説明

アスベスト含有建材の減容処理装置

【課題】 比較的簡易で安価な装置構成ながらも、アスベストの飛散を確実に防止しつつ良好に減容処理可能なアスベスト含有建材の減容処理装置を提供する。
【解決手段】 アスベスト含有建材Aを送り出すスクリューコンベヤ2を送り出し先側が高位置となるように傾斜配置し、このスクリューコンベヤ2基端の投入部にはアスベスト含有建材Aをスクリューコンベヤ2内に送り込むスクリューコンベヤ6を備える一方、スクリューコンベヤ2先端の排出部には先端に向けて徐々に内径が小径となるように形成した減容用の絞り部11を接続すると共に、各スクリューコンベヤ2、6の内部には防塵用に水Lを貯留する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等のアスベストを含有した建材を減容処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の柱や天井等の被覆材、或いは配管等の保温材等として、例えば、セメントに適宜量のアスベストを混合したものを吹き付け施工する吹き付けアスベストや、ケイ酸カルシウムに適宜量のアスベストを混合成形して製造されるケイ酸カルシウム板等のアスベスト含有建材が知られている。これら吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等のようなアスベスト含有建材は、耐熱性、断熱性、遮音性等、様々な面で優位性を発揮するため広く一般的に使用されていたが、近年アスベストが原因とされる健康被害が社会問題化しており、その製造や使用等が規制されつつある。
【0003】
このようなアスベスト含有建材を使用した建築物が今後老朽化を迎えるにつれ、改修工事や解体工事等が次第に増えてくると予想されるが、それら工事に伴い大量のアスベスト含有建材の廃材が発生すると考えられる。これら廃材であるアスベスト含有建材の一般的な処理方法としては、例えば、飛散性の高い吹き付けアスベストの場合には、建築物周囲を養生シート等で覆って外界と隔離した後、シート内部を高性能の集塵機にて負圧に保ちつつ、建築物の柱や天井等に吹き付け施工された吹き付けアスベストの表面に水等を十分に散布して防塵処理を施した上で慎重に剥離除去し、これを耐水性のプラスチック製の袋体等にて二重梱包し、この状態で最終処分場まで運搬して地中に埋め立て処分したり、或いはリサイクル工場に持ち込んでキルン等で加熱溶融して再生処理するようにしている。
【0004】
ところで、本発明者らは、これら廃材であるアスベスト含有建材を防塵用の液中において破砕して減容処理する方法及び装置を提案している(特許文献1)。この発明によれば、現場にて回収したアスベスト含有建材を防塵用の液体である、例えば水中に浸漬させた状態で破砕するようにしているので、破砕する際にアスベストが周囲に飛散するおそれが無く安全かつ確実に減容処理することができ、その結果、回収した段階では嵩が大きくて非常に取り扱いにくいアスベスト含有建材を効率よく運搬可能とすると共に、埋め立て処分する際や加熱溶融にて再生処理する際にも効率よく処理することを可能としている。
【特許文献1】特願2006−172271号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明においては、アスベスト含有建材を破砕処理するための破砕ローラや、該破砕ローラを駆動させる駆動装置、またアスベスト含有建材の破砕処理が行われるケーシング内を常に負圧状態に保つための高性能の集塵機等を要し、装置構成が本格的で大掛かりなものとなってイニシャルコストも比較的高くつくことが予想されるため、アスベスト含有建材の処理現場の規模等によっては採用しづらい場合もあると考えられる。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、比較的簡易で安価な装置構成ながらも、アスベストの飛散を確実に防止しつつ良好に減容処理可能なアスベスト含有建材の減容処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のアスベスト含有建材の減容処理装置では、アスベスト含有建材を送り出すスクリューコンベヤを送り出し先側が高位置となるように傾斜配置し、該スクリューコンベヤ基端の投入部にはアスベスト含有建材をスクリューコンベヤ内に送り込む送り込み手段を備える一方、スクリューコンベヤ先端の排出部には先端に向けて徐々に内径が小径となるように形成した減容用の絞り部を接続すると共に、スクリューコンベヤ内部には防塵用の液体を貯留したことