説明

アスファルト舗装構造及び舗装工法

【課題】 時間短縮可能な方法で施工することができ、高い強度を有するアスファルト舗装構造及び舗装工法の提供。
【解決手段】 床版上に設けられた接着剤層と、
前記接着剤層により床版に固定される超高強度繊維補強コンクリートを敷設してなる超高強度繊維補強コンクリート層と、
前記超高強度繊維補強コンクリート層よりも表層側に設けられた塗膜系床版防水層と、
前記塗膜系床版防水層よりも表層側に設けられたアスファルト層と、を有し、
前記塗膜系床版防水層が溶融型接着剤からなる、アスファルト舗装構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装構造及び舗装工法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋等のアスファルト舗装は、該当する床版により若干仕様は異なるが、床版上から、床版防水用プライマー層(接着剤層)、加熱系塗膜防水剤層、アスファルト混合物層の順に積層され構成されているものが一般的である。
【0003】
鋼橋における鋼床版をアスファルト舗装する工法として、鋼床版を鋼繊維補強コンクリート(SFRC)により補強する工法が報告されている(非特許文献1)。当該工法によれば、鋼床版上に接着剤を塗布し、その上にSFRCを敷設して床版防水用プライマー(接着剤)層及び塗膜系防水層を形成してポーラスアスファルト層を形成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】鋼橋における鋼繊維補強コンクリート上の薄層排水性舗装に関する検討 武蔵 俊行等著 2009年発行 舗装 44−2, P13〜17.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法によれば床版防水用プライマー層が必要となり、当該プライマー層を形成する際にプライマーの硬化時間が長いという問題を有していた。本発明は、時間短縮可能な方法で施工することができ、高い強度を有するアスファルト舗装構造及び舗装工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、床版上に設けられた接着剤層と、
前記接着剤層により床版に固定される超高強度繊維補強コンクリートを敷設してなる超高強度繊維補強コンクリート層と、
前記超高強度繊維補強コンクリート層よりも表層側に設けられた塗膜系床版防水層と、
前記塗膜系床版防水層よりも表層側に設けられたアスファルト層と、を有し、
前記塗膜系床版防水層が溶融型接着剤からなる、アスファルト舗装構造である。
【0007】
本発明(2)は、前記溶融型接着剤が、当該溶融型接着剤の全体量に対して、40〜60質量%のストレートアスファルト、20〜40質量%のブローンアスファルト及び5〜20質量%のスチレン・ブタジエン共重合体を含有する、前記発明(1)のアスファルト舗装構造である。
【0008】
本発明(3)は、前記超高強度繊維補強コンクリートの密度が、2.0〜3.0g/cmである、前記発明(1)又は(2)のアスファルト舗装構造である。
【0009】
本発明(4)は、前記超高強度繊維補強コンクリートの透水係数が、10−18〜10−12cm/sである、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つのアスファルト舗装構造である。
【0010】
本発明(5)は、前記超高強度繊維補強コンクリート層が、
圧縮強度の特性値が150N/mm以上であり、ひび割れ発生強度の特性値が4N/mm以上であり、引張強度の特性値が5N/mm以上である、超高強度繊維補強コンクリートからなる、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つのアスファルト舗装構造である。
【0011】
本発明(6)は、前記超高強度繊維補強コンクリート層が、
基材としてのセメントと、最高粒径2.5mm以下の骨材と、平均粒径1μm以下のポゾラン材と、直径0.1〜0.25mm、長さ10〜20mmの補強用繊維と、を含有する、超高強度繊維補強コンクリートからなる、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つのアスファルト舗装構造である。
【0012】
