説明

アセトアセテートエステルおよび誘導体の酵素合成

1態様において、本発明はアセトアセテートのエステル誘導体を合成するための方法を含む。この方法は、アセトアセテートの第1エステルを供給し、かつアルコール類を供給することを含む。この方法はさらに、アセトアセテートの第1エステルと該アルコールを、非水性溶媒中においてエステル交換してアセトアセテートのエステル誘導体を形成することができる酵素の存在下で混和することを含む。この方法により、アセトアセテートのエステル誘導体が形成され、これは1態様においてはモノアセトアセチンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、摂取した際にアセトアセテートの供給源として有用な可食アセトアセテートエステルおよび誘導体の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 1979年、Birkhahnら((Birkhahn, McMenamy et al. 1979))は、彼らがモノアセトアセチン(monoacetoacetin)(MA)と呼んだアセトアセテートのモノグリセリドの合成を記載した。その目標は、敗血症または外傷を受けた対象のためにカルニチンに依存しない熱源を提供する基質を同定することであった。その著者らは、外傷および敗血症の患者の所見に基づいて、そのような化合物を要望する幾つかの理由を挙げた。
【0003】
[0003] モノアセトアセチンは、幾つかの理由で外傷および敗血症の非経口処置のための有望な化合物として提唱された:たとえば、モノアセトアセチンは水溶性であり乳化の必要がない、代謝されて安全な天然化合物グリセロールとアセトアセテートになる、およびモノアセトアセチンの注入はナトリウム陽イオンを必要としないのでナトリウム負荷を増大させることなく投与できる。ケトン体の直接注入にはナトリウム陽イオンが必要であろう。
【0004】
[0004] BirkhahnらはMAの合成を記載している。MAは、1:1のモル比のグリセロールとジケテンを混和して80℃で反応させることにより合成された。反応物を30分間撹拌し、生成物をクロロホルムに溶解し、水で洗浄し、真空下で溶媒から分離した{Birkhahn, 1978 #412}。
【0005】
[0005] U.S.Patent No.5,420,335、タイトル“水溶性グリセロールビスアセトアセテートをベースとする非経口栄養”は、グリセロールのOH基にエステル化された2個のアセトアセテートを含むグリセロールからなる新規な非経口栄養組成物に関する。この特許は、ジケテンとグリセロールをジメチルアミノピリジン溶液中で混合する方法によるグリセロールビスアセトアセテートの合成方法を教示する。
【0006】
[0006] US patent 5,693,850、タイトル“ヒドロキシ酪酸の栄養性水溶性グリセロールエステル”は、1997年12月2日に交付された。この特許には、非経口栄養として有用な水溶性グリセロールエステルを製造するための方法が記載されている。
【0007】
[0007] U.S.Patent Application Publication No.2006/0280721は、(R)−3−ヒドロキシブチレート誘導体を含有する組成物、ならびにそれらの化合物をADおよび類似の状態に使用することに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】U.S.Patent No.5,420,335
【特許文献2】US patent 5,693,850
【特許文献3】U.S.Patent Application Publication No.2006/0280721
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Birkhahn, McMenamy et al. 1979
【非特許文献2】Birkhahn, 1978 #412
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0008] 先行技術に記載された合成方法は、危険な化合物、たとえば爆発の危険性があるジケテンを用いる必要がある。さらに、多くの有機溶媒は有毒であり、したがって医薬製剤または栄養製品中の有機溶媒の混入は重大な問題になる可能性がある。したがって、医薬製剤または栄養製品は溶媒の混入がないことを確実にすることが重要であり、これはさらに複雑さおよび経費を付加する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0009] 本発明は、アセトアセテートのエステルが本明細書に記載する酵素を用いて安全かつ効果的な方法で合成できるという新規な洞察を提示する。特に、グリセロールのモノアセトアセテートをこの方法で合成することができる。モノアセトアセチンは身体の細胞へのケトン体の利用を増大させる療法用化合物であり、このケトン体の増加はアルツハイマー病およびグルコース利用低下に関連する他の神経変性疾患に有益であろう。したがって、本発明に述べる化合物を用いてアルツハイマー病およびグルコース代謝低下に関連する他の神経変性疾患の治療法および予防法を開発できることが分かる。本発明は、それらの化合物を効果的な新規様式で合成する方法を記載する。
【0012】
[0010] 1態様において、本発明はアセトアセテートのエステル誘導体を合成するための方法を含む。この方法は、式Iを有するアセトアセテートの第1エステル:
【0013】
【化1】

【0014】
