説明

アゼチジノンの合成プロセス

【課題】式Iを有する低コレステロール血症剤アゼチジノンを生成する簡単で高収率の改良プロセスを提供すること。
【解決手段】本発明は、低コレステロール血症剤化合物(I)を調製するプロセスを提供し、このプロセスは、以下の工程を包含する:(a)p−フルオロベンゾイル酪酸を塩化ピバロイルと反応させ、その生成物をキラル補助剤でアシル化して、式(IV)のケトンを得る工程;(b)キラル触媒の存在下にて、式(IV)のケトンをアルコールに還元する工程;(c)工程(b)のキラルアルコール、イミンおよびシリル保護剤を反応させ、次いで、その保護化合物を縮合して、式(VII)のβ−(置換アミノ)アミドを得る工程;(d)式(VII)のβ−(置換アミノ)アミドをシリル化剤およびフッ化物イオン触媒で環化して、式(VIII)の保護ラクタムを得る工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本発明は、低コレステロール血症剤として有用なヒドロキシアルキル置換アゼチジノンを生成するためのエナンチオ選択的なプロセス、特に、米国特許第5,767,115号で請求された1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−ヒドロキシ−3−(4−フルオロフェニル)プロピル)]−4(S)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノンを調製するためのエナンチオ選択的なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
3−ヒドロキシ置換基のない対応するアゼチジノンを調製するプロセスは、特許文献1および特許文献2で請求されている。1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−ヒドロキシ−3−(4−フルオロフェニル)−プロピル)]−4(S)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノンを調製するための他のプロセスは、特許文献3および特許文献4で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,728,827号明細書
【特許文献2】米国特許第5,561,227号明細書
【特許文献3】米国特許第5,631,365号明細書
【特許文献4】米国特許第5,739,321号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
【0005】
(項目1)
次式により表わされる化合物を調製するプロセスであって:
【化A1】

該プロセスは、以下:
(a)式IIのp−フルオロベンゾイル酪酸を塩化ピバロイルと反応させ、そして上記生成物を式IIIのキラル補助剤でアシル化して、式IVのケトンを得る工程であって:
【化A2】

ここで、Xは、−O−、−S−または−N(C〜Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;そしてRは、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ナフチル、C〜Cアルコキシカルボニルまたはベンジルであり、ここで、フェニルおよびナフチル上の該置換基は、C〜Cアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される1個〜3個の置換基である、工程;
(b)キラル触媒の存在下にて、該式IVのケトンを式Vのアルコールに還元する工程;
【化A3】

(c)該式Vのキラルアルコール、式VIのイミンおよびシリル保護剤を反応させ、次いで、該シリル保護化合物を縮合して、式VIIのβ−(置換アミノ)アミドを得る工程であって、ここで、Protは、シリル保護基である、工程:
【化A4】

(d)該式VIIのβ−(置換アミノ)アミドを、(i)シリル化剤およびフッ化物イオン触媒環化剤;(ii)シリル化剤および式IIIのキラル補助剤の四級アンモニウム塩;または(iii)非求核性強塩基、で環化して、式VIIIの化合物を得る工程:ならびに
【化A5】

(e)該シリル保護基を除去する工程、を包含する、プロセス。
【0006】
(項目2)
項目1に記載のプロセスであって、工程(a)において、上記キラル補助剤が、(4S)−4−フェニル−2−オキサゾリジノンであって;工程(b)において、上記キラル触媒が、(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ(1,2−c)(1,2,3)オキサザボロリジンであり;工程(c)において、前記シリル保護剤が、クロロトリメチルシランであり、上記ルイス酸が、TiClであり、上記4級アミンが、ジイソプロピルエチルアミンであり;工程(d)において、上記シリル化剤が、ビストリメチルシリルアセトアミドであり、上記フッ化物イオン触媒環化剤が、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物である、プロセス。
【0007】
(項目3)
以下の式によって表される化合物を調製するプロセスであって:
【化A6】