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載のアスベスト含有建材の減容処理装置では、前記防塵用の液体は、水であることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3記載のアスベスト含有建材の減容処理装置では、前記防塵用の液体は、アルコール系化合物または所定濃度に調整したアルコール系化合物の水溶液であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4記載のアスベスト含有建材の減容処理装置では、前記アルコール系化合物は、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールから選択される1種または2種以上の混合物であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1記載のアスベスト含有建材の減容処理装置によれば、アスベスト含有建材を送り出すスクリューコンベヤを送り出し先側が高位置となるように傾斜配置し、該スクリューコンベヤ基端の投入部にはアスベスト含有建材をスクリューコンベヤ内に送り込む送り込み手段を備える一方、スクリューコンベヤ先端の排出部には先端に向けて徐々に内径が小径となるように形成した減容用の絞り部を接続すると共に、スクリューコンベヤ内部には防塵用の液体を貯留したので、比較的簡易で安価な装置構成ながらも、アスベスト含有建材からアスベストが飛散するのを確実に防止しながら安全に減容処理することができ、アスベスト含有建材の処理現場の規模等に拘わらず好適に採用することができる。
【0012】
また、本発明に係る請求項2記載のアスベスト含有建材の減容処理装置によれば、前記防塵用の液体は、水であるので、ランニングコストも抑えられると共に取り扱いも容易で、アスベスト含有建材からアスベストを飛散させることなく安全かつ良好に減容処理することができる。
【0013】
また、本発明に係る請求項3記載のアスベスト含有建材の減容処理装置によれば、前記防塵用の液体は、アルコール系化合物または所定濃度に調整したアルコール系化合物の水溶液であるので、アルコール系化合物が有している、保湿性、水溶性、可燃性等の性質を利用して、アスベスト含有建材からアスベストを飛散させることなく安全かつ良好に減容処理可能とすると共に、減容したものを加熱溶融して再生処理する場合には、減容したアスベスト含有建材の表面や内部に付着、或いは浸み込んでいるアルコール系化合物により助燃効果が期待でき、効率よく加熱溶融することができて良好に再生処理することができる。
【0014】
また、本発明に係る請求項4記載のアスベスト含有建材の減容処理装置によれば、前記アルコール系化合物は、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールから選択される1種または2種以上の混合物であるので、これらアルコール系化合物が有している、保湿性、水溶性、可燃性等の性質を利用して、アスベスト含有建材からアスベストを飛散させることなく安全かつ良好に減容処理可能とすると共に、減容したものを加熱溶融して再生処理する場合には、減容したアスベスト含有建材の表面や内部に付着、或いは浸み込んでいるアルコール系化合物により助燃効果が期待でき、効率よく加熱溶融することができて良好に再生処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のアスベスト含有建材の減容処理装置にあっては、アスベスト含有建材である吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等を送り出すスクリューコンベヤを送り出し先側が高位置となるように傾斜配置し、該スクリューコンベヤ基端の投入部には、アスベスト含有建材をスクリューコンベヤ内に送り込む送り込み手段である、例えば、送り出し先側が下位となるように略垂直に立設した別のスクリューコンベヤの排出部を連結する一方、傾斜配置した前記スクリューコンベヤ先端の排出部には、先端に向けて徐々に内径が小径となるようにテーパ状に形成した減容用の絞り部を接続する。また、これら各スクリューコンベヤの内部には、防塵用の液体である、例えば、最もポピュラーでコスト面と取り扱いやすさに優れる水を貯留させている。なお、この防塵用の液体としては、前記水以外に、例えば、保湿性、水溶性を有するアルコール系化合物のグリセリンや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等を単独で、或いはこれら2種以上の混合物を貯留させてもよい。また、これらアルコール系化合物は、原液の状態で貯留させるようにしてもよいが、原液の状態では取り扱いにくいようであれば水に溶かして適宜濃度の水溶液として使用するようにしてもよい。