[0011] (式中、Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、脂肪族、アリール、またはアラルキル基のいずれかである)を供給し、かつアルコール類を供給することを含む。この方法はさらに、アセトアセテートの第1エステルと該アルコールを、非水性溶媒中においてエステル交換してアセトアセテートのエステル誘導体を形成することができる酵素の存在下で混和することを含む。この方法により、アセトアセテートのエステル誘導体が形成される。
【0015】
[0012] 1態様において、アセトアセテートのエステル誘導体はアセトアセテートのモノグリセリドである。他の態様において、アセトアセテートの第1エステルはメチルアセトアセテートである。他の態様において、酵素はリパーゼまたはエステラーゼである。
【0016】
[0013] 1態様において、酵素は、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼ、アスペルギルス属(Aspergillus)リパーゼ、テルモアネロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)エステラーゼ、およびEsterase E020からなる群から選択される。
【0017】
[0014] 1態様において、非水性溶媒はアセトニトリル、MTBE、THF、アセトン、およびトルエンからなる群から選択される。1態様において、非水性溶媒はアセトニトリルである。
【0018】
[0015] 1態様において、本発明方法はさらに、アセトアセテートのエステル誘導体の精製を含む。
【0019】
[0016] 1態様において、アルコール類はポリオールである。他の態様において、ポリオールはグリセロールまたはグルコースである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】[0017] 図1は、生成物MAの形成を示す、種々の酵素の24時間インキュベーションの薄層クロマトグラフを示す。
【図2】[0018] 図2は、生成物MAの形成を示す、種々の酵素の96時間インキュベーションの薄層クロマトグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0019] 本発明は、アセトアセテートのエステルを本明細書に記載する酵素によって安全かつ効果的に合成できる、きわめて簡便な合成を提供する。特に、グリセロールのモノアセトアセテート(本明細書中でモノアセトアセチンとも記載する)をこの方法により合成できる。本発明は、アセトアセテート誘導体の合成方法に関する。この方法は特にアセトアセテートのモノグリセリドの合成に適するが、いかなるアセトアセテートエステル誘導体の合成にも使用できる。この方法により合成した化合物は、ケトン体の増加を目的とする多様な療法組成物中に使用できる。そのような状態の例には、敗血症、外傷、神経変性障害、たとえばパーキンソン病およびアルツハイマー病、ならびに当技術分野で知られている他の多数の疾患が含まれる。
【0022】
[0020] 本発明は、いずれかのアセトアセテート誘導体、好ましくはモノアセトアセチンの簡単な合成方法であって、これまでに記載された合成方法に伴う欠点が避けられる方法に関する。本発明方法により製造される好ましいアセトアセテート誘導体はモノアセトアセチンである。ただし、本発明方法はいかなるアセトアセテート誘導体にも、特に療法用組成物のための栄養性化合物の製造にも適用できる。
【0023】
[0021] 1態様において、これらの化合物は、血清ケトン体を増加させることが望ましい多様な障害を治療または予防するために用いられる。好ましくは、障害はアルツハイマー病またはパーキンソン病である。
【0024】
[0022] 本発明はアセトアセテートのエステルおよび/またはエステル誘導体を合成するための方法を含み、この方法は式Iを有するアセトアセテートの第1エステル:
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、脂肪族、アリール、またはアラルキル基のいずれかである)を供給し;アルコール類を供給し;そしてアセトアセテートの第1エステルと該アルコールを、非水性溶媒中においてエステル交換してアセトアセテートのエステル誘導体を形成することができる酵素の存在下で混和することを含み、その際、エステル交換が起きてアセトアセテートのエステルおよび/またはエステル誘導体が生成する。1態様において、エステル交換できる酵素は、エステル交換して目的生成物、たとえばアセトアセテートのエステル誘導体にすることができる。他の態様において、この方法はアセトアセテートの第1エステルと該アルコールを、非水性溶媒中においてエステル交換してアセトアセテートのエステル誘導体を形成することができる酵素の存在下で混和することを含む。この方法により、アセトアセテートのエステル誘導体が形成される。
【0027】
[0023] 1態様において、本発明は、アセトアセテートのエステルとアルコール類を水性環境で混和することから出発する、いずれかのケトン体誘導体の一般的な合成方法を提供し、この方法は下記の工程を含む:a)アセトアセテートの第1エステルおよびモノ−またはポリアルコールを無水溶液に添加する;b)リパーゼまたはエステラーゼを添加する;ならびにc)反応生成物を精製する。モノアセトアセチンを製造するためには、メチルアセトアセテート、グリセロール、および好ましくはカンジダ・アンタルクチカリパーゼから出発することが好ましい。1態様において、反応工程b)は有機溶媒、たとえばアセトニトリルの存在下で行われる。
【0028】
[0024] “誘導体”は、親化合物から誘導されるかまたは理論的に誘導できる化合物または化合物の一部を表わす。
【0029】
[0025] 用語“ヒドロキシル基”は、式−OHにより表わされる。
