説明

アセチレンのエチレンへの選択的水素化方法

本発明は、アセチレンをエチレンに選択的に水素化する方法であって、i)アセチレンおよび水素を含む供給物を、担持触媒を含有する反応装置中に導入する工程であって、反応装置が、固体希釈剤によりさらに希釈された担持触媒を含有する固定床反応装置である、または反応装置が、担持触媒が反応装置の壁に被覆されているウォッシュコート付き反応装置である工程、およびii)担持触媒の存在下でアセチレンをエチレンに水素化する工程、を有してなる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチレンのエチレンへの選択的水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業規模でのアセチレンの水素化は、一般に、少量(0.5〜0.9モル%)のアセチレンからのエタン流分解により生成されるエチレンの精製のために用いられる。
【0003】
特許文献1には、水を含有するジルコニア−アルミナ触媒の存在下で、水を含有する粗製アセチレン流中のアセチレンの水和および凝縮のためのプロセスが開示されている。
【0004】
特許文献2には、アセチレンおよびモノビニルアセチレンの混合物を、ニッケル系触媒の存在下で特定の圧力下において特定の温度に加熱することによって、スチレンおよびベンゼンを調製するプロセスが開示されている。
【0005】
特許文献3には、生成された炭化リチウムが加水分解されてアセチレンが生成され、その後、環化されてベンゼンが生成される、ベンゼンの製造プロセスが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、液状アセチレン含有流を、芳香族化合物のベンゼン、トルエンおよびキシレンの豊富な生成物に転化するプロセスであって、そのアセチレン含有流が、無機母材に合成された多量のホウケイ酸塩モレキュラーシーブ中に少量の亜鉛イオンが含まれてなる促進触媒組成物と接触せしめられるプロセスが開示されている。
【0007】
特許文献5には、第1の供給ガスからアセチレンを効果的に除去するプロセスであって、アセチレン除去温度で、水素と共にその供給ガスを供給して、貴金属水素化触媒と接触させる工程を含むプロセスが開示されている。
【0008】
この特許文献5には、Al23上に担持されたPdの触媒の存在下で、約2,200ppmのアセチレンからのエチレンの精製のためにエチレン含有混合物中のアセチレンの水素化が詳しく開示されている。
【0009】
特許文献6には、液相中のアセチレン型化合物の選択的水素化プロセスであって、水素およびアセチレンを含有するガス状炭化水素流を、水素化条件下において、第VIII族金属を含む担持触媒と接触させる工程を含むプロセスが開示されている。
【0010】
現在まで、担体上のPd系工業触媒は、低濃度(0.5〜0.9モル%)のアセチレンでしか動作できず、これらの濃度でさえ、その触媒は、グリーンオイルと呼ばれる重炭化水素の形成のために、失活する。したがって、そのようなプロセスに関して、過度な水素化反応が特徴的であり、その結果、エチレンが損なわれてしまう。
【0011】
メタン熱分解工程からの典型的なガス組成物は8〜10質量%のアセチレンを含有しており、既存の触媒系は、コークス分の形成によって触媒が非常に素早く失活されるために、この量のアセチレンの存在下では働くことができない。したがって、従来の接触アセチレン水素化には、以下の欠点がある:
・ アセチレンのエチレンへの水素化は、少量のアセチレンからのエチレンの精製のためだけに用いられる。これらの方法は、エチレンを生成するための多量のアセチレンの水素化には使用できない。
・ アセチレン水素化からのエチレンの気相精製の従来のプロセスでは、これらの触媒の選択性が低いために、エチレンがある程度損なわれる。
・ Pd系触媒上での従来の気相アセチレン水素化の最中に、触媒の表面上でグリーンオイルが形成され、触媒が失活されてしまう。
・ 従来の気相水素化プロセスは、水素のアセチレンに対する比に関して制限されており、この比は、エチレンの選択性を高く維持するために特別に制御しなければならない。
【0012】
従来の気相水素化プロセスでは、反応温度の特別な制御が必要とされ、温度が暴走すると、選択性が急激に減少してしまう。
【0013】
さらに、従来の気相水素化プロセスでは、供給物中の一酸化炭素の量の特別な制御も必要とされる。一酸化炭素を添加しないと、エチレンの選択性が低く、一方で、高濃度の一酸化炭素、例えば、約1,200ppmより多い一酸化炭素の場合には、一酸化炭素の強力な吸着のために、アセチレンの転化がほとんどゼロまで減少してしまう。
【0014】
これらの問題のために、アセチレンからエチレンを生成するために高濃度でのアセチレンの水素化を実現することは非常に難しい。
【0015】
特許文献7には、水素をアセチレン供給物に添加した、ニッケルまたはコバルトを含有するゼオライト触媒の存在下でのアセチレンの接触転化が開示されている。ゼオライト含有触媒の存在下でのアセチレンの転化により、触媒の表面上でアセチレンが非常に速く重合するために、触媒が急激に失活することが観察された。
【0016】
混合物中のアセチレン濃度を増加させると、触媒の失活は非常に急激に進行することが報告された。
【特許文献1】米国特許第4585897号明細書
【特許文献2】米国特許第2723299号明細書
