説明

アジュバント添加マイコプラズマ・ハイオニューモニエ非病原性生ワクチン

免疫原性およびワクチン組成物、ならびにそれらを調製および使用する方法が提供され、組成物は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)感染を防御し、その重症度を最小限に抑え、予防し、かつ/または改善するのに有効である。本明細書に開示されるアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物の1回または2回投与による動物への投与は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の病原性株による感染に対して動物に免疫および防御を提供し、それによって1種または複数のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の病原性株に起因する疾患の重症度を軽減しかつ/または疾患を予防するのに有効である。さらに、たとえば1種または複数の生細菌、バクテリン、トキソイド、および/またはウイルス、および/またはウイルス抗原などの1種または複数の抗原をさらに含む組成物が提供される。アジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)を含む免疫原性組成物、およびアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)とさらに組み合わせてブタサーコウイルス1型−2型キメラ変性生ワクチン(cPCV1−2)を含む組成物が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、免疫学および獣医学の分野に関する。より具体的には、本開示は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の1種または複数の病原性株に起因する疾患の重症度の軽減および/または予防を助ける、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)のJ株をベースとするアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物を提供する。ブタサーコウイルス1型−2型キメラ変性生ワクチン(cPCV1−2)をさらに含む、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含する、アジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物も提供される。本明細書に開示されるアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物の動物への1回または2回投与は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の病原性株による感染に対する細胞性免疫および/または液性免疫を包含する免疫の提供に有効である。
【背景技術】
【0002】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)(M.ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)とも称される)は、豚マイコプラズマ肺炎の病原体である。この疾患は、慢性の咳、つやのない被毛、発育遅滞、および数週間続く元気のない外観を引き起こす。感染動物では、特に腹部先端および心臓葉において、紫色から灰色の硬化領域の特徴的な病変が観察される。この疾患はほとんど死亡の原因とはならないが、罹患したブタは多くの場合、死やストレスを招く日和見病原体による二次感染を受けやすい(R.F.Ross、Mycoplasmal diseases、pp.436〜444、A.D.Laman等(編)、Diseases of Swine、Iowa State University Press、1986)。
【0003】
この疾患は、ブタの疾患に関連する損失のもっとも重要な原因の1つであると考えられている(Whittlestone、pp.133〜176、TullyおよびWhitcomb(編)、The Mycoplasma Vol2:Human and Animal Mycoplasmas、New York、Academic Press(1979))。この疾患は一般に、非効率的体重増加個体、ならびに発育阻止および病弱動物をもたらす。さらに、罹患したブタは多くの場合、日和見病原菌による二次感染を受けやすい(Burch、Pig America、pp.26〜27、December、1982)。この疾患の経済的影響は著しい。経済的損失だけでも年間2億から2億5千万ドルと推定されている。
【0004】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)は、細胞壁を持たない、増殖の遅い選好性細菌である。この細菌は、同様に気道に局在する一般的な第2の因子であるマイコプラズマ・ハイオリニス(Mycoplasma hyorhinis)のために、気道からの単離が困難なことが多い。この疾患は罹患ブタまたは回復期保菌ブタから、咳により生じる飛沫によって、および直接接触によって蔓延する。感染動物と非感染動物が混在することによって、早期かつ頻繁な再感染が引き起こされる。感染はしばしば、分娩時の保菌雌ブタによる子ブタへの感染から始まる。
【0005】
群れによる管理技法により、感染は寿命の後年まで明らかとならない可能性がある。さらなる感染は通常、離乳後、ブタが集められたときに観察される。顕性疾患は、通常は6週齢以上のブタで観察される。罹患した動物では、発育速度および飼料効率が著しく低下する。抗生物質を用いる現在の治療は高価であり、長期の使用を必要とする。動物の再感染は依然として問題である。
【0006】
したがって、ワクチンは現在、感染およびその結果を回避するもっとも有効な方法である。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染に対してブタを防御するワクチンを提供する数多くの試みがなされてきた。数人の研究者が、組換えにより生成したマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の表面抗原を含むワクチンを開示している。Schaller等、米国特許第4894332号、1990年1月16日発行;欧州特許公開第283840号、1988年9月28日公開。PCT公開第WO86/00019号、1986年1月3日公開は、他の細胞成分を含まず、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)原形質膜のみを含むマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンを開示している。Etheridge等、Res.Vet.Sci.33:188(1982)は、生ワクチンが静脈内、皮下、または腹腔内投与されたとき、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による肺コロニー形成に対する不完全な防御を見出した。Kristensen等、Am.J.Vet.Res.42:784(1981)は、加熱不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)を注射した後、マイコプラズマ肺炎に対してブタが防御されないことを見出した。Ross等、Am.J.Vet.Res.45:1899(1984)は、ブタを免疫化するための、凍結融解手順によって調製したマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)抽出物の使用は不定の防御のみを提供し、一部の例では、免疫ブタにおける病変発生の増強が認められることを見出した。これらの研究者はまた、ホルマリン不活化によって調製した全細胞ワクチンも研究した。ホルマリン不活化は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の防御免疫原性を著しく妨げ、このワクチンは有効でなかった。Yoshioka等、米国特許第3917819号(1975年11月4日発行)は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の不活化ワクチンを包含する、ホルマリンで不活化されたマイコプラズマを含むいくつかの死菌マイコプラズマワクチンを開示している。Chung−Nanの欧州特許公開第571648号は、非常に増殖性であり抗原性のPRIT−5株をベースとするマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)ワクチンを開示した。
【0007】
不活化病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株をベースとするワクチンは市販され入手可能である。Fort Dodge Animal Health(FDAH)は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に起因する臨床徴候に対して健常なブタを防御するワクチンとして用いるため、Suvaxyn(登録商標)およびRespifend(登録商標)マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の名称で、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)バクテリンを市販している。このバクテリンワクチンは、第1回ワクチン接種の2週間から3週間後に第2回投与を行う、少なくとも1週齢のブタ用の2回投与ワクチンとして推奨されている。
【0008】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)J株は、ブタの線毛に付着し、それによって疾患を引き起こす能力が低減された非病原性株である。Castro等、Veterinary Microbiology116:258〜269(2006)およびVasconcelos等、J.Bacteriol.187(16):5568〜5577(2005)(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)J株の全ゲノム配列を記載している(ATCC25934))。病原性株と非病原性株(J株)とのゲノム比較は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)株間の相対病原特性の決定要因になると考えられている、線毛付着を包含する表面タンパク質の変化を明らかにした。Vasconcelos等(2006)およびDjordjevic等、Infection and Immunity72(5):2791〜2802(2004)。
【0009】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)は、その細胞表面、膜リポタンパク質、特に種特異的抗原決定基を有するP46、P65、およびP97タンパク質に発現する。最近、Bouh等は、非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)参考J株ATCC25934のP46およびP65に対するモノクローナル抗体を記載した。Clin.Diag.Lab.Immunology10(3):459〜468(2003)。BlankおよびStemkeは、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)J株ゲノムの物理的地図および遺伝子地図を記載し、Can.J.Microbiol.46:832〜840(2000)、Wilton等は、非病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)J株から生成された発現ライブラリのスクリーニング、およびマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に対するブタ超免疫抗血清によるライブラリのスクリーニングを記載した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
その組成物がマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の病原性株に対する有効性を提供する、アジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)から製造された、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含する組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、免疫学的に有効量の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)および生物学的に許容できるアジュバントを含む、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含する組成物を提供する。本明細書に開示される組成物は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する免疫応答を誘発し、それによってこの生物体に起因する疾患を予防しおよび/またはその重症度を最小限に抑えるか、またはこの疾患に関連する少なくとも1つの症状を改善する。
【0012】
したがって、一態様において本発明は、動物において抗マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)免疫応答を誘発する組成物を提供し、前記組成物は、免疫学的に有効量のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株および生物学的に許容できるアジュバントを含む。
【0013】
一実施形態において、組成物は、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して少なくとも約90%の相同性を有する核酸配列を含む、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を含む。
【0014】
一実施形態において、組成物は、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して少なくとも約95%の相同性を有する核酸配列を含む、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を含む。
【0015】
一実施形態において、組成物は、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して少なくとも約99%の相同性を有する核酸配列を含む、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を含む。
【0016】
一実施形態において、組成物は、参考J株に対して少なくとも約70%の多型同一性を有する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を含む。
