説明

アゾ化合物の製造方法

【課題】 染料、医薬品などの機能性化合物の中間体、原料として有用であるアゾ化合物を安価、かつ高純度に合成できる製造方法を提供することにある。
【解決手段】 下記一般式(II)で表される化合物を、無機塩基及び4級ホスホニウム系相間移動触媒存在下、芳香族炭化水素系溶媒中で、下記一般式(III)で表されるアリール化剤またはヘテリル化剤と反応させることを特徴とする、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物の製造方法。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料、医薬品などの機能性化合物の中間体、原料として有用であるアゾ化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリールおよびヘテリルジアゾ成分とピリジンカプラーからなるアゾ色素のピリミジン環上のアミノ基に、アリール基およびヘテリル基を導入する手段としては、塩基性条件下、DMSOなどの極性非プロトン溶媒中で、ピラゾールジアゾ成分とピリジンカプラーからなるアゾ色素とクロロベンゾチアゾールを反応させる方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法は、反応系が複雑で副生成物が生成しやすくなり、収率が満足のいくものではない。
また、塩基、及び相間移動触媒存在下で、ピリジン系骨格を有するジアゾ色素とアリール化剤又はヘテリル化剤を反応させる方法が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの方法は特にアリール化剤又はヘテリル化剤が反応する窒素上の置換基が嵩高い場合、原料或は中間体の残存、相間移動触媒又は溶媒との反応による副生物生成のため、高純度に目的物を得ることが難しく、高純度の目的物を得る合成方法が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−371079号公報
【特許文献2】特開2004−155758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、染料、医薬品などの機能性化合物の中間体、原料として有用であるアゾ化合物を安価、かつ高純度に合成できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0006】
<1> 下記一般式(II)で表される化合物を、無機塩基及び4級ホスホニウム系相間移動触媒存在下、芳香族炭化水素系溶媒中で、下記一般式(III)で表されるアリール化剤またはヘテリル化剤と反応させることを特徴とする、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(I)中、Qはアリール基またはヘテロ環基を表す。R1はアリール基またはヘテロ環基を表す。R2はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホニル基、アシル基またはカルバモイル基を表す。R3およびR4は各々独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホニル基、アシル基またはカルバモイル基を表す。ただし、R3とR4が共に水素原子であることはない。A1およびA2は、いずれもがC(R)であるか、またはこれらの一方がC(R)であり、他方がNである。ここで、Rは水素原子または置換基を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(一般式(II)中、Q、R2、R3、R4、A1およびA2は、一般式(I)中のQ、R2、R3、R4、A1およびA2とそれぞれ同義である。)
【0011】
【化3】

【0012】
(一般式(III)中、R1は一般式(I)中のR1と同義である。Xはハロゲン原子またはスルホニルオキシ基を表す。)
【0013】
<2> 一般式(I)および(II)中のQが、ピラゾール、チアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾールまたはイミダゾールの各環を形成する基であることを特徴とする上記<1>に記載のアゾ化合物の製造方法。
<3> 前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(IV)で表される化合物であり、前記一般式(II)で表される化合物が下記一般式(V)で表される化合物であることを特徴とする上記<1>に記載のアゾ化合物の製造方法。
【0014】
【化4】

【0015】
(一般式(IV)中、R1’はアリール基またはヘテロ環基を表す。R1、R2、R3、R4、A1およびA2は、一般式(I)中のR1、R2、R3、R4、A1およびA2とそれぞれ同義である。R5は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基を表す。R6は水素原子、ハロゲン原子またはシアノ基を表す。)
【0016】
【化5】

【0017】
(一般式(V)中、R1’’は水素原子、アリール基またはヘテロ環基を表す。R2、R3、R4、R5、R6、A1およびA2は、一般式(IV)中のR2、R3、R4、R5、R6、A1およびA2とそれぞれ同義である。一般式(V)中のR1’’が水素原子である場合、R1’とR1は同じ置換基を表し、R1’’が水素原子でない場合、R1’とR1’’は同じ置換基を表す。)
【0018】
<4> 前記一般式(III)で表される化合物が、下記一般式(VI)で表される化合物であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
【0019】
【化6】

【0020】
(一般式(VI)中、Xは一般式(III)のXと同義である。Yは置換基を表す。nは0〜4の整数を表す。)
【0021】
<5> 前記4級ホスホニウム系相間移動触媒が下記一般式(VII)で表される化合物であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
【0022】
【化7】