【0016】
そして、吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等のアスベスト含有建材を減容処理するときには、先ず、前記各スクリューコンベヤを駆動させ、解体現場より回収したアスベスト含有建材を送り込み手段である、垂直に立設した方のスクリューコンベヤ上端の投入部より投入してコンベヤ下端部へと送り込んだ後、引き続き、傾斜配置した方のスクリューコンベヤにて斜め上方位置のコンベヤ先端部へと送り出していく。このとき、両コンベヤ内には適宜量の水を貯留させているため、送り出されるアスベスト含有建材は一定時間水中へと完全に浸漬させられることとなる。そして、このアスベスト含有建材が傾斜配置したスクリューコンベヤの排出部まで送り出されると、その先方に接続した絞り部によって徐々に圧縮減容されながら排出されていく。このとき、アスベスト含有建材は、その表面や内部に多量の水が付着、或いは浸み込んだ状態となっているため、圧縮減容時の衝撃等によってアスベスト含有建材からアスベストが大気中へと飛散してしまうようなおそれはない。そして、傾斜配置したスクリューコンベヤより圧縮減容されて排出されるアスベスト含有建材の減容片は、例えば、フレコンバック等に封入し、その状態で最終処分場まで運搬して地中に埋め立て処分したり、或いはリサイクル工場まで運搬してキルン等で加熱溶融して再生処理を行う。
【0017】
このように、比較的小規模な処理現場等においても容易に持ち込めて採用のし易い、ごく簡易で安価な構成の装置であるにも拘わらず、現場にて回収した吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等の嵩の大きいアスベスト含有建材を、アスベストが周囲に飛散するようなおそれも無く安全かつ確実に減容処理することができ、最終処分場やリサイクル工場等への運搬効率や、埋め立て処分する際等の処理効率の向上を可能としている。
【0018】
また、減容処理したアスベスト含有建材を、例えば、リサイクル工場へ運搬してキルン等で加熱溶融し、アスベストを完全に無害化して再生処理するような場合には、スクリューコンベヤ内に貯留させる防塵用の液体として、水に代えて、例えばグリセリン等のアルコール系化合物または所定濃度に調整したアルコール系化合物の水溶液を用いるとより好適に処理することが可能となる。即ち、アルコール系化合物が有している、保湿性、水溶性、可燃性等の性質を利用して、減容時においては、水の場合と同様にアスベスト含有建材からアスベストを飛散させることなく安全かつ良好に減容処理可能とすると共に、加熱溶融時には、減容したアスベスト含有建材の表面や内部に多量に付着、或いは浸み込んでいるアルコール系化合物が助燃効果を発揮して、効率よく短時間にて加熱溶融することができて良好に再生処理することが可能となる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0020】
図中の1は現場にて回収される吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等のアスベスト含有建材の減容処理装置であって、アスベスト含有建材Aを送り出すスクリューコンベヤ2を、図に示すように、送り出し先側が高位置となるように傾斜配置しており、円筒状のケーシング3内部には軸体4を回転自在に枢支させていると共に、該軸体4の周囲には材料送り用のスクリュー羽根5を周設しており、軸体4を駆動装置(図示せず)にて所定方向へ回転させることにより、ケーシング3内のアスベスト含有建材Aを、図中の矢印方向である斜め上方へと送り出せるようにしている。
【0021】
また、前記スクリューコンベヤ2基端の材料投入部には、アスベスト含有建材Aをスクリューコンベヤ2内に送り込む送り込み手段として、送り出し先側が下位となるように略垂直に立設した別のスクリューコンベヤ6を備え、その下端の材料排出部を連結してスクリューコンベヤ2と略一体化させている。スクリューコンベヤ6は、前記スクリューコンベヤ2とほぼ同様の構造をしたものであって、円筒状のケーシング7内部に軸体8を回転自在に枢支させていると共に、該軸体8の周囲には材料送り用のスクリュー羽根9を周設しており、軸体8を駆動装置(図示せず)にて所定方向へ回転させることにより、ケーシング7内のアスベスト含有建材Aを、図中の矢印方向である下方へ送り出せるようにしている。また、ケーシング7上端の材料投入部にはアスベスト含有建材A投入用の投入ホッパ10を備えている。