【0030】
[0026] 用語“アルコキシ基”は、式−ORにより表わされ、ここでRはアルキル基であってもよく、これには低級アルキル基が含まれ、これらは場合により、後記に定義するアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基で置換されている。
【0031】
[0027] 用語“エステル”は、式−OC(O)Rにより表わされ、ここでRは後記に定義するアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基であってもよい。“エステル交換”は、エステルとアルコール類が反応して新たなエステル化合物を形成することを表わす。1態様において、アセトアセテートの第1エステル(たとえばメチルアセトアセテート)は、目的とする新たなエステル(たとえばモノアセトアセチン)の形成を促進するように選択される。
【0032】
[0028] 用語アルコールは、広範なクラスのヒドロキシル含有有機化合物を表わし、下記のものを含む:1個のヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式および多環式の一価アルコール;2個のヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式および多環式の二価アルコール:グリコール類およびジオール類を含む;3個のヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式および多環式の三価アルコール:グリセロールおよび誘導体を含む;3個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式および多環式の多価アルコール:糖類、多糖類および糖アルコール類を含む。
【0033】
[0029] 1態様において、アルコール類はポリオールである。既知のポリオールは下記を含む化合物である:2〜20個の炭素原子をもつ二価アルコール(脂肪族ジオール、たとえばアルキレングリコール、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびネオペンチルグリコール;ならびに脂環式ジオール、たとえばシクロアルキレングリコール、たとえばシクロヘキサンジオールおよびシクロヘキサンジメタノール);3〜20個の炭素原子をもつ三価アルコール(脂肪族トリオール、たとえばアルカントリオール、たとえばグリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、およびヘキサントリオール、ならびにトリエタノールアミン);4〜8個のヒドロキシル基および5〜20個の炭素原子をもつ多価アルコール(脂肪族ポリオール、たとえばアルカンポリオール、およびそれらの分子内または分子間脱水生成物、たとえばペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセロール、およびジペンタエリトリトール;ならびに糖類およびそれらの誘導体、たとえばショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、およびメチルグルコシド)。
【0034】
[0030] 本発明の目的に有用なポリアルコールには、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、よりさらに好ましくは3から10個まで、最も好ましくは3から6個まで、特に好ましくは3から4個までのヒドロキシル(−OH)官能基をもつ化合物が含まれる。ポリアルコールは、脂肪族、脂環式、または芳香族、好ましくは脂肪族または脂環式、最も好ましくは直鎖または分枝鎖の脂肪族であってもよく、場合により官能基で置換されている。ポリアルコールは一般に2〜50個、好ましくは3〜40個の炭素原子をもつ。1態様において、多価アルコールはより高い密度のアセトアセテート均等物を供給できるが、多価アルコールは1個のヒドロキシル基においてのみ誘導体化されるであろう;ただし、1個より多いヒドロキシル基における誘導体化も許容できる。
【0035】
[0031] 1態様において、ポリアルコールは可食ポリオール、たとえばグリセロールまたは置換グリセロールおよび糖類である。可食ポリオールは、ある態様において1種類以上のポリオール、たとえば下記のものからなる群から選択される炭水化物アルコールである:キシリトール、イジトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、イノシトール、エリトリトール、ラクチトール、グリセリン、USPグリセリン、食品グレードのグリセリン、リビトール、トレイトール、およびプロピレングリコール。選択したポリオール(単数または複数)は同等に作用し、ポリオール、ポリオール組合わせ、またはポリオール溶液に応じて、用いる濃度の変更ならびに加熱および混合の時間の変更により制限されるにすぎない。
【0036】
[0032] 他の態様において、アルコール類は糖類または多糖類である。糖類または多糖類は当技術分野で既知のいずれであってもよく、例示リストには単糖類、たとえばフルクトースおよびグルコース;二糖類、たとえばショ糖、マルトース、セロビオース、および乳糖、またはより複雑な糖類、たとえばガラクトース、ソルボース、キシロース、アリノース、およびマンノースが含まれる。さらに他の炭水化物には、アルトロース、アラビノース、デキストロース、エリスロース、グルコース、イドース、リキソース、マンノース、リボース、タロース、トレオースなどが含まれる。
【0037】
