説明

アセチレンの製造装置及び製造方法

【課題】水素化物ガスを吸着剤で効率よく除去して、精製された高純度のアセチレンガスを簡便に得られるアセチレンの製造装置を提供する。
【解決手段】アセチレン発生部2と、アセチレン精製部3と、パージガスラインL1と、排気ラインL2と、を備えたアセチレンの製造装置であって、アセチレン精製部3は、吸着剤7が充填された1以上の吸着筒6と、吸着筒6を加熱又は冷却する温度調節機構9と、精製されたアセチレンを吸着筒6に充填するための供給経路L14と、吸着筒6内の温度を監視する温度監視機構8と、を備えることを特徴とするアセチレンの製造装置1を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチレンの製造装置及び製造方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アセチレンの製造方法としては、水と炭化カルシウムとを反応させてアセチレンを生成するカーバイド法のほか、天然ガスを含む石油系炭化水素を原料とする蓄熱式熱分解法、部分燃焼法、完全燃焼法、電弧法等が知られている。
【0003】
これらの中でも、カーバイド法は、原料となる水及び炭化カルシウムが比較的安価に得られること、反応機構が単純であり、製造装置を安価に建設できること、及び製造条件が他の方法と比較して穏やかであり、高い温度を用いなくても済むこと等の利点がある。したがって、カーバイド法は、古典的な方法ながらもアセチレンの製造方法として広く一般的に行なわれている。
【0004】
ところで、カーバイド法によるアセチレン製造装置には、以下の4つの方式が存在する。
第1の方式である投入式製造装置は、水を入れたタンクの中に炭化カルシウムの塊を投入してアセチレンを発生させる方式である。この方式では、副生する水酸化カルシウムと化学量論的に過剰分の水との混合物が発生して、泥乳状を呈する。
【0005】
第2の方式である乾式製造装置は、投入式製造装置よりも減量である水の投入量を少なくして、粉末状の水酸化カルシウムが排出されるように注水を制御する方式である。
【0006】
第3の方式である浸漬式製造装置は、炭化カルシウムを入れた籠を水に浸す構造をもつものである。
第4の方式である注水式製造装置は、ガスを発生させるときに必要な水を炭化カルシウムに注ぐ構造をもつものである。
【0007】
このように、カーバイド法のいずれの方式も、下記式(1)に示す反応式によって、水(HO)と炭化カルシウム(CaC)とを原料として、アセチレン(C)と副生する水酸化カルシウム(Ca(OH))とを製造する方法である。したがって、炭化カルシウムの全量を効率よく消費しつくすためには、一方の原料である水を化学量論的に過剰に加えることが望ましいとされている。
CaC+2HO→CaC+Ca(OH)+134kJ ・・・(1)
【0008】
大量の水に少量の炭化カルシウムを反応させる場合、反応熱を水に吸収させて急激な発熱を防ぐメリットがあるが、反応残渣として水酸化カルシウムが含まれる大量の水が発生するため、汚泥処理やアルカリ排水の処理が必要となる。
【0009】
一方で、適量の水を炭化カルシウムに反応させる場合では、反応熱により周辺温度が上がりやすく、発生したアセチレンには多量の水蒸気が含まれるとため、水分を除去の処理が必要となる。
【0010】
ところで、アセチレン製造用の炭化カルシウムは比較的純度が高いものの、地殻鉱物由来の不純物が含まれており、加水分解反応によって硫化水素(HS)、ホスフィン(PH)あるいはアンモニア(NH)等の水素化物ガスが発生することが知られている。
【0011】
これらの水素化物ガスに対して、上述した大量の水に炭化カルシウムを反応させアセチレンを大量に発生する場合、アルカリ洗浄やリカゾール(主成分が塩化第二鉄)を用いて、これら水素化物を精製する方法が用いられている。また、小規模の場合、活性炭やゼオライト系の吸着剤で除去する方法が知られている(特許文献1及び2)。
【0012】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の吸着剤を用いて除去する方法では、それらの吸着剤にアセチレン自体が吸着し、飽和するまでアセチレンが排出されてこないことの具体的記載もなく、吸着剤に対してアセチレン自体が大量に吸着する際の吸着熱による温度上昇が発生する問題があった。
