説明

アジュバントとしてのキチン微粒子

キチン(天然のNアセチル−D−グルコサミンの多量体)微粒子の調製、免疫アジュバントとしてのキチン微粒子の特徴付け、細胞内病原体及び疾患に対する防御免疫を増大し、アレルギー応答及び疾患を阻害するキチン微粒子の使用に関する組成物及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染及び免疫疾患の予防及び治療のために動物及びヒトにおいてT細胞アジュバントを使用する方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の微生物は、全ての人、特に免疫機能低下状態(高齢者、病人、妊婦及び小児)の人の健康を脅かす場合がある。微生物の取り込みは生命を脅かす感染病につながる。さらに、環境中のアレルゲンは、喘息を含むさまざまな即時型過敏性疾患の原因となる。宿主の防御機構を刺激しうる実用的な免疫変調剤、すなわちTh1アジュバントは、多剤耐性菌を含む細胞内の病原体と、即時型過敏性疾患とに対する宿主の防御の促進への一般的なアプローチの典型となるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし本出願のために現在入手可能な臨床的に適切なTh1アジュバントはない。
【0004】
概要
本発明は、キチン(天然のNアセチル−D−グルコサミンの多量体)微粒子の調製と、免疫アジュバントとしてのキチン微粒子の特徴付けと、キチン微粒子の使用とに関し、該キチン微粒子の使用は、感染しやすいモデル動物において食中毒及び胎児の流産の原因となるリステリア モノサイトゲネスのような病原体に対する防御免疫を増強する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
好ましい実施態様では、アジュバントの組成物は、直径約0.01μmないし20μmのキチン微粒子を少なくとも1個含む。
【0006】
別の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は直径約1μmないし10μmである。
【0007】
別の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は直径約1μmないし4μmである。
【0008】
好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は2型ヘルパーT細胞の活性の低下と、1型ヘルパーT細胞の活性の増大とに有効な量の医薬品組成物に懸濁される。前記キチン微粒子は、1ミリグラムあたり粒子約1×10個から5×10個までの濃度で存在することが好ましい。また、前記キチン微粒子は、1ミリグラムあたり粒子約1×10個から約6×10個までの濃度で存在することが好ましい。
【0009】
別の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子の直径が約1μmないし約10μmであるとき、前記キチン微粒子は1ミリグラムあたり粒子約1×10個から約3×10個までの濃度で存在する。また、前記キチン微粒子の直径が約1μmないし約4μmであるとき、前記キチン微粒子は1ミリグラムあたり粒子約3×10個から約6×10個までの濃度で存在することが好ましい。
【0010】
別の好ましい実施態様では、前記組成物は、マイコバクテリウム属細菌の抗原と、MDP−59と、ブタクサのアレルゲンと、ピーナッツのアレルゲンと、木の実のアレルゲンと、花粉のアレルゲンと、家屋内のチリ・ダニのアレルゲンと、ゴキブリのアレルゲンと、卵白アルブミンと、マイコバクテリウム属細菌のヒート・ショックタンパク質65と、抗原と、これらの精製タンパク質誘導体(PPD)及び誘導体とをさらに含む。
【0011】
他の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は、ワクチン、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原又はペプチドを含む組成物として投与される。前記キチン微粒子は、ワクチンの投与前か、ワクチンとともにか、ワクチンの投与中及び投与後かに投与される。
【0012】
他の好ましい実施態様では、キチン微粒子を調製する方法は、エンドトキシン不含生理食塩水でキチンの原料を洗浄するステップと、洗浄されたキチンを酸と混合するステップと、酸可溶性のキチンを抽出及び単離するステップと、可溶性のキチンを中和及び沈殿するステップと、水に不溶性のキチンを洗浄するステップと、水に不溶性のキチンを凍結乾燥するステップと、水に不溶性のキチンをエンドトキシン不含生理食塩水に再懸濁するステップと、キチン粒子を微細孔を通して濾過するステップと、1−10μmのキチン微粒子を調製するステップとを含む。1つの局面では、前記キチン微粒子は約1ないし4μmである。調製された前記キチン微粒子は生理食塩水中で長期間保存可能で、4°Cで少なくとも1年間安定である。
【0013】
他の好ましい実施態様では、炎症性疾患を治療及び/又は予防する方法はキチン微粒子の治療上の有効量を患者に投与することを含み、前記キチン微粒子は約1μmないし4μmである。
【0014】
別の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は前記患者の体重1キログラムあたり約0.1−500ミリグラムを含む量で投与される。
【0015】
別の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は前記患者の体重1キログラムあたり約0.1−10ミリグラムを含む量で腹腔内又は皮下に投与される。
【0016】
他の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は経口投与時に前記患者の体重1キログラムあたりに約0.1−1グラムを含む量で投与される。
【0017】
別の好ましい実施態様では、前記キチンの微粒子は、2型ヘルパーT細胞の活性の低下と、1型ヘルパーT細胞の活性の増大とに有効な量の医薬品組成物中に懸濁される。投与経路は、経口投与、腹腔内投与、静注及び/又は皮下投与である。
【0018】
別の実施態様では、キチン微粒子の投与は、アレルギー性喘息、食物アレルギー及びアレルギー性皮膚炎を含むTh2が介在する疾患を下向き調節するのに治療上有効である。
【0019】
別の好ましい実施態様では、キチン微粒子の投与は、細胞内感染に対するTh1−宿主防御を上向き調節するのに治療上有効である。
【0020】
別の好ましい実施態様では、免疫応答を変調する方法は直径約1μmないし4μmのキチン微粒子の有効量を動物に投与することを含む。
【0021】
他の好ましい実施態様では前記キチン微粒子は、2型ヘルパーT細胞の活性の低下と、1型ヘルパーT細胞の活性の増大とに有効な量で医薬品組成物に懸濁される。
【0022】
別の好ましい実施態様では、投与経路は、経口投与、腹腔内投与、静注及び/又は皮下投与である。
【0023】
一部の実施態様では、キチン粒子の濃度は1−10μmのキチン粒子について1ミリグラムあたり粒子約1×10個ないし約5×10個であり、1−4μmのキチン粒子について1ミリグラムあたり粒子約1×10個ないし約1×10個である。
【0024】
他の局面は以下に説明される。
【0025】
本発明は添付する請求の範囲に詳細に示される。本発明の上記及びさらなる利点は添付する図面とともに以下の説明を参照することによってさらに良く理解される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】キチン微粒子が宿主に投与されたときの宿主防御機構の作動機序を示す概念図。
【図2】哺乳類疾患の治療の使用時の機構を示す概念図。
【図3】キチン粒子が細菌のCpG及びLPSによるTNFα産生活性と比肩するTNFα産生活性を誘導したことを示すグラフ。
【図4】キチン粒子の腹腔内(IP)投与は、腹腔マクロファージ(図4A)及び脾臓マクロファージ(図4B)による活性窒素及び酸素中間体の放出を増大することを示すグラフ。結果は、前記マクロファージはスーパーオキサイドアニオン(ROS)及び一酸化窒素(NO、ROS)を放出したことをその結果は示す。C57BL/6マウスは腹腔内投与でキチン微粒子を1mg投与された。示された間隔で、腹腔及び脾臓マクロファージは単離された。グリース(Griess)試薬によるNOの放出を測定するために、マクロファージはLPS(1μg/mL)で1時間刺激された。シトクロームcの還元によるスーパーオキサイドアニオンの放出を測定するために、マクロファージはPMA(1μM)で1時間刺激された。平均値±標準偏差値、n=3。
【図5】キチン微粒子はRAW264.7マクロファージでTNFαの産生を誘導するが(図5B)、IL−10の産生を検出できない(図5A)ことを示すグラフ。キチン微粒子(100μg/mL)、CpG−ODN(5μg/mL)、GpC−ODN(5μg/mL)、熱殺菌されたマイコバクテリウム ボビス菌BCG株(HK−BCG)(100μg/mL)、LPS(1μg/mL)、可溶性キチン少糖類(1mg/mL)、50μmより大きいキチン粒子(1mg/mL)、1−10μmのキトサン粒子(1mg/mL)又は1.1μmのラテックスビーズ(1mg/mL)でRAW264.7細胞(細胞10個/mL)は刺激された。IL−10及びTNFαのレベルは特異的ELISA法で検出された。平均値±標準偏差値、n=4、*はp<0.05、#は同じ時間点で生理食塩水で処理された細胞と比較したときのp<0.01。
【図6】キチン微粒子は、マウス脾臓マクロファージでTNFα産生を誘導するが(図6B)、IL−10産生を検出できない(図6A)ことを示すグラフ。マウスの脾臓マクロファージは正常なC57BL/6マウスから単離された。1−10μmのキチン微粒子(100μg/mL)、CpG−ODN(5μg/mL)、GpC−ODN(5μg/mL)、熱殺菌されたマイコバクテリウム ボビス菌BCG株(HK−BCG)(100μg/mL)、LPS(1μg/mL)、可溶性キチン少糖類(1mg/mL)、50μmより大きいキチン粒子(1mg/mL)、1−10μmのキトサン粒子(1mg/mL)又は1.1μmのラテックスビーズ(1mg/mL)で、TNFαの産生のために3時間及びIL−10の産生のために24時間、37°Cで脾臓細胞(細胞2×10個/mL)は刺激された。TNFα及びIL−10のレベルは特異的ELISA法で検出された。平均値±標準偏差値、n=4、*はp<0.05、#は同じ時間点で生理食塩水で処理された細胞と比較したときのp<0.01。