【0017】
一実施形態において、組成物は、参考J株に対して少なくとも約85%の多型同一性を有する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を含む。
【0018】
一実施形態において、組成物は、参考J株に対して少なくとも約95%の多型同一性を有する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を含む。
【0019】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物に用いられるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株の相同性率は、ATCCアクセッション番号25934(GenBankアクセッション番号AE017243)または27715を有する非病原性参考J株との比較によって求められる。他のいくつかの実施形態において、参考株は、病原性株、たとえばATCCアクセッション番号25617または25095を有する株であることができる。
【0020】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物に用いられるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株の多型同一性率は、ATCCアクセッション番号25934または27715を有する非病原性参考J株との比較によって求められる。他のいくつかの実施形態において、参考株は、病原性株、たとえばATCCアクセッション番号25617または25095を有する株であることができる。
【0021】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物に用いられるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株は、ATCCアクセッション番号25934または27715と称されるJ株である。
【0022】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物に用いられるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株は、ATCCアクセッション番号27715と称されるJ株である。
【0023】
一実施形態において、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株によって誘発された免疫応答は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の病原性株による感染に対して動物を防御するか、または感染に関連する少なくとも1つの症状の重症度を軽減する。
【0024】
一実施形態において、本明細書に開示されるアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物の動物への1回投与は、マイコプラズマ感染からの免疫を動物に提供するのに有効である。
【0025】
一実施形態において、本明細書に開示されるアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物の動物への2回投与は、マイコプラズマ感染からの免疫を動物に提供するのに有効である。
【0026】
本明細書に開示されるアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチン組成物は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に起因する感染および疾患に対してブタに使用するために適切に用いることができ、ブタ集団においてマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に起因する感染および疾患の蔓延の管理および/または予防に有用であろう。
【0027】
したがって、本開示の免疫原性組成物およびワクチン組成物は、生物学的に許容できるアジュバントなどの1種または複数のアジュバントと組み合わせて1種または複数の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)を用いる。生物学的に許容できるアジュバントは、場合により、SP−油、SL−CD、アクリル酸ポリマー(Carbopol(登録商標)、Noveon,Inc.、Cleveland、OHなど)、ならびに1種または複数の不飽和テルペン炭化水素たとえばスクアレンまたはスクアランなどの代謝性油、およびPluronic(登録商標)(BASF、Florham Park、New Jersey)などのポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマーの混合物からなる群から選択された1種または複数のアジュバントであることができる。
【0028】
本明細書に記載の組成物に用いられるアジュバントの濃度は、アジュバントの性質によって決まることになる。アジュバントは典型的に、最終濃度約1〜50%(v/v)、より典型的には最終濃度約10%、15%、20%、25%、または30%(v/v)で本明細書に記載の組成物に存在する。SP−油を含む組成物では、アジュバントは典型的に、約1%から約25%(v/v)、より典型的には約5%から約15%(v/v)、たとえば約10%(v/v)などで存在する。アクリル酸ポリマー、ならびに1種または複数のテルペン炭化水素およびポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマーを含む代謝性油の混合物を含む組成物では、アクリル酸ポリマーと代謝性油/ポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマー混合物の比は典型的に、約1:25から約1:50の比であり、典型的に最終濃度約1%から約25%(v/v)である。
【0029】
一実施形態において、生物学的に許容できるアジュバントは、SP−油を含む。一実施形態において、SP−油は、約1%から約25%v/vの濃度で存在する。一実施形態において、SP−油は、約5%から約15%v/vの濃度で存在する。一実施形態において、SP−油は、約10%v/vの濃度で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、1種または複数の他の生細菌、バクテリン、トキソイド、および/またはウイルス抗原をさらに組み合わせて用いることができる。したがって、これらの実施形態のいくつかの態様において、アジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物は、たとえばヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、エリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、およびレプトスピラ(leptospira)細菌などの1種または複数の病原体由来の(a)1種または複数の生細菌、(b)1種または複数のバクテリン、(c)1種または複数の精製トキソイド、および/または(d)ウイルスがブタインフルエンザウイルス(SIV)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、PRRS発現アライグマポックスウイルスおよび/または他の抗原、PRRS発現TGEVおよび/または他の抗原、ならびにブタサーコウイルス(PCV)からなる群から選択される1種または複数のウイルス抗原とさらに組み合わせて、免疫学的に有効量の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、および1種または複数の生物学的に許容できるアジュバントを含むことができる。これらの実施形態のいくつかの態様において、ブタサーコウイルス1型−2型キメラ変性生ワクチン(cPCV1−2)をさらに組み合わせて用いる、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含する組成物が本明細書において例示される。これらの実施形態または別の実施形態において、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含する組成物は、たとえばSGGK、チメロソール、および/またはEDTAなどの保存剤ならびに安定剤を追加的にまたは場合により包含することができる。
【0031】
本明細書に記載の組成物に用いられるそのような他の生細菌、バクテリン、トキソイド、および/またはウイルス抗原の濃度は、生細菌、バクテリン、トキソイド、および/またはウイルス抗原の性質によって決まることになり、典型的に本明細書に記載の組成物に存在する。他の抗原が細菌性であるそのような組成物の場合、細菌は典型的に、ミリリットル当たり約0.5×10から0.5×1010の最終濃度で存在する。あるいは、細菌は、ミリリットル当たり約0.5×10から0.5×10の最終濃度、またはミリリットル当たり約0.5×10から0.5×10の最終濃度で存在する。
【0032】
本発明の第2の態様は、本明細書に記載のアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)組成物を投与することによって、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する免疫応答を生じさせる、またはマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に起因する疾患に対して動物を防御する、および/または動物集団の中でそのような疾患の発生を予防もしくは改善する方法を提供する。関連する態様において、本開示はまた、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する免疫応答を増強する方法を提供する。そのような方法は、1回または2回投与で、1種または複数のアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株を含む組成物をブタなどの動物に投与するステップを含む。
【0033】
一実施形態において、本発明の方法は、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して約90%の相同性を有する核酸配列を含む、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を用いる。
【0034】
一実施形態において、本発明の方法は、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して約95%の相同性を有する核酸配列を含む、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を用いる。
【0035】
一実施形態において、本発明の方法は、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して約99%の相同性を有する核酸配列を含む、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を用いる。
【0036】
一実施形態において、本発明の方法は、参考J株に対して少なくとも約70%の多型同一性を有する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を用いる。
【0037】
一実施形態において、本発明の方法は、参考J株に対して少なくとも約85%の多型同一性を有する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を用いる。
【0038】
一実施形態において、本発明の方法は、参考J株に対して少なくとも約95%の多型同一性を有する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を用いる。
【0039】
一実施形態において、本明細書に記載される、本発明の方法で用いられるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株は、ATCCアクセッション番号25934または27715と称されるJ株である。
【0040】
一実施形態において、本明細書に記載される、本発明の方法で用いられるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株は、ATCCアクセッション番号27715と称されるJ株である。
【0041】
一実施形態において、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する免疫応答を増強する方法を提供し、この方法は、
a)1回目に、生物学的に許容できるアジュバント材料をアジュバント添加した免疫学的に有効量の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株を含む第1の免疫原性組成物を動物に投与するステップ、
b)2回目に、生物学的に許容できるアジュバント材料をアジュバント添加した免疫学的に有効量の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)を含む第2の免疫原性組成物を動物に投与するステップを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、企図される正確な適用例に応じて、組成物は、筋内、皮下、もしくは腹腔内注射などによって非経口で、またはクリームの局所適用によって投与することができる。あるいは、組成物は、鼻腔内噴霧、または手動送達もしくは大量適用による経口投与など、エアロゾル、鼻腔内、または経口経路によって投与することができる。
【0043】
本発明の第3の態様は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染を患っている、またはマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染に関連する少なくとも1つの症状を患っている動物を治療する薬剤を調製するための、本明細書に記載のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株、およびこれらの株を含む組成物の使用を提供する。
【0044】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態、特徴、ならびに利点は、本明細書において以下に示す詳細な説明および添付の請求の範囲から明らかとなるであろう。本明細書に言及するすべての特許、特許出願、および他の文献は、それらの全体を参照により本明細書の一部とする。矛盾する場合、本開示が優先される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の方法および治療法を記載する前に、そのような方法および条件は多様であってよいため、本発明は記載される特定の方法および実験条件に限定されないことが理解される。さらに本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定を意図しない。
