説明

アゾ化合物又はその塩、及びその製造方法

【課題】耐熱性及び耐光性に優れた塗布膜を形成し得るアゾ化合物又はその塩を提供する。
【解決手段】式(I)、好ましくは式(II)で表されるアゾ化合物又はその塩。




はアゾ基を有する有機基を表す。R及びRは、C1−16脂肪族炭化水素基、C3−16脂環式炭化水素基、C7−20アラルキル基、又はC6−14アリール基を表す。Aは、フェニレン基又はナフチレン基を表す。R及びRは、水素原子、C1−16脂肪族炭化水素基、C3−16脂環式炭化水素基、C7−20アラルキル基、又はC6−14アリール基を表す。Rは、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料として有用なアゾ化合物又はその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
染料は、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイパネルなどのディスプレイ装置に使用される、カラーフィルタの着色剤として用いられている。
【0003】
染料としては、たとえば特許文献1に、式(A−4)で表されるアゾ化合物が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−510398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐熱性及び耐光性に優れた塗布膜を形成し得るアゾ化合物又はその塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、耐熱性及び耐光性に優れた塗布膜を形成し得るアゾ化合物又はその塩について検討した結果、本発明を見出した。
すなわち本発明は、以下を提供する。
1.式(I)で表されるアゾ化合物又はその塩。
【0007】
【化2】

【0008】
〔式(I)中、Rはアゾ基を有する有機基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。〕
【0009】
2.式(I)で表されるアゾ化合物又はその塩が、式(II)で表されるアゾ化合物又はその塩である前1項に記載のアゾ化合物又はその塩。
【0010】
【化3】

【0011】
〔式(II)中、R及びRは式(I)におけるものと同じ意味を表す。
Aは、C1−8脂肪族炭化水素基、C1−8アルコキシ基、カルボキシル基、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1個又は2個有していてもよいフェニレン基、或いは、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1〜3個有していてもよいナフチレン基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。
は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。〕
【0012】
3.式(III)で表されるアゾ化合物とアシル化剤とを反応させる工程を有する、式(I)で表されるアゾ化合物の製造方法。
【0013】
【化4】

〔式(I)及び式(III)中、Rはアゾ基を有する有機基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。〕
4.アシル化剤が、酸クロライド又は酸無水物である前3項記載の製造方法。
5.前1項に記載のアゾ化合物又はその塩の二量体。
6.前2項に記載のアゾ化合物又はその塩の二量体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアゾ化合物又はその塩は、耐熱性及び耐光性に優れた塗布膜を形成し得る。また、本発明のアゾ化合物又はその塩の製造方法は、高収率で目的とするアゾ化合物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、式(I)で表される化合物(以下、アゾ化合物(I)ということがある。)である。
【化5】

【0016】
〔式(I)中、Rはアゾ基を有する有機基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。
式(I)で表される化合物は任意の位置で2量体以上の多量体を形成していてもよい。〕
以下では、式(I)で表される化合物について詳細に説明する。
【0017】
式(I)中、Rは、アゾ基を有する有機基であり、具体的には、ピリドンアゾ化合物から由来する基、ピラゾロンアゾ化合物から由来する基、ピリジンアゾ化合物から由来する基、ピリミジンアゾ化合物から由来する基、オキシインドールアゾ化合物から由来する基などが挙げられる。なお、化合物から由来する基とは、化合物から水素原子1つが抜けた基を言う。
【0018】
及びRの脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。脂肪族炭化水素基の炭素数には置換基の炭素数は含まれず、その炭素数は、1〜16であり、好ましくは6〜10である。該脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メチルブチル基(1,1,3,3−テトラメチルブチル基など)、メチルヘキシル基(1,5−ジメチルヘキシル基など)、及びエチルヘキシル基(2−エチルヘキシル基など)が挙げられる。
該脂肪族炭化水素基は、C1−8アルコキシ基、カルボキシル基などの置換基で置換されていてもよい。置換基を有する脂肪族炭化水素基としては例えば、プロポキシプロピル基(3−(イソプロポキシ)プロピル基など)、2−(カルボキシ)エチル基、3−(カルボキシ)エチルプロピル基、及び4-(カルボキシ)ブチル基などが挙げられる。
及びRの脂環式炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれず、その炭素数は、3〜16である。該脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基(2−メチルシクロヘキシル基など)、及びシクロヘキシルアルキル基などが挙げられる。該脂環式炭化水素基の置換基としては、該脂肪族炭化水素基の置換基と同様の基が挙げられる。
【0019】
及びRのアラルキル基の芳香環以外の部分は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。アラルキル基の炭素数には置換基の炭素数は含まれず、その炭素数は、7〜20、好ましくは7〜10である。このアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基(2−フェニルエチル基、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル基など)、フェニルエチレン基(2−フェニルエチレン基など)、フェニルブチル基(3−アミノ−1−フェニルブチル基など)などのフェニルアルキル基が挙げられる。該アラルキル基は、C1−6アルコキシ基、カルボキシル基などの置換基で置換されていてもよい。置換基を有するアラルキル基としては、(メトキシフェニル)エチル基(2−(4−メトキシフェニル)エチル基など)、(カルボキシフェニル)エチル基(2−(4−カルボキシフェニル)エチル基など)(カルボキシフェニル)プロピル基(3−(2−カルボキシフェニル)プロピル基など)などが挙げられる。
【0020】
及びRのアリール基は、無置換であってもよく、脂肪族炭化水素基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基などの置換基を有していてもよい。前記アリール基の炭素数は、置換基の炭素数を含めて数えられ、6〜14であり、好ましくは6〜10である。これらアリール基としては、例えば、フェニル基、ヒドロキシルフェニル基(2−ヒドロキシルフェニル基、3,4,5−トリヒドロキシルフェニル基など)、カルボキシフェニル基(2−カルボキシフェニル基、2,4−ジカルボキシフェニル基など)、トリフルオロメチルフェニル基(4−トリフルオロメチルフェニル基など)、メトキシフェニル基(4−メトキシフェニル基など)などの無置換又は置換フェニル基などが挙げられる。
【0021】
アゾ化合物(I)は、式(II)で表される化合物(以下、アゾ化合物(II)ということがある。)であることが好ましい。
【化6】