【図7】キチン微粒子、CpG−ODN、HK−BCG及びLPSは、RAW 264.7細胞でp38、ERK1/2及びJNKを活性化することを示すウエスタンブロットの画像図。キチン微粒子(100μg/mL)、CpG−ODN(5μg/mL)、GpC−ODN(5μg/mL)、HK−BCG(100μg/mL)、LPS(1μg/mL)、可溶性キチン少糖類(1mg/mL)、50μmより大きいキチン粒子(1mg/mL)、キトサン粒子(1mg/mL)又は1.1μmのラテックスビーズ(1mg/mL)で0、10、20、30及び40分間、37°Cで細胞(細胞10個/mL)は刺激された。単離されたマクロファージタンパク質は11%のSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離され、PVDF膜にエレクトロブロットされた。リン酸化されたMAPK(P−p38、P−Erk1/2及びP−JNK)は特異抗体で検出された。
【図8】ブタクサで感作されたBalb/cマウスにおける血清IgEレベルへのキチン処理の効果を示すグラフ。マウスの複数のグループ(7匹/グループ)が、ブタクサでの免疫前に経口にて3日間キチン(mg/マウス/日)を投与され、免疫化期間中継続してキチン投与された。免疫化されたマウスは、生理食塩水(0.5mL/マウス/日)を投与して免疫化されたマウスが対照として用いられた。血液サンプルは図示された日に尾静脈から回収された。前記血液サンプルでのIgEレベルの全ては、ELISA法で測定された。平均値±標準偏差値、n=7、**はp<0.01、#は前記生理食塩水で処理されたグループと比較したときのp<0.0005。
【図9】MPB−59及びキチン微粒子で同時免疫されたC57BL/6(WT)及びIL−10ノックアウト(IL−10−KO)マウスでMPB−59で誘発されたフットパッドの遅延型過敏症の発症を示すグラフ。野生型(白色棒)及びIL−10(黒色棒)マウスは、図示されたようにMPB−59、MPB−59/キチン、キチン及び生理食塩水で免疫された。最終免疫処理後7日目に、野生型及びIL−10KOマウスは、右フットパッドに50mgのMPB−59溶液を、左フットパッドに50μLの生理食塩水(対照)を供与された。48時間後にマウスの各グループで右フットパッドの厚さと左フットパッドの厚さとの差が得られた。平均値±標準偏差値、n=6。
【図10】PEG生合成能はキチン微粒子の投与によって下向き調節されることを示すグラフ。C57BL/6マウスは腹腔内にキチン粒子(1mg)を投与された。腹腔マクロファージは刺激24時間後に単離された。マクロファージの懸濁液(細胞10個/mL)はPEG放出を測定するために2時間、1μM カルシウムイオノファア23187(黒色棒)又は培養液(灰色棒)で刺激された。PEGはELISA法によってアッセイされた。平均値±標準偏差値、n=3。
【図11】新規1−4μmのキチン調製物で得られた結果を示すグラフ。1−10μmのキチン粒子は実施例の項で記載される通りに調製され、メッシュ及び差次的な遠心分離を通じて濾過された。細かい粒子(1−4μm)と、中間径の粒子(4−7μm)と、粗い粒子(7−10μm)という3つの画分が得られた。粒径はサイトメーターで測定された。分画された前記粒子(20μg/mL)が、上述したように脾臓細胞培養に含まれるマクロファージ及びNK細胞に添加された。24時間培養後、上清中のIL−12(黒色棒)及びIFNγ(白色棒)レベルがELISA法によって測定された。平均値±標準偏差値、n=3ないし4。
【図12】CpG−ODNで誘導されたIL−10のmRNAレベルでのキチン微粒子の効果を示すブロット図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
キチン微粒子を含む組成物。キチン(天然のNアセチル−D−グルコサミンの多量体)微粒子の調製と、免疫アジュバントとしてのキチン微粒子の特徴付けと、病原体に対する防御免疫を増大するためのキチン微粒子の使用との方法。
【0028】
定義
本明細書で用いられるところの「被験体」又は「患者」とは、本発明に従って実施される治療の受容者をいう。前記被験体はいずれかの脊椎動物であるが、哺乳類であることが好ましい。哺乳類の前記被験体はヒトであることが好ましいが、家畜、実験動物又はペット動物となる場合がある。
【0029】
本明細書で用いられるところの「物質」とは免疫応答を誘導する場合があり、抗原及び病原体を含む、いずれかの物質をいう。
【0030】
本明細書で用いられるところの、例えば、抗原のような物質に対する「曝露」とは、前記物質に対する自然曝露、環境曝露の両方と、被験体に対する前記物質の投与とを含む。
【0031】
「ワクチン組成物」という用語は抗原を含むいずれかの医薬品組成物を示し、前記組成物は被験体の疾患又は状態を予防又は治療するために用いられる。ワクチン組成物は1種類又は2種類以上のアジュバントを含む場合がある。ワクチン組成物は病原体によって引き起こされる疾患の予防に用いられるのが典型であるが、本発明の前記ワクチン組成物は治療の前後で用いられることができる。
【0032】
選択された成分、抗原又は興味のある組成物に対する「免疫応答」又は「免疫応答」は、前記成分又は興味のある組成物中に存在する分子(例えば、抗原)に対する個体の液性及び/又は細胞性免疫応答で発生する。本発明の目的のための「液性免疫応答」とは抗体分子によって仲介される免疫応答をいうが、「細胞性免疫応答」は、T−リンパ球、マクロファージ及び/又は他の白血球によって仲介される免疫応答をいう。哺乳類の免疫応答は免疫カスケードを含むと理解され、該カスケードは応答の広範なカテゴリーの2分の1を占め、カスケードを開始するヘルパーT細胞のクラスによって特徴付けられる。したがって、特異的抗原に対する免疫応答は1型ヘルパーT(Th1)又は2型ヘルパーT(Th2)の応答として特徴付けられる場合があり、該応答は抗原提示の後に抗原特異的Tリンパ球から放出されるサイトカインのタイプに依存する。抗原で刺激されたヘルパーT細胞に由来する、IL−2、インターフェロンガンマ(IFN−γ)及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)のような炎症性サイトカインの放出によってTh1の免疫応答は一般的に特徴付けられる。Th1の応答は強い細胞性免疫(例えば、CTLs)及びIgG抗体のサブクラスの産生に関係があり、該IgG抗体のサブクラスは一般的に用いられたモデルマウスにおけるIgG2aのようにオプソニン活性及び補体結合活性を備えている。しかし、抗原特異的ヘルパーT細胞の刺激後におけるIL−4及びIL−10のような非炎症性サイトカインの放出によってTh2の免疫応答は特徴付けられる。前記Th2の応答は一般的に最大CTL活性を促進しないが、強い抗体応答に関係があり、該応答はオプソニン活性及び補体結合活性を喪失する抗体である前記マウスにおけるIgG1のようなIgGサブクラスに代表される。一般的に、Th2の応答に関係がある前記抗体レベルは、Th1の応答に関係がある抗体レベルよりも非常に強い。
【0033】
「アジュバント」という用語は、抗原特異的免疫応答を特異的又は非特異的に変化、増大、誘導、再誘導、増強又は開始する能力がある、いずれかの物質又は組成物を示す。したがって、(例えば、ワクチン組成物としての)アジュバント及び抗原の同時投与は、抗原の低投与又は少投与につながる場合があり、該低投与又は少投与は、前記抗原が投与された被験体における所望の免疫応答を達成するために必須となる。本発明のある実施態様では、抗原とアジュバントとの同時投与は前記抗原に対する免疫応答を再誘導するか、あるいは誘導されず、例えば、前記免疫応答はTh2型からTh1型までの免疫応答を再誘導する。アジュバントの有効性はワクチン組成物との該アジュバント投与するステップと、2つの使用する標準アッセイ法に対する抗体力価及び/又は細胞性免疫を比較するステップとによって測定可能であり、前記ワクチン組成物は動物を制御し、前記標準アッセイ法は、当業者に周知の放射性免疫検定法、ELISA法、CTLアッセイ法及び同様の方法である。典型的には、ワクチン組成物では前記アジュバントは抗原に由来する個別の原子団であるが、分子の単体は該アジュバント及び抗原の特徴の両方(例えば、コレラ毒)を有する。本発明の目的のために、特異的抗原に対する免疫応答を増大するか、あるいは、Th2ないしTh1応答の免疫応答状態を再誘導又は無効のいずれかにするためにアジュバントは用いられ、例えば、アジュバントがワクチン組成物との同時投与されるときに、前記アジュバントなしに投与された等量のワクチン組成物によって誘導された前記免疫応答よりも前記同時投与の結果生じる免疫応答はより大きくなる。さらに本発明の目的のために、アジュバントの「有効量」は、例えば、前記Th1の応答のみを活性化するか、あるいはTh2ないしTh1応答の前記応答を再誘導するいずれかの免疫応答を増大する量となるか、あるいは単独の前記抗原に対する免疫応答と比較して、アジュバントの「有効量」は前記免疫応答の変化又は再誘導をもたらすのに十分な量となるであろう。
【0034】
「アジュバント組成物」は、本発明のキチン微粒子を含む医薬品組成物を意味する。
【0035】
本明細書で用いられるところの「自然免疫」の増大とは、マクロファージ、NK細胞、抗原提示細胞(APCs)及びその他の要素の活性化の増大を含み、該活性の増大は多様な微生物の病原体への曝露後に対する即時型防御に含まれることが知られる。自然免疫の増大はこれらの要素の活性化のための従来のアッセイ法を用いて測定可能であり、該アッセイ法は以下に列挙される実施例で説明されるアッセイ法を含むが、これらに限られない。
【0036】