【特許文献3】米国特許第4009219号明細書
【特許文献4】米国特許第4982032号明細書
【特許文献5】米国特許第4227025号明細書
【特許文献6】米国特許第4128595号明細書
【特許文献7】米国特許第5118893号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服した、アセチレンのエチレンへの選択的水素化方法を提供すること、特に、供給物中において増加したアセチレン濃度を用いて、アセチレンの転化率とエチレンの選択性が高い状態で、エチレンを生成できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、アセチレンのエチレンへの選択的水素化方法であって、i)アセチレンおよび水素を含む供給物を、担持触媒を含有する反応装置中に導入する工程であって、反応装置が、固体希釈剤によりさらに希釈された担持触媒を含有する固定床反応装置である、または反応装置が、担持触媒が反応装置の壁に被覆されているウォッシュコート付き反応装置である工程、およびii)担持触媒の存在下でアセチレンをエチレンに水素化する工程、を有してなる方法により達成される。
【0019】
触媒は、元素の周期表の第VIII族から選択されることが好ましく、パラジウムが好ましい。
【0020】
さらに、供給物は、メタンの熱分解から得てもよい。
【0021】
ある実施の形態において、供給物中のアセチレンの量は、供給物の総質量に基づいて、約0.1か約20質量%、好ましくは約8から約20質量%、好ましくは約10から約15質量%である。
【0022】
本発明の方法は、約30から約500℃の温度で行われることが好ましく、約40から約230℃が好ましい。
【0023】
本発明の方法は、約1,000から約2,000,000/時の空間速度で行われることが都合よく、約2,500〜170,000/時が好ましい。
【0024】
担体がSiO2、ZrO2、Al23、TiO2、またはそれらの混合物であることが好ましい。
【0025】
希釈剤がSiO2、ZrO2、Al23、TiO2、またはそれらの混合物であることがより好ましい。
【0026】
供給物中の水素のアセチレンに対するモル比が約5から約10、好ましくは約6から約7であることが最も好ましい。
【0027】
この供給物は、メタン、一酸化炭素、窒素、二酸化炭素、水、または液体炭化水素、もしくはそれらの混合物をさらに含んでもよい。
【0028】
ある実施の形態において、反応装置が石英、セラミックまたは金属製の反応装置である。
【0029】
反応装置の壁が金網または金属メッシュを含むことが好ましい。そのとき、金網またはメッシュに任意の形状を使用することができ、よって、表面積を大きくできる。
【0030】
供給物の流量は、約100から約1,000cm3/分であってよい。
【0031】
担体の触媒に対するモル比は、好ましくは約80から約1,000、より好ましくは約90から約200であり、担持触媒の粒径は約45から約60メッシュであることが好ましい。
【0032】
本発明の方法は、気相または液相中で行われることがさらに好ましく、この方法を、等温または非等温条件下、約1から約25バールの圧力下で行ってよい。
【0033】
担持触媒はさらに、Cu,Co,Cr,K,Pt,Ru,Au,Agまたはそれらの混合物からなる群より選択される元素の内の1つにより改質されていることがより好ましい。
【0034】
ある実施の形態において、担持触媒は、使用前に、1〜48時間、好ましくは2〜20時間に亘り、水素で還元される。
【0035】
さらに、反応装置の内径が約4から約45mm、好ましくは約4から約25mmであってよい。
【0036】
最後に、希釈剤の担持触媒に対する質量比が約200から約1、好ましくは約50から約170であることが好ましい。
【0037】
意外なことに、本発明の方法によれば、アセチレンが、高い転化率および高い選択性で、高濃度のエチレンに転化されることが分かった。詳しくは、約10質量%より高いアセチレン濃度が用いられる。約10質量%の濃度でアセチレンを含有する供給物が、メタンの熱分解から得られるであろう。本発明の方法におけるエチレンの収率は非常に高く、約80%である。
【0038】
従来の固定床触媒では、触媒床の内部の温度の暴走および反応の高い発熱性のために、エチレンの選択性を高く維持するのが難しいことが分かった。したがって、本発明は、反応区域における触媒の特別な装填および効果的な熱伝達法によりエチレンのエタンへの脱水素化をなくす触媒の特定の形状設計を用いる。このことは、本発明の方法の第1の変更例により達成され、ここでは、担持触媒が固定床反応装置内で用いられ、この担持触媒はさらに固体希釈剤により希釈される。さらに、このことは、本発明の方法の第2の変更例により達成され、ここで、反応装置はウォッシュコートされており、担持触媒は反応装置の壁に被覆されている。第1の変更例において、希釈は、長い希釈された触媒床における反応熱の放散に寄与する。ウォッシュコートされた反応装置によるこの手法において、反応装置の壁上の反応中に発せられる熱を除去することは極めて容易である。
【0039】
さらに、意外なことに、アセチレン水素化触媒は、高い選択性のために必要な、担体上の低濃度の触媒を有すべきであることが分かった。本発明の方法に用いられる担持触媒に関して、TiO2上に担持されたパラジウムが最も効果的であることが分かった。
【0040】