〔式(II)中、R及びRは式(I)の場合と同じ意味を表す。
Aは、C1−8脂肪族炭化水素基、C1−8アルコキシ基、カルボキシル基、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1個又は2個有していてもよいフェニレン基、或いは、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1〜3個有していてもよいナフチレン基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。
は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。
式(II)で表される化合物は任意の位置で2量体以上の多量体を形成していてもよい。〕
【0022】
式(II)中、Aは、C1−8脂肪族炭化水素基、C1−8アルコキシ基、カルボキシル基、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1個又は2個有していてもよいフェニレン基、或いは、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1〜3個有していてもよいナフチレン基を表す。本発明のアゾ化合物又はその塩は、C1−8脂肪族炭化水素基、C1−8アルコキシ基、スルホン基、スルファモイル基、N−置換スルファモイル基を有することにより、水溶性及び有機溶剤への溶解性を兼ね備えることができる。有機溶剤への溶解性を向上させるために、式(II)中、Aが、C1−8脂肪族炭化水素基、C1−8アルコキシ基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有することが好ましい。
【0023】
前記N−置換スルファモイル基として、−SONHR基(Rは、前述の置換基を表す。)、又は−SONHR(COR)基(R及びRは、前述の置換基を表す。)が好ましい。本発明のアゾ化合物又はその塩は、N−置換スルファモイル基を有することにより、水溶性及び有機溶剤への溶解性を兼ね備えることができる。
【0024】
式(II)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状C1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。該脂肪族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。その炭素数は、1〜16、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜6である。該脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基などが挙げられる。該脂環式炭化水素基の炭素数は、3〜16、好ましくは5〜10である。該脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基及びシクロペンチル基などが挙げられる。R及びRの脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基は、C1−8アルコキシ基などの置換基で置換されていてもよい。置換基を有する脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基としては例えば、3−(エチルヘキシルオキシ)プロピル基などが挙げられる。
【0025】
及びRのアラルキル基の芳香環以外の部分は、R及びRの場合と同様に、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。アラルキル基の炭素数には置換基の炭素数は含まれず、その炭素数は、7〜20、好ましくは7〜10である。R及びRのアラルキル基の具体例は、R及びRの場合と同じである。該アラルキル基は、C1−6アルコキシ基、カルボキシル基などの置換基で置換されていてもよい。
【0026】
及びRのアリール基は、R及びRの場合と同様に、無置換であってもよく、脂肪族炭化水素基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基などの置換基を有していてもよい。その炭素数は、置換基の炭素数を含めて数えられ、6〜14、好ましくは6〜10である。R及びRのアラルキル基の具体例は、R及びRの場合と同じである。
【0027】
は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。色濃度、有機溶剤への溶解性を高めることができるため、水素原子、又はシアノ基が特に好ましい。
【0028】
色濃度を高めるには、Rが、炭素数が5以下(好ましくは3以下)の脂肪族炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−(カルボキシ)エチル基など)であることが好ましい。また、有機溶剤への溶解性を高めるために、Rは炭素数が6〜12の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0029】
また、色濃度を高めるためには、Rが、炭素数が3以下の脂肪族炭化水素基(例えばメチル基、エチル基など、特にメチル基)であることが好ましい。また、有機溶剤への溶解性を高めるためには、Rは炭素数が2〜12の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0030】
さらに色濃度を高めるためには、Aがパラ置換フェニレン基、又はメタ置換フェニレン基であることが好ましい。ここでいうパラ置換とは、式(II)中のアゾ基とスルファモイル基とが、フェニレン基上でパラの位置関係にあることを指す。
【0031】
アゾ化合物(I)を2種以上併用すると、その1種を単独で用いる場合よりも、有機溶媒への溶解量が大きくなる傾向があり、液晶表示装置用の色素としては、アゾ化合物(I)の2種以上の組合せを用いることも好ましい。有機溶剤への溶解性が向上する組合せの例として、2つのN−置換スルファモイル基を有するアゾ化合物(ジスルホンアミド)と、1つのN−置換スルファモイル基及び1つのスルホン基を有するアゾ化合物(モノスルホンアミド)との組合せが挙げられる。
また、モノスルホンアミドは分子量が低い為、色濃度の観点から特に好ましい。
【0032】
有機溶剤への溶解性を高めるためには、R〜Rは、分岐状脂肪族炭化水素基及び2個以上のハロゲン原子が結合した脂肪族炭化水素基が好ましく、tert-ブチル基などの3級脂肪族炭化水素基、トリフルオロメチル基などの3個以上のハロゲン原子が結合した脂肪族炭化水素基などが特に好ましい。嵩高い基を選択することで、アゾ色素のスタッキングを低減でき、有機溶剤への溶解性を高めることができる。また嵩高い基を選択することで、アゾ基を保護でき、耐光性を高めることができる。
【0033】
式(I)の好ましい例には、式(I−1)〜(I−35)及び式(II−1)〜(II−116)が挙げられる。
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