本発明(7)は、前記超高強度繊維補強コンクリート層が、超高強度繊維補強コンクリートからなる複数のコンクリートプレキャストパネルが敷き詰められてなる、前記発明(1)〜(6)のいずれか一つのアスファルト舗装構造である。
【0013】
本発明(8)は、前記接着剤層が、アクリル系接着剤からなる、前記発明(1)〜(7)のいずれか一つのアスファルト舗装構造である。
【0014】
本発明(9)は、前記アスファルト層が、開粒度アスファルト混合物を用いて設けられるポーラスアスファルト層である、前記発明(1)〜(8)のいずれか一つのアスファルト舗装構造である。
【0015】
本発明(10)は、床版上に、接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤上に超高強度繊維補強コンクリートからなるプレキャストパネルを敷設して、超高強度繊維補強コンクリート層を形成する工程と、
前記超高強度繊維補強コンクリート層の上に溶融型接着剤によって塗膜系床版防水層を形成する工程と、
前記塗膜系床版防水層の上に、アスファルト混合物を敷設してアスファルト層を形成する工程と、
を有する、アスファルト舗装工法である。
【0016】
本発明(11)は、前記溶融型接着剤が、当該溶融型接着剤の全体量に対して、40〜60質量%のストレートアスファルト、20〜40質量%のブローンアスファルト及び5〜20質量%のスチレン・ブタジエン共重合体を含有する、請求項10記載のアスファルト舗装工法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、床版上に超高強度繊維補強コンクリートを敷設してなる超高強度繊維補強コンクリート層を設けることによって、該層が床版等の他の層との良好な接着性を示す上に、該層そのものが高い強度を有するため、得られるアスファルト舗装構造の強度を高めることが可能となる。
【0018】
特に、超高強度繊維補強コンクリート層は、高い密度を有するので透水性が極めて少なくなり、当該層が防水層(不透水層)の役割を果たす。したがって、本発明のアスファルト舗装構造及び舗装工法によれば、床版用防水プライマー層を設ける必要がなくなるので、施工の時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に係るアスファルト舗装構造の層構造を示す図である。
【図2】図2は、橋梁などにおいて採用される鋼床版の概略構成図である。
【図3】図3(a)は本発明の工法において使用するプレキャストパネルの概略構成図であり、図3(b)は本発明の工法において使用するくさび形治具の概略構成図であり、図3(c)はプレキャストパネルを敷設した際の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
アスファルト舗装構造
図1は、本発明のアスファルト舗装構造の層構成を示す説明図である。本発明のアスファルト舗装構造は、床版1よりも表層側に設けられた超高強度繊維補強コンクリートを敷設してなる超高強度繊維補強コンクリート層3と前記超高強度繊維補強コンクリート層よりも表層側に設けられたアスファルト層5とを有する。また、床版1と超高強度繊維補強コンクリート層3との間には、これらを接合する接着剤層2が設けられている。また、超高強度繊維補強コンクリート層3とアスファルト層5との間には、塗膜系床版防水層4が設けられている。このような層構成とすることによって、高い強度を有すると共に、十分な防水性を有するアスファルト舗装構造を構築することができる。
【0021】
(超高強度繊維補強コンクリート層)
本発明は、アスファルト舗装構造は、超高強度繊維補強コンクリートを敷設してなる超高強度繊維補強コンクリート層を設けることを特徴とする。当該層を設けることによって、従来必須とされてきた防水用プライマー層が必要なくなるため、施工時間大幅に短縮することができる。
【0022】
超高強度繊維補強コンクリート層を構成する超高強度繊維補強コンクリートとは、繊維補強を行なったセメント質複合材である。超高強度繊維補強コンクリートは、圧縮強度の特性値が100N/mm以上、ひび割れ発生強度の特性値が4N/mm以上、引張強度の特性値が5N/mm以上であることが好ましい。当該範囲のコンクリートを使用することによって、高い強度のアスファルト舗装構造を形成することができる。特に、床版は、一般的に鋼や、コンクリート等の硬質の材料から形成されるため、超高強度繊維補強コンクリートがこのような高い強度を有することによって、両者が接着剤によって相性良く接着されるため、アスファルト舗装構造の強度が極めて高くなる。