そのような希釈触媒系中に分散したパラジウムは、高いエチレン選択性でアセチレンを完全に転化する、安定な触媒を生成することができる。
【0041】
本発明の方法に用いられる担持触媒は、化学蒸着などの担体上の触媒堆積、従来の含浸法による被覆、電気泳動堆積などの電気化学法による堆積といった任意の方法したがって調製してよい。
【0042】
本発明の方法は、連続したエチレン転化反応および選択性を減少させずに、水素のアセチレンに対する比が非常に高い状態で行われる。本発明の方法において、特定の反応性能のために、グリーンオイルおよびオリゴマー生成物が形成されないことが観察される。
【0043】
本発明の方法のさらに別の利点の1つは、比較的広い温度範囲に亘るエチレンの高い選択性および広い範囲のアセチレン転化率および濃度に亘る高い選択性である。本発明の方法では、触媒表面からのエチレンの容易な脱着が用いられると考えられる。
【0044】
さらに、選択性および触媒の安定性を改善するための好ましいパラメータは、水素による触媒の前処理の温度である。触媒は、1〜24時間の前処理期間で、150〜500℃の温度範囲において等温または非等温条件で水素により還元される。
【0045】
さらに、反応区域からの放熱は、本発明の方法によって容易に行うことができる。特に、速い空間速度条件の場合、反応熱が効果的に回収され、触媒床により効果的な放散が行われる。
【0046】
水素のアセチレンに対する比が高いことにより、グリーンオイルおよび重炭化水素が非常にわずかしか形成されなくなると考えられる。
【0047】
本発明の方法の生産性は、2,000,000cm3/g・時にまでさえ上昇させることができ、これは、文献において与えられた生産性と比較して、著しく増えている。
【0048】
水素化は、コークス分を蓄積せずに行われる。
【0049】
一酸化炭素の触媒活性に対する影響は、本発明の方法にとっては著しくない。
【0050】
本発明の方法における接触時間は、これらのプロセスの統合を可能にする短い滞留時間の熱分解プロセスにおけるものと同じになり得、このプロセスは、結果として、メタンのアセチレンへの熱分解と、その後のアセチレンのエチレンへの水素化による、メタンのエチレンへの転化プロセスである。
【0051】
本発明の追加の利点および特徴は、以下の実施例の項目から明らかとなり、それらの実施例は、本発明の範囲を制限するものと考えられない。
【実施例】
【0052】
実験
触媒の調製
TiO2、SiO2などの必要量の担体を、ゲルまたは緻密な懸濁液の形態で調製した。次いで、その担体をPd(NO32またはPdCl2などの有機塩または無機塩、もしくはPd(NO34(OH)2などの組成物から、イオン吸着法によって、パラジウムで活性化させた。担持触媒を120℃で乾燥させ、次いで、40〜60メッシュの粒径に粉砕し、所望であれば、同じサイズの石英粒子で希釈し、最後に、反応前に1時間に亘り水素により還元させた。
【0053】
このように得られた、希釈された担持触媒を固定床反応装置内に用いた。他方で、担持された(および未希釈の)触媒を用いて、以下のようにウォッシュコート反応装置を作製した。
【0054】
例えば、1/4または1/8インチ(約0.635または0.3175cm)の内径を有する反応装置の内壁を、TiO2の懸濁液によって、250℃の高温炉内で反応装置の頂部から底部まで3回洗浄した。懸濁液中のTiO2の濃度は約2質量%であった。乾燥後、次いで、反応装置をPd(NO32の溶液で3回洗浄した。TiO2に対するパラジウムの量は約0.8質量%であった。
【0055】
EM分析によって、内壁表面に対して10%で、壁上にTiの存在が示された。パラジウムは、低濃度であるために検出できなかった。反応装置を、洗浄後、水素化プロセスを開始する前に、1時間に亘り400℃で処理した。
【0056】
反応条件およびプロセスパラメータが以下の実施例に示されている。
【0057】
実施例1
本発明による方法を、10%のC22+20%のCH4+60%のH2と10%のCO2との混合物を用いて、4mmの内径を持つ金属製反応装置内で行った。反応装置に提供した触媒を、2時間に亘り350℃で水素により処理し、次いで、混合物を、230℃の温度で120cm3/分の流量で反応装置に供給した。反応装置は、非等温条件に維持され、反応装置の入口側で230℃、出口側で90℃の温度プロファイルを有した。反応装置内の圧力は大気圧であった。
【0058】
350℃での水素による触媒の還元後、この温度でアセチレンの完全な転化が観察されたが、エチレンへの選択性は非常に高かった。反応装置を60℃まで冷却したら、エチレンへの選択性が増加し、この低温でさえ、アセチレンの完全な転化が観察された。非常に高いアセチレンの転化率で、エチレンへの高い安定な選択性を達成するために、反応装置の温度を150〜198℃の範囲に維持した。アセチレン水素化の反応生成物は、C24、C26およびCH4である。
【0059】
以下の表1は、内径4mmの金属製反応装置内で得られたプロセスパラメータを示している。以下の表に示された全てのデータはモル%で表されている。
【0060】
実施例1において、二酸化炭素の存在下での、触媒支援された内径4mmのウォッシュコートされた金属製反応装置中でのアセチレン転化が示されている;流量:120cm3/分;供給組成物:10%のC22+60%のH2+20%のCH4+10%のCO2;温度:198℃。
【表1】