【0041】
【化14】

【0042】
【化15】

【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
【化18】

【0046】
【化19】

【0047】
【化20】

【0048】
【化21】

【0049】
【化22】

【0050】
【化23】

【0051】
【化24】

【0052】
【化25】

【0053】
【化26】

【0054】
【化27】

【0055】
【化28】

【0056】
【化29】

【0057】
【化30】

【0058】
【化31】

【0059】
【化32】

【0060】
【化33】

【0061】
アゾ化合物(I)のうち、色度の面でさらに好ましいのは、式(II)で表される化合物のような、ピリドンアゾ化合物である。
【0062】
本発明は、式(I)、式(II)で表される化合物に限らず、その塩も包含する。塩としては、分子内にスルホン基を有する場合のスルホン酸塩、カルボキシル基を有する場合のカルボン酸塩が挙げられる。またこれら塩を形成するカチオンは特に限定されないが、溶媒に対する溶解性を考慮すると、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;アンモニウム塩;及びエタノールアミン塩、アルキルアミン塩のような有機アミン塩などが好ましい。特にアルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)は、偏光膜基材に含有させる場合に有用である。また有機アミン塩は、硬化性樹脂組成物に含有させる場合に有用であり、さらには非金属塩であるため、絶縁性が重要視される分野でも有用である。
【0063】
アゾ化合物(I)を製造する方法としては、例えば、式(VI)で表される、特公平7−88633号公報記載の方法、式(III)で示されるアゾ化合物(以下、アゾ化合物(III)ということがある。)とアシル化剤とを反応させる方法が挙げられ、中でも、アゾ化合物(III)とアシル化剤とを反応させる方法が好ましい。
【化34】