【0046】
本明細書および添付の請求の範囲では、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしていないかぎり、複数の参照物を包含する。したがって、たとえば、「この方法」への言及は、1つまたは複数の方法、ならびに/または本明細書に記載されており、および/もしくは本開示を読むことにより当業者に明らかとなる種類のステップなどが包含される。
【0047】
したがって、本出願において、当分野の技術の範囲内で通常の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技法を用いることができる。そのような技法は文献に十分に説明されている。たとえば、Sambrook、Fritsch、およびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Second Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(本明細書では「Sambrook等、1989」);DNA Cloning:A Practical Approach、Volumes IおよびII(D.N.Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、(1985));Transcription And Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、(1986));B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel等(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0048】
本明細書に記載したものと類似または等価の任意の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書に言及されるすべての刊行物は、それらの全体を参照により本明細書の一部とする。
【0049】
(定義)
本明細書で用いられる用語は、当業者に認識され知られている意味を有するが、便宜上および完全を期すため、特定の用語およびそれらの意味を以下に示す。
【0050】
用語「約」または「およそ」は、統計的に意味のある値の範囲内を意味する。そのような範囲は桁の範囲内、典型的に所与の値または範囲の50%以内、より典型的には20%以内、より典型的には10%以内、さらにより典型的には5%以内であることができる。用語「約」または「およそ」によって包含される許容可能な変動は、研究される特定の系によって決まり、当業者に容易に認識され得る。
【0051】
「アジュバント」は、組成物、典型的にはワクチン組成物において非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の抗原性を増強する1種または複数の物質からなる組成物を意味する。アジュバントは、抗原を緩徐に放出する組織デポとして、さらに免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化因子としても機能を果たすことができる(Hood等、Immunology、Second Ed.、Menlo Park、CA:Benjamin/Cummings、1984、p.384)。多くの場合、アジュバント不在下での抗原単独による初回ワクチン接種は、液性または細胞性免疫応答を誘発できない。アジュバントには、これに限定されるものではないが、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、無機質ゲル、たとえば水酸化アルミニウム、界面活性物質、たとえばリゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルション、スカシ貝(keyhole limpet)ヘモシアニン、および潜在的に有用なヒトアジュバント、たとえばN−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン、BCG(カルメット・ゲラン桿菌(bacille Calmette−Guerin))、およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が包含される。好ましくは、アジュバントは生物学的に許容できる。
【0052】
本明細書に記載の組成物に用いられるアジュバントは、典型的に「生物学的に許容できるアジュバント」であり、したがって、結果として得られる組成物がin vivoで付随する毒性なしに動物に投与できるように、非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)と組み合わせて用いることができる。SP−油、SL−CD、Carbopol、ならびに1種または複数の不飽和テルペン炭化水素、たとえばスクアレンまたはスクアランなどの代謝性油、およびPluronic(登録商標)などのポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマーの混合物からなる群から選択された1種または複数の生物学的に許容できるアジュバントと組み合わせて、非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)を含む組成物が本明細書において例示される。
【0053】
非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株またはそれに由来する分子は、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用できるとき、「抗原性」である。典型的に抗原分子は、少なくとも約5個、典型的には少なくとも約10個のアミノ酸の「エピトープ」を含有するポリペプチド、またはその変異体である。本明細書では「エピトープ」とも呼ばれるポリペプチドの抗原部分は、抗体もしくはT細胞受容体認識に関して免疫優性である部分であることができ、または免疫化のために抗原部分を担体ポリペプチドにコンジュゲートすることによって分子に対する抗体を生成するために用いる部分であることができる。抗原性である分子は、それ自体が免疫原性である必要はなく、すなわち担体なしに免疫応答を誘発できる必要はない。
【0054】
用語「少なくとも」は以上を意味する。
【0055】
本明細書では、「バクテリン」は、不活化されており、ある種のアジュバントと組み合わせて動物に投与したとき、防御免疫を誘発して、疾患または感染に対して防御することのできる細菌収穫物である。
【0056】
アクリル酸ポリマーは、典型的にカルボマーである。カルボマーは「Carbopol」の商品名で市販され入手可能であり、たとえばそれぞれ参照により本明細書の一部とする米国特許第2909462号および第3790665号に記載されている。
【0057】
用語「担体」は、化合物または組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、安定剤、保存剤、および/またはビヒクルを指す。そのような担体は、落花生油、ダイズ油、鉱油、およびゴマ油などの石油、動物、植物、または合成起源のものを包含する、水および油などの滅菌液体であることができる。水または水溶液食塩溶液、たとえばリン酸緩衝溶液、リンガー溶液、ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液はしばしば担体として、特に注射溶液用に用いられる。担体または希釈剤は非毒性でなければならず、抗原/免疫原の生物活性に影響を及ぼしてはならない。湿潤剤または乳化剤、界面活性剤、およびpH緩衝物質などの他の追加補助物質も本発明の組成物に用いることができる。保存剤には、たとえばチメロソールおよび/またはEDTAを包含することができる。適切な医薬担体は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、E.W.Martin、第18版に記載されている。多種多様な担体が当分野でよく知られており、特定の担体の選択は十分に当業者の水準の範囲内である。
【0058】
用語「コロニー形成単位」または「CFU」は、所与のサンプル中の複製能力のある生物体の数を示すために用いられる測定単位である。これはコロニーが細菌の対/クラスターまたは単細胞の複製に由来するという理論に基づくものである。
【0059】
「免疫学的に有効量」は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する免疫応答を誘発する非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の量である。「免疫学的に有効量」は、レシピエント動物の種、品種、年齢、大きさ、健康状態によって決まり、1種または複数の株がマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の病原性株であるか、または非病原性株であるかにかかわらず、その動物のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の1種または複数の株への曝露歴に影響されることになる。本明細書では、非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の「免疫学的に有効量」は、適切なアジュバントと組み合わせて用いられるとき、非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性を増強し、それによって病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株によるチャレンジに対して防御免疫を提供するのに十分なマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の量である。一実施形態において、免疫学的有効量は、最少約1×10生物体である。一実施形態において、免疫学的有効量は、約1×10コロニー形成単位/ml(CFU/ML)から約1×1011CFU/MLの範囲である。一実施形態において、免疫学的有効量は、約5×10CFU/MLである。
【0060】
本明細書では、用語「免疫原性」は、その非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)が液性および/または細胞性免疫応答を誘発できることを意味する。免疫原性株は抗原性でもある。免疫原性組成物は、動物に投与したとき、液性および/または細胞性免疫応答を誘発する組成物である。
【0061】
用語「免疫原性組成物」は、その組成物を哺乳動物において免疫応答を誘発するために用いることのできる、抗原、たとえば微生物を含有する任意の医薬組成物に関する。免疫応答には、T細胞応答、B細胞応答、またはT細胞応答およびB細胞応答の両方を包含できる。この組成物は、細胞表面でMHC分子と結合して抗原を提示することにより哺乳動物を感作する機能を果たすことができる。さらに、抗原特異的Tリンパ球または抗体は、免疫化宿主の将来の防御を可能にするために生成され得る。「免疫原性組成物」は、細胞媒介性(T細胞)免疫応答、もしくは抗体媒介性(B細胞)免疫応答、または両方を誘発し、微生物による感染に関連する1つまたは複数の症状から動物を防御する可能性があるか、または微生物の感染による死亡から動物を防御する可能性のある、全微生物またはそれに由来する免疫原性部分を含む生、弱毒化、または死菌/不活化ワクチンを含有することができる。
【0062】
本明細書では、用語「単離された」は、言及される材料がその天然環境から取り出されていることを意味する。したがって、単離された生物材料は、細胞成分、すなわちその天然材料が天然に存在する細胞の成分(たとえば、細胞質または膜成分)の一部または全部を含まない可能性がある。材料は、それが細胞抽出物または上清に存在する場合、単離されている。単離されたタンパク質は、細胞内で結合している他のタンパク質もしくは核酸、または両方と結合していてもよく、または膜結合タンパク質である場合、細胞膜と結合していてもよい。単離された小器官、細胞、または組織は、生物体が見出される解剖学的部位から取り出されている。単離された材料は、その必要はないが、精製されていてもよい。
【0063】
本明細書では、用語「MHDCE」は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)DNA細胞等価物を示し、所与のサンプルに存在するマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)生物体の概数を求めるために用いられる測定単位として定義される。
【0064】
本明細書では、用語「非経口投与」は、胃腸管を経る手段以外のいくつかの手段による投与、具体的には静脈内、皮下、筋内、または髄内注射による生物体への物質の導入、ならびに腹腔内注射または局所適用などの他の非経口および非経鼻投与経路を意味する。
【0065】
用語「参考J株に対する多型同一性」は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の参考J株に対する非J株マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)のタンパク発現プロファイル間の類似性を指す。多型同一性は、これに限定されるものではないが、たとえば研究中のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)微生物の1種または複数のタンパク質の量もしくは大きさ、1種または複数のタンパク質の沈降速度、または1種または複数のタンパク質の物理的特徴もしくは生化学的特徴の変化を包含する、1種または複数のタンパク質の1つまたは複数の特徴に基づくことができる。この用語はまた、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の1つの非J株とマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の参考J株の任意の1種または複数のタンパク質をコードするヌクレオチド配列間の類似性も包含することができ、欠失または置換を包含するこれらの配列の任意の変異を包含する。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)生物体の非病原性の保持を可能にするものである。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の乱れ(perturbation)を観察する多種多様なアッセイが当分野でよく知られている。たとえば、核酸またはアミノ酸配列の大きさおよび構造は、当業者に知られているノーザン、サザン、ウエスタン、SDS−PAGE ELISAプロファイリング、PCR、およびDNA配列決定プロトコルによって観察される(たとえば、Calus,D.等、Veterinary Microbiology、Vol.120、Issues 3〜4、March 10、2007、284〜291頁;Scarman,AL等、Microbiology(1997)、Vol.143:663〜673参照)。さらに、1本鎖DNA高次構造多型解析などの、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の乱れを観察する他の方法も当分野でよく知られている(たとえば、1999年9月7日発行の米国特許第5382510号、および1995年1月17日発行の米国特許第5952170号参照)。
