説明

アスベスト関連廃棄物の還元熱処理およびその処理物の有効活用

【目的】廃棄物をエネルギー消費の少ないかつ添加剤の不要な方法により処理し、かつ資源として有効利用する方法の開発を目的としている。

【構成】レンズ系を介して書面2からの反射散乱光を1次元イメージセンサに受光することで主走査を行い、書面2を被覆したハウジング1を手送り移動することで副走査を行う図面イメージの入力手段において、該ハウジング1内の上部に装着され、その受光面が図面と平行になるように設定された1次元イメージセンサと、書面2に垂直でセンサ列方向軸を含む平面に対して傾斜し、かつ該センサ列方向軸と直交した光路面を構成するレンズ系とを備え、該ハウジング1の被覆側端部で主走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスベストあるいはアスベスト含有廃棄物の無害化処理および再資源化に関係する。
【背景技術】
【0002】
従来の無害化処理はアスベストあるいはアスベスト含有物をこれらの溶融温度以上にあげアスベスト構造を破壊,スラグ化する方法がある。たとえば特許文献1では、CaF2源を加えて熔融させている。これら従来法の欠点は溶融させるために1300℃以上の高温で処理する必要があることである。
【0003】
また,得られたスラグはガラス化されており,セメント混和材や路床材として利用可能であるが,それらの箇所には都市ごみスラグや鉄鋼スラグなどより安全なイメージのスラグが優先して使われ,アスベスト溶融スラグは埋め立て処理されているのが現状である。
【0004】
また,特許文献2では600℃で3時間の低温加熱によりアスベストが無害化できることが報告されている。しかしながら,さらなる詳しい調査でJIS A 1481:2006の規定をクリアするためには800℃で3時間以上の加熱を要することが分かっている。800℃で3時間加熱後にはアスベストは完全に無害化されるものの,混合されている金属,プラスチックなどは酸化され,前者は酸化物に後者は主に二酸化炭素と水に分解してしまい、アスベストおよび無機酸化物系の物質が資源として再度使えるのみである。
【特許文献1】特願2006−21913
【非特許文献1】橋本忍、奥田篤史、上林晃、本多沢雄、淡路英夫、福田功一郎「位相差顕微鏡による加熱クリソタイルの評価」、日本セラミックス協会学術論文誌 114、716-718(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術ではアスベストおよびアスベスト含有材料の無害化処理と同時に処理物質を有用な資源として得ることができない。本発明は廃棄物をエネルギー消費の少ないかつ添加剤の不要な方法により処理し、かつ資源として有効利用する方法の開発を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、実質的に酸素を含まない雰囲気において加熱処理を行うことを特徴とする、アスベストおよび/またはアスベスト含有物の無害化処理方法であり、
また、該方法により得られる再資源化材料である。
本発明により無酸素雰囲気における焼成(還元焼成)により,アスベストおよびアスベスト含有材料を無害化かつ有用な材料に転換することが出来る。
【0007】
無酸素雰囲気における焼成(還元焼成)により,アスベストは脱水,脱酸素の両方もしくはどちらか一方の作用により構造が変化し無害化され,金属は酸化することなく金属として存在し,プラスチックなどの有機物は炭化し,アスベストの無害化とともに,有効に再利用可能な物質として取り出すことができる。
【0008】
無酸素状態は,窒素,アルゴン,水素など酸素を含まない純粋なガスの他,これらの混合物であってもかまわない。また,酸素含有ガスを脱酸素処理したガスを用いてもかまわない。加熱手段は無酸素状態で所定温度以上に加熱できるものであればいかなる装置でも良い。加熱にはルツボなど補助具を用いても構わない。加熱温度も,アスベストが無害化処理される温度は,時間は上記条件を限定するものではない。これまでの研究より概ね700℃であれば,3時間以上であることが好ましい。
【0009】
従来の方法では,アスベストは無害化できるものの,溶融するために処理物の殆どがスラグとなり,再利用用途が少ない。また,低温処理でも無酸素状態で処理しない場合には,酸化物以外の物質は構造が変化する,化学的に物質が変化する,具体的には金属は金属酸化物に,有機物は熱分解し,有効に再利用することができない。提案の処理法では,アスベストおよびアスベスト含有材料を無害化したものをすべて有用な材料として取り出すことができる。