また、吸着剤の吸着量が飽和した際、不純物が完全に除去されずに排出される可能性があり、過剰な吸着剤が必要となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−148257号公報
【特許文献2】特公平8−25917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水素化物ガスを吸着剤で効率よく除去して、精製された高純度のアセチレンガスを簡便に得られるアセチレンの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、アセチレン発生部と、アセチレン精製部と、流量制御機構を有するパージガスラインと、真空装置を有する排気ラインと、を備えたアセチレンの製造装置であって、
前記アセチレン精製部は、水素化物ガスを除去するための吸着剤が充填された1以上の吸着筒と、
前記吸着筒を加熱又は冷却する温度調節機構と、
流量制御機構を有し、精製されたアセチレンを前記吸着筒に充填するための供給経路と、
前記吸着筒内の温度を監視する温度監視機構と、を備えることを特徴とするアセチレンの製造装置である。
【0016】
本発明の請求項2に係る発明は、前記アセチレン精製部が、直列に配設された2以上の前記吸着筒と、不純物成分濃度の計測が可能な不純物監視機構と、を備え、
直列に配設された前記吸着筒間に、前記不純物監視機構が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のアセチレンの製造装置である。
【0017】
本発明の請求項3に係る発明は、アセチレン発生部によって生成された粗アセチレンガスをアセチレン精製部によって精製する請求項1又は2に記載のアセチレンの製造装置を用いたアセチレンの製造方法であって、
前記吸着筒から前記吸着剤が吸着した成分を脱着させる第1の過程と、
精製アセチレンを前記吸着筒に充填する第2の過程と、を備え、
前記第2の過程において、前記吸着筒内の温度を監視し、
当該吸着筒内の温度が所定の温度に到達した際に、精製アセチレンの当該吸着筒内への充填量を制御することを特徴とするアセチレンの製造方法である。
【0018】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項2に記載のアセチレンの製造装置を用いたアセチレンの製造方法であって、
直列に配設された吸着筒間の不純物成分濃度を計測し、前記不純物成分が所定の濃度に到達した際に、直列に配設された吸着筒のうち上流側の吸着筒による水素化物ガスの除去を完了し、下流側の吸着筒による水素化物ガスの除去を開始することを特徴とするアセチレンの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のアセチレンの製造装置及び製造方法によれば、アセチレン精製部が1以上の吸着筒と、温度調節機構と、精製されたアセチレンを吸着筒に充填する供給経路と、吸着筒内の温度を監視する温度監視機構と、を備えており、吸着筒から吸着剤が吸着した成分を脱着させた後、精製アセチレンを吸着筒に充填する場合に、吸着筒内の温度を監視し、吸着筒内の温度が所定の温度に到達した際に、精製アセチレンの当該吸着筒内への充填量を制御する構成となっている。このため、再生した吸着筒内に精製アセチレンガスを充填するときの吸着熱暴走を抑制することが可能となり、アセチレンの爆発的な反応を防止することができる。したがって、水素化物ガスを吸着剤で効率よく除去して、精製された高純度のアセチレンガスを簡便に得られるアセチレンの製造装置及び製造方法を提供することができる。
【0020】
また、発明の第2の態様によれば、アセチレン精製部が、直列に配設された2以上の吸着筒と、吸着筒間に配設された不純物監視機構と、を備えており、直列に配設された吸着筒間の不純物成分濃度を計測し、不純物成分が所定の濃度に到達した際に、直列に配設された吸着筒のうち上流側の吸着筒による水素化物ガスの除去を完了し、下流側の吸着筒による水素化物ガスの除去を開始する構成となっている。このように、直列に配設された吸着筒間の上流側の吸着筒の不純物の吸着能力を監視することにより、吸着剤の破過帯の有効範囲を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明を適用した一実施形態であるアセチレンの製造装置及びガスフローを示す模式図である。