【0066】
本明細書では、用語「精製された」は、非関連材料、すなわちその材料が得られる天然材料を包含する混入物の存在を低減または除去する条件下で単離された材料を指す。たとえば、精製された細菌またはタンパク質は典型的に、組織培養または卵タンパク質、および非特異的病原体などを包含する宿主細胞または培養成分を実質的に含まない。本明細書では、用語「実質的に含まない」は、材料の分析試験において操作上用いられる。典型的に、混入物を実質的に含まない精製材料は、少なくとも純度50%、より典型的には少なくとも純度90%、さらに典型的には少なくとも純度99%である。純度は、クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、免疫学的アッセイ、組成分析、生物学的アッセイ、および当分野で知られている他の方法によって評価できる。精製方法は、当分野でよく知られている。用語「実質的に純粋」は、当分野で知られている通常の精製技法を用いて達成され得る最高度の純度を示す。
【0067】
「参考株」は、信頼できる供給元から得られ、他の未確立または未知培養物との比較を行うことのできる対照株として用いることのできる微生物、たとえばマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の株を指す。本発明において、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の参考株は、American Type Culture Collection(ATCC)から得られ、ATCCアクセッション番号25934および27715が付与されている非病原性J株であることができる。本発明において、ATCCアクセッション番号25934および27715を有する「参考株」は、本発明の免疫原性組成物を調製するためにも用いられた。本発明の他のいくつかの実施形態において、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の参考株は、American Type Culture Collection(ATCC)から得ることができ、ATCCアクセッション番号25617および25095が付与されている。
【0068】
用語「SL−CD」は、米国特許第6610310号および第6165995号に記載されているシクロデキストリンアジュバントのファミリーに属するスルホリポ−シクロデキストリンを指す。典型的に、SL−CDは、1種または複数の不飽和テルペン炭化水素、たとえばスクアランなどの代謝性油、および好ましくはポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどの非イオン性界面活性剤との混合物に配合される。
【0069】
用語「SP−油」は、1%から3%(v/v)のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、2%から6%(v/v)のスクアラン、0.1%から0.5%(v/v)のポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、および緩衝塩溶液を含む油エマルションであるアジュバントを指す。
【0070】
用語「ワクチン」または「ワクチン組成物」は、同じ意味で用いられ、動物において免疫応答を誘発する少なくとも1種の免疫原性組成物を含む医薬組成物を指す。ワクチンまたはワクチン組成物は、感染による疾患または起こり得る死から動物を防御することができ、活性成分の免疫活性を増強する1種または複数の追加成分を包含してもしなくてもよい。ワクチンまたはワクチン組成物は、医薬組成物に典型的なさらなる成分を追加的に含むことができる。ワクチンまたはワクチン組成物は、ワクチンまたはワクチン組成物に典型的なさらなる成分を追加的に含むことができ、たとえばアジュバントまたは免疫調整剤が包含される。ワクチンの免疫原性活性成分は、それらの元の形態、もしくは変性生ワクチンの弱毒化生物体として完全な生きた生物体、または死菌もしくは不活化ワクチンの適切な方法で不活化された生物体、またはウイルスの1つもしくは複数の免疫原性成分を含むサブユニットワクチン、当業者に知られている方法で調製された遺伝子操作、変異、またはクローンワクチンを含むことができる。ワクチンまたはワクチン組成物は、上記成分の1つ、または2つ以上を同時に含むことができる。
【0071】
本明細書では、「病原性」は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染に関連する疾患を引き起こすマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株の能力を指す。病原性は、動物において疾患の進行を観察することによって評価できる。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の「病原性」株の一例は、本発明において記載および使用される、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)のチャレンジ株によって例示されるものである。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の他の病原性株は、Srain No.25617または25095と称され、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能である。用語「非病原性」は、病原性を欠いているマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の株を指す。すなわち、非病原性株、分離株、または構築体は非病原性であり、疾患を引き起こすことができない。本明細書では、用語「非病原性(avirulent)」は、用語「非病原性(non−virulent)」と同じ意味で用いられる。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)非病原性生培養J株(FCX3−Line1、American Type Culture Collection(ATCC)からStrain No.27715として入手可能である)を用いる組成物が本明細書において例示される。同様にATCCから入手可能である別の「非病原性」株は、Strain No.25934と称される。ATCCアクセッション番号27715と称されるJ株は、ATCCカタログに記載のとおり、ATCCアクセッション番号25934と称される親J株からクローン化された。
【0072】
(一般的説明)
本開示は、1種または複数の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、たとえばJ株(FCX3−Line1、ATCCアクセッション番号27715)など、および1種または複数のアジュバント、典型的には生物学的に許容できるアジュバントを用いる、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含するマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)組成物の1回または2回投与レジメンが、病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染に関連する疾患に対する防御および/または予防または改善に有効であるという発見に基づくものである。
【0073】
一実施形態において、これに限定されるものではないが、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して少なくとも約90%の相同性、または少なくとも約95%の相同性、または少なくとも約99%の相同性を有する核酸配列を含むJ株を包含する、他のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株の本発明の組成物および方法における使用が企図される。
【0074】
一実施形態において、これに限定されるものではないが、参考J株に対して少なくとも約70%の多型同一性、または少なくとも約85%の多型同一性、または少なくとも約95%の多型同一性を有するJ株を包含する、他のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株の本発明の組成物および方法における使用が企図される。
【0075】
参考J株は、ATCCアクセッション番号25934または27715と称されるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株から選択することができる。
【0076】
一実施形態において、本発明の組成物および方法に用いられる非病原性生J株は、ATCCアクセッション番号25934または27715と称されるJ株である。
【0077】
一実施形態において、本発明の組成物および方法に用いられる非病原性生J株は、ATCCアクセッション番号27715と称されるJ株である。
【0078】
ブタサーコウイルス1型−2型キメラ変性生ワクチン(cPCV1−2)(米国特許出願公開第2003/0170270号および第2004/0253270号参照)とさらに組み合わせて、1種または複数の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株を用いる、ワクチン組成物を包含する組成物も、病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染および/または病原性ブタサーコウイルス感染に関連する疾患に対する防御および/または予防または改善に有効であることも本明細書において開示される。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物はさらに、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、エリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、およびレプトスピラ(leptospira)細菌からなる群から選択される、1種または複数の生細菌、バクテリン、および/または1種または複数の精製トキソイドを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物はさらに、ブタインフルエンザウイルス(SIV)抗原、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)抗原、PRRS発現アライグマポックスウイルスまたは他の抗原、PRRS発現TGEVまたは他の抗原、ならびにブタサーコウイルス(PCV)抗原からなる群から選択された1種または複数のウイルス抗原を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、本開示は、病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株11を含有するLI−34と称される肺ホモジネートによる感染に対する防御に関して以下に記載する(J.Clin.Microbiol.1999 Mar;37(3):620〜7参照)。しかしながら、本明細書に開示の組成物は、広範な病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染に関連する疾患またはその疾患に関連する少なくとも1つの症状に対する防御および/または予防または改善に有効であろうことが企図される。数多くの病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)分離株が当分野で知られており、American Type Culture Collection、12301 Parklawn Drive、Rockville、Md.20852を包含する様々な供給元から入手可能である。これらの病原性株の例には、これに限定されるものではないが、ATCCアクセッション番号25095、27714、および25617が包含される。
【0082】
本開示の組成物、特に免疫原性組成物またはワクチン組成物は、当分野で容易に利用可能である1つまたは複数の方法によって、非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の凍結乾燥または新しく収穫した培養物から調製することができる。ATCC番号27715(ATCC番号25934の濾過およびクローン化3回分離株)として入手可能である非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)J株(FCX3−Line1)を含む組成物が本明細書において例示される。
【0083】
非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)は、それぞれ全体を参照により本明細書の一部とする米国特許第5338543号および第5565205号に記載の方法で培養することができる。より詳細には、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)は、PPLO(ウシ肺疫菌(Pleuropneumonia)様生物体)完全培地(Difco;Becton Dickinson and Company、San Jose、California)などの培地で増殖させることができる。生物体の増殖を、色調変化単位(CCU)を決定するなどの標準的な技法によってモニターし、十分に高い力価が得られたときに収穫する。組成物製剤に混入する前に、このストックを通常の方法でさらに濃縮または凍結乾燥することができる。Thomas等、Agri−Practice7(5):26〜30に記載の方法などの他の方法も用いることができる。
【0084】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の分離株を増殖させる条件は、培地の正確な組成、および増殖させる特定の分離株に応じて変化することができる。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)分離株は典型的に、インキュベーション時から収穫時まで測定して、約48時間から約144時間増殖させる。
【0085】
製剤化される正確な組成に応じて、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)は、たとえば超遠心分離または限外濾過によって濃縮することができる。濃縮したマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)を当分野で知られている方法によって回収することができ、生理的に許容できる適切な担体、典型的に、たとえば食塩水、リン酸緩衝溶液(PBS)、最小必須培地(MEM)、またはHEPES緩衝剤を含むMEMなどの水性培地と混合することができる。次いで、適切なアジュバントとさらに合わせて、体積当たり体積(v/v)ベースで所望の濃度を提供することができる。組成物はさらに、典型的には約0.05%から約0.20%(w/v)の濃度で、EDTAなどの1種または複数のキレート剤を含むことができる。あるいは、免疫原性組成物またはワクチン組成物に用いられるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株を、上記のとおり濃縮し、または凍結乾燥し、体積当たり重量(w/v)ベースで、所望の濃度で適切なアジュバントに再懸濁することができる。
