例えば、アゾビス−イソブチロニトリルまたはアゾビス−メチルブチロニトリル、ジアジルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシドまたはジ−t−アミルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシドまたは過酸エステル、例えばt−ブチルペルオキシベンゾエートなどのラジカル共重合のためのすべての普通の重合開始剤を考慮することが可能である。調節剤、例えば、ブタノールなどのアルコールまたはドデシルメルカプタンなどのメルカプタンはモル質量を調節するために用いることが可能である。
【0036】
適する有機共溶媒は、特に、水希釈性で一価または二価のアルコールまたはグリコール、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリン、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテル、例えば、メトキシプロパノールまたはメトキシブタノール、ならびに例えばブチルグリコールまたはブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルである。
【0037】
本発明による水性塗料組成物は、架橋剤として遊離イソシアネート基を有するポリイソシアネート(成分B)も含む。ポリイソシアネートの例は、脂肪族、脂環式、アル脂肪族(araliphatically)および/または芳香族により結合された遊離イソシアネートを有する任意の数の有機ポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは室温で液体であるか、または有機溶媒の添加を通して液体になる。ポリイソシアネートは、23℃で一般に1〜6,000mPas、好ましくは5mPasを上回り且つ3,000mPasを下回る粘度を一般に有する。
【0038】
これらのポリイソシアネートは当業者に熟知されており、商業的に得ることが可能である。
【0039】
好ましいポリイソシアネートは、1.5〜5、好ましくは2〜4の平均NCO官能基を有する専ら脂肪族および/または脂環式により結合されたイソシアネート基を有するポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0040】
特に適するポリイソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(IPDI)および/またはビス(イソシアナトシクロヘキシル)−メタンならびにこれらのジイソシアネートのビウレット基、アロファネート基、ウレタン基および/またはイソシアヌレート基を含むそれ自体知られている誘導体に基づく「塗料ポリイソシアネート」として知られているものである。これらのジイソシアネートは、製造後過剰の親イソシアネートから好ましくは蒸留によって0.5重量%未満の残分含有率のみで遊離される。トリイソシアナトノナンなどのトリイソシアネートも用いることが可能である。
【0041】
立体封鎖ポリイソシアネートも適する。これらの例は、1,1,6,6−テトラメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジブチル−ペンタ−メチルジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネートまたはm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび適切な水和同族体である。
【0042】
原則として、ジイソシアネートは普通の方法によって、例えば、三量化によって、または水あるいは例えばトリメチロールプロパンまたはグリセリンなどのポリオールとの反応によって、より高い官能性の化合物に転化することが可能である。
【0043】
ポリイソシアネート架橋剤は個々に用いることが可能であるか、または混合することが可能である。
【0044】
これらは塗装工業で一般に用いられるポリイソシアネート架橋剤であり、文献において詳しく記載されており、商業的にも得ることができる。
【0045】
ポリイソシアネートは、イソシアネート変性樹脂の形態で用いることも可能である。
【0046】
好ましくないけれども、ポリイソシアネートは、共架橋剤と組み合わせて、例えば、メラミン樹脂および/または遮断ポリイソシアネートと組み合わせて用いることが可能である。
【0047】
親水性基で変性されていない疎水性ポリイソシアネートを架橋剤として用いることが可能であることは本発明の水性塗料組成物の利点である。水性塗料組成物の中のヒドロキシ結合剤との良好な相溶性および混和性を保証する(例えば、ポリエーテル基により変性された)親水性ポリイソシアネートが、他方で、それぞれの塗料の不十分な耐水性および耐薬品性を引き起こすことが一般的な問題である。
【0048】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリルコポリマーA)に加えて、本発明による塗料組成物は、他のヒドロキシ官能性結合剤も含むことが可能である。これらの他のヒドロキシ官能性結合剤の例は、水性塗料の配合物の中で用いられる当業者に知られているヒドロキシ官能性結合剤である。用いることが可能である他のヒドロキシ官能性結合剤の例は、ヒドロキシ官能性ポリエステル、アルキド、ポリウレタンおよび/または(メタ)アクリルコポリマーA)とは異なるポリ(メタ)アクリレート樹脂である。これらの他のヒドロキシ官能性結合剤は、変性された形態を取って、例えば、(メタ)アクリレート化ポリエステルまたは(メタ)アクリレート化ポリウレタンの形態を取って存在することも可能である。それらは個々に用いることが可能であるか、または混合することが可能である。他のヒドロキシ官能性結合剤の割合は、用いられる本発明によるヒドロキシ官能性(メタ)アクリルコポリマーの量を基準にして0〜50重量%に相当することが可能である。塗料組成物は、架橋成分と反応することができる低分子反応性成分、いわゆる反応性シンナーも含むことが可能である。これらの例は、ヒドロキシ官能性反応性シンナーまたはアミノ官能性反応性シンナーである。