式Vのキラルアルコール、式VIのイミンおよびシリル保護剤を反応させ、次いで、該シリル保護化合物を縮合して、式VIIのβ−(置換アミノ)アミドを得る工程を包含し、ここで、Xは、−O−、−S−または−N(C〜Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;そしてRは、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ナフチル、C〜Cアルコキシカルボニルまたはベンジルであり、ここで該フェニルまたはナフチル上の置換基は、C〜Cアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される1〜3個の置換基であり;そしてProtは、シリル保護基である、工程:
【化A7】

該式VIIのβ−(置換アミノ)アミドをシリルか剤およびフッ化物イオン触媒環化剤で環化して、式VIIIの化合物を得る工程:
【化A8】

および
該シリル保護基を除去する工程、を包含する、プロセス。
【0008】
(項目4)
項目3に記載のプロセスであって、上記シリル保護材が、クロロトリメチルシランであり、上記縮合が、3級アミンの存在下でルイス酸を用いて行われ;そして上記シリル化剤が、ビストリメチルシリルアセトアミドであり、上記フッ化物イオン触媒環化剤が、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物である、プロセス。
【0009】
(項目5)
以下の式によって表される化合物を調製するプロセスであって:
【化A9】

式VIIのβ−(置換アミノ)アミド:
【化A10】

を、シリル化剤およびフッ化物イオン環化剤で環化して、式VIIIの化合物を得る工程であって:
【化A11】

ここで、Xは、−O−、−S−または−N(C〜Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;そしてRは、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ナフチル、C〜Cアルコキシカルボニルまたはベンジルであり、ここで該フェニルまたはナフチル上の置換基は、C〜Cアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される1〜3個の置換基であり;そしてProtは、シリル保護基である、工程;および
(e)該シリル保護基を除去する工程、を包含する、プロセス。
【0010】
(項目6)
項目5に記載のプロセスであって、上記シリル化剤が、ビストリメチルシリルアセトアミドであり、上記フッ化物イオン触媒環化剤が、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物である、プロセス。
【0011】
(項目7)
次式のβ−(置換アミノ)アミドを調製するプロセスであって:
【化A12】

ここで、Xは、−O−、−S−または−N(C〜Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;そしてRは、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ナフチル、C〜Cアルコキシカルボニルまたはベンジルであり、ここで、フェニルおよびナフチル上の該置換基は、C〜Cアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される1個〜3個の置換基であり;そして、ここで、Protは、シリル保護基であり;該プロセスは、式Vのキラルアルコール:
【化A13】

式VIのイミン:
【化A14】

およびシリル保護剤を反応させ、次いで、該シリル保護化合物を縮合して、該β−(置換アミノ)アミドを得る工程を包含する、プロセス。
【0012】
(項目8)
項目7にキシあのプロセスであって、上記シリル保護剤が、クロロトリメチルシランであり、上記縮合が、3級アミンの存在下でルイス酸を用いて実施される、プロセス。
【0013】
(項目9)
次式の化合物を調製するプロセスであって:
【化A15】

ここで、Protは、シリル保護基であり、該プロセスは、次式のβ−(置換アミノ)アミドを、シリル化剤およびフッ化物イオン触媒環化剤で環化する工程を包含し:
【化A16】

ここで、Xは、−O−、−S−または−N(C〜Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;そしてRは、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ナフチル、C〜Cアルコキシカルボニルまたはベンジルであり、ここで、フェニルおよびナフチル上の該置換基は、C〜Cアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される1個〜3個の置換基であり;そして、ここで、Protは、上で定義した通りである、プロセス。
【0014】
(項目10)
項目9に記載のプロセスであって、上記シリル化剤が、ビストリメチルシリルアセトアミドであり、上記フッ化物イオン触媒環化剤が、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物である、プロセス。
【0015】
(項目11)
次式の化合物であって:
【化A17】

ここで、Protは、シリル保護基である、化合物。
【0016】
(項目12)
次式の化合物であって:
【化A18】

ここで、Protは、シリル保護基である、化合物。
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、式Iを有する低コレステロール血症剤アゼチジノンを生成する簡単で高収率の改良プロセス(これは、中性条件を使用する)を提供し:
【0018】
【化13】

このプロセスは、以下の工程を包含する:
(a)式IIのp−フルオロベンゾイル酪酸を塩化ピバロイルと反応させ、そしてその生成物を式IIIのキラル補助剤でアシル化して、式IVのケトンを得る工程:
【0019】
【化14】