【0086】
上記のとおり、免疫原性組成物またはワクチン組成物を包含する、本開示の組成物は一般に、1種または複数のアジュバント、典型的には生物学的に許容できるアジュバントと組み合わせて、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株を含む。
【0087】
1回投与の場合、組成物は、約1×10から約3×1011MHDCE/mlに相当する量の非病原性生マイコプラズマ・ニューノモニエ(Mycoplasma pneunomoniae)を含有することができる。あるいは、組成物は、約1×10から約3×10MHDCE/mlに相当する量の非病原性生マイコプラズマ・ニューノモニエ(Mycoplasma pneunomoniae)を含有することができる。組成物は、各投与用量が筋内、皮下、または腹腔内投与では動物当たり約1mlから約5ml、または約2mlとなり、経口または鼻腔内投与では約1から約10ml、または約2から約5mlとなるように製剤化される。
【0088】
2回投与の場合、組成物は、典型的に約1×10から約3×1011MHDCE/ml、より典型的には約1×10から約3×10MHDCE/mlの非病原性生マイコプラズマ・ニューノモニエ(Mycoplasma pneunomoniae)を含有する。2回投与のいくつかの実施形態において、組成物は、約10CFU/MLから1011CFU/MLを含有する量の非病原性生マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を含有することができる。組成物は、各投与用量が筋内、皮下、または腹腔内投与では動物当たり約1mlから約5ml、好ましくは約2mlとなり、経口または鼻腔内投与では約1から約10ml、典型的には約2から約5mlとなるように製剤化される。
【0089】
本開示の免疫原性組成物およびワクチン組成物に用いるアジュバント混合物は、細胞媒介性および/または局所(分泌型IgA)免疫応答を刺激することによって免疫応答を増強する。生物学的に許容できるアジュバントは、たとえば、SP−油、SL−CD、アクリル酸ポリマー(Carbopolなど)、ならびに1種または複数の不飽和テルペン炭化水素、たとえばスクアレンまたはスクアランなどの代謝性油、およびPluronic(登録商標)などのポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマーの混合物からなる群から選択される1種または複数のアジュバントであることができる。アジュバントはさらに、IL−12およびIL−18などのサイトカイン、水酸化アルミニウム、エチレンマレイン酸コポリマー、DEAEデキストラン、およびミコバクテリア細胞壁由来アジュバントなどから選択することができる。
【0090】
本明細書に記載の組成物に用いられるアジュバントの濃度は、アジュバントの性質によって決まることになる。アジュバントは典型的に、最終濃度約1〜50%、より典型的には最終濃度約10%、15%、20%、25%、または30%で本明細書に記載の組成物に存在する。アジュバントの抗原の濃度は、体積当たり重量ベース(w/v)、または体積当たり体積ベース(v/v)で調製することができる。たとえば、本発明の組成物に送達される抗原は、凍結乾燥形態で調製し、その後アジュバントで直接再構成して、体積当たり重量ベースで指定の濃度を生じることができる。あるいは、抗原は最初に適切な希釈剤(たとえば、緩衝剤)で再構成し、次いで、上記のとおり体積当たり体積ベースで抗原およびアジュバント両方の最終所望濃度が生じるのに十分な量のアジュバントをそれに添加する。
【0091】
いくつかの実施形態において、アジュバントは、単一組成物として抗原/免疫原と共に投与することができ、または抗原/免疫原の投与前、同時、もしくは投与後に投与できる。
【0092】
アジュバントの選択は、アジュバントを含有する抗原/免疫原の安定性、投与経路、投与スケジュール、ワクチン接種される種に対するアジュバントの有効性によって決まり、さらに関連する規制機関によって動物またはヒトでの使用が認可されたものでなければならない。
【0093】
SP−油を含む組成物では、アジュバントは典型的に、約1%から約25%(v/v)、より典型的には約5%から約15%(v/v)、たとえば約10%(v/v)などで存在し、アクリル酸ポリマー、ならびに1種または複数のテルペン炭化水素およびポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマーを含む代謝性油の混合物を含む組成物では、アクリル酸ポリマーと代謝性油/ポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマー混合物の比は典型的に、約1:25から約1:50の比である。代謝性油、ポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマー、およびアクリル酸ポリマーは、水中油型エマルションの形態で用いることができ、ここでアクリル酸ポリマーは典型的に約0.5g/lから約10g/lの濃度で用いられ、代謝性油は典型的に約2ml/lから約6ml/lの濃度で用いられ、ポリオキシエチレン−プロピレンブロックコポリマーは典型的に約1ml/lから約3ml/lの濃度で用いられる。
【0094】
代表的な適切なアジュバント混合物には、これに限定されるものではないが、1種または複数のアクリル酸ポリマーと、代謝性油、たとえば不飽和テルペン炭水化物、またはその水素添加生成物、好ましくはスクアラン(2,3,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサン)またはスクアレン、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの混合物との混合物が包含される。そのようなアクリル酸ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであることができる。
【0095】
アクリル酸ポリマーは、典型的にカルボマーである。カルボマーはCarbopolの商品名で市販され入手可能であり、たとえばそれぞれ参照により本明細書の一部とする米国特許第2909462号および第3790665号に記載されている。
【0096】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、固体および液体成分の懸濁を助ける界面活性剤、典型的には液体界面活性剤である。界面活性剤は、商品名Pluronic(登録商標)でポリマーとして市販され入手可能である。界面活性剤ポロキサマー401は、商品名Pluronic(登録商標)L121で市販され入手可能である。
【0097】
アジュバント混合物は、水性媒質中のエマルションとして製剤化された代謝性油、アクリル酸ポリマー、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態において、アジュバント混合物は、約50ml/lから約100ml/lの量で存在することのできる、スクアランおよびPluronic(登録商標)L121(ポロキサマー401)の混合物などの代謝性油およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを包含することができ、カルボキシメチレンポリマーはCarbopol934P(Carbamer934P)であることができ、約2ml/lの量で存在できる。
【0098】
好ましいアクリル酸ポリマーは、B.F GoodrichからCarbopol934P NFおよび941 NFとして市販されているものであり、これはポリアリルスクロースで架橋されたアクリル酸のポリマーであり、化学式(CHCHOOOH)を有する。これらのポリマーは、水性担体と適切に製剤化される水性ゲルを形成する。ポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマーは、BASFからPluronic(登録商標)L121、L61、L81、またはL101として市販されている非イオン性界面活性剤であることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、さらに組み合わせて、1種または複数の他の生細菌、バクテリン、トキソイド、および/またはウイルス抗原を用いることができる。したがって、これらの実施形態のいくつかの態様において、アジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物は、(a)1種または複数の生細菌、たとえばヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、エリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、およびレプトスピラ(leptospira)細菌など、(b)1種または複数のバクテリン、(c)たとえばヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、エリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、およびレプトスピラ(leptospira)細菌などの1種または複数の病原体由来の1種または複数の精製トキソイド、ならびに/または(d)ウイルスがブタインフルエンザウイルス(SIV;SIV株H1N1、H1N2、およびH3N2など)、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、PRRS発現アライグマポックスウイルスおよび/または他の抗原、PRRS発現TGEVおよび/または他の抗原、およびブタサーコウイルス(PCV)からなる群から選択される1種または複数のウイルス抗原とさらに組み合わせて、免疫量の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、および1種または複数の生物学的に許容できるアジュバントを含むことができる。ブタサーコウイルス1型−2型キメラ変性生ワクチン(cPCV1−2)とさらに組み合わせて1種または複数の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株を用いる、ワクチン組成物を包含する組成物が本明細書において例示される(米国特許出願公開第2003/0170270号および第2004/0253270号参照)。
【0100】
これらの実施形態または別の実施形態において、ワクチン組成物を包含する組成物は、たとえばチメロソールおよび/またはEDTAなどの保存剤を追加的にまたは場合により包含することができる。それぞれ全体を参照により本明細書の一部とする米国特許出願公開第2002/0131980号および第2003/0017171号も参照されたい。
【0101】
本明細書に記載の組成物に用いられるそのような他の生細菌、バクテリン、トキソイド、および/またはウイルス抗原の濃度は、バクテリン、トキソイド、および/またはウイルス抗原の性質によって決まることになり、典型的にミリリットル当たり約0.5×10から0.5×1010の最終濃度で本明細書に記載の組成物に存在する。あるいは、細菌は、ミリリットル当たり約0.5×10から0.5×10、またはミリリットル当たり約0.5×10から0.5×10の最終濃度で存在する。
【0102】
本開示の組成物は、本明細書に記載のアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)組成物を投与することによって、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に起因する疾患に対して動物を防御する、および/または動物集団の中でそのような疾患の発生を予防もしくは改善する方法において有用であろう。本明細書に記載の組成物はまた、動物でマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する細胞媒介性および/または液性免疫応答などの免疫応答を増強する方法において有利に用いることができる。そのような方法は、1回または2回投与で、1種または複数のアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株を含む組成物を動物、典型的にはブタに投与するステップを含む。企図される正確な適用例に応じて、組成物は、筋内、皮下、経口、エアロゾルで、または鼻腔内に投与することができる。
【0103】
本開示の方法によれば、望ましい投与レジメンは、1回または複数回の所望のワクチン組成物をブタに投与することを含む。典型的には、2回投与で動物に投与する場合、それらの投与は、約1週間隔から約4週間隔、より典型的には約2週間隔から約3週間隔で投与される。
【実施例】
【0104】
本開示は、以下の非限定的な実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0105】
(実施例1)
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)非病原性アジュバント添加生ワクチンの調製
この実施例は、本開示による代表的なアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)組成物の調製を開示する。
【0106】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)は、多くの容易に利用可能な供給元から得ることができる。本明細書に記載の一実施形態において、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)非病原性生培養J株(FCX3−Line1)は、American Type Culture Collection(ATCC;Manassas、VA)からATCC Strain No.27715として得た。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の他の任意の非病原性株を、組成物の調製に用いることができ、たとえばATCCアクセッション番号25934と称される親J株などである。他のいくつかの実施形態において、当業者に知られている手順を用いてin vitro試験またはin vivo試験によって求められるように、培養物が非病原性であると確立されるまで、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)の任意の病原性生菌株を調節、弱毒化、または変異させてよいことが想定される。ATCC25934J株の全ゲノム配列はVasconcelos等(J.Bacteriol.(2005)、187(16):5568〜5577)によって公表されており、GenBankアクセッション番号AE017243が付与されている。ATCC株25934に関連するいくつかの配列はPubMedに見出すことができ、GenBankアクセッション番号AY737012(16SリボソームRNA遺伝子)、AY512905(アドヘシン遺伝子、AF013714(プロリポタンパク質p65遺伝子)、U02538(23S rRNA遺伝子)、およびU02537(多剤耐性タンパク質ホモログ遺伝子)を有する。