【0049】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリルコポリマーA)およびポリイソシアネートB)は、(メタ)アクリルコポリマーA)のヒドロキシル基対架橋成分B)のイソシアネート基の当量比が例えば5:1〜1:5、好ましくは3:1〜1:3、特に好ましくは1.5:1〜1:1.5であることが可能であるような割合で用いられる。他のヒドロキシ官能性結合剤および反応性シンナーを用いる場合、当量比を計算する時、それらの反応性官能基を考慮に入れるべきである。
【0050】
本発明による塗料は、水、例えば全体の塗料組成物を基準にして40〜70重量%およびおそらく少量の有機溶媒、例えば10重量%以下を含む。これらは、当業者に知られている塗装工業で用いられる有機溶媒、例えば、ポリマーの製造において前述した有機溶媒である。
【0051】
本発明による塗料組成物は顔料および/または充填剤を含むことが可能である。塗料の中で用いられる有機タイプまたは無機タイプのすべての色付与顔料および/または特殊効果付与顔料は顔料のために適する。無機カラー顔料または有機カラー顔料の例は、二酸化チタン、微粉化二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料またはピロロピロール顔料である。特殊効果顔料の例は、例えば、アルミニウムまたは銅からの金属顔料、例えば、二酸化チタンで被覆されたアルミニウムなどの干渉顔料、被覆マイカ、グラファイト効果顔料および酸化鉄薄膜である。充填剤の例は、二酸化珪素、硫酸バリウム、タルク、珪酸アルミニウムおよび珪酸マグネシウムである。
【0052】
塗料組成物は普通の添加剤を含むことが可能である。これらの添加剤は、塗装工業で普通に用いられる添加剤である。こうした添加剤の例は、例えば、ベンゾトリアゾールおよびHALS(ヒンダードアミン光安定剤)化合物に基づく光安定剤、(メタ)アクリルホモポリマーまたはシリコン油に基づく流れ調節剤、高度分散珪酸または高分子尿素化合物などのレオロジー作用剤、架橋ポリカルボン酸またはポリウレタンなどの増粘剤、発泡防止剤、湿潤剤、OH官能性結合剤の架橋反応のための硬化促進剤、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸亜鉛などの有機金属塩およびポリイソシアネートによる架橋反応のためのトリエチルアミンなどの第三アミノ基を含む化合物である。添加剤は当業者に熟知された普通の量で添加される。
【0053】
透明塗料組成物または顔料入り塗料組成物のいずれかを製造することが可能である。これが二成分系であるので、塗料のために一般に用いられる顔料、充填剤および添加剤とおそらく合わせてヒドロキシル基を含む結合剤成分A)とポリイソシアネート成分B)は、塗布の直前に互いに混合するのみでよい。原則として、塗料は、塗布の前に水および/または有機溶媒で吹付粘度になお調節することが可能である。
【0054】
本発明による塗料組成物は、既知の方法を用いて、特に吹付塗布によって被着させることが可能である。塗料組成物は室温で硬化させることが可能であるか、または例えば80℃以下のより高い温度で押し進めることが可能である。しかし、それらは、例えば80〜160℃のより高い温度でさえ硬化させることが可能である。
【0055】
本発明による塗料組成物は自動車塗料および工業塗料のために適する。自動車塗料セクターにおいて、塗料は車両製造ライン塗装と車両および車両部品の塗換の両方のために用いることが可能である。車両製造ラインに関して、例えば80〜160℃、好ましくは110〜140℃の塗装ストービング(焼付け)温度が用いられる。塗換に関して、例えば20℃〜80℃、特に40〜60℃の硬化温度が用いられる。塗料組成物は、80℃以下の硬化温度を典型的に用いるトラック、バスおよび貨車などの大型車両および輸送車両を被覆するためにも用いることが可能である。
【0056】
本発明による塗料組成物はクリアコートとして用いるために適するが、従来の顔料により着色することが可能であり、一体色のトップコート、ベースコートまたはプライマまたはシーラーなどのアンダーコートとして用いることが可能である。好ましくは、本発明による塗料組成物は、一体色のトップコートまたは透明クリアコートとして配合することが可能であり、多層被膜の一体色外側トップコート層の製造の際に、または多層被膜の外側クリアコート層の製造の際に用いることが可能である。従って、本発明は、トップコート被膜およびクリア被膜としての本発明による塗料組成物の用途ならびに特に本発明による塗料組成物から製造される多層被膜、多層被膜の一体色のトップコート層および透明クリアコート層を製造する方法にも関連する。
【0057】
一体色トップコートの形態を取った塗料組成物は、例えば、通常の1成分充填剤層または2成分充填剤層に被着させることが可能である。しかし、本発明による塗料は、例えば、通常のプライマ上、例えば2成分エポキシドプライマ上または電着プライマ上に充填剤層として被着させ硬化させることも可能である。
【0058】
透明クリアコートの形態を取った塗料組成物は、溶媒系カラーベースコート層または水性カラーベースコート層および/または効果付与ベースコート層上に、例えばウエットインウェットプロセスを用いて被着させることが可能である。この場合、カラーベースコート層および/または効果付与ベースコート層は、本発明によるクリアコートからのクリアコート層の塗布の前に、必要ならばプレコートされた基材に、特に、プレコート車両車体または車体の部品に被着される。乾燥期間後、考慮されている場合、両方の層は一緒に硬化される。従って、車両製造ライン塗装に関して、乾燥は例えば20〜80℃で行うことが可能であり、塗換に関しては、相対空気湿度に応じて室温で15〜45分にわたり行うことが可能である。
【0059】