【0023】
圧縮強度の特性値は、150N/mm以上が好適である。圧縮強度の上限値は特に限定されないが例えば、250N/mmである。ひび割れ発生強度の特性値は、5N/mm以上がより好適である。ひび割れ発生強度の上限は特に限定されないが、例えば、15N/mmである。引張強度の特性値は、10N/mm以上がより好適である。引張強度の上限値は特に限定されないが、例えば、40N/mmである。
【0024】
本発明において、超高強度繊維補強コンクリートは、密度が、2.0〜3.0g/cmであることが好適である。このような範囲の高い密度を有することによって、超高強度繊維補強コンクリートによって、高い強度の補強を行なうことが可能となると共に、高い防水性を発揮することができる。
【0025】
本発明において用いる超高強度繊維補強コンクリートは、透水係数が、10−18〜10−12cm/sであることが好適であり、10−18〜10−16cm/sであることがより好適である。超高強度繊維補強コンクリートの配合や、密度を当業者の知識に基づいて適宜調整することにより、当該範囲の透水係数を有する超高強度繊維補強コンクリートを得ることができるが、このような透水係数の範囲とすることによって、床版が透水性を有する材料であったとしても、防水プライマー層を別途設ける必要がなく、施工期間を短縮することができる。一般的に、透水係数10−7以下は,不透水として考えられている(土質系)ため、本工法における超高強度繊維補強コンクリートの透水性能については、不透水と定められている透水係数の10万倍以上の不透水性能を有している。
【0026】
超高強度繊維補強コンクリートは、セメント等の基材と、補強繊維と、骨材と、ポゾラン材とを少なくとも含有する。任意で、石英粒子、繊維状粒子、薄片状粒子、減水剤を含有していてもよい。
【0027】
基材としては、セメントを用いることができる。セメントとしては、特に限定されないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント等が挙げられる。尚、製造時の水セメント比は、0.24以下であることが好適である。
【0028】
補強繊維としては、特に限定されないが、合成樹脂繊維や鋼などの金属繊維、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維、有機質繊維等が挙げられる。これらの中でも、特にステンレスなどの特殊鋼繊維や炭素繊維などの高強度、高弾性率の繊維が好ましい。金属繊維としては、例えば、鋼繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。有機質繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0029】
補強繊維は、引張強度が2×10N/mm以上であることが好適である。このような引張強度を有することによって、コンクリートの補強効果をより高めることができる。補強繊維の形状は、特に限定されないが、その直径が、直径が0.1〜0.25mmが好適であり、その長さが10〜20mmであることが好適である。このような範囲の形状を有することによって、特に高い曲げ強度を有するコンクリートが得られる。
【0030】
補強繊維の添加量は、超高強度繊維補強コンクリート中、2vol%以上含有することが好適であり、2〜6vol%がより好適であり、3〜5.5vol%が更に好適である。
【0031】
骨材としては、特に限定されないが、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂又はこれらの混合物等を使用することができる。骨材の粒径は、最大粒径2.5mm以下であることが好適であり、最大粒径は1.5mm以下がより好適である。最大粒径の下限は特に限定されないが、例えば、0.1mmである。このような範囲の粒径とすることによって、繊維補強コンクリートの強度を高めることができると共に、当該コンクリートの緻密性を高めることができる。更には、表面の平滑性を高めることができるため、他の層との接着強度を高めることができる。
【0032】