【図2】図2は、本発明を適用した一実施形態であるアセチレンの製造装置の他のガスフローを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用したアセチレンの製造装置について、これを用いるアセチレンの製造方法とともに、図面を用いて詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0023】
図1は、本発明を適用した一実施形態であるアセチレンの製造装置及びガスフローを示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態のアセチレンの製造装置(以下、単に「製造装置」という)1は、粗アセチレンガスを生成するアセチレン発生部2と、粗アセチレンガスを精製するアセチレン精製部3と、窒素等の不活性ガスを供給するためのパージガスラインL1と、可燃排気ガスを系外に排出するための排気ラインL2と、を備えて概略構成されている。
【0024】
アセチレン発生部2は、粗アセチレンガスを生成可能なものであれば、特に限定されるものではない。本実施形態のアセチレン発生部2としては、ユースポイントで利用可能な小規模なアセチレン発生装置を用いることが好ましい。また、アセチレン発生部2で生成される粗アセチレンガスは、粗アセチレンガス貯留タンク4内に一時的に貯留される。
【0025】
アセチレン精製部3は、アセチレン発生部2で生成された粗アセチレンガスを一時的に貯留する粗アセチレン貯留タンク4と、水素化物ガスを除去するための吸着剤7が充填された1以上の吸着筒6(6A,6B)と、吸着筒6で精製された精製アセチレンガスを一時的に貯留する精製アセチレンガス貯留タンク11と、吸着筒6を並列あるいは直列に接続するための経路L3〜L24と、上記経路に設けられた開閉バルブV〜V20と、を備えて概略構成されている。さらに、精製アセチレンガス貯留タンク11から精製アセチレンガスを吸着筒6に充填するための供給経路と、吸着筒6A,6B間の経路L24に設けられたガス検知器(不純物監視機構)14と、を備えている。
【0026】
祖アセチレン貯留タンク4から吸着筒6に粗アセチレンガスを供給するための経路L3には、粗アセチレンガスの供給量を制御する流量コントローラー5が設けられている。
【0027】
吸着筒6(6A,6B)は、耐熱性及び耐圧性を備えた筒状の反応容器である。容器の形状については、特に限定されるものではない。吸着筒6の内部には、水素化物ガスを除去するための吸着剤7が充填されている。また、吸着筒6の周壁部には、吸着筒の高さ方向に所定の間隔を空けて複数の温度計(温度監視機構)8が設けられており、吸着筒6の内部の温度を計測可能とされている。さらに、吸着筒6の周囲には、吸着筒6を加熱又は冷却するための加熱・冷却装置(温度調節機構)9が設けられている。更にまた、吸着筒6には、内部の圧力を確認するための圧力計10が設けられている。
【0028】
吸着剤7は、粗アルゴンガス中に含有される硫化水素(HS)、ホスフィン(PH)あるいはアンモニア(NH)等の水素化物ガスを除去可能なものであれば特に限定されるものではない。上記吸着剤7としては、例えば、活性炭やゼオライト等を例示することができる。
【0029】
精製アセチレンガス貯留タンク11から精製アセチレンガスを吸着筒6に充填するための供給経路は、経路と開閉バルブとを適宜選択することによって構築することが可能である。具体的には、例えば、吸着筒6Aへの供給経路は、経路L14,L15,L15,L8を選択し、途中に設けられたV12,V14,Vを開放状態とすることによって構築する。
また、上記供給経路には、精製アセチレンガス貯留タンク11からの精製アセチレンガスの流量を制御するために、流量コントローラー(流量制御機構)12が設けられている。
【0030】
パージガスラインL1は、窒素等の不活性ガスを所定の箇所に供給するために設けられた経路である。パージガスラインL1は、経路L14と経路L15とに分岐されており、吸着筒6を再生する際には、この経路15を経ることによって吸着筒6内に不活性ガスが供給される。また、上述したように、経路15に設けられた流量コントローラー12によって、不活性ガスの流量を制御することが可能である。なお、パージガスラインL1は、アセチレン発生部2とアセチレン精製部3との間で共用としても良い。