【0023】
(一般式(VII)中、Xは、ハロゲン原子、水酸基、又は硫酸水素基を表し、R7、R8、R9、R0はそれぞれ独立に炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキル基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。)
【0024】
<6> 前記芳香族炭化水素系溶媒が下記一般式(VIII)で表される溶媒であることを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
【0025】
【化8】

【0026】
(一般式(VIII)中、Zは、炭素数1〜12の分岐してもよいアルキル基、炭素数1〜12の分岐してもよいアルキルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。nは1〜3の整数を表す。ここでnが2または3のとき、複数のZは互いに同じでも、異なっていても良い。)
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、染料、医薬品などの機能性化合物の中間体、原料として有用であるアゾ化合物を安価、即ち高収率かつ高純度に合成できる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明について詳細に説明する。
まず本発明の一般式(I)で表される化合物について詳しく述べる。
前記一般式(I)中、Qはアリール基またはへテロ環基を表す。アリール基は、無置換のアリール基であっても、置換基を有するアリール基であっても良い。
【0029】
置換基を有するアリール基もしくはヘテロ環基の該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などが挙げられる。
【0030】
置換基を有するアリール基の上記置換基を以下に、さらに詳細に説明する。
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルキル基で、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜10の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチルが挙げられ、多シクロアルキル基、例えば、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基で、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)やトリシクロアルキル基等の多環構造の基が挙げられる。好ましくは単環のシクロアルキル基、ビシクロアルキル基であり、単環のシクロアルキル基が得に好ましい。)、
【0031】
アルケニル基[直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルケニル基で、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイルが挙げられ、下記の環状アルケニル基をも含む。シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基で、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、多シクロアルケニル基、例えば、ビシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基で、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)であり、単環のシクロアルケニル基が特に好ましい。] 、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0032】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基で、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくは非芳香族、単環もしくは縮環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有するヘテロ環基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、
【0033】
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
【0034】
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基であり、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基で、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0035】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、炭素数0〜30のヘテロ環アミノ基であり、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ、N−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルメトキシカルボニルアミノ)、
【0036】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基で、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基であり、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、
【0037】
アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基で、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基で、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、
【0038】
アルキルもしくはアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基であり、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基であり、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であり、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
【0039】
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールもしくはヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基(ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましい)、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ、3−ピリジルアゾ、2−チアゾリルアゾ、2−ベンゾチアゾリルアゾ)、イミド基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のイミド基で、例えばN−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基で、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