骨材の添加量は、特に限定されないが、セメント100質量部に対して、50〜250質量部が好適であり、80〜180質量部が更に好適である。このような範囲の添加量とすることにより高い強度の繊維補強コンクリートが得られる。
【0033】
ポゾラン材としては、特に限定されないが、例えば、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。これらのポゾラン材の中でも、特に、シリカフューム、シリカダストが取扱の容易性の観点から好適である。ポゾラン材は、平均粒径1.0μm以下の粒子が好適である。平均粒径が当該範囲であることによって、超高強度繊維補強コンクリート(硬化物)の強度が高くなる。下限値は特に限定されないが、例えば、平均粒径0.01μmである。
【0034】
ポゾラン材の配合量は、セメント100質量部に対して、5〜50質量部が好適である。このような範囲のポゾラン材を含有することによって、高い強度の繊維補強コンクリートが得られる。
【0035】
石英粒子としては、特に限定されないが、例えば、石英や非晶質石英、オパール質やクリストバライト質のシリカ含有粉末等が挙げられる。石英粒子の平均粒径は2〜20μmが好適であり、3〜10μmがより好適である。当該範囲の粒径であることによって、コンクリートの緻密性がより向上する。石英粒子の添加量は、特に限定されないが、例えば、セメント100質量部に対して5〜50質量部が好適である。
【0036】
繊維状粒子としては、特に限定されないが、例えば、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。繊維状粒子の針状度([長さ]/[直径])は、3以上が好適である(上限は特に限定されないが、例えば、20)。繊維状粒子の平均粒度は、1mm以下が好適である(下限は特に限定されないが、例えば、0.01mm)。このような範囲において特に高い強度の繊維補強コンクリートが得られる。尚、ここで「粒度」とは、そのものの最大寸法の大きさを意味する。繊維状粒子の添加量は、セメント100質量部に対して3〜35質量部が好適である。
【0037】
薄片状粒子としては、特に限定されないが、例えば、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。薄片状粒子の平均粒度は、1mm以下が好適である(下限は特に限定されないが、例えば、0.01mm)。このような範囲において特に高い強度の繊維補強コンクリートが得られる。尚、ここで「粒度」とは、上記と同様にそのものの最大寸法の大きさを意味する。薄片状粒子の添加量は、セメント100質量部に対して3〜35質量部が好適である。
【0038】
減水剤としては、粉末であっても液体であってもよく、特に限定されないが、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤が挙げられる。これらの減水剤の中でも、ポリカルボン酸系の高性能減水剤、高性能AE減水剤が、特に好適である。減水剤の添加量は、セメント100質量部に対して、固形分換算で、0.1〜4.0質量部が好適であり、0.3〜1.5質量部がより好適である。このような範囲の添加量とすることで高い強度の繊維補強コンクリートとなる。
【0039】
製造時に使用する水量は、セメント100質量部に対して、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部である。このような範囲で水を配合することによって、硬化前の組成物が混練できる程度の流動性を有し、且つ、硬化後のコンクリートが高い強度を有する。
【0040】
尚、水を含有する組成物を混練後、混練物を型枠内により成形し、その後、養生することによって超高強度繊維補強コンクリート板が得られる。なお、養生する方法としては、公知の養生方法を適用可能であり、例えば、気中養生、水中養生、蒸気養生等が挙げられる。
【0041】
(アスファルト層)
アスファルト層はアスファルト混合物を用いて敷設される。ここで、アスファルト混合物は、公知のアスファルトを使用することができるが、開粒度アスファルト混合物を使用することが好適である。すなわち、開粒度アスファルト混合物を使用することで得られるポーラスアスファルト層は、連通孔を有し、空隙率を高くして排水性を高める構造を有しており、一般的にせん断接着強度等の強度に関しては劣る傾向にあるが、本発明の超高強度繊維補強コンクリート層を設けることによって十分な強度を得ることが可能となる。したがって、排水性を有し、且つ、高い強度を有するアスファルト舗装路面を構築することができる。