本発明による塗料組成物は、一体色のトップコート層および透明クリアコート層を製造するために多層被膜の中で有利に用いられる。トップコート層およびクリアコート層は、機械的作用および風化作用に対する良好な抵抗力を有し、良好な耐薬品性を示す。本発明において用いられるコポリマー分散液は好適な固体粘性を有し、従って、こうしたコポリマー分散液に基づく本発明による塗料組成物は吹付粘度で十分に高い固体含有率、例えば、40〜45重量%に至る固体含有率を有する。コポリマー分散液は、普通は10重量%以下の少量のみの有機共溶媒を含む。水性塗料の中で用いられる水希釈性(メタ)アクリレートコポリマーA)は、疎水性において普通のポリイソシアネート架橋剤、すなわち特に親水変性されなかったポリイソシアネート架橋剤と合わせて特に有利に用いることが可能である。それらは、これらのポリイソシアネート架橋剤に高度に相溶性であり、これらと混合することにより単純に水希釈性2成分塗料組成物に変換することが可能である。これは、例えば、成分を単純に手で確実に混合できるべきである車両塗換における2成分塗料組成物のこうした用途のために特に重要である。他方、ポリイソシアネートとの良好な相溶性および混和性は、光沢および流れなどの満足な表面特性を有する塗料につながる。比較的疎水性である、すなわち、特に親水変性されていない標準塗料ポリイソシアネートは、特に大量の有機共溶媒の存在しない状態でおよび/または高い剪断速度なしで入れ込みが行われる場合、困難を伴いつつ水性塗料組成物に入れ込むか、または混合することが可能であるのみであることが先行技術から知られている。
【0060】
以下の実施例を参照することにより本発明を更に説明する。すべての部および百分率は、特に指示がない限り重量基準である。本明細書で開示されたすべての分子量はポリスチレン標準を用いるGPC(ゲル透過クロマトグラフィ)によって決定される。
【実施例】
【0061】
実施例1
アクリルコポリマー分散液1の調製
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に200グラムの「カルディュラ(Cardura)」(登録商標)E10(CE10)(レゾリューション(Resolution)から入手できるC10バーサティック酸のグリシジルエステル)および40グラムのエトキシプロパノール(EPR)を装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、52グラムの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、160グラムのスチレン(S)、68グラムのアクリル酸(AA)、10グラムのジクミルペルオキシド(DCP)、40グラムの「カルディュラ(Cardura)」(登録商標)E10および10グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり反応器に添加した。フィード後、反応器の内容物を30分にわたり保持した。30分の保持期間後、108グラムのHEMA、30.4グラムのAA、141.6グラムのn−ブチルメタクリレート(BMA)、5グラムのDCPおよび25グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるフィード系のためのすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で2時間にわたり保持した。次の工程において、33グラムのジメチルアミノエタノール(DMEA)を29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0062】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された865グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:44.8%
粘度:8800cps
酸価:33.6mgKOH/g
pH:8
Mn:3700
Mw:24500
【0063】
実施例2
アクリルコポリマー分散液2の調製
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に200グラムのCE10および90グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、52グラムのHEMA、160グラムのS、68グラムのAA、10グラムのDCP、40グラムのCE10および40グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり反応器に添加した。フィード後、反応器の内容物を30分にわたり保持した。30分の保持期間後、108グラムのHEMA、30.4グラムのAA、141.6グラムのイソブチルメタクリレート(IBMA)、5グラムのDCPおよび45グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるフィード系のためのすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で2時間にわたり保持した。反応器の内容物を100℃に冷却し、100部のEPRを蒸留で除去した。次の工程において、33グラムのジメチルアミノエタノール(DMEA)を20.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0064】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された865グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:45.1%
粘度:3500cps
酸価:33.6mgKOH/g
pH:8.2
Mn:4500
Mw:17500
【0065】
実施例3
アクリルコポリマー分散液3の調製(実施例2参照、ストリッピング工程なし)
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に200グラムのCE10および40グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、52グラムのHEMA、160グラムのS、68グラムのAA、10グラムのDCP、40グラムのCE10および10グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり反応器に添加した。フィード後、反応器の内容物を30分にわたり保持した。30分の保持期間後、108グラムのHEMA、30.4グラムのAA、141.6グラムのIBMA、5グラムのDCPおよび25グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるフィード系のためのすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で2時間にわたり保持した。次の工程において、33グラムのDMEAを29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0066】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された865グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:44.2%