【0064】
【化35】

【0065】
アゾ化合物(III)としては、一般に流通している色素(BASF社製のC.I.Solvent Yellow162など)の他、特公平7−88633号公報などに記載されているアゾ化合物を好適に用いることができる。
【0066】
アシル化剤としては、酸無水物、酸クロライドなど公知の物質を用いることができ、反応性の点からは酸無水物がより好ましい。
酸クロライドとしては、好ましくは酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、及びベンゾイルクロライドなどが例示できる。
【0067】
酸無水物としては、脂肪族カルボン酸や芳香族カルボン酸の無水物を用いることができ、鎖状、及び環状の無水物でもよく、具体的には、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水ハイミック酸、及び無水フタル酸などが好ましく用いられる。用いるアシル化剤の種類には特に制限はなく、二種類以上のアシル化剤を併用してもよい。アシル化剤の使用量は、アゾ化合物(III)1モルに対して、1〜3モル程度が好ましい。なお反応系中に水が持ち込まれる場合は、酸無水物をアゾ化合物に対して過剰に使用することが好ましい。
【0068】
有機アミンは一般的に入手可能なものを用いることができ、特に、脂肪族アミン類、芳香族性アミン類が好ましい。好ましくは、トリエチルアミン、ピペリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、及び4−ピロリジノピリジンなどが例示できる。反応速度向上の観点から、4−ジメチルアミノピリジン及び4−ピロリジノピリジンが特に好ましい。有機アミンの使用量は、アゾ化合物(III)1モルに対して、例えば、0.05〜50モルである。用いる有機アミンの種類には特に制限はなく、2種類以上の有機アミンを併用してもよい。
【0069】
アゾ化合物(III)とアシル化剤との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);
クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2−ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;
アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類などが挙げられ、二種類以上の溶媒を併用してもよい。溶媒の使用量は、アゾ化合物(III)1質量部に対して、例えば、1質量部以上(好ましくは5質量部以上)、20質量部以下(好ましくは10質量部以下)程度である。
【0070】
アゾ化合物(III)とアシル化剤との反応は、窒素雰囲気下、又はアルゴン雰囲気下で行われるが、塩化カルシウムなどで乾燥した空気下でも反応は進行する。
反応温度は、例えば、0℃以上(好ましくは10℃以上)、70℃以下(好ましくは60℃以下)である。反応時間は、例えば、0.5時間以上(好ましくは3時間以上)、25時間以下(好ましくは15時間以下)である。
【0071】
酸無水物、及び有機アミンの添加順は特に限定されないが、アゾ化合物(III)、有機アミン、及び有機溶媒からなる反応溶液に、酸無水物を添加(滴下)することが好ましい。
【0072】
反応混合物から目的化合物であるアゾ化合物(I)を取得する方法は特に限定されず、公知の種々の手法が採用でき、例えば、反応混合物を有機溶媒で抽出することで精製する方法、具体的には、反応混合物と有機溶媒と水とを混合し、アゾ化合物(I)を有機相へ溶出させ、分液ロートなどで分取した有機相を溶媒留去することで、アゾ化合物(I)を得る方法などが挙げられる。抽出温度は、10℃以上(好ましくは20℃以上)、50℃以下(好ましくは30℃以下)が好ましい。また抽出は、同温度で0.5時間〜4時間程度攪拌するのが好ましい。抽出後のアゾ化合物(I)は、通常、アルコールなどで洗浄し、次いで乾燥する。また必要に応じて、再結晶などの公知の手法によって、さらに精製してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例中、含有量及び使用量を表す「%」及び「部」は、特記されない限り、質量%及び質量部である。
【0074】
実施例1
以下の反応は、窒素雰囲気下で行った。式(A−1)で表されるSolvent Yellow162(BASF製)32部に4−ジメチルアミノピリジン0.6部、トリエチルアミン20部、及びクロロホルム200部を加えた後、30分攪拌して反応溶液を調製した。氷冷下、反応溶液を攪拌しながら、無水酢酸9部を30分かけて滴下した。滴下終了後、室温に戻しながら12時間攪拌した。反応溶液を水2リットルの中に注いだ後、酢酸エチル1リットルを加えて2時間攪拌した。分液ロートを用いて有機相を分取した後、さらに水2リットルで洗浄した。分取した有機相を溶媒留去して、粗生成物32.8部を得た。粗生成物をメタノール1リットルで洗浄し、式(II−1)で表されるアゾ化合物を30.2部得た。収率86%。
【0075】
【化36】