[0033] 用語“アルキル基”は、炭素原子1〜24個の分枝鎖または非分枝鎖飽和炭化水素基と定義され、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。“低級アルキル基”は、1〜10個の炭素原子をもつ飽和分枝鎖または非分枝鎖炭化水素である。1態様において、アルキル基は1〜6個の炭素原子をもつ。1態様において、アルキル基はメチルである。
【0038】
[0034] 用語“アルケニル基”は、2〜24個の炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む構造式をもつ炭化水素基と定義される。1態様において、アルケニル基は1〜6個の炭素原子をもつ。
【0039】
[0035] 用語“アルキニル基”は、2〜24個の炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式をもつ炭化水素基と定義される。1態様において、アルキニル基は1〜6個の炭素原子をもつ。
【0040】
[0036] 用語“ハロゲン化アルキル基”は、前記に定義したアルキル基において、これらの基上の1個以上の水素原子がハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されたものと定義される。
【0041】
[0037] 用語“シクロアルキル基”は、少なくとも3個の炭素原子から構成される非芳香族炭素環と定義される。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。用語“ヘテロシクロアルキル基”は、上記のシクロアルキル基において、環の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子、たとえば窒素、酸素、硫黄またはリン(これらに限定されない)で置換されたものである。1態様において、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基は3〜10個の炭素原子、他の態様においては5〜7個の炭素原子をもつ。
【0042】
[0038] 用語“脂肪族基”は、前記に定義したアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキルおよびシクロアルキル基を含むものと定義される。“低級脂肪族基”は、1から10個までの炭素原子を含む脂肪族基である。1態様において、脂肪族基は1〜6個の炭素原子をもつ。
【0043】
[0039] 用語“アリール基”は、炭素をベースとするいずれかの芳香族基と定義され、ベンゼン、ナフタレンなどが含まれるが、これらに限定されない。用語“芳香族”には“ヘテロアリール基”も含まれ、これは芳香族基の環内に取込まれた少なくとも1個のヘテロ原子をもつ芳香族基と定義される。ヘテロ原子の例には窒素、酸素、硫黄およびリンが含まれるが、これらに限定されない。アリール基は1個以上の基で置換されていてもよく、これにはアルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、またはアルコキシが含まれるが、これらに限定されない;あるいは、アリール基は置換されていなくてもよい。1態様において、アリール基は3〜10個の炭素原子をもつ;他の態様においては5〜7個の炭素原子をもつ。
【0044】
[0040] 用語“アラルキル”は、アリール基に結合した前記に定義したアルキル基をもつアリール基と定義される。アラルキル基の一例はベンジル基である。
【0045】
[0041] “エステル化”は、アルコール類とカルボン酸またはカルボン酸誘導体が反応してエステルを生成することを表わす。“エステル交換”は、エステルとアルコール類が反応して新たなエステル化合物を形成することを表わす。
【0046】
[0042] 疾患または障害の“処置”は、疾患もしくは病的状態の徴候もしくは症状を軽減するか、または疾患が発症、進行もしくは完全に発達するのを阻止する、療法介入を表わす。
【0047】
[0043] 用語“3−ヒドロキシブチレート”は用語“3−ヒドロキシ酪酸”と互換性をもって用いられる。用語“β−ヒドロキシブチレート”または“β−ヒドロキシ酪酸”もこの化合物を表わすために使用できる。
【0048】
[0044] 1態様において、エステル交換後に形成されたアセトアセテートエステル、すなわちアセトアセテートのエステル誘導体は、アセトアセテートのモノグリセリドである。この態様において、第1または出発アセトアセテートエステルはメチルアセトアセテートである。他の多数のエステル誘導体をこの方法で形成することができ、これにはたとえばポリオール、糖類、および糖アルコールのアセトアセテートエステル、たとえばグリセロール、グルコース、ショ糖、ガラクトース、マンニトール、および1,3−ブタンジオールのアセトアセテートエステルが含まれる。前記に述べたように、ある態様には出発アルコール類の1個のヒドロキシルにおける、ある態様には2個のヒドロキシルにおける、ある態様には3個のヒドロキシルにおける、ある態様には4個のヒドロキシルにおける、ある態様には5個のヒドロキシルにおける、ある態様には6個のヒドロキシルにおける、ある態様には7個またはそれより多くのヒドロキシルにおけるエステル化が含まれる。開示する例示化合物を下記の表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