【0022】
なお、本実施例においては、アスベスト含有建材Aをスクリューコンベヤ2内に送り込むための送り込み手段として、略垂直に立設したスクリューコンベヤ6を採用しているが、特にこれに限定するものではなく、例えば、現場作業者等が直接押し込むような場合には、スクリューコンベヤ2基端の材料投入部に、投入用のホッパや筒体等を直接固着するだけでもよい。
【0023】
また、傾斜配置したスクリューコンベヤ2先端の材料排出部には、先端に向けて徐々に内径が小径となるようにテーパ状に形成した減容用の絞り部11を接続していると共に、該絞り部11の先端には減容したアスベスト含有建材の減容片A′を外部へ排出する排出口12を開口している。また、排出口12の下位には排出されたアスベスト含有建材の減容片A′を受け止めて搬送用のフレコンバックF内に投入させるシュート13を配設している。
【0024】
また、前記スクリューコンベヤ2、6の各ケーシング3、7内部には、防塵用の液体である、例えば水Lを、少なくとも投入したアスベスト含有建材Aが送り出される途中で一定時間完全に浸かる程度の液量を貯留させている。したがって、投入したアスベスト含有建材Aの表面や内部には、多量の水Lが付着、或いは浸み込むこととなり、その結果、アスベスト含有建材Aが絞り部11で圧縮減容される際にアスベストが大気中に飛散してしまうようなおそれはない。
【0025】
また、前記スクリューコンベヤ2、6のケーシング3、7内に貯留した水Lは、排出口12より排出されるアスベスト含有建材の減容片A′と共に持ち去られていって徐々に減少していくため、例えば、作業者の目視や、液量計等での計測により液位を監視して、常にケーシング3、7内部の水Lの液位を略一定に保つように適宜補充するようにしている。
【0026】
なお、本実施例においては、スクリューコンベヤ2、6のケーシング3、7内に貯留させる防塵用の液体として、最もポピュラーでコスト面と取り扱いやすさとから水を採用しているが、例えば、減容処理したアスベスト含有建材の減容片A′をリサイクル工場に搬送してキルン等で1000〜1500℃程度の高温で加熱溶融し、アスベストを完全に無害化して再生処理するような場合には、水に代えて、例えばグリセリン等のアルコール系化合物を用いるとより好適に処理することが可能となる。即ち、アルコール系化合物が有している、保湿性、水溶性、可燃性等の諸性質を生かし、減容する際には、水の場合と同様にアスベスト含有建材Aからアスベストを飛散させることなく安全かつ確実に減容処理可能とすると共に、搬送する際にも、乾燥が極力抑えられてアスベストの飛散を防止でき、更に加熱溶融する際には、アスベスト含有建材の減容片A′の表面や内部に多量に付着、或いは浸み込んでいるアルコール系化合物が助燃効果を発揮して、効率よく短時間にて加熱溶融することができて良好に再生処理することが可能となる。
【0027】
また、前記アルコール系化合物としては、グリセリンや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等を単独で、或いはこれら2種以上の混合物を有効に採用することができるが、特に、最近注目を集めつつあるリサイクル燃料の一つに、廃食油をメチルエステル化させることにより軽油の代替燃料とされるBDF(バイオディーゼル燃料)を製造するといった方法があり、その製造過程において副産物として多量に生じるグリセリンを採用するようにすれば、非常に安価にかつ手軽に手に入り易くてより一層好適に処理することが可能になると考えられる。
【0028】
このとき、グリセリン等のアルコール系化合物の原液は粘性が比較的高いため、原液の状態のままではアスベスト含有建材Aの内部まで容易に浸透せず、取り扱いが困難な場合も考えられるが、例えば、水溶性という性質を利用して適宜量の水に溶かして所定濃度の水溶液として使用するようにすれば、アスベスト含有建材A内部まで容易に浸透するようになって取り扱い易くすることができる。このとき、水の量は多いほどより取り扱い易くなるが、次工程の溶融処理において助燃効果が極力発揮されるように出来るだけ水の量を抑える方が好ましく、処理対象であるアスベスト含有建材の材種や性状等に応じて適宜決定するようにするとよい。
【0029】