【0107】
殺菌アッセイのために、生理食塩水20mlで再水和したマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)培養物の1つの凍結乾燥バイアルから各ワクチン組成物を調製した。ワクチン組成物は、再水和培養物5ml、および最終体積10mlで指定のアジュバント濃度を得るのに十分なアジュバントの組合せを包含した。再水和培養物5mlと生理食塩水5mlを合わせることによって、対照組成物も調製した。すべての組成物を、サンプル採取に先立って、5分間混合した。混合後5分(0時間)、3時間、および7時間の時点ですべての組成物からサンプルを採取した。各サンプル採取時点でコロニー形成単位(CFU)によって、各ワクチンの生存能力を求めた(表1参照)。
【0108】
【表1】

【0109】
0時間のすべての対照生存能力を平均することによって、ストック培養物の平均生存能力、平均9.09×10CFU/mlを求めた。比較として、ストック培養物の最確数(MPN)を求め、1.85×10MPN/mlを得た。ワクチン混合とワクチン接種には典型的に3時間未満かかる。したがって、アジュバントの殺菌効果を考察するとき、3時間の時点がもっとも重要である。対照と比較して、3時間サンプル採取時点での5%および10%のSP−油の傾向は、それぞれ2倍差および4倍差である。
【0110】
最終濃度10%(v/v)のSP−油を含有する希釈剤で凍結乾燥培養物のバイアルを再水和することによって、ワクチンAを調製した。プラセボワクチンは滅菌生理食塩水であった。
【0111】
(実施例2)
ブタにおけるアジュバント添加マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)非病原性生ワクチンのin vivo有効性
この実施例は、代表的なアジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)ワクチン組成物のin vivo有効性を実証する。
【0112】
4から6週齢の合計30頭のブタをCharles City、IowaのFort Dodge Animal HealthのSPFの群れから得た。抗生物質および成長促進剤を含まない飼料を用いて、水と食物を自由に摂取させ、ブタを維持した。ワクチン組成物および対照組成物を投与する動物を別の部屋に収容し、ワクチン接種、モニター、およびチャレンジ期間、すべてのブタを同様の条件下で維持した。
【0113】
30頭のブタを無作為に次の3群に割り当てた。1群はワクチン組成物を投与され、1群はプラセボを投与され、1群は環境対照とした。ブタは表2に示すとおりにグループ分けした。
【0114】
【表2】

【0115】
適切なワクチン2ml用量を用いて、筋内注射によって4から6週齢のブタをワクチン接種した。第1群はワクチンAを投与し、第2群はプラセボを投与した。第3群のブタはワクチン接種およびチャレンジを行わず、環境対照とした。第1群のブタは、2週間の間隔で2回ワクチン接種した。第2回ワクチン接種の2週間後、第1群および第2群のすべてのブタを、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)株11の病原性株を含有する肺ホモジネート(LI−34)でチャレンジした(J.Clin.Microbiol.1999 Mar;37(3):620〜7)。チャレンジの4週間後、第1〜3群のすべてのブタを剖検し、肺病変を評価した。
【0116】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)チャレンジ株の肺ホモジネート(LI−34)の調製
交雑種ブタ7頭をSpring Prairie Colony Farms(Genetipork)から入手し、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)株11の10%粗肺ホモジネート(LI31)の1:30希釈10mlを気管内接種した。LI31粗肺ホモジネートは、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)を含有する肺ホモジネートを、特定病原体を持たないブタに継代接種し、肺炎を生じた肺を疾患の早中期で収穫することによって生成した。肺ホモジネートは必要になるまで−70℃で保管した。
【0117】
到着時および剖検時にすべてのブタから血清を集め、TGE(PRCV)、SW、およびPRVに対する抗体の証拠に関してISU Veterinary Diagnostic Laboratory(ISU−VDL)で評価した。さらに、PRRSVおよびマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)抗体に関してELISAを行い、すべてのサンプルが上記のすべての呼吸器病原体に陰性であった。
【0118】
すべてのブタを剖検した。放血に先立って、ペントバルビタールを用いて、ブタの深麻酔を誘導した。腹側胸壁を開き、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に特有の肺炎病変領域を無菌的に摘出し、個別に滅菌容器に入れた。
【0119】
それぞれの肺の少量を摩砕し、血液寒天プレート、ビーフハートインフュージョン培地、およびFriis培地で純度を確認した。Friis培地で管希釈を行い、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)を失効(titrate out)させた。細菌学検査およびマイコプラズマ単離の結果が分かるまで、残存する肺切片を50ml遠心分離管において−70℃で凍結させた。ブタ7頭のうち3頭の肺葉を用いて、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)肺接種物を生成した。
【0120】
肺葉塊をブタ番号329、331、および332から解凍し、抗生物質を含有しないFriis培地に摩砕した。肺接種物の純度を、ビーフハートインフュージョン、血液寒天、およびFriis培地で培養することによって確認した。環境不純物と一致するミクロコッカスのみが1つのプレートで見出された。肺接種物をマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)レベルに関して力価測定し、およそ10CCU/mlを含有することが見出された。SN、EMS、エンテロウイルス、HEV、PRCV、PRRSV、仮性狂犬病ウイルス(Pseudorabies)、TGE、パルボウイルス、およびロタウイルスに関するウイルス単離アッセイのために、アリコートをISU−VDLに提出した。すべてのアッセイの結果は陰性であった。摩砕肺接種物(標識LI34)の最終体積は、肺組織178.1gから1780mlであった。これを100×5mlおよび110×10ml体積にアリコートした。
【0121】
試験の第2相では、最低80%のブタで平均8%の肺炎の肺病変を誘発するのに必要とされる肺接種物の濃度を求めるために、ブタ9頭を用いた。すべてのブタを、前述のとおり、LI34マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)株11で気管内にチャレンジした。チャレンジ希釈液は、1:30、1:100、および1:500を包含した。
【0122】
ブタを剖検した。放血に先立って、ペントバルビタールを用いて、深麻酔を誘導した。肺を摘出し、標準的な肺ダイヤフラムで肺病変をスケッチした。すべてのブタから血清を集め、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に対する抗体に関してELISAでアッセイした。すべてのブタはマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に関して低い陽性であるか、血清反応陰性であり、到着前にマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に曝露されていないことを示唆した。すべてのブタから気管スワブを無菌的に集めた。パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)およびヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)がそれぞれ4頭および3頭のブタから単離された。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)はチャレンジしたすべてのブタから単離された。肺のスケッチをZelss画像解析システムで評価して、肺炎肺病変率を求めた。
【0123】
(結論)
ブタのチャレンジは好結果であり、1:100希釈が用いるのに最適な希釈であろう。誘発された肺炎の平均の率は10.17±6.6であり、これは通常より高いが、ブタに存在するパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)および/またはパラスイス(parasuis)に起因する可能性がある。さらに、チャレンジ接種物を接種したブタの100%が著しい肺病変を有した。全体として、これらの結果は、他の病原体が存在する場合、肺炎が増加するという点において、本出願人等がマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の試験で認める結果にかなり特有である。これは病原体と免疫系の相互作用によるものである可能性がある。本出願人等は、実験的チャレンジ実験に用いるためにマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)肺接種物1600mlを生成した。この接種物は、1:100希釈で気管内に用いたとき、最低80%の接種ブタで少なくとも8%またはそれ以上の肺炎肺病変を生じる。
【0124】
ワクチン接種日前にワクチンを力価測定し、殺菌アッセイを行って、用いるのに適切なアジュバント系を求めた(実施例1参照)。これらのデータから、さらなる試験用に10%SP−油アジュバントを選択した。ストック培養物のバイアル当たり平均生存能力は3.64×10CFU/ボトルであった。
【0125】
第1回投与当日、ワクチン組成物を次のとおり調製した。ワクチンA−3バイアルそれぞれの非病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)凍結乾燥培養物を10%SP−油希釈液10mlで再水和した。それぞれの希釈の種類に関して、3バイアルのワクチン組成物をプールし、撹拌棒を備えた撹拌プレートで20分間混合した。プラセボは投与用滅菌ボトルにアリコートした生理食塩水であった。組成物は2時間のワクチン接種過程中、氷上に保持した。
【0126】
第2回投与当日、ワクチン組成物を次のとおり調製した。ワクチンA−3バイアルそれぞれの非病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)凍結乾燥培養物を10%SP−油希釈液10mlで再水和した。それぞれの希釈の種類に関して、3バイアルの再水和培養物をプールし、撹拌棒を備えた撹拌プレートで20分間混合した。プラセボは投与用滅菌ボトルにアリコートした生理食塩水であった。組成物は2時間のワクチン接種過程中、氷上に保持した。
【0127】
各組成物中の生存マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の濃度を投与前および投与後に求めた。コロニー形成単位(CFU/ml)を求めることによって、生存能力を評価した。凍結乾燥ストック培養物のバイアルを生理食塩水10mlで再水和し、20分間混合し、生存能力アッセイの対照とした。第1の対照の生存能力は、試験ワクチンの生存能力より低かったため、第2回投与時は、2つのバイアルを再水和し、プールして、対照とした(試験ワクチン生存能力および対照生存能力に関しては表3を参照のこと)。
【0128】
【表3】

【0129】
各投与の2日前から開始して、すべてのブタを体温および臨床症状に関して毎日観察し、各投与後7日間継続した。ブタを、これに限定されるものではないが、咳、くしゃみ、鼻汁、減退(depression)、食欲不振、および呼吸困難を包含する臨床症状に関して観察した。
【0130】
第2回投与の14日後、第1群のブタをマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)病原性株で経気管チャレンジした。
【0131】
チャレンジ当日、病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)チャレンジストックの凍結(−70℃)肺ホモジネート(LI−34)を温水下で急速に解凍し、希釈した(1:100希釈)。キシラジン(Xylazine)50mg/ml、ケタミン(Ketamine)50mg/ml、およびテラゾール(Telazol)100mg/mlからなるXylazine−Ketamine−Telazol(商標)混合物で、ブタを鎮静させた。それぞれのブタにチャレンジ材料10mlを経気管投与した。確実に針が配置されるように、チャレンジ材料の投与前に、空気を注射器に吸引した。チャレンジ後、臨床症状に関して、すべてのブタを毎日観察した。
【0132】
第0日、14日、28日、および56日にブタを血清用に採血した。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)チャレンジに対するブタの血清学的応答をELISAで求めた。チャレンジの4週間後、第1〜3群のすべてのブタを安楽死させ、肺を摘出した。試験群は盲検化し、総肺病変のスコアを取った。異型マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)病変を、その後の組織病理学的評価のためにホルマリン固定した。罹患肺のスワブサンプルを細菌単離用に集めた。
【0133】
第1群のブタの平均肺病変スコア(5.9%)は、プラセボ群(14.8%)より約50%低かった。統計的分析を同腹(litter)に関して調整したとき、1群の緩和率(mitigated fraction)は対照と比較したとき、肺病変の重症度が69.2%低減した。これらのデータを表4に要約する。すべてのブタは第1回投与当日に血清反応陰性であり、ブタはマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)感染に感受性であることを示した。SP−油群のブタ1頭を除いて、ブタは第1回ワクチン接種後にセロコンバージョンしなかった。SP−油アジュバント添加ワクチン組成物を投与されたすべてのブタは、第2回注射後、抗体反応を生じた。血清学的応答は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に対する免疫応答が誘発されたことを実証している(血清検査の結果に関しては表9を参照のこと)。