(1)抗原刺激された被験体、又は、抗原刺激及び感作された被験体と、対照とを比較して、抗原感作の前後に測定されたIL−4又はIL−5のレベルの低下か、あるいは処理された被験体におけるIL−4の低レベルの検出(又は検出できない)、(2)抗原刺激された被験体、又は、抗原刺激及び感作された被験体と、対照とを比較して、抗原感作の前後のIL−12、IL−18及び/又はIFN(α、β又はγ)のレベルの増大か、あるいは組成物を含むキチンで処理された被験体における、IL−12、IL−18及び/又はIFN(α、β又はγ)の高レベルの検出、(3)処理された被験体におけるIgG2a抗体又はそのヒト類似体の産生、(4)抗原刺激された被験体、又は、抗原刺激及び感作された被験体と、対照とを比較して、抗原感作の前後に測定されときの抗原特異的IgEレベルの低下か、あるいは組成物を含むキチンで処置された被験体における抗原特異的IgEの低レベルの検出(又は検出できない)、及び/又は、(5)処理された被験体における細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)応答の誘導によって、本明細書で用いられるところの被験体における「Th1の免疫応答の増大」又は「免疫応答の変調」は証明された。
【0037】
キチン組成物
キチン微粒子が宿主(実験動物)に供与されたとき、該宿主防御機構は図1で示されたように促進される。感染性細菌をファゴサイトーシスするマクロファージに類似する機構でマクロファージ(MΦ)は、キチン微粒子をファゴサイトーシス(取り込み)する。3時間ないし24時間以内にIL−12及び腫瘍壊死因子−α(TNFα)を誘導するTh1サイトカインをマクロファージは産生する。前記Th1サイトカインはナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、該細胞は12時間ないし24時間以内にインターフェロン−ガンマ(IFNγ)を産生するであろう。キチン微粒子投与後1日ないし3日以内にIFNγはマクロファージを活性化し、該マクロファージは活性酸素及び窒素中間体(ROI及びRNI)を生じるさせ、該ROI及びRNIはスーパーオキサイドアニオン及び一酸化窒素を含む。
【0038】
図2で示されたように、IL−12及びTNFαを含むTh1サイトカインは宿主の免疫応答を改変するため、キチン微粒子は、喘息、感染(リステリア症、結核(TB))及び癌に対する治療に用いられる。さらに、細菌の構成要素から調製される他のTh1アジュバントと異なり、キチン微粒子はIL−10及びプロスタグランジンE(PGE)を誘導しない。IL−10及びPEGの両方は、図1及び2で示されたTh1アジュバント活性を阻害することが知られている。したがって、キチンは現在利用可能な最も有効なTh1アジュバントであり、免疫機能低下状態の集団の生体防御の促進のための魅力的な候補であり、宿主防御はPEG及びIL−10のレベルの増大によって下向き調節される。
【0039】
好ましい実施態様では、本発明は物質に対する免疫応答を増大する方法を提供し、該物質は被験体に投与された抗原か、あるいは被験体が曝露される病原体である。前記方法は、規模と、持続時間と、抗原に曝露された後の免疫応答の状態とを変調するのに用いることができる。前記方法はキチン微粒子を含む組成物を投与するステップを含み、該キチン粒子は、単独か、あるいはワクチンその他の治療上有効な分子の投与の前、同時又は後のいずれかで被験体に投与される。抗原投与又は病原体曝露の前の本発明のキチン微粒子での前記被験体の「抗原刺激」はTh1の免疫応答の増大を生じる。前記キチン組成物での抗原刺激は、Th2型の応答からTh1型の応答に前記免疫応答の状態を変化させる。
【0040】
本発明の前記方法によって増大される免疫応答の例は、自然免疫の活性化(例えば、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞)と、Th1の応答と、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答とを含むが、これらに限られない。前記方法は、予防的又は治療的に用いられる。
【0041】
抗原刺激は自然免疫を活性化するため、本発明の前記方法は、ウイルス、細菌、寄生虫又は他の病原体のような病原体による感染後に対して保護するのに用いられる。物質は、感染病、アレルゲン又は癌に関連する病原体又は抗原であることが好ましい。感染病の例は、ウイルス性疾患、細菌性疾患、結核性疾患及び寄生性疾患を含むが、これらに限られない。
【0042】
細胞性免疫として知られるCD4陽性T細胞によって誘導される免疫攻撃によって、ある病原体及びある癌は効率的に抑制される。ポリオウイルスのような他の病原体は抗体を必要とし、該抗体は封じ込めのためにB細胞によって産生される。免疫攻撃のこれらの異なるクラス(T細胞又はB細胞)はCD4陽性T細胞の異なる亜集団によって制御され、一般的に、1型ヘルパーT細胞及び2型ヘルパーT細胞として示される。
【0043】
ヘルパーT(Th)細胞の集団の2種類のタイプはモデルマウスでよく特徴付けられており、前記細胞集団が活性化されて放出するサイトカインによって定義される。前記Th1集団は、IL−2、IFN−γ及び腫瘍壊死因子を分泌し、マクロファージの活性化及び遅延型過敏性応答を仲介する。前記Th2集団は、B細胞の活性化を促進する、IL−4、IL−5、IL−6及びIL−10を放出する。前記Th1及び前記Th2の集団は相互に抑制し合っている。例えば、IL−4はTh1型応答を抑制し、IFN−γはTh2型応答を抑制する。同様に、Th1及びTh2の集団はヒトで理解されており、サイトカインの放出はモデルマウスで観察されたTh1及びTh2の集団と一致する。Th2型の免疫応答の増大は、例えば、住血吸虫のような後生動物の寄生虫に対する保護の中核となる。さらにTh2型応答は、同種免疫寛容の誘導及び維持と、順調な妊娠の維持とで重要である。反対に、Th2型応答の抑制と、Th1型免疫応答の増大とは疾患の治療で重要な鍵となり、前記疾患は、結核、類肉腫症、喘息、アレルギー性鼻炎及び肺癌のような癌及び呼吸器系の疾患を含む。
【0044】
喘息は一般的な疾患であり、先進国で広く普及している。さまざまな刺激に対する気管支の応答性の増大と、気流制限を反転する初期の生理的障害と、気道を炎症させる病態の特徴とによって喘息は特徴付けられ、前記気流制限は自発的となるか、あるいは薬物と関係がある場合がある。喘息で気道の炎症を引き起こす前記免疫応答は、IL−4、IL−5及びIL−10を分泌するT細胞の前記Th2クラスによってもたらされる。アトピー性喘息患者の肺に由来するリンパ球は、活性化されたとき、IL−4及びIL−5を産生することが示されている。IL−4及びIL−5の両方はTh2クラスのサイトカインであり、喘息でIgEの産生及び好酸球の関与に必要とされる。したがってTh2応答の消失及びTh1応答の増大は、喘息の治療で非常に有益である。
【0045】
喘息に対する類似の免疫異常を有する他の疾患はアレルギー性鼻炎である。アレルギー性鼻炎は一般的な疾患であり、集団の少なくとも10%に影響を与えていると推定される。アレルギー性鼻炎は季節性(花粉症)であり、花粉に対するアレルギーによって引き起こされる場合がある。非季節性(慢性)鼻炎は抗原に対するアレルギーによって引き起こされ、前記抗原は家屋内のチリ・ダニ又は動物のフケに由来するようなものである。アレルギー性鼻炎における前記免疫応答異常は、前記抗原に対する特異的IgE抗体の過剰産生によって特徴付けられる。炎症性応答は、喘息のように前記気道に沿ってよりもむしろ鼻粘膜で起こる。喘息のように、影響を受けた組織における局所性好酸球増加症は、アレルギー性鼻炎の主要な特徴である。喘息とともに、Th2免疫応答の消失及びTh1応答の増大は順調な治療の中核をなす。
【0046】
多くの食物アレルギー性応答は、食物特異的IgEが介在する応答を含む。IgE抗体及びアレルゲンは、高親和性IgE受容体を通じてマスト細胞及び好塩基球を活性化する。この活性化はヒスタミン及び他のメディエーターの放出を引き起こし、全身性アナフィラキシー反応をもたらす。喘息でのように、Th2に仲介されるIgE形成の消失は順調な治療に必須である。したがって好ましい実施態様では、食物アレルギーの危険を被っているか、あるいは悩む患者の治療は、食物アレルギーを治療するためのキチン微粒子の有効量を前記患者に投与するステップを含む。この治療は、アレルギーに関係するTh2応答の消失及び以下の事象をもたらす。本明細書で説明されるいずれかの治療及び治療方法でのように、前記キチン微粒子は、食物サプリメント、錠剤、懸濁剤及び同様のもので経口投与される。例えば、ダイエット・サプリメントのように、アジュバントはおおよそ中性ないし低いpH(2−7)で、等張性のいずれかの食物/飲料か、あるいは口内洗浄剤/練り歯磨きと混合される。前記アジュバントは比較的に熱に安定(オートクレーブ)であるために、該アジュバントは、料理された/過熱された料理(野菜、米、魚及び肉)、果物ジュース、ミルク、コーヒ及び紅茶のいずれかに添加される。
【0047】
他の好ましい実施態様では、本発明は免疫応答を増大する方法を提供する。抗原が投与された後か、あるいは病原体のような物質に曝露された後の規模、持続時間及び/又は免疫応答の質を変調するのに前記方法は用いることができる。
【0048】
好ましい実施態様では、前記方法は前記Th1応答を増大する。前記キチン微粒子は免疫変更アジュバントとして作用する。「免疫変更アジュバント」は免疫応答の状態を効率的に変化又は誘導(再誘導)するアジュバントである。変化又は再誘導は免疫応答の状態に関係があり、該免疫応答は免疫変更アジュバントの非存在下で抗原に対して誘導される。したがって、Th2型の応答の代わりにTh1型の応答を促進するために選択された抗原に対して誘導される免疫応答の状態に変更するのに前記キチン微粒子は本明細書で用いられた。免疫変更アジュバントとして作用するためのアジュバントの能力は、例えば、ワクチン組成物の単独投与と、アジュバントとのワクチン組成物の投与とによって引き起こされる免疫応答の状態をアッセイによって測定される。この評価はサイトカインのタイプの特徴付け又は同定、及び/又は、優勢IgGサブクラスの特徴付け又は同定を含み、前記サイトカインは個体で抗原提示後に抗原特異的Tリンパ球から放出され、前記優勢IgGサブクラスは抗原単独と比較して抗原/アジュバントの組み合わせによって誘導される。特徴付け又は同定の全ては、本明細書によって示されたように完全に従来技術の範囲内である。特別な方法は以下の実施例部分で詳細に説明される。