ここで、Xは、−O−、−S−または−N(C〜Cアルキル)であり;Yは、=Oまたは=Sであり;そしてRは、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ナフチル、C〜Cアルコキシカルボニルまたはベンジルであり、ここで、フェニルおよびナフチル上の置換基は、C〜Cアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される1個〜3個の置換基である;
(b)キラル触媒の存在下にて、式IVのケトンを式Vのアルコールに還元する工程;
【0020】
【化15】

(c)式Vの該キラルアルコール、式VIのイミンおよびシリル保護剤を反応させ、次いで、シリル保護化合物を縮合して、式VIIのβ−(置換アミノ)アミドを得る工程であって、ここで、Protは、シリル保護基である:
【0021】
【化16】

(d)式VIIのβ−(置換アミノ)アミドを、(i)シリル化剤(silylating agent)およびフッ化物イオン触媒環化剤;(ii)シリル化剤および式IIIのキラル補助剤(chiral auxiliary)の四級アンモニウム塩;または(iii)非求核性強塩基で環化して、式VIIIの化合物を得る工程:ならびに
【0022】
【化17】

(e)シリル保護基を除去する工程。
【0023】
また、工程(c)、(d)および(e)を包含するプロセス;工程(d)および(e)のプロセス;工程(c)のプロセス;および工程(d)のプロセス、特に、工程(d)(i)で記述された環化もまた、請求される。
【0024】
さらに別の局面では、式VIIおよびVIIIの中間体が請求されている。
【0025】
上記プロセスは、1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−ヒドロキシ−3−(4−フルオロフェニル)プロピル)]−4(S)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノン鏡像異性体の調製に関するが、適切な出発物質で置き換えることにより、他の鏡像異性体が調製できると認められる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(詳細な説明)
本発明のプロセスは、高処理能力プロセスであり、これにより、短い周期(すなわち、約2週間)で、高い全収率で、所望のアゼチジノンが得られる。
【0027】
好ましい反応条件は、以下のスキームで示す:
【0028】
【化18】

この反応スキームでは、TEAは、トリエチルアミンであり、DMAPは、4−ジメチルアミノピリジンであり、DIPEAは、ジイソプロピルエチルアミンであり、BSAは、ビストリメチルシリルアセトアミドであり、TBAFは、テトラn−ブチルアンモニウムフルオライドであり、t−BuOMeは、t−ブチルメチルエーテルであり、そしてProtは、上で定義したようなシリル保護基である。
【0029】
式IIおよびIIIの出発物質は、当該技術分野で公知であり、式IIおよびIIIの化合物を反応させる工程(a)の手順は、当該技術分野で公知である:好ましくは、式IIIのキラル補助剤は、次式で例示される:
【0030】
【化19】