【0040】
ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基で、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基で、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0041】
Qにおけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。またQにおけるヘテロ環基としては、無置換のヘテロ環基と上記の好ましい置換基を有するヘテロ環基が好ましく、特に5員環もしくは6員環の置換基を有するヘテロ環が好ましい。該へテロ環基は、ピラゾール、チアゾ−ル、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾールまたはイミダゾールの各環を形成する基、例えば、3−ピラゾリル、2−チアゾリル、1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、2−ベンゾチアゾリル、トリアジル、2−イミダゾリルなどが挙げられる。
【0042】
1は、アリール基またはへテロ環基を表す。アリール基またはヘテロ環基は、上記Qで説明したアリール基またはへテロ環基と同義である。R1のうち、置換および無置換の2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、トリアジル基および2−フリル基が好ましく、置換および無置換の2−ベンゾチアゾリル基がさらに好ましい。
【0043】
2は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホニル基、アシル基またはカルバモイル基を表す。
2におけるアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であり、無置換のアルキル基であっても、置換基を有するアルキル基であってもよい。該アルキル基は、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数1〜30のアルキル基が好ましい。該アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどが挙げられる。置換基を有するアルキル基の置換基は、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。アルキル基のうち、好ましいものは無置換のアルキル基である。
【0044】
2におけるシクロアルキル基は、無置換のシクロアルキル基であっても置換基を有するアルキル基であってもよい。置換基を有するシクロアルキル基の置換基は、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。該シクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。
【0045】
2におけるアルケニル基は、無置換のアルケニル基であっても、置換基を有するアルケニル基であってもよい。置換基を有するアルケニル基の置換基は、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。該アルケニル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。該アルケニル基としては、例えばアリル、プレニル、ゲラニル、オレイルなどが挙げられる。
【0046】
2におけるアルキニル基は、無置換のアルキニル基であっても置換基を有するアルキニル基であってもよい。置換基を有するアルキニル基の置換基は、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。該アルキニル基は、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が2〜30のアルキニル基が好ましい。該アルキニル基としては、例えばエチニル、プロパルギルなどが挙げられる。
【0047】
2におけるアリール基は、無置換のアリール基であっても置換基を有するアリール基であってもよい。置換基を有するアリール基の置換基は、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。R2におけるアリール基のうち、置換基を有するアリール基が好ましく、2位と6位に置換基を有するアリール基がさらに好ましい。該アリール基としては、例えば、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、メシチルなどが挙げられる。
【0048】
2におけるヘテロ環基は、無置換のヘテロ環基であっても置換基を有するヘテロ環基であってもよいが、好ましくは置換基を有するヘテロ環基である。該へテロ環基としては、例えば、2−ピリジル、2−ベンゾチアゾリルなどが挙げられる。
【0049】
2のうち、置換基を有する、アリール基もしくはヘテロ環基が好ましく、さらに2位と6位に置換基を有するアリール基が最も好ましい。
【0050】
3およびR4は、各々独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホニル基、アシル基、またはカルバモイル基を表す。ただし、R3とR4が共に水素原子であることはない。
3およびR4におけるヘテロ環基、スルホニル基、アシル基、またはカルバモイル基に関しては、上記R2と同様である。
【0051】
3およびR4におけるアリール基は、無置換のアリール基であっても置換基を有するアリール基であってもよいが、好ましくは置換基を有するアリール基である。置換基を有するアリール基の置換基は、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。該アリール基としては、例えば、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル、2−トルイル、メシチル、4−オクチルフェニルなどが挙げられる。
【0052】
1及びA2は、いずれもが−C(R)=であるか、あるいはこれらの一方が−C(R)=であり、他方が−N=である。ここでRは水素原子または置換基を表す。該置換基は、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0053】
一般式(II)中、Q、R2、R3、R4、A1およびA2は、一般式(I)中のQ、R2、R3、R4、A1およびA2とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0054】
一般式(III)中、R1は一般式(I)のR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Xはハロゲン原子又はスルホニルオキシ基を表し、塩素もしくは臭素原子、又はベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシもしくはメタンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0055】