【0049】
他の好ましい実施態様では、前記方法は前記物質を認識する抗体の産生を増大又は変更する。被験体又は抗原投与前に組成物を含むキチンを供与されていない被験体の抗原レベルと比較して、被験体又はキチン組成物で抗原刺激された被験体の抗体レベルの増大を検出することによって抗体産生の変化は測定される。抗体の所望のクラスではない1つのクラスと比較して、抗体産生の増大は抗体のもう1つのクラスの産生の増大を含む。例えば、IgG2a抗体の産生は増大させられ、IgE抗体のレベルは低下される。
【0050】
免疫応答はTh2型からTh1型の応答に応答を変更によって増大された。本明細書で用いられるところの「Th1/Th2応答」とは、1型及び2型のおのおののヘルパーTリンパ球(Th)に仲介される免疫応答をいう。Th2応答はアレルギー関連IgE抗体のクラスを含み、Th2リンパ球によってIL−4及びIL−5サイトカインのレベルを上昇させた。Th1細胞は、IL−2、インターフェロン−ガンマ(IFNγ)及び腫瘍壊死因子−β(TNFβ)を分泌する(後ろの2つは抗原刺激又は病原体での感染に対する応答におけるマクロファージの活性化及び遅延型過敏症を含む。)。
【0051】
したがって、Th2に関連する応答は抑制され、そのために持続型アレルギー性炎症及び抗原誘導性アナフィラキシーの危険性を低下する。細胞性免疫は活性化Th1(IFNγ)細胞によって増大されるために、Th1に関連する応答の増加は細胞内感染に対する応答で異常な数値となる。さらに、ポリヌクレオチドの投与はCTLの産生を刺激するのを助け、さらに免疫応答を増大する。
【0052】
本発明の方法は、予防及び治療の両方で免疫応答を変調又は増大するのに用いられる。したがって本発明は、被験体に免疫を付する方法と、免疫療法の方法とを提供する。
【0053】
本発明の前記方法は、物質に曝露する前に被験体に対してキチンを含む組成物を投与するステップを含む。抗原投与又は物質に対する他の曝露の前に、この抗原刺激は少なくとも1時間実施されるのが典型である。抗原投与又は物質に対する他の曝露の前に、前記キチン微粒子は約6時間ないし約6週間の間で投与されることが好ましく、抗原投与の前に約1日間ないし約4週間の間がより好ましい。抗原投与の前に、前記キチン粒子は約1日間ないし約3日間の間で投与されることが最も好ましい。前記抗原又は他の物質は、従来の免疫技術又は自然曝露によって導入される。
【0054】
前記物質は、アレルゲン又は癌となる抗原又は感染性疾患に関係がある病原体であることが好ましい。感染性疾患の例は、ウイルス性、細菌性、結核菌性、寄生性疾患を含むが、これらに限られない。アレルゲンの例は、植物花粉、ホコリ・ダニのタンパク質、動物のフケ、唾液及び真菌の胞子を含むが、これらに限られない。癌に関係がある抗原の例は、生存又は放射線照射した腫瘍細胞と、腫瘍細胞抽出物と、腫瘍抗原のタンパク質サブユニットとを含むが、これらに限られない。複数の実施態様では、前記抗原は環境中の抗原である。環境中の抗原は、呼吸器多核体ウイルス(「RSV」)、インフルエンザウイルス及び感冒ウイルスを含むが、これらに限られない。
【0055】
本発明は、アレルギー、癌又は感染のような疾患の治療及び予防に有用な組成物を提供する。ある実施態様では、前記組成物は医薬品組成物である。前記組成物は免疫治療用組成物であることが好ましい。前記組成物は、上述したような本発明のキチン微粒子の治療又は予防上の有効量を含む。前記組成物は薬学的に許容可能な担体のような担体を任意に含む。前記薬学的に許容可能な担体は、投与される特定の組成物と、前記組成物を投与するのに用いられる特定の方法とによってある程度測定される。したがって、本発明の医薬品組成物の広範な適切な製剤が存在する。
【0056】
好ましい実施態様では、組成物のキチン微粒子の濃度は、1ミリグラムあたり粒子約1×10個ないし5×10個を含む。
【0057】
別の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は、1ミリグラムあたり粒子約1×10個ないし約6×10個の濃度で存在する。
【0058】
別の好ましい実施態様では、前記キチン粒子の直径が約1μmないし約10μmであるとき、該キチン粒子は1ミリグラムあたり粒子約1×10個ないし約3×10個の濃度で存在する。
【0059】
別の好ましい実施態様では、前記キチン粒子の直径が約1μmないし約10μmであるとき、該キチン粒子は1ミリグラムあたり粒子約3×10個ないし約6×10個の濃度で存在する。
【0060】
キチン粒子のアジュバントが免疫応答をTh1型に変調するかどうか、該アジュバントがワクチンなどの他の抗原との組み合わせで用いられるかどうかの依存性を前記濃度は変更する。例えば、前記組成物は、マイコバクテリウム属細菌の抗原、MDP−59又はブタクサ・アレルゲンをさらに含む。他の抗原は、ピーナッツのアレルゲンと、木の実のアレルゲンと、花粉のアレルゲンと、家屋内のチリ・ダニのアレルゲンと、ゴキブリのアレルゲンと、卵白アルブミンと、マイコバクテリウム属細菌のヒート・ショックタンパク質65と、精製タンパク質誘導体(PPD)の組成物のいずれかとを含む。
【0061】
他の好ましい実施態様では、前記キチン粒子は免疫が抑制された個体の治療に用いられる。前記キチン粒子組成物の投与は、例えば、HIV患者のようなかかる患者に投与するステップを含み、前記患者の免疫系を増大するための前記キチンの治療計画及び利益の全てはより強固な免疫系に関係がある。
【0062】
抗原
前記好ましい実施態様では、前記キチン微粒子はTh1応答に対するアジュバント及び免疫転換剤として用いられ、抗原の異なるタイプは前記組成物に含まれる。免疫応答が生じるとき、該免疫応答はワクチン接種された個体に対する複数のレベルの治療効果を提供するために前記抗原は選択され、該治療効果は、例えば、病原体に対する複数のレベルの有効な保護である。前記実施態様では、Th1の特性の前記免疫応答を増大するために改変されたDNAワクチンに由来する前記免疫応答を示し、ワクチンにおいて前記DNAによってエンコードされる前記抗原は所望のこの効果とともに選択されるであろう。
【0063】
他の好ましい実施態様では、ワクチン又は他の免疫製剤に対する低応答者である患者の治療に前記キチン粒子は用いられる。例えば、複数の患者はB型肝炎ワクチンに対する低応答者である。前記ワクチン及びキチン微粒子の投与は、より強烈は免疫応答を提供するのに用いられる。
【0064】
キチン微粒子と同時投与される抗原の例は無限である。特別な例は腫瘍特異的抗原を含む。腫瘍特異的抗原は、さまざまなMAGEs(メラノーマに関連する抗原E)のいずれかと、さまざまなチロシナーゼ(HLA−A2ペプチド)のいずれかと、ras突然変異体と、p53突然変異体と、p97メラノーマ抗原とを含むが、これらに限られず、前記MAGEsはMAGE1、MAGE2、MAGE3(HLA−A1ペプチド)、MAGE4など含む。他の腫瘍特異的抗原は、癌の進行と関係があるRasペプチド及びp53ペプチドと、子宮頸癌と関係があるHPV16/18及びE6/E7抗原と、乳癌と関係があるMUC1−KLH抗原と、大腸癌と関係があるCEA(癌胎児性抗原)と、メラノーマと関係があるgp100又はMARTIと、前立腺癌と関係があるPSA抗原とを含む。前記p53の遺伝子配列は知られており(Harrisら、Mol. Cell. Biol. 6:4650 4656(1986).を参照せよ。)、登録番号M14694でGenBankに登録されている。
【0065】
適切なウイルス性抗原は、肝炎ウイルスのファミリーから得られたか、あるいは由来する抗原を含むが、これらに限られず、該ファミリーは、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)及びG型肝炎ウイルス(HGV)を含む。
【0066】
ヘルペスウイルス・ファミリーに由来する抗原は本発明で用いられ、該抗原は、1型及び2型の単純ヘルペスウイルスに由来するか、あるいは得られた抗原と、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)及びサイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原と、他のヒトヘルペスウイルスに由来する抗原とを含み、前記単純ヘルペスウイルスの抗原はHSV−1及びHSV−2の糖タンパク質のgB、gD及びgHのようなものであり、前記サイトメガロウイルス抗原はCMV gB及びgHを含み、前記他のヒトヘルペスウイルス抗原はHHV6及びHHV7のようなものである。(例えば、米国特許第5,171,568号公報明細書、Cheeら、Cytomegaloviruses、J. K. McDougall編、Springer−Verlag、125−169頁(1990).、McGeochら、J. Gen. Virol. 69:1531−1574(1988).、Baerら、Nature 310:207−211(1984).、Davisonら、J. Gen. Virol. 67:1759−1816(1986).を参照せよ。)
【0067】
多数のHIV−1及びHIV−2単離体のgp120配列のようなHIV抗原は知られ、報告され、該単離体はHIVのさまざまな遺伝的サブタイプのメンバーを含み、該単離体のいずれかに由来する抗原は本明細書の方法で使用されると理解されるであろう(例えば、Myersら、ロスアラモスデータベース、ロスロスアラモス国立研究所、ニューメキシコ州ロスアラモス(1992)と、Modrowら、J. Virol. 61:570−578(1987)とを参照せよ。)。さらに、本発明はさまざまなHIV単離体のいずれかに由来する他の免疫性原子団に同等に適用可能であり、該免疫性原子団はさまざまなエンベロープタンパク質のいずれかを含み、該エンベロープタンパク質は、gp160及びgp41と、p24gag及びp55gagのようなgag抗原と、pol、env、tat、vif rev、nef vpr、vpu及びHIVのLTR領域に由来するタンパク質とのようなタンパク質である。