粘度:72cps
酸価:35mgKOH/g
pH:7.9
Mn:39
Mw:18700
【0067】
実施例4
アクリルコポリマー分散液の調製
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に200グラムのCE10および40グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、52グラムのHEMA、160グラムのS、68グラムのAA、20グラムのDCP、40グラムのCE10および10グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり反応器に添加した。フィード後、反応器の内容物を30分にわたり保持した。30分の保持期間後、108グラムのHEMA、30.4グラムのAA、100.8グラムのIBMA、40グラムのn−ブチルアクリレート(BA)、5グラムのDCPおよび25グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるフィード系のためのすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で2時間にわたり保持した。次に、反応器を100℃に冷却した。次の工程において、33グラムのDMEAを29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0068】
次の工程において、ポリマーブレンドを約70℃で予熱された865グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:43.2%
粘度:3600cps
酸価:mgKOH/g
pH:8.3
Mn:5600
Mw:39000
【0069】
実施例5
アクリルコポリマー分散液5の調製
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に240グラムのCE10および120グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。52グラムの2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、160グラムのS、68グラムのAA、10グラムのジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)および40グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり添加した。30分の保持期間後、89.6グラムのHEA、30.4グラムのAA、160グラムのイソブチルアクリレート(IBA)、5グラムのDTBPおよび20グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるフィード系のためのすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で3時間にわたり保持した。反応器の内容物を60℃に冷却し、120℃に徐々に加熱しつつ、約30ミリバールの真空下でEPRをストリッピングで除去した。次の工程において、結合剤を100℃に冷却し、33グラムのDMEAを29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0070】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された737グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:43.2%
粘度:2740cps
酸価:30.5mgKOH/g
pH:7.9
Mn:4400
Mw:32600
【0071】
比較例1
アクリルコポリマー分散液1の調製(実施例2として、しかし米国特許第5,539,022号明細書による1工程で調製した)
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に200グラムのCE10および40グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、160グラムのHEMA、141.6グラムのIBMA、160グラムのS、98.4グラムのAA、10グラムのDCP、40グラムのCE10および10グラムのEPRの混合物を5時間にわたり反応器に添加した。フィード後、5グラムのEPRによるすすぎ工程を追加し、反応器の内容物を150℃に維持した。次の工程において、33グラムのDMEAを29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0072】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された865グラムの水で希釈した。
【0073】
水性ポリマー分散液は良くない固体粘性を有している。
試験結果
固形物:44.2%
粘度:13800cps
酸価:33.2mgKOH/g
pH:8.6
Mn:4000
Mw:17400
【0074】
比較例2
アクリルコポリマー分散液2(実施例2に近いが、AA−CE10の一部をVEOVA10で置き換えた米国特許第5,670,600号明細書の教示を用いて)