【0031】
排気ラインL2は、可燃排気ガスを系外に排出するために設けられた経路である。アセチレン精製部3においては、吸着筒6A,6Bから経路L22,L23に設けられた開閉バルブV19,V20を開放状態とすることによって、それぞれ接続することが可能である。また、排気ラインL2には、真空ポンプ(真空装置)13が設けられており、径内を強制的に排気することが可能とされている。また、排気ラインL2には、真空ポンプ13を迂回する経路L25が接続されており、排気ラインL2内に可燃排気ガスが滞留しないように構成されている。なお、排気ラインL2は、アセチレン発生部2とアセチレン精製部3との間で共用としても良い。
【0032】
<第1の実施形態>
上記製造装置1を用いた第1の実施形態のアセチレンの製造方法(以下、単に「製造方法」と記載する)について説明する。
本実施形態の製造方法は、吸着筒6A及び6Bを並列に接続して、これらを精製工程と、再生工程とを切り替えることによって、全体としてアセチレンガスを連続精製するものである。本実施形態では、図1に示すように、吸着筒6Aにおいて粗アセチレンガスを精製している間、吸着筒6Bを再生する方法を例として説明する。
【0033】
(精製工程)
図1に示すように、先ず、アセチレン精製部3の開閉バルブV,V,V,V,V9,V11を開放し、開閉バルブV,V10,V14,V16,V18,V20を閉止する。これにより、粗アセチレンガス貯留タンク4から流量コントローラー5を介して経路L6側から吸着筒6A内に粗アセチレンガスを供給する。そして、吸着剤7によって水素化物ガスが除去されて精製されたアセチレンガスが経路L8,L10,L12を経て精製アセチレンガス貯留タンク11内に貯留される。なお、精製アセチレンガスは、経路L13に設けられた開閉バルブV11を開放することで、製造装置1からユースポイントに供給することができる。
【0034】
(再生工程)
一方、充填された吸着剤7の吸着量が不純物成分で飽和された吸着筒6Bでは、再生工程を実施する。
本実施形態の再生工程は、吸着筒6Bから吸着剤7が吸着した成分を脱着させる第1の過程と、精製アセチレンを吸着筒6Bに充填する第2の過程と、を備えて概略構成されている。
【0035】
(第1の過程)
第1の過程では、吸着成分が脱着する温度まで加熱し、脱着した成分を押し出し、または引っ張り出すことでこれら成分を除去する。本実施形態の製造方法に用いる製造装置1には、不純物成分が脱着するまで吸着筒6を加熱できる加熱・冷却装置9が設けられている。また、吸着材7から脱着した成分を押し出すためのパージガスラインL1を有している。さらに、パージガスを吸着筒6内に導入した後、引っ張り出すための真空ポンプ13を備えた排気ラインL2を有している。
これらを適宜操作することにより、吸着筒6Bから吸着剤7が吸着した成分を脱着して除去することができる。
【0036】
(第2の過程)
第2の過程では、精製アセチレンを第1の過程後の吸着筒6Bに充填する。具体的には、開閉バルブV,V12,V13を開放し、開閉バルブV,V10,V14,V15,V21を閉止する。これにより、精製アセチレンタンク11に貯留された精製アセチレンガスの一部が、経路L9,L14,L15,L16を経て吸着筒6B内に充填される。
【0037】
ところで、第1の過程後の吸着筒6B内の吸着剤7は、精製能力が高い状態となっている。そして、吸着剤7を構成する活性炭やゼオライト等は、アセチレンガスをより吸着しやすい状態となっている。このような場合に、再生された吸着筒6Bにアセチレンガスを流すと、全量が吸着平衡に達するまで吸着材7にアセチレンガスが吸着されるため、アセチレンの吸着熱によって吸着筒6B内の温度上昇が続くことになる。ここで、アセチレンは爆発性に富むガスであるため、このような吸着筒6B内の温度上昇により、爆発の危険が高まるおそれがあった。
【0038】
そこで、本実施形態の製造方法では、上述した第2の過程において、吸着筒6B内の温度を複数の温度計(温度監視機構)8によって監視し、吸着筒6B内の温度が所定の温度に到達した際に、精製アセチレンの精製アセチレンガス貯留タンク11から吸着筒6B内への充填量を流量計12によって制御している。