ここで、Yは、=Oであり、Xは、−O−であり、そしてRは、フェニル、ベンジルまたはC〜Cアルキルである。好ましいキラル補助剤は、
【0031】
【化20】

である。
典型的な反応条件については、以下の例を参照せよ。
【0032】
同様に、キラル触媒(例えば、(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ(1,2−c)(1,3,2)オキソアザ−ボロリジン)の存在下にて、ボラン還元剤(例えば、BH・S(CH)を使用して、ケトンをヒドロキシ基に還元する工程(b)の手順は、公知である:米国特許第5,767,115号を参照のこと。
【0033】
工程(c)では、キラルアルコールVおよびイミンVIは、適切なヒドロキシ保護基、好ましくは、シリル保護基(例えば、クロロトリメチルシラン(TMSCI)またはt−ブチルジメチルシリルクロライド(TBDMSCI)から誘導したもの)で保護される。このアルコール(1当量)およびイミン(好ましくは、1〜3当量)は、無水溶媒(例えば、CHCl)に添加され、この反応混合物は、−10℃〜15℃まで冷却され、第三級アミン塩基(例えば、DIPEA)が添加され(好ましくは、2〜4当量)、そしてこのアルコールおよびイミンの両方と反応するのに充分なシリル化剤が添加される(例えば、2〜4当量)。シリル化が完結した後、このアルコールおよびイミンは、第三級アミン塩基(好ましくは、1〜3当量)(例えば、DIPEA)の存在下にて、2〜4時間にわたって、−20℃〜−35℃で、少なくとも1当量のルイス酸(例えば、TiCl)と反応させることにより、縮合される。この反応は、例えば、酸(例えば、氷酢酸)に続いて酒石酸水溶液で処理することにより、クエンチされる;得られた生成物は、通常の手順を使用して、抽出され、そして結晶化される。
【0034】
工程(d)でのシリル化は、適切な不活性有機溶媒中にて、−20℃〜110℃、好ましくは、約0℃〜25℃で、式VIIの化合物をシリル−エノールエーテルシリル化剤(例えば、ビストリメチルシリルアセトアミド(BSA)、N−メチル−O−トリメチルシリルアセトアミドまたはイソ−プロペニルオキシトリメチルシラン、好ましくは、BSA)と反応させることにより、行われる。この反応は、好ましくは、乾燥不活性雰囲気で実行され、例えば、その溶媒は、典型的には、モレキュラーシーブで乾燥されており、この反応は、窒素下にて、実行される。
【0035】
工程(d)のこのプロセスでの成分の添加順序は、このアゼチジノン生成物の調製には重要ではない。例えば、このβ−(置換アミノ)アミドは、まず、このシリル化剤と反応され、次いで、環化剤と反応され得るか、または式VIIの化合物が、このシリル化剤および環化剤の混合物に添加され得る。このシリル化および環化を順次行う場合、すなわち、このシリル化剤がまず出発物質と反応される場合、このシリル化反応は、約2時間までの間、継続され得るが、好ましくは、この環化工程は、シリル化の直後に実行されるか、またはこのシリル化剤および環化剤が同時に添加される。
【0036】
式VIIの化合物の分子内環化を触媒するのに使用されるフッ化物イオン源は、典型的には、四級アルキル−、アリールアルキル−、もしくはアリールアルキル−アルキルフッ化アンモニウム塩またはそれらの水和物、またはそれらの混合物であるか、あるいはフッ化アルカリ金属塩またはそれらの水和物(例えば、フッ化セシウムまたはフッ化カリウム)である。アリールアルキル−アルキルアンモニウム基の例には、ベンジルトリエチル−アンモニウムおよびベンジルトリメチル−アンモニウムがあり;アリールアルキル−アンモニウムの例には、フェニルトリエチル−アンモニウムおよびフェニルトリメチル−アンモニウムがあり;典型的なアルキルアンモニウム基は、1個〜6個の炭素原子のアルキル基を含有する(例えば、テトラn−ブチル−アンモニウム)。水和した四級フッ化アンモニウム塩を使用する場合、その試薬は、触媒量、すなわち、約0.1〜約20モルパーセント、好ましくは、約0.5〜5モルパーセントで添加され、また、無水四級フッ化アンモニウム塩を使用する場合、化学量論量までの触媒量で添加され得る。フッ化アルカリ金属塩を使用する場合、それは、この試薬の使用する溶媒への溶解度に依存して(溶解度が高いと、必要な試薬が少なくなる)、出発β−アミノ化合物と比較して、化学量論量までの触媒量で添加される。フッ化物試薬が、シリル化剤の後にこの反応混合物に添加される場合、このフッ化物試薬はシリル化から生じる反応混合物に直接添加され、そして約0℃〜110℃、好ましくは、約0℃〜50℃で、約0.5〜約6時間、好ましくは、約2時間にわたって、反応される。このシリル化剤およびフッ化物試薬を同時に添加する場合、この反応は、類似の条件下で行われる。好ましいフッ化物イオン触媒環化剤は、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物である。
【0037】
あるいは、工程(b)の環化は、工程(a)で使用した式IIIのキラル補助剤の一価の四級アンモニウム塩、すなわち、次式の化合物を添加することにより、行うことができる:
【0038】
【化21】