【0076】
アゾ化合物(II−1)の構造は、H−NMR、13C−NMR、及び質量分析によって決定した。NMR装置はECA−500(日本分光(株)製)、質量分析装置はJMS−700(日本電子(株)製)を使用した。:
H−NMR(500MHz、δ値(ppm、TMS基準)、DMSO);0.86−0.92(9H、m)、1.23−1.36(10H、m)、1.54(2H、qq、J=6.9、6.9Hz)、1.73(1H、m)、2.22(3H、s)、2.54(3H、s)、3.74(2H、d、J=7.7Hz)、3.84(2H、br.t、J=6.9Hz)、7.91(2H、br.d、J=8.4Hz)、7.98(2H、br.d、J=8.4Hz)、14.9(1H、s)
13C−NMR(125MHz、δ値(ppm、TMS基準)、DMSO):10.47、13.61、13.86、16.43、19.67、22.41、23.09、24.47、27.96、29.16、29.64、38.72、39.17、50.61、102.54、114.74、117.54、124.96、129.39、135.77、145.43、159.13、159.87、160.15、170.42
質量分析:
イオン化モード=FD+:m/z=543
【0077】
得られたアゾ化合物(II−1)0.35gを乳酸エチルに溶解して体積を250cmとし、そのうちの2cmを乳酸エチルで希釈して体積を100cmとして(濃度:0.028g/L)、分光光度計〔石英セル、セルの長さは1cm〕を用いて吸収スペクトルを測定した。この化合物は、λmax=423nmで吸光度2.48(任意単位)を示した。
【0078】
実施例2
以下の反応は、窒素雰囲気下で行った。式(A−1)で表されるSolvent Yellow162(BASF製)10.0部に4−ジメチルアミノピリジン0.2部、トリエチルアミン6.1部、及びクロロホルム62部を加えた後、30分攪拌して反応溶液を調製した。氷冷下、反応溶液を攪拌しながら、無水コハク酸2.2部を添加した。滴下終了後、室温に戻しながら12時間攪拌した。反応溶液を水2リットルの中に注いだ後、酢酸エチル0.5リットルを加えて2時間攪拌した。分液ロートを用いて有機相を分取した後、さらに水1リットルで洗浄した。分取した有機相を溶媒留去して、粗生成物8.5部を得た。粗生成物をメタノール0.2リットルで洗浄し、式(II−4)で表されるアゾ化合物を7.6部得た。収率63%。
【0079】
アゾ化合物(II−4)の構造は、H−NMR、13C−NMR、及び質量分析によって決定した。NMR装置はECA−500(日本分光(株)製)、質量分析装置はJMS−700(日本電子(株)製)を使用した。:
H−NMR(500MHz、δ値(ppm、TMS基準)、DMSO);0.88−0.94(9H、m)、1.23−1.37(11H、m)、1.54(2H、qq、J=6.8、6.9Hz)、1.73(1H、m)、2.62(3H、s)、2.85−2.87(4H、m)、3.76(2H、d、J=7.7Hz)、3.96(2H、br.t、J=6.8Hz)、7.91(2H、br.d、J=8.4Hz)、7.98(2H、br.d、J=8.4Hz)、14.9(1H、s)
13C−NMR(125MHz、δ値(ppm、TMS基準)、DMSO):10.48、13.59、13.89、16.52、20.00、22.75、23.43、28.37、28.42、29.58、30.10、31.35、38.97、39.02、50.85、103.48、113.82、116.83、124.65、129.54、136.62、143.77、158.28、159.50、161.3、171.91、177.12
質量分析:
イオン化モード=FD+:m/z=601
【0080】
得られたアゾ化合物(II−4)0.35gを乳酸エチルに溶解して体積を250cmとし、そのうちの2cmを乳酸エチルで希釈して体積を100cmとして(濃度:0.028g/L)、分光光度計〔石英セル、セルの長さは1cm〕を用いて吸収スペクトルを測定した。この化合物は、λmax=426nmで吸光度2.46(任意単位)を示した。
【0081】
実施例3
式(B−1)で表される3−メチルアニリン−4−スルホン酸25.0部に水150部を加えた後、氷冷下、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7〜8に調節した。以下の操作は氷冷下で行った。亜硝酸ナトリウムを27.6部加えて30分攪拌した。35%塩酸97.4部を少量ずつ加えて褐色溶液とした後、2時間攪拌した。アミド硫酸25.1部を水250部に溶解した水溶液を反応溶液に加えて攪拌し、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を得た。
【0082】
【化37】

【0083】
式(C−1)で表される1−ブチル−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシピリド−2−オン28.9部に水260部を加えた後、氷冷下、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH8〜9に調節した。
【0084】
【化38】

【0085】
以下の操作は氷冷下で行った。前記ピリドン水溶液を攪拌して無色溶液とした後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH8〜9に調節しながら、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を2時間かけてポンプで滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌することで黄色懸濁液を得た。濾過して得た黄色固体を減圧下60℃で乾燥し、式(D−1)で表されるアゾ化合物を46.7部(収率79%)得た。
【0086】
【化39】