【0134】
【表4】

【0135】
ワクチンがマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に有効とみなされるためには、データの統計的分析は肺病変の低減に関して緩和率(<50%信頼下限値>30%)の基準を満たさなければならない。全体として、これらのデータは、アジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)を、in vivoで動物に投与したとき、防御免疫応答を誘発するために有利に用いることができることを実証している。
【0136】
本発明を様々な実施形態においてそれぞれ述べたが、上記の説明に示し、以下の請求の範囲でさらに具体化されるとおり、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によってある種の修正が加えられ実行できることが予期される。本開示は本明細書に記載した特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、上記の説明および添付の図面から、本明細書に記載したものに加えて、本発明の様々な変更が当業者には明らかとなるであろう。そのような変更は添付の請求の範囲に含まれることが意図される。すべての値は概数であり、説明のために提供されるものであることがさらに理解される。本明細書に言及されるすべての特許および特許出願は、それらの全体を参照により本明細書の一部とする。
【0137】
(実施例3)
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)非病原性生菌株−ブタサーコウイルス1型−2型キメラ変性の生のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)画分の予備免疫原性試験
3〜4週齢のブタにおける混合ワクチン
この実施例は、3〜4週齢のブタに筋内(IM)または鼻腔内(IN)投与するときの、アジュバント添加非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)J(FCX−Line1)株およびブタサーコウイルス(PCV)1型−2型キメラ生ワクチン(cPCV1−2、米国特許第7279166号および第7276353号参照)を含む混合ワクチンの有効性を開示する。この混合ワクチン(PCV/MH)は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)およびブタサーコウイルスに起因する疾患の予防および/または重症度の軽減を助けるものとして、健常なブタのワクチン接種に用いるのに適している。
【0138】
標的とする試験ワクチンは、約4.0Log10FAID50/投与のcPCV1−2変性生ウイルス、および4×10CFU/投与のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)J株を含有するべきである(FAID法に関してはKing等、Journal of Comparative Medicine and Vet.Science、29:85〜89(1965)および米国特許第4824785号を参照のこと)。ワクチンは、最終濃度10%(v/v)のSP−油を含有するようにアジュバント添加した。プラセボワクチンは滅菌生理食塩水であった。
【0139】
この試験には合計66頭の3〜4週齢のブタを用いた。16頭のブタは、PCV/MH生ワクチン2mlを1回筋内投与し、チャレンジした(第1群)。15頭のブタは、PCV/MH生ワクチン2mlを2回(2週間隔)筋内投与し、チャレンジした(第2群)。15頭のブタは、PCV/MH生ワクチン2ml(1ml/鼻孔)を2回(2週間隔)鼻腔内投与し、チャレンジした(第3群)。15頭のブタは、PCV/MH生ワクチンを投与せず、チャレンジした(第4群)。さらに、5頭のブタは、環境対照とした(第5群)。
【0140】
本明細書に開示の試験に用いたワクチンは、MH凍結乾燥生抗原(ロット番号1744−56)およびPCV(ロットC108−56)生ワクチンを含有する希釈液の組合せであった。ワクチン接種当日、凍結乾燥生MHケークを、PCV生ウイルスを含有する希釈液(10%SP油でアジュバント添加、4.0Log10FAID50/ml)で再水和した。最終ワクチンにはロット番号2315−30を付与した。MH画分の生存能力をワクチン接種前および接種後に求め、それぞれ3.18×10CFU/mL(前)および1.65×10CFU/mL(後)であった。ワクチン接種前および接種後のワクチンのPCV力価は、それぞれ4.09Log10FAID50および3.7Log10FAID50であった。第2回ワクチン接種用のワクチンを上記のとおり調製し、ロット番号2315−32を付与した。MH画分の生存能力は、ワクチン接種前および接種後それぞれ1.24×10CFU/mLおよび1.5×10CFU/mLであった。PCV画分の生存能力は、それぞれ4.36Log10FAID50および3.83Log10FAID50であった。
【0141】
ワクチンの有害反応に関して、ワクチン接種後7日間、ブタを観察した。ワクチン接種後観察期間中、MHまたはPCVに関連しない原因のため3頭のブタが死亡した。ワクチン接種後期間の臨床的観察の概要を表5に示す。
【0142】
【表5】

【0143】
第1〜4群のすべてのブタを、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の病原性株(病原性MH(LI−34)を含有するブタ肺ホモジネート)でチャレンジした。第1群のブタは、第1回ワクチン接種の4週間後にチャレンジした。第2〜4群のブタは、第2回ワクチン接種の2週間後にチャレンジした。チャレンジの4週間後、第1〜5群のすべてのブタを剖検し、肺病変を評価した。
【0144】
ワクチン接種日前にワクチンを力価測定した。ワクチン接種当日、非病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の凍結乾燥培養物を再水和した。ワクチン中のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)生物体の濃度は、約2×10CFU/mlであった。ワクチンのサンプルを取り置き、ワクチン接種前および接種後に生存能力アッセイを行って、実際のCFU/mlを確認した。ワクチン接種過程中、ワクチンは氷上に保持した。
【0145】
各ワクチン接種の2日前から開始し、各ワクチン接種後7日間継続して、すべてのブタを体温および臨床徴候に関して毎日観察した。ブタを、これに限定されるものではないが、咳、くしゃみ、鼻汁、減退、食欲不振、および呼吸困難を包含する臨床症状に関して観察した。第2回ワクチン接種の14日後、第1〜4群のブタをマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)病原性株で経気管チャレンジした。
【0146】
チャレンジ当日、病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)チャレンジストックの凍結(−70℃)肺ホモジネート(LI−34)を温水下で急速に解凍し、滅菌マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)増殖培地を用いて希釈した(1:100希釈)。キシラジン(Xylazine)50mg/ml、ケタミン(Ketamine)50mg/ml、およびテラゾール(Telazol)100mg/mlを含むXylazine−Ketamine−Telazol(商標)混合物で、ブタを鎮静させた。それぞれのブタにチャレンジ材料10mlを経気管投与した。確実に針が配置されるように、チャレンジ材料の投与前に、空気を注射器に吸引した。
【0147】
チャレンジ後、臨床徴候に関して、すべてのブタを全般的に観察した。観察は、異常な臨床徴候に関して毎日行った。試験の第0日、14日、28日、および56日にブタを血清用に採血した(全血13ml以下)。血清を集めたが、評価はしなかった。その後の試験期間中、集めた血清を用いて、ブタの血清学的応答を評価するためにELISAを行うことができる。
【0148】
チャレンジの4週間後、第1〜5群のすべてのブタを安楽死させ、肺を摘出した。異型マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)病変をホルマリン固定し、サンプルを組織病理に関して検査した。罹患肺のスワブサンプルを細菌単離用に集めた。チャレンジ後に死亡したブタを剖検し、上記のとおりサンプルを集めた。ワクチン有効性はワクチン接種の合計平均肺病変スコアとして定義したが、これは対照の平均肺病変スコアより50%低かった。
【0149】
剖検当日、すべてのブタを安楽死させ、肺病変のスコアを取り、細菌単離用にスワブサンプルを採取した。スワブから単離された細菌は以下のスタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus heamolyticus)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)(P322)、スタフィロコッカス・エピデルミス(Staphylococcus epidermis)、アクチノマイセス・ピオゲネス(A.pyogenes)、アエロコッカス種(aerococus species)、ストレプトコッカス・ウベリス(S.uberis)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)(P344)、および巨大バクテリアからなった。肺病変スコアの統計的分析を表6に示す。
【0150】
【表6】

【0151】
このデータの統計的分析は肺病変の低減に関して緩和率(<50%信頼下限値>30%)の基準を満たした。この実施例は、(a)3.18×10CFU/mlで2回2mLIM投与したMH画分のMH/PCVワクチンの有効性、および(b)ワクチン接種後MHまたはPCVに関連する臨床徴候のないことからMH/PCVワクチンの安全性を実証している。
【0152】
(実施例4)
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)非病原性生菌株−ブタサーコウイルス1型−2型キメラ変性生混合ワクチンの3〜4週齢のブタにおけるマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)画分免疫原性試験
この実施例は、実施例4に示した試験から得られた結果を支持し、筋内投与されたときの、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)非病原性生菌株−ブタサーコウイルス1型−2型(cPCV1−2)キメラ変性生ワクチン混合ワクチン(MH/PCV)のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)画分の有効性を確認する免疫原性試験を開示する。本明細書に開示するMH/PCVワクチンは、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)およびブタサーコウイルスに起因する疾患の予防および/または重症度の軽減を助けるものとして、健常なブタのワクチン接種に適切に用いることができる。
【0153】
本試験に用いたブタは、ELISAで判定されたとおり、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に対して血清反応陰性であった。
【0154】
合計79頭の3から4週齢のブタを無作為に4群に分けた。24頭のブタ(第1群)は、混合PCV/MH生ワクチンの単回投与でワクチン接種した。24頭のブタ(第2群)は、2週間隔で、混合ワクチンで2回ワクチン接種した。24頭のブタ(第3群)は、2週間隔で、生理食塩水で2回ワクチン接種し、チャレンジ対照とした。すべてのワクチンは筋内投与した。4頭のブタ(第4群)は、ワクチン接種もチャレンジもせず、環境対照とした。
【0155】
本試験に用いたワクチンは、MH凍結乾燥生抗原(ロット1744−66)およびPCV(cPCV1−2ロットC108−56)生ワクチンを含有する希釈液の組合せであった。ワクチン接種当日、凍結乾燥生MHケークを、PCV生ウイルスを含有する希釈液(10%SP油でアジュバント添加、3.5Log10FAID50/ml)で再水和した。最終ワクチンにはロット番号2315−40を付与した。MH画分の生存能力をワクチン接種前および接種後に求め、それぞれ2.09×10CFU/mLおよび1.56×10CFU/mLであった。プラセボワクチンは滅菌生理食塩水であった。
【0156】
第2回ワクチン接種用のワクチンを上記のとおり調製し、ロット番号2315−42を付与した。MH画分の生存能力は、ワクチン接種前および接種後それぞれ1.05×10CFU/mLおよび6.72×10CFU/mLであった。PCV画分希釈液の生存能力は、3.44Log10FAID50であった。
【0157】
ワクチン接種日前にワクチンを力価測定した。ワクチン接種当日、非病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の凍結乾燥培養物を再水和した。ワクチンのサンプルを取り置き、ワクチン接種前および接種後に生存能力アッセイを行って、CFU/mlを求めた。ワクチン接種過程中、ワクチンは氷上に保持した。
【0158】
各ワクチン接種の2日前から開始し、各ワクチン接種後7日間継続して、すべてのブタを体温および臨床徴候に関して毎日観察した。ブタは、これに限定されるものではないが、咳、くしゃみ、鼻汁、減退、食欲不振、および呼吸困難を包含する臨床症状に関して観察した。
【0159】
ワクチンに対する有害反応に関して、ワクチン接種後7日間、ブタを観察した。ワクチン接種後観察期間中、MHまたはPCVに関連しない原因のため3頭のブタが死亡した。ワクチン接種後期間の臨床的観察の概要を表7に示す。
【0160】
【表7】

【0161】
第1〜3群のすべてのブタを、およそ7週齢で、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)の病原性株でチャレンジした。第1群のブタは、第1回ワクチン接種の4週間後にチャレンジした。第2群および第3群のブタは、第2回ワクチン接種の2週間後にチャレンジした。病原性マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)チャレンジストックの凍結(−70℃)肺ホモジネート(LI−34)を温水下で急速に解凍し、滅菌マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)増殖培地を用いて希釈した(1:100希釈)。キシラジン(Xylazine)50mg/ml、ケタミン(Ketamine)50mg/ml、およびテラゾール(Telazol)100mg/mlを含むXylazine−Ketamine−Telazol(商標)混合物で、ブタを鎮静させた。それぞれのブタにチャレンジ材料10mlを経気管投与した。
【0162】