ここで、X、YおよびRは、上で定義したとおりであり、そしてZは、アリールアルキル−アルキルアンモニウム、アリール−アルキルアンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウムまたはそれらの混合物からなる群から選択される四級アンモニウムカチオン、あるいはアルカリ金属である。アリールアルキル−アルキルアンモニウム基の例には、ベンジルトリエチルアンモニウムおよびベンジルトリメチルアンモニウムがあり;アリールアルキル−アンモニウムの例には、フェニルトリエチルアンモニウムおよびフェニルトリメチル−アンモニウムがあり;典型的なテトラアルキルアンモニウム基は、1個〜6個の炭素原子のアルキル基を含有し(例えば、テトラn−ブチル−アンモニウム);そして典型的なアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびリチウムである。式VIIのβ−(置換アミノ)アミドを環化するために、他のキラル補助剤または非キラル補助剤もまた使用でき、例えば、次式の化合物もまた、使用できる:
【0039】
【化22】

ここで、X、Y、ZおよびRは、上で定義したとおりであり、そしてRは、Rについて上で定義したとおりである。式VIIのβ−(置換アミノ)アミドは、上記シリル化剤で処理され、このキラル(または非キラル)補助剤の塩が、フッ化物イオンとの反応と類似の条件下にて、このβ−アミノ化合物と比較して触媒量または化学量論量で、同時または順次のいずれかで、添加される。
【0040】
式VIIのβ−(置換アミノ)アミドを環化する第三のプロセスは、非求核性強塩基を使用する工程を包含する。非求核性強塩基は、本明細書中にて、その立体的な嵩高さのために求核試薬として作用しない非水性塩基として定義される(例えば、ナトリウムビストリメチルシリルアミドまたはリチウムジイソプロピルアミド)。この塩基は、不活性有機溶媒(例えば、CHCl)中にて、約−100℃〜10℃の温度で、このβ−アミノ化合物と反応する。
【0041】
環化後の保護基の除去は、通常のプロセスを使用して、例えば、アルコール(例えば、イソプロパノール)のような溶媒中で、希酸(例えば、硫酸)で処理することにより、実行される。
【0042】
中間体IVおよびVIIは、この反応過程中に単離され得る、またはこの反応は、式Iの化合物の形成まで進行され得、それ後、その生成物が単離される。
【0043】
この環化から得られるアゼチジノンは、適切な標準手順(例えば、結晶化またカラムクロマトグラフィー)により、精製できる。
【0044】
上で使用する「適切な不活性有機溶媒」との用語は、行う反応で非反応性であり、反応物用の溶媒である任意の有機溶媒または溶媒の組合せを意味する。典型的な適切な溶媒には、ハロゲン化化合物(例えば、CHCl);複素環式化合物(例えば、テトラヒドロフラン(THF));DMSO;ジメチルホルムアミド(DMF);アセトニトリル;炭素環式芳香族(例えば、トルエン);およびt−BuOMeがある。t−BuOMe、CHCl、トルエンおよびTHFが好ましい。
【0045】
当業者は、工程(d)の環化を望ましいように進行させるには、工程(c)で使用する式VおよびVIの中間体中に存在している−OH置換基が環化前に保護されなければならないことを認め、それゆえ、工程(c)での処理は、ヒドロキシ保護基でなされる。このプロセスの重要な特徴は、工程(c)および工程(d)の両方でのカルビノール部分およびフェノール部分上のシリル保護基の驚くべき安定性にある。工程(c)では、中間体VおよびVIの反応後、その反応は、酸(好ましくは、酢酸および酒石酸水溶液)でクエンチされる:得られた溶液は、1未満のpHを有する。これらの条件下では、式VIIのジシリル化化合物(これは、シリル化フェノール基を含有する)が安定であることは予測できないが、驚くべきことに、この化合物は、安定であり、このプロセスの次の工程で使用するために、単離できる。また、本発明のプロセスの工程(d)では、3個のシリル化基(すなわち、工程(c)でシリル化された2個の水酸基、および工程(d)の第一部分でシリル化された−NH−基)のうち、この−NH−Si基は、選択的に脱シリル化されて、その分子内環化を効率的に進行できるようになる。このことは、特に、シリル化フェノール基の存在を考慮すると、予測できなかった。
【0046】
以下の実施例は、本発明のプロセスを説明している。
【実施例】
【0047】
(工程(a))
【0048】
【化23】