【0039】
これにより、吸着熱による吸着筒6B内の過度の温度上昇を抑制することができるため、アセチレンの爆発する危険性を低減することができる。
また、吸着筒6B内の温度上昇を抑制するために、吸着筒6Bを加熱・冷却装置(温度調節機構)9によって冷却することも効果的である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のアセチレンの製造方法によれば、アセチレン精製部3が1以上の吸着筒6(6A,6B)と、加熱・冷却装置9と、精製されたアセチレンを吸着筒6に充填する供給経路(L14,L15等)と、吸着筒6内の温度を監視する複数の温度計8と、を備えており、吸着筒6から吸着剤7が吸着した成分を脱着させた後、精製アセチレンを吸着筒6に充填する場合に、吸着筒6内の温度を監視し、吸着筒6内の温度が所定の温度に到達した際に、精製アセチレンの当該吸着筒6内への充填量を制御する構成となっている。このため、再生した吸着筒6内に精製アセチレンガスを充填するときの吸着熱暴走を抑制することが可能となり、アセチレンの爆発的な反応を防止することができる。したがって、水素化物ガスを吸着剤で効率よく除去して、精製された高純度のアセチレンガスを簡便に得られるアセチレンの製造装置1及び製造方法を提供することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
上記製造装置1を用いた第2の実施形態の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、吸着筒6A及び6Bを直列に接続し、これらの間にガス検知器(不純物監視機構)14を設置して、吸着筒の切り替えサイクルを長くしながらアセチレンガスを精製するものである。本実施形態では、図2に示すように、吸着筒6Bが上流側、吸着筒6Aが下流側となるように直列に接続された場合を例として説明する。
【0042】
図2に示すように、本実施形態の製造方法では、開閉バルブV,V〜V,V11,V15,V18,V22を開放し、それ以外の開閉バルブを閉止する。これにより、粗アセチレンガス貯留タンク4から吸着筒6B内に粗アセチレンガスを供給する。そして吸着剤7によって水素化物ガスが除去されて精製されたアセチレンガスが経路L9,L18,L24,L24に設けられたガス検知器14,L20,L6,吸着筒6A,L8,L10,L12を経て精製アセチレンガス貯留タンク11内に貯留される。
【0043】
ところで、2以上の吸着筒を並列に接続して、2筒を切り替えることでアセチレンガスを連続精製する場合、一方の吸着筒で一定時間粗アセチレンガス精製した後、他方の吸着筒に切り替えて使用する。この方法では、吸着筒の後段において不純物が検知されるとそのまま精製アセチレンに混入されてしまうため、吸着剤のマージンが必要となる。また、破過帯が長い特性の吸着剤を充填した場合に、吸着剤の吸着能力が残っていた場合であっても、残っている吸着能力を破棄しなければならないという問題があった。
【0044】
そこで、本実施形態の製造方法では、直列に配設された吸着筒6A,6B間の不純物成分濃度をガス検知器14によって計測し、不純物成分が所定の濃度に到達した際に、直列に配設された吸着筒のうち上流側の吸着筒6Bによる水素化物ガスの除去を完了し、下流側の吸着筒6Aによる水素化物ガスの除去を開始する。これにより、上流側の吸着筒6B内に充填された吸着剤7の不純物濃度が飽和するまで使用することができるようになる。したがって、吸着剤7の吸着性能を十分に使用して、効率よくアルゴンガスを精製することが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、アセチレン精製部3が、直列に配設された2以上の吸着筒6A,6Bと、吸着筒間の経路L24に配設されたガス検知器14と、を備えており、直列に配設された吸着筒6A,6B間の不純物成分濃度を計測し、不純物成分が所定の濃度に到達した際に、直列に配設された吸着筒のうち上流側の吸着筒6Bによる水素化物ガスの除去を完了し、下流側の吸着筒6Aによる水素化物ガスの除去を開始する構成となっている。このように、直列に配設された吸着筒6A,6B間の上流側の吸着筒6Bの不純物の吸着能力を監視することにより、吸着剤7の破過帯の有効範囲を延ばすことが可能となる。