そして、上記構成のアスベスト含有建材の減容処理装置1を使用して吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等のアスベスト含有建材Aを減容処理するときには、予めスクリューコンベヤ2、6のケーシング3、7内部に防塵用の液体である水Lを所定量貯留させておく。そして、各スクリューコンベヤ2、6を駆動させた後、作業者が現場で回収したアスベスト含有建材Aを、送り込み手段であるスクリューコンベヤ6のケーシング7上端の投入ホッパ10より投入していく。スクリューコンベヤ6に投入されたアスベスト含有建材Aは、スクリュー羽根9にてケーシング7下端の材料排出部まで送り込まれた後、引き続き、傾斜配置したスクリューコンベヤ2のケーシング3基端の材料投入部へと投入され、スクリュー羽根5にて斜め上方に位置するケーシング3先端側の材料排出部へと送り出されていく。
【0030】
このとき、スクリューコンベヤ2、6の各ケーシング3、7内には防塵用の液体である水Lを貯留させているため、投入されて送り出されていく過程においてアスベスト含有建材Aは一定時間、水Lの中へと完全に浸漬させられることとなる。そして、このアスベスト含有建材Aが傾斜配置したスクリューコンベヤ2先端の絞り部11まで送り出されると、先端に向けて内径が漸次狭まっていくのに伴って徐々に圧縮減容されていき、やがて排出口12より減容片A′として排出されていく。このとき、アスベスト含有建材Aの表面や内部には多量の水Lが付着、或いは浸み込んだ状態となっているため、圧縮減容時の衝撃等によってアスベスト含有建材Aからアスベストが大気中へと飛散してしまうようなおそれはない。
【0031】
そして、スクリューコンベヤ2より排出されるアスベスト含有建材の減容片A′は、シュート13を介してフレコンバックFに投入され、適宜量投入されれば結束具等で封入した後、運搬車両等に積載して最終処分場まで運搬して地中に埋め立て処分したり、或いはリサイクル工場に持ち込んでキルン等で加熱溶融して再生処理を行う。このとき、フレコンバックF内のアスベスト含有建材の減容片A′の表面や内部には、多量の水が付着、或いは浸み込んでいるため、搬送途中に乾燥してアスベストが大気中へと飛散してしまうようなおそれはない。
【0032】
このように、比較的小規模な処理現場等においても容易に持ち込めて採用のし易い、ごく簡易で安価な構成の装置であるにも拘わらず、現場にて回収される吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等の嵩の大きいアスベスト含有建材を、アスベストが周囲に飛散するといったおそれも無く安全かつ確実に減容処理することができ、これによって最終処分場やリサイクル工場等への運搬効率や、埋め立て処分時の処理効率等の大幅な向上を可能としている。
【0033】
また、前記アスベスト含有建材の減容処理装置1にて圧縮減容したアスベスト含有建材の減容片A′を、リサイクル工場に運搬して加熱溶融して再生処理する場合には、スクリューコンベヤ2、6のケーシング3、7内部に、防塵用の液体として、水に代えてアルコール系化合物である、例えばグリセリンL′を所定量貯留させておく。そして、前記同様に、各スクリューコンベヤ2、6を駆動させ、アスベスト含有建材Aをスクリューコンベヤ6の投入ホッパ10より投入して送り込み、傾斜配置したスクリューコンベヤ2先端まで送り出していく。
【0034】
このとき、スクリューコンベヤ2、6の各ケーシング3、7内には、防塵用の液体としてグリセリンL′を貯留させているため、投入されて送り出されていく過程においてアスベスト含有建材Aは一定時間、グリセリンL′の液中へと完全に浸漬させられることとなる。そして、このアスベスト含有建材Aがスクリューコンベヤ2先端の絞り部11まで送り出されると徐々に圧縮減容されていき、やがて排出口12より減容片A′として排出されていく。このとき、アスベスト含有建材Aの表面や内部には、保湿性の高いアルコール系化合物であるグリセリンL′が多量に付着、或いは浸み込んだ状態となっているため、水の場合と同様に、圧縮減容時の衝撃等によってアスベスト含有建材Aからアスベストが大気中へと飛散してしまうようなおそれはない。
【0035】
そして、このスクリューコンベヤ2より排出されるアスベスト含有建材の減容片A′は、フレコンバックFに投入され、運搬車両等に積載してリサイクル工場に搬送し、工場内に設置されたキルン等で1000〜1500℃程度の高温で加熱溶融し、アスベストを完全に無害化して再生処理を行う。このとき、フレコンバックF内のアスベスト含有建材の減容片A′の表面や内部には、可燃性を有するアルコール系化合物であるグリセリンL′が多量に付着、或いは浸み込んでおり、このグリセリンL′が加熱溶融時に助燃効果を発揮するため、非常に効率よく短時間にて加熱溶融することができて良好に再生処理することが可能となる。
【0036】