【0068】
他のウイルスに由来する他の抗原は、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど)、カリシウイルス科、トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど)、フラビウイルス科、コロナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルスなど)、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器多核体ウイルスなど)、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科(例えば、(HTLV−III、LAV、ARV、hTLRなどとして知られる)HTLV−I、HTLV−II、HIV−1)のメンバーを含み、該レトロウイルス科は、HIVIIB、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4、HIV−2、その他のウイルスの単離体に由来する抗原を含むが、これらに限られない。前記及び他のウイルスの説明のために、Virology、第3版、W. K. Joklik編(1988)及びFundamental Virology、第2版、B. N. Fields及びD. M. Knipe編(1991)を参照せよ。
【0069】
細菌性及び寄生性抗原の例は、疾患の原因となる既知の原因成分から得られたか、あるいは由来するこれらを含み、該疾患は、破傷風、百日咳、破傷風、結核、細菌性又は真菌性肺炎、コレラ、腸チフス、伝染病、細菌性赤痢又はサルモネラ症、レジオネラ症、ライム病、ハンセン病、マラリア、十二指腸虫症、回旋糸状虫症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、レーシュマニア症、ジアルジア症、アメーバ症、糸状虫症、ライム病及び旋毛虫症のような疾患である。さらに抗原は非定型ウイルス又はウイルス様成分、又は、タンパク質性感染性粒子から得られたか、あるいは由来し、該ウイルス及び成分は、クル病、クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、震顫病、伝達性ミンク脳症及び慢性消耗病の原因成分のようなものであり、前記タンパク質性感染性粒子は狂牛病に関係があるプリオンのようなものである。
【0070】
本発明で使用される場合があるアレルゲンの例は、花粉と、動物のフケと、イネ科植物と、糸状菌と、ホコリと、抗生物質と、刺咬昆虫の毒素と、さまざまな環境中の薬物及び食物アレルゲンとに由来するアレルゲンを含むが、これらに限られない。一般的な樹木のアレルゲンは、ヒロハハコヤナギ、ポプラ(popular)、セイヨウトネリコ、カバ、カエデ、オーク、ニレ、ヒッコリー及びペカンの木に由来する花粉を含み、一般的な植物のアレルゲンは、ライムギ、ブタクサ、イギリスオオバコ、スイバ及びアカザに由来するアレルゲンを含み、植物関連アレルゲンは、毒性オーク、毒性ツタ及びイラクサに由来するアレルゲンを含み、一般的なイネ科植物のアレルゲンは、オオアワガエリ、セイバンモロコシ、ギョウギシバ、
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ノケグサ及び
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ギのアレルゲンを含み、一般的なアレルゲンは、アルテルナリア属、フザリウム属、ホルモデンドラム属、アスペルギルス属、ミクロポリスポラ属、ケカビ属及び好熱性放線菌類のような糸状菌又は真菌から得られ、ペニシリン及びテトラサイクリンは一般的な抗生物質性アレルゲンであり、上皮性のアレルゲンは、ウマ又は有機的なホコリ(真菌に由来するのが典型的である。)か、家ダニのような昆虫(ヤケヒョウヒダニ)か、あるいは羽毛と、ネコ及びイヌのフケとのような動物性資源から得られ、一般的な食物アレルゲンは、ミルク及びチーズ(習慣)、卵、小麦、木の実(例えば、ピーナッツ)、海産物(例えば、甲殻類)、エンドウ豆、豆及びグルテンのアレルゲンを含み、一般的な薬物アレルゲンは局所麻酔薬及びサリチル酸塩のアレルゲンを含み、抗生物質性アレルゲンはペニシリン及びスルホンアミドのアレルゲンを含み、一般的な昆虫のアレルゲンは、ミツバチ、スズメバチ及び蟻の毒素と、ゴキブリの杯とのアレルゲンを含む。特によく特徴付けられたアレルゲンは、Der p Iアレルゲンの主要及び潜在性エピトープ(Hoyneら、Immunology、83190−195(1995))と、ミツバチの毒素のホスホリパーゼA2(PLA)(Akdisら、J. Clin. Invest. 98:1676−1683(1996))と、カバの花粉アレルゲンBet v 1(Bauerら、Clin. Exp. Immunol. 107:536−541(1997))と、組み換えイネ科植物の多数エピトープのアレルゲンrKBG8.3(Caoら、Immunology 90:46−51(1997))とを含むが、これらに限られない。前記又は他の適切なアレルゲンは商業的に入手可能及び/又は以下の周知技術で容易に調製される。
【0071】
他の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は1種類又は2種類以上の他のアジュバントを含む組成物で投与される。例えば、適切なアジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのようなアルミニウム塩(ミョウバン)から製造されたアジュバントと、フロイント完全アジュバント(CFA)及びフロイント不完全アジュバント(IFA)のような水中油型及び油中水型の乳濁剤と、硬質寒天と、ブロック共重合体と、アブリジン(商標)脂質−アミンと、SEAM62と、リポ多糖を含むアジュバント(例えば、脂質A又はモノホスホリピッドA(MPL)(Imotoら、Tet. Lett. 26:1545−1548(1985))、トレハロースジミコレート(TMD)及び細胞壁骨格(CWS))のような細菌の細胞壁構成要素から製造されたアジュバントと、ヒート・ショックタンパク質又はこれらの誘導体と、ADP−リボシル化細菌毒素及びADP−リボシル化細菌毒素突然変異体と(例えば、Bixlerら、Adv. Exp. Med. Biol. 251:175(1989)、Constantinoら、Vaccine(1992))を参照せよ。)、QuilA(米国特許第5,057,540号公報明細書)のようなサポニンアジュバント又はISCOMs(免疫刺激複合体)のようなサポニンから生産される粒子と、ケモカイン及びサイトカインと、ムラミルペプチドと、CpGファミリーの分子、CpGジヌクレオチド及びCpGモチーフを含む合成オリゴヌクレオチド(Kriegら、Nature 374:546(1995)、Medzhitovら、Curr. Opin. Immunol. 9:4−9(1997)、Davisら、J. Immunol.160:870−876(1998))に由来するアジュバントと、ATC C.リモスム細胞外酵素と、PCPP(ポリジ(カルボキシルアトフェノキシ)ホスファゼン)(Payneら、Vaccines 16:92−98(1998))のような合成アジュバントとを含むが、これらに限られず、前記ADP−リボシル化細菌毒素は、ジフテリア毒素(DT)、百日咳毒素(PT)、コレラ毒素(CT)、大腸菌加熱不安定型毒素(LT1及びLT2)、シュードモナス・エンドトキシンA、シュードモナス・エキソトキシンS、B.セレウス細胞外酵素、B.スファエリカス毒素、C.ボツリヌスのC2及びC3毒素、C.リモスム細胞外酵素と、ウェルシュ菌、C.スピリフォーマ及びC.ディフィシル、黄色ブドウ球菌EDINに由来する毒素とを含み、前記ADP−リボシル化細菌毒素突然変異体は、CRM197、非毒性ジフテリア毒素突然変異体のようなものであり、前記ケモカイン及びサイトカインは、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12など)、インターフェロン(例えば、γ−インターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ディフェンシン1又は2、RANTES、MIP1−α及びMIP−2などのようなものであり、前記ムラミルペプチドは、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1'−2'−ジパルミトイル−s−n−グリセロ−3ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などのようなものである。前記アジュバントは、Accurate Chemicals、Ribi Immunechemicals モンタナ州ハミルトン、GIBCO、Sigma ミズーリ州セントルイスのような多くの販売者から商業的に入手可能である。
【0072】
現在の組成物として使用するための好ましいアジュバントは、少なくともエタノール中に部分的に溶解可能なアジュバントである。本明細書で使用するための特に好ましいアジュバントのクラスは「サポニン」として分類されるアジュバントであり、つまり、該アジュバントは、キラヤ属、サポナリア属又はジプソフィラ属の植物で生産されるサポニンに由来する。サポニンはグリコシドの天然植物生産物であり、1種類又は2種類以上の糖鎖に結合される環状構造(アグリコン)からなる。前記アグリコンは、アステロイド、トリテルペノイド又はステロイドアルカロイドであり、グリコシド結合に連結される多くの糖が大いに変更可能である。医薬品アジュバントとして用いられる最も一般的なサポニンは南アフリカの樹木のQ.サポナリアから抽出されたトリテルペングリコシドであり、Quil A(例えば、米国特許第5,688,772号公報明細書、米国特許第5,057,540号公報明細書、米国特許第4,432,969号公報明細書、国際公開第WO88/09336号公報明細書を参照せよ。)、QS−21と呼ばれるサポニンの活性構成要素として言及される。他の好ましいアジュバントは、「GMTP−N−DPG」(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−アナニル−D−イソグルタミル−L−アナニル−ディップ−パルミトイルプロピルアミド)と呼ばれるムラミルジペプチド類似体である。Fastら、Vaccine 15:1748−1752(1997)を参照せよ。