【0042】
(塗膜系床版防水層)
超高強度繊維補強コンクリート層と、アスファルト層との間にはこれらを接合する塗膜系床版防水層が設けられている。塗膜系床版防水層は、溶融型接着剤により形成されていることが好適である。より詳細には、溶融型接着剤は、当該溶融型接着剤の全体量に対して、40〜60質量%のストレートアスファルト(CAS No. 8052−42−4)、20〜40質量%のブローンアスファルト(CAS No. 64742−93−4)及び5〜20質量%(好適には5〜15質量%)のスチレン・ブタジエン共重合体(CAS No.9003−55−8)を含有する組成物により形成されていることが好適である。当該組成物を含有する接着剤を選択することによって、超高強度繊維補強コンクリート層と、アスファルト層との接着強度が高まり、十分な強度を有するため従来必須とされたプライマー層を設ける必要がなくなった。さらに、当該塗膜系床版防水層と、超高強度繊維補強コンクリート層との組み合わせによって、両者が高い防水性を発揮するため、強度のみならず防水性付与の目的で設けられるプライマー層を設けなくても、高い防水性を有するアスファルト舗装構造とすることができる。尚、溶融型接着剤の塗布量は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3.0kg/mが好適であり、0.8〜2.0kg/mがより好適である。
【0043】
(接着剤層)
床版と、超高強度繊維補強コンクリート層とを接着する接着剤層としては、公知の接着剤を使用することができ、特に限定されないが、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤を使用することができる。
【0044】
(その他の層)
上記の層のほか、塗膜系床版防水層と、アスファルト層の間にケイ砂層が設けられていてもよい。当該層は舗装構造に力学的な影響を与えるものではなく、塗膜系床版防水層と工事車両等が粘着しないようにするためといった施工の作業性の問題から設けられる層である。また、超高強度繊維補強コンクリート層と、塗膜系床版防水層との間に、床版防水プライマー層が設けられていてもよい。
【0045】
アスファルト舗装工法
本発明の舗装工法は、床版上に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤上に超高強度繊維補強コンクリートからなるプレキャストパネルを敷設して超高強度繊維補強コンクリート層を形成する工程と、前記超高強度繊維補強コンクリート層の上に溶融型接着剤により塗膜系床版防水層を形成する工程と、前記塗膜系防水層の上に、アスファルト混合物を敷設してアスファルト層を形成する工程と、を有する。このような工程を経てアスファルト舗装をすることができるので、床版上に床版防水プライマー層を形成する必要がなく施工期間を短縮することができる。
【0046】
本工法を適用する床版は、特に限定されないが、例えば、鋼床版や、RC(鉄筋コンクリート)床版等であることが効果的である。特に、橋梁などにおいて採用される、鋼床版に使用されることが好適である。図2に示すように、橋梁に使用される鋼鋼板10は、デッキプレート11と、当該デッキプレートの背面に形成されたリブ13と、から構成される。当該床版への施工によって、超高強度繊維補強コンクリートによる床版補強によって、リブによるデッキの疲労引き裂等のデッキプレートの疲労損傷を防止することができる。
【0047】
本工法では、はじめに、床版上に、接着剤を塗布する工程により、接着剤層を形成する。続いて、前記接着剤上に超高強度繊維補強コンクリートからなるプレキャストパネルを敷設して超高強度繊維補強コンクリート層を形成する工程を行なう。プレキャストパネルを使用することによって、先に行なった接着剤層の塗布後、すぐに当該工程を実施することができるため、施工時間短縮に繋がる。また、プレキャストパネルを使用することで、路面の部分的な施工が容易になる。更に、プレキャストパネル使用することで、人手により運搬可能な大きさのコンクリートプレキャストパネルによっても十分な強度を床版に付与することができるので、コンクリートプレキャストパネルを床版の上面に敷き詰めるために重機を使うことなく舗装工事を行うことが可能である。
【0048】