【0046】
以下、具体例を示す。
(実施例1)
図1に示すガスフロー状態のアセチレンの製造装置1を用いて、吸着筒の再生および精製アセチレンの充填を実施した。再生した活性炭を充填した吸着筒にアセチレンを空筒速度30cm/secで連続的に流した。そして、温度上昇幅が15℃/sec以上になった際に、精製アセチレンガスの充填を停止し、温度上昇幅が−0.1℃/sec以下になった際に、精製アセチレンガスの充填を開始することを繰り返した。その結果、最大上昇温度は90℃程度となった。
【0047】
(実施例2)
図2に示すガスフロー状態のアセチレンの製造装置1を用いて、粗アセチレンガスを空筒速度30cm/secで吸着筒に導入し、吸着筒出口の不純物成分を硫化水素(HS)に固定して、濃度測定を実施した。その結果、吸着筒間の硫化水素を検知するまでに、2筒並列で接続する場合の時間管理よりも2倍の時間分使用することができ、検知してから濃度が飽和するまで、約3時間程度かかった。2筒並列で接続する場合の時間管理方法では、この差分の吸着能力を破棄していたこととなり、効率的に吸着剤が使用できることを確認した。
【符号の説明】
【0048】
1・・・アセチレンの製造装置
2・・・アセチレン発生部
3・・・アセチレン精製部
4・・・粗アセチレンガス貯留タンク
5・・・流量コントローラー
6(6A,6B)・・・吸着筒
7・・・吸着剤
8・・・温度計(温度監視機構)
9・・・加熱・冷却装置(温度調節機構)
10・・・圧力計
11・・・精製アセチレンガス貯留タンク
12・・・流量コントローラー(流量制御機構)
13・・・真空ポンプ(真空装置)
14・・・ガス検知器(不純物監視機構)
L1・・・パージガスライン
L2・・・排気ライン
L3〜L25・・・経路
〜V23・・・開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチレン発生部と、アセチレン精製部と、流量制御機構を有するパージガスラインと、真空装置を有する排気ラインと、を備えたアセチレンの製造装置であって、
前記アセチレン精製部は、水素化物ガスを除去するための吸着剤が充填された1以上の吸着筒と、
前記吸着筒を加熱又は冷却する温度調節機構と、
流量制御機構を有し、精製されたアセチレンを前記吸着筒に充填するための供給経路と、
前記吸着筒内の温度を監視する温度監視機構と、を備えることを特徴とするアセチレンの製造装置。
【請求項2】
前記アセチレン精製部が、直列に配設された2以上の前記吸着筒と、不純物成分濃度の計測が可能な不純物監視機構と、を備え、
直列に配設された前記吸着筒間に、前記不純物監視機構が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のアセチレンの製造装置。
【請求項3】
アセチレン発生部によって生成された粗アセチレンガスをアセチレン精製部によって精製する請求項1又は2に記載のアセチレンの製造装置を用いたアセチレンの製造方法であって、
前記吸着筒から前記吸着剤が吸着した成分を脱着させる第1の過程と、
精製アセチレンを前記吸着筒に充填する第2の過程と、を備え、
前記第2の過程において、前記吸着筒内の温度を監視し、
当該吸着筒内の温度が所定の温度に到達した際に、精製アセチレンの当該吸着筒内への充填量を制御することを特徴とするアセチレンの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のアセチレンの製造装置を用いたアセチレンの製造方法であって、
直列に配設された吸着筒間の不純物成分濃度を計測し、前記不純物成分が所定の濃度に到達した際に、直列に配設された吸着筒のうち上流側の吸着筒による水素化物ガスの除去を完了し、下流側の吸着筒による水素化物ガスの除去を開始することを特徴とするアセチレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201809(P2011−201809A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70304(P2010−70304)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】