【0073】
前記アジュバントは個別に即時型組成物としてか、あるいは2種類又は3種類以上のアジュバントの組み合わせとして提供される場合がある。これに関して、組み合わされるアジュバントは、免疫応答の促進又は転換において相加又は相乗効果を有する場合がある。2種類又は3種類以上のアジュバントを組み合わせることによって達成される結果の効果は、個別に投与されたとき、各アジュバントで達成される結果に稀に加えられることによって期待される効果よりも相乗効果はおおきな効果である。
【0074】
投与及び投与量
方法の好ましい実施態様では、肝臓、骨髄、のような特異的組織に直接的にか、あるいは癌治療の場合における腫瘍にキチン微粒子組成物は全身性又は粘膜性経路を介して投与される。全身性経路の例は、皮内注、筋注、皮下注及び静注を含むが、これらに限られない。粘膜性経路の例は、経鼻、経膣、腎臓内、気管内及び眼内投与を含むが、これらに限られない。粘膜経路、特に経鼻、気管内及び眼内投与は環境中の病原体か、あるいはアレルゲンへの自然曝露に対する保護のために実施され、該病原体は、RSV、インフルエンザウイルス及び感冒ウイルスのようなものであり、該アレルゲンは、イネ科植物及びブタクサの花粉と、家屋内のチリ・ダニとのようなものである。キチン微粒子による自然免疫の局所的活性化は、抗原、アレルゲン、病原体のような物質に遭遇後に対する保護効果を増大させるであろう。
【0075】
治療は、予防及び治療を含む。予防又は治療は、1回の時間点又は複数回の時間点における個別の直接投与によって達成される。投与は、1箇所又は複数箇所に送達される。
【0076】
被験体は脊椎動物のいずれかとなるが、哺乳類となることが好ましいであろう。哺乳類は、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ及びヒツジを含む。哺乳類の前記被験体はヒトとなることが好ましいが、家畜、実験動物又はペット動物となる場合がある。
【0077】
本発明の組成物は生理学的に許容可能な担体を含むことが好ましい。当業者に知られた適切な担体のいずれかは発明の組成物で供される場合があるとき、担体のタイプは投与様式の依存性を変更するであろう。皮下注のような非経口投与のために、前記担体は、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックス又は緩衝剤を含むことが好ましい。経口投与のために、以上の担体又は固形担体のいずれかは供される場合があり、前記担体は、マンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、ブドウ糖、ショ糖及び炭酸マグネシウムのようなものである。生分解性微粒子は(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)は、本発明の組成物のために担体として供される。適切な生分解性微粒子は、例えば、米国特許第4,897,268号公報明細書、米国特許第5,075,109号公報明細書で開示される。本発明の前記組成物は、急速な異化反応から抗原を保護するために設計された物質を含む場合があり、該物質は水酸化アルミニウム又はミネラルオイルのようなものである。
【0078】
一般的に、本発明の組成物は、注射(例えば、皮内注、筋注、静注又は皮下注)、経鼻(例えば、呼吸による)又は経口によって投与される場合がある。ある実施態様では、肺に導くか、肺内の気道粘膜性表面への送達に本発明の前記組成物は都合のよい剤形である。例えば、噴霧剤形又は噴霧器によって患者に送達するための液体製剤に前記組成物は懸濁される場合があり、前記噴霧器は喘息の治療で現在供される噴霧器に類似する。
【0079】
好ましい投与回数及び有効投与量は個体間で異なり、既知の抗原は免疫応答をもたらし、既知の抗原を用いる免疫で現在用いられる回数及び投与量に匹敵する場合がある。一般的に、ポリペプチド免疫増強剤の投与量は宿主の体重1kgあたり約1pgないし約100mgの投与量(又はin situでポリヌクレオチドによって生産される投与量)の範囲で提供され、約10pgないし約1mgであることが典型的であり、約100pgないし約1μgであることが好ましい。適切な投与サイズは患者のサイズで異なるが、約0.1mLないし約2mLの範囲であることが典型的であろう。
【0080】
複数の好ましい実施態様では、前記キチン微粒子は宿主の体重1kgあたり約0.1−500mgで投与される。これらの投与量は異なり、例えば、おおよその投与量は、腹腔内又は皮下投与のためには1kgあたり約1−4mgであり、、経口投与のためには1kgあたり約1−500mgである。
【0081】
本明細書で用いられるところの「約」という用語は、投与における活性構成要素の投与量をいい、規定投与量から5%の上昇までの変化を意図する。
【0082】
上述の実施態様の1種類又は2種類以上の特徴のいずれかは、本発明の他の実施態様のいずれかの1種類又は2種類以上の特徴といずれかの方法で組み合わされる。さらに、本発明の多くの変更は明細書の概説で当業者に明らかとなるであろう。本発明の範囲は上述を参照しないで決定されるべきであり、完全な範囲の均等とともに現特許請求の範囲を参照することで決定されるべきである。
【0083】
文献又は特許文献のそれぞれが個別的に示されたのと同程度に、本明細書に引用された文献及び特許の全ては全ての目的のために適切な部分で引用により本明細書に取り込まれた。
【0084】
実施例
キチン微粒子の精製
発明者はキチン微粒子を調製するための方法を確立し、該微粒子はマクロファージの活性化を誘導し、殺菌効果及びTh1アジュバント効果を仲介する。
【0085】
簡単な手順
1.未精製のキチン調製物(C9213)はSigma社から購入された。2.エンドトキシン不含生理食塩水で洗浄した。3.酸可溶性キチンは、30分間冷たい12N 塩酸(HCl)でキチン混合物から抽出された。4.酸可溶性キチンは、4°Cで1,500xg、15分間の遠心分離によって単離された。5.酸可溶性キチンは、冷たい10N 水酸化ナトリウム(NaOH)でpH7に中和された。6.キチンは不溶性となり、沈殿した。7.不可溶性キチンは、4°Cで1,500xg、各15分間の遠心分離によって生理食塩水で5回洗浄された。8.pH7.0に調製した後に、不溶性キチンは遠心分離によって収集された。9.ペレットは凍結乾燥され、乾燥機に保管された。
【0086】
使用直前
10.凍結乾燥されたキチン粉末は、約50mg/mLで生理食塩水に懸濁された。11.前記懸濁は氷上で音波破壊された。12.1−10μmのキチン粒子は10μmの孔を有するナイロンメッシュを通じて濾過された。粒子の は4−5μmであった。1−4μmのキチン粒子は、4μmの孔を有するナイロンメッシュを通じてさらに濾過された。13.濾過された粒子は、4°Cで1,500xg、各15分間の遠心分離によって生理食塩水で4回収集され、洗浄された。14.前記遠心分離収集物は、使用前に10mg/mL又は16mg/mLに調製された。
【実施例1】
【0087】
アジュバントとしてのキチン微粒子
生物活性分子はマクロファージ培養で測定され、以上で調製された生物活性分子のキチン微粒子の測定するために、マウスマクロファージRAW264.7細胞は20又は100μg/mLのキチン粒子で3、6及び24時間刺激された。上清中のTh1サイトカインである腫瘍壊死因子−α(TNFα)のレベルは、商業的に入手可能なELISAキット(PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)によって測定された。陽性対照として、5μg/mLの細菌のDNA(CpG−ODN)及び0.1μg/mLの細菌のエンドトキシン(LPS)は比較検討のために用いられた。陰性対照として、培養液単独(無刺激対照)、100μg/mLのキトサン微粒子(脱アセチル化キチン粒子)及び5μg/mLのGpC−ODNは用いられた。図3に示されたように、発明者の新たに調製されたキチン粒子は、細菌のCpG及びLPSによるレベルに匹敵するレベルで活性分子を産生するTNFαを誘導した。
【0088】
キトサン(脱アセチル化キチン)微粒子はTNFα産生を誘導せず、Th1アジュバント活性を全く示さない。上述の発明者の精製方法はキチン微粒子だけでなく、キトサン微粒子を生産するのに重要である。
【0089】
経口キチンはL.モノサイトゲネスの致死性感染から保護され、発明者のキチン微粒子がL.モノサイトゲネスの致死性投与量から保護するかどうかを決定するために、キチン微粒子8mgは、選択されたマウスに単独経口投与された。
正常なBalb/c及びC57BL/6は、感染に対して感受性かつ耐性のおのおのとなることが知られており、IL−10ノックアウトC57BL/6(IL−10−/−)マウスはC57BL/6(野生型、WT)マウスより耐性であり、アテローム性動脈硬化のモデルとして用いられる高コレステロール血症系統のアポリポプロテインEノックアウトC57BL/6(apoE−/−)マウスは、C57BL/6(野生型)マウスよりもL.モノサイトゲネスの感染に対してより感受性であった。
【0090】
表1に示されたように、キチン微粒子での処理は、10xLD50にするL.モノサイトゲネス感染の検討に供されたマウス全てを保護した(表1)。L.モノサイトゲネスがこの検討のために選択されたのは、このグラム陽性細胞内生物が細胞内免疫応答の検討で広範囲に用いられるためである。免疫応答性のヒトでは、中度の食中毒と関係があるのが典型的である(Garifulin, O.、Boyartchuk, V.、Brief Funct Genomic Proteomic 4, 258−69(2005))。この生物は生物兵器用剤としても利用可能である。