本発明において、一般式(I)および一般式(II)は、それぞれ一般式(IV)および一般式(V)であることが特に好ましい。
一般式(IV)および(V)中、R1’、R1、R2、R3、R4、A1およびA2は、一般式(I)中のR1、R2、R3、R4、A1およびA2とそれぞれ同義である。R1’’は水素原子、アリール基またはヘテロ環基を表す。一般式(V)中のR1’’が水素原子である場合、R1’とR1は同じ置換基を表し、R1’’が水素原子でない場合、R1’とR1’’は同じ置換基を表す。
5は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基は上記R2で説明したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基と同義である。R2はイソプロピル基、tert−ブチル基が好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。R6は、水素原子、ハロゲン原子、またはシアノ基を表し、シアノ基が最も好ましい。
【0056】
本発明において、一般式(III)は、一般式(VI)であることがさらに好ましい。
一般式(VI)中、Xは一般式(III)のXと同義である。
Yは置換基を表す。Yは、Qにおける置換基を有するアリール基の置換基として挙げたものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。Yとしては、ハロゲン原子、スルファモイル基、カルボキシル基またはスルホ基がより好ましく、スルファモイル基、カルボキシル基またはスルホ基が更に好ましい。
nは0〜4の整数であり、置換基Yの数を表す。nは0〜2が好ましく、0または1がより好ましい。
【0057】
本反応で用いる一般式(VII)で示される4級ホスホニウム塩系相間移動触媒について説明する。
一般式(VII)中、Xは、ハロゲン原子、水酸基、硫酸水素基を表し、R7、R8、R9、R0はそれぞれ独立に、炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキル基を示し、互いに同じでも異なっていても良い。この中で好ましい4級ホスホニウム塩相間移動触媒としては、R7〜R0の4つのアルキル鎖の内、少なくとも3つが同一であり、且つアルキル鎖が2〜12の4級ホスホニウム塩が挙げられる。更に好ましくは、R7〜R0の4つのアルキル鎖が同一であり、且つアルキル鎖が2〜12の4級ホスホニウム塩である。
【0058】
本反応で用いる一般式(VIII)で示される芳香族炭化水素系溶媒について説明する 。一般式(VIII)中、Zは、互いに同じでも、異なっていても良い置換基を表し、 その置換基は、炭素数1〜12の分岐してもよいアルキル基、アルキルオキシ基、ハロ ゲン原子を示す。nは1〜3の整数を表す。この中で、好ましい溶媒としては、nが1 〜3のアルキルベンゼン類、nが1〜2のアルキルオキシベンゼン類及びハロゲン化ベ ンゼン類であり、更に好ましくは、nが1〜3でアルキル鎖の炭素数が1〜5のアルキ ルベンゼン類、nが1〜2のアルキルオキシベンゼン類、クロロベンゼンが挙げられる 。
【0059】
以下に一般式(I)または(II)で表される化合物の具体例を以下に示すが、下記の例に限定されるものではない。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
次に本発明による一般式(I)で表される化合物の合成法について詳細に説明する。
本発明の合成法は、一般式(II)で表される化合物を、無機塩基及び4級ホスホニウム系相間移動触媒存在下に、アリール化剤またはヘテリル化剤とを芳香族炭化水素系溶媒中で反応させることを特徴としている。
相関移動触媒としては4級アンモニウム塩化合物、例えば、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、ヨウ化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム等を用いる方法が知られているが、反応条件によっては、これらの4級アンモニウム塩がアルキル化剤として作用することがある。例えば本発明の一般式(I)で表される化合物の合成工程において臭化テトラブチルアンモニウムを用いると副反応としてN−ブチル体が、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを用いるとN−ベンジル体が無視できないほど生成することが本発明者らの検討により明らかとなった。一方で本発明の製造方法の特徴である4級ホスホニウム系化合物を用いた場合にはN−アルキル化された副生物がまったく生成せず、本発明の製造方法の大きな利点である。
ここで用いられる芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、クメン、キシレン、メシチレン等のアルキルベンゼン系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン系溶媒、アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒などを挙げることができるがこれらに限定されるものでない。またこれらの芳香族炭化水素系溶媒にドナーナンバー25以上の溶媒を芳香族炭化水素系溶媒に対して、1/100〜1/3容量添加しても良い。ドナーナンバー25以上の溶媒としては、アミド類(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど)、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0067】
本反応で用いる反応溶媒は、一般式(II)で表される化合物の質量に対して0.2〜50倍量用いるのが好ましく、0.5〜20倍量用いるのがさらに好ましい。
【0068】
本反応に用いる無機塩基は、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ炭酸塩及びアルカリ土類炭酸塩、水酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ水酸化物塩、およびアルカリ土類水酸化物塩を用いることができるが、好ましくはアルカリ炭酸塩、又は、アルカリ水酸化物塩であり、特に好ましくは、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムである。また、本反応に用いる一般式(II)で表される反応基質が塩酸塩、硫酸水素塩等の塩である場合、これらの無機塩に加えて、原料となる一般式(II)で表される化合物に対して0.01〜1.0当量の有機塩基(ピリジン、ピコリン等のピリジン類、又は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン等の3級アミン等)を併用することも有効である。
【0069】
本反応で用いる無機塩基は、原料となる一般式(II)で表される化合物に対して好ましくはモル数で50当量以下で、より好ましくは1〜10当量である。
【0070】
本反応で用いるアリール化剤またはヘテリル化剤は、原料となる一般式(II)で表される化合物に対して好ましくはモル数で20当量以下で、より好ましくは1〜6当量である。
【0071】
本反応で用いる4級ホスホニウム系相関移動触媒は、原料となる一般式(II)で表される化合物に対して好ましくはモル数で0.001〜2当量で、より好ましくは0.01〜1当量である。