ここで使用するプレキャストパネルは表面が平滑なものであることが好適である。表面が平滑なものを使用することによって、他の層との接着性が高まるので、アスファルト舗装構造の力学的強度が高められる。
【0049】
プレキャストパネルは、多数の当該板を敷き詰めることによって格子状乃至は千鳥状の床面を形成するように構成されていることが好適である。図3(a)は本発明の工法において使用するプレキャストパネルの概略構成図であり、図3(b)は本発明の工法において使用するくさび形治具の概略構成図であり、図3(c)はプレキャストパネルを敷設した際の概略構成図である。超高強度繊維補強コンクリートのプレキャストパネル30は、四角板状の形状の本体31と、前記本体の上面(表層側)端部にはプレキャストパネルとプレキャストパネルとを接合するくさび形孔33とを有する。これらのプレキャストパネル30を敷設して、隣接するプレキャストパネルをくさび形孔33に、くさび形治具35を用いて接合する。このようにして、超高強度繊維補強コンクリートからなるプレキャストパネルを敷設する。
【0050】
続いて、前記超高強度繊維補強コンクリート層の上に溶融型接着剤により塗膜系床版防水層を形成する工程を行ない、当該工程後、前記塗膜系床版防水層の上に、アスファルト混合物を敷設してアスファルト層を形成する工程を経て、アスファルト舗装を行なう。
【0051】
尚、塗膜系床版防水層とアスファルト層の間にケイ砂を散布してもよい。当該ケイ砂を散布することで、施工において塗膜系防水層が工事車両の車輪等と粘着することを防止することができる。
【実施例】
【0052】
(超高強度繊維補強コンクリートからなるプレキャストパネル)
セメントとして低熱ポルトランドセメント100質量部、ポゾラン材としてシリカフューム(平均粒径:0.25μm)30質量部、骨材として珪砂5号120質量部、減水剤としてポリカルボン酸高性能AE減水剤1.0質量部(固形分換算値)、水道水22質量部、石英粒子(平均粒径:7μm)32質量部、繊維状粒子としてウォラストナイト(平均長さ:0.3mm、[長さ]/[直径]=4)24質量部、補強繊維として鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm、配合物中の体積割合:2%)を二軸練りミキサに投入し、混練して得られた混練組成物(フロー値(JIS R 5201):250mm)を板状整形用の型枠内に流し込み、25℃で二日間前置きした後、90℃で48時間蒸気養生して得られた、超高強度繊維補強コンクリートプレキャストパネルを用いた。用いた超高強度繊維補強コンクリートの各種物性値を「超高強度繊維補強コンクリートの設計・施工 指針(案):土木学会」に従い測定し、以下に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
(床版防水材)
塗膜系床版防水層として、下記の組成を含む溶剤型接着剤又は溶融型接着剤の床版防水材を用いた。
溶剤型接着剤A:ストレートアスファルト30質量%、石油樹脂10質量%、トルエン40質量%、キシレン20質量%
溶剤型接着剤B:石油樹脂30質量%、トルエン70質量%
溶融型接着剤C:ストレートアスファルト55質量%、ブローンアスファルト35質量%、スチレン・ブタジエン共重合体10質量%
【0055】
(強度試験)
上記超高強度繊維補強コンクリート板に床版防水材を塗布して、開粒度アスファルト混合物を厚さ40mmで舗設した供試体について、下記の引張接着試験(円柱供試体)、引張接着試験(角柱供試体)、せん断接着試験を行なった。
【0056】
各種評価試験を行なった供試体の詳細な情報を以下の表2等に示した。更に各供試体について各種試験を道路橋床版防水便覧(社団法人 日本道路協会、2007年)に準拠して評価した結果を表3〜5に示した。
【0057】
【表2】

【0058】
各種接着剤等の塗布量は以下の通りである。
溶剤型接着剤A:0.4リットル/m
溶剤型接着剤B:0.2リットル/m
溶融型接着剤C:1.2kg/m
ケイ砂:0.7kg/m
【0059】
アスファルト混合物の仕様及び転圧条件
・開粒度アスファルト混合物(13mmトップ)
・バインダーは、ニチレキ社製のタフファルトスーパーを使用
・転圧はローラコンパクターを使用し転圧回数は25回
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