【0061】
実施例2
実施例2において、異なる温度での120cm3/分の流量による、触媒が提供されたウォッシュコートされた金属製反応装置内のアセチレン転化が示されている;供給組成物:10%のC22+60%のH2+30%のCH4
【表2】

【0062】
実施例3
実施例3において、固定床触媒が提供された石英製反応装置内のアセチレン転化に対する流量および温度の影響が示されている。供給組成物:10%のC22+60%のH2+30%のCH4、反応時間:40時間。
【表3】

【0063】
実施例4
実施例4において、230℃での固定床触媒が提供された石英製反応装置内のアセチレン転化の結果が示されている;流量120cm2/分;供給組成物:10%のC22+60%のH2+30%のCH4;反応時間:60時間。
【表4】

【0064】
比較例5
比較例5において、異なる温度での、2%のPd/H3PO4+HZSM−5触媒の存在下でのアセチレン転化が与えられている。触媒:0.4mg。
【表5】

【0065】
実施例6
実施例6において、60℃での固定床触媒が提供された石英製反応装置内のアセチレン転化の結果が与えられている;流量:500cm3/分;触媒:0.02g;供給組成物:10%のC22+60%のH2+30%のCH4;反応時間:60時間。
【表6】

【0066】
実施例7
実施例7において、199℃での固定床触媒(Agにより改質されたPd含有触媒)が提供された金属製反応装置内のアセチレン転化の結果が与えられている;流量:200cm3/分;供給組成物:9%のC22+61%のH2+30%のCH4;反応時間:60時間。
【表7】