【0087】
以下の反応は、窒素雰囲気下で行った。冷却管及び攪拌装置を備えたフラスコに、アゾ化合物(D−1)を30部、クロロホルム300部及びN,N−ジメチルホルムアミド11.9部を投入し、攪拌下20℃以下を維持しながら、塩化チオニル16.6部を滴下して加えた。滴下終了後、50℃に昇温し、同温度で5時間維持して反応させ、その後20℃に冷却した。冷却後の反応溶液を、攪拌下20℃以下に維持しながら、2−エチルヘキシルアミン47.9部及びトリエチルアミン90.1部の混合液を滴下して加えた。その後、同温度で5時間攪拌して反応させた。次いで得られた反応混合物をロータリーエバポレーターで溶媒留去した後、メタノールを少量加えて激しく攪拌した。この混合物を、酢酸60部及びイオン交換水600部の混合液中に攪拌しながら加えて、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、イオン交換水でよく洗浄し、60℃で減圧乾燥して、式(A−2)で表されるアゾ化合物27.0部(収率71%)を得た。
【0088】
【化40】

【0089】
以下の反応は、窒素雰囲気下で行った。式(A−2)で表されるアゾ化合物部に4−ジメチルアミノピリジン0.1部、トリエチルアミン2.0部、及びクロロホルム26.9部を加えた後、30分攪拌して反応溶液を調製した。氷冷下、反応溶液を攪拌しながら、無水酢酸1.1部を30分かけて滴下した。滴下終了後、室温に戻しながら12時間攪拌した。反応溶液を水2リットルの中に注いだ後、酢酸エチル0.5リットルを加えて2時間攪拌した。分液ロートを用いて有機相を分取した後、さらに水1リットルで洗浄した。分取した有機相を溶媒留去して、粗生成物4.0部を得た。粗生成物をメタノール1リットルで洗浄し、式(II−43)で表されるアゾ化合物を3.7部得た。収率79%。
【0090】
アゾ化合物(II−43)の構造は、H−NMR、13C−NMR、及び質量分析によって決定した。NMR装置はECA−500(日本分光(株)製)、質量分析装置はJMS−700(日本電子(株)製)を使用した。:
H−NMR(500MHz、δ値(ppm、TMS基準)、DMSO);0.90−0.97(9H、m)、1.26−1.48(10H、m)、1.60(2H、qq、J=6.8、6.8Hz)、1.81(1H、m)、2.23(3H、s)、2.58(3H、s)、2.62(3H、s)、3.78(2H、d、J=7.5Hz)、3.88(2H、br.t、J=6.8Hz)、7.31(1H、s)、7.44(2H、br.d、J=8.7Hz)、8.03(1H、br.d、J=8.7Hz)、14.8(1H、s)
13C−NMR(125MHz、δ値(ppm、TMS基準)、DMSO):10.33、13.50、13.85、16.43、20.00、20.20、22.76、23.36、24.70、28.24、29.50、30.00、38.96、39.77、50.85、103.84、113.84、120.04、124.55、132.17、135.36、139.72、144.25、158.08、159.39、161.24、170.10
質量分析:
イオン化モード=FD+:m/z=557
【0091】
得られたアゾ化合物(II−43)0.35gを乳酸エチルに溶解して体積を250cmとし、そのうちの2cmを乳酸エチルで希釈して体積を100cmとして(濃度:0.028g/L)、分光光度計〔石英セル、セルの長さは1cm〕を用いて吸収スペクトルを測定した。この化合物は、λmax=425nmで吸光度2.41(任意単位)を示した。
【0092】
実施例4
以下の反応は、窒素雰囲気下で行う。式(A−1)で表されるSolvent Yellow162(BASF製)35.0部に4−ジメチルアミノピリジン0.9部、トリエチルアミン20.0部、及びクロロホルム200部を加えた後、攪拌して反応溶液を調製する。氷冷下、反応溶液を攪拌しながら、酢酸クロライド6.0部を滴下する。滴下終了後、室温に戻しながら攪拌する。反応溶液を水2リットルの中に注いだ後、酢酸エチル1リットルを加えて攪拌する。分液ロートを用いて有機相を分取した後、さらに水2リットルで洗浄する。分取した有機相を溶媒留去して、粗生成物24.9部を得る。粗生成物をメタノール1リットルで洗浄し、式(II−1)で表されるアゾ化合物を得る。
【0093】
比較例1
式(B−2)で表されるスルファニル酸40.0部に水400部を加えた後、氷冷下、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7〜8に調節した。以下の操作は氷冷下で行った。亜硝酸ナトリウムを19.1部加えて30分攪拌した。35%塩酸72.2部を少量ずつ加えて褐色溶液とした後、2時間攪拌した。アミド硫酸4.4部を水30部に溶解した水溶液を反応溶液に加えて攪拌し、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を得た。
【0094】
【化41】