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に112グラムのCE10および112グラムのVEOVA10(レゾリューション(Resolution)から入手できる「バーサティック(Versatic)」酸10のビニルエステル)ならびに90グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、52グラムのHEMA、160グラムのS、44グラムのAA、10グラムのDCP、40グラムのCE10および40グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり反応器に添加した。フィード後、反応器の内容物を30分にわたり保持した。30分の保持期間後、108グラムのHEMA、30.4グラムのAA、141.6グラムのIBMA、5グラムのDCPおよび45グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で2時間にわたり保持した。反応器の内容物を100℃に冷却し、100部のEPRを蒸留で除去した。次の工程において、33グラムのDMEAを29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0075】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された1022グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:40.9%
粘度:480cps
酸価:33.9mgKOH/g
pH:8.6
Mn:4000
Mw:14000
【0076】
40℃での1週間オーブン安定後、分散相を分離した。
【0077】
比較例3
アクリルコポリマー分散液3の調製(実施例2に近いが、AA−CE10の一部を2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)で置き換え、AA−CE10付加体の全量が25%未満である米国特許第5,670,600号明細書の教示を用いて)
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に112グラムのCE10および90グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、52グラムのHEMA、160グラムのS、112グラムのEHMA、44グラムのAA、10グラムのDCP、40グラムのCE10および40グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり添加した。フィード後、反応器の内容物を30分にわたり保持した。30分の保持期間後、108グラムのHEMA、30.4グラムのAA、141.6グラムのIBMA、5グラムのDCPおよび45グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で2時間にわたり保持した。反応器の内容物を100℃に冷却し、100部のEPRを蒸留で除去した。次の工程において、33グラムのDMEAを29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0078】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された866グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:44.8%
粘度:1260cps
酸価:34.8mgKOH/g
pH:7.9
Mn:4400
Mw:13000
【0079】
40℃での1週間オーブン安定後、分散相を分離した。
【0080】
比較例4
アクリルコポリマー分散液4の調製(実施例2に近いが、AA−CE10付加体が米国特許第5,773,513号明細書により形成されるフィードにフィード2の中で用いられる過剰のAAが局在している)
プロペラ型スターラー、温度計、コンデンサおよびモノマー/開始剤フィード系が装着された反応器内に200グラムのCE10および80グラムのEPRを装填し、約150℃に加熱した。150℃に反応器の内容物を維持しつつ、21.6グラムのHEMA、160グラムのS、112グラムのEHMA、98.4グラムのAA、10グラムのDCP、40グラムのCE10および10グラムのEPRの混合物を2時間30分にわたり反応器に添加した。フィード後、反応器の内容物を30分にわたり保持した。30分の保持期間後、138.4グラムのHEMA、141.6グラムのIBMA、5グラムのDCPおよび30グラムのEPRを約150℃で2時間30分にわたり添加し、5グラムのEPRによるフィード系のためのすすぎ工程を続けた。すすぎ工程後、反応器の内容物を150℃で2時間にわたり保持した。反応器の内容物を100℃に冷却し、50部のEPRを蒸留で除去した。次の工程において、33グラムのDMEAを29.5の理論酸価のために添加した。その量は測定された酸価のために補正した。
【0081】
ポリマーブレンドを約70℃で予熱された1022グラムの水で希釈した。
試験結果
固形物:39.8%
粘度:3500cps
酸価:34.2mgKOH/g
pH:8.6
Mn:5800
Mw:65000
【0082】
上で調製された水性分散液の特性を2成分(2K)顔料入りトップコートおよびクリアコートで評価した。
【0083】
以下の顔料分散液を顔料入りトップコートの調製のために用いた。

























【0084】

【0085】
塗装実施例1
水性2Kブルートップコート
69.9部のアクリレートコポリマー分散液3、0.1部の湿潤剤(Byk(登録商標)380N(Bykケミー(Byk Chemie)))および0.5部の脱泡剤(Byk(登録商標)011(Bykケミー(Byk Chemie)))を混合することによりブルートップコート配合物を調製した。この混合物に、8.1部の分散液1.1、3.7部の分散液1.2、1.6部の分散液1.3および6.4部の分散液1.4を添加し、混合した。このブレンドに10部の水を添加し、混合した。
【0086】
65.3部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)N3600(バイエル(Bayer)製の固形物100%のヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と34.7部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0087】