以上の試験結果より、一般的に強度に劣るとされる開粒度アスファルト(ポーラスアスファルト)を舗設した排水性舗装における供試体であっても日本道路協会の示す基準値よりも高い強度を示す結果となった。これらの結果は、一般的な密粒度のアスファルトを使用すれば、更に高い強度が得られると考えられるため、全てのアスファルトバインダに適用可能なアスファルト舗装構造であることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は新規なアスファルト舗装構造及び舗装工法を提供し、当該発明によれば、多種多様な床版を補強するアスファルト舗装において適用可能であり、十分な強度を有する舗装構造が得られると共に、施工時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:床版
2:接着剤層
3:超高強度繊維補強コンクリート層
4:塗膜系床版防水層
5:アスファルト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版上に設けられた接着剤層と、
前記接着剤層により床版に固定される超高強度繊維補強コンクリートを敷設してなる超高強度繊維補強コンクリート層と、
前記超高強度繊維補強コンクリート層よりも表層側に設けられた塗膜系床版防水層と、
前記塗膜系床版防水層よりも表層側に設けられたアスファルト層と、を有し、
前記塗膜系床版防水層が溶融型接着剤からなる、アスファルト舗装構造。
【請求項2】
前記溶融型接着剤が、当該溶融型接着剤の全体量に対して、40〜60質量%のストレートアスファルト、20〜40質量%のブローンアスファルト及び5〜20質量%のスチレン・ブタジエン共重合体を含有する、請求項1記載のアスファルト舗装構造。
【請求項3】
前記超高強度繊維補強コンクリートの密度が、2.0〜3.0g/cmである、請求項1又は2記載のアスファルト舗装構造。
【請求項4】
前記超高強度繊維補強コンクリートの透水係数が、10−18〜10−12cm/sである、請求項1〜3のいずれか一項記載のアスファルト舗装構造。
【請求項5】
前記超高強度繊維補強コンクリート層が、
圧縮強度の特性値が150N/mm以上であり、ひび割れ発生強度の特性値が4N/mm以上であり、引張強度の特性値が5N/mm以上である、超高強度繊維補強コンクリートからなる、請求項1〜4のいずれか一項記載のアスファルト舗装構造。
【請求項6】
前記超高強度繊維補強コンクリート層が、
基材としてのセメントと、最高粒径2.5mm以下の骨材と、平均粒径1μm以下のポゾラン材と、直径0.1〜0.25mm、長さ10〜20mmの補強用繊維と、を含有する、超高強度繊維補強コンクリートからなる、請求項1〜5のいずれか一項記載のアスファルト舗装構造。
【請求項7】
前記超高強度繊維補強コンクリート層が、超高強度繊維補強コンクリートからなる複数のコンクリートプレキャストパネルが敷き詰められてなる、請求項1〜6のいずれか一項記載のアスファルト舗装構造。
【請求項8】
前記接着剤層が、アクリル系接着剤からなる、請求項1〜7のいずれか一項記載のアスファルト舗装構造。
【請求項9】
前記アスファルト層が、開粒度アスファルト混合物を用いて設けられるポーラスアスファルト層である、請求項1〜8のいずれか一項記載のアスファルト舗装構造。
【請求項10】
床版上に、接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤上に超高強度繊維補強コンクリートからなるプレキャストパネルを敷設して、超高強度繊維補強コンクリート層を形成する工程と、
前記超高強度繊維補強コンクリート層の上に溶融型接着剤によって塗膜系床版防水層を形成する工程と、
前記塗膜系床版防水層の上に、アスファルト混合物を敷設してアスファルト層を形成する工程と、
を有する、アスファルト舗装工法。
【請求項11】
前記溶融型接着剤が、当該溶融型接着剤の全体量に対して、40〜60質量%のストレートアスファルト、20〜40質量%のブローンアスファルト及び5〜20質量%のスチレン・ブタジエン共重合体を含有する、請求項10記載のアスファルト舗装工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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