[0046] 1態様において、エステル交換して目的とするアセトアセテートのエステル誘導体、たとえばグリセロールのモノアセトアセテートを形成することができる酵素の存在下で、混和を行なう。多数の種のいずれか、特に細菌および酵母の種に由来する多数の酵素、たとえばリパーゼまたはエステラーゼがエステル交換を行なうことができる。リパーゼおよびエステラーゼはエステル結合の加水分解を触媒してアルコール類とカルボン酸を生成し、異なる基質特異性、R基の長さ、または鎖長嗜好性、および独自の阻害因子をもつ。水性溶媒系中で、エステラーゼおよびリパーゼはそれらの自然な反応、たとえばエステル結合の加水分解を行なう。水を排除した有機溶媒中では、エステラーゼおよびリパーゼの反応は逆行する場合があり、エステル結合を形成するエステル化またはアシル化反応、すなわちエステル交換を触媒することが知られている。
【0051】
[0047] そのような酵素は多数の業者のいずれかから入手でき、あるいは当技術分野で既知の技術を用いて独自に精製することができる。候補酵素、たとえばリパーゼまたはエステラーゼがエステル交換してアセトアセテートのエステル誘導体を形成できるかどうかを判定するために、候補酵素を適切な条件下で(たとえば目的とする反応条件下で反応体を用いて)試験して、目的とするエステル交換された生成物が形成されるかどうかを判定することができる。
【0052】
[0048] このエステル交換工程により、第1エステル化合物、たとえば殊に式Iの出発エステルと、アルコール類のヒドロキシル基との間にエステル結合が得られる。このエステル結合反応を触媒することができる酵素はいずれも使用するのに適切である。この反応には、不活性有機担体上に固定化された酵素を用いるのが有利であり、これにより酵素を反応媒質から容易に分離して次いでリサイクルすることができる。好ましくは、酵素をマクロ多孔質樹脂に吸着させる。
【0053】
[0049] 意外にも、リパーゼ活性をもつことが知られている多数の酵素が本発明に有用なエステル交換を達成できなかった。エステル交換を達成できなかったリパーゼには、ムコール・ミエイ(Mucor miehi)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレスセンス(Pseudomonoas fluorescens)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、カンジダ・シリンドラシエ(Candida cylindracea)、ブタ膵臓、およびリゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)に由来するリパーゼが含まれる。意外にも、エステラーゼ活性をもつことが知られている多数の酵素が本発明に有用なエステル交換を達成できなかった。エステル交換を達成できなかったエステラーゼには、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・テルモグルコシダシウス(Bacillus thermoglucosidasius)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、ムコール・ミエイ、ウマ肝臓、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisea)、ブタ肝臓に由来するエステラーゼ、およびTHERMOCAT Esterase類(E0l、E03、E04、E06、E08、E09、E029、Nl、N6、N7、N8、N9、Nl0およびE017bとしても知られる)が含まれる。THERMOCATファミリーのエステラーゼは、たとえばU.S.Patent No.6,218,167、U.S.Patent No.5,969,121、およびU.S.Patent No.6,218,163において同定され、それらのそれぞれを全体として本明細書に援用する。
【0054】
[0050] 意外にも、試験した酵素のうち数種類のみが必要なエステル交換を達成できた;すなわち、アセトアセテートのエステル誘導体を形成することができた。1態様において、酵素は下記の酵素のいずれかであってよい:カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼB、アスペルギルス属(Aspergillus)リパーゼ、テルモアネロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)エステラーゼ、およびTHERMOCAT Esterase 20(E020)。上記酵素のいずれかの組合わせも含まれる。いかなる供給源からのカンジダ・アンタルクチカのリパーゼBも使用に適切である;1態様において、供給源はSigma− Aldrich、カンジダ・アンタルクチカのリパーゼB(アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)において発現)を不活性担体上に固定化したもの、またはNovozymes S.A.社が商品名Novozym(登録商標)435で市販しているものである。この酵素は熱安定性であり、40〜60℃で最適活性を示す。それはグラム当たり10プロピルラウレート単位のエステル化活性をもつと説明されている。アスペルギルス属リパーゼは、たとえばSigma−Aldrichから入手でき、約0.5単位/mgで供給され、1UがpH7.4および40℃で毎分1μモルの酢酸を加水分解する酵素量に相当する活性をもつ(トリアセチン、Fluka No.90240を基質として)。いかなる供給源からのテルモアネロビウム・ブロッキイ由来のエステラーゼも使用するのに適切である;1態様において、供給源はSigma−Aldrich、約2U/gであり、その際、1単位は25℃で1μモルの吉草酸エチルを加水分解する量の酵素であると記載されている。THERMOCAT 20は、U.S.Patent No.6,218,167、U.S.Patent No.5,969,121、およびU.S.Patent No.6,218,163において同定されたエステラーゼのファミリーの一部であり、U.S.Patent No.6,218,167においてエステラーゼE020、SEQ ID NO 29および30によっても同定される。