【実施例1】
【0010】
被処理物質(アスベストセメント・金属鉄くず・廃プラスチック混合物)を加熱炉内に置き,酸素が混入していないガス雰囲気、即ち炉内および被処理物周辺を無酸素状態として700℃で3時間の加熱処理を行ない,無害化物質を得る。このときの炉内はロータリーポンプ(達成真空度0.2Pa)による排気およびアルゴンガスによるガス置換を3回繰り返すことによりにより市販の高純度アルゴンガスに含まれる酸素量(ppm以下)以下の無酸素状態が達成されている。
【0011】
図1からアスベストの主成分であるクリソタイル結晶がなくなっていることがわかり、本処理で大気中より低い温度でアスベストが無害化していることがわかる。図1より同様に加熱処理後のX線回折スペクトルにおいて、図2に見られるような非晶質炭素のハローピークがみられることから有機物が炭化し非晶質の炭素になったことが分かる。さらに図1より、今回の例では鉄であるが金属が大気雰囲気下で焼成した場合に生成するはずの酸化物ではなく金属として得られることがわかる。
【0012】
図3において、分散染色法による観察からもアスベストの針状結晶がなくなっていることが確認された。
【0013】
また、さらに焼成時間を延ばした場合において、現状との差が顕著に見られず3時間で十分な無害化が行われており適切な処理時間であるといえる。
【実施例2】
【0014】
本発明の方法により処理されたアスベスト系廃棄物のうち無機酸化物成分を原料としてタイル等のセラミックスを作製することができる。図4にその写真を示す。また、カーボン分は水ガラスと混合して固めることにより図5に示すような導電性ブロックを作製できる。
【0015】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で焼成条件などを適宜変更して適用できる。
【0016】
【産業上の利用可能性】
【0017】
現在アスベストの使用は禁止されているが、古い廃ビルなどではいまだに放置されている現状もある。このような場所のアスベストを処理するには現状よりも安価な処理法が必要とされる。本発明によれば低温により処理することが出来るためこのような問題の処理に対して有効である。また本発明は廃材に含まれる有用な金属を取り出し、資源として再利用する方法を与える。
【0018】
処理物の再資源化用途として以下のようなものが期待できる。主成分であるセラミックス原料については実施例にもあるとおり一般的な窯業原料として利用可能である。カーボン成分は導電性、電磁波吸収などの機能を持つ各種コンポジット材料へのフィラーとして活用可能である。
【0019】
また、本発明の特色として金属成分が還元状態で得られることが挙げられる。これは単純に金属資源として再利用可能である。また比表面積の大きい微細な粉末状のまま各種担体に担持させることで化学工業用の触媒として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1における、擬似アスベストセメント廃棄物(アスベストセメント・金属鉄・廃プラスチック混合物)を還元雰囲気中800℃で3時間加熱前後の粉末X線回折スペクトル
【図2】廃プラスチックのみを還元雰囲気中800℃で3時間加熱した場合のX線回折スペクトルにおける非晶質炭素のブロードなピーク
【図3】アスベストセメント廃棄物を還元雰囲気下800℃‐3時間加熱した場合の位相差顕微鏡を用いた分散染色法による写真
【図4】本発明の方法による処理物を原料とした多孔質タイル。
【図5】カーボン分を水ガラスと混合し、固化して作成した導電性ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に酸素を含まない雰囲気において加熱処理を行うことを特徴とする、アスベストおよび/またはアスベスト含有物の無害化処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により得られる再資源化材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−264691(P2008−264691A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111564(P2007−111564)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】