100部の上述したトップコートを27.4部の活性剤と混合した。商用プライマ表面を有する電着スチールパネル上にトップコートを吹き付け、80℃で30分にわたり焼き付けた。
【0088】
塗装実施例2
水性2Kブルートップコート
72.1部のアクリレートコポリマー分散液1、0.1部の湿潤剤(Byk(登録商標)380N(Bykケミー(Byk Chemie)))および0.5部の脱泡剤(Byk(登録商標)011(Bykケミー(Byk Chemie)))を混合することによりブルートップコート配合物を調製した。この混合物に、8.4部の分散液1.1、3.9部の分散液1.2、1.6部の分散液1.3および6.7部の分散液1.4を添加し、混合した。このブレンドに6.7部の水を添加し、混合した。
【0089】
65.3部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)N3600(バイエル(Bayer)製の固形物100%のヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と34.7部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0090】
100部の上述したトップコートを28.5部の活性剤と混合した。商用プライマ表面を有する電着スチールパネル上にトップコートを吹き付け、80℃で30分にわたり焼き付けた。
【0091】
以下の表は塗膜の物理的特性の概要を示している。
【0092】

【0093】
塗装実施例1と塗装実施例2の両方は優れた削り取り抵抗力を与え、膨れは2週間湿度キャビネット後に観察されなかった。
【0094】
塗装実施例3
水性2Kホワイトトップコート
59.72部のアクリレートコポリマー分散液3、0.1部の湿潤剤(Byk(登録商標)380N(Bykケミー(Byk Chemie)))および0.5部の脱泡剤(Byk(登録商標)011(Bykケミー(Byk Chemie)))を混合することによりホワイトトップコート配合物を調製した。この混合物に、28.59部の分散液1.4、0.36部の分散液1.3および0.34部の分散液1.5を添加し、混合した。このブレンドに10.75部の水を混合した。
【0095】
60.4部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)N3600(バイエル(Bayer)製の固形物100%のヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と39.6部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0096】
100部の上述したトップコートを25.27部の活性剤と混合した。商用プライマ表面(30μm)を有するPC/PBTパネル上にトップコート(45μm)を吹き付け、80℃で30分にわたり焼き付けた。79.7の光沢(20°)およびクロスカット試験と高圧洗浄の両方後に優れた粘着力を得た。
【0097】
塗装実施例4および比較塗装実施例1
水性2Kホワイトトップコート
69.59部のアクリレートコポリマー分散液2および比較樹脂実施例4に29.79部の分散液1.4を混合することによりホワイトトップコート配合物を調製した。このブレンドに、0.1部の湿潤剤(Byk(登録商標)380N(Bykケミー(Byk Chemie)))および0.5部の脱泡剤(Byk(登録商標)011(Bykケミー(Byk Chemie)))を混合下で添加した。65.59部の比較アクリレートコポリマー分散液4を用いたことを除き、類似物によって比較ホワイトトップコート配合物を調製した。
【0098】
30部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)N3600(バイエル(Bayer)製の固形物100%のヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と42部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)VP LS2138(バイエル(Bayer)製の固形物80%のイソホロンジイソシアネートアロファネート)および28部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0099】
各場合、100部の上述したトップコートおよび比較トップコートを40部の活性剤と混合した。14%の水を添加することにより粘度をDIN4カップ内で28秒に調節した。商用プライマ表面(50μm)で被覆されたスチールパネル上にトップコート(50μm)を50μmの乾燥膜厚で吹き付け、空気乾燥させた。最終塗料の結果を以下で示している。
【0100】

*グラフィティ除去試験は吹付から14日後にDB (Deutsche Bahn) 規格 (TL 918 300 blatt39/4.11) に準拠して行った。
【0101】
比較例4に基づく塗料は低い光沢を有し、安定でもなかった。
【0102】
塗装実施例5
水性2Kクリアコート
76.4部のアクリレートコポリマー分散液3、0.1部の湿潤剤(Byk(登録商標)380N(Bykケミー(Byk Chemie)))、0.5部の脱泡剤(Byk(登録商標)011(Bykケミー(Byk Chemie)))および23.2部の水を混合することによりクリアコート配合物を調製した。
【0103】
61.1部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)N3600(バイエル(Bayer)製の固形物100%のヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と38.9部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0104】
100部の上述したクリアコートを31.8部の活性剤と混合した。クリアコート(45〜50μm)をブラック被覆スチールパネル上に吹き付け、80℃で30分にわたり焼き付けた。得られたクリアコートは、40.5%の吹付固形物、83の光沢(20°)、優れた耐キシレン性(3分暴露後)および109(焼付から1時間後)と140(焼付から1週間後)のペンジュラム硬度(ガラス上40μm)を有していた。