【0055】
[0051] 酵素の適量は当業者が決定できる。1態様において、2gのメチルアセトアセテートおよび4gのグリセロール当たり、約1ミリグラム(mg)の各酵素を使用する。
【0056】
[0052] 本発明は、リパーゼおよび/またはエステラーゼ触媒作用によるエステル交換を利用する。そのようなエステル交換は、当技術分野で既知のいずれかの条件下で実施できる。出発物質が酵素触媒作用により加水分解されてアセトアセテートを生成するのを避ける条件を選択する。1態様において、この反応は少なくとも1種類の非水性溶媒の存在下で実施される。他の態様において、この反応は無水条件下で実施される。
【0057】
[0053] 式Iのエステルとアルコール類の混合は、多数の化学量論的比率で行なうことができる。広範な化学量論的量が機能することに注目する;たとえば式Iのエステル:アルコールの単位について約1:0.1ないし式Iのエステル:アルコールの単位について約1:50。特定の反応についての厳密な化学量論的量は当業者がルーティンな実験活動に基づいて選択できる。1態様において、モノアセトアセチンの合成のためにアルコール3単位に対して式Iのエステル1当量の比率を採用できる。
【0058】
[0054] この反応は使用する酵素に最適な温度を含む温度で実施できるが、エステル交換反応が優先しかつより多量の生成物を生成する温度が好ましい点を留意して、酵素が作動するいかなる温度でも実施できる。酵素の使用量も、反応が適切な速度で進行するのに十分な酵素を供給するという方針に従って当業者が決定できる。
【0059】
[0055] この反応は、大気圧下で、または減圧もしくは加圧下で実施できる。
【0060】
[0056] 生成物の最大収率に達するために、反応を少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、少なくとも96時間、さらにそれより長く、たとえば最高144時間、実施する。
【0061】
[0057] 1態様においては、反応を少なくとも1種類の有機溶媒の存在下で実施する。1態様においては、物質移動の制限を避けるために、出発物質を溶解しうる溶媒が望ましい。たとえば、モノアセトアセチンを得るためには、その溶媒にグリセロール、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、およびグルコースが溶解することが望ましい。この溶媒はまた、反応に際し競合することによりアルコール類を脱離させる可能性のある求核性物質を含むべきではない。限定ではないが、アセトニトリル、MTBE、THF、アセトン、およびトルエンなど一連の溶媒が本発明のある態様に適切なことが本発明者らにより見いだされた。たとえば、グリセロールはTHF(>20g/L)およびアセトンまたはアセトニトリル(20g/Lより多量ではない)に可溶性であるが、MTBEにはある程度可溶性であるにすぎず(<10g/L)、トルエンには全く可溶性でないことが見いだされた。グルコースは、アセトニトリル、アセトン、MTBEまたはTHFには有意には可溶性でなかったが、トルエンには部分的に可溶性であった(<5g/L)。1態様において、非水性溶媒はアセトニトリルである。
【0062】
[0058] 収率は約1%〜約100%のいずれかの範囲であろう。好ましくは、収率は約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、および約99%の範囲である。
【0063】
[0059] 生成物、すなわちアセト酢酸のエステル誘導体を、いずれか既知の方法により反応体から精製することができる。1態様において、反応終了時に、場合により反応混合物をケイソウ土、たとえばCelite(登録商標)またはそれと同等のものなどにより濾過することができる。場合により、残留物を生成物が可溶性ではないかまたは貧溶性であるにすぎない溶媒、たとえばジクロロメタン(300mL)で洗浄することができる。濾液を、場合により生成物と反応体の相対溶解度に応じて水相および/または有機相で抽出することができる。1態様において、濾液を濃縮し、次いで水性媒質、たとえばブラインに再溶解することができる。この水相を揮発性溶媒、たとえば酢酸エチルで抽出することができる。この有機相を場合により乾燥させ(たとえば硫酸ナトリウムで)、濾過および/または濃縮することができる。
【0064】
[0060] 本発明による方法は、アセトアセテートエステルを製造するための新たな機会を提供する。具体的な用途は、疾患の処置のための栄養化合物の製造である。ただし、本発明方法は栄養化合物の製造に限定されず、他の目的にも使用できる。
【0065】
[0061] 本発明を多数の本発明の実施例により以下に説明する。本発明は特許請求の範囲にさらに詳細に規定される。
【実施例】
【0066】
[0062] 以下に本発明を実施例により説明する;それらは説明のために提示するにすぎで、したがって特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定すると解すべきではない。下記および他のいずれかの箇所に示すすべての参考文献を本明細書に援用する。
【0067】
実施例1
[0063] 酵素をスクリーニングするために、グリセロールアセトアセテートと出発物質であるグリセロールおよびエチルまたはメチルアセトアセテートとを分離するのに適切なTLC条件を用いた。シリカを100%イソプロピルアルコール中で展開し、KMnOで染色し、および/またはUVにより分析した。移動度は下記のとおりであった:
メチルアセトアセテート(MAA) Rf 約0.75
エチルアセトアセテート(EAA) Rf 約0.75
グリセロール(G) Rf 約0.5
グリセロールアセトアセテート(GAA) Rf 約0.6。
【0068】
実施例2
[0064] リパーゼおよびエステラーゼ触媒作用によるエステル交換を試験するために、無水条件を採用して、エステル出発物質が酵素触媒作用により加水分解されてアセトアセテートを生成するのを避けた。反応を実施するのに用いる有機溶媒の評価に際して、グリセロール、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、およびグルコースを溶解する溶媒の使用により、物質移動制限を避けることが重要である。この溶媒はまた、反応に際し競合することによりアルコール類を脱離させる可能性のある求核性物質を含むべきではない。アセトニトリル、MTBE、THF、アセトン、およびトルエンが基質を溶解する能力を試験した。アセトアセテートエステルは試験したすべての溶媒にきわめて可溶性であった。グリセロールはTHF(>20g/L)およびアセトンもしくはアセトニトリル(20g/Lより多量ではない)に可溶性であったが、MTBEにはある程度可溶性であるにすぎず(<10g/L)、トルエンには全く可溶性でなかった。グルコースは、アセトニトリル、アセトン、MTBEまたはTHFには有意には可溶性でなかっが、トルエンには部分的に可溶性であった(<5g/L)。
【0069】
[0065] 有機溶媒中における酵素活性:
[0066] 溶解度データに基づいて、アセトニトリルおよびTHFを酵素活性分析のために選択した。どの溶媒をスクリーニングに使用するかを判定するために、エステラーゼおよびリパーゼの部分ライブラリー(表1)の酵素活性を、比色測定試薬4−ニトロフェニルブチレートを用いて試験した。1%の4−ニトロフェニルブチレート溶液をTHFおよびアセトニトリル(加水分解を促進するために、それぞれ1%の水を含有する)中に調製し、50μLアリコートを室温で1〜2mgのランダムに選択した10種類の酵素と共にインキュベートした。2時間後、50μLのpH9.0 Trisを反応に添加し、放出されたパラ−ニトロフェノールのため発色した黄色を比較した。全体的な傾向はすべての酵素がこの反応条件下で加水分解を示したことであったが、アセトニトリル中ではより強い黄色によって視覚化されるように、反応が一般にさらに大幅に進行した。
【0070】
実施例3 グリセロール酵素スクリーニング
[0067] モノアセトアセチンの合成にどの酵素が有用であるかを判定するために、グリセロール4gをメチルアセトアセテート2gと混合し、150mLのアセトニトリルに50mLのMTBEを添加したものに溶解し、次いで減圧下で蒸発させてアセトニトリルおよびグリセロール中の残留水を除去した。混合物の最終体積は100mLであった。水を除去した後、少量(約0.5g)のグリセロールが溶液から分離したが、大部分は溶解したままであった。約1mgの各酵素を0.5mLポリプロピレン製試験管に入れ、100μLの調製基質ミックスを各試験管に添加し、ボルテックス撹拌し、次いで37℃でロータリーシェーカーにより200rpmにおいてインキュベートした。
【0071】
[0068] 24時間目に試料をTLCにより分析した。図1を参照。陽性対照を黒丸でマークし、黄色の矢印は陽性ヒットを指し示す。酵素#12{カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼ)は、標準品グリセロールアセトアセテートと同じRfをもつ有意量の生成物を産生した。図1に示す他の被験酵素であってエステル交換を達成できなかったものには、下記が含まれる:ムコール・ミエイ(Mucor miehi)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレスセンス(Pseudomonoas fluorescens)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、カンジダ・シリンドラシエ(Candida cylindracea)、ブタ膵臓、およびリゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)に由来するリパーゼ、ならびにバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・テルモグルコシダシウス(Bacillus thermoglucosidasius)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、ムコール・ミエイ、ウマ肝臓、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisea)、ブタ肝臓に由来するエステラーゼ、およびTHERMOCAT Esterase類。
【0072】
[0069] 96時間のインキュベーション後(図2)、数種類の他の酵素がGAAと一致するRfをもつ検出可能な量の生成物を産生することができた。これらの酵素は、テルモアネロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)エステラーゼ、アスペルギルス属(Aspergillus)リパーゼ、およびThermoCat Esterase #20であり、それぞれ列11、13および27にみられる。
【0073】
実施例4 グルコース酵素スクリーニング