【0091】
【表1】




【0092】
経口キチンはL.モノサイトゲネスの致死性及び亜致死性感染から免疫機能低下状態及び対照マウスを保護するということを表1の結果は示す。10−20週齢の5匹の雌マウスのグループは、8mgのキチン粒子を経口投与された。2時間後に、10CFU、10CFU又は10CFUのL.モノサイトゲネス(10403S 血清型 1/2a)は腹腔内投与された。死亡数は12日間にわたって記録された。グループの全てで生存するマウスの全ては、L.モノサイトゲネスでの感染後の12日間にわたり脾臓、肺及び肝臓で検出不可能なCFUレベル(<10 CFU)を示した(データは示さず)。結果は、各マウスの系統又は遺伝型と、各処理グループとについて5匹のマウスに関する。示された結果は、2回の別個の実験で得られた。数は12日間の各グループにおける全動物数のうちの生存数である。*キチン処理グループないし生理食塩水対照グループ間の生存数データの差異は、統計的に重要であった(p<0.01;対数順位検定)。
【0093】
キチン粒子の腹腔内投与による局所的なマクロファージ抗原刺激について、L.モノサイトゲネスのような細胞内細菌を殺傷するために、ROI及びRNI(活性酸素及び窒素中間体)はマクロファージ(MΦ)で産生される(Shibata, Y.ら、J Immunol 161, 4283−8(1998)、Myers, J.T., Tら、J Immunol 171, 5447−53(2003))(図1を参照せよ)。ホルボールミリステートアセテート(PMA)で誘導されたとき、実験動物に対するキチンを含む貪食可能な粒子の前記投与は、in vivoの実験動物の酸化的バーストを100倍増大する産生のために1−3日間以内に非特異的に一部のマクロファージを刺激することをMyrvikら及びShibataら(Myrvik, Q.N.ら、J Leukoc Biol 54, 439−43(1993)、Shibata, Y.ら、J Immunol 161, 4283−8(1998)、Shibata, Y.ら、Infect Immun 65, 1734−41(1997)、Shibata, Y.ら、Infect Immun 69, 6123−30(2001))は発見した。
【0094】
発明者のキチン微粒子の腹腔内投与は腹腔のマクロファージ及び脾臓のマクロファージを刺激するかどうかを発明者は調べた。前記マクロファージは、スーパーオキサイドアニオン(ROS)及び一酸化窒素(RNS)を放出することを図4は示す。C57BL/6マウスは腹腔内投与によって1mgのキチン微粒子を供与された。示された間隔で、腹腔及び脾臓のマクロファージは単離された。グリース試薬による一酸化窒素の放出を測定するために、マクロファージはLPS(1μ/mL)で24時間刺激された。シトクロームcの還元によるスーパーオキサイドアニオンの放出を測定するために、マクロファージはPMA(1μM)で1時間刺激された。平均値±標準偏差値、n=3。
【0095】
キチンはIL−10を誘導せず、図2に示されたように、IL−10はTh1アジュバント活性分子を阻害する。理想的なTh1アジュバントはIL−10産生を誘導しない。キチン微粒子はTh1サイトカイン産生物のTNFαを誘導するが、検出可能なIL−10産生を誘導しないということを発明者は発見した。この発見は図5及び6に示された実験に基づいている。TNFα産生に加えて、以前に示したようにキチン微粒子はIL−12及びIL−18を誘導することを発明者は測定した(Shibata, Y.ら、J Immunol 161, 4283−8 (1998))。
【0096】
MAPキナーゼはマクロファージによってリン酸化され、該マクロファージはキチン粒子だけでなく、キトサン又はラテックス粒子を貪食し、図2で示されたように、3−24時間以内のTh1サイトカインの産生後にマクロファージは(MΦ)はキチン微粒子を貪食する。しかしながら、マクロファージが不活性な粒子(ラテックスビーズ、キトサン微粒子)を貪食するとき、マクロファージはTh1サイトカインを産生しない。免疫変調剤によるマクロファージの活性化は、10−40分間以内にMAPK(p38、Erk1/2及びJNK)のリン酸化をもらたすことが知られている。RAW264.7マクロファージにおいて10−40分間でp38、Erk1/2及びJNK(P−p38、P−Erk1/2及びP−JNK)のリン酸化をキチン粒子が誘導したことを図7は示す。キチンに誘導されるリン酸化の動態は、細菌のTh1アジュバント(CpG−ODN及びHK−BCG)又はエンドトキシン(LPS)に関して観察されるキチンに誘導されるリン酸化の動態と比較された。しかしながら、可溶性キチン、>50μmのキチン粒子、1−10μmのキトサン又は1.1μmのラテックスビーズはMAPKファミリーを活性化した。
【0097】
経口キチンはアレルギー応答を阻害し、アレルギー性気道疾患のマウスモデルでは、日々の経口投与量の8mgのキチンはTh1応答を増大し、血清のIgEレベル及び肺の好酸球の数を60%まで低下される。経口でキチン提供されるマウスは全く苦痛を示さないが、僅かに体重の増加が示されたことに注目されるべきである。アレルギー性喘息のマウスモデルにおいて血液中のIgEレベルを抑制するキチンの微粒子の経口投与の典型的な結果を図8は示す。
【0098】
キチン微粒子は抗原特異的遅延型過敏症(DTH)を誘発するTh1アジュバントであり、キチン微粒子とともに混合される可溶性の細菌性タンパク質(抗原)で1マウスの免疫化は、抗原特異的Th1免疫を確立することを発明者は測定した。C57BL/6(WT)マウス及びIL−10ノックアウト(IL−10−KO)マウスはキチン微粒子と混合される30−kDaの微生物の感染防御抗原であるMPB−59で免疫され、前記キチン微粒子は遅延型過敏症(DTH)である抗原特異的Th1応答(細胞性免疫)を効率的に増大することを発明者の検討は示す。MBP−59及びキチン微粒子で同時免疫されたC57BL/6(WT)マウス及びIL−10ノックアウト(IL−10−KO)マウスでMPB−59に誘発されるフットパッドの遅延型過敏症の発症を図9は示す。最後の免疫後から7日目に、野生型及びIL−10−KOマウスは右フットパッドに50μgのMBP−59溶液と、左フットパッドに50μLの生理食塩水(対照)とを供与された。48時間後に、マウスの各グループにおいて右フットパッドの厚さから左フットパッドの厚さを引いた値が得られた。
【0099】
キチン微粒子の腹腔内投与は腹腔マクロファージによるPEGの放出を阻害し、図2で示されたように、PEGはTh1アジュバント活性分子を阻害する。理想的なTh1アジュバントはPEGの産生を最小限にする。マクロファージでCOX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)の活性化による感染及び炎症の間にPEGは合成されることが知られている。キチン微粒子の投与は局所的なマクロファージにおけるCOX−2の改変をもたらすことを発明者は測定した。改変されたCOX−2はPEGの合成に関する触媒活性を消失する。C57BL/6マウスが1mgのキチン微粒子を腹腔内投与されたとき、腹腔マクロファージによるex vivoでのPEGの生合成能は非常に低下されるとこを図10は示す。腹腔マクロファージは刺激後24時間で単離された。マクロファージの懸濁液(10/mL)は、PEGの放出を測定するために2時間1μMのカルシウム・イオノフォア23187(黒色棒)又は培養液(灰色棒)で刺激された。PEGはELISA法によってアッセイされた。
【0100】
新規1−4μmのキチン粒子(1−4μmのキチン)の調製について、図1及び2で示されたように、キチン微粒子はIL−12を含むTh1サイトカインを誘導し、前記IL−12は24時間以内にIFNγを生産するためにNK細胞を活性化する。IL−12の前記誘導及びIFNγの産生は、Th1アジュバント活性分子の鍵となる。よりTh1アジュバント活性分子を発現するキチン微粒子を調節するために、1−10μmのキチン粒子は、ナイロンメッシュを通じて1−4μm、4−7μm及び7−10μmのサイズでさらに分画される。前記生物活性分子は、脾臓細胞培養に各画分を20μg/mLで添加することによって測定された。図11で示されたように、前記1−4μmの分画はIL−12及びIFNγ産生に関して最も高い活性を有し、未処理の1−10μmのキチン調製物と比較して少なくとも5倍より大きくなる。等量において、1−10μmのキチンの約2倍の多くのキチン粒子を含むために、キチンの効果は吸収されたサイズ及び数量の両方によって決定される場合があることをこれらの結果は示唆している。
【0101】
発明者は1−10μmのサイズでのキチン微粒子の調製を確立し、前記調製は商業的レベルの生産物を製造するための規模を拡大させることが可能である。発明者の生産物の経口投与は、L.モノサイトゲネスの感染の致死量から免疫応答性及び免疫機能低下状態のヒト個体のモデルであるマウスの多くの系統(Balb/c、C57BL/6、IL−10−KO、apoE−KO)を妨げる(表1)。キチン微粒子の経口投与は、アレルギーモデルのマウスにおいて血液中のIgEレベルを含むアレルギー反応を阻害する(図8)。キチン微粒子の腹腔内投与は、モデルマウスにおいて同時注射された可溶性タンパク質抗原に対するTh1応答を増大する(図9)。キチン微粒子は以下の免疫防御応答を生産する。(a)キチン微粒子はTh1サイトカイン(TNFα、IL−12及びIL−18)を誘導するが、Th2サイトカインのIL−10を誘導しない。IL−10は細菌の構成要素によって誘導され、殺菌活性及びTh1アジュバント活性分子を阻害することが知られている(図3,5及び11)。(b)細胞内細菌を直接攻撃する活性酸素及び窒素中間体を生産するためのマクロファージをキチン微粒子は誘導する(図4)。(c)キチン微粒子は分裂促進剤−活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を活性化する一方で、キトサン微粒子又はラテックスビーズはMAPKをを活性化しない(図7)。MAPKの活性化は、マクロファージの殺菌作用及びTh1アジュバント活性分子を仲介に必須である。(d)キチン微粒子はPEGの生合成を阻害する(図10)。PEGはTh1サイトカインの産生を阻害するが、Th2サイトカインの産生を増大する。