500mLの三つ口丸底フラスコに、温度計、添加漏斗および窒素注入口を備え付ける。p−フルオロ−ベンゾイル酪酸(20g、95.15mmol)、CHCl(100mL)およびTEA(23mL、165mmol)を添加し、この混合物を室温で5分間攪拌する。30分間にわたって、トリメチルアセチルクロリド(11.3mL、91.75mmol)をゆっくりと添加する。NMRにより、混合無水物が完全に形成されていることを検査する。
【0049】
式IIIの化合物(10g、61.3mmol)、DMAP(1.6g、13mmol)および乾燥DMF(10mL)を添加し、この混合物を、約7時間またはNMRにより反応が完結したと認められるまで(3%未満の化合物II)、加熱還流する。室温まで冷却し、そのバッチを、ゆっくりと攪拌しつつ、2N HSO(80mL)の入ったフラスコに移し、そして約30分間攪拌を続ける。層分離し、その有機層を5%NaHCO(80mL)で洗浄する。
【0050】
この有機層を濃縮し、その生成物をイソプロピルアルコール(100mL)から結晶化し、濾過し、そして乾燥する。収量:20g(92モル%);融点:92〜94℃。
【0051】
(工程(b))
【0052】
【化24】

250mLの三つ口丸底フラスコに、温度計、添加漏斗および窒素注入口を備え付ける。乾燥CHCl(20mL)およびニートなボランジメチルスルフィド(2.82mL、28.2mmol)を添加し、この混合物を、−5℃〜0℃まで冷却する。この混合物に、あらかじめ調製した(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ(1,2−c)(1,3,2)オキソアザ−ボロリジンのトルエン溶液(1.4mL、1.4mmol、5モル%)を添加し、そして0℃未満で、15分間攪拌する。3〜4時間にわたって、化合物IV(10g、28.1mmol)のCHCl(30mL)溶液をゆっくりと添加し、その反応温度を−5℃と0℃の間で維持する。1〜2時間またはNMRによりこの反応が完結したと認められるまで(0.1%未満の化合物IV)、攪拌を継続する。その温度を0℃未満に維持しつつ、CHOH(4mL)をゆっくりと添加することにより、この反応をクエンチする。5%過酸化水素(20mL)、続いて4N HSO(1.5mL)を添加する。この混合物を15分間攪拌し、その有機層を分離し、そして2N HSO(20mL)、5%NaSO(50mL)および10%NaCl(50mL)で洗浄する。水分含量が0.05%未満になるまで、その有機層を低容量まで濃縮する。その生成物を、次の工程で直接使用する。溶液収率:95%未満;de:98%。
【0053】
(工程(c))
【0054】
【化25】

500mLの三つ口丸底フラスコに、温度計、添加漏斗および窒素注入口を備え付ける。工程(b)から得た化合物V(化合物IVの10gに相当、28.1mmol)および化合物VI(12.05g)のCHCl溶液を添加し、その反応混合物の全容量を乾燥CHClで150mLに調整する。この混合物を−10℃まで冷却し、そしてDIPEA(25.7mL、147.5mmol)をゆっくりと加え、その温度を5℃未満で維持する。その反応温度を−5℃未満で維持しつつ、30分間にわたって、TMSCI(13.5mL、92.3mmol)を添加する。1時間またはNMRによりシリル化が完結したと認められるまで、この反応系を攪拌する。この反応温度を−25℃〜−30℃まで低下させる。TiCl(3.4mL、30.8mmol)をゆっくりと添加し、その温度を−25℃未満で維持する。この反応系を−25℃未満で3時間攪拌し、その反応の完結をNMRにより調べる。この反応温度を−25℃と−30℃の間で維持しつつ、この反応混合物に氷酢酸(8mL)をゆっくりと添加する。この反応混合物を、0℃で、7%酒石酸水溶液(140mL)に注いで、1〜2時間攪拌し、その温度を室温まで徐々に上げる。20%NaHSO水溶液(50mL)を添加し、そして攪拌をさらに2時間継続する。その有機層を分離し、水(120mL)で洗浄する。この有機層を低容量まで濃縮し、ビストリメチルシリルアセトアミド(8.4mL)を添加し、この混合物を30分間にわたって加熱還流する。この混合物を濃縮してCHClを除去し、その生成物を酢酸エチルおよびヘプタンの混合物から結晶化し、濾過し、洗浄し、そして乾燥して、13g(化合物IVから65%モル収率)の化合物VIIを得る。
【0055】
(工程(d))
【0056】
【化26】