【0072】
本発明の反応は、必ずしも脱酸素条件下(酸素ガスが低濃度である条件下)で行う必要はないが、安全性上、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで満たして製造することは可能である。
【0073】
本反応における反応温度は、反応基質、アリール化剤又はヘテリル化剤等よって異なるが、一般的に50℃から170℃が好ましく、70℃から150℃がより好ましい。
【0074】
通常、本反応に要要する時間は、反応温度、塩基、反応剤などに左右されるが、概ね1〜24時間である。反応温度は、80℃から150℃で、反応時間が2〜12時間が好ましい。反応終了はNMR、HPLC、TLC、その他の方法によって確認することが出来る。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
<化合物(I−1)の合成>
化合物(II−1)(1塩酸塩)10g(15.94mmol)、炭酸カリウム7.05g(51.01mmol)、テトラブチルホスホニウムブロミド1.08g(3.18mmol)、クロロベンゾチアゾール8.11g(47.81mmol)、トルエン19mL、およびDMSO 20mlの混合溶液を内温110〜120℃で6時間加熱した。このとき、化合物(I−1)の生成率は92.5%(HPLC面積%、測定波長254nm)だった。
前記反応溶液を放冷して内温が70℃まで下がったところに、温水30mL、トルエン10mL及びNMP(N−メチルピロリドン)2mLを加え、分液操作を行った。得られた油相にメタノール60mLを滴下し、晶析し、析出した結晶をろ取した。
得られた結晶をメタノール24mLで洗浄後、水60mLで洗浄し、乾燥して、化合物(I−1)12.0g(収率88%)を得た。
この結晶の純度は98.5%(HPLC面積%、測定波長254nm)であった。
【0077】
(実施例2)
<化合物(I−1)の合成>
化合物(II−1)(1塩酸)10.0g(15.94mmol)、炭酸カリウム7.05g(51.01mmol)、テトラブチルホスホニウムブロミド1.08g(3.18mmol)、3−メチルピリジン0.30g(3.22mmol)、クロロベンゾチアゾール10.82g(63.79mmol)、トルエン19mL、および、DMSO 20mLの混合溶液を内温110〜120℃で5時間加熱した。このとき、化合物(I−1)の生成率は92.5%(HPLC面積%、測定波長254nm)だった。
前記反応溶液を放冷して内温が70℃まで下がったところに、温水30mL、トルエン10mL及びNMP(N−メチルピロリドン)2mLを加え、分液操作を行った。得られた油相にメタノール60mLを滴下し、晶析し、析出した結晶をろ取した。
得られた結晶をメタノール24mLで洗浄後、水60mLで洗浄し、乾燥させて、化合物(I−1)12.0g(収率84%)を得た。この結晶の純度は98.9%(HPLC面積%、測定波長254nm)であった。
【0078】
(実施例3)
<化合物(I−1)の合成>
化合物(II−6)10.0g(13.81mmol)、炭酸カリウム3.82g(27.64mmol)、テトラブチルホスホニウムブロミド0.94g(2.77mmol)、クロロベンゾチアゾール3.51g(20.69mmol)、トルエン19mLの混合溶液を内温110〜120℃で4時間加熱した。このとき、化合物(I−1)の生成率は89.5%(HPLC面積%、測定波長254nm)だった。放冷して内温が70℃まで下がったところに温水30mL、トルエン10mL及びNMP(N−メチルピロリドン)2mLを加え、分液操作を行った。得られた油相にメタノール60mLを滴下し、晶析し、析出した結晶をろ取した。
得られた結晶をメタノール24mLで洗浄後、水60mLで洗浄し、乾燥して、化合物(I−1)10.0g(収率84.5%)を得た。
この結晶の純度は99.1%(HPLC面積%、測定波長254nm)であった。
【0079】
(比較例1)
化合物(II−1)(塩酸塩)10.0g(15.94mmol)、炭酸カリウム8.81g(63.76mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.23g(3.83mmol)、クロロベンゾチアゾール10.82g(63.79mmol)、酢酸ブチル20mLの混合溶液を窒素気流下、内温110〜115℃で6時間加熱した。このとき、化合物(I−1)の生成率は87.8%(HPLC面積%、測定波長254nm)だった。放冷して内温が70℃まで下がったところに水20mL、トルエン20mLを加え、分液操作を行った。得られた油相にメタノール90mLを滴下し、晶析し、析出した結晶をろ取した。
得られた結晶をメタノール40mLで洗浄後、水60mLで洗浄し、乾燥して、化合物(I−1)11.5g(収率84.2%)を得た。
この結晶の純度は95.1%(HPLC面積%、測定波長254nm)であり、副生成物としてジアリールアニリン部の窒素原子がアセチル化された化合物が1.8%、ブチル化された化合物が2.1%(いずれもHPLC面積%、測定波長254nm)混入していた。
副生成物を除去するため、精製を行った。上記で得られた化合物(I−1)11.5gをトルエン46mL、酢酸エチル11.5mLの混合溶媒で加熱溶解し、メタノール115mLを滴下し晶析する。この晶析液を冷却後、結晶をろ取した。得られた結晶をメタノール46mLで洗浄し、乾燥して、化合物(I−1)10.9g(収率94.8%:トータル収率:79.8%)を得た。この結晶の純度は98.5%(HPLC面積%、測定波長254nm)であった。
【0080】
(比較例2)
化合物(II−6)10.0g(13.81mmol)、炭酸カリウム3.82g(27.64mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.07g(3.31mmol)、クロロベンゾチアゾール3.51g(20.69mmol)、トルエン19mLの混合溶液を内温110〜120℃で4時間加熱した。このとき、化合物(I−1)の生成率は89.5%(HPLC面積%、測定波長254nm)だった。放冷して内温が70℃まで下がったところに温水30mL、トルエン10mL及びNMP(N−メチルピロリドン)2mLを加え、分液操作を行った。得られた油相にメタノール60mLを滴下し、晶析し、析出した結晶をろ取した。
得られた結晶をメタノール24mLで洗浄後、水60mLで洗浄し、乾燥して、化合物(I−1)9.5g(収率80.3%)を得た。この結晶の純度は95.0%(HPLC面積%、測定波長254nm)であった。
上記で得られた化合物(I−1)9.5gをトルエン38mL、酢酸エチル9.5mLの混合溶媒で加熱溶解し、メタノール95mLを滴下し晶析する。この晶析液を冷却後、結晶をろ取した。
得られた結晶をメタノール38mLで洗浄し、乾燥して、化合物(I−1)9.1g(収率95.8%:トータル収率:76.9%)を得た。この結晶の純度は98.8%(HPLC面積%、測定波長254nm)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(II)で表される化合物を、無機塩基及び4級ホスホニウム系相間移動触媒存在下、芳香族炭化水素系溶媒中で、下記一般式(III)で表されるアリール化剤またはヘテリル化剤と反応させることを特徴とする、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物の製造方法。
【化1】