【0067】
実施例8
実施例8において、ガラス円筒(内径3mm、長さ6mm)が充填され、触媒材料が被覆され、380℃で水素により還元された固定床反応装置内のアセチレン転化の結果が与えられている。流量:100cm3/分;供給組成物:11.9%のC22+64.9%のH2+23.2%のN2
【表8】

【0068】
実施例9
65メッシュより大きい0.12gの金網を担体として用い、金網の質量に対して30%の量でTiO2を含浸した。得られた材料を乾燥させた後、それにPd(NO32を含浸させ、乾燥させ、400℃で1時間に亘り水素で還元し、その際に、水素化反応が始まった。混合物の流量は400cm3/分であり、ガス組成物は20.26%のC22、20.27%のN2、59%のH2であった。
【表9】

【0069】
本発明によれば、本発明の方法は、任意の形状の石英またはセラミック粒子、ガラス円筒または金網材料を担持触媒で被覆することによって調製された担持触媒の存在下で行ってもよい。
【0070】
実施例10
実施例10は、TiO2+Pd+Agにより被覆された反応装置の性能を示している;水の存在下でAg/Pd=2.138cm3/分;ガス流量40cm3/分;温度269℃;反応条件での水量0.04ml/分または120cm3/分;ガス組成物:12.5%のC22+27.5%のN2+60%のH2
【表10】

【0071】
先に示した実施例から分かるように、本発明の方法におけるアセチレンの転化は140時間後も安定であり、本発明の方法における触媒は、アセチレンの転化率およびエチレンの選択性が反応の開始から減少する従来技術の方法と比較してずっと安定である。
【0072】
アセチレンの濃度が高い場合、触媒は、全くコークス分が形成されず、活性が減少せずに、14日間に亘り安定である。長期間のスクリーニング中に触媒が失活したいずれの場合も、活性は、その後の空気と水素による処理によって復元できる。触媒の空気による処理中、いくらの一酸化炭素や二酸化炭素の形成も観察されなかった。
【0073】
先の説明または特許請求の範囲に開示された特徴は、別々と任意の組合せの両方で、本発明を様々な形態で実施するための素材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチレンをエチレンに選択的に水素化する方法であって、
i) アセチレンおよび水素を含む供給物を、担持触媒を含有する反応装置中に導入する工程であって、該反応装置が、固体希釈剤によりさらに希釈された前記担持触媒を含有する固定床反応装置であるか、または該反応装置が、前記担持触媒が該反応装置の壁に被覆されているウォッシュコート付き反応装置である工程、および
ii) 前記担持触媒の存在下でアセチレンをエチレンに水素化する工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記触媒が元素の周期表の第VIII族から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記供給物がメタンの熱分解から得られることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記供給物中のアセチレンの量が、該供給物の総質量に基づいて、約0.1から約20質量%であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
約30から約500℃の温度で行われることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
約1,000から約2,000,000/時の空間速度で行われることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記触媒を担持する担体がSiO2、ZrO2、Al23、TiO2、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記希釈剤がSiO2、ZrO2、Al23、TiO2、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記供給物中の水素のアセチレンに対するモル比が約5から約10であることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記供給物が、メタン、一酸化炭素、窒素、二酸化炭素、水、または液体炭化水素、もしくはそれらの混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記反応装置が石英、セラミックまたは金属製の反応装置であることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記反応装置の壁が金網または金属メッシュを含むことを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記供給物の流量が約100から約1,000cm3/分であることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記触媒を担持する担体の該触媒に対するモル比が約80から約1,000であることを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記担持触媒の粒径が約45から約60メッシュであることを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
気相または液相で行われることを特徴とする請求項1から15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
等温または非等温条件下で行われることを特徴とする請求項1から16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
約1から約25バールの圧力で行われることを特徴とする請求項1から17いずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記担持触媒が、Cu,Co,Cr,K,Pt,Ru,Au,Agまたはそれらの混合物からなる群より選択される元素1つ以上によりさらに改質されていることを特徴とする請求項1から18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記担持触媒が、使用前に、1〜48時間に亘り水素で還元されていることを特徴とする請求項1から19いずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記反応装置の内径が約4から約45mmであることを特徴とする請求項1から20いずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記希釈剤の前記担持触媒に対する質量比が約1から約200であることを特徴とする請求項1から21いずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−537944(P2008−537944A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504622(P2008−504622)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際出願番号】PCT/EA2006/000003
【国際公開番号】WO2006/105799
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】