500mLの三つ口丸底フラスコに、温度計、添加漏斗および窒素注入口を備え付ける。化合物VII(50g、69.7mmol)、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物(0.1g、0.32mmol)、ビストリメチルアセトアミド(30mL)およびt−ブチルメチルエーテル(500mL)を添加する。この混合物を、室温で、2時間またはNMRによりこの反応が完結したと認められるまで、攪拌する。氷酢酸(2.5mL)を添加し、この反応混合物を真空下にてオイルになるまで濃縮する。
【0057】
(工程(e))
工程(d)の生成物に、イソプロピルアルコール(250mL)および2N HSO(25mL)の予備混合溶液を添加し、この混合物を室温で1時間攪拌する。水性イソプロピルアルコールから化合物Iを結晶化する。その生成物を濾過し、希薄な水性イソプロピルアルコールで洗浄し、続いて、洗浄液のpHが5未満になるまで、水で洗浄する。この生成物を、ドラフトオーブン(draft oven)中にてまたは真空下で、60℃で乾燥して、26.14g(91.5%のモル収率)の化合物Iを得る。
【0058】
請求したプロセスのための出発物質は、以下の典型的な手順により、作製される。
【0059】
(4−(4−フルオロベンゾイル)酪酸の調製)
【0060】
【化27】

250gの無水AlCl(1.87モル)を2Lの三つ口丸底フラスコに充填し、300mLのフルオロベンゼン(307.5g;3.2モル)を添加し、その混合物を氷浴で5℃まで冷却する。45分間にわたって、添加漏斗を通じて、フルオロベンゼン400mL(4.3モル)中の無水グルタル酸100g(0.86モル)の濁った懸濁液を添加し、その温度を12℃未満で維持する。この反応混合物を周囲温度まで徐々に加温し、室温で約90分間攪拌する;反応の完結についてNMRで調べる。この反応混合物を0〜5℃まで冷却し、次いで、この混合物に、1N HClの冷水溶液(700mL)を慎重に添加して、任意の未反応AlClを破壊し、この混合物の温度を、この酸の添加の初期段階中は20℃未満、残りでは40℃未満で保つ。その全混合物を、水および氷の1:1(v/w)混合物2Lに注いで、粗生成物を沈殿させ、白色懸濁液を濾過し、水でよく洗浄する。その白色残渣を、NaHCOの3L飽和水溶液(約5%)に添加し、その塩基性混合物を蒸気浴で1時間加熱し、そのバッチを、熱い間に、セライトの薄いパッドで濾過する。その濾液を室温まで冷却し、この濾液に約320mLの濃塩酸を滴下してpH1にし、生成物を結晶化して、この白色懸濁液を氷浴中で30分間攪拌する。このバッチを濾過し、湿潤ケークを氷冷水で洗浄し、そして真空オーブン中にて、50℃で、16時間乾燥して、4−(4−フルオロベンゾイル)酪酸143.2gを得る;融点141〜142℃、単離収率:79.3%。
【0061】
(イミンの調製)
【0062】
【化28】

1リットルの三つ口フラスコに、機械攪拌機、温度計および添加漏斗を備え付ける。イソプロパノール480mL、p−ヒドロキシベンズアルデヒド144g(1.18モル)を添加し(吸熱)、50℃の温度まで加熱しつつ、この混合物を攪拌する。この混合物を50℃で15分間攪拌し(その全物質が溶液であることを確認する)、次いで、添加漏斗を通して、p−フルオロアニリン114mL(1.2モル)をゆっくりと添加する(発熱)。この添加が完結した後、その濃いスラリーを、50℃で、1時間攪拌し、室温まで冷却し、そして30分間攪拌する。その生成物を濾過し、そのケークをイソプロパノール150mLで洗浄し、その湿潤ケークを、ドラフトオーブン中にて、50℃で、24時間または乾燥するまで乾燥して、イミン222g(88%)を得る;融点:180〜182℃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2011−16841(P2011−16841A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216153(P2010−216153)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【分割の表示】特願2004−325744(P2004−325744)の分割
【原出願日】平成11年12月6日(1999.12.6)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】