また、グリセリン等のアルコール系化合物は、粘性が高いため原液のままではアスベスト含有建材A内部まで容易に浸透しにくいといった場合があるが、例えば、アルコール系化合物であるグリセリンL′を適宜量の水に溶かしてグリセリン水溶液として用いるようにすれば浸透性が向上し、取り扱い性を飛躍的に向上させることができる。その場合、グリセリン原液と比較して若干助燃効果が低下することは避けられないが、水溶液の濃度を適宜調整することにより一定の助燃効果は十分に期待することができる。
【0037】
このように、吹き付けアスベストやケイ酸カルシウム板等のアスベスト含有建材の表面や内部に、保湿性、水溶性に加え、可燃性を有するグリセリン等のアルコール系化合物を付着、或いは浸み込ませた上で圧縮減容するようにしたので、減容時におけるアスベストの大気中への飛散を確実に防止できると共に、この減容片を加熱溶融する際には、前記アルコール系化合物が助燃効果を発揮するため、燃焼効率が大幅に向上して短時間で良好に処理することが可能となる。
【0038】
なお、前記アルコール系化合物には、本実施例で採用しているグリセリン以外にも様々なものが考えられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等を単独で、或いはこれらにグリセリンを加えた2種以上の混合物でも同様の効果が得られるが、特に、前記した通り、BDF製造過程において副産物として多量に生じるグリセリンは非常に安価にかつ手軽に手に入り易いため、極めて低コストにて処理することが可能となってより一層好適である。
【0039】
また、本実施例においては、アスベスト含有建材の表面や内部に防塵用の液体を付着、或いは浸み込ませた上で圧縮減容したものをフレコンバック等に一旦封入し、そのフレコンバックを、例えば、遠隔地のリサイクル工場まで運搬し、このリサイクル工場に設置しているキルン等にフレコンバック内のアスベスト含有建材の減容片を投入して加熱溶融処理するようにしているが、例えば、減容処理装置1とキルンとを並設し、減容処理装置1のスクリューコンベヤ2先端の排出口12をキルンの投入口に直結させ、アルコール系化合物等の防塵用の液体が付着、或いは浸み込んだ状態のアスベスト含有建材の減容片A′をキルンに直接投入して加熱溶融処理するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るアスベスト含有建材の減容処理装置の一実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1…アスベスト含有建材の減容処理装置 2…スクリューコンベヤ
3、7…ケーシング 5、9…スクリュー羽根
6…スクリューコンベヤ(送り込み手段) 10…投入ホッパ
11…絞り部 12…排出口
A…アスベスト含有建材
A′…アスベスト含有建材の減容片
F…フレコンバック L…水(防塵用の液体)
L′…グリセリン(防塵用の液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト含有建材を送り出すスクリューコンベヤを送り出し先側が高位置となるように傾斜配置し、該スクリューコンベヤ基端の投入部にはアスベスト含有建材をスクリューコンベヤ内に送り込む送り込み手段を備える一方、スクリューコンベヤ先端の排出部には先端に向けて徐々に内径が小径となるように形成した減容用の絞り部を接続すると共に、スクリューコンベヤ内部には防塵用の液体を貯留したことを特徴とするアスベスト含有建材の減容処理装置。
【請求項2】
前記防塵用の液体は、水であることを特徴とする請求項1記載のアスベスト含有建材の減容処理装置。
【請求項3】
前記防塵用の液体は、アルコール系化合物または所定濃度に調整したアルコール系化合物の水溶液であることを特徴とする請求項1記載のアスベスト含有建材の減容処理装置。
【請求項4】
前記アルコール系化合物は、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールから選択される1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項3記載のアスベスト含有建材の減容処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−104961(P2008−104961A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290769(P2006−290769)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】