(一般式(I)中、Qはアリール基またはヘテロ環基を表す。R1はアリール基またはヘテロ環基を表す。R2はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホニル基、アシル基またはカルバモイル基を表す。R3およびR4は各々独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホニル基、アシル基またはカルバモイル基を表す。ただし、R3とR4が共に水素原子であることはない。A1およびA2は、いずれもがC(R)であるか、またはこれらの一方がC(R)であり、他方がNである。ここで、Rは水素原子または置換基を表す。)
【化2】


(一般式(II)中、Q、R2、R3、R4、A1およびA2は、一般式(I)中のQ、R2、R3、R4、A1およびA2とそれぞれ同義である。)
【化3】


(一般式(III)中、R1は一般式(I)中のR1と同義である。Xはハロゲン原子またはスルホニルオキシ基を表す。)
【請求項2】
一般式(I)および(II)中のQが、ピラゾール、チアゾ−ル、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾールまたはイミダゾールの各環を形成する基であることを特徴とする請求項1に記載のアゾ化合物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(IV)で表される化合物であり、前記一般式(II)で表される化合物が下記一般式(V)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアゾ化合物の製造方法。
【化4】


(一般式(IV)中、R1’はアリール基またはヘテロ環基を表す。R1、R2、R3、R4、A1およびA2は、一般式(I)中のR1、R2、R3、R4、A1およびA2とそれぞれ同義である。R5は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基またはアシル基を表す。R6は水素原子、ハロゲン原子またはシアノ基を表す。)
【化5】


(一般式(V)中、R1’’は水素原子、アリール基またはヘテロ環基を表す。R2、R3、R4、R5、R6、A1およびA2は、一般式(IV)中のR2、R3、R4、R5、R6、A1およびA2とそれぞれ同義である。一般式(V)中のR1’’が水素原子である場合、R1’とR1は同じ置換基を表し、R1’’が水素原子でない場合、R1’とR1’’は同じ置換基を表す。)
【請求項4】
前記一般式(III)で表される化合物が、下記一般式(VI)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
【化6】


(一般式(VI)中、Xは一般式(III)のXと同義である。Yは置換基を表す。nは0〜4の整数を表す。)
【請求項5】
前記4級ホスホニウム系相間移動触媒が下記一般式(VII)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
【化7】


(一般式(VII)中、Xは、ハロゲン原子、水酸基、又は硫酸水素基を表し、R7、R8、R9、R0はそれぞれ独立に炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキル基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。)
【請求項6】
前記芳香族炭化水素系溶媒が下記一般式(VIII)で表される溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
【化8】


(一般式(VIII)中、Zは、炭素数1〜12の分岐してもよいアルキル基、炭素数1〜12の分岐してもよいアルキルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。nは1〜3の整数を表す。ここでnが2または3のとき、複数のZは互いに同じでも、異なっていても良い。)

【公開番号】特開2007−91659(P2007−91659A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284695(P2005−284695)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】