試験の第0日、14日、28日、および56日にブタを血清用に採血した。この試験で集めた血清サンプルは、当分野でよく知られているELISA法を用いて、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)およびPCV2に対する動物血清学的応答を評価するために試験することができる。市販され入手可能であるELISA試験キットを用いて、ワクチン接種後0日(0DPV)およびチャレンジ後0日(0DPC)から集めた血清サンプルを、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)、ブタインフルエンザ(H1N1)、および豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)に対する抗体に関して試験することができる。
【0163】
チャレンジ4週間後(28DPC)、第1〜4群のすべてのブタを安楽死させ、肺を摘出した。肺病変スコアを記録し、典型的なマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)病変をホルマリン固定した。サンプルを組織病理に関して検査した。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に罹患した1つの肺葉から、二次感染を検出する細菌単離用にスワブサンプルを集めた。さらに、気管支肺胞洗浄液も集めた。肺をリン酸緩衝溶液で洗浄し、得られた流体をPCR試験用にアリコートした。
【0164】
肺病変の重症度の低減を評価するため、推定量(estimator)は緩和率(MF)統計値とした。緩和率を以下のとおり算出した。
【0165】
【数1】

式中、
=ウィルコクソン順位和統計値
=対照群の対象数
=ワクチン接種群の対象数
【0166】
緩和率の95%信頼区間を算出した。
【0167】
肺病変の重症度の低減を主張する場合、以下のとおりである。
:M=M
:M
式中、
=ワクチン接種群の肺病変スコアの中央値
=対照群の肺病変スコアの中央値
【0168】
単一集団のサンプルのパラメトリックおよびノンパラメトリック解析を行うPROC UNIVARIATEを用いて(SAS Institute Inc.、Cary NC)、連続結果変数の頻度分布を評価した。抗体力価のlog変換を用いて、パラメトリック検定に必要とされる正規性仮定を満たした。同腹および場所(room)に関する各群の比較性を評価するために、カイ二乗によってベースライン評価を行う。ウィルコクソン順位和検定によって(従属変数として肺病変スコアおよび独立変数として包含される処置を用いるPROC NPAR1WAY、肺病変の重症度を各ワクチン接種群および対照群間で比較した。PROC NPAR1WAYは、一元配置で位置および尺度の相違に関してノンパラメトリック検定を行い、PROC NPAR1WAYはさらに、経験分布関数に基づく生データおよび統計値の分散標準分析も提供する(SAS Institute Inc.、Cary NC)。
【0169】
すべての統計的分析はSASシステムを用いて行う。正規性に関してW検定で求めた変換変数の残差の分布が変換によって改善されなかった場合、必要に応じてノンパラメトリック検定を用いた。有意水準はp<0.05に設定する。
【0170】
剖検当日、すべてのブタを安楽死させ、肺病変のスコアを取り、細菌単離用にスワブサンプルを採取した。気管支肺胞洗浄(BAL)も集めた。スワブから単離された細菌は以下のアクチノバチルス種(Actinobacillus species)、モラクセラ・オスロエンシス(Moraxella osloensis)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)、アクチノマイセス・ピオゲネス(A.pyogenes)、およびボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)からなった。BALサンプルは、PCR法によってMHに関して試験し、そのサンプルは病変が記録された環境対照群の2種のサンプル、ならびにワクチン接種群および対照群の病変スコアの低い2種のサンプルであった。病変を有する環境対照群の両方のブタのBALサンプルは陰性であり、ワクチン接種群の病変スコアの低い両方のブタは陽性であった。肺病変スコアの統計的分析を表8に示す。
【0171】
【表8】

【0172】
このデータの統計的分析は肺病変の低減に関して緩和率(<50%信頼下限値>30%)の基準を満たした。このワクチンは、2.09×10CFU/mlで、単回投与または2回投与によって2mL用量をIM投与したMH画分に関して有効であるとみなされる。さらにこのワクチンは、ワクチン接種後MHまたはPCVに関連する臨床徴候のないことから安全であるとみなされる。
【0173】
【表9】

【受託番号】
【0174】
ATCC25934
ATCC25617
ATCC25095
ATCC27715
ATCC27714

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物において抗マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)免疫応答を誘発する組成物であって、免疫学的に有効量のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株および生物学的に許容できるアジュバントを含む組成物。
【請求項2】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して少なくとも約90%の相同性を有する核酸配列を含む株である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、参考J株に対して少なくとも約70%の多型同一性を有する株である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
参考J株が、ATCCアクセッション番号25934または27715を有する株である、請求項2または3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、ATCCアクセッション番号25934または27715と称されるJ株である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、ATCCアクセッション番号27715と称されるJ株である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記生物学的に許容できるアジュバントが、1種または複数のSL−CD、Carbopol、およびSP−油からなる群から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記生物学的に許容できるアジュバントがSP−油を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記SP−油が、約1%から約25%の濃度で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記SP−油が、約10%の濃度で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、エリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、およびレプトスピラ(leptospira)細菌からなる群から選択される、1種または複数の生細菌、バクテリン、および/または1種または複数の精製トキソイドをさらに含む、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
ブタインフルエンザウイルス(SIV)抗原、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)抗原、PRRS発現アライグマポックスウイルス抗原または他の抗原、PRRS発現TGEV抗原または他の抗原、およびブタサーコウイルス(PCV)抗原からなる群から選択される1種または複数のウイルス抗原をさらに含む、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記ブタサーコウイルス(PCV)抗原が、ブタサーコウイルス1型−2型(cPCV1−2)キメラである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株によって誘発された免疫応答が、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の病原性株による感染に対して動物を防御するか、または感染に関連する少なくとも1つの症状の重症度を軽減する、請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の病原性株に関連する疾患に対して動物を防御するか、または疾患に関連する少なくとも1つの症状を予防もしくは軽減する方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項16】
投与ステップが、非経口投与によって達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
非経口投与ステップが、筋内注射によって達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
投与ステップが、経口投与によって達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
経口投与ステップが、手動送達または大量適用によって達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
投与ステップが、経鼻投与によって達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記動物がブタである、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を動物に投与するステップを含む、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の発生を予防または改善する方法。
【請求項23】
免疫原性組成物である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記生物学的に許容できるアジュバントが、1種または複数のSL−CD、Carbopol、およびSP−油からなる群から選択される、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記生物学的に許容できるアジュバントがSP−油を含む、請求項24に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記SP−油が、約1%から約25%の濃度で存在する、請求項25に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
前記SP−油が、約10%の濃度で存在する、請求項26に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、エリシペロスリクス・ルシオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、およびレプトスピラ(leptospira)細菌からなる群から選択される、1種または複数の生細菌、バクテリン、および/または1種または複数の精製トキソイドをさらに含む、請求項23から27のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
ブタインフルエンザウイルス(SIV)抗原、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)抗原、PRRS発現アライグマポックスウイルス抗原または他の抗原、PRRS発現TGEV抗原または他の抗原、およびブタサーコウイルス(PCV)抗原からなる群から選択される1種または複数のウイルス抗原をさらに含む、請求項23から27のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記ブタサーコウイルス(PCV)抗原が、ブタサーコウイルス1型−2型(cPCV1−2)キメラである、請求項29に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する免疫応答を増強する方法であって、単回または複数回投与の請求項23から30のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を動物に投与するステップを含む方法。
【請求項32】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、そのゲノムが参考J株の核酸配列に対して少なくとも約90%の相同性を有する核酸配列を含む株である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、参考J株に対して少なくとも約70%の多型同一性を有する株である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
参考J株が、ATCCアクセッション番号25934または27715を有する株である、請求項32から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、ATCCアクセッション番号25934または27715と称されるJ株である、請求項32から33のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、ATCCアクセッション番号27715と称されるJ株である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する免疫応答を増強する方法であって、
a)1回目に、生物学的に許容できるアジュバント材料をアジュバント添加した免疫学的に有効量の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)株を含む第1の免疫原性組成物を動物に投与するステップ、
b)2回目に、生物学的に許容できるアジュバント材料をアジュバント添加した免疫学的に有効量の非病原性生マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)を含む第2の免疫原性組成物を動物に投与するステップを含む方法。
【請求項38】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非病原性生菌株が、請求項2から10のいずれか一項に定義された株である、請求項37に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503086(P2011−503086A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533203(P2010−533203)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082454
【国際公開番号】WO2009/061798
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】