【0105】
塗装実施例6、7および8
水性2Kクリアコート
アクリレートコポリマー分散液1、3および4をそれぞれ以下の表のような比でブトキシプロパノールおよび水と混合することにより3つのクリアコート配合物を調製した。混合物を一晩貯蔵した。80部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)XP2410(バイエル(Bayer)製の固形物100%の非対称ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と20部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0106】
攪拌下で活性剤を以下のような重量比でクリアコートに添加し、混合物を2.5cmのカウレスミキサにより1400rpmで2分にわたり攪拌した。クリアコートの粘度をDIN4カップ内で22〜24秒に水で調節した。クリアコートをブラック被覆スチールパネル上に吹き付け、80℃で30分にわたり焼き付けた。
【0107】

【0108】
クリアコートの得られた結果を以下の表に記載している。



【0109】

*3分暴露、評点は、0=最悪から10=最善まで。
【0110】
塗装実施例9
溶媒系クリアコートの下で用いるためのホワイト水性2Kベースコート
69.59部のアクリレートコポリマー分散液3に29.79部(w/w%)の顔料分散液1.4を混合することによりホワイトベースコート配合物を調製した。このブレンドに0.1部の湿潤剤(Byk(登録商標)380N(Bykケミー(Byk Chemie)))および0.5部の脱泡剤(Byk(登録商標)011(Bykケミー(Byk Chemie)))を添加した。
【0111】
38部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)N3600(バイエル(Bayer)製の固形物100%のヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と54部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)VP LS2138(バイエル(Bayer)製の固形物80%のイソホロンジイソシアネートアロファネート)および8部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0112】
100部の上述したトップコートを40部の活性剤と混合した。14%の水を添加することによりDIN4カップ内で28秒に粘度を調節した。ベースコート(50μm)を商用プライマ表面(50μm)で被覆されたスチールパネル上に吹き付け、60℃で1時間にわたり焼き付けた。このベースコートは60の光沢(60°)を有する。
【0113】
ベースコートの上に商用溶媒系クリアコート(AK260(デュポン(DuPont))により活性化された(デュポン(DuPont))製のRK−69269)を体積比3/1で吹き付けた。このクリアを60℃で1時間にわたり焼き付けた。焼付後、塗装されたパネルは、乾燥と10日湿度キャビネット後の両方で90の光沢(20°)と優れた粘着力の結果を有していた。
【0114】
ベースコートのサンダー仕上げなしで1日または1週間後のクリアコートの塗布は類似の特性を与えなかった。
【0115】
塗装実施例10、11および比較例12
水性2Kクリアコート
アクリレートコポリマー分散液3と5、および比較アクリレートコポリマー分散液3を以下の表で記載された比でそれぞれブトキシプロパノールと混合することによりクリアコート配合物を調製した。混合物を一晩貯蔵した。
【0116】
80部の「デスモドール(Desmodur)」(登録商標)XP2410(バイエル(Bayer)製の固形物100%の非対称ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)と20部のブチルグリコールアセテートをブレンドすることにより活性剤溶液を調製した。
【0117】
手による攪拌下で以下に記載された比で活性剤をクリアコートに添加した。水を添加することによりDIN4カップ内で19〜21秒の吹付粘度に第2の工程でクリアコートの粘度を調節した。用いるために準備の整った混合物の中の溶媒の全量はすべての組み合わせに関して12%であった。
【0118】
クリアコートを商用ブラック水性ベースコート上に吹き付け、60℃で30分にわたり焼き付けた。
【0119】

【0120】
以下の表は、実施例10、11、12および13において被着させた膜の物理的特性の概要を示している。
【0121】



【0122】
比較塗装実施例12は、塗装実施例10、11に対して光沢が劣った。
【0123】
試験方法
画像の鮮明度(D.O.I)
膜のD.O.I値は、Bykガードナー(Byk Gardner)製の「ウェーブスキャン(Wave Scan)」D−4816装置により決定した。
【0124】
乾燥/テープ試験
焼き付けてから10分の冷却期間の後、パネルを横切ってマスキングテープの細片を被着させ、均一接触を確保するために中程度の膜圧を用いて細片をマニュアルで平らにする。2kgの分銅を往復してテープ上にわたって転がす。10分後、テープを取り除き、マーキング度を評価し採点する。回復能力の理解を得るために、テープの刷込みを30分後に再び評価する。このプロセスを焼付から1時間後および2時間後に繰り返す。
【0125】
乾燥/粘着性試験
焼き付けてから10分の冷却期間の後、膜がなお粘着性か否かを検査するために膜を「スリーエム(3M)」接着剤紙に触れさせる。このプロセスを焼付から1時間後および2時間後に繰り返す。
【0126】
乾燥/結集するための乾燥(D.T.A)試験
焼き付けてから10分の冷却期間の後、親指を膜に対してしっかり押し付け(天秤で2kg)、45度の角度ひねる。膜の回復能力の理解を得るために、押し付け直後に、そして30分の回復後にも評点を与える。このプロセスを焼付から1時間後および2時間後に繰り返す。
【0127】
フィッシャー硬度
「フィッシャースコープ(Fisherscope)」H100微小硬度試験機により焼付から1時間後または4時間後および1週間後に膜を評価する。この方法は、規定された面角を有する錐体状ダイヤモンドを通して塗料の表面に力を加え、得られた押し付けの測定値をヌープ硬度数に換算することからなる。