[0070] 無水グルコース8mgを0.5mL試験管(40)に1〜2mgの各酵素と共に入れる。33mLの無水アセトニトリルに0.825ml(0.2mol)のメチルアセトアセテートを添加し、これから100μLを、酵素およびグルコースを入れた各試験管に添加する。試験管を次いで37℃および200rpmでインキュベートする。試料をTLCにより24、72および144時間目に分析する。1種類以上の酵素がグルコースアセトアセテートエステルを産生することが見いだされ、これには(カンジダ・アンタルクチカリパーゼ)、テルモアネロビウム・ブロッキイエステラーゼ、アスペルギルス属リパーゼ、およびThermoCat Esterase #20が含まれる。
【0074】
実施例5 モノアセトアセチンの合成
[0071] モノアセトアセチンの合成を、下記に概説する無水環境でグリセロール、メチルアセトアセテートおよびリパーゼを混和する一般的なスキームにより行なった。
【0075】
【表2】

【0076】
[0072] Sigma− Aldrichから入手したグリセロール(10.05g,109.2mmol)を250mL丸底フラスコ中へ秤量し、アセトニトリル(2×50mL)と共蒸発させる。メチルアセトアセテート(4.30g,37.03mmol)をSigma−Aldrichから入手した。カンジダ・アンタルクチカのリパーゼB(2.00g)(Sigma−Aldrichから入手)および撹拌バーをフラスコに添加し、これを隔膜でシールし、アルゴンでフラッシする。フラスコにアセトニトリル(100mL)を装入し、アルゴン下に40℃で5日間、撹拌する。反応混合物をCelite(登録商標)により濾過し、残留物をジクロロメタン(300mL)で洗浄する。濾液を濃縮し、ブライン(100mL)に再溶解する。水相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出する。有機相を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過および濃縮して2.30g(35.3%)の透明な無色の油を得た。TLCにより単一生成物の存在が明らかである(TLC,ヘキサン中の40%アセトン,PMA視覚化)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアセテートのエステル誘導体を合成するための方法であって、式Iを有するアセトアセテートの第1エステル:
【化1】

(式中、Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、脂肪族、アリール、またはアラルキル基のいずれかである)を供給し;
アルコール類を供給し;そして
アセトアセテートの第1エステルと該アルコールを、非水性溶媒中においてエステル交換してアセトアセテートのエステル誘導体を形成することができる酵素の存在下で混和し、これによりアセトアセテートのエステル誘導体を形成することを含む方法。
【請求項2】
アセトアセテートのエステル誘導体がアセトアセテートのモノグリセリドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アセトアセテートの第1エステルがメチルアセトアセテートである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非水性溶媒中においてエステル交換してアセトアセテートのエステル誘導体を形成することができる酵素がリパーゼまたはエステラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酵素が、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼ、アスペルギルス属(Aspergillus)リパーゼ、テルモアネロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)エステラーゼ、およびエステラーゼ(Esterase)E020からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
非水性溶媒が、アセトニトリル、MTBE、THF、アセトン、およびトルエンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
非水性溶媒がアセトニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに、アセトアセテートのエステル誘導体の精製を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アルコールがポリオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリオールがグリセロールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルコールがグルコースである、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−526793(P2011−526793A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516888(P2011−516888)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049605
【国際公開番号】WO2010/003110
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(502398171)アクセラ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】