【0095】
式(C−2)で表される1−エチル−3−シアノ−4−メチル−6−ヒドロキシピリド−2−オン54.4部に水800部を加えた後、氷冷下、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH8〜9に調節した。
【0096】
【化42】

【0097】
以下の操作は氷冷下で行った。前記ピリドン水溶液を攪拌して無色溶液とした後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH8〜9に調節しながら、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を2時間かけてポンプで滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌することで暗色溶液を得た。濾過して得た黄色固体を減圧下60℃で乾燥し、式(D−2)で表されるアゾ化合物を80.5部(収率92%)得た。
【0098】
【化43】

【0099】
冷却管及び攪拌装置を備えたフラスコに、アゾ化合物(D−2)を5部、クロロホルム50部及びN,N−ジメチルホルムアミド2.1部を投入し、攪拌下20℃以下を維持しながら、塩化チオニル6部を滴下して加えた。滴下終了後、50℃に昇温し、同温度で5時間維持して反応させ、その後20℃に冷却した。冷却後の反応溶液を、攪拌下20℃以下に維持しながら、3−イソプロポキシプロピルアミン4部及びトリエチルアミン14部の混合液を滴下して加えた。その後、同温度で5時間攪拌して反応させた。次いで得られた反応混合物をロータリーエバポレーターで溶媒留去した後、メタノールを少量加えて激しく攪拌した。この混合物を、酢酸29部及びイオン交換水300部の混合液中に攪拌しながら加えて、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、イオン交換水でよく洗浄し、60℃で減圧乾燥して、式(A−3)で表されるアゾ化合物3.5部(収率56%)を得た。
【0100】
【化44】

【0101】
得られたアゾ化合物(A−3)0.35gを乳酸エチルに溶解して体積を250cmとし、そのうちの2cmをイオン交換水で希釈して体積を100cmとして(濃度:0.028g/L)、分光光度計(石英セル、光路長;1cm)を用いて吸収スペクトルを測定した。この化合物は、λmax=430nmで吸光度2.77(任意単位)を示した。
【0102】
比較例2
特公平7−88633号公報に記載の方法で、下記アゾ化合物を合成した。アゾ化合物(A−4)0.35gを乳酸エチルに溶解して体積を250cmとし、そのうちの2cmをイオン交換水で希釈して体積を100cmとして(濃度:0.028g/L)、分光光度計(石英セル、光路長;1cm)を用いて吸収スペクトルを測定した。この化合物は、λmax=425nmで吸光度2.6(任意単位)を示した。
【0103】
【化45】