【0128】
光沢
「ドクター・ランゲ(Dr.Lange)」REF03反射率計で測定される。
【0129】
曇り度
Bykガードナー(Byk Gardner)製の「ウェーブスキャン(Wavescan)」DOIで測定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種の水希釈性(メタ)アクリレートコポリマーと、
B)遊離イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート架橋剤と、
を含む水性塗料組成物であって、前記(メタ)アクリレートコポリマーが
a)モノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物の少なくとも1種10〜80重量%と、
b)成分a)とは異なる少なくとも1種のヒドロキシ官能性不飽和モノマー0〜40重量%と、
c)少なくとも1種の不飽和酸官能性モノマー1〜8重量%と、
d)少なくとも1種の他の重合性不飽和モノマー0〜70重量%と、
(但し、成分A)およびB)の重量%および成分a)〜d)の重量%は100重量%になる)
を含み、前記(メタ)アクリレートコポリマーが少なくとも2つのフィードストリームによるスキューフィード重合法によって調製され、1つのフィードストリームが
I)前記コポリマー中の成分a)の全量を基準にしてモノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物a)60〜100重量%と、
II)前記コポリマー中のモノマーb)の全量を基準にしてヒドロキシ官能性不飽和モノマーb)0〜60重量%と、
III)前記コポリマー中のモノマーc)の全量を基準にして不飽和酸官能性モノマーc)0〜30重量%と、
IV)前記コポリマー中のモノマーd)の全量を基準にして他の重合性不飽和モノマーd)0〜80重量%と、
を含み、残りの1つ以上のフィードストリームが成分a)〜d)の残りを含むことを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートコポリマーが
a)モノエポキシエステルと不飽和酸官能性モノマーの反応生成物20〜60重量%と、
b)成分a)とは異なるヒドロキシ官能性不飽和モノマー10〜30重量%と、
c)不飽和酸官能性モノマー2〜6重量%と、
d)他の重合性不飽和モノマー20〜50重量%と、
(但し、成分a)〜d)の重量%は100重量%になる)
を含む、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
前記水希釈性(メタ)アクリレートコポリマーA)が30〜250のヒドロキシ価、15〜50の酸価および1000〜15000の数平均分子量Mnを有する、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
成分a)がバーサティック酸から誘導されたグリシジルエステルと(メタ)アクリル酸の反応生成物である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
成分c)が(メタ)アクリル酸である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
成分d)が不飽和カルボン酸と1〜20個の炭素原子を有する脂肪族一価アルコールのエステルおよび/またはビニル芳香族モノマーを含む、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレートコポリマーA)が
a)モノエポキシエステルと(メタ)アクリル酸の少なくとも1種の反応生成物20〜60重量%と、
b)アルファ,ベータ−オレフィン系不飽和モノカルボン酸から誘導された一級ヒドロキシル基または二級ヒドロキシル基を有する少なくとも1種のヒドロキシアルキルエステル10〜30重量%と、
c)少なくとも1種の不飽和酸官能性モノマー2〜6重量%と、
d)d1)(メタ)アクリル酸と1〜20個の炭素原子を有する脂肪族一価アルコールの少なくとも1種のエステル10〜25重量%と、
d2)ビニル芳香族モノマー10〜25重量%と、
d3)任意に、モノマーd1)およびd2)とは異なる他のモノマーと、
(但し、成分a)、b)、c)、d1)、d2)およびd3)の重量%は100重量%になる)
を含む、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の塗料組成物を用いて基材上に多層被膜を被着させ、前記被膜を硬化させる工程を含む方法。
【請求項9】
1つ以上の被膜層でプレコートされた基材にトップコート層を被着させることによる基材の多層被覆のための方法であって、前記トップコート層が色付与ベースコート塗料化合物および/または特殊効果付与ベースコート塗料化合物から構成され、クリアコート塗料化合物が被着され、前記クリア被膜層が請求項1に記載の塗料組成物から構成される方法。
【請求項10】
1つ以上の被膜層でプレコートされた基材にトップコート層を被着させることによる基材の多層被覆のための方法であって、顔料入り1層トップコート塗料化合物から構成されたトップコート層が被着され、前記顔料入り1層トップコート被膜層が請求項1に記載の塗料組成物から構成される方法。
【請求項11】
前記方法が自動車塗料および工業塗料のための方法である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が自動車車体、自動車車体部品、大型車両および輸送車両を被覆するための方法である、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2008−511740(P2008−511740A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530317(P2007−530317)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/030989
【国際公開番号】WO2006/026671
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】