【0102】
1−10μmのキチン微粒子は、前記Th1アジュバント活性に関して以上で調べられた。さらに、1−4μmのサイズのキチン微粒子はよりよいTh1アジュバント活性を提供することを発明者は発見した。発明者が確立した前記キチン微粒子はさまざまな炎症性疾患に対する防御免疫を誘導するのに用いられ、前記疾患は免疫機能低下状態の集団におけるリステリア症及び喘息を含む。
【実施例2】
【0103】
キチン粒子はCpG−ODNに誘導されるIL−10の産生を阻害するが、IL−10 mRNAの合成を阻害しない。
CpG−ODNで刺激されたとき、無処理のRAW264.7マクロファージは1,106 pg/mLのIL−10を産生した(表2)。CpG−ODNで刺激されたマクロファージは、CpG−ODN刺激の前後の選択された時点においてキチン粒子で処理された。キチン微粒子は、CpG−ODN刺激の9時間後までにIL−10産生を著しく阻害したことをその結果(表2)は示した。

【0104】
【表2】

【0105】
図12はCpG−ODNに誘導されるIL−10mRNAのレベルにおけるキチン粒子の効果を示すブロットである。RAW264.7 MΦ(細胞5×10個/mL)は、CpG−ODN単独か、あるいはキチン粒子又はキトサン粒子との組み合わせで37°Cで6時間及び24時間刺激された。全てのRNAは、製造者の指図に従ってTrizol試薬(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を用いて細胞から抽出された。IL−10 mRNAの発現は、RT−PCRによって調べられた。mRNAの逆転写は、製造者の指図に従ってオリゴ−(dT)プライマーを用いたSuperScriptTM RT−PCR一本鎖合成システム(Invitrogen)によって達成された。用いられたPCRプライマーは、IL−10(フォアード、5’−GGTTGCCAAGCCTTATCGGA−3’(配列番号1)、リバース、5’−ACCTGCTCCACTGCCTTGCT−3’(配列番号2))及びGAPDH(フォアード、5’−TTCACCACCATGGAGAAGGC−3’(配列番号3)、リバース、5’−GGCATGGACTGTGGTCATGA−3’(配列番号4))である。15μLのPCR産物は、2%アガロースゲル上で電気泳動された。臭化エチジウム染色後、PCR産物はUV照射によって可視化された。
【0106】
図12で示されたように、キチン微粒子は検出可能なIL−10mRNAを誘導しないが、CpG−ODNは刺激後6時間及び24時間でIL−10mRNAを誘導する。しかしながら、キチン微粒子及びODN−CpGの混合物での前記刺激後6時間及び24時間でキチン微粒子は、CpG−ODNに誘導されるIL−10mRNAレベルを変化させない。キチン粒子は転写後のレベルでIL−10の産生を阻害することをこれらの結果は示す。
【0107】
他の実施態様
本発明はこれらの詳細の説明を説明すると理解されるであろうが、前述の説明は例示することを意図し、本発明の射程を限定することを意図するものではない。他の局面、利益及び改変は以下の特許請求の範囲で定められる範囲内である。
【0108】
本明細書で引用された文献全ては引用により本明細書に取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径約0.01μmないし20μmのキチン微粒子を少なくとも1個含むことを特徴とする、アジュバント組成物。
【請求項2】
前記キチン微粒子は直径約1μmないし10μmであることを特徴とする、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
前記キチン微粒子は直径約1μmないし4μmであることを特徴とする、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
前記キチン微粒子は、2型ヘルパーT細胞の活性を低下させ、1型ヘルパーT細胞の活性を増大させるのに有効な量で医薬品組成物に懸濁されることを特徴とする、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項5】
前記キチン微粒子は、1ミリグラムあたり粒子約1×10個から5×10個までの濃度で存在することを特徴とする、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項6】
前記キチン微粒子は、1ミリグラムあたり粒子約1×10個から約6×10個までの濃度で存在することを特徴とする、請求項5に記載のアジュバント組成物。
【請求項7】
前記キチン微粒子の直径が約1μmないし約10μmのとき、該キチン微粒子は1ミリグラムあたり粒子約1×10個から約3×10個までの濃度で存在することを特徴とする、請求項5に記載のアジュバント組成物。
【請求項8】
前記キチン微粒子の直径が約1μmないし約4μmのとき、該キチン微粒子は1ミリグラムあたり粒子約3×10個から約6×10個までの濃度で存在することを特徴とする、請求項5に記載のアジュバント組成物。
【請求項9】
前記組成物は、マイコバクテリウム属細菌の抗原と、MDP−59と、ブタクサのアレルゲンと、ピーナッツのアレルゲンと、木の実のアレルゲンと、花粉のアレルゲンと、家屋内のチリ・ダニのアレルゲンと、ゴキブリのアレルゲンと、卵白アルブミンと、マイコバクテリウム属細菌のヒート・ショックタンパク質65と、抗原と、これらの精製タンパク質誘導体(PPD)及び誘導体とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項10】
前記抗原は、ワクチン、腫瘍抗原、ウイルス性抗原、細菌性抗原又はペプチドを含むことを特徴とする、請求項9に記載のアジュバント組成物。
【請求項11】
エンドトキシン不含生理食塩水でキチンの原料を洗浄するステップと、
洗浄されたキチンを酸と混合するステップと、
酸可溶性のキチンの抽出及び単離するステップと、
可溶性のキチンを中和及び沈殿するステップと、
水に不溶性のキチンを洗浄するステップと、
水に不溶性のキチンを凍結乾燥するステップと、
水に不溶性のキチンをエンドトキシン不含生理食塩水に再懸濁するステップと、
キチンの粒子を微細孔を通して濾過するステップと、
1−10μmのキチン微粒子を調製するステップとを含むことを特徴とする、キチン微粒子を調製する方法。
【請求項12】
前記キチン微粒子のサイズは約1μmないし4μmであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生理食塩水中の前記キチン微粒子は少なくとも1年間4°Cで安定であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
約1μmないし4μmの前記キチン微粒子の治療上の有効量を患者に投与するステップを含むことを特徴とする、炎症性疾患を治療及び/又は予防する方法。
【請求項15】
前記キチン微粒子は、患者の体重1キログラムあたり約0.1−500mgを含む量で投与されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記キチン微粒子は、患者の体重1キログラムあたり約0.1−10mgを含む量で腹腔内又は皮下に投与されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記キチン微粒子は、経口投与されるとき、患者の体重1キログラムあたり約0.1−1gを含む量で投与されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記キチン微粒子は、2型ヘルパーT細胞の活性を低下させ、1型ヘルパーT細胞の活性を増大させるのに有効な量で医薬品組成物に懸濁されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
投与経路は、経口投与、腹腔投与、静注及び/又は皮下投与であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記キチン微粒子の投与はTh2が介在する疾患を下向き調節するのに治療上有効であり、前記疾患は、アレルギー性喘息、食物アレルギー及びアレルギー性皮膚炎を含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記キチン微粒子の投与は、細胞内感染に対するTh1宿主防御を上向き調節するのに治療上有効であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
直径約1μmないし4μmの前記キチン微粒子の有効量を動物に投与するステップを含むことを特徴とする、免疫応答を変調する方法。
【請求項23】
前記キチン微粒子は、2型ヘルパーT細胞の活性を低下させ、1型ヘルパーT細胞の活性を増大させるのに有効な量で医薬品組成物に懸濁されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
投与経路は、経口投与、腹腔投与、静注及び/又は皮下投与であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−502766(P2010−502766A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530700(P2009−530700)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/071371
【国際公開番号】WO2008/054892
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(503048431)フロリダ アトランティック ユニヴァーシティ (2)
【Fターム(参考)】