【0104】
以下の実施例で用いる成分は以下の通りであり、以下、省略して表示することがある。
(II−1)着色剤: 実施例1で合成したアゾ化合物
(II−4)着色剤: 実施例2で合成したアゾ化合物
(II−43)着色剤: 実施例3で合成したアゾ化合物
(A−1)着色剤:Solvent Yellow162(BASF社製)
(A−3)着色剤:比較例1で合成したアゾ化合物
(A−4)着色剤:比較例2で合成したアゾ化合物
(F−1)樹脂:HN−122(田岡化学工業(株)製)
(G−1)溶剤:N,N−ジメチルホルムアミド
【0105】
実施例5
〔着色組成物1の調製〕
(II−1) 0.51質量部
(F−1) 1.19質量部
(G−1) 8.30質量部
を混合して着色組成物1を得た。
【0106】
次にガラス(#1737;コーニング)上に、上記で得た着色組成物1をスピンコート法で塗布した後、100℃3分間で揮発成分を揮発させて着色組成物1の塗布膜を形成した。
前記塗布膜において、測色機(OSP−SP−200;オリンパス(株)製)を用いて分光を測定し、C光源の等色関数を用いてCIEのXYZ表色系におけるxy色度座標(Bx、By)と明度を測定した。
【0107】
〔評価1〕耐熱性評価方法
得られた塗布膜を230℃で120分加熱し、加熱後の色度を前記と同様に測定し、加熱前後の色差(ΔEab*)を求めた。
色差の評価基準としては、ΔEab*が6以下であれば色相変化は殆ど認められず、カラーフィルタとして良好な特性を示し、ΔEab*が6を超え10以下であれば、若干の色相変化は認められるが、カラーフィルタの実用上問題のないレベルであり、ΔEab*が10以上であれば、はっきりとした色相変化が確認でき、カラーフィルタとしては問題のあるレベルである。
【0108】
〔評価2〕耐光性評価方法
得られた塗布膜の上に紫外線カットフィルター(COLORED OPTICAL GLASS L38;ホヤ(株)製)を重ねて、耐光性試験機(SUNTEST CPS+:(株)東洋精機製作所製)にてキセノンランプ光を48時間照射した。
つぎに、耐光性試験後の色度を測定し、耐光性試験前後の色差(ΔEab*)を求めた。
【0109】
〔塗布膜の評価〕
得られた塗布膜について上記と同様にして評価を実施した結果、耐熱性評価での色差(ΔEab*)は4.0であり、耐光性評価での色差(ΔEab*)は0.5であった。
【0110】
実施例6
〔着色組成物2の調製〕
実施例5の着色剤(II−1)を着色剤(II−4)に変更する以外は、実施例5と同様に混合して着色組成物2を得た。
【0111】
〔塗布膜の形成及び評価〕
実施例5と同様にして塗布膜を作成し、評価を実施した結果、耐熱性評価での色差(ΔEab*)は4.9であり、耐光性評価での色差(ΔEab*)は0.6であった。
【0112】
実施例7
〔着色組成物3の調製〕
実施例5の着色剤(II−1)を着色剤(II−43)に変更する以外は、実施例5と同様に混合して着色組成物3を得た。
【0113】
〔塗布膜の形成及び評価〕
実施例5と同様にして塗布膜を作成し、評価を実施した結果、耐熱性評価での色差(ΔEab*)は5.3であり、耐光性評価での色差(ΔEab*)は0.3であった。
【0114】
比較例3
〔着色組成物4の調製〕
実施例5の着色剤(II−1)を着色剤(A−1)に変更する以外は、実施例5と同様に混合して着色組成物4を得た。
【0115】
〔塗布膜の形成及び評価〕
実施例5と同様にして塗布膜を作成し、評価を実施した結果、耐熱性評価での色差(ΔEab*)は10.8であり、耐光性評価での色差(ΔEab*)は0.8であった。
【0116】
比較例4
〔着色組成物5の調製〕
実施例5の着色剤(II−1)を着色剤(A−3)に変更する以外は、実施例5と同様に混合して着色組成物5を得た。
【0117】
〔塗布膜の形成及び評価〕
実施例5と同様にして塗布膜を作成し、評価を実施した結果、耐熱性評価での色差(ΔEab*)は7.5であり、耐光性評価での色差(ΔEab*)は1.3であった。
【0118】
比較例5
〔着色組成物6の調製〕
実施例5の着色剤(II−1)を着色剤(A−4)に変更する以外は、実施例5と同様に混合して着色組成物6を得た。
【0119】
〔塗布膜の形成及び評価〕
実施例5と同様にして塗布膜を作成し、評価を実施した結果、耐熱性評価での色差(ΔEab*)は117.6であり、耐光性評価での色差(ΔEab*)は1.5であった。
【0120】
上記の結果から、本発明のアゾ化合物は、従来のアゾ化合物に比べて、耐熱性、及び耐光性が向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のアゾ化合物又はその塩は、耐熱性及び耐光性に優れた塗布膜を形成し得ることから、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイパネルなどのディスプレイ装置に使用される、カラーフィルタの着色剤として好適に使用し得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるアゾ化合物又はその塩。
【化1】



〔式(I)中、Rはアゾ基を有する有機基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。〕
【請求項2】
式(I)で表されるアゾ化合物又はその塩が、式(II)で表されるアゾ化合物又はその塩である請求項1に記載のアゾ化合物又はその塩。
【化2】



〔式(II)中、R及びRは式(I)におけるものと同じ意味を表す。
Aは、C1−8脂肪族炭化水素基、C1−8アルコキシ基、カルボキシル基、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1個又は2個有していてもよいフェニレン基、或いは、N−置換アゾ基、スルホン基、スルファモイル基及びN−置換スルファモイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を1〜3個有していてもよいナフチレン基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。
は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。〕
【請求項3】
式(III)で表されるアゾ化合物とアシル化剤とを反応させる工程を有する、式(I)で表されるアゾ化合物の製造方法。
【化3】



〔式(I)及び式(III)中、Rはアゾ基を有する有機基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいC1−16脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいC3−16脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよいC7−20アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC6−14アリール基を表す。〕
【請求項4】
アシル化剤が、酸クロライド又は酸無水物である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のアゾ化合物又はその塩の二量体。
【請求項6】
請求項2に記載のアゾ化合物又はその塩の二量体。

【公開番号】特開2010−1469(P2010−1469A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123